JP4993158B2 - マイクロ波導入器、プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
すなわち、プラズマ処理装置は、減圧状態を保持できるチャンバ10を備えている。チャンバ10の底部には、チャンバ内を排気して減圧するための排気口が設けられ、真空ポンプなどの排気手段Eにより排気して減圧雰囲気を維持可能とされている。また、チャンバ10の天井部分には、誘電体からなる窓30が設けられている。窓30の外側には、導波管20が設けられ、スロット20Sを介して窓30にマイクロ波を照射可能とされている。図示しないマイクロ波発生装置から供給されたマイクロ波Mは、導波管20からスロット20S、窓30を介してチャンバ10の内部に導入される。一方、チャンバ10の内部には、窓30に対向するように被処理物Wを載置するためのステージ16が設けられている。
まず最初に、排気口に接続されている図示しない排気手段Eによりチャンバ10内が所定の圧力になるまで減圧される。次に、図示しないガス導入口から処理ガス(例えば、酸素やフッ素含有ガスなど)がチャンバ10内に導入される。マイクロ波発生装置(図示せず)により発生させたマイクロ波Mは、導波管20を介して導かれ、スロット20Sから窓30を介してチャンバ10の内部に放射される。このようにして放射されたマイクロ波Mにより、プラズマPが励起される。
図10は、このような導入機構を備えたプラズマ処理装置を例示する模式図である。
すなわち、マイクロ波Mは、同軸線路1aを介して、チャンバ10内に設けられた供給部1bに供給される。供給部1bは、複数の導体板やストリップラインと誘電体とを組み合わせた複合構造を有し、マイクロ波Mをチャンバ10内に放出させる。放出されたマイクロ波Mは、ガス導入口5から導入されたガスGのプラズマを励起させる。
図10に表した構造にすれば、プラズマをチャンバ10の内壁から引き離すことができ、チャンバ内壁がスパッタリングされることにより発生するパーティクルや金属汚染を防止することができる。しかし、この場合、今度は、供給部1bにおいて誘電体を覆う導体(金属)がスパッタリングされパーティクルや金属汚染が発生してしまうという問題が生ずる。
チャンバと、
前記チャンバに取り付けられた前記マイクロ波導入器と、
を備え、
前記導波体を介して導入されるマイクロ波により前記プラズマを生成する空間においてプラズマを生成可能としたことを特徴とするプラズマ発生装置が提供される。
前記のプラズマ発生装置を備え、
前記生成された前記プラズマによって被処理物のプラズマ処理を実施可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
図1は、本発明の具体例にかかるマイクロ波導入器の要部基本構成を説明するための概念図である。すなわち、同図は、マイクロ波導入器を減圧プラズマ発生装置に取り付けた状態を例示する断面図である。
このマイクロ波導入器は、導入部100aと、伝搬部100bと、放射部100cと、結合部100dと、を有する導波体100を備える。導波体100(導入部100a、伝搬部100b、放射部100c、結合部100d)は誘電体からなり、例えば石英(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、サファイヤ、窒化アルミ(AlN)、酸化イットリウム(Y2O3)などにより構成されるがこれに限定されるものではなく、化学的に安定で耐熱性、耐食性に優れた絶縁材料であればよい。導波体100は、プラズマを生成する空間800に向けてチャンバ300の壁面からチャンバ300の内側(同図の右側)の減圧空間に向けて突出するように取り付けられる。この導波体100には、チャンバ300の外側から、導波管200などを介してマイクロ波Mが導入される。図1に表した具体例の場合、導入部100a、伝搬部100b、放射部100c、結合部100dは、それぞれ円柱状であるが、これに限定されるものではなく任意の断面形状のものであってもよい。例えば、断面が三角形、四角形、多角形、楕円形、外形線が任意の直線や曲線で構成されたものなどの柱状体であってもよい。
図1において、マイクロ波発生手段(図示しない)により発生させたマイクロ波Mは、導波管200により導波体100部分に導かれる。導波体100部分に導かれたマイクロ波Mは、導入部100aに導入された後、伝搬部100cから結合部100dを通り放射部100cに導入される。放射部100cに導入されたマイクロ波Mは後述のように放射部100c部で共振し、その後、放射部100cの外部に放出される。そして、この放出されたマイクロ波Mによりプラズマが生成される。
伝搬部100bは、導入部100aに導入されたマイクロ波Mを結合部100dを介して放射部100cに伝搬するためのものである。伝搬部100bからのマイクロ波の漏れを少なくするためには、伝搬部100bの断面寸法は小さい方が望ましい。ただし、放射部100c付近で発生するプラズマPのスキン・デプス(skin depth)以上であることが必要であり、一般的には、伝搬部100bの断面寸法120bは1センチメートル以上とされる。また、マイクロ波が伝搬部100bにおいて共振しないような形状及びサイズとすることが望ましい。
