JP4990513B2 - 睡眠障害マーカーおよび睡眠障害治療剤 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、睡眠障害マーカーであるトランスサイレチン(TTR)遺伝子に関し、詳細には、睡眠障害の検出手段、睡眠障害の検出方法および検出キット、並びに睡眠障害治療剤に関する。
現在、日本人の5人に1人は何らかの睡眠障害を持つといわれている。睡眠障害の原因は様々であるが、ストレスが大きな原因の一つである。
睡眠は生体にとって重要な役割を持つため、睡眠を奪われると我々の脳や体には様々な弊害がもたらされる。例えば、睡眠時無呼吸症候群による睡眠障害は、昼間の眠気や注意力低下を引き起こす。また、一晩の徹夜であれば、強い眠気と高揚した気分を引き起こす程度であるが、この睡眠不足の状態が続くと、次第に抑うつ状態となり、幻覚・妄想などを知覚するようになることが知られている。さらに、睡眠は、昼間に取り入れた記憶の固定にも重要な役割を演じていることも分かってきている。このように、睡眠は脳の高次機能と密接な関連性を有する。
これまで、断眠ストレスによる脳内遺伝子の発現変化について、神経栄養因子やヒートショックタンパク質(HSP)など、神経可塑的変化・ストレス反応に関連する遺伝子の変動が報告されている(Terao, A., Steininger, T.L., (2003) Neuroscience 116: 187-200. (非特許文献1)Cirelli, C., Tononi, G. (2000) Brain Res. 885: 303-321.)。
ところで、トランスサイレチンは甲状腺ホルモンの脳内へのトランスポーターであり、脳神経系の発達過程や最近では情動などとの関連性も報告されている(Sousa, J.C., Grandela, C., Fernandez-Ruiz, J., de Miguel, R., de Sousa, L., Magalhaes, A.I., Saraiva, M.J., Sousa, N., Palha, L.A. (2004) J. Neurochem. 88: 1052-1058.(非特許文献2))。また、アルツハイマー病との関連についての報告もなされている。アルツハイマー病は、脳内の異常タンパク質(βアミロイド)の蓄積が原因であるが、トランスサイレチンはこの異常タンパク質の処理役として注目されている。しかし、トランスサイレチンと睡眠不足や睡眠障害との関係についての報告は一切されていない。
また、ゲラニルゲラニルアセトン(GGA)は、胃炎、胃潰瘍、炎症性腸疾患の治療剤であることが知られている(WO2005/002558号公報(特許文献1))。しかし、睡眠障害の治療に関する報告は一切されていない。
WO2005/002558号公報 Terao, A., Steininger, T.L., (2003) Neuroscience 116: 187-200. Sousa, J.C., Grandela, C., Fernandez-Ruiz, J., de Miguel, R., de Sousa, L., Magalhaes, A.I., Saraiva, M.J., Sousa, N., Palha, L.A. (2004) J. Neurochem. 88: 1052-1058.
発明の概要
本発明者らは、断眠を与えたラットの海馬において、トランスサイレチン遺伝子およびBACE1遺伝子の発現が上昇し、これらの遺伝子発現の上昇がゲラニルゲラニルアセトンの投与により抑制されることを見出した。また、断眠ラットモデルにおいてゲラニルゲラニルアセトンを投与することによりHSP70の発現が増加すること、断眠モデルラットにおける睡眠リバウンドおよび深部体温上昇がゲラニルゲラニルアセトンの投与により抑制されることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明は、睡眠障害等の検出手段、睡眠障害等の検出方法、および睡眠障害等の検出キットを提供することを目的とする。
本発明はまた、睡眠障害の治療に用いられる医薬組成物、BACE1遺伝子発現抑制剤、および睡眠障害の治療に有効な化合物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダイズすることができる、睡眠不足または睡眠障害の検出に用いられるポリヌクレオチド(以下「本発明によるポリヌクレオチド」ということがある)が提供される。
本発明によればまた、睡眠不足または睡眠障害の検出に用いられる、トランスサイレチンタンパク質に対する抗体(以下「本発明による抗体」ということがある)が提供される。
本発明によればまた、被験試料におけるトランスサイレチンの発現量を測定する工程を含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の検出方法(以下「本発明による検出方法」ということがある)が提供される。
本発明によれば更に、本発明による検出方法を実施するための検出キットが提供される。
本発明によれば更にまた、ゲラニルゲラニルアセトンまたは薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分として含んでなる、睡眠不足の緩和または睡眠障害の治療に用いられる医薬組成物およびBACE1遺伝子発現抑制剤が提供される。
本発明によれば、断眠させた非ヒト動物におけるトランスサイレチンの発現量を測定する工程を含んでなる、睡眠不足の緩和または睡眠障害の治療に有効な化合物のスクリーニング方法が提供される。
発明の具体的な説明
以下、本発明を詳細に説明する。以下の記述は、本発明を説明するための例示であり、本発明を記述された実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本明細書中で使用される全ての技術的用語、科学的用語および専門用語は、本発明が属する技術分野の通常の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有し、単に特定の態様を説明することを目的として用いられ、限定することを意図したものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。本明細書において引用された全ての先行技術文献および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられ、本発明の実施のために用いることができる。
[睡眠不足および睡眠障害の検出]
睡眠不足および睡眠障害へのトランスサイレチンの関与
本発明者らは、断眠させたマウスの海馬において、トランスサイレチン遺伝子およびトランスサイレチンタンパク質の発現が上昇することを見出した(実施例1および2)。
従って、トランスサイレチン遺伝子は睡眠不足の指標として有用である。
また、睡眠不足により、睡眠障害が引き起こされることが知られていることから、トランスサイレチン遺伝子の発現は、睡眠障害、特に睡眠不足に起因する睡眠障害、の指標として有用である。
ポリヌクレオチド
本発明によるポリヌクレオチドは、トランスサイレチン遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができる。前記のように、トランスサイレチンの発現は睡眠不足や睡眠障害の指標として有用である。従って、本発明によるポリヌクレオチドは、睡眠不足および睡眠障害のマーカーとして用いることができる。
本発明によるポリヌクレオチドは、トランスサイレチン遺伝子の発現を検出することができればよく、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指す。二本鎖cDNAも組織in situハイブリダイゼーションにおいて利用可能であることが知られており、本発明のポリヌクレオチドにはそのような二本鎖cDNAも含まれる。組織中のRNAの検出において特に好ましいポリヌクレオチドとしては、RNAプローブ(リボプローブ)を挙げることができる。
本発明によるポリヌクレオチドは、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列の連続する少なくとも10個、好ましくは、少なくとも15個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。本発明によるポリヌクレオチドは、また、好ましくは、10〜50個または10〜30個、より好ましくは、15〜50個または15〜30個、のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
本発明によるポリヌクレオチドは、少なくとも10塩基長であることができ、好ましくは、少なくとも15塩基長である。本発明によるポリヌクレオチドは、また、好ましくは、10〜50塩基長または10〜30塩基長、より好ましくは、15〜50塩基長または15〜30塩基長である。
本発明によるポリヌクレオチドの好ましい態様によれば、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列の連続する少なくとも10個(より好ましくは、少なくとも15個)のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでなり、トランスサイレチン遺伝子にハイブリダイズすることができる、睡眠不足または睡眠障害の検出に用いられる15〜30塩基長のポリヌクレオチドが提供される。
本発明において睡眠不足および睡眠障害の指標となる「トランスサイレチン遺伝子」は、ヒト、ラット、マウスにおいて公知である。それぞれの配列が開示されている文献およびデータベースのGenBankアクセッション番号は下記の通りである。
ヒト:NM_000371(配列番号:1(塩基配列)、配列番号:2(アミノ酸配列))
ラット:NM_012681(配列番号:3(塩基配列)、配列番号:4(アミノ酸配列))
マウス:NM_013697(配列番号:5(塩基配列)、配列番号:6(アミノ酸配列))
上記以外の動物についても、当業者であれば、公知のトランスサイレチン遺伝子の全長配列に基づいて、その動物に内在するトランスサイレチン遺伝子の配列を特定することができる。例えば、ヒトあるいはラットのトランスサイレチン遺伝子に基づいて相同性検索を行い、その動物のトランスサイレチン遺伝子を検索し、特定することができる。相同性検索に当たっては後述するBLAST等を利用することができる。
トランスサイレチン遺伝子の例として、配列番号2のアミノ酸配列からなるヒトトランスサイレチンタンパク質をコードするヌクレオチド配列や、配列番号4のアミノ酸配列からなるラットトランスサイレチンタンパク質をコードするヌクレオチド配列が挙げられる。
トランスサイレチン遺伝子の例としては、また、配列番号1のDNA配列を含むヌクレオチド配列や配列番号3のDNA配列を含むヌクレオチド配列が挙げられる。
本発明によるトランスサイレチン遺伝子には、トランスサイレチンタンパク質と機能的に同等のタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。ここで「機能的に同等」かどうかは、トランスサイレチン遺伝子の発現と関連する生体現象あるいは機能を評価することにより、例えば、断眠させたときに、そのタンパク質の発現が上昇するか否かを評価することにより決定することができる。
