JP4988203B2 - 脊椎固定方法および脊椎固定装置 - Google Patents

Description

本発明は、医療装置に関し、特に、脊椎を安定させる方法および装置に関する。

ヒトの脊椎は、椎骨と呼ばれる複数の骨で形成された、体重を支える、可とう性のある柱体である。椎骨は３３個あり、５つの領域（頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、および尾椎）のいずれか一つに分類することができる。脊椎の上から下にかけて、一般に、７個の頚椎、１２個の胸椎、５個の腰椎、５個の仙椎、および４個の尾椎がある。脊椎の頸部領域、胸部領域、および腰部領域は通常、個人の一生にわたって分離している。これに対して、成人の仙骨領域および尾骨領域の椎骨は、結合されて２個の骨を形成している。すなわち、５個の仙椎が延びて仙骨を形成し、４つの尾椎が延びて尾骨を形成している。

一般に、各椎骨は前部の中実セグメントすなわち椎体と、後部セグメントすなわち椎弓とを含んでいる。椎弓は一般に、２個の椎弓根と２個の椎弓板とで形成され、これらは７個の突起、すなわち、４個の関節突起と、２個の横突起と、１個の棘突起とを支持している。椎骨のこれらの一般的な特徴には例外がある。たとえば、第１頚椎（環椎）には椎体も棘突起もない。さらに、第２頚椎（軸椎骨）は、歯の形をしており、軸椎骨の椎体の上面から垂直方向上向きに延び、強靭で高い突起である歯状突起を有している。脊椎の構成に関するより詳細な説明は、グレイズアナトミー，クラウン出版社，１９７７年，３３〜５４頁等の一般的な文献に記載されている。同書は、引用によって本明細書に組み込まれる。

ヒトの椎骨および関連する結合部位には、疼痛および障害を引き起こす様々な疾患および病態が生じる。これらの疾患および病態には、脊椎症、脊椎すべり症、椎骨不安定、脊椎狭窄症、ならびに、椎間板の変性、ヘルニヤ、およびそれらの併発が含まれる。さらに、椎骨および関連する結合部位は、骨折および靭帯断裂を含む損傷、ならびに椎弓切除を含む外科処置を受ける。

疾患および病態に関連して生じる疼痛および障害は、ある椎骨の全部または一部が脊柱の他の部分からずれることによって引き起こされることが少なくない。過去２０年にわたって、ずれた椎骨を正常な位置に復元し、脊柱に固定する様々な方法が開発されている。これらの方法は通常、脊椎の様々な部分の骨折および／または結合を安定させるのに用いられる様々な固定システムを含んでいる。これらの固定システムは、ワイヤ、ステープル、ねじ（椎骨の椎弓根を貫いて挿入されることが少なくない）等の様々な固定部材によって椎骨に取り付けられ、２つまたは３つ以上の椎骨にわたる、ロッドやプレート等の様々な長手方向部材を含んでいることもある。これらのシステムは、脊椎の後部に取り付けられる場合もあり、前部に取り付けられる場合もある。他の適用例では、安定化のために、１本または複数のねじが隣接する椎骨を通して挿入されることもある。

従来技術における様々な努力にもかかわらず、移動および回転運動に抵抗し、脊椎内に容易かつ迅速に設置でき、改善されたロック力を有する、脊椎固定用の整形外科用固定装置が依然として必要である。

本発明の一つの態様によれば、２個の椎骨を互いに押し付ける方法が提供される。この方法は、骨アンカーを有する遠位部と近位部とを有する固定装置を、第１の椎骨の一部を貫いて前進させることと、骨アンカーを第２の椎骨内に設定することとを含んでいる。近位アンカーは、２個の椎骨が互いに押し付けられるように軸方向に進められる。一つの実施態様では、骨アンカーは、固定装置を第１の椎骨に固定するように回される。他の実施態様では、固定装置は、上側椎骨の下側関節面を通って、すぐ下の椎骨の横突起の基部内に進められる。他の実施態様では、固定装置は、上側椎骨の下関節面を通して、すぐ下の椎骨の関節面または椎弓根の基部内に進められる。これらの方法は、椎骨の結合後の装置の取外しなどのために、第１の部分を第２の部分から分離するステップをさらに含んでいてもよい。さらに、この方法は、固定装置を左右対称に設定するために、これらのステップのいくつかを繰り返すことを含んでいてもよい。

本発明の一つの態様によれば、２個の椎骨を互いに押し付ける方法が提供される。この方法は、骨アンカーを有する遠位部と近位部とを有する固定装置を、第１の椎骨の一部を貫いて前進させることと、骨アンカーを第２の椎骨内に設定することとを含んでいる。固定装置を、プレート、ロッド、ケージ等の移植可能な支持構造物の開口部を通して前進させ、椎体の中に固定して、支持構造物を椎体に取り付けるようにしてもよい。

本発明の他の実施態様によれば、脊椎固定装置は、近位端と遠位端とを有する細長いボディと、遠位端に設けられた遠位アンカーと、ボディの遠位アンカーよりも近位側に設けられた保持構造と、ボディによって移動可能に支持された近位アンカーとを有している。少なくとも１つの相補的な保持構造が近位アンカーに設けられ、ボディの近位アンカーに対して近位方向への動きを許容し、ボディの近位アンカーに対して遠位方向への動きには抵抗するようにされている、フランジが、近位アンカーを受けるようにされている。近位アンカーとフランジは、近位アンカーおよびボディの長手方向軸線と、フランジの長手方向軸線とに関する角度調整を可能にする相補的な表面構造を有している。

本発明の他の実施態様によれば、脊椎を固定する方法は、骨アンカーを形成する第１の部分と近位端を形成する第２の部分とを持つボディを有する固定装置を、第１の椎骨の一部を貫いて前進させるステップと、固定装置の骨アンカーを第２の椎骨内に前進させるステップと、近位アンカーを固定装置に沿って遠位方向に前進させるステップと、第１および第２の椎骨を互いに押し付ける力を調整するように、近位アンカーをボディに対して遠位方向に前進させるステップとを含んでいる。

本発明の他の実施態様によれば、脊椎を固定する方法は、骨アンカーを形成する第１の部分と近位端を形成する第２の部分とを持つボディを有する第１の固定装置を第１の椎骨内に前進させるステップと、骨アンカーを形成する第１の部分と近位端を形成する第２の部分とを持つボディを有する第２の固定装置を第２の椎骨内に前進させるステップと、固定構造の第１の部分を第１の固定装置に連結するステップと、固定構造の第２の部分を第２の固定装置に連結するステップと、第１の近位アンカーを第１の固定装置のボディに沿って遠位方向に進め、この近位アンカーをボディに対して近位方向に引き込むことによって、第１の固定構造を第１の椎骨に固定するステップと、第２の近位アンカーを第２の固定装置のボディに沿って遠位方向に進め、第２の近位アンカーをボディに対して近位方向に引き込むことによって、第２の固定構造を第２の椎骨に固定するステップとを含んでいる。

