以下、図面を参照して、本発明に係る暗視装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る暗視装置を、車両に搭載される近赤外線暗視装置に適用する。本実施の形態に係る近赤外線暗視装置は、車両前方に近赤外線(近赤外光)を照射する近赤外線照射装置及びその反射した近赤外線により撮影する近赤外線暗視カメラを備えている。特に、本実施の形態に係る近赤外線暗視装置では、対向車両に搭載された近赤外線暗視装置から照射される近赤外線の影響によるハレーションを動的に軽減する。本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態が近赤外線照射装置を2種類の波長特性の異なる近赤外線LED[light Emitting diode]で構成し、近赤外線暗視カメラに2個の波長特性の異なるバンドパスフィルタを備える形態であり、第2の実施の形態が近赤外線照射装置に2個の波長特性の異なるバンドパスフィルタを備え、近赤外線暗視カメラに2個の波長特性の異なるバンドパスフィルタを備える形態であり、第3の実施の形態が近赤外線暗視カメラを光軸方向が異なる12個の近赤外線LEDで構成し、近赤外線を利用した通信機能を有する構成である。
図1〜図3を参照して、第1の実施の形態に係る近赤外線暗視装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る近赤外線暗視装置の構成図である。図2は、図1の近赤外線照射装置の各近赤外線LEDの発光波長帯域を示す図である。図3は、図1の近赤外線暗視カメラの構成図である。
近赤外線暗視装置1は、車両の前方に近赤外線を照射し、物体に当たって反射してくる近赤外線によって撮影した暗視映像を運転者に提供する。特に、近赤外線暗視装置1では、前方から照射された近赤外線(例えば、対向車両FVに搭載された近赤外線暗視装置から照射された近赤外線)によるハレーションを動的に軽減するために、暗視撮影に用いる近赤外線の波長帯域を切り替える。そのために、近赤外線暗視装置1は、近赤外線照射装置2、近赤外線暗視カメラ3、モニタ4及び制御装置5を備えている。
なお、第1の実施の形態では近赤外線暗視装置1が特許請求の範囲に記載する暗視装置に相当し、近赤外線照射装置2の各近赤外線LED11,12が半導体発光素子に相当し、近赤外線暗視カメラ3が特許請求の範囲に記載する撮影手段に相当し、近赤外線暗視カメラ3の各バンドパスフィルタ17,18が特許請求の範囲に記載する撮影側通過手段に相当し、制御装置5が特許請求の範囲に記載する制御手段に相当する。
近赤外線照射装置2は、フロントバンパの中央に取り付けられ、車両の前方に特定の波長帯域の近赤外線を照射する。近赤外線照射装置2は、第1近赤外線LED11と第2近赤外線LED12を6個づつ備えている。第1近赤外線LED11から発光される近赤外線と第2近赤外線LED12から発光される近赤外線とは、近赤外線暗視カメラ3に感度のある波長領域に異なる狭帯域スペクトルR1と狭帯域スペクトルR2をそれぞれ有し、異なる波長にピーク値をそれぞれ持っている(図2参照)。第1近赤外線LED11,・・・と第2近赤外線LED12,・・・とは、上下2段にそれぞれ配置され、上段と下段にそれぞれ3個づつ交互に配置されている。第1近赤外線LED11,・・・は光軸方向がそれぞれ異なる方向に設定され、6個の第1近赤外線LED11,・・・全部で車両の前方全体を照射できるように設定されている。同様に、第2近赤外線LED12,・・・も光軸方向がそれぞれ異なる方向に設定され、6個の第2近赤外線LED12,・・・全部で車両の前方全体を照射するように設定されている。
近赤外線照射装置2では、制御装置5からLED制御信号を受信し、LED制御信号に応じて第1近赤外線LED11,・・・と第2近赤外線LED12,・・・を点灯/消灯する。具体的には、近赤外線照射装置2では、LED制御信号に第1近赤外線LEDを点灯と示されている場合、6個の第1近赤外線LED11,・・・を全て点灯し、6個の第2近赤外線LED12,・・・を全て消灯する。この場合、符号2Aで示す近赤外線照射装置のように、6個の第1近赤外線LED11,・・・だけが点灯し、第1近赤外線LED11の波長帯域の近赤外線だけを照射する。近赤外線照射装置2では、LED制御信号に第2近赤外線LEDを点灯と示されている場合、6個の第2近赤外線LED12,・・・を全て点灯し、6個の第1近赤外線LED11,・・・を全て消灯する。この場合、符号2Bで示す近赤外線照射装置のように、6個の第2近赤外線LED12,・・・だけが点灯し、第2近赤外線LED12の波長帯域の近赤外線だけを照射する。近赤外線照射装置2では、LED制御信号に消灯と示されている場合、6個の第1近赤外線LED11,・・・及び6個の第2近赤外線LED12,・・・を全て消灯する。
