JP4996232B2 - 金型の製造方法、及びfrp成形品 - Google Patents

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本発明は、金型の製造方法、及びFRP成形品にかかり、特に、汚染回復性とツヤ消しを両立することのできる成形品を成形する金型の製造方法、及び汚染回復性とツヤ消しを両立した表面を有するFRP成形品に関する。
組立式の浴室に用いられる壁パネルとして、金型を用いて成形されるFRPパネルがある(特許文献1、2参照。)。
浴室内は汚れが付着し易いため、そこに作用されるFRPパネルの汚染回復性は非常に重要な要素である。濃い色のFRPパネルを作用すれば汚れは目立ち難いが、洗剤等による変色を抑えるため淡い色を作用することが多い。そのため、意匠等は市場にて汚れに対する不具合に繋がる可能性が高くなるため優先度は前述の性能の次になることが多かった。
よって、この汚染回復に対する機能を優先しなければならないために、FRP成形品の意匠は「ツヤ(平面性)」が高く、照明等による光の反射率が高いものが多く、反射率を抑えた所謂「ツヤ消し」の意匠は採用に至るケースが少なかった。
従来、ユニットバス等に用いられるFRPパネルの表面意匠は、主に下記のような金型製造工程を踏むことが多い。
(1) 金型意匠エッチング→サンドブラスト→ガラスビーズ研磨→金型メッキ
(2) 金型意匠エッチング→サンドブラスト→梨地エッチング→サンドブラスト→ガラスビーズ研磨→金型メッキ
特開平6―280050号公報 特開平9―239739号公報
しかしながら、従来の金型を用いた成形では、汚染回復性優先かツヤ消し意匠優先の何れか一方しか実現できず、双方を満足することは困難であった。
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、汚染回復性とツヤ消しを両立することのできる成形品を成形する金型の製造方法、及び汚染回復性とツヤ消しの両立を図った成形品を提供することが目的である。
請求項1に記載の発明は、合成樹脂成形品を成形するための金型の製造方法であって、金型によって成形された成形品の表面において、汚染回復率が85%以上となるように、金型の成形面にツヤ消し用の梨地エッチングを施す梨地エッチング処理工程と、梨地エッチング処理後の前記成形面にサンドブラスト処理を施すサンドブラスト処理工程と、サンドブラスト処理後の前記成形面にガラスビーズ研磨を施すガラスビーズ研磨処理工程と、ガラスビーズ研磨処理後の前記成形面をバフ研磨するバフ研磨処理工程と、バフ研磨処理後の前記成形面にメッキを施すメッキ処理工程とを行う、ことを特徴としている。
請求項1に記載の金型の製造方法では、先ず最初に、金型の成形面にツヤ消し用の梨地エッチングを施す(梨地エッチング処理工程)。
次に、梨地エッチング処理後の成形面にサンドブラスト処理を施す(サンドブラスト処理工程)。
次に、サンドブラスト処理後の成形面にガラスビーズ研磨を施す(ガラスビーズ研磨処理工程)。
次に、ガラスビーズ研磨処理後の成形面をバフ研磨する(バフ研磨処理工程)。
最後に、バフ研磨処理後の成形面にメッキを施す(メッキ処理工程)ことで、汚染回復率が85%以上となるFRP等の合成樹脂成形品を成形できる金型が得られる。
金型の成形面に梨地エッチング、及びサンドブラスト処理を行うことで、成形面に微小の凹凸(ツヤ消し)が形成される。
その後、ガラスビーズ研磨を行うことで凸部の頂部が潰され、さらにバフ研磨を行うことで、凸部の頂部が丸みを帯びて滑らかな曲面になる(断面でみたときの曲率半径が大となる。)。金型の成形面における凸部は、成形品の微小な凹凸の凹部を形成する部分となるので、成形品の凹部の底部分は滑らかな曲面となる。成形品表面において、微小な凹凸を残しつつ、凹部の形状を滑らかな曲面とすることで、ツヤ消しを確保しつつ、凹部に入り込んだ汚れが取り易くなる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金型の製造方法において、前記サンドブラスト処理は、粒度が♯130〜220のサンドで行い、前記ガラスビーズ研磨は、粒度がG♯150〜250のガラスビーズで行う、ことを特徴としている。
