図1および図2は、この発明にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。図3は、目標加速度設定部の要部構成例を示す図である。同図に示すように、この発明にかかる車両走行制御装置1は、図示しない自車両に搭載されるものであり、運転者による自車両の運転操作を軽減することができる車両走行制御、すなわちACCを行うものである。この車両走行制御装置1は、制御装置2と、物体検出センサ3と、クルーズコントロールスイッチ4と、ヨーレートセンサ5と、Gセンサ6と、車速センサ7と、ブレーキセンサ8と、シフトポジションセンサ9と、ブレーキ装置10と、スロットル装置11と、変速装置12とにより構成されている。なお、このACCには、設定速度で自車両を走行させる定速走行制御や、先行車両に対して自車両を追従させる追従走行制御が含まれる。
制御装置2は、車両走行制御装置1全体の制御を行うものである。また、制御装置2は、図示しないエンジンの運転制御を行うものでもある。この制御装置2は、少なくとも目標加速度設定部21と、実加速度取得部22と、実加速度予測部23と、要求制駆動力算出部24と、認識部25とにより構成されている。
目標加速度設定部21は、目標加速度設定手段である。この目標加速度設定部21は、図示しない自車両の目標加速度を設定するものである。目標加速度設定部21は、この車両走行制御装置1による自車両の走行制御状態に応じた目標加速度をそれぞれ設定するものである。例えば、図2に示すように、目標加速度設定部21には、追従用目標加速度算出部211、定速用目標加速度算出部212、コーナー加速禁止用目標加速度算出部213、目標加速度調停部214、目標加速度制限部215などにより構成されている。なお、目標加速度は、正の目標加速度と負の目標加速度、すなわち目標減速度も含まれるものである。
追従用目標加速度算出部211は、車両走行制御装置1が図示しない自車両の進行方向において、この自車両が走行している車線と同一車線上を先行車両が走行していると判定し、この先行車両に対して追従走行制御を行う際に、追従用目標加速度を算出するものである。この追従用目標加速度算出部211は、先行車両の位置データに基づいて複数の追従用目標加速度を算出するものである。この実施例では、ブレーキ装置10を作動させても良いこと(ブレーキ許可)を前提に算出される主目標加速度211dや、この主目標加速度211dを基準として複数の副目標加速度(例えばブレーキ装置10を作動させても良いこと(ブレーキ許可)を前提に算出される第1副目標加速度211e、ブレーキ装置10を作動させないこと(ブレーキ不許可)を前提に算出される第n−1副目標加速度211f、ブレーキ装置10を作動させないこと(ブレーキ不許可)を前提に算出される第n副目標加速度211gなど)が、追従用目標加速度算出部211により算出される。
また、追従用目標加速度算出部211は、追従用目標加速度調停部211aを備える。この追従用目標加速度調停部211aは、第1調停部211bと、第2調停部211cとにより構成されている。第1調停部211bは、上記追従用目標加速度算出部211により算出された各目標加速度のうち、ブレーキ装置10を作動させても良いこと(ブレーキ許可)を前提に算出された目標加速度から最も値が小さい目標加速度を選択し、ブレーキ許可を前提とする追従用目標加速度として決定するものである。この実施例では、第1調整部211bは、例えば主目標加速度211dや第1副目標加速度211eなどからブレーキ許可を前提とする追従用目標加速度を決定する。第2調停部211cは、上記追従用目標加速度算出部211により算出された各目標加速度のうち、ブレーキ装置10を作動させないこと(ブレーキ不許可)を前提に算出された目標加速度から最も値が小さい目標加速度を選択し、ブレーキ不許可を前提とする追従用目標加速度として決定するものである。この実施例では、第2調整部211cは、例えば第n−1副目標加速度211fや第n副目標加速度211gなどからブレーキ不許可を前提とする追従用目標加速度を決定する。
ここで、追従用目標加速算出部211は、認識部25と目標加速度調停部214とに接続されている。従って、この追従用目標加速度算出部211は、認識部25により先行車両が認識された場合に、この認識された先行車両の位置データが入力される。そして、追従用目標加速度算出部211は、この位置データに基づいて複数の追従用目標加速度を算出し、追従用目標加速度調停部211aの第1調停部211bにより決定されたブレーキ許可を前提とする追従用目標加速度を目標加速度調停部214の第1調停部214aに出力し、第2調停部211cにより決定されたブレーキ不許可を前提とする追従用目標加速度を目標加速度調停部214の第2調停部214bに出力する。