本発明の他の特徴および利点は、添付の図面および特許請求の範囲を併せて検討すれば、以下の好ましい実施形態についての詳細な説明に照らし、当業者には明らかになろう。

本発明の固定装置は主として脊椎固定処置に関して開示される。本明細書の開示を踏まえれば当業者には明らかであろうが、本明細書に開示される方法および構造は、様々な医療用途のいずれにも適用されることが意図されている。たとえば、骨固定装置は、大腿骨の近位骨折と様々な骨折部および骨切断術に、ならびに、指節間および中手指節の関節固定術、中手骨および指骨の横骨折固定術、中手骨および指骨のらせん骨折固定術、中手骨および指骨の斜骨折固定術、中手骨および指骨の顆間骨折固定術等の、手の中手骨および指骨の骨切断術や固定等に、さらには、当技術分野で公知の他の骨切断術や固定に適用することができる。たとえば、引用によって本明細書に組み入れられる米国特許第６５１１４８１号を参照されたい。本明細書に記載された骨固定装置を用いて、指骨および中足骨の様々な骨切断術や、足の様々な骨折部を安定させることができる。これには、特に、オースティンおよびレバルディン・レアド(Reverdin-Laird)によって発表された、遠位骨幹端骨切断術、ベースウェッジ骨切断術、斜め骨幹、デジタル関節固定術その他、当業者に公知の他の様々な骨切断術等が含まれる。これらの固定装置を用いて、腓骨および脛骨踝の骨折、パイロン（pilon）骨折、および脚の骨の他の骨折部を固定し安定させることができる。固定装置はプレートを使用してもしなくてもよく、固定装置およびプレートは吸収可能なタイプでも吸収不能なタイプであってもよく、本発明の他の実施形態を用いてもよい。固定装置を用いて、靭帯再付着や他の軟組織付着処置のように、組織または構造物を骨に付着させることもできる。移植物および処置に応じて、再吸収可能または再吸収不能な固定装置のいずれかを用いて、軟組織付着用の組織スパイクを有しまたは有しないプレートおよび座金、ならびに他の移植物を骨に付着させることもできる。この固定装置を用いて、組織をぶら下げる様々な処置の際などに、縫い糸を骨に付着させることもできる。本明細書に記載された骨固定装置は、プレートまたは座金であって、そのすべてが永久的または吸収可能のいずれかであるか、またはそれらが混在しているプレートまたは座金と共に、またはこれらを使わずに用いることができる。

図１を参照すると、骨固定装置１２の例示的な実施形態の側面図が示されている。図１では、一対の固定装置１２は、隣接する椎骨１０内に設置されている。以下に詳しく説明するように、骨固定装置１２は、脊椎を安定させる様々な技術に用いることができる。たとえば、骨固定装置１２は、椎弓根ねじまたは関節面ねじとして使用することができる。ここで、椎弓根ねじまたは関節面ねじは、隣接しまたは隣接しない椎骨の一方の側のみに、または両側に対称的に取り付けることができ、かつ１つ以上の椎骨の結合を容易にするように、１つ以上のリンケージロッドまたはプレートと組み合わせて使用することができる。本明細書に開示される骨固定装置１２は、椎弓板間、関節面間、または関節面−椎弓根間（たとえば、バウチャー技術）への適用において、２つの隣接する椎骨を互いに固定する固定ねじとして用いることもできる。当業者には、本明細書に開示される骨固定装置は、骨切断術後の術後安定、人工椎間板への交換、脊椎の歯状骨折および他の骨折の修復、ならびに脊柱を一時的または永久的に安定させる他の用途に用いることができることを認識されよう。

次に、図２〜４を参照して、例示的な固定装置１２について詳しく説明する。固定装置１２は、近位端３０と遠位端３２との間を延びるボディ２８を有している。ボディ２８の長さ、直径、および構成材料は、目的の臨床用途に応じて変えることができる。成人のヒトの脊椎固定に最適化された実施形態では、ボディ２８は一般に、長さが約２０〜９０ｍｍの範囲内であり、最大直径が約３．０〜８．５ｍｍの範囲内である。後述のらせんアンカーの長さは、約８〜８０ｍｍとすることができる。もちろん、これらの寸法が例示的なものであり、特定の患者または処置の必要に応じて変えることができることが理解されよう。

一つの実施形態では、ボディ２８はチタンを含んでいる。しかし、以下に詳しく説明するように、完成した固定装置１２の寸法および所望の構造完全性に応じて、他の金属または、生体吸収可能または吸収不能な高分子材料を使用してもよい。

ボディ２８の遠位端３２は、海綿骨アンカーまたは遠位皮質骨アンカー３４を備えている。一般に、脊椎固定では、遠位骨アンカー３４は、第１の椎骨の一部（たとえば、関節面や椎弓根）に回転しながら挿入されるようになっている。図示の実施形態では、遠位アンカー３４は、海綿骨および／または遠位皮質骨と噛み合うらせんロック構造７２を有している。図示の実施形態では、ロック構造７２は、軸方向孔の周りに巻かれたフランジを有している。フランジは、遠位アンカーの軸方向長さおよび目的の用途に応じて、少なくとも１回、一般に２回程度から５０回程度、またはそれ以上、全周を巻いて延びている。フランジの巻き数は一般には、２回程度から２０回程度であろう。らせんフランジ７２は、海綿骨内の保持力を最適化して押し付け力を最適化するピッチおよび軸方向間隔を備えていることが好ましい。

図示の実施形態のらせんフランジ７２は、概ね三角形の断面形状を有している（図４参照）。しかし、らせんフランジ７２は、本明細書の開示を踏まえた通常の実験によって特定の用途に望ましいと考えられる、矩形、卵形等の様々な断面形状を有していてもよいことを理解されたい。らせんフランジ７２の外縁部は外側境界を形成している。外側境界の直径と中央孔の直径との比は、海綿骨内の所望の保持力の観点から、および、遠位アンカー３４の構造完全性および強度を十分に検討して、最適化することができる。遠位アンカー３４の、最適化可能な他の点は、図示の実施形態では概ね円筒状である外側境界および中央コアの形状である。