近赤外線暗視カメラ3は、ルームミラーの裏側(車両前方側)に取り付けられ、入射した近赤外線によって撮影する。近赤外線暗視カメラ3は、レンズ部13、波長帯域切替部14、CCD[Charge Coupled Device]15及び信号処理回路16などを備えている。レンズ部13は、近赤外線などの光を集光し、ズームや自動焦点調整などが可能である。波長帯域切替部14は、第1バンドパスフィルタ17、第2バンドパスフィルタ18及びモータ19などを備えている。第1バンドパスフィルタ17と第2バンドパスフィルタ18とは、光学フィルタであり、近赤外線暗視カメラ3に感度のある波長領域にそれぞれ異なる狭い透過可能な波長帯域を有している。第1バンドパスフィルタ17の透過可能な波長帯域は、第1近赤外線LED11の波長帯域と略同じ帯域である。第2バンドパスフィルタ18の透過可能な波長帯域は、第2近赤外線LED12の波長帯域と略同じ帯域である。第1バンドパスフィルタ17と第2バンドパスフィルタ18とは、レンズ部13とCCD15との間にレンズ部13で集光された光の進行方向に対して直交する方向に並べて配置され、その直交する方向に沿って移動自在に設けられる。モータ19は、第1バンドパスフィルタ17と第2バンドパスフィルタ18とをその直交方向に沿って移動させるための駆動源である。CCD15は、レンズ部13で集光された光の進行方向上に配置され、レンズ部13で集光された光(特に、近赤外線)のうち第1バンドパスフィルタ17又は第2バンドパスフィルタ18を透過した波長帯域の光を電気信号に変換する。信号処理回路16は、CCD15からの画素毎のデータに各種信号処理を施し、暗視映像の画像データを映像信号としてモニタ4及び制御装置5に送信する。
近赤外線暗視カメラ3では、制御装置5からカメラ側フィルタ切替信号を受信し、カメラ側フィルタ切替信号に応じて第1バンドパスフィルタ17と第2バンドパスフィルタ18とを切り替える。具体的には、近赤外線暗視カメラ3では、カメラ側フィルタ切替信号に第1バンドパスフィルタと示されている場合、第1バンドパスフィルタ17がレンズ部13とCCD15との間に配置するようにモータ19を回転駆動させ、2つのバンドパスフィルタ17,18を移動させる。近赤外線暗視カメラ3では、カメラ側フィルタ切替信号に第2バンドパスフィルタと示されている場合、第2バンドパスフィルタ18がレンズ部13とCCD15との間に配置するようにモータ19を回転駆動させ、2つのバンドパスフィルタ17,18を移動させる。また、近赤外線暗視カメラ3では、制御装置5からカメラ制御信号を受信し、カメラ制御信号に応じてズームなどを行う。
モニタ4は、車室内の運転者が視認可能な位置に取り付けられ、各種映像を表示する。モニタ4は、液晶モニタであり、近赤外線暗視カメラ3から映像信号を受信し、暗視映像を表示する。なお、モニタ4は、近赤外線暗視装置1の専用のモニタでもよいが、テレビやナビゲーションなどの他のシステムと共用されるモニタでもよい。
制御装置5は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、近赤外線暗視装置1を統括制御する。制御装置5では、近赤外線暗視装置1が起動されている場合、近赤外線暗視カメラ3からの映像信号を取り入れ、暗視映像に基づいて近赤外線照射装置2及び近赤外線暗視カメラ3で用いる近赤外線の波長帯域を切り替える制御を行う。また、制御装置5では、運転者からの指令などに基づいて様々な暗視映像を取得するために近赤外線暗視カメラ3に対する制御を行う。
制御装置5では、近赤外線暗視装置1が起動されると、LED制御信号にデフォルトの近赤外線LED(例えば、第1近赤外線LED)を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置2に送信するとともに、カメラ側フィルタ切替信号にデフォルトのバンドパスフィルタ(例えば、第1バンドパスフィルタ)を設定し、そのカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する。このデフォルトの近赤外線LEDとバンドパスフィルタとは、対応する波長帯域特性を有する。なお、近赤外線暗視装置1が起動時には、デフォルトの近赤外線LED、バンドパスフィルタではなく、近赤外線暗視装置1が前回停止したときの近赤外線LEDとバンドパスフィルタのままでもよい。
制御装置5では、暗視映像の全画素からハレーションが発生していると推測できる画素を抽出し、その画素数を計測する。この計測された画素数をハレーションサイズとする。ハレーションが発生しているか否かの推測方法としては、ハレーションが発生している場合には暗視映像が真っ白になるので(つまり、各画素が高輝度となるので)、例えば、各画素の輝度値の階調(0〜255など)に応じて閾値を設定し、輝度値が閾値以上の画素をハレーションが発生している画素と判断する。図4(a)に示すように、大きなハレーションが発生している場合、暗視映像において高い輝度からなる白い部分が大きな領域を占め、高輝度の画素が非常に多くなる(つまり、ハレーションサイズが大きくなる)。このようにハレーションが発生すると、その高輝度の領域によって暗視映像から前方の人などを認知ができなくなる。一方、図4(b)に示すように、ハレーションが軽減された場合、暗視映像において高い輝度からなる白い部分が小さく、高輝度の画素が非常に少なくなる。このようにハレーションが軽減すると、暗視映像から前方の人などを認知することができる。
そして、制御装置5では、ハレーションサイズが閾値より大きいか否かを判定する。閾値は、暗視映像として物体を認知するために支障をきたす大きさのハレーションか否かを判断するための閾値(画素数)であり、暗視映像全体の画素数などを考慮して予め実験などによって設定される。ハレーションサイズが閾値より大きいと判定した場合、制御装置5では、LED制御信号に現在点灯中の近赤外線LEDとは異なる他方の近赤外線LEDを設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置2に送信するとともに、カメラ側フィルタ切替信号に現在使用中のバンドパスフィルタとは異なる他方のバンドパスフィルタを設定し、そのカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する。これによって、近赤外線LEDとバンドパスフィルタは、それぞれ切り替わり、対応する波長帯域特性を有する。一方、ハレーションサイズが閾値以下と判定した場合、LED制御信号、カメラ側フィルタ切替信号は共に送信されない。