また、トランスサイレチンタンパク質と機能的に同等のものとしては、アミノ酸配列(例えば、配列番号2のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列)をコードする遺伝子が多型である場合、当該多型も含まれる。
トランスサイレチンタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子としては下記が挙げられる。
・ トランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列)において、1または複数個のアミノ酸の挿入、置換または欠失、あるいはその一方または両末端への付加がなされたアミノ酸配列(改変アミノ酸配列)をコードする遺伝子;
・ トランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列)をコードする遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子;および
・ トランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列)と少なくとも70%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードする遺伝子。
本願明細書において、「アミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸の挿入、置換または欠失、あるいはその一方または両末端への付加がなされた」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、または天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等によりなされたことを意味する。
トランスサイレチンタンパク質の改変アミノ酸配列は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個のアミノ酸の挿入、置換、または欠失、あるいはその一方または両末端への付加がなされたものであることができる。改変アミノ酸配列は、好ましくは、そのアミノ酸配列が、トランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列において1または複数個(好ましくは1または数個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であることができる。
ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
本願明細書において「ハイブリダイズする」とは、ストリンジェントな条件下で標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを意味する。具体的には、FASTA、BLAST、Smith−Waterman〔Meth. Enzym., 164, 765 (1988)〕などの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメーターを用いて計算したときに、標的ヌクレオチド配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。また、「ストリンジェントな条件下」とは、当業者が通常使用し得るハイブリダイゼーション緩衝液中で、温度が40℃〜70℃、好ましくは60℃〜65℃などで反応を行い、塩濃度が15〜300mmol/L、好ましくは15〜60mmol/Lなどの洗浄液中で洗浄する方法に従って行なうことができる。温度、塩濃度は使用するプローブの長さに応じて適宜調整することが可能である。さらに、ハイブリダイズしたものを洗浄するときの条件は、0.2または2×SSC、0.1%SDS、温度20−68℃で行うことができる。ストリンジェント(high stringency)な条件にするかマイルド(low stringency)な条件にするかは、洗浄時の塩濃度又は温度で差を設けることができる。塩濃度でハイブリダイズの差を設ける場合には、ストリンジェント洗浄バッファー(high stringency wash buffer)として0.2×SSC、0.1%SDS、マイルド洗浄バッファー(low stringency wash buffer)として2×SSC、0.1%SDSで行うことができる。また、温度でハイブリダイズの差を設ける場合には、ストリンジェントの場合は68℃、中等度(moderate stringency)の場合は42℃、マイルドの場合は室温(20−25℃)でいずれの場合も0.2×SSC、0.1%SDSで行えばよい。
通常、プレハイブリダイズを実施する場合にはハイブリダイズと同じ条件で実施するが、ハイブリダイズとプレ(予備)洗浄は同じ条件で行うとは限らない。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
本願明細書において、アミノ酸配列について「同一性」(相同性という場合もある)とは、比較される配列間において、各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いられる。このとき、ギャップの存在及びアミノ酸の性質が考慮される(Wilbur, Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:726-730 (1983))。相同性の計算には、市販のソフトであるBLAST(Altschul: J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990))、FASTA(Peasron: Methods in Enzymology 183:63-69 (1990))等を用いることができる
トランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも70%以上の同一性を有するアミノ酸配列は、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列であることができる。
「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。
本願明細書において「断眠」は、強制的に覚醒させて睡眠を奪うことを意味する。断眠により、例えば、睡眠不足の状態が引き起こされる。
本願明細書において「睡眠不足」は、正常な脳機能にとって必要なだけの睡眠が取れていない状態を意味する。睡眠不足は、昼間の眠気や注意力の低下等を引き起こし、深刻な睡眠不足は、幻覚等の精神障害の症状をも引き起こし、この状態が続くと死に至ることもある。また、睡眠不足は睡眠障害の原因の一つであるとともに、睡眠障害の症状のひとつでもある。
本願明細書において「睡眠障害」は、米国睡眠障害連合会(American Sleep Disorders Association)により出版された睡眠障害国際分類:診断および法則マニュアル(International Classification of Sleep Disorders: Diagnostic and Coding Manual) (1990年)、米国精神医学協会(American Psychiatric Association)により出版された精神障害分類・診断基準第4版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(1994年)の記述に従って定義できる。
「睡眠障害」としては、例えば、一次不眠症(primary insomnia)、一次睡眠過剰症(primary hypersomnia)、ナルコレプシー(narcolepsy)、概日リズム睡眠障害(circadian rhythm sleep disorder)(例えば、時差帯域変化(ジェット時差)症候群、交代勤務睡眠障害、不規則型睡眠・覚醒パターン、睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群、非24時間型睡眠・覚醒障害、特定不能の概日リズム睡眠障害)、睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)、睡眠随伴症(例えば、悪夢障害(nightmare disorder)、夜驚症障害(terror disorder)、夢遊症障害(sleepwalking disorder)、寝言、睡眠麻痺、レム睡眠行動障害、歯ぎしり、夜尿症)、疾患(例えば、うつ病、不安障害、パニック障害、認知症、パーキンソン病、喘息、消化性潰瘍)に起因する睡眠障害、物質(例えば、睡眠薬、鎮痛薬、アルコール、抗不安薬、カフェインおよび他の興奮薬)依存性睡眠障害、睡眠不足による精神障害(例えば、幻覚、うつ病、不安障害、注意力の低下、日中の傾眠)が挙げられる。
本発明において検出される「睡眠障害」は、好ましくは、睡眠不足などの脳へのストレスに起因する睡眠障害であり、例えば、睡眠不足による精神障害(例えば、幻覚、うつ病、不安障害、注意力の低下、日中の傾眠)などが挙げられる。
本発明において検出される「睡眠障害」は、また、好ましくは、睡眠不足の症状を示す睡眠障害であり、例えば、一次不眠症、ナルコレプシー、概日リズム睡眠障害(例えば、時差帯域変化(ジェット時差)症候群、交代勤務睡眠障害、不規則型睡眠・覚醒パターン、特定不能の概日リズム睡眠障害)、睡眠時無呼吸症候群(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)、睡眠随伴症(例えば、悪夢障害、夜驚症障害、夢遊症障害、夜尿症)、疾患(例えば、うつ病、不安障害、パニック障害、認知症、パーキンソン病、喘息、消化性潰瘍)に起因する睡眠障害、物質(例えば、睡眠薬、鎮痛薬、アルコール、抗不安薬、カフェインおよび他の興奮薬)依存性睡眠障害などが挙げられる。
本発明によるポリヌクレオチドは、プライマーおよびプライマーペアとして使用できる。
具体的には、本発明によるポリヌクレオチドは、PCR法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法等の核酸増幅法を利用して目的遺伝子を定量的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーおよびプライマーペアとして利用することができる。
本発明によるプライマーは、少なくとも10塩基長であることができ、好ましくは、少なくとも15塩基長である。本発明によるプライマーは、また、好ましくは、10〜50塩基長または10〜30塩基長、より好ましくは、15〜50塩基長または15〜30塩基長である。