らせんフランジ７２の遠位端３２および／または外縁部は、非外傷性（たとえば、先が尖っていない、または、柔らかい）である。これによって、固定装置１２が、移植後に、解剖学的に遠位方向に、場合によっては椎骨の外部に移動しにくくなる。遠位方向への移動は、以下に説明する近位アンカー５０の寸法および存在によっても抑制される。脊柱における遠位方向への移動は、遠位アンカーが脊椎内および／または脊椎の周りにある組織や、神経や、血管や、脊髄を損傷する可能性があるため、特に不利である。

遠位アンカー３２については、他の様々な構成を用いることもできる。たとえば、２００１年１１月１３日に出願された同時係属の米国特許出願第１０／０１２６８７号に記載された様々な遠位アンカーを、本明細書に記載された固定装置１２に組み込むことができる。この出願の内容全体は、引用によって明示的に本明細書に組み入れられる。特に、遠位アンカーは、ワイヤ上への配置を容易にするようにカニューレ（管）として形成された、従来のねじと同様の、中央コアを囲む単一のらせんねじを有していてもよい。あるいは、第１のねじの遠位端が第２のねじの遠位端に対して回転方向にずれた二重らせんねじを利用してもよい。二重らせんねじを使用すると、対応する単一のらせんねじと比べて、所定の回転角に対して軸方向により多く移動し、かつ保持力が大きくなる。所望の性能特性、遠位骨の健全性、および遠位アンカーが海面骨のみに噛み込むかそれとも皮質骨にも噛み込むかを考慮して、特定の遠位アンカー構成を目的の使用方法に応じて最適化することができる。

特に図３、４、および４Ａを参照すると、ボディ２８は、接合部４０で連結された第１の部分３６と第２の部分３８とを有している。図示の実施形態では、第１の部分３６は遠位アンカー３４を保持し、一方、第２の部分３８はボディ２８の近位端３０を形成している。以下に詳しく説明するように、いくつかの実施形態では、第２の部分３８は、ボディ２８を引っ張るのに用いることができ、したがって、「引張りピン」と呼ばれることがある。第１および第２の部分３６、３８は、接合部４０で、好ましくは互いに取外し可能に連結されている。図示の実施形態では、第１および第２の部分３６、３８は、互いに噛み合うねじによって、互いに取外し可能に連結されている。具体的には、図４Ａを見ると最もよく分かるように、ボディ２８は、好ましくは近位端３０からボディ２８を貫通して遠位端３２まで延びる中央孔４２を形成する内面４１を含んでいる。内面４１の第１の部分３６の近位端には、第１のねじ部４４が形成されている。第１のねじ部４４は、第２の部分３８の外面４５に設けられた第２のねじ部４６と噛み合うようにされている。第１および第２のねじ部４４，４６の互いに噛み合う環状のねじによって、第１および第２の部分３６，３８は互いに取外し可能に連結されることができる。修正された一つの実施形態では、第１および第２のねじ部４４，４６の向きを逆にしてもよい。すなわち、第１のねじ部４４を第１の部分３６の外面に設け、第２のねじ部４６を、内面４１の、第２の部分３８の遠位端に設けてもよい。後述のように移植後に第２の部分３８の取外せるようにするために、他の様々な、取外し可能な、相補的形状の噛合い構成のいずれかを用いることもできる。

修正された構成では、第２の部分３８は、近位アンカーが前進させられ骨折部を押し付けている間に、遠位アンカー３４に近位方向の力をかけることができる様々な引張り部材のいずれかを有していてもよい。たとえば、様々なチューブまたはワイヤのいずれかを、第１の部分３６に取外し可能に取り付けることができる。このチューブまたはワイヤは、近位方向に近位側のハンドピースまで延ばすことができる。これらの構成では、第１の部分３６は、アイやフック等のラッチ部材の形をした取外し可能なコネクタを含んでいてもよい。第２の部分３８が、第１の部分３６と噛み合う、取外し可能な、相補的なコネクタ（たとえば、相補的なフック）を含んでいてもよい。このようにすれば、第２の部分３８が第１の部分３６に取外し可能に連結され、以下に説明するように、第２の部分によって第１の部分３６に近位方向への牽引力が掛けられる。あるいは、第２の部分３８に、アイ、フック、または横棒を備え、縫い糸またはワイヤを、その両端を装置の近位端に保持させて、アイ、フック、または横棒の周りまたはそれらの中を通して、延ばすようにしてもよい。圧縮ステップ中に緊張部材に近位方向への力がかけられた後、縫い糸またはワイヤの一方の端部を解放し、他方の端部を装置から引張れば外すことができる。当業者は、本明細書の開示を踏まえ、取外し可能な、近位方向に力をかける他の構造を考案することができよう。米国特許第６５１１４８１号に記載されたように、ボディを単一の部材で形成してよいことも理解されたい。なお、本特許は引用によって本明細書に組み込まれる。

図４に示されているように、ボディ２８は、当技術分野で理解されているように、配置用ワイヤ上への設置に対処するように、カニューレ（管）として形成されている。図示の中央カニューレは円形であるが、他の実施形態では、上述のようにボディ２８の第２の部分３８を取付けるかまたは取り外すために対応する雄工具を受け入れられるように、非円形、たとえば六角形でもよい。他の実施形態では、ボディ２８は部分的または全体的に中実であってもよい。

引き続き図２〜４を参照すると、ボディ２８の近位端３０には、ボディ２８の第２の部分３８を回転装置に回転可能に連結できるようにする回転継手７０が設けられていてもよい。ボディ２８の近位端３０は、望ましくは、１つまたは２つの別々の機能を果たすために回される。一つの用途では、近位端３０は、装置に力がかけられ取付け具が骨に固定された後、ボディ２８の第２の部分３８を取り外すために回される。回転継手７０の回転はまた、遠位アンカーを回しながら骨に打ち込むことにも用いられる。電気ドリルや手工具等の様々な回転装置のいずれをも利用することができ、これによって、医師はボディの近位端３０を手動で回すことができる。このため、回転継手７０は、１つまたは２つ以上平坦部や、スプライン等の、様々な断面形状のいずれを備えていてもよい。

一つの実施形態では、回転継手７０は、六角形などの多角形断面を有する軸方向くぼみを備えた、ボディ２８の近位側に突き出た突起を有している。回転継手７０は、機械加工またはフライス削りされた、またはボディ２８の近位端３０に取り付けられた雌部材として示されている。しかし、回転継手は、六角形または他の非円形断面を有する突起などの雄部材の形をしていてもよい。