定速用目標加速度算出部212は、クルーズコントロールスイッチ4などにより設定された設定速度に基づいて、定速用目標加速度を算出するものである。この定速用目標加速度算出部212は、車両走行制御装置1が設定された定速用目標加速度に基づいて自車両の定速走行制御を行っている場合のみならず、車両走行制御装置1が先行車両追従走行制御を行っている場合においても、定速用目標加速度を算出する。この実施例では、定速用目標加速度算出部212は、ブレーキ装置10を作動させないこと(ブレーキ不許可)を前提に、定速用目標加速度を算出する。この定速用目標加速度算出部212は、目標加速度調停部214の第2調停部214bに接続されている。従って、定速用目標加速度算出部212は、算出された定速用目標加速度を第2調停部214bに出力する。
コーナー加速禁止用目標加速度算出部213は、車両走行制御装置1が図示しない自車両の進行方向における道路形状を推定する図示しない道路形状推定装置などにより推定された道路形状や、ヨーレートセンサ5により検出された自車両の自転速度などから算出された道路の推定Rからこの自車両がコーナーを走行していると判定した場合に、コーナーにおける加速禁止したコーナー加速禁止用目標加速度を算出するものである。この実施例では、コーナー加速禁止用目標加速度算出部213は、ブレーキ装置10を作動させても良いこと(ブレーキ許可)を前提に、コーナー加速禁止用目標加速度を算出する。このコーナー加速禁止用目標加速度算出部213は、目標加速度調停部214の第1調停部214aに接続されている。従って、コーナー加速禁止用目標加速度算出部213は、算出されたコーナー加速禁止用目標加速度を第1調停部214aに出力する。
目標加速度調停部214は、上記各算出部により算出された各目標加速度から車両走行制御装置1により図示しない自車両の走行を制御する際に用いる目標加速度を設定するものである。この目標加速度調停部214は、第1調停部214aと、第2調停部214bと、最終調停部214cと、下限処理部214dとにより構成されている。
第1調停部214aは、入力された上記決定されたブレーキ許可を前提とする追従用目標加速度と、コーナー加速禁止用目標加速度とのうち最も値が小さい目標加速度を選択し、ブレーキ許可を前提とする許可目標加速度OGとして決定するものである。なお、第1調停部214aは、最終調停部214cに接続されており、決定された許可目標加速度OGを最終調停部214cに出力する。
第2調停部214bは、入力された上記決定されたブレーキ不許可を前提とする追従用目標加速度と、定速用目標加速度とのうち最も値が小さい目標加速度を選択し、ブレーキ不許可を前提とする不許可目標加速度NGとして決定するものである。なお、第2調停部214bは、下限処理部214dと接続されており、決定された不許可目標加速度NGを下限処理部214dに出力する。
最終調停部214cは、ブレーキ許可を前提とする許可目標加速度OGと、不許可目標加速度NGあるいは後述する全閉時予測実加速度FGとのうち最も値が小さい目標加速度を選択し、目標加速度TGとして決定し、設定するものである。なお、最終調停部214cは、目標加速度制限部215に接続されており、設定された目標加速度TGをこの目標加速度制限部215に出力する。なお、最終調停部214cは、設定された目標加速度TGがブレーキ許可あるいはブレーキ不許可のいずれかを前提とするものであるかに応じて、ブレーキ許可フラグを要求制駆動力算出部24に出力する。例えば、設定された目標加速度TGがブレーキ許可を前提とする場合に1、すなわちブレーキ許可フラグを立て、設定された目標加速度TGがブレーキ不許可を前提とする場合に0、すなわちブレーキ許可フラグを立てないようにする。
下限処理部214dは、入力された上記第2調停部214bにより決定された不許可目標加速度NGと後述する実加速度予測部23により算出された全閉時予測実加速度FGとを比較して、いずれか一方を選択するものである。なお、下限処理部214dは、最終調停部214cに接続されており、選択された不許可目標加速度NGあるいは全閉時予測実加速度FGを最終調停部214cに出力する。