本発明によるプライマーペアはトランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列をPCR法等の核酸増幅法により増幅できるように選択することができる。核酸増幅法は周知であり、核酸増幅法におけるプライマーペアの選択は当業者に自明である。例えば、PCR法においては、二つのプライマーの一方がトランスサイレチン遺伝子の二本鎖DNAのプラス鎖に対合し、他方のプライマーが二本鎖DNAのマイナス鎖に対合し、かつ一方のプライマーにより伸長された伸長鎖にもう一方のプライマーが対合するようにプライマーを選択できる。
本発明によるプライマーは、本明細書に開示したヌクレオチド配列に基づき、化学合成できる。プライマーの調製は常法に従って実施できる。
本発明によるプライマーペアは、例えば、RT−PCR法に用いる場合、
5'-ctcatcgtctgctcctcctctgcct-3'(配列番号7)
5'-gtgagcccatgcagctctccagact-3'(配列番号8)
とすることができる。
本発明において、ポリヌクレオチドは、プローブとして使用することができる。
具体的には、本発明によるプローブは、ノーザンブロット法、サザンブロット法等の目的遺伝子を定量的に検出する公知の方法において、常法に従ってプローブとして使用することができる。
本発明によるプローブは、少なくとも10塩基長であることができ、好ましくは、少なくとも15塩基長である。本発明によるプローブは、また、好ましくは、10〜50塩基長または10〜30塩基長、より好ましくは、15〜50塩基長または15〜30塩基長である。
本発明によるプローブは、本明細書に開示したヌクレオチド配列に基づき、化学合成できる。プローブの調製は周知であり、常法に従って実施できる。
抗体
本発明による抗体はトランスサイレチンタンパク質を特異的に認識することができる。従って、本発明による抗体は、睡眠不足または睡眠障害のマーカーとして用いることができる。
本発明による抗体は、好ましくは、配列番号2に示すアミノ酸配列またはその一部を有するタンパク質に対する抗体または配列番号4に示すアミノ酸配列またはその一部を有するタンパク質に対する抗体であることができる。ここで「一部」とは、本発明による抗体を得ることができる程度のアミノ酸残基を有するものをいい、好ましくは、6アミノ酸残基以上をいう。
本発明による抗体は、当業者に周知方法を用いて得ることができる。本発明による抗体は、ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体(Milstein, C., et al.,(1983)Nature 305(5934):537-40)とすることができる。
ポリクローナル抗体であれば、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離し、ポリクローナル抗体を含む血清とすることができる。必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離することもできる。
モノクローナル抗体であれば、上記抗原を感作した哺乳動物の脾臓あるいはリンパ節から得られた抗体産生細胞を取り出し、骨髄腫細胞などと細胞融合させ、得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。
免疫抗原としては、トランスサイレチンタンパク質のフラグメントを用いることができる。あるいは、上記アミノ酸配列に基づき合成したものを用いることができる。抗原はキャリア蛋白質との複合体として用いてもよい。抗原とキャリアタンパク質の複合体の調製には種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、マレイミド活性エステル等が使用できる。キャリアタンパク質は牛血清アルブミン、サイログロブリン、ヘモシアニン等の常用されているものでよく、通常1〜5倍量の割合でカップリングさせる方法が用いられる。
免疫される動物としてはマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなどが挙げられ、接種方法は皮下、筋肉あるいは腹腔内の投与が挙げられる。投与に際しては完全フロイントアジュバンドや不完全フロイントアジュバンドと混和して投与してもよく、投与は通常2〜5週毎に1回ずつ行われる。
免疫された動物の脾臓あるいはリンパ節から得られた抗体産生細胞は骨髄腫細胞と細胞融合させ、ハイブリドーマとして単離される。骨髄腫細胞としてはマウス、ラット、ヒト等由来のものが使用され、抗体産生細胞と同種由来のものであることが好ましいが、異種間においても可能な場合もある。
細胞融合の操作は既知の方法、例えば、Nature, 256,495, 1975に従って実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコールやセンダイウイルスなどが挙げられ、通常には、20〜50%程度の濃度のポリエチレングリコール(平均分子量1000〜4000)を用いて20〜40℃、好ましくは30〜37℃の温度下、抗体 産生細胞数と骨髄腫細胞数の比は通常1:1〜10:1程度、約1〜10分間程度反応させることにより細胞融合を実施することができる。
抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の免疫化学的方法が使用できる。例えば、トランスサイレチンタンパク質をコートしたマイクロプレートを用いるELISA法、抗免疫グロブリン抗体をコートしたマイクロプレートを用いるEIA法、トランスサイレチンタンパク質を含むサンプルを電気泳動後、ニトロセルロース転写膜を用いるイムノブロット法などが挙げられる。
このようなウェルから更に、例えば限界希釈法によってクローニングを行い、クローンを得ることができる。ハイブリドーマの選別、育種は、通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10〜20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例、RPMI1640)で行われる。このようにして得られたクローンはあらかじめプリスタンを投与したSCIDマウスの腹腔内へ移植し、10〜14日後にモノクローナル抗体を高濃度に含む腹水を採取し、抗体精製の原料とすることができる。また、該クローンを培養し、その培養物を抗体精製の原料とすることもできる。
モノクローナル抗体の精製は免疫グロブリンの精製法として既知の方法を用いればよく、たとえば、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法、陰イオン交換体の利用、さらにトランスサイレチンタンパク質を用いるアフィニティクロマトグラフィーなどの手段により容易に達成することができる。
血清からのポリクローナル抗体の精製も同様に行うことができる。
モノクローナル抗体はFc’あるいはFc領域を除去したF(ab’)、Fab’あるいはFab画分、あるいはその重合体を用いてもよい。またそのキメラ抗体、ヒト化抗体であってもよい。
検出方法
トランスサイレチン遺伝子の発現量は、睡眠不足または睡眠障害の指標となる。従って、本発明によれば、被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を測定することにより、睡眠不足または睡眠障害を検出することができる。
ここで、「トランスサイレチン遺伝子の発現量を測定する」方法としては、被験試料におけるトランスサイレチンの発現量を測定できる方法であれば特に限定されず、例えば、核酸増幅法、ハイブリダイゼーション法、抗原抗体反応法が挙げられる。
本発明による検出法の第一の態様によれば、本発明によるポリヌクレオチドをプライマーまたはプライマーペアとして用いて核酸増幅法により核酸試料(mRNAまたはその転写産物)を増幅させ、増幅産物を検出することにより、被験試料におけるトランスサイレチンの発現量を測定することができる。
核酸増幅法を利用したトランスサイレチン遺伝子の発現量の測定は、例えば、下記工程により実施することができる:
(a)被験試料から得られたポリヌクレオチドを鋳型とし、本発明によるプライマーまたはプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施する工程;および
(b)形成された増幅産物の量を測定する工程。
工程(a)において、被験試料から調製されたmRNAまたはそのmRNAから転写された相補的DNA(cDNA)を鋳型として用いることができる。
工程(b)の後に、(c)被験試料において検出される増幅産物の量と正常試料において検出される増幅産物の量とを比較する工程を更に含んでいてもよい。
工程(c)においては、被験試料において検出される増幅産物の量が、正常試料において検出される増幅産物の量を上回る場合に、好ましくは、約1.2倍以上である場合に、より好ましくは、約1.5倍以上である場合に、最も好ましくは約2倍以上である場合に、睡眠不足であると、または睡眠障害に罹患していると判定することができる。
また工程(c)においては、正常試料において検出される増幅産物の量に対する被験試料において検出される増幅産物の量の比から、睡眠不足および睡眠障害の深刻度を判定することができる。例えば、比が約2以上である場合には、深刻な睡眠不足であると、あるいは深刻な睡眠障害に罹患していると判定することができる。
増幅産物の定量的測定は、PCR法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法等の核酸増幅法を用いて実施できる。
本発明による検出法の第二の態様によれば、本発明によるポリヌクレオチドをプローブとして用いて、該ポリヌクレオチドを核酸試料(mRNAまたはその転写産物)とハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション複合体、すなわちヌクレオチド二本鎖、を検出することにより被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を測定することができる。
ハイブリダイゼーション法を利用したトランスサイレチンの発現量の測定は、例えば、下記工程により実施することができる:
(d)被験試料由来のポリヌクレオチドと、本発明によるプローブとを接触させる工程;および
(e)ハイブリダイゼーション複合体の量を測定する工程。
工程(d)において、被験試料から調製されたmRNAまたはそのmRNAから転写された相補的DNA(cDNA)をプローブと接触させることができる。
工程(e)の後に、(f)被験試料において検出されるハイブリダイゼーション複合体の量と正常試料において検出されるハイブリダイゼーション複合体の量とを比較する工程を更に含んでいてもよい。
工程(f)においては、被験試料において検出される複合体の量が、正常試料において検出される複合体の量を上回る場合に、好ましくは、約1.2倍以上である場合に、より好ましくは、約1.5倍以上である場合に、最も好ましくは約2倍以上である場合に、睡眠不足であると、または睡眠障害に罹患していると判定することができる。
また工程(f)においては、正常試料において検出される複合体の量に対する被験試料において検出される複合体の量の比から、睡眠不足および睡眠障害の深刻度を判定することができる。例えば、比が約2以上である場合には、深刻な睡眠不足であると、あるいは深刻な睡眠障害に罹患していると判定することができる。