固定装置の近位端３０は、近位アンカー５０を備えている。近位アンカー５０は、ボディ２８に沿って軸方向を遠位方向に移動可能であり、固定装置１２の遠位端３２と近位端３０との間の圧縮を可能にする。以下に説明するように、近位アンカー５０とボディ２８との間のねじやラチェット状構造などの相補的なロック構造は、通常の使用条件の下で、アンカー５０のボディ２８に対する近位方向への移動に抵抗する。近位アンカー５０は、本明細書の開示から明らかになるように、回転しながら、および／または回転せずに、ボディ２８に沿って軸方向に前進できることが好ましい。

図４を参照すると、近位アンカー５０は、ボディ２８に沿って同軸に移動するように、環状体などのハウジング５２を有している。以下にさらに詳しく説明するように、いくつかの実施形態では、ハウジング５０は、固定棒または板に形成された開口部に嵌る大きさの直径を有していてもよい。

最終位置では、ハウジング５２の遠位端は、第１の部分３６と第２の部分３８との間の連結部４０を越えて遠位方向に延びていることが好ましい。ハウジング５２は、ボディ２８の第１の部分３６の相補的な表面構造５８と協働する、半径方向内側に突き出たフランジ５６（図４Ｂおよび４Ｃ参照）等の、１つまたは２つ以上表面構造５４を備えている。図示の実施形態では、相補的な表面構造５８は、連続する環状リッジ、すなわち溝６０を有している。表面構造５４および相補的な表面構造５８は、近位アンカー５０のボディ２８に対して遠位側への軸方向移動を許容するが、ボディ２８に対して近位側への移動に抵抗する。

たとえば、図４Ｂを見ると最もよく分かるように、フランジ５６の近位端は、ボディ２８の長手方向軸線の方へずらされている。このため、近位アンカー５０がボディ２８に対して近位方向へ動かされようとすると、フランジ５６は、相補的な表面構造５８の溝すなわちリッジ６０と噛み合う。これによって、近位アンカー５０のボディ２８に対して近位方向への移動が防止される。これに対して、図４Ｃを見ると最もよく分かるように、近位アンカー５０がボディ２８に対して遠位方向へ動かされると、フランジ５６はボディ２８およびリッジ６０から外側に離れる方向に曲げられ、近位アンカー５０は遠位方向に移動することができる。もちろん、当業者は、一方向だけのラチェット状移動を可能にする他の様々な相補的な表面構造があることを認識されよう。たとえば、複数の環状リングやらせんねじまたは斜面ラチェット構造など、これらが向かい合う斜面構造や爪と協働する構造を使用してもよい。一つの実施形態では、向かい合うねじはラチェットとして働くような寸法を有している。

保持構造５８は、近位限界６２と遠位限界６４との間に、ボディ２８に沿って軸方向に間隔をおいて配置されている。近位限界６２と遠位限界６４との間の軸方向距離は、近位アンカー５０の所望の軸方向動作範囲に関係しており、したがって、固定装置１２の機能サイズの範囲に関係している。このため、例示的な実施形態の固定装置１２は、椎骨内に遠位アンカーが配置された後に、動作範囲内で、遠位アンカー３４と近位アンカー５０との間の椎骨を押し付けることができる。すなわち、遠位アンカーは椎骨の海綿骨および／または遠位皮質骨内に設定されると同時に、遠位アンカーを再配置したり、遠位アンカーを骨や他の椎骨の近位側に対する正確な位置に最初から配置する必要なしに、近位アンカーを、押し付け範囲内で、遠位アンカーに対して、遠位方向に前進させることができる。近位アンカーによる緊張が遠位アンカーの設定とは無関係におこなわれる動作範囲を設けることによって、装置の正確な測定が不要になるだけでなく、単一の装置を様々な脊椎固定処置に用いることができる。さらに、この構成によって、医師は、処置中に、遠位アンカーの位置を調整せずに、圧縮力を調整することができる。遠位アンカーが動いて脊柱からはずれると、脊柱の周囲や内部にある特に繊細な組織や、血管や、神経や、脊椎のいずれかまたは全部を損傷するおそれがあるが、医師は、このような可能性をなくし、または減ずるように、遠位アンカーを椎骨内に十分な深さに設定することに集中することができる。

多くの用途では、動作範囲は、装置の全長の少なくとも約１０％であり、装置全長の２０％または５０％またはそれ以上あれば十分である。脊椎への用途では、１０ｍｍ程度までの動作範囲を与えることができるが、それ以上でもよい。というのは、この範囲内の判断は通常、臨床環境内で容易に行うことができるからである。本明細書に開示される実施形態は、本明細書の開示を踏まえて当業者には明らかであろうが、より大きいまたはより小さい動作範囲を有するように調整することができる。

再び図２〜４を参照すると、近位アンカー５０は、後述のように、椎骨および／または固定ロッドもしくはプレートの外面に当接できるようにされたフランジ６６を含んでいる。フランジ６６は、フランジ６６と骨または固定ロッドもしくはプレートとの間のフットプリント、すなわち接触表面積を最適化するために、環状のフランジであることが好ましい。脊椎固定に用いられる円形または多角形のフランジは一般に、隣接するボディ２８より直径が少なくとも約３ｍｍ大きく、隣接するボディ２８より約２ｍｍないし約３０ｍｍ以上、またはそれ以上大きい範囲にあることが少なくない。

特に図２および５を参照すると、固定装置は、ボディ２８の第１の部分３６と近位カラー５０との間に回転防止ロックを含んでいてもよい。図示の実施形態では、第１の部分３６は、近位カラー５０に設けられた対応する平坦部８２と相互作用する、一対の平坦面８０を含んでいる。軸方向に延びる１つまたは３つ以上の平坦部を使用してもよい。このようにして、近位カラー５０の回転はボディ２８の第１の部分３６および遠位アンカー３４に伝達される。もちろん、当業者には、近位アンカーとボディ２８の第１の部分３６との相対的な回転を防止する、他の様々な種類のスプラインまたは他の相互嵌め合い構造を利用可能であることが認識されよう。

フランジ６６は、近位カラーを回すために、挿入工具でフランジ６６を回せる把持構造を備えていることが好ましい。１つまたは２つ以上の長穴、平坦部、ボア等の様々な把持構造のいずれが備えられていてもよい。一つの実施形態では、フランジ６６には、多角形、特に五角形または六角形のくぼみ８４が備えられている（図４参照）。