制御装置5では、近赤外線暗視装置1が停止されると、LED制御信号に消灯を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置2に送信する。この際、カメラ側フィルタ切替信号は送信されない。
また、制御装置5では、運転者から暗視映像に対するズームなどの指令が入力された場合、カメラ制御信号にその指令を設定し、そのカメラ制御信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する。
図1〜図3を参照して、近赤外線暗視装置1の動作について説明する。特に、制御装置5における制御について図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、図1の制御装置における制御の流れを示すフローチャートである。
運転者が近赤外線暗視装置1を起動する。すると、制御装置5では、デフォルトの近赤外線LEDを設定したLED制御信号を近赤外線照射装置2に送信するとともに、デフォルトのバンドパスフィルタを設定したカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する。すると、近赤外線照射装置2では、LED制御信号に設定されているデフォルトの近赤外線LEDを点灯し、その点灯させた近赤外線LEDが発光する波長帯域の近赤外線を車両前方に照射する。また、近赤外線暗視カメラ3では、カメラ側フィルタ切替信号に設定されているデフォルトのバンドパスフィルタに切り替えるためにモータ19を駆動する。ちなみに、前回停止したときにそのデフォルトのバンドパスフィルタになっていた場合、モータ19は駆動されることはなく、切り替えは行われない。近赤外線暗視カメラ3では、レンズ部13で集光した光のうちデフォルトのバンドパスフィルタで透過可能な波長帯域の近赤外線だけを透過する。この透過する波長帯域は、近赤外線照射装置2から照射されている近赤外線と略同じ帯域である。さらに、近赤外線暗視カメラ3では、その透過した波長帯域の近赤外線をCCD15で電気信号に変換し、信号処理回路16で暗視映像を表示するための映像信号を生成し、その映像信号をモニタ4及び制御装置5に送信する。モニタ4では、その映像信号に応じた暗視映像を表示する。
制御装置5では、映像信号を受信すると、その暗視映像内のハレーションレベルを自動計測する(S10)。そして、制御装置5では、ハレーションレベルが閾値より大きいか否かを判定する(S11)。S11にて閾値以下と判定した場合、制御装置5では、S10に戻って、次の暗視映像におけるハレーションサイズを計測する。この場合、近赤外線暗視装置1で使用している近赤外線の波長帯域と同じ波長帯域の近赤外線が前方から照射されていないので、大きなハレーションは発生しておらず、モニタ4に表示される暗視映像によって歩行者WMなどを十分に認知することが可能である。
S11にて閾値より大きいと判定した場合、近赤外線暗視装置1で使用している近赤外線の波長帯域と同じ波長帯域の近赤外線(例えば、対向車両FVに搭載されている同様の近赤外線暗視装置から照射されている同じ波長帯域の近赤外線)が前方から照射されているので、大きなハレーションが発生している。そこで、制御装置5では、現在点灯中の近赤外線LEDとは異なる他方の近赤外線LEDをLED制御信号に設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置2に送信する(S12)。すると、近赤外線照射装置2では、LED制御信号に設定されている近赤外線LEDを点灯するとともに点灯していた近赤外線LEDを消灯し、その点灯させた近赤外線LEDが発光する波長帯域の近赤外線を車両前方に照射する。さらに、制御装置5では、現在使用中のバンドパスフィルタとは異なる他方のバンドパスフィルタをカメラ側フィルタ切替信号に設定し、そのカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する(S13)。すると、近赤外線暗視カメラ3では、カメラ側フィルタ切替信号に設定されているバンドパスフィルタに切り替えるためにモータ19を駆動し、バンドパスフィルタを切り替える。近赤外線暗視カメラ3では、レンズ部13で集光した光のうち切り替えたバンドパスフィルタで透過可能な波長帯域の近赤外線だけを透過する。この透過する波長帯域は、近赤外線照射装置2から照射されている近赤外線と略同じ帯域である。さらに、近赤外線暗視カメラ3では、上記と同様に、その透過した近赤外線から映像信号を生成し、その映像信号をモニタ4及び制御装置5に送信する。モニタ4では、その映像信号に応じた暗視映像を表示する。これによって、近赤外線暗視装置1で使用する近赤外線の波長帯域が前方から照射されている近赤外線の波長帯域と異なる帯域となるので、このモニタ4に表示される暗視映像では、ハレーションが大幅に軽減され、歩行者WMなどを十分に認知することが可能となる。
この近赤外線暗視装置1によれば、暗視撮影に用いる近赤外線の波長帯域を切り替えることができるので、前方から同じ波長帯域の近赤外線が照射された場合でも動的にハレーションを軽減することができる。そのため、品質の高い暗視映像を運転者に常に提供でき、夜間など暗い場合における運転者の前方状況の認知性を向上させることができる。また、近赤外線暗視装置1によれば、近赤外線による暗視撮影を行うための光源としてLEDを用いているので、消費電力を抑制できるとともに、近赤外線照射装置2側に近赤外線から特定の波長帯域を取り出すための機構を必要とせず、構成を簡単化できる。