目標加速度制限部215は、図示しない制限値に基づいて制限し、この制限値により制限された目標加速度を算出するものである。この目標加速度制限部215は、目標加速度調停部214と、要求制駆動力算出部24とに接続されている。従って、この目標加速度制限部215は、入力された目標加速度調停部214により設定された目標加速度TGを、例えば予め図示しない記憶手段である記憶部に記憶されている制限値に基づいて制限し、この制限された設定された目標加速度TGを要求制駆動力算出部24に出力する。なお、ここで制限値は、目標加速度調停部214により設定された目標加速度TGの変化を制限するものである。
実加速度取得部22は、実加速度取得手段である。この実加速度取得部22は、Gセンサ6と、実加速度予測部23とに接続されており、Gセンサ6により検出された図示しない自車両の実加速度を取得し、実加速度予測部23に出力するものである。
実加速度予測部23は、実加速度予測手段である。この実加速度予測部23は、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力、この実施例では、自車両に搭載されるエンジンのスロットルバルブを全閉とした状態においてこの自車両が発生することができる駆動力である全閉時推定制駆動力を自車両に発生させた際の予測実加速度、すなわち全閉時実加速度を算出し、予測するものである。この実加速度予測部23は、上記実加速度取得部22と、車速センサ7と、シフトポジションセンサ9と、要求制動力算出部24とに接続されている。従って、実加速度予測部23には、自車両に発生させる要求制駆動力と、この要求制駆動力を自車両に発生させた際の実加速度と、車速センサ7により検出された自車両の車速と、現在のシフトポジションとが入力される。実加速度予測部23は、入力された自車両の車速においてスロットルバルブ全閉状態で発生することができるエンジン駆動力と、現在のシフトポジションにおける変速機122の変速比とから全閉時推定制駆動力を算出し、この算出した全閉時推定制駆動力と、要求制駆動力と、要求制駆動力を自車両に発生させた際の実加速度と、例えば予め図示しない記憶手段である記憶部に記憶されている自車両の質量とから全閉時予測実加速度FGを算出し、予測する。
要求制駆動力算出部24は、要求制駆動力算出手段である。この要求制駆動力算出部24は、この実施例では上記目標加速度設定部21により設定された目標加速度TGに基づいて図示しない自車両に発生させる要求制駆動力を算出するものである。この要求制駆動力算出部24は、設定された目標加速度TGと例えば予め図示しない記憶手段である記憶部に記憶されている自車両の質量とから要求制駆動力を算出する。また、要求制駆動力算出部24は、ブレーキ装置10と、スロットル装置11と、変速装置12とに接続されている。従って、要求制駆動力算出部24は、この実施例では、算出した要求制駆動力を要求制駆動力発生手段、すなわちブレーキ装置10あるいは図示しないエンジンの少なくともいずれか一方が発生するように、このブレーキ装置10、スロットル装置11あるいは変速装置12の少なくともいずれか1つを選択し、制御するものである。なお、要求制駆動力算出部24は、Gセンサ6により検出された要求駆動力を自車両に発生させた際の実加速度を取得し、この実加速度を考慮して要求制駆動力を算出しても良い。
認識部25は、物体検出センサ3により検出された物体の位置データから図示しない自車両の進行方向において、この自車両が走行している車線と同一車線上を走行している先行車両を認識するものである。この認識部25は、物体検出センサ3と目標加速度設定部21の追従用目標加速度算出部211とに接続されている。従って、認識部25には、物体検出センサ3により検出された物体の位置データが入力され、この入力された位置データから先行車両を認識し、この認識した先行車両の位置データを追従用目標加速度算出部211に出力する。
ここで、制御装置2は、図示しない入出力ポート(I/O)と、処理部と、記憶手段である記憶部とにより構成されている。図示しない入出力ポートは、上記各種センサおよび上記各種装置と接続されており、各種センサから出力されたデータを制御装置2に入力し、この制御装置2から各種装置に制御信号をそれぞれ出力するものである。図示しない処理部は、RAM(Random Access Memory)およびCPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。この処理部は、車両走行制御方法に基づくプログラムを例えばRAMにロードして実行することにより、実現させるものである。また、図示しない記憶部は、ROM(Read Only Memory)あるいはRAM、あるいはこれらの組み合わせなどにより構成されている。