修正された実施形態では、近位アンカー５０のハウジング５２は、管状のハウジング５２から半径方向外側に延びる１つまたは２つ以上のバーブを含んでいてもよい。このようなバーブを設けることによって、２００１年１１月１３日に出願され、上記の通り引用によって組み込まれた同時係属の米国特許出願第１０／０１２６８７号に記載されているように、装置が患者の体内に移植された後に、自己締め付けが可能となる。バーブは、ハウジング５２の長手方向軸線の周りに、半径方向に対称的に分散配置されていてもよい。各バーブは、近位アンカー５０を骨に固定する横方向の噛合い面を備えている。横方向の噛合い面は、ハウジング５０の長手方向軸線を横切る平面上にあってもよく、管状のハウジング５０の長手方向軸線に対して傾けられていてもよい。いずれの構成でも、横方向の噛合い面４３は一般に、フランジ６６の接触面６８の方に面している。このため、横方向の噛合い面は、近位アンカーの骨に対する近位方向への移動を抑制する。

図６Ａおよび６Ｂは、近位アンカー１００の別の実施形態を示している。この実施形態はまた、図２〜４を参照して上述した如くに構成可能なハウジング１０２およびフランジ１０４を含んでいる。管状のハウジング１０２は、回転防止ロックを含んでいてもよく、図示の実施形態では、回転防止ロックは、上述のようにボディ２８に形成された対応する平坦部と相互作用する、１つまたは２つ以上の面１０６の形をしている。

この実施形態では、表面構造は、ボディ２８の相補的な表面構造と噛み合うように構成された１つまたは２つ以上の歯すなわち溝１１２を有している（図２参照）。管状のハウジング１０２には、歯１０２を保持する１つまたは２つ以上の橋部１１２を形成する長穴または開口部１１０が形成されている。近位アンカー１００は、ボディの遠位端の方へ押されことができ、歯１０２は、ボディ２８上の相補的な表面構造５８に沿ってその上を滑ることができる。図示の実施形態では、橋部１１２はボディ２８からわずかに離れる方向にたわみ、このような移動を可能にすることができる。開口部１１０および橋部１１２の数および形状は、近位アンカー１１０がボディ上を遠位方向に動かされるときの橋部１１２の所望のたわみと、適切に緊張されたときの遠位アンカーの所望の保持力とに応じて、様々でよい。一つの実施形態では、近位アンカー１００上の歯およびボディ２８上の溝は、近位アンカー１００をピン上に遠位方向に回し込みまたはねじ込むことができ、および／または近位アンカーを回して取り外すことができるように構成することができる。図示の実施形態ではまた、骨内の近位ハウジング１００の深さを示す視覚的目印１１４（たとえば、マーク、溝、リッジなど）が、管状のハウジング１０２上に設けられているのが有利である。

図６Ｃおよび６Ｄは、近位アンカー１５０の別の実施形態を示している。この実施形態では、近位アンカー１５０は、ボディ２８に沿って同軸に移動できる、管状体等のハウジング１５２を有している。近位アンカー１５０はさらに、たとえば骨や固定棒または固定ロッドの外面に接触するように構成されたフランジ１５４を含んでいる。図示の実施形態では、フランジ１５４は、ハウジング１５２の外面に対して好ましくは鈍角を形成する接触面１５６を形成している。しかし、修正された実施形態では、接触面１５４は、ハウジング１５２に対して垂直であるか、または鋭角を形成してもよい。

図６Ｄを参照すると、図示の実施形態では、相補的な保持構造５４は、ボディ２８の相補的な保持構造５８と協働する、内側に突き出た１つまたは２つ以上の歯またはフランジ１５８を有している。ボディの相補的な保持構造５８は、第１の表面および第２の表面からなる複数の環状のリッジまたは溝を有していることが好ましい。第１の表面は概ね近位方向に面し、好ましくはボディ２８の長手方向に対して傾いている。これに対して、第２の表面は概ね遠位方向に面し、ボディ２８の長手方向軸に概ね垂直となっている。

近位アンカー１５０は、１つまたは２つ以上の軸方向長穴１６０を含んでいることが好ましい。軸方向長穴１６０は、協働して、歯または突起１５８が設けられたレバーアームを形成している。したがって、アンカー１５０がボディ２８の遠位端の方へ押されると、歯１５８は、ボディ２８から離れる方向にたわみながら、第１の表面に沿って滑り、ボディ２８の保持構造５８を乗り越えていくことができる。

近位アンカー１５０が適切に締め付けられると、骨は近位アンカー１５０の斜め接触面１５６を押し付けることができる。この力はレバーアームを通して歯１５８に伝達される。このため、歯１５８は、ボディ２８から離れる方向にたわむのが防止され、歯１５８はボディ２８の保持構造５８と噛み合ったままになる。締め付け力を強くすることによって、近位アンカー１５０のボディ２８に対する近位方向への移動が抵抗を受ける。

長穴１６０の軸方向の長さおよび幅は、近位アンカー１５０がボディ２８上を遠位方向に動かされるときのレバーアームの所望のたわみと、適切な締め付け力がかけられたときの遠位アンカーの所望の保持力とに応じて、様々であってよい。チタン等の比較的堅い材料の場合、長さ約４ｍｍ、内径約３ｍｍの近位アンカーの長穴１６０の軸方向の長さおよび幅は、約０．５ｍｍである。このため、図示の実施形態では、長穴１６０は、フランジ１５４を通って、少なくとも部分的にハウジング１５２内まで延びている。

この実施形態では、近位アンカー１５０は、アンカー１５０の近位端の近くに設けられた４つの歯またはフランジ１５８を含んでいる。修正された実施形態では、近位アンカー１５０の歯はこれよりも多くても少なくてもよく、歯はアンカー１５０上のより遠位方向または近位方向に設けられていてもよく、それらのいずれかまたは双方であってもよい。保持構造同士の間をねじ状構造とすることによって、近位アンカー１５０を、近位方向および／または遠位方向に、回しながら前進させることができるようにこれらの保持構造を構成できることもまた理解されたい。

近位アンカー１８０の別の実施形態が図６Ｅおよび６Ｆに示されている。前述の実施形態と同様に、近位アンカー１８０は、環状のハウジング１５２と、骨接触面１５６を有するフランジ１５４とを含むことができる。この実施形態では、近位アンカー１８０の相補的な構造は、好ましくは環状のハウジング１５２の遠位端にある環状のくぼみ１８４内に設けられた、環状のリング１８２を有している。環状のくぼみ１８４は、近位部１８６と遠位部１８８とを含んでいる。