放射部100cは、結合部100dを介して導入されてくるマイクロ波MをプラズマPに向けて放出するためのものである。一般的に、マイクロ波MとプラズマPとの相互作用(interaction)を強くし、プラズマPの生成効率を上げるためには、導波体のサイズを大きくすることが望ましい。そして、放射部100cに導入されたマイクロ波を共振させることができれば、それだけ多くのエネルギーをプラズマに供給することができる。このためには、共振が起きるように、放射部100cの断面寸法120cはマイクロ波Mの波長の整数倍であることがより望ましい。このようにすれば、放射部100cにおいてマイクロ波MのTEモードあるいはTMモードのみが存在し、唯一のモードで共振させることができる。また、反射が起こっても結合部100dや伝搬部100bで吸収されるため、モードジャンプを抑制することができる。その結果として、常に安定したプラズマを連続的に維持することができる。
結合部100dは、伝搬部100bと放射部100cの間に設けられ、伝搬部100bと放射部100cとの間の結合を調整する役割を有する。つまり、結合部100dは、伝搬部100bと放射部100cとを結合するとともに、放射部100cから伝搬部100bへ戻る反射波を制限し、放射部100c内で共振を生じさせる機能をも有している。このためには、結合部100dの断面サイズ120dは、伝搬部の断面サイズ120bや放射部の断面サイズ120cよりも小さくすることが望ましい。そして、結合部100dの長さや断面サイズを調節することにより、伝搬部100bと放射部100cとの結合を調節できる。
結合部100dから放射部100cに導入されたマイクロ波の一部は反射波となって伝搬部100b側へ戻ろうとするが、結合部100dにより伝搬部100b側へ戻るのが阻害される。そのため放射部100c内で進行波と反射波との干渉が起きる。ここで、前述のように放射部100cの断面寸法120cをマイクロ波波長の整数倍としておけば放射部100c内で共振が起き、その分高いエネルギーをプラズマPに供給することができる。また、反射波の伝搬部100b側への戻りが制限されるため、伝搬部100bにおける定在波の発生がなく、伝搬部100bからチャンバに放出されるマイクロ波も少なくなる。
図2(a)は、結合部100dの断面寸法と放射部100c付近の電界強度比及び共振周波数との関係を例示したグラフ図であり、同図(b)は、このグラフ図に対応する寸法パラメータを表す断面図である。
また、図3は、結合部100dの長さ寸法と放射部100c付近の電界強度比及び共振周波数との関係を例示したグラフ図であり、同図(b)は、このグラフ図に対応する寸法パラメータを表す断面図である。
ここで、「電界強度比」とは、放射部100cの付近での電界強度E1と、伝搬部100bのチャンバ300付近(チャンバ壁面から20mm位)における電界強度E2と、の比E1/E2である。
図2(a)から、結合部100dの断面寸法を大きくするほど電界強度比が低下することがわかる。電界強度比が低下するということは、それだけマイクロ波のプラズマへの放射量が少なくなっていることを意味する。従って、電界強度比は高いほど望ましい。図2(a)からは、結合部100dの直径Dを概ね20mm以下にすると高い電界強度比が得られることがわかる。特に、結合部100dの直径Dを5ミリメータ程度とすれば、電界強度比は最大となるのでより望ましいことがわかる。
図4は、結合部100dと放射部100cの各寸法を図3(b)に関して前述した範囲に選択したときに生じるプラズマPの分布を表す模式図である。すなわち、同図においては、プラズマの密度をコントラストで表し、濃いコントラストほどプラズマの密度が高いことを表す。なお、プラズマPの分布は、導波体100の中心軸C1に対してほぼ対称に現れるため、本図においては半分のみを表した。
図4から明らかなように、プラズマPは放射部100cのほぼ全面に亘って励起されている。これに対して、結合部100d付近にも若干のプラズマが発生してはいるものの、導波体100bの根本部分(チャンバの内壁に近い側)にはプラズマはほとんど発生していない。つまり、プラズマPをチャンバ300の壁面より引き離すことができ、チャンバ300の壁がスパッタリングされることによる生じるパーティクルや金属汚染の発生を防ぐことができる。
図5は、結合部100dを着脱自在な構造として具体例を表す模式図である。
本具体例においては、伝搬部100bの先端には雌ねじ部101bが設けられ、結合部100dの先端には雌ねじ部101bとはまり合う雄ねじ部101cが設けられている。雄ねじ部101cの長さは雌ねじ部101bの深さより若干短くなっており、結合部100dの先端(雄ねじ部101c側)には、結合部100dの雄ねじ部101cを伝搬部100bの雌ねじ部101bにねじ込んだときに伝搬部100bと放射部100cが略直角となるようにするための肩部102が設けられている。