請求項2に記載の金型の製造方法では、粒度が♯130〜220のサンドを用いてサンドブラスト処理を行い、粒度がG♯150〜250のガラスビーズを用いてガラスビーズ研磨を行うことで、汚染回復率85%以上となる成形品を成形できる金型の成形面を容易に得ることができる。粒度が上記範囲を外れると、汚染回復率85%以上となる成形品を成形できる金型の成形面が得られなくなる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の金型の製造方法において、前記梨地エッチング処理工程の前に、成形品表面に凸状の意匠を形成するための意匠エッチングと、意匠用サンドブラスト処理を施す、ことを特徴としている。
請求項3に記載の金型の製造方法では、意匠エッチングと意匠用サンドブラスト処理を最初に行うことで、パネル表面に意匠(例えば、線等の模様)を形成するための凹部を金型表面に形成することができる。
なお、意匠エッチングと意匠用サンドブラスト処理は、各々1回行っても良く、複数回交互に繰り返しても良い。金型に形成する意匠用の凹部の大きさによって意匠エッチングと意匠用サンドブラスト処理の回数は適宜設定される。また、金型に形成する意匠用の凹部の大きさは、ツヤ消し用の微小な凹(凸)の大きさよりも当然ながら大きく設定されるものである。
金型の成形面において、意匠用の凹部を形成した後に、ツヤ消し用の梨地エッチング、及びサンドブラスト処理を行うので、ツヤ消しと汚染回復性を備えた意匠表面を有する成形品を成形できる金型が得られる。
請求項4に記載の発明は、金型を用いて成形されたFRP成形品であって、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の金型を用いて成形され、表面にはツヤ消しとなる凹凸が形成され、凹部の底部分は凸部の頂部対比で丸みを帯びている、ことを特徴としている。
請求項4に記載のFRP成形品は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の金型を用いて成形され、表面にはツヤ消しとなる凹凸が形成されて、凹部の底部分が凸部の頂部対比で丸みを帯びているため、ツヤ消しと汚染回復性を両立することが出来る。
以上説明したように本発明の金型の製造方法によれば、ツヤ消しと汚染回復性を両立した合成樹脂成形品を効率的に成形できる、という優れた効果を有する。
また、本発明のFRP成形品によれば、ツヤ消しと汚染回復性を両立することができる、という優れた効果を有する。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
以下に、浴室用のFRPパネルを成形するための金型の製造方法を説明する。
(1) 先ず最初に、金型の内面(FRPパネルの表面となる面)に、模様等の意匠をFRPパネル表面に形成するためのエッチング(意匠エッチング)を行い、次に、意匠用サンドブラスト処理を行う。本実施形態では、エッチングと意匠用サンドブラスト処理とを交互に複数回繰り返して行うことで、金型の内面にパネル表面に模様等の意匠を形成するための凹部を形成する。なお、金型は、材質がS55Cであり、表面硬度はHRL13程度である。
(2) 次に、金型の内面にツヤ消し用の梨地エッチングを施す。
(3) 次に、金型の内面にサンドブラスト処理を行う。サンドの粒度は、♯60〜♯200の範囲内とすることが好ましい。なお、ここでは、梨地エッチング処理とサンドブラスト処理(用いたサンドの粒度は♯60)を仕上げのみ各々1回行った。このようなツヤ消し用の梨地エッチング、及びサンドブラストにより、金型の内面全体に、ツヤ消し用の微小な凹凸が形成される。
(4) 次に、金型の内面をガラスビーズ研磨する。ここで用いているガラスビーズは、ガラス100%のものを用いており、粒度♯60、♯100、♯200のガラスビーズを順に使用した。これにより、ツヤ消し用の微小な凹凸の凸部の頂部が潰される。なお、ガラスビーズ研磨は、ガラス100%で実施する。
(5) 次に、金型の内面をバフ研磨する。これにより、サンドブラスト処理により形成された図1(A)に示すような凸部10の尖った頂部が、ガラスビーズ研磨、及びバフ研磨後には図1(B)に示すように丸みを帯びる。
なお、バフ研磨は、バフ研磨後の光沢度が、例えば、18〜23%となるように行う。
(6) 最後に、金型内面に白上げメッキ(ニッケルクロムメッキ)を施す。メッキの厚み(平均値)は、10〜20μmの範囲内が好ましい。また、メッキ後の金型内面の光沢度は、32〜37%の範囲内に設定することが好ましい。
なお、最終的に、FRPパネルの汚染回復率が85%以上となるように、金型の内面に対して、梨地エッチング、サンドブラスト、ガラスビーズ研磨、バフ研磨、及びメッキをバランス良く行っている。