プローブを用いた検出法においては、プローブを標識して用いることができる。標識としては例えば、放射能活性(例えば、32P、14C、および35S)、蛍光(例えば、FITC、ユーロピウム)、化学発色のような酵素反応(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ)等を利用した標識が挙げられる。
ハイブリダイゼーション産生物の定量的測定は、ノーザンハイブリダイゼーション、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の周知の方法を用いて実施できる。
本発明による検出法の第三の態様によれば、本発明による抗体と被験試料とを接触させ、抗体抗原反応を検出することにより被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を測定することができる。
抗体抗原反応を利用したトランスサイレチンの発現量の測定は、例えば、下記工程により実施することができる:
(g)被験試料由来のタンパク質と、本発明による抗体とを接触させる工程; および
(h)抗体抗原複合体を測定する工程。
工程(h)の後に、(i)被験試料において検出される抗体抗原複合体の量と正常試料において検出される抗体抗原複合体の量とを比較する工程を更に含んでいてもよい。
工程(i)においては、被験試料において検出される複合体の量が、正常試料において検出される複合体の量を上回る場合に、好ましくは、約1.2倍以上である場合に、より好ましくは、約1.5倍以上である場合に、最も好ましくは約2倍以上である場合に、睡眠不足であると、または睡眠障害に罹患していると判定することができる。
また工程(i)においては、正常試料において検出される複合体の量に対する被験試料において検出される複合体の量の比から、断眠ストレスおよび睡眠障害の深刻度を判定することができる。例えば、比が約2以上である場合には、深刻な睡眠不足であると、あるいは深刻な睡眠障害に罹患していると判定することができる。
抗体抗原反応の検出方法は当業者に周知であり、本発明による抗体を用いた免疫学的方法により被験試料中のトランスサイレチンタンパク質を定量できる。免疫学的方法としては、被験試料を必要に応じて適切な処理、例えば、細胞の分離、抽出操作などをした試料について、免疫組織染色法、酵素免疫測定法、ウェスタンブロット法、凝集法、競合法、サンドイッチ法など既知の方法を適用することができる。免疫組織染色法は、例えば標識化抗体を用いる直接法、該抗体に対する抗体の標識化されたものを用いる間接法などにより行い得る。標識化剤としては螢光物質、放射性物質、酵素、金属、色素など公知の標識物質を使用することができる。
本発明による検出法をヒトに適用する場合、被験試料を脊髄液あるいは末梢血の白血球から採取することができ、検出に当たっては、DNAチップ解析のような検出技術を利用することもできる。
本発明による検出法を非ヒト動物に適用する場合、上記に加えて、安楽死させたあるいは死亡した非ヒト動物から被験試料を採取することができる。被験試料は、好ましくは、非ヒト動物の脳、より好ましくは海馬から採取することができる。
本発明による検出法は法医学的に利用することもでき、その場合には、死亡したヒトから被験試料を採取することができる。被験試料は、好ましくは、ヒトの脳、より好ましくは海馬から採取することができる。
検出用キット
本発明による検出用キットの第一の態様としては、本発明による第一の態様の検出法を実施するための検出キットが挙げられ、具体的には、トランスサイレチン遺伝子の発現を検出するためのキットであって、本発明によるプライマーまたは本発明によるプライマーペアを少なくとも含んでなるキットが挙げられる。この検出用キットは核酸増幅法によりトランスサイレチン遺伝子の発現を検出する。従って第一の態様の検出方法は、所望により、核酸増幅法を実施するための種々の試薬、例えば、緩衝液、PCRが正常に進行し得ることを示す内部標準、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
本発明による検出キットの第二の態様としては、本発明による第二の態様の検出法を実施するための検出キットが挙げられ、具体的には、トランスサイレチン遺伝子の発現を検出するためのキットであって、本発明によるプローブを少なくとも含んでなるキットが挙げられる。このプローブは、標識したものであってもよい。この検出用キットはハイブリッド形成法によりトランスサイレチン遺伝子の発現を検出する。従って第二の態様の検出方法は、所望により、ハイブリッド形成法を実施するための種々の試薬、例えば、標識の検出に用いられる基質化合物、ハイブリダイゼーション緩衝液、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
本発明による検出キットの第三の態様としては、本発明による第三の態様の検出法を実施するための検出キットが挙げられ、具体的には、トランスサイレチンタンパク質を検出するためのキットであって、本発明による抗体を少なくとも含んでなるキットが挙げられる。この抗体は、標識したものであってもよい。この検出用キットは抗原抗体反応によりトランスサイレチン遺伝子の発現を検出する。従って第三の態様の検出方法は、所望により、抗原抗体反応を実施するための種々の試薬、例えば、ELISA法等に用いる2次抗体、発色試薬、緩衝液、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
[睡眠障害の治療]
有効成分
本発明による有効成分であるゲラニルゲラニルアセトンは、一般式(1)で表すことができる(6,10,14,18−テトラメチル−5,9,13,17−ノナデカテトラエン−2−オン)。
ゲラニルゲラニルアセトンはその構造から明らかなように、種々の異性体が考えられるが、本発明はそれらのいずれを含むものであり、例えば、5,9,13位がE体、Z体のいずれでもよく、また1種類の化合物もしくは2種類の化合物の混合物でもよい。好ましくは、9位かつ13位がE体である5E体、5Z体または任意の混合比のそれらの混合物であり、より好ましくは、(5E,9E,13E)体と(5Z,9Z,13Z)体とが3:2の混合物である。
本発明による有効成分であるゲラニルゲラニルアセトンは、市販されているものを入手することができる。本発明による有効成分であるゲラニルゲラニルアセトンはまた、公知の方法、例えば、特開昭53−145922号公報に記載されている方法に従って製造することができる。
本明細書において用いられる用語「ゲラニルゲラニルアセトン」としては、特に言及する場合を除いて、以下に記述されるようなゲラニルゲラニルアセトン塩やそれらの水和物を含む。
ゲラニルゲラニルアセトンは塩の形態でも同様に使用することができる。塩は、当該技術分野で公知の薬学的に許容される塩を示し、ゲラニルゲラニルアセトンと薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されない。酸、塩基は当該化合物1分子に対し、0.1〜5分子の適宜な比で塩を形成する。無機酸との塩の好ましい例として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などとの塩が挙げられ、有機酸との塩の好ましい例としては、例えば酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。無機塩基との好ましい例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との好ましい例としては、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩との好ましい例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられ、塩基性アミノ酸との塩の好ましい例としては、アルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩が挙げられる。
また、ゲラニルゲラニルアセトンまたはその塩は、水和物の形態でも同様に使用することができる。
用途
うつ病と不眠症の相関や、断眠による神経への酸化ストレスが睡眠を誘発すること(Ikeda, M., et al.(2005) Neuroscience 130(4):1029-1040)等から、睡眠不足をはじめとする脳へのストレスは様々な睡眠障害をもたらすと考えられている。従って、睡眠不足をはじめとする脳へのストレスを軽減あるいは消失させることにより、睡眠不足を緩和し、また、睡眠障害を治療することができる。
ここで、クロック変異ショウジョウバエでは、熱に曝すことによるHSP70の発現の増加がハエを致死的な断眠ストレスから保護することが報告されている(Shaw, P.J., Tononi, G., et al.(2002) Nature 417:287-91)。実際に実施例7に示されているように、断眠ラットの海馬においてHSP70の発現増加が観察された。このように、HSP70の発現は、断眠に起因するストレスから細胞を保護する役割を果たしていることが考えられることから、HSP70の発現量は睡眠不足による脳へのストレスの指標となる。
一方、断眠の後に睡眠のリバウンドが観察されることが知られており、実際に実施例5では、断眠後にはノンレム睡眠およびレム睡眠の双方の増加が見出された。断眠により、細胞損傷を保護する内在因子であるHSP70mRNAの発現が断眠後に海馬で増加することから(実施例7)、断眠は脳において分子レベルでストレスになっていることが考えられる。このように、断眠による睡眠のリバウンドは、断眠に起因するストレスから細胞を保護する役割を果たしていることが考えられることから、睡眠のリバウンドの量は睡眠不足による脳へのストレスの指標となる。
また睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の二種類が知られており、このうちレム睡眠の出現は、ノルアドレナリン作動性またはセロトニン作動性の活性により抑制され、また、レム睡眠の選択的剥奪により、カテコールアミン作動性活性は徐々に抑制されることが知られている(Maloney, K.J., Mainville, L., et al.(1999)J.Neurosci.19:3057-72)。従って、このカテコールアミン作動性活性の抑制がレム睡眠のリバウンドを引き起こすと考えられる。ここで、チロシン水酸化酵素(TH)はカテコールアミンの合成に関与していることが知られている。従って、THの発現量は、レム睡眠のリバウンド、特に、睡眠不足による脳へのストレスの指標となる。
更に、断眠の後に深部体温の上昇が観察されることが知られており、実際に実施例6では、断眠後に深部体温の上昇が観察された。断眠により、細胞損傷を保護する内在因子であるHSP70mRNAの発現が断眠後に海馬で増加することから(実施例7)、断眠は脳において分子レベルでストレスになっていることが考えられる。また、深部体温の上昇は、ストレス時の自発運動の増加に起因するものではなく、脳中枢機能の変化によるものであることが報告されている(Oka, T., Oka, K., et al.(2001)Psychosom Med 63:476-86およびOlivier, B., Zethof, T., et al.(2003)Eur J Pharmacol 463:117-32)。このように、断眠による深部体温の上昇は、断眠に起因するストレスから細胞を保護する役割を果たしていることが考えられることから、深部体温は、睡眠不足による脳へのストレスの指標となる。