近位部１８６は、近位アンカー１８０がボディ２８上を遠位方向に進められたときに、環状のリング１８２がボディ２８の相補的な保持構造５８を乗り越えることができるようなサイズおよび寸法にされている。すなわち、近位部１８６は、近位アンカー１８０が遠位方向へ進められたときに、環状のリング１８２がボディ２８から半径方向に離れることができる空間を形成している。環状のリング１８２は、たとえばステンレススチールやチタン等の、十分な強度と弾性とを備えた材料で作られることが好ましい。環状のリング１８２は、ボディ４０５上への設置のため、部分的に分離された構造となっていることが好ましい。図示の実施形態では、環状のリング１８２は複数の歯１９２を含んでいるが、修正された実施形態では、環状のリング１８２は歯を設けずに形成されてもよい。

くぼみ１８４の遠位部１８８は、近位アンカー１８０が適切に締め付けられた後に、環状のリング１９２が、ボディ２８と遠位部１８８の傾斜した係合面との間に、くさび状に固定されるようなサイズおよび寸法にされている。これによって、近位アンカー１８０のボディに対して近位方向への移動が防止される。図示されていないが、修正された実施形態では、リング１９２は隙間を設けずに形成されてもよいことを理解されたい。近位アンカーの他の実施形態および上記説明の詳細は、２００１年１１月１９日に出願され、引用によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願第０９／９９０５８７号に記載されている。

再び図２〜４を参照すると、図示の実施形態では、フランジ６６の接触面６８は先細りになっており、概ね、椎骨、固定ロッド、および／または固定板の外面に面している。他の実施形態では、骨接触面６８は、ボディ２８の長手方向軸に対して垂直な平面内に、または概ねこの平面上に存在していてもよい。他の実施形態では、ボディ２８の予想挿入角度と、挿入位置における対応する椎骨の表面とに応じて、フランジ６６の骨接触面６８と、ボディ２８およびハウジング５２の長手方向軸との間に、別の角度関係を用いてもよい。

接触面６８とボディ２８およびハウジング５２の長手方向軸との間に様々な角度関係（たとえば、９０°、１００°、１１０°、１２０°、１３０°）を持つ近位アンカー５０の組を、医師に提供することができる。単一のボディ２８に、単一の殺菌パッケージと同様に、近位アンカー５０の組を組み合わせることができる。医師は、ボディ２８の挿入角度と、挿入位置における脊椎の関節面結合の対応する表面の向きとを識別した後、最も適した角度関係を有するアンカー５０を、ボディ２８と共に用いるために、組から選択することができる。

図７および８に示されている修正された構成によれば、近位アンカー５０は、ボディ２８の長手方向軸線に対して角度を調整できる座金６６’と共に使用することができる。具体的には、この実施形態では、近位アンカー５０および座金６６’は、互いに対応する、半球状または丸みの付けられた表面４５ａおよび４５ｂを含んでいる。表面４５ｂは座金６６’の孔４９を囲んでいる。この構成によれば、近位アンカー５０は、座金６６’を通って延び、かつ座金６６’に対してピボット運動することが可能となる。このため、座金６６’の骨接触面６８’とボディ２８の長手方向軸との角度関係は、挿入角度に応じて変化することができる。

図９〜１３は、角度を調整可能な近位アンカー２０２を有する骨固定装置２００の別の実施形態を示している。この実施形態では、上述の同様の構成要素を識別するのに同様の参照番号が使用される。

骨固定装置２００は、近位端３０と遠位端３２との間を延びるボディ２８を有している。ボディの遠位端３２は上述のように骨アンカー３４を備えている。図示のボディ２８はカニューレとして形成されているが、修正された実施形態では、ボディ２８は中実でもよいことを理解されたい。アンカーの近位端には、ボディ２８を回すために回転工具と組み合わせて用いられる六角形のくぼみが備えられている。もちろん、修正された実施形態では、様々な雄または雌の回転しない継手を使用することができる。

図示の固定装置は、環状のフランジ２０２と近位アンカー２０４とを含んでいる。上述の近位アンカーと同様に、近位アンカー２０４は、ボディ２８に沿って軸方向に遠位方向へと移動可能なハウジング２０６を画定している。ハウジング２０６およびボディ２８上の、ねじやラチェット状構造等の相補的なロック構造５４、５８は、通常の使用条件の下で、アンカー２０４のボディ２８に対する近位方向への移動に抵抗する。いくつかの実施形態における相補的なロック構造５４、５８では、アンカー２０４は、回りながらボディ２８に沿って軸方向に進められることができる。別の実施形態における相補的なロック構造５４、５８では、アンカー２０４は、回されずにボディ２８に沿って軸方向に進められることができる。図示の近位アンカー２０４は、部分的に分離されたリングカラーを形成するように、さらに隙間２０５を含んでいる。修正された実施形態では、隙間２０５を設けずに近位アンカー２０４を形成してもよい。

近位アンカー２０４は、フランジ２０２の平滑な、好ましくは丸いくぼみ部２１０内に嵌るように構成された、平滑な、より好ましくは丸いかまたは球状の対応する外面部２０８を含んでいることが好ましい。このような構成では、図１２に示されているように、近位アンカー２０４がフランジ２０２内に設けられると、フランジ２０２は、近位アンカー２０４とフランジ２０２との間の少なくとも限られた回転を可能にしながら、近位アンカー２０４の遠位方向への移動に抵抗する。このため、図示の構成では、フランジ２０２は、骨面の様々な解剖学的角度に対処するように、アンカー２０４に対して回転することが可能となる。以下に詳しく説明するように、この実施形態は、椎弓板間、関節面間、および関節面−椎弓根間への適用に特に有利である。これらの用途では、フランジ２０２は、椎骨の外面に直接当接することができる。通常、椎骨の外面は平らではなく、かつ／または、挿入角度は椎骨の外面に垂直ではないので、固定されたフランジでは、椎骨の外面の一部にしか接触しない可能性がある。この場合、大きな応力集中のために、椎骨に亀裂が生じる恐れがある。これに対して、角度調整型のフランジ２０２は、ボディに対して回転することができ、それによって骨接触面を外面により密着して設けることができる。このようにして、より広い骨接触面が利用され、より大きな面積に応力が分散される。さらに、フランジ２０２は近位アンカー５０よりも大きい直径を有しているので、軸は実際上固定装置のヘッド径まで拡大し、それによって装填面のサイズが大きくなり、応力集中が軽減される。

図示の実施形態では、フランジ２０２は、複数の、骨との噛合い部２１２を含んでいる。骨との噛合い部２１２は、図示の実施形態では、フランジ２０２の接触面２１６上に設けられた１つまたは２つ以上のスパイク２１２を有している。スパイク２１２は、特に、フランジ２０２が、たとえば凹凸のある骨面および／または軟組織に接触して設けられたときに、付加的な把持力を与える。なお、修正された実施形態では、骨噛合い部２１２を設けずにフランジ２０２を形成できることを理解されたい。骨との噛合い部２１２としては、たとえば、リッジやセレーション等の他の構造を用いてもよい。図示の実施形態は、先細りの上面２１４をさらに含んでいるが、実施形態によっては平坦でもよい、。