図6は、本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置の要部基本構成を例示する斜視一部断面図である。
このようなループ状共振器210を設ければ、導入導波管220から導入されたマイクロ波Mを共振させることができるので、それだけ強力なマイクロ波Mを導波管200を介して前述のマイクロ波導入器に送ることができる。
本具体例のプラズマ処理装置710も、基本的な構成は図6に関して前述したプラズマ処理装置と同様であるが、ステージ400に高周波電源410が接続されている点が異なる。高周波電源410によってステージ400に高周波バイアスをかけ、活性種や分解種Rを被処理物Wに対して引き込むことができる。そのため、活性種や分解種Rのチャンバ壁面側への移動がますます少なくなり、パーティクルや金属汚染の発生をさらに抑えることができる。
本具体例のプラズマ処理装置720も、基本的な構成は図6に関して前述したプラズマ処理装置と同様であるが、チャンバ壁面に冷却手段330を設けた点が異なる。すなわち、本具体例のプラズマ処理装置720では、冷却手段330によりチャンバ壁面の温度を下げることができる。そのため、チャンバ壁面と活性種や分解種Rとの反応が弱くなり、パーティクルや金属汚染の発生をさらに抑えることができる。ここで、本発明の効果により冷却手段330の冷却能力は、冷却手段のみによりパーティクルや金属汚染の発生を抑える場合に比べて大幅に低いものでも足りる。そのため、冷却手段330を設ける場合でも、プラズマ処理装置の機構の複雑化や装置寸法の過大化を抑えることができる。
100a 導入部
100b 伝搬部
100c 放射部
100d 結合部
110 導波体根
200 導波管
300 チャンバ
320 Oリング
400 ステージ
M マイクロ波
P プラズマ
R 活性種や分解種
Claims (12)
- プラズマを生成する空間を有するチャンバに取り付けられるマイクロ波導入器であって、
前記チャンバの壁面から前記プラズマを生成する空間に向けて突出する誘電体からなる導波体を備え、
前記導波体は、マイクロ波を導入する導入部と、前記導入部から前記プラズマを生成する空間に向けて突出した伝搬部と、前記プラズマを生成する空間にマイクロ波を放射させる放射部と、前記伝搬部と前記放射部の間に設けられる結合部と、を有し、前記結合部は、前記伝搬部及び前記放射部よりも小なる断面を有することを特徴とするマイクロ波導入器。 - 前記結合部は、前記放射部から前記伝搬部に戻るマイクロ波の反射を阻害することを特徴とする請求項1記載のマイクロ波導入器。
- 前記放射部は、前記マイクロ波を共振させることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波導入器。
- 前記結合部は、前記伝搬部に対して着脱自在とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のマイクロ波導入器。
- 前記結合部は、前記放射部に対して着脱自在とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のマイクロ波導入器。
- チャンバと、
前記チャンバに取り付けられた請求項1〜3のいずれか1つに記載のマイクロ波導入器と、
を備え、
前記導波体を介して導入されるマイクロ波により前記プラズマを生成する空間においてプラズマを生成可能としたことを特徴とするプラズマ発生装置。 - 前記チャンバの外側に設けられ、前記導波体にマイクロ波を導入する導波管をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載のプラズマ発生装置。
- 前記導波管の中心軸と、前記導波体の中心軸と、が略同軸とされたことを特徴とする請求項7記載のプラズマ発生装置。
- 複数の前記導波体と、
前記複数の導波体にマイクロ波を導入する複数の導波管と、
前記複数の導波管のそれぞれにマイクロ波を導入する環状共振器と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載のプラズマ発生装置。 - 請求項6〜9のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置を備え、
前記生成された前記プラズマによって被処理物のプラズマ処理を実施可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記プラズマ発生装置に対向するように前記被処理物を載置するステージと、
前記ステージに接続される高周波電源と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理装置。 - 前記チャンバの壁を冷却するための冷却手段をさらに備えたことを特徴とする請求項10または11に記載のプラズマ処理装置。
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