ここで、図示しない記憶部には、設定された目標加速度TGを制限する制限値、図示しない自車両の質量が記憶されている。また、この記憶部には、全閉時推定制駆動力マップと、要求制駆動力マップが予め記憶されている。全閉時推定制駆動力マップは、自車両の車速と、シフトポジション、すなわち変速機122の変速比とに基づいて全閉時推定制動力が設定されている。また、要求制駆動力マップは、上記目標加速度設定部21により設定される目標加速度TGと、自車両の質量とに基づいて要求制駆動力が設定されている。
物体検出センサ3は、図示しない自車両の進行方向に存在する物体の位置を検出するものである。この物体検出センサ3は、この実施例では、例えばミリ波レーダを用いる。ミリ波レーダは、ミリ波を用いた検出方法により物体の位置を検出するものであり、検出された物体の位置データが制御装置2の認識部25に出力される。ミリ波レーダ3は、自車両の前面部の中央部、例えばフロントグリル内に取り付けられている。ここで、このミリ波レーダ3は、ミリ波を出射、この実施例では自車両の前面から進行方向の所定の範囲で出射し、自車両の進行方向に存在する物体により反射したミリ波を受信するものである。そして、ミリ波レーダは、出射から受信までの時間を計測することによって、ミリ波レーダから自車両の進行方向に存在する物体までの距離を算出する。また、ミリ波レーダは、ドップラー効果を用いることで物体との相対速度を算出することができる。また、ミリ波レーダは、受信したミリ波のうち最も強く反射して受信されたミリ波の方向を検出し、その方向から自車両の進行方向と物体の方向とのなす角度を算出する。つまり、ミリ波レーダにより物体の位置が検出された場合、制御装置2の識別部25には、その物体までの距離、相対速度、角度が検出された物体の位置データとして入力されることとなる。なお、物体検出センサ3は、ミリ波レーダに限られるものではなく、例えばレーザや赤外線などを用いたレーダ、ステレオカメラなどにより自車両の進行方向を撮像した画像データを用いた画像認識装置などであっても良い。
クルーズコントロールスイッチ4は、車両走行制御装置1に車両走行制御、すなわちACCを行わせるものである。このクルーズコントロールスイッチ4は、図示しない自車両のステアリング近傍に設けられるものである。クルーズコントロールスイッチ4は、車両走行制御装置1によるACCの開始を制御装置2に出力するものである。また、クルーズコントロールスイッチ4は、車両走行制御装置1による定速走行制御時における図示しない自車両の速度や先行車両追従走行制御時における自車両と先行車両との間隔車速などを設定するものでもある。
ヨーレートセンサ5は、図示しない自車両の自転速度を検出するものである。
Gセンサ6は、実加速度検出手段であり、図示しない自車両の実加速度を検出するものである。このGセンサ6により検出された実加速度は、上記実加速度取得部22に出力される。
車速センサ7は、図示しない自車両の車速を検出するものである。この車速センサ7により検出された車速は、上記実加速度予測部23に出力され、全閉時予測実加速度FGを算出する際に用いられる。また、この車速センサ7により検出された車速は、図示は省略するが上記目標加速度設定部21に出力され、各算出部において各目標加速度を算出する際にも用いられる。
ブレーキセンサ8は、図示しない運転者により図示しないブレーキペダルが踏み込まれたか、すなわち運転者に制動意志があるか否かを検出するものである。このブレーキセンサ8により検出された運転者の制動意志は、制御装置2に出力される。例えば車両走行制御装置1が定速走行制御あるいは追従走行制御を行っている際に、この制御装置2が運転者の制動意志を取得すると、この制御装置2は、運転者の制動意志を優先し、定速走行制御あるいは追従走行制御を停止する。つまり、運転者の制動意志があった場合、定速走行制御あるいは追従走行制御を停止し、運転者の制動意志がなくなっても定速走行制御あるいは追従走行制御を再開しない。従って、車両走行制御装置による制御状態に拘わらずブレーキ装置10により制動力が発生し、図示しない自車両が減速することとなる。
シフトポジションセンサ9は、シフトポジションを検出するものである。このシフトポジションから、図示しない自車両に搭載されている変速機122の変速比を取得することができる。シフトポジションセンサ9により検出されたシフトポジションは、上記実加速度予測部23に出力され、全閉時推定制駆動力を算出するのに用いられる。