図１４および１５は、角度調整型の固定装置２００の修正された実施形態を示している。この実施形態では、近位アンカー２０４’は上部２１１と下部２１３とを含んでいる。上部２１１は、ハウジングに対して上述のように構成されている。図示の実施形態の下部は概ね管状であり、上部よりも概ね小さい直径を有している。下部は、相補的な保持構造５４を含んでおり、前述の実施形態と比べて、全般的には、押し付け力の調整範囲がより広く、かつ付加的な保持構造を備えた固定装置を構成している。

使用における一つの実施形態では、脊椎が不安定な患者が識別される。脊椎固定技術に応じて、本明細書に記載された１つまたは２つ以上の骨固定装置の遠位端３２は、椎体の前方部、または、１つまたは２つ以上の椎骨の他の適切な部分に進められる。以下に詳しく説明するように、固定装置は通常、不安定であるか、分離されているか、またはずれている一つの椎骨を、不安定でなく、分離されておらず、ずれていない別の椎骨に結合するために用いられる。しかし、この方法を３つ以上の椎骨にも適用できることを理解されたい。さらに、仙骨のＳ−１部を、Ｌ５椎骨を安定させるために用いることもできる。

たとえば、固定装置は、脊椎の左側の２つ以上の固定装置が、１つ以上のロッドおよび／またはプレートを用いて、脊椎の右側の２つ以上の固定装置に連結されて、２つの椎骨が結合されるように、左右対称に椎骨に挿入することができる。これらの実施形態のいくつかでは、これらの固定装置の遠位アンカーは、椎骨の椎弓根および／または関節面を通って挿入されてもいい。他の実施形態では、固定装置は、互いに隣接する椎体を融合させる脊椎ケージ、プレートまたは他の装置の移植等、他の融合処置や移植と組み合わせて、互いに隣接する椎体を固定するのに利用される。したがって、固定装置は、ケージまたは他の移植物と共に動作して、椎間板空間全体にわたって３点安定性を確保し、２つの椎体間の移動に抵抗するのを助けることができる。他の実施形態では、固定装置は、単に、第１の椎骨の一部を通って、第２の好ましくは隣接する椎骨内に進められてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいては、固定装置は第１の椎骨の関節面を通って延び、遠位アンカーは第２の椎骨の関節面または椎弓根を貫いて挿入されてもよい。

近位アンカーは、ボディが椎骨内に進められる前に固定装置によって保持されていてもよく、ボディを椎骨内に配置した後で取り付けることもできる。一つの実施形態では、近位アンカーをボディに設ける前に、安定化移植物（たとえば、固定板および／または固定ロッド）を、ボディまたは近位アンカーの上に、またはこれらに連結して設けることができる。

アンカーが所望の位置に設けられると、従来の止血かん子、プライヤ、または調製された装着用装置などによって、ボディ２８の近位端３０に近位方向への牽引力がかけられ、一方、近位アンカーには遠位方向への力がかけられる。このようにして、近位アンカーは、椎骨または固定板／ロッドの外面にぴったりと接触するまで、ボディに対して遠位方向に進められる。固定装置の適切な締め付けは、触覚によるフィードバック、または所定の力を移植装置に加える較正装置を用いて行われる。上述のように、図示の実施形態の構造の一つの利点は、遠位アンカー３４の椎骨への設定とは独立して、押し付け力を調整できることである。

近位アンカーに適切な締め付け力がかけられると、ボディ２８の第２の部分３８は、第１の部分３６から分離され、取り外されることが好ましい。図示の実施形態では、これは、第２の部分３８を継手７０を介して第１の部分に対して回すことを含んでいる。他の実施形態では、ボディ２８の近位端を切断することを含んでいてもよい。たとえば、ボディの近位端を焼灼によって分離してよい。焼灼によって近位アンカー５０をボディ３２に融着し、それによって近位アンカー５０とボディ２８との間の保持力を強めることができる。近位アンカーとボディとの間のこれらの融着は、ピンおよび近位アンカーが生体吸収可能かつ／または生物分解可能な材料で作られている場合に特に有利である。このようにして、近位アンカーおよび／またはピンの材料が吸収され、または分解するときでも、焼灼によって起こる融着により、近位アンカーとボディとの間に引き続き保持力が与えられる。

各ボディ２８の第２の部分３８が取り外された後または取り外される前に、固定装置を追加で移植し、および／または、安定化のための移植物（たとえば、ロッド、プレートなど）を追加でボディに連結してもよい。処置部位は、従来の傷部縫合技術に従って閉じ、手当てすることができる。

修正された構成では、第２の部分３８は、近位アンカー５０、したがって海綿骨アンカー３４を回して椎骨に挿入するのに用いられる駆動装置の一部を形成することができる。第２の部分３８は、近位方向への牽引力をかけるのに用いられる。適切な締め付け力をかけた後で、第２の部分３８を第１の部分３６から分離し、駆動装置と共に取り外すことができる。

上記の修正例では、第２の部分３８を設置用装置のサムホイール等の回転する制御装置に連結してもよい。処置室で容器を開け、移植物の近位端を露出させると、第２の部分３８の遠位端を移植物の近位端に取外し可能に連結することができる。手工具を近位方向に引き込めば、移植物がパッケージから引き出される。次に、移植物を骨の開口内に設置し、遠位アンカーを回しながら取り付け、手工具を操作して第２の部分３８を近位方向に牽引し、同時に近位アンカーを遠位方向に前進させることができる。適切な締め付け力をかけた後で、第２の部分３８を移植物から分離し、患者から取り外すことができる。ねじ噛み合いの例では、手工具のサムホイールまたは他の回転制御装置を回すことによって、第２の部分３８を移植物から分離することができる。第２の部分３８が引張りワイヤを有するような他の実施形態では、骨折部全体にわたって適切な締め付け力をかけた後、手工具に取り付けることのできる第２の端部を近位方向に引き込むことによって、引張りワイヤの第１の端部が解放され、引張りワイヤを移植物から取り外すことができる。

医師は、たとえば様々な直径、軸方向長さ、および適用可能であれば様々な角度関係を有する固定装置１２の組を利用できることが好ましい。これらの固定装置は、殺菌済みまたは殺菌されていない包装、またははぎ取り式の小袋にパッケージ当たり１つ以上収納するか、あるいは各々が複数の装置１２を保持することができる分配カートリッジに収納することができる。医師は、寸法および荷重要求を見積もり、所望の仕様を満たす固定装置を組から選択する。