このようにして製造された金型を用いてFRPパネルを従来通りに成形を行うと、FRPパネルの表面には図1(C)に示すようにツヤ消しとなる微小な凹凸が形成されるが、凹部12の底部分は、凸部14の頂部対比で丸みを帯びているため、凹部12に汚れが入り込んだとしても除去され易い形状となる。このため、汚染回復率が85%以上となる。
上記実施形態では、FRPパネルを成形する金型の製造方法に付いて説明したが、金型は、FRP以外の合成樹脂製品の成形を行う金型であっても良い。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、本発明の金型の製造方法によって製造された金型と、比較例による方法で製造された金型とを用いてFRP成形品を成形し、各々のFRP成形品について汚染回復率の測定を行った。なお、実施例、及び比較例の製造方法(金型の内面加工)は以下の通りである。
・比較例:エッチング→だらし(酸洗い)→♯150サンドブラスト処理→G♯200ガラスビーズ研磨→メッキ
・実施例:エッチング→だらし(酸洗い)→♯150サンドブラスト処理→G♯200ガラスビーズ研磨→バフ研磨→メッキ
・試験条件A:先ず、後述する汚染物質を塗る前のパネル表面の拡散反射率を色差計で測定する。次に、日本薬局方白色ワセリンにJIS K 5107に規定するカーボンブラックを質量比10対1の割合で混練した汚染物質をパネル表面にすり込み、30分放置した後、乾いた布で汚染物質を拭き取る。汚れを布でふき取った後のパネル表面の拡散反射率を色差計で測定する。
汚染回復率Y(%)は、下式によって求める。
Y(%)=(Y/Y)×100
ここで、Yは汚染洗浄後の拡散反射率、Yは汚染前の拡散反射率である。
・試験条件B:試験条件Aで試験を行った後、JIS K 3301に規定する5%化粧石けん水に浸したガーゼさらにふき取りを行う(縦横20往復)。その後、拡散反射率を測定し、汚染回復率Y(%)を試験条件Aと同様にして求める。
なお、「汚染回復率」が高いことは「汚染回復性」が高いことと同じ意味であり、汚れが落ち易いことを意味する。
試験は、アイボリーのパネルとベージュのパネルの2種類に付いて各々作業者2名(A,B)で行った。試験の結果は以下の表1に記載した通りであった。
Figure 0004996232
試験の結果、本発明の適用された方法で加工された金型を用いて成形したパネルは、汚染回復率が全ての項目について85%以上であり、汚染回復性に優れていることが分かる。また、ツヤ消しの程度に関しては、実施例は比較例とほぼ同等であった。
(A)はバフ研磨前の金型表面の拡大断面図であり、(B)はバフ研磨後の金型表意面に拡大断面図であり、(C)は金型で成形されたFRPパネル表面の断面図である。
符号の説明
12 凹部

Claims (4)

  1. 合成樹脂成形品を成形するための金型の製造方法であって、
    金型によって成形された成形品の表面において、汚染回復率が85%以上となるように、
    金型の成形面にツヤ消し用の梨地エッチングを施す梨地エッチング処理工程と、
    梨地エッチング処理後の前記成形面にサンドブラスト処理を施すサンドブラスト処理工程と、
    サンドブラスト処理後の前記成形面にガラスビーズ研磨を施すガラスビーズ研磨処理工程と、
    ガラスビーズ研磨処理後の前記成形面をバフ研磨するバフ研磨処理工程と、
    バフ研磨処理後の前記成形面にメッキを施すメッキ処理工程とを行う、ことを特徴とする金型の製造方法。
  2. 前記サンドブラスト処理は、粒度が♯130〜220のサンドで行い、
    前記ガラスビーズ研磨は、粒度がG♯150〜250のガラスビーズで行う、ことを特徴とする請求項1に記載の金型の製造方法。
  3. 前記梨地エッチング処理工程の前に、成形品表面に凸状の意匠を形成するための意匠エッチングと、意匠用サンドブラスト処理を施す、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金型の製造方法。
  4. 金型を用いて成形されたFRP成形品であって、
    請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の金型を用いて成形され、
    表面にはツヤ消しとなる凹凸が形成され、凹部の底部分は凸部の頂部対比で丸みを帯びている、ことを特徴とするFRP成形品。
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