ブレーキ装置10は、要求駆動力発生手段であり、制動力を発生し、図示しない自車両の減速を行うものである。このブレーキ装置10は、ブレーキ制御装置101と、ブレーキアクチュエータ102と、ブレーキ103とにより構成されている。ブレーキ制御装置101は、制動系の作動を制御、例えばブレーキ制御装置101に接続されたブレーキアクチュエータ102の作動を制御するものである。また、このブレーキ制御装置101は、運転者による図示しないブレーキペダルの踏み込み量と自車両の走行状態に基づいてブレーキアクチュエータ102を作動させるものである。また、ブレーキ制御装置101は、制御装置2の要求制駆動力算出部24からの制御信号(ブレーキ許可フラグを含む)によっても、ブレーキアクチュエータ102を作動させることができる。ブレーキアクチュエータ102は、油圧で作動するブレーキ103への油の供給を制御するものである。ブレーキ103は、ブレーキアクチュエータ102によって制御された油圧に基づいて、自車両に制動力を付与するものである。このブレーキ103は、自車両の各車輪と対になるように配置されている。このブレーキ103は、例えばディスクブレーキあるいはドラムブレーキなどの油圧によって作動する油圧ブレーキである。ここで、ブレーキ装置10は、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキアクチュエータ102がブレーキ制御装置101により作動し、ブレーキ103に油圧を付与し、運転者による制動力の発生を補助し、運転者による自車両の減速の補助を行う。また、ブレーキ装置10は、運転者がブレーキペダルを踏み込まなくても、要求制駆動力算出部24からの制御信号によって、ブレーキアクチュエータ102がブレーキ制御装置101により作動し、ブレーキ103に油圧を付与し、要求制駆動力(制動力)を発生し、自車両を減速することができる。なお、ブレーキ制御装置101は、上記制御装置2と同様に、図示しない入出力ポート、処理部、記憶部などにより構成されている。
スロットル装置11は、要求駆動力発生手段である図示しないエンジンに吸気される吸入空気量を制御するものである。このエンジンは、吸気される吸入空気量よって駆動力あるいは制動力を発生し、図示しない自車両の加速あるいは減速を行うものである。スロットル装置11は、スロットルアクチュエータ111と、スロットルバルブ112とにより構成されている。スロットルアクチュエータ111は、運転者による図示しないアクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル開度に基づいて制御装置2から出力される制御信号によって作動するものである。また、スロットルアクチュエータ111は、制御装置2の要求制駆動力算出部24からの制御信号によっても、作動するものである。スロットルバルブ112は、スロットルアクチュエータ111の作動により開度が制御されるものであり、開度によって吸入空気量を調整するものである。ここで、スロットル装置11は、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、制御装置2によりスロットルアクチュエータ111が作動し、スロットルバルブ112の開度を制御し、エンジンに吸気される吸入空気量を調整し、このエンジンにより駆動力あるいは制動力を発生させる。また、ブレーキ装置10は、運転者がアクセルペダルを踏み込まなくても、要求制駆動力算出部24からの制御信号によって、スロットルアクチュエータ111が作動し、スロットルバルブ112の開度を制御し、エンジンに吸気される吸入空気量を調整し、このエンジンにより要求制駆動力(駆動力あるいは制動力)を発生させることができる。
変速装置12は、要求駆動力発生手段である図示しないエンジンと連結され、エンジンの出力を図示しない各車輪に伝達する変速機122を制御するものである。変速装置12は、バルブボディ121と、変速機122とにより構成されている。バルブボディ121は、運転者による図示しないシフトレバーの操作、あるいは運転者による図示しないアクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル開度に基づいて制御装置2から出力される制御信号によって作動するものである。また、バルブボディ121は、制御装置2の要求制駆動力算出部24からの制御信号によっても、作動するものである。変速機122は、バルブボディ121の作動により、エンジンと図示しない各車輪との変速比を変更し、エンジンが発生する駆動力あるいは制動力を変化、すなわち調整するものである。ここで、変速装置12は、運転者がシフトレバーを操作、あるいは運転者がアクセルペダルを踏み込むと、制御装置2によりバルブボディ121が作動し、変速機122により変速比を変更し、エンジンが発生する駆動力あるいは制動力を調整する。また、変速装置12は、運転者によるシフトレバーの操作やアクセルペダルの踏み込みが行われなくても、要求制駆動力算出部24からの制御信号によって、バルブボディ121を作動し、変速機122により変速比を変更し、エンジンが発生する駆動力あるいは制動力を調整することで要求制駆動力を発生させることができる。