図3及び図6を参照して、第2の実施の形態に係る近赤外線暗視装置21について説明する。図6は、第2の実施の形態に係る近赤外線暗視装置の構成図である。近赤外線暗視装置21では、第1の実施の形態に係る近赤外線暗視装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
近赤外線暗視装置21は、近赤外線暗視装置1と同様の装置であるが、近赤外線照射装置の構成及び制御装置における制御の一部が異なる。近赤外線暗視装置21では、近赤外線照射装置において光源がハロゲンランプであり、ハロゲンランプの発した近赤外光を2個のバンドパスフィルタを用いて照射する波長帯域を切り替える。近赤外線暗視装置21は、近赤外線照射装置22、近赤外線暗視カメラ3、モニタ4及び制御装置25を備えている。
なお、第2の実施の形態では近赤外線暗視装置21が特許請求の範囲に記載する暗視装置に相当し、近赤外線照射装置22のハロゲンランプが特許請求の範囲に記載する光源に相当し、近赤外線照射装置22の各バンドパスフィルタが特許請求の範囲に記載する発光側通過手段に相当し、近赤外線暗視カメラ3が特許請求の範囲に記載する撮影手段に相当し、近赤外線暗視カメラ3の各バンドパスフィルタが特許請求の範囲に記載する撮影側通過手段に相当し、制御装置25が特許請求の範囲に記載する制御手段に相当する。
近赤外線照射装置22は、フロントバンパの中央に取り付けられ、車両の前方に特定の波長帯域の近赤外線を照射する。近赤外線照射装置22は、1個のハロゲンランプ30及び波長帯域切替部31を備えている。ハロゲンランプ30は、近赤外線暗視カメラ3に感度のある波長領域の近赤外線を発するランプである。波長帯域切替部31は、第1の実施の形態に係る近赤外線暗視カメラ3の波長帯域切替部14と同様の構成であり、第1バンドパスフィルタ32、第2バンドパスフィルタ33及びモータ(図示せず)などを備えている。第1バンドパスフィルタ32と第2バンドパスフィルタ33は、光学フィルタであり、第1バンドパスフィルタ32が第1バンドパスフィルタ17と同じ透過可能な波長帯域を有し、第2バンドパスフィルタ33が第2バンドパスフィルタ18と同じ透過可能な波長帯域を有している。第1バンドパスフィルタ32と第2バンドパスフィルタ33とは、ハロゲンランプ30から発した近赤外線の進行方向に対して直交する方向に並べて配置され、その直交する方向に沿って移動自在に設けられる。モータは、第1バンドパスフィルタ32と第2バンドパスフィルタ33とをその直交方向に沿って移動させるための駆動源である。
近赤外線照射装置22では、制御装置25からの点灯信号を受信し、点灯信号に応じてハロゲンランプ30を点灯/消灯する。具体的には、近赤外線照射装置22では、点灯信号に点灯と示されている場合、ハロゲンランプ30を点灯させる。近赤外線照射装置22では、点灯信号に消灯と示されている場合、ハロゲンランプ30を消灯させる。また、近赤外線照射装置22では、制御装置25から照射側フィルタ切替信号を受信し、照射側フィルタ切替信号に応じて第1バンドパスフィルタ32と第2バンドパスフィルタ33とを切り替える。具体的には、近赤外線照射装置22では、照射側フィルタ切替信号に第1バンドパスフィルタと示されている場合、第1バンドパスフィルタ32がハロゲンランプ30から発した近赤外線の進行方向上に配置するようにモータを回転駆動させ、2つのバンドパスフィルタ32,33を移動させる。近赤外線照射装置22では、照射側フィルタ切替信号に第2バンドパスフィルタと示されている場合、第2バンドパスフィルタ33がハロゲンランプ30から発した近赤外線の進行方向上に配置するようにモータを回転駆動させ、2つのバンドパスフィルタ32,33を移動させる。
制御装置25は、第1の実施の形態に係る制御装置5と同様の装置であるが、近赤外線照射装置22に対する制御だけが異なる。ここでは、近赤外線照射装置22に対する制御だけを詳細に説明する。
制御装置25では、近赤外線暗視装置21が起動されると、点灯信号に点灯を設定するとともに照射側フィルタ切替信号にデフォルトのバンドパスフィルタ(例えば、第1バンドパスフィルタ)を設定し、その点灯信号及び照射側フィルタ切替信号を近赤外線照射装置22に送信する。なお、近赤外線暗視装置21が起動時には、デフォルトのバンドパスフィルタではなく、近赤外線暗視装置21が前回停止したときのバンドパスフィルタのままでもよい。
ハレーションサイズが閾値より大きいと判定した場合、制御装置25では、照射側フィルタ切替信号に現在使用中のバンドパスフィルタとは異なる他方のバンドパスフィルタを設定し、その照射側フィルタ切替信号を近赤外線照射装置22に送信するとともに、カメラ側フィルタ切替信号に現在使用中のバンドパスフィルタとは異なる他方のバンドパスフィルタを設定し、そのカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する。これによって、近赤外線照射装置22のバンドパスフィルタと近赤外線暗視カメラ3のバンドパスフィルタとは、それぞれ切り替わり、同じ波長帯域特性を有する。一方、ハレーションサイズが閾値以下と判定した場合、照射側フィルタ切替信号、カメラ側フィルタ切替信号は共に送信されない。
制御装置25では、近赤外線暗視装置21が停止されると、点灯信号に消灯を設定し、その点灯信号を近赤外線照射装置22に送信する。