以上の通り、HSP70の発現量、睡眠のリバウンドの量、THの発現量、および深部体温は、睡眠不足による脳へのストレスの指標となる。
実施例7において示されるように、ゲラニルゲラニルアセトンは、断眠ラットの海馬においてHSP70の発現を誘導した。また、実施例4において示されるように、ゲラニルゲラニルアセトンは、断眠ラットにおいて断眠後の睡眠のリバウンドを抑制した。更に、実施例5および7において示されるように、ゲラニルゲラニルアセトンは、断眠ラットにおいて断眠後のレム睡眠のリバウンドを抑制するとともに、脳幹におけるTHの発現を誘導した。更にまた、実施例6において示されるように、ゲラニルゲラニルアセトンは、断眠ラットにおいて断眠後の深部体温の上昇を抑制した。
このように、ゲラニルゲラニルアセトンは、脳へのストレスを軽減あるいは消失させることができることから、ゲラニルゲラニルアセトンは睡眠不足の緩和および睡眠障害の治療に有用である。
本発明において、ゲラニルゲラニルアセトンにより緩和できる「睡眠不足」は、好ましくは、睡眠障害に起因する睡眠不足である。睡眠不足の症状を示す睡眠障害としては、例えば、一次不眠症、ナルコレプシー、概日リズム睡眠障害(例えば、時差帯域変化(ジェット時差)症候群、交代勤務睡眠障害、不規則型睡眠・覚醒パターン、特定不能の概日リズム睡眠障害)、睡眠時無呼吸症候群(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)、睡眠随伴症(例えば、悪夢障害、夜驚症障害、夢遊症障害、夜尿症)、疾患(例えば、うつ病、不安障害、パニック障害、認知症、パーキンソン病、喘息、消化性潰瘍)に起因する睡眠障害、物質(例えば、睡眠薬、鎮痛薬、アルコール、抗不安薬、カフェインおよび他の興奮薬)依存性睡眠障害が挙げられる。
また本発明において、ゲラニルゲラニルアセトンにより治療できる「睡眠障害」は、好ましくは、睡眠不足に起因する睡眠障害である。睡眠不足に起因する睡眠障害としては、例えば、睡眠不足による精神障害(例えば、幻覚、うつ病、不安障害、注意力の低下、日中の傾眠)が挙げられる。
また、実施例1および2において示されているように、断眠によりラット海馬においてBACE1遺伝子の発現が上昇した。BACE1(β-site amyloid precursor protein cleaving enzyme 1)は、アルツハイマー病の原因とされる脳内の異常タンパク質(βアミロイド)の蓄積に関与している(Nawrot, B. (2004) Acta Biochim. Pol. 51(2): 431-444.)。従って、断眠によりBACE1遺伝子の発現が上昇し、脳内に異常タンパク質が増加し、これが睡眠障害に関与していると考えられる。有効成分として用いられるゲラニルゲラニルアセトンは、断眠により上昇したBACE1遺伝子の発現を抑制した(実施例1および2)。従って、ゲラニルゲラニルアセトンは、この点からも、睡眠障害の治療に有用であると言える。
実施例1および2において示されているように、断眠によりラット海馬においてトランスサイレチン遺伝子の発現が上昇した。トランスサイレチンはアルツハイマー病の原因の一つであると考えられているβアミロイドの蓄積を処理する役割を有することが知られている(Tsuzuki, K., Fukatsu, R., Yamaguchi, H., Tateno, M., Imai, K., Fujii, N., Yamauchi, T. (2000) Neurosci Lett. 281(2-3): 171-174.)。従って、トランスサイレチンの遺伝子発現の上昇は、断眠により合成・蓄積されたβアミロイドから神経を保護するためのフィードバック的な上昇と考えられる。
有効成分として用いられるゲラニルゲラニルアセトンは、断眠により上昇したトランスサイレチン遺伝子の発現を抑制した(実施例1および2)。この現象は、βアミロイドの蓄積に関与しているBACE1遺伝子の発現が抑制され、それによりβアミロイドの蓄積が抑制され、神経保護のためのトランスサイレチン遺伝子のフィードバック的発現が生じなかったためと考えられる。
本発明において「睡眠不足の緩和」とは、睡眠不足による眠気の抑制または緩和、睡眠不足による集中力・注意力の低下の緩和、居眠りの防止を含む意味で用いられるものとする。
本発明において「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病および/または症状を完全にまたは部分的に防止する点では予防的であり、疾病および/または疾病に起因する悪影響の部分的または完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、患者、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば以下の治療を含む:
・疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
・疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
・疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、消失、または症状の進行の逆転を引き起こすこと。
医薬組成物
本発明による医薬組成物の有効成分であるゲラニルゲラニルアセトンの投与形態は、特に制限されず、経口投与、非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。経口投与は、注腸などに比べて患者の負担が少ないので好ましい。
経口投与および非経口投与のための剤形およびその製造方法は当業者に周知であり、ゲラニルゲラニルアセトンを、薬学的に許容される坦体などと混合等することにより、常法に従って製造することができる。
経口投与のための剤型は、固体または液体の剤型、具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、トローチ剤などが挙げられる。
非経口投与のための剤型は、注射用製剤(点滴剤を含む)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等が挙げられる。
ゲラニルゲラニルアセトンは、細粒剤は商品名セルベックス(登録商標)剤(エーザイ株式会社)、カプセル剤は商品名セルベックス(登録商標)剤(エーザイ株式会社)として提供されており、これらを経口投与剤として利用することができる。
薬学上許容される担体としては、例えば、製剤分野において常用され、かつゲラニルゲラニルアセトンと反応しない物質が用いられる。薬学上許容される担体には、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。
賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素、硫酸カルシウム等が、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、それぞれ用いられる。上記の成分は、その塩またはその水和物であってもよい。
薬学上許容される担体として使用可能な無毒性の成分としては更に下記のものが挙げられる:大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等が挙げられる。
経口製剤は、例えば、ゲラニルゲラニルアセトンに賦形剤(例えば、乳糖、白糖、でんぷん、マンニトール等)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク等)、着色剤、矯味矯臭剤、崩壊剤等を加えた後、必要に応じて、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤等を添加して、常法により例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤等とすることができる。錠剤は、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、セルロースアセテートフタレート、白糖、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、リン酸カルシウムのようなコーティング剤を用い、周知の方法でコーティングしてもよい。
シロップ剤製造に用いられる担体の具体例としては、白糖、ブドウ糖、果糖のような甘味剤、アラビアゴム、トラガント、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、結晶セルロース、ビーガムのような懸濁化剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80のような分散剤が挙げられる。シロップ剤製造にあたっては、必要に応じて矯味剤、芳香剤、保存剤、溶解補助剤、安定化剤等を添加することができる。また、用時溶解または懸濁するドライシロップの形であってもよい。
坐剤の基剤の具体例としては、室温では固体で、体温では液体となる、カカオ脂、飽和脂肪酸グリセリンエステル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、マクロゴールなどの適当な非刺激性賦形剤が挙げられる。坐剤製造にあたっては、必要に応じて界面活性剤、保存剤等を添加することができる。
注射剤は、通常、例えば、ゲラニルゲラニルアセトンの塩を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、安定化剤等を添加することができる。
外用剤の製造に当たって使用できる基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、香料等を添加することができる。
吸入剤は、吸入による投与のために、ゲラニルゲラニルアセトンを、注入器、噴霧器もしくは加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達する他の都合のよい様式から送達することができる。加圧パックは、適当な噴射剤を含むことができる。また、吸入による投与のために、ゲラニルゲラニルアセトンは、乾燥粉末組成物の形または液体スプレーの形態で投与することもできる。
表皮への局所投与のために、ゲラニルゲラニルアセトンは、軟膏、クリームもしくはローションとして、または経皮パッチのための活性成分として製剤化することができる。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性基剤に適当な増粘および/またはゲル化剤を加えて製剤化することができる。ローションは水性または油性基剤を用いて製剤化することができ、また一般には1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または着色剤を含むこともできる。