次に、この発明にかかる車両走行制御装置1を用いた車両走行制御方法について説明する。図4は、この発明にかかる車両走行制御装置の動作フロー図である。図5は、実加速度予測部の動作フロー図である。
まず、図3に示すように、制御装置2の目標加速度設定部21の目標加速度算出部211は、各目標加速度を算出する(ステップST1)。ここでは、追従用目標加速度算出部211の第1調整部211bが、算出されたブレーキ許可を前提とする目標加速度からブレーキ許可を前提とする追従用目標加速度を決定する。また、追従用目標加速度算出部211の第2調整部211cが、算出されたブレーキ不許可を前提とする目標加速度からブレーキ不許可を前提とする追従用目標加速度を決定する。また、定速用目標加速度算出部212がブレーキ不許可を前提とする定速用目標加速度を算出する。また、コーナー加速禁止用目標加速度算出部213がブレーキ許可を前提とするコーナー加速禁止用目標加速度を算出する。
次に、制御装置2の目標加速度調停部214の第1調停部214aは、許可目標加速度OGを決定する(ステップST2)。ここでは、第1調停部214aは、上述のように、上記目標加速度算出部211により算出されたブレーキ許可を前提とする目標加速度(例えば、決定されたブレーキ許可を前提とする追従用目標加速度、コーナー加速禁止用目標加速度)のうち最も値の小さいもの選択し、ブレーキ許可を前提とする許可目標加速度OGとして決定する。
次に、制御装置2の目標加速度調停部214の第2調停部214bは、不許可目標加速度NGを決定する(ステップST3)。ここでは、第2調停部214bは、上述のように、上記目標加速度算出部211により算出されたブレーキ不許可を前提とする目標加速度(例えば、決定されたブレーキ不許可を前提とする追従用目標加速度、定速用目標加速度)のうち最も値の小さいもの選択し、ブレーキ不許可を前提とする不許可目標加速度NGとして決定する。
次に、制御装置2の実加速度予測部23は、全閉時予測実加速度FGを算出する(ステップST4)。まず、図5に示すように、実加速度予測部23は、要求制駆動力算出部24により算出された要求制駆動力F(要求)を取得する(ステップST401)。
次に、制御装置2の実加速度予測部23は、実加速度RGを取得する(ステップST402)。ここでは、実加速度予測部23は、実加速度取得部22を介して、Gセンサ6により検出された図示しない自車両の実加速度RGを取得する。
次に、制御装置2の実加速度予測部23は、車速とシフトポジションを取得する(ステップST403)。ここでは、実加速度予測部23は、車速センサ7により検出された図示しない自車両の車速と、シフトポジションセンサ9により検出されたシフトポジションとを取得する。
次に、制御装置2の実加速予測部23は、取得された車速とシフトポジションとに基づいて、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力である全閉時推定制駆動力F(下限)を算出する(ステップST404)。ここでは、実加速度予測部23は、図示しない記憶部に記憶されている全閉時推定制駆動力マップを用いて全閉時推定制駆動力F(下限)を算出する。つまり、実加速度予測部23は、全閉時推定制駆動力マップにおいて、取得された車速および取得されたシフトポジション、すなわち変速機122の変速比に対応して設定されている全閉時推定制駆動力F(下限)を選択する。従って、この発明にかかる車両走行制御装置1では、変速機122の変速比、自車両の車速から推定制駆動力である全閉時推定制駆動力F(下限)を算出する際の負荷を低減することができる。
次に、制御装置2の実加速予測部23は、自車両の質量mを取得する(ステップST405)。ここでは、実加速予測部23は、制御装置2の図示しない記憶部に記憶されている自車両の質量mを取得する。なお、この実施例では、自車両の質量mの取得は、記憶部に記憶されている自車両の質量を取得することで行うがこれに限定されるものではない。例えば、記憶部は、自車両の搭乗員に応じた自車両の質量mを複数記憶しており、実加速度予測部23は、自車両の搭乗員の数に応じた自車両の質量mを記憶部から取得しても良い。なお、自車両の搭乗員の数は、例えばシートベルトがバックルに保持されている数を検出することで、取得しても良い。