図6を参照して、近赤外線暗視装置21の動作について説明する。特に、制御装置25における制御について図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、図6の制御装置における制御の流れを示すフローチャートである。
運転者が近赤外線暗視装置21を起動する。すると、制御装置25では、点灯を設定した点灯信号及びデフォルトのバンドパスフィルタを設定した照射側フィルタ切替信号を近赤外線照射装置22に送信するとともに、デフォルトのバンドパスフィルタを設定したカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する。すると、近赤外線照射装置22では、ハロゲンランプ30を点灯するとともにデフォルトのバンドパスフィルタに切り替え、ハロゲンランプ30から発した近赤外線のうちそのデフォルトのバンドパスフィルタを透過した波長帯域の近赤外線を車両前方に照射する。また、近赤外線暗視カメラ3では、第1の実施の形態と同様に、デフォルトのバンドパスフィルタに切り替え、そのデフォルトのバンドパスフィルタを透過した波長帯域の近赤外線によって映像信号を生成し、その映像信号をモニタ4及び制御装置25に送信する。モニタ4では、その映像信号に応じた暗視映像を表示する。
制御装置25では、映像信号を受信すると、その暗視映像内のハレーションレベルを自動計測し(S20)、ハレーションレベルが閾値より大きいか否かを判定する(S21)。S21にて閾値以下と判定した場合、制御装置25では、S20に戻って、次の暗視映像におけるハレーションサイズを計測する。
S21にて閾値より大きいと判定した場合、制御装置25では、現在使用中のバンドパスフィルタとは異なる他方のバンドパスフィルタを照射側フィルタ切替信号に設定し、その照射側フィルタ切替信号を近赤外線照射装置22に送信する(S22)。すると、近赤外線照射装置22では、照射側フィルタ切替信号に設定されているバンドパスフィルタに切り替えるためにモータを駆動し、バンドパスフィルタを切り替える。そして、近赤外線照射装置22では、ハロゲンランプ30から発した近赤外線のうちその切り替えたバンドパスフィルタを透過した波長帯域の近赤外線を車両前方に照射する。さらに、制御装置25では、現在使用中のバンドパスフィルタとは異なる他方のバンドパスフィルタをカメラ側フィルタ切替信号に設定し、そのカメラ側フィルタ切替信号を近赤外線暗視カメラ3に送信する(S23)。すると、近赤外線暗視カメラ3では、第1の実施の形態と同様に、カメラ側フィルタ切替信号に設定されているバンドパスフィルタに切り替え、その切り替えたバンドパスフィルタを透過した波長帯域の近赤外線によって映像信号を生成し、その映像信号をモニタ4及び制御装置25に送信する。モニタ4では、その映像信号に応じた暗視映像を表示する。これによって、近赤外線暗視装置21で使用する近赤外線の波長帯域が前方から照射されている近赤外線の波長帯域と異なる帯域となるので、このモニタ4に表示される暗視映像では、ハレーションが大幅に軽減され、歩行者WMなどを十分に認知することが可能となる。
この近赤外線暗視装置21によれば、暗視撮影に用いる近赤外線の波長帯域を切り替えることができるので、前方から同じ波長帯域の近赤外線が照射された場合でも動的にハレーションを軽減することができる。
図8及び図9を参照して、第3の実施の形態に係る近赤外線暗視装置41について説明する。図8は、第3の実施の形態に係る近赤外線暗視装置の構成図である。図9は、図8の近赤外線照射装置の近赤外線LEDの応答性を示す図である。なお、近赤外線暗視装置41では、第1の実施の形態に係る近赤外線暗視装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
近赤外線暗視装置41は、車両の前方に近赤外線を照射し、物体に当たって反射してくる近赤外線によって撮影した暗視映像を運転者に提供する。特に、近赤外線暗視装置41では、対向車両FVに搭載の近赤外線暗視装置から照射された近赤外線によるハレーションを動的に軽減するために、対向車両FVに搭載の近赤外線暗視装置との間で近赤外線による車車間通信を行い、その通信によって得られた情報に基づいて照射する近赤外線の光軸方向を変化させる。そのために、近赤外線暗視装置41は、近赤外線照射装置42、近赤外線暗視カメラ43、近赤外線センサ46、モニタ4及び制御装置45を備えている。
なお、第3の実施の形態では近赤外線暗視装置41が特許請求の範囲に記載する暗視装置に相当し、近赤外線照射装置42の近赤外線LEDが暗視用半導体発光素子及び通信用半導体発光素子に相当し、近赤外線暗視カメラ43が特許請求の範囲に記載する撮影手段に相当し、近赤外線センサ46が特許請求の範囲に記載する赤外線検出手段に相当し、制御装置45が特許請求の範囲に記載する制御手段に相当する。
近赤外線照射装置42は、フロントバンパの中央に取り付けられ、車両の前方に近赤外線を照射する。近赤外線照射装置42は、12個の近赤外線LED50,・・・を備えている。近赤外線LED50,・・・から発光される近赤外線は、近赤外線暗視カメラ43に感度のある波長領域に特定の狭帯域スペクトルを有し、波長にピーク値を持っている。近赤外線LED50は、上下2段に配置され、上段と下段に6個づつ配置されている。近赤外線LED50,・・・は光軸方向がそれぞれ異なる方向に設定され、12個の近赤外線LED50,・・・全部で車両の前方全体を照射できるように設定されている。したがって、近赤外線照射装置42では、12個の近赤外線LED50,・・・のうちある部分の近赤外線LEDだけを点灯させることにより、車両の前方の特定の方向にだけ近赤外線を照射することできる(つまり、近赤外線を照射する配光方向を変えることができる)。例えば、12個の近赤外線LED50,・・・のうち左端側の上下2個づつの計4個の近赤外線LEDだけを点灯させることにより、路側(歩道側)の方向にだけ近赤外線を照射することができる。また、12個の近赤外線LED50,・・・のうち中央の上下2個づつの計4個の近赤外線LEDだけを点灯させることにより、車両正面の方向にだけ近赤外線を照射することができる。