本発明による医薬組成物は、治療上有効な他の薬剤を更に含有していてもよく、また、必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。このときの有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。
ゲラニルゲラニルアセトンの投与量は、例えば、投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、塩の種類、疾患の具体的な種類、薬物動態および毒物学的特徴などの薬理学的知見、薬物送達系の利用の有無、並びに他の薬物の組合せの一部として投与されるか、など様々な因子を元に、臨床医により決定することができるが、通常、成人(体重60kg)あたり、経口投与では20〜2000mg/日であり、好ましくは50〜1000mg/日、さらに好ましくは100〜500mg/日を、注射投与では0.1〜500mg/日、好ましくは0.1〜300mg/日、さらに好ましくは1.0〜150mg/日であり、1回または数回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。実際に用いられる投与法は、臨床医の判断により大幅に変動することもあり、上記の投与範囲から逸脱することがある。
[BACE1遺伝子発現抑制剤]
本発明において、断眠によりラット海馬において上昇したBACE1遺伝子の発現が、ゲラニルゲラニルアセトンの投与により抑制された(実施例1および2)。従って本発明によれば、ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含んでなる、BACE1遺伝子の発現抑制剤が提供される。遺伝子発現抑制剤の組成は医薬組成物の欄における記載を参照することができる。
[スクリーニング方法]
本発明による検出法は、睡眠障害の治療に有効な化合物のスクリーニングに適用することができる。すなわち、候補化合物の投与により睡眠障害が治療されたかを、トランスサイレチンの発現量を指標にして判定することにより、睡眠障害の治療に有効な化合物をスクリーニングすることができる。
従って、本発明によれば、下記工程を含んでなる、睡眠障害の治療に有効な化合物のスクリーニング方法が提供される:
(i)非ヒト動物に被験化合物を投与する工程;
(ii)被験化合物が投与された非ヒト動物を、断眠させる工程;および
(iii)断眠させた非ヒト動物におけるトランスサイレチンの発現量を測定する工程。
工程(ii)の断眠は、実験動物に対して身体的ストレスがかからない手法が好ましく、例えば、ハンドリングなどによって実施できる。
工程(iii)においては、断眠させた後、安楽死させた非ヒト動物から被験試料を採取し、本発明による検出法に従って、トランスサイレチンの発現量を測定することができる。被験試料は、好ましくは、非ヒト動物の脳、より好ましくは海馬から採取することができる。
工程(iii)のトランスサイレチンの発現量の測定は、本発明による検出法に従って実施することができる。具体的には、核酸増幅法を利用した検出については工程(a)および(b)を、ハイブリダイゼーション法を利用した検出については工程(d)および(e)を、抗体抗原反応を利用した検出については工程(g)および(h)を、それぞれ実施することにより、トランスサイレチンの発現量を測定することができる。
工程(iii)の後に、(iv)被験化合物が投与された非ヒト動物におけるトランスサイレチンの発現量と、被験化合物が投与されず、かつ断眠させた非ヒト動物におけるトランスサイレチンの発現量を比較する工程を更に含んでいてもよい。
工程(iv)においては、被験化合物投与群において検出されるトランスサイレチンの発現量が、被験化合物非投与群において検出される発現量を下回る場合に、好ましくは、約75%以下である場合に、より好ましくは、約60%以下である場合に、最も好ましくは約50%以下である場合に、睡眠障害の治療に有効であると判定することができる。
以下に実施例を示して、本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:DNAチップによる発現解析
1.実験条件および実験方法
実験動物は、8週齢のWistar系雄ラット(日本SLCより入手)を用いた。ラットは、12時間明期12時間暗期(9時点灯21時消灯)の照明調節、24±1度の空調下、固形飼料と飲料水を自由摂取させて飼育した。
ラットはまず自然睡眠群と断眠群とに分類し、それぞれの群において、断眠日の2日前に、ゲラニルゲラニルアセトン(エーザイ株式会社)(600mg/kg:GGA投与群)ないしは溶媒のみ(5%アラビアゴム:ビヒクル投与群)を投与した(各3匹)。断眠は明期開始時より6時間行った。断眠は、身体的なストレスがかからないように、日常的にラットが経験している「ハンドリング」によって行った。
6時間の断眠直後に断頭し、脳を取り出し、海馬を分離した。分離した海馬からRNAを抽出し、ラット用DNAチップ(製品名:ラットオリゴDNAマイクロアレイキット、Agilent)を用いて、その発現動態を網羅的に検索した。
DNAチップによる解析は、Unami, A., Shinohara, Y., Kajimoto, K., Baba, Y. (2004) Biochemical Pharmacology 67: 555-564.に従って行った。
なお、各群3匹分のmRNAをまとめて、1枚のDNAチップにのせた。
DNAチップ解析から、対照群(自然睡眠群でかつビヒクル群のもの、以下同様)と比較してmRNA発現が2倍以上となったものを有意な増加とした。
2.実験結果
図1に、DNAチップ解析の結果を示す。
また、図1Aの結果と図1Bの結果を定量的に比較すると以下の通りである。
発現が上昇した遺伝子
トランスサイレチン(2.33)
インスリン様成長因子(IGF2,1.58)
プロスタグランジンD合成酵素(1.45)
HSP70(1.42)
BACE1(1.05)
発現が低下した遺伝子
アデノシンA2a受容体(0.67)
ビヒクル投与群において、自然睡眠群と断眠群とを比較した結果、HSP、トランスサイレチンおよびBACE1は断眠によってmRNAの発現が増加した。しかし、有意な増加が認められたのは、トランスサイレチンのみであった。一方、アデノシンA2a受容体は50%近く低下した。
更に、図1Aの結果と図1Cの結果を定量的に比較すると以下の通りである。
トランスサイレチン(0.96)
GGA投与群において、自然睡眠群と断眠群とを比較した結果、断眠群においてトランスサイレチンの増加は認められなかった。
実施例2:PCRによる発現解析(1)
トランスサイレチンの発現解析を以下の通り行った。
1.実験条件および実験方法
実施例1に従って、断眠実験を実施した後(各群6匹)、海馬から抽出したmRNAに対して、リアルタイム法を用いてトランスサイレチンのmRNAの発現を再検討した。リアルタイムPCR解析は個体別に行った。
リアルタイムPCR解析は、以下の通りに行った。
(1)全RNAの抽出
実施例1に従って、ラットに断眠実験を実施した後、ビヒクル群における自然睡眠群と断眠群、GGA投与群における自然睡眠群と断眠群(各群6匹)の各群のラットの海馬から、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用い、添付のマニュアルに従って全RNAを抽出した。すなわち、海馬組織(50mg)にISOGEN 1mlを加え、溶解またはホモジナイズし、5分間、室温で保存した。次に、この溶液にクロロホルム0.2mlを加え15秒間激しく攪拌し、3分間、室温で保存した。この溶液を遠心分離(12000×g、15分間、4℃)し、中間相、有機相を除去した後、水相約0.5mlにイソプロパノール0.5mlを加え、10分間、室温で保存した。この溶液を遠心分離(12000×g、10分間、4℃)し、得られた沈殿物に70%エタノール1mlを加え、攪拌し、遠心分離(75000×g、5分間、4℃)した。得られた沈殿物(全RNA)を風乾し、TE(pH8.0)で溶解した。
(2)プライマーの設計
目的遺伝子(トランスサイレチン、GAPDH)のリアルタイムPCR用のプライマーは、TaqMan probe(アプライドバイオシステムズ社)に含まれるものを使用した。各プライマーは以下のとおりである。
トランスサイレチン:(カタログ製品番号:Rn00562124_m1)
GAPDH:(カタログ製品番号:Rn99999916_s1)
(3)条件(温度、時間)
前記(1)で調製した各全RNA 1μg、ExpressAmp First Strand cDNA Synthesis Kit for PCR(Express Biotech International社)に含まれるoligo(dT)プライマー 1μlの混合液を12μlとし、70℃で10分間インキュベーションする。この間に、当該キットに含まれる5×反応緩衝液4μl、DTT(dithiothreitol)2μl、dNTP mix 1μlおよびMMLV RT 1μlからなるRT master mixを調製し、氷上で冷却した。前記混合液のインキュベーションが8分経過した後、前記RT master mixを45℃でインキュベーションした。前記混合液のインキュベーションが10分経過した後、室温で1分間放置した。1分経過後、前記混合液に8μlのRT master mixを加え、45℃で1時間インキュベーションした。更に90℃で5分間インキュベーションし、反応を停止した後、氷上で10分間冷却した。当該キットに含まれる RNaseH 1μLを添加し、37℃で20分間反応させた。以上の操作によって、全RNAからcDNAを取得した。
次にPCR反応を以下のように行った。
得られた各cDNA 1μl、トランスサイレチンまたはGAPDHに対するPCR用プライマーとTaqManプローブを含む20×TaqMan Gene Expression Assay Mix 1μl、2×TaqMan Universal PCR Master Mix、No Amp Erase UNG 10μl、RNase−フリー水 8μlの混合液を調整した。
PCRは、2分・50℃、10分・95℃の後、15秒・95℃、1分・60℃を1サイクルとし、40サイクル繰り返した。
(4)定量方法
それぞれの遺伝子に対して検量線を作成した。GAPDHを内在性コントロールとし、トランスサイレチンのmRNAの発現量を補正した。ビヒクル群における自然睡眠群のmRNAの発現量を1とし、ビヒクル群における断眠群、GGA投与群における自然睡眠群と断眠群のトランスサイレチンのmRNAの発現量を相対的に比較した。
2.実験結果
図2に、リアルタイムPCR解析の結果を示す。
ビヒクル群において、自然睡眠群と断眠群とを比較した結果、DNAチップ解析の結果と同様に、断眠群においてトランスサイレチンの有意な増加が認められた(図2B)。
GGA投与群において、自然睡眠群と断眠群とを比較した結果、断眠群においてトランスサイレチンの増加は認められなかった(図2B)。
実施例3:PCRによる発現解析(2)