次に、制御装置2の実加速予測部23は、全閉時予測実加速度FGを算出する(ステップST406)。ここでは、実加速予測部23は、要求制駆動力F(要求)と、取得された実加速度RGと、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力である全閉時推定制駆動力F(下限)と、取得された自車両の質量mとに基づいて全閉時推定制駆動力F(下限)を自車両に発生させた際の全閉時予測実加速度FGを算出する。
ここで、要求制駆動力F(要求)と、要求制駆動力F(要求)を自車両に発生させる際の走行状態によって自車両に作用する外乱抵抗力F(外乱)とからは、要求制駆動力F(要求)を図示しない自車両に発生させた際の実加速度RGと車両の質量mとに基づく要求実駆動力F(実)が下記式(3)により算出することができる。
F(要求)+F(外乱)=m×RG=F(実) …(3)
また、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力である全閉時推定制駆動力F(下限)と、上記式(3)における外乱抵抗力F(外乱)、すなわち要求制駆動力F(要求)を自車両に発生させる際の走行状態によって自車両に作用する外乱抵抗力F(外乱)とからは、全閉時推定制駆動力F(下限)を図示しない自車両に発生させた際の全閉時実加速度RG’と車両の質量mとに基づく全閉時推定実駆動力F(推)が下記式(4)により算出することができる。
F(下限)+F(外乱)=m×RG’=F(推) …(4)
上記要求実駆動力F(実)を算出する式と推定実駆動力である全閉時推定実駆動力F(推)を算出する式とから外乱抵抗力F(外乱)を除いた要求制駆動力F(要求)と、取得された実加速度RGと、推定制駆動力である全閉時推定制駆動力F(下限)と、図示しない自車両の質量mとに基づいた下記の式(5)によって、推定制駆動力を自車両に発生させた際の実加速度、すなわち全閉時推定制駆動力F(下限)を自車両に発生させた際の全閉時予測実加速度FGを算出することができる。ここで、全閉時予測実加速度FGの値は、上記全閉時実加速度RG’の値と同一である。
FG=RG+(F(下限)−F(要求))/m=RG’ …(5)
上記式(5)から、外乱抵抗力F(外乱)を算出することなく、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力を車両に発生させた際の予測実加速度を算出することができる。これにより、外乱抵抗力F(外乱)を算出するために必要な値を検出するセンサなどが必要でなくなるので、車両遡行制御装置1のコストの増加を抑制できるとともに、自車両の質量mの増加を抑制することができる。また、この実施例では、自車両の走行状態に応じて推定することができる推定制駆動力として、自車両に搭載される変速機の変速比と、自車両が走行している速度において図示しないエンジンがスロットルバルブ全閉状態で発生するエンジン駆動力とに基づいて算出することができるスロットルバルブ全閉状態において自車両が発生することができる全閉時推定制駆動力を用いる。従って、実加速度予測部23は、この全閉時推定制駆動力F(下限)を自車両に発生させた際の予測実加速度、すなわちスロットルバルブ全閉状態における全閉時予測実加速度FGを算出することができるので、外乱抵抗力F(外乱)を算出することなく、自車両に搭載されるエンジンのスロットルバルブ112を全閉とした状態における全閉時予測実加速度FGを算出し、予測することができる。
次に、制御装置2の目標加速度調停部214の下限処理部214dは、図4に示すように、決定された不許可目標加速度NGが算出された全閉時予測実加速度FG未満であるか否かを判定する(ステップST5)。ここで、実際の図示しない車両において、ブレーキ装置10を作動させないこと(ブレーキ不許可)を前提として発生する実加速度は、図示しないエンジンのスロットルバルブ112を全閉とした状態における実加速度より小さくなることはない。つまり、不許可目標加速度NGが上記全閉時予測実加速度FG未満となると、目標加速度設定部21によりこの不許可目標加速度NGが設定されても、実際の自車両の実加速度RGは、この不許可目標加速度NGとなることはなく、車両走行制御装置1が要求しても、自車両は要求通り減速することができない。
従って、制御装置2の目標加速度調停部214の下限処理部214dは、決定された不許可目標加速度NGが算出された全閉時予測実加速度FG未満であると判定すると、最終調停部214cに算出された全閉時予測実加速度FGを出力する。そして、最終調停部214cは、決定された許可目標加速度OGと算出された全閉時予測実加速度FGとから最も値の小さいもの選択し、目標加速度TGを決定する(ステップST6)。