近赤外線照射装置42では、制御装置45からLED制御信号を受信し、LED制御信号に応じて12個の近赤外線LED50,・・・をそれぞれ点灯/消灯する。LED制御信号には、12個の近赤外線LED50,・・・個々の点灯/消灯の情報が示されている。具体的には、近赤外線照射装置42では、LED制御信号に全ての近赤外線LEDについて点灯と示されている場合、12個の近赤外線LED50,・・・を全て点灯する。近赤外線照射装置42では、LED制御信号に全ての近赤外線LEDについて消灯と示されている場合、12個の近赤外線LED50,・・・を全て消灯する。近赤外線照射装置42では、LED制御信号に一部の近赤外線LEDについて点灯、それ以外の近赤外線LEDを消灯と示されている場合、その一部の近赤外線LED50,・・・を点灯するとともに、それ以外の近赤外線LED50,・・・を消灯する。
また、近赤外線LED50は応答性に特に優れるLEDであり、近赤外線LED50を極短時間で点灯(オン)することによって矩形波形を生成することができる。図9には、極短時間の点灯を繰り返し行ったときの近赤外線LED50の応答性(実線)及びハロゲンランプの応答性(破線)を示しており、近赤外線LED50の場合には立ち上がり及び立ち下りが鋭敏な矩形波形となっている。そのため、近赤外線LED50による近赤外線の照射において、矩形波形の数や幅などを利用したヘッダ情報を組み込むことができる。
近赤外線暗視カメラ43は、ルームミラーの裏側に取り付けられ、入射した近赤外線によって撮影する。近赤外線暗視カメラ43は、図示しないレンズ部、バンドパスフィルタ、CCD及び信号処理回路などを備えている。レンズ部、CCD、信号処理回路については、第1の実施の形態に係る近赤外線暗視カメラ3のものと同様のものである。バンドパスフィルタは、近赤外線暗視カメラ3に感度のある波長領域に狭い透過可能な波長帯域を有し、その透過可能な波長帯域が近赤外線LED50の波長帯域と略同じ帯域である。近赤外線暗視カメラ43は、レンズ部で集光された光のうちバンドパスフィルタを透過した波長帯域の光をCCDで電気信号に変換する。
近赤外線センサ46は、車両前方に取り付けられ、車両前方からの近赤外線を検出するセンサである。近赤外線センサ46では、近赤外線を検出した場合、その検出した近赤外線を電気信号に変換し、その電気信号を近赤外線信号として制御装置45に送信する。
制御装置45は、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットであり、近赤外線暗視装置41を統括制御する。制御装置45では、近赤外線暗視装置41が起動されている場合、近赤外線センサ46からの近赤外線信号を取り入れるとともに近赤外線LED50からの近赤外線照射にヘッド情報を組み込むことにより対向車両FVに搭載されている近赤外線暗視装置との間に車車間通信を行い、その通信によって取得した情報に基づいて近赤外線照射装置42の光軸方向を変更させる(つまり、近赤外線の照射方向を変化させる)。また、制御装置45では、第1の実施の形態と同様に、運転者からの指令などに基づいて様々な暗視映像を取得するために近赤外線暗視カメラ43に対する制御を行う。
制御装置45では、近赤外線暗視装置41が起動されると、LED制御信号に全ての近赤外線LEDの点灯あるいは車両正面方向に近赤外線を照射する近赤外線LEDの点灯とそれ以外の近赤外線LEDの消灯を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。
また、制御装置45では、一定時間毎に、照射している近赤外線にヘッダ情報を付加するためのLED制御信号を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。ヘッダ情報は、同一の近赤外線暗視装置であることを示す情報であり、例えば、第1所定時間オンする矩形波形を発生させ、更に、第2所定時間(<第1所定時間)オンする矩形波形を発生させる(図9参照)。この例の場合、まず、全ての近赤外線LEDを消灯と設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信し、次に、全てあるいは一部の近赤外線LEDを点灯と設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信し、第1所定経過後に、全ての近赤外線LEDを消灯と設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信し、短時間経過後に、全てあるいは一部の近赤外線LEDを点灯と設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信し、第2所定時間経過後に、全ての近赤外線LEDを消灯と設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信し、短時間経過後に、全てあるいは一部の近赤外線LEDを点灯と設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。ちなみに、他の車両に搭載されている同一の近赤外線暗視装置でも、照射する近赤外線に同じヘッダ情報を付加している。