アミロイド前駆タンパク質(APP;amyloid precursor protein)およびBACE1の発現解析を以下の通り行った。
1.実験条件および実験方法
実施例1に従って、断眠実験を実施した後、海馬から抽出したmRNAに対して、RT−PCR法を用いてAPPおよびBACE1のmRNAの発現を再検討した。RT−PCR解析は個体別に行った。
RT−PCR解析は、以下の通りに行った。
(1)全RNAの抽出
実施例1に従って、ラットに断眠実験を再度実施した後、ビヒクル群における自然睡眠群と断眠群(各群3匹)、GGA投与群における自然睡眠群と断眠群(自然睡眠群3匹、断眠群4匹)の海馬から、ISOGEN(ニッポンジーン社)と添付のマニュアルに従って全RNAを抽出した。すなわち、海馬組織(50mg)にISOGEN1mlを加え、ホモジナイズし、5分間、室温で保存した。次に、この溶液にクロロホルム0.2mlを加え15秒間激しく攪拌し、3分間、室温で保存した。この溶液を遠心分離(12000×g、15分間、4℃)し、中間相、有機相を除去した後、水相約0.5mlにイソプロパノール0.5mlを加え、10分間、室温で保存した。この溶液を遠心分離(12000×g、10分間、4℃)し、得られた沈殿物に70%エタノール1mlを加え、攪拌し、遠心分離(75000×g、5分間、4℃)した。得られた沈殿物(全RNA)を風乾し、TE(pH8.0)で溶解した。
(2)プライマーの設計
目的遺伝子(APP、BACE1、GAPDH)のPCR用のプライマーは、北海道システムサイエンスに依頼して合成した。各プライマーの塩基配列は以下のとおりである。
APP :5’-GCGGAGTTCGGACATGATTCAGGC-3’(配列番号:9)
:5’-CTATGACAACGCCACCCACCATGAG-3’ (配列番号:10)
BACE1:5’-CATTGCTGCCATCACTGAAT-3’ (配列番号:11)
:5’-CAGTGCCTCAGTCTGGTTGA-3’ (配列番号:12)
GAPDH:5’-TCATGACCACAGTCCATGCCATCACT-3’ (配列番号:13)
:5’-GCCTGCTTCACCACCTTCTTGATGT-3’ (配列番号:14)
(3)条件(温度、時間)
前記(1)で調製した各全RNA 1μg、10×PCRバッファー(アプライド社)、25mM MgCl2(アプライド社) 2μl、2.5mM dNTP mix(アプライド社) 4μl、オリゴ(dT)プライマー(アプライド社) 1μlの混合液を9μlとし、65℃で5分間インキュベーションする。その後、RNase インヒビター 20U/μl (アプライド社) 0.5μl、MuLV リバーストランスクリプターゼ 50U/μl(アプライド社) 0.5μlを加え、42℃で15分間インキュベーションした。99℃で5分間インキュベーションし反応を停止した後、氷上で10分間冷却した。以上の操作によって、全RNAからcDNAを取得した。
次にPCR反応は以下のように行った。
前記(3)で調製した各cDNA 1μl、APP、またはBACE1、またはGAPDHに対するPCR用プライマーと25mM MgCl2(アプライド社) 0.4μl、10×PCRバッファー(アプライド社) 0.8μl、AmpliTaq DNA ポリメラーゼ、5U/μl(アプライド社)0.1μl、RNase−フリー水 6.6μlの混合液(計10μl)を調整した。
PCRは、3分・95℃の後、2分・95℃、5分・60℃、2分・72℃を1サイクルとし、30サイクル繰り返し、その後10分・72℃で反応を終了した。
(4)定量方法
NIH imageを用いてそれぞれの遺伝子に対してGAPDHを内在性コントロールとし、APP、BACE1のmRNAを補正した。ビヒクル群における自然睡眠群のmRNAの発現量を1とし、ビヒクル群における断眠群、GGA投与群における自然睡眠群と断眠群のAPP、BACE1のmRNAの発現量を相対的に比較した。
2.実験結果
図3に、RT−PCR解析の結果を示す。
ビヒクル群において、自然睡眠群と断眠群とを比較した結果、断眠群においてAPPおよびBACE1について有意な増加が認められた(図3B)。
APPについては、GGA投与群においても、断眠によりmRNAの有意な増加が認められた(図3B左)。一方、BACE1については、断眠群においてmRNAの増加は認められなかった(図3B右)。
実施例4:断眠後の睡眠のリバウンドに対するゲラニルゲラニルアセトン(GGA)の効果
1.実験条件および実験方法
下記以外は、実施例1の実験条件および実験方法に従って実験を行った。
ラットをネンブタール(50〜70mg/kg)で麻酔し、脳波(EEG)を測定するため、ステンレス鋼の小型ネジ電極を頭蓋内に、また、筋電図(EMG)を測定するため、テフロン(登録商標)で被覆したステンレス鋼線材を両側の頸筋に植え込んだ。1対のラットを同じ日に手術し、全体として8対のラットを実験に供した。手術後、防音されたレコーディングルームの室内(実験環境は、実施例1と同様)に並べられた四角いプラスチック製のケージ(長さおよび幅30cm、深さ35cm)に、自然睡眠群(溶媒のみ投与)、GGA投与群(断眠日の2日前にGGAを投与)、そしてビヒクル投与群(断眠日の2日前に溶媒のみを投与)の3群を個別に入れた。各群のラットを可撓ケーブルによってポリグラフおよびコンピュータを利用したデータ収集システムCED 1401データ処理装置(Cambridge Electronic Design, Cambridge, UK)へ接続し、睡眠量を測定した。断眠は、ポリグラフによる記録とデジタルデータ収集を開始してから24時間後の明期開始時より6時間、ハンドリングをすることにより行った(図4における横棒部分に対応)。断眠直後の回復期も引き続き24時間記録を行った。なお、全ての実験は日本生理学会に承認された動物実験に関する指針に従って実施した。
2.実験結果
図4および5に、リバウンド実験の結果を示す。
ビヒクル群と自然睡眠群を比較すると、断眠により、睡眠量が有意に増加した。この増加は、暗期にまで延長する(図5)。暗期はラットの活動期であり、活動期に睡眠量が増加していることから、断眠は日中の眠気を引き起こすことが認められた。この状態は、寝不足により日中に眠気を引き起こしているヒトに相当する。
一方、GGA投与群と自然睡眠群を比較すると、断眠後6時間の睡眠増加は抑制されないが、暗期においてビヒクル群で見られる有意な睡眠増加が消失しており、暗期後半ではビヒクル群との間にも有意な差が認められた(図5)。
この結果から、断眠によって引き起こされる活動期の眠気を、GGAが抑制することが示された。
実施例5:断眠後のノンレム睡眠およびレム睡眠のリバウンドに対するGGAの効果
1.実験条件および実験方法
下記以外は、実施例4の実験条件および実験方法に従って実験を行った。
ラットは、GGA投与群(断眠日の3日前にGGAを投与)、そしてビヒクル投与群(断眠日の3日前に溶媒のみを投与)の2群(各8匹)について行った。断眠は、実験を開始してから42時間後の明期開始時より6時間、オンラインのコンピュータの画面上のEEGおよびEMGパターンを注意深く監視し、ラットがノンレム睡眠に入った時(徐波または睡眠紡錘波が出現)、刷毛を用いてラットの背中を軽く撫でて起こすことにより行った(図6および7における斜線部分に対応)。なお、手術1週間後の2〜3日間、ラットの背中を小さな柔らかい刷毛を用いて軽く撫でてあらかじめ断眠の処置に慣れさせておいた。断眠直後の回復期も引き続き24時間記録を行った。回復期の後、双方の群のラットを断頭により屠殺し、脳を全て取り出した。サンプルを直ちにドライアイス上で凍結させ、その後−80℃で保存した。
ラットの覚醒状態への断眠の影響については、オフラインでの睡眠スコアの記録を、コンピュータ画面上でEEGおよびEMG活動を視覚によって評価することで行った。5秒ごとに覚醒状態を、覚醒、ノンレム睡眠およびレム睡眠に分類した。ノンレム睡眠の特徴は、継続的な高電圧徐波のEEGと低レベルのEMG活動である。レム睡眠の特徴は、継続的にシータ波を伴う低電圧のEEGとEMGの全体的な抑制である。6時間ごとに覚醒状態をまとめた。
2.実験結果
図6に、3日間のノンレム睡眠およびレム睡眠の経時的変化を示す。断眠期間中、ノンレム睡眠の10〜20%は剥奪されなかったが、レム睡眠は完全に剥奪された(図6の斜線部分)。断眠の後、ノンレム睡眠およびレム睡眠の双方の睡眠量が基準日(GGA投与後1日目)と比較して増加を示した。ノンレム睡眠量は群間で有意な差が認められなかったが、断眠後のレム睡眠量の増加は、GGA投与群ではビヒクル投与群と比較して、断眠直後の明期後半および暗期後半で有意に抑制された。
図7は、基準日の値からの睡眠の相対変化を示す。図6に見られるように、ノンレム睡眠およびレム睡眠の双方が断眠に対するリバウンド、およびその後の暗期(活動期)中に持続される睡眠の増加を示した。レム睡眠のリバウンドは、明暗周期の後半にGGA投与群において有意に抑制された。
実施例6:断眠による深部体温の上昇に対するGGAの効果
1.実験条件および実験方法
下記以外は、実施例5の実験条件および実験方法に従って実験を行った。
ラットをネンブタール(50〜70mg/kg)で麻酔し、深部体温を測定するため、深部体温測定用の無線装置を腹腔内に植え込んだ。該装置を用いて、断眠中および断眠後18時間の深部体温について、測定を行った。
2.実験結果
図8は、基準日の値からの深部体温の相対変化を示す。断眠中に深部体温は約1℃上昇したが、この増加はGGA投与群ではビヒクル投与群と比較して有意に少なかった。また、断眠後の明期後半に深部体温は基準日と比較して双方の群で低下したが、この低下はGGA投与群ではビヒクル投与群と比較して有意に大きかった。
実施例7:HSP70およびチロシン水酸化酵素(TH)の発現解析
1.実験条件および実験方法
実施例5で採取した脳を用いて、以下の通りリアルタイムPCRによる発現解析を行った。なお、HSP70の発現解析については海馬を、チロシン水酸化酵素(TH)の発現解析については脳幹を用いた。
全RNAをチオシアン酸グアニジン−フェノール−クロロホルム混合物(ISOGEN;ニッポンジーン)を用い説明書に従って単離した。RNAサンプルをRNアーゼフリーDNアーゼI(タカラバイオ株式会社)で処理してゲノムDNAの混入を除去した。20μgのRNA、DNaseIバッファー、20U RNase阻害剤および10UのRNアーゼフリーDNアーゼIを50mlの水中の反応混合物で37℃で30分間インキュベートした。RNAを1容量のフェノール:クロロホルム(1:1)で抽出し、2200gにて5分間の遠心分離後、上部水層に存在するRNAを氷冷した無水エタノールで沈殿させ、4℃にて15000g15分間の遠心分離によって回収した。残りのアルコールを蒸発させ、ペレットを10mlのDEPC処理水に再懸濁した。RT反応を、GeneAmp RNA PCRキット(Applied Biosystems, Foster, CA)を用いて行った。1ミリリットルの混合物をリアルタイムPCRに用いた。
HSP70のmRNAのリアルタイムPCR定量化を遺伝子特異的プライマーおよびTaqMan蛍光プローブセット(TaqMan Gene Expression Assays; Applied Biosystems)を用いて行った。TaqManプローブの5’−レポーターおよび3’−クエンチャーの色素はそれぞれFAM(6−カルボキシ−フルオレセイン)および無しであった。各プライマーは以下のとおりである。