一方、制御装置2の目標加速度調停部214の下限処理部214dは、決定された不許可目標加速度NGが算出された全閉時予測実加速度FG以上であると判定すると、最終調停部214cに、決定された不許可目標加速度NGを出力する。そして、最終調停部214cは、決定された許可目標加速度OGと決定された不許可目標加速度NGとから最も値の小さいもの選択し、目標加速度TGを決定する(ステップST7)。
次に、制御装置2の目標加速度制限部215は、制限値によって上記設定された目標加速度TGを制限する(ステップST8)。ここでは、目標加速度制限部215は、この実施例では、例えば1秒当たり許容できる変化量である制限値に基づいて、設定された目標加速度TGを制限し、制限値により制限された設定された目標加速度TGを算出する。
次に、制御装置2の要求制駆動力算出部24は、上記制限された設定された目標加速度TGに基づいて要求制駆動力F(要求)を算出する(ステップST9)。ここでは、要求制駆動力算出部24は、図示しない記憶部に記憶されている要求制駆動力マップを用いて要求制駆動力F(要求)を算出する。つまり、要求制駆動力算出部24は、要求制駆動力マップにおいて、設定された目標加速度TG、この実施例では制限された設定された目標加速度TGおよび自車両の質量mに対応して設定されている要求性駆動力F(要求)を選択する。従って、この発明にかかる車両走行制御装置1では、目標加速度、この実施例では制限された設定された目標加速度TGから要求制駆動力F(要求)を算出する際の負荷を低減することができる。
次に、制御装置2の要求制駆動力算出部24は、上記算出された要求制駆動力F(要求)を発生させる要求制駆動力発生手段を選択し、算出された要求制駆動力を発生する(ステップST10)。ここでは、要求制駆動力算出部24は、制動力を発生するブレーキ装置10、図示しないエンジンに制動力あるいは駆動力を発生させるスロットル装置11、このエンジンが発生する制動力あるいは駆動力を調整する変速装置12の少なくともいずれか1つから、この算出された要求制駆動力F(要求)を現在の自車両の走行状態において発生することができる装置を選択する。そして、この選択された要求制駆動力発生手段、すなわちブレーキ装置10、エンジンは、上記算出された要求制駆動力を発生する。ここでは、制御装置2の要求制駆動力算出部24は、選択した要求制駆動力発生手段が算出した要求制駆動力を発生できるように、この選択した要求制駆動力発生手段に制御信号を出力することで、この選択された制駆動力発生手段を制御する。
以上ように、上記車両走行制御装置1では、外乱抵抗力F(外乱)を除いた要求制駆動力F(要求)と、取得された実加速度Rgと、推定制駆動力(全閉時推定制駆動力F(下限))と、車両の質量mとに基づいた式(上記式(5))によって、推定制駆動力(全閉時推定制駆動力F(下限))を図示しない自車両に発生させた際に得られる実加速度(全閉時予測実加速度FG)を予測することができる。
また、ACCなど車両の走行制御状態に応じて目標加速度を設定する車両走行制御装置1において、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力(全閉時推定制駆動力F(下限))を自車両に発生させた際の予測実加速度(全閉時予測実加速度FG)を用いた制御を行うことができる。これにより、車両走行制御装置1は、自車両に全閉時予測実加速度FGよりも小さい加速度、すなわち大きい減速度を作用させる場合、不許可目標加速度NGが許可目標加速度OGよりも小さくても、この許可目標加速度OGに基づいて要求駆動力F(要求)算出され、ブレーキ装置10が制動力を発生することができる。
なお、上記実施例における車両走行制御装置1では、図示しない自車両の走行状態に応じて推定される推定制駆動力を自車両に発生させた際の実加速度を予測するがこの発明はこれに限定されるものではない。例えば、自車両に目標とする実加速度を作用させることができる予測制駆動力を算出し、予測しても良い。
この場合、車両走行制御装置は、要求制駆動力を車両に発生させる要求制駆動力発生手段と、前記要求制駆動力を前記車両に発生させた際に得られる実加速度を取得する実加速度取得手段と、前記要求制駆動力と、前記取得された実加速度と、前記車両に作用させる目標実加速度と、当該車両の質量とに基づいて、当該目標実加速度を当該車両に作用させることができる目標制駆動力を予測する目標制駆動力予測手段とを備える。