また、制御装置45では、近赤外線センサ46からの近赤外線信号を取得する毎に、その近赤外線信号に示される近赤外線に同一のヘッダ情報が付加されているか否か(つまり、対向車両に同一の近赤外線暗視装置が搭載されているか否か)を判定する。対向車両が同一の近赤外線暗視装置を搭載している場合、同じ波長帯域の近赤外線を照射しているので、照射する近赤外線の光軸方向が互いに対向する車両に向いていると、対向する車両で共に大きなハレーションが発生する(図10参照)。そこで、前方からの受けた近赤外線に同一のヘッダ情報が付加されている場合、制御装置45では、LED制御信号に路側方向に光軸方向が向いている近赤外線LED(例えば、12個の近赤外線LEDのうち左端側の上下2個づつの計4個の近赤外線LED)に点灯、それ以外の近赤外線LEDに消灯を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。これによって、近赤外線照射装置42の近赤外線LEDの光軸方向が変わり、近赤外線が路側方向D1にのみ照射される(図10参照)。また、対向車両でも、近赤外線照射装置の近赤外線LEDの光軸方向が変わり、近赤外線が路側方向D2にのみ照射される(図10参照)。
路側に光軸方向が向いている近赤外線LEDを点灯している場合、制御装置45では、近赤外線センサ46からの近赤外線信号を取得できるか否かを判定する。近赤外線信号を取得できている間、近赤外線センサ46では前方からの近赤外線を検出しており、近赤外線暗視装置を搭載した対向車両が前方に存在すると推測できる。しかし、近赤外線信号を取得できなくなったときには、近赤外線センサ46では前方からの近赤外線を検出できなくなっており、近赤外線照射装置を搭載した対向車両が通過したと推測できる。この場合、通常の暗視撮影に戻しても、ハレーションが大きくなることはない。そこで、近赤外線センサ46からの近赤外線信号を取得できなくなった場合、制御装置45では、LED制御信号に全ての近赤外線LEDの点灯あるいは車両正面方向に近赤外線を照射する近赤外線LEDの点灯とそれ以外の近赤外線LEDの消灯を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。
制御装置45では、近赤外線暗視装置41が停止されると、LED制御信号に全ての近赤外線LEDの消灯を設定し、そのLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。
図8及び図9を参照して、近赤外線暗視装置41の動作について説明する。特に、制御装置45における制御について図11のフローチャートに沿って説明する。図11は、図8の制御装置における制御の流れを示すフローチャートである。
運転者が近赤外線暗視装置41を起動する。すると、制御装置45では、車両正面方向に光軸方向を有する近赤外線LEDの点灯及びそれ以外の近赤外線LEDの消灯を設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する。すると、近赤外線照射装置42では、車両正面方向に光軸方向を有する近赤外線LED50,・・・を点灯し、その点灯した近赤外線LED50,・・・から発した近赤外線を車両前方に照射する。また、近赤外線暗視カメラ43では、レンズ部で集光された光のうちバンドパスフィルタを透過した波長帯域の近赤外線によって映像信号を生成し、その映像信号をモニタ4及び制御装置45に送信する。モニタ4では、その映像信号に応じた暗視映像を表示する。
近赤外線センサ46では、近赤外線を検出した場合、その近赤外線を電気信号に変換して近赤外線信号として制御装置45に送信する。
制御装置45では、近赤外線センサ46からの近赤外線信号を受信すると(S30)、その近赤外線信号に示される近赤外線から対向車両に同一の近赤外線暗視装置が搭載されているか否かを判定する(S31)。S31にて同一の近赤外線暗視装置が搭載されていないと判定した場合、制御装置45では、S30に戻って、次の近赤外線センサ46からの近赤外線信号を待つ。
S31にて同一の近赤外線暗視装置が搭載されていると判定した場合、制御装置45では、路側方向に光軸方向を有する近赤外線LEDの点灯及びそれ以外の近赤外線LEDの消灯を設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する(S32)。すると、近赤外線照射装置42では、路側方向に光軸方向を有する近赤外線LED50,・・・を点灯するとともに、それ以外の近赤外線LED50,・・・を消灯し、その点灯させた近赤外線LEDの光軸方向に(つまり、路側方向に)近赤外線を照射する。この際、対向車両FVでも、近赤外線暗視装置の近赤外線照射装置から路側方向に近赤外線が照射されている。これによって、自車両と対向車両FVとでは、同じ波長帯域の近赤外線を照射しているが、その照射する方向が路側方向である。そのため、近赤外線暗視カメラ43には対向車両FVからの近赤外線が全くあるいは殆ど入らないので、モニタ4に表示される暗視映像では、ハレーションが大幅に軽減され、歩行者WMなどを十分に認知することが可能である。