HSP70:(カタログ製品番号:Rn00596544_m1)
TH:(カタログ製品番号:Rn00562500_m1)
GAPDH:(カタログ製品番号:Rn99999916_s1)
リアルタイムPCR反応は、説明書に従ってTaqMan universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いてABI PRISM 7300配列検出システムで実施した。反応混合物(20ml)は、9mlのcDNAアリコートおよび1mlのGene Expression Assay Mix、ならびに10mlのTaqMan Universal PCR Master Mixからなった。PCR増幅を2分間50℃にて行い、次に95℃まで10分間加熱し、その後95℃で15秒および60℃で1分を40サイクル実施した。全脳虚血後のmRNA発現の相対変化を方程式によって決定した。Ct値は蛍光シグナルが閾値を越える時点のサイクル数である。ラットHSP70およびGAPDHの標準曲線をTaqMan PC反応から得たR閾値サイクル値(Ct)から生成し、既知量のcDNAの段階希釈に対してプロットした。
2.実験結果
図9および10に、リアルタイムPCR解析の結果を示す。HSP70については、自然睡眠群のGGA投与群ならびに断眠群のGGA投与群およびビヒクル投与群において、自然睡眠群のビヒクル投与群と比較して、mRNAの有意な増加が認められた。また、THについては、断眠群のGGA投与群のみにおいて、自然睡眠群のビヒクル投与群と比較して、mRNAの有意な増加が認められた。
DNAチップによる解析の結果を示した図である。 トランスサイレチン(TTR)についての、リアルタイムPCR解析の結果を示した図である。図中において*は、自然睡眠群のビヒクル投与群と比較して有意差(スチューデントt検定、p<0.05)があることを意味する。 BACE1およびAPPについての、RT−PCR解析の結果を示した図である。図中において*は、自然睡眠群のビヒクル投与群と比較して有意差(スチューデントt検定、p<0.05)があることを意味する。 1時間における睡眠(ノンレム睡眠+レム睡眠)が占める割合を示した図である。 断眠後の睡眠量(ノンレム睡眠+レム睡眠)を6時間毎に測定した結果を示した図である。図中において*は断眠群(ビヒクル群およびGGA群)の睡眠量が自然睡眠群の睡眠量と有意差(p<0.05)があることを意味する。また、♯は断眠群において、GGA群の睡眠量がビヒクル群の睡眠量と有意差(p<0.05)があることを意味する。統計分析は、多重比較シェフェ検定の後に反復二元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った。 ノンレム睡眠およびレム睡眠について、断眠前後3日間の睡眠量を6時間毎に測定した結果を示した図である。暗い部分は暗期を、斜線部分は断眠期間を示す。図中において*は、GGA群の睡眠量がビヒクル群の睡眠量と有意差(p<0.05)があることを意味する。統計分析は、多重比較シェフェ検定の後に反復二元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った。 ノンレム睡眠およびレム睡眠について、断眠後の睡眠量を6時間毎に測定した結果を示した図である。暗い部分は暗期を、斜線部分は断眠期間を示す。図中において*は、GGA群の睡眠量がビヒクル群の睡眠量と有意差(p<0.05)があることを意味する。統計分析は、多重比較シェフェ検定の後に反復二元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った。 断眠中および断眠後の深部体温を6時間毎に測定した結果を示した図である。暗い部分は暗期を、斜線部分は断眠期間を示す。図中において*は、GGA群の睡眠量がビヒクル群の睡眠量と有意差(p<0.05)があることを意味する。統計分析は、多重比較シェフェ検定の後に反復二元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った。 HSP70についての、リアルタイムPCR解析の結果を示した図である。図中において*は、自然睡眠群のビヒクル投与群と比較して有意差(スチューデントt検定、p<0.05)があることを意味する。 チロシン水酸化酵素についての、リアルタイムPCR解析の結果を示した図である。図中において*は、自然睡眠群のビヒクル投与群と比較して有意差(スチューデントのt検定、p<0.05)があることを意味する。

Claims (17)

  1. トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダイズすることができる二種のポリヌクレオチドからなるプライマーペアであって、前記ポリヌクレオチドが、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の素因を持ちうる患者における睡眠不足または睡眠障害の検出に用いるためのプライマーペア。
  2. トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドからなるプローブであって、前記ポリヌクレオチドが、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の素因を持ちうる患者における睡眠不足または睡眠障害の検出に用いるためのプローブ。
  3. トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダイズすることができる二種のポリヌクレオチドからなるプライマーペアであって、前記ポリヌクレオチドが、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の検出のための指標の検出に用いるためのプライマーペア。
  4. トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドからなるプローブであって、前記ポリヌクレオチドが、トランスサイレチン遺伝子のヌクレオチド配列またはその相補配列の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の検出のための指標の検出に用いるためのプローブ。
  5. 睡眠不足または睡眠障害を検出する方法であって、睡眠不足または睡眠障害の素因を持ちうる患者の被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を測定する工程を含んでなり、該被験試料において検出されるトランスサイレチン遺伝子の発現量が正常試料において検出されるトランスサイレチン遺伝子の発現量を上回る場合に睡眠不足であると、または睡眠障害に罹患していると判定する、方法。
  6. 被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を測定する工程を含んでなる、睡眠不足または睡眠障害を検出するための指標を検出する方法。
  7. 被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量の測定が、下記工程により実施される請求項またはに記載の方法:
    (a)被験試料から得られたポリヌクレオチドを鋳型とし、請求項1または3に記載のプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施する工程;および
    (b)形成された増幅産物の量を測定する工程。
  8. 工程(a)において、被験試料から調製されたmRNAまたはそのmRNAから転写された相補的DNA(cDNA)を鋳型として用いる、請求項に記載の方法。
  9. 工程(b)の後に、(c)被験試料において検出される増幅産物の量と正常試料において検出される増幅産物の量とを比較する工程を更に含んでなる、請求項またはに記載の方法。
  10. 被験試料におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量の測定が、下記工程により実施される請求項またはに記載の方法:
    (d)被験試料由来のポリヌクレオチドと、請求項2または4に記載のプローブとを接触させる工程;および
    (e)ハイブリダイゼーション複合体の量を測定する工程。
  11. 工程(d)において、被験試料から調製されたmRNAまたはそのmRNAから転写された相補的DNA(cDNA)を、請求項2または4に記載のプローブと接触させる、請求項10に記載の方法。
  12. 工程(e)の後に、(f)被験試料において検出されるハイブリダイゼーション複合体の量と正常試料において検出されるハイブリダイゼーション複合体の量とを比較する工程を更に含んでなる、請求項10または11に記載の方法。
  13. 被験試料におけるBACE1遺伝子の発現量を測定する工程をさらに含んでなる、請求項5〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1に記載のプライマーペアまたは請求項2に記載のプローブを少なくとも含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の素因を持ちうる患者における睡眠不足または睡眠障害を検出するためのキット。
  15. 請求項3に記載のプライマーペアまたは請求項4に記載のプローブを少なくとも含んでなる、睡眠不足または睡眠障害の検出のための指標を検出するためのキット。
  16. BACE1遺伝子の検出手段であって、プライマーペアおよびプローブからなる群から選択される検出手段をさらに含んでなる、請求項14または15に記載のキット。
  17. 睡眠不足の緩和または睡眠障害の治療に有効な化合物のスクリーニング方法であって、下記工程:
    (i)非ヒト動物に被験化合物を投与する工程;
    (ii)被験化合物が投与された非ヒト動物を、断眠させる工程;
    (iii)断眠させた非ヒト動物におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を測定する工程; および
    (iv)被験化合物が投与された非ヒト動物におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量と、被験化合物が投与されず、かつ断眠させた非ヒト動物におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量とを比較する工程
    を含んでなり、
    被験化合物投与群におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量が、被験化合物非投与群におけるトランスサイレチン遺伝子の発現量を下回る場合に、被験化合物が、睡眠不足の緩和または睡眠障害の治療に有効であると判定する、方法。
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