近赤外線LEDの光軸方向を変更後、制御装置45では、近赤外線センサ46からの近赤外線信号を受信できるか否かを判定する(S33)。S33にて近赤外信号を継続して受信できると判定した場合、制御装置45では、S33の判定を続ける。S33にて近赤外信号を受信できないと判定した場合、近赤外線センサ46では前方からの近赤外線を検出できなくなっている。そこで、同一の近赤外線暗視装置を搭載した対向車両FVが通過したと判断し、制御装置45では、車両正面方向に光軸方向を有する近赤外線LEDの点灯及びそれ以外の近赤外線LEDの消灯を設定したLED制御信号を近赤外線照射装置42に送信する(S34)。すると、近赤外線照射装置42では、車両正面方向に光軸方向を有する近赤外線LED50,・・・を点灯するとともに、それ以外の近赤外線LED50,・・・を消灯し、その点灯させた近赤外線LEDの光軸方向に(つまり、車両正面方向に)近赤外線を照射する。これによって、通常の暗視撮影に戻る。
この近赤外線暗視装置41によれば、近赤外線を利用した車車間通信により対向車両の近赤外線暗視装置に関する情報を取得できるので、対向車両から同じ波長帯域の近赤外線が照射された場合でも動的にハレーションを軽減することができる。また、近赤外線暗視装置41によれば、近赤外線による暗視を行うための光源としてLEDを用いているので、消費電力を抑制できる。さらに、近赤外線暗視装置41によれば、暗視用と通信用とで共通の近赤外線LED50を用いるので、構成を簡単化できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では暗視撮影に用いる赤外光の波長領域を近赤外域とし、暗視カメラで撮影した暗視映像をモニタにそのまま表示する近赤外線暗視装置に適用したが、近赤外域以外の赤外光としてもよいし、あるいは、ナンバ読取装置などの他の車載装置や車載装置以外の装置に適用してもよい。
また、第1の実施の形態では暗視映像を利用してハレーションを検出する構成としたが、同様の暗視装置を搭載する対向車両との間で近赤外線を利用した車車通信を行い、その通信した情報から対向車両の照射波長帯域を認識する構成としてもよい。近赤外線を利用した通信方法としては、例えば、第3の実施の形態での通信方法を用いる。
また、第1の実施の形態では波長帯域の異なる6個づつの近赤外線LEDで近赤外線照射装置を構成したが、6個に限定するものでなく、他の個数の近赤外線LEDで近赤外線照射装置を構成してもよい。
また、第2の実施の形態では光源としてハロゲンランプとしたが、ハロゲンランプ以外の他の光源としてもよい。
また、第1の実施の形態、第2の実施の形態では2つの異なる波長帯域に対応した近赤外線照射装置、近赤外線暗視カメラを構成し、2つの波長帯域を切り替えてハレーションを軽減したが、3つ以上の異なる波長帯域に対応した近赤外線照射装置、近赤外線暗視カメラを構成し、3つ以上の波長帯域を切り替えるようにしてもよい。
また、第1の実施の形態、第2の実施の形態では暗視映像を利用してハレーションを検出する構成としたが、暗視カメラに入力される光の強度を利用してハレーションを検出するなどの他の方法によりハレーションを検出してもよい。
また、第3の実施の形態では12個の近赤外線LEDで近赤外線照射装置を構成したが、12個に限定するものでなく、他の個数の近赤外線LEDで近赤外線照射装置を構成してもよい。
また、第3の実施の形態では暗視用半導体発光素子と通信用半導体発光素子として共通のLEDを利用し、暗視用と通信用とで同じ波長帯域の近赤外線を用いる構成としたが、暗視用半導体発光素子と通信用半導体発光素子とで異なるLEDを利用してもよいし、暗視用と通信用とで同じ異なる波長帯域の赤外線を用いてもよい。
また、第3の実施の形態ではLEDによる近赤外線の照射において付加するヘッダ情報として同一の近赤外線暗視装置であることを示す情報としたが、ヘッダ情報として他の情報を設定してもよく、例えば、ヘッダ情報としてLEDの光軸方向を示す情報としてもよいし、複数の異なる波長帯域の近赤外線によって暗視撮影を行うことができる近赤外線暗視装置の場合にはヘッダ情報として現在使用中の波長帯域を示す情報としてもよい。
また、第3の実施の形態ではLEDによる近赤外線の照射においてヘッダ情報を付加し、近赤外線センサで対向車両からのヘッダ情報を付加した近赤外線を受光することにより対向車両と通信を行う構成としたが、LEDが発した近赤外線を変調し、各種情報を付加した変調光を照射するとともに近赤外線センサで対向車両からの近赤外線の変調光を受光することにより対向車両と通信を行うようにしてもよい。変調光を用いる場合、ヘッド情報を用いる場合より多くの情報を付加することができる。
また、第3の実施の形態では対向車両と異なる方向に照射する近赤外線の光軸方向を変えることによってハレーションを軽減する構成としたが、暗視撮影に用いる近赤外線の波長帯域を対向車両で用いる波長帯域と異なる波長帯域に変えることによってハレーションを軽減するようにしてもよい。
また、第3の実施の形態では光軸方向が異なる複数個のLEDを配列させた近赤外線照射装置を構成し、所定の光軸方向のLEDのみを点灯させることによって光軸を変化させたが、近赤外線照射装置全体の向きを変えるなどの他の方法により光軸を変化させてもよい。
1,21,41…近赤外線暗視装置、2,22,42…近赤外線照射装置、3,43…近赤外線暗視カメラ、4…モニタ、5,25,45…制御装置、11…第1近赤外線LED、12…第2近赤外線LED、13…レンズ部、14,31…波長帯域切替部、15…CCD、16…信号処理回路、17,32…第1バンドパスフィルタ、18,33…第2バンドパスフィルタ、19…モータ、30…ハロゲンランプ、46…近赤外線センサ、50…近赤外線LED