上述のように、固定装置１２は、互いに隣接する椎体同士を結合する様々な脊椎ケージ、プレート、または他の装置と共に使用することができる。たとえば、図１６は、脊椎固定用の一対の固定棒３００、３０２と共に使用される、例示的な実施形態による一対の固定装置ねじ１２Ａ、１２ｂを示している。この実施形態では、固定装置１２Ａ、１２Ｂおよび固定棒３００、３０２は、Ｌ３椎骨とＬ４椎骨を互いに固定するように示されている。しかし、これらの構成部材は、互いに隣接しまたは隣接しない腰椎部の他の椎骨を、さらには、胸部と腰部の接合部または脊椎の他の部位を、２つの椎骨間の軸方向の向きに沿って固定し、２つの椎骨を押し付けるために用いることができる。

図１６および１７に示されているように、Ｌ３およびＬ４椎骨に対して椎弓切除が行われている。すなわち、棘突起と、矢状面の各側のその下の椎弓板とが取り除かれ、Ｌ３椎骨とＬ４椎骨の両方の矢状面を横切る椎弓板の外側部分のみが残っている。一つの実施形態では、第１の固定装置１２ＡがＬ３椎骨の椎弓板を通して、矢状面の左側の関節面結合の領域に挿入されている。第１の固定装置１２Ａは、関節面結合を通って前方に延び、横方向外側に、下椎骨Ｌ４の横突起の左基部内に斜めに延びている。第２の固定装置１２Ｂは、矢状面の反対（右）側の椎弓板を通って前方に延びている。第２の固定装置１２Ｂは、矢状面の右側の関節面結合を通って延び、横方向外側にＬ４椎骨の横突起の右基部内に斜めに延びる。したがって、固定装置１２Ａ、１２Ｂは前方を向き、さらにわずかに下方に向けられる。

各固定装置１２Ａ、１２Ｂは、固定棒３００、３０２に嵌められていてもよい。図１６の固定棒３００、３０２は一例に過ぎず、また、固定装置を他の種類および形式の固定棒と共に使用できることを理解されたい。

図示の実施形態では、固定棒３００および３０２は互いに概ね鏡像形である。例示の固定棒３００、３０２は、複数の円筒状のボア３０６を有する下部３０４を含んでいる。各ボア３０６は概ね、平行な軸に沿って配置され、下部の棒状部３０４に沿って上下方向に間隔を置いて配置されている。固定装置１２Ａ、１２Ｂは１つのボア３０６を通って延びている。固定棒３００、３０２に対して適切なボア３０６を選択することによって、棒３００、３０２の相対的な長さを変えることができ、様々なサイズの椎骨に対する調整自由度が与えられる。各棒３００、３０２は下部３０４から上方にかつわずかに横方向に延びる指部３０８を有している。指部３０８は、Ｌ３の横突起の頭部を横切って上方に延び、Ｌ３の椎弓根側部の上面上を上方かつ前方に湾曲している。指部３０８はさらに、下方にかつわずかに横方向内側に延び、脊柱管５０に達せず、前端部３１６で終端している。このように、指部３０８の上部は、棒が下方に動かないように固定すると共に、棒が長手方向軸の周りを回転しないように、Ｌ３椎弓根上をその周りに延びるフックを形成している。

固定装置のボディ２８はボア３０６を通して挿入することができる。近位アンカー５０のハウジング５２も、固定装置１２Ａ、１２Ｂがボア３０６内で回転および往復変位ができ、しかし、固定装置１２Ａ、１２Ｂがその長手方向軸に対して引っかからないように、ボア４２の直径よりわずかに小さい直径を有するような寸法に形成されている。近位アンカー５０のフランジ６６は、ボア４２より大きい直径を有している。したがって、横突起４６の上部の周りに巻き付けられた指部４４と、下部３０４を所定の位置に保持する固定装置１２Ａの相互作用との組合せによって、上側の椎骨の椎弓板に対する固定装置１２Ａ、１２Ｂの引っかかりが防止される。

棒３００、３０２の下部３０４は、下部３０４の両側の面の各ボア３０６の間に、横方向に切欠かれた、強度の低い複数の横ゾーン３１８を有していてもよい。下部３０４の長さを調整するために、適切な工具を操作して、ボア３０６を含む部分を１つまたは２つ以上、安定棒から切り離し、下部の不要な部分を取り除くことができる。図１６では、下部の２つのセグメントが取り除かれた左側の安定棒３００が示されている。さらに、ボディ２８の第２の部分３８（図４参照）も、安定棒３００および３０２が取付けられた後に取り除かれた状態で示されている。

ボディ２８を近位アンカー５０に対して近位方向に引き込むと、下部３０４が椎骨に押し付けられ、安定棒３００、３０２がしっかりと保持され、ねじのトグルが防止される。図示の実施形態の１つの利点は、椎骨に対する下部３０４の押し付けが、遠位アンカーの脊椎への取り付けとは無関係に調整できることである。

図１７は、脊椎固定システムの修正された実施形態を示している。この実施形態では、４つの固定装置１２Ａ、１２Ｂ、１２Ｃ、１２Ｄが、脊柱の左右両側の隣接する椎骨の関節面に設けられている。第１組の固定装置１２Ａ、１２Ｂは、第１の固定板４００の各端部を隣接する椎骨の関節面に固定するために用いられ、第２組の固定装置１２Ｃ、１２Ｄは、第２の固定板４００’の各端部を隣接する椎骨の向かい合う関節面に固定するために用いられている。固定板４００、４００’は、固定装置１２Ａ、１２Ｂのボディが通って延びることができる、互いに重なり合う一連の重複ボア４０１を含んでいてもよい。近位アンカー５０をボディ（図示せず）の上から挿入し、近位方向へ引込むことで、固定板４００を椎骨に対して固定することができる。

固定装置は、脊椎の両側の対応する固定装置１２Ａ、１２Ｂ、１２Ｃ、１２Ｄ間の中心線を横切るクロスリンク４０２を含んでいてもよい。クロスリンク４０２は、ボディおよびハウジング５０の管状部分が通って延びているボアも含んでいる。修正された実施形態では、固定装置はクロスリンク４０２を含まなくてもよい。

図示していないが、２個または３個以上の椎骨の間を延びる固定ロッドまたは固定板を固定するために、本明細書に記載された固定装置を椎弓根ねじとして用いることができることを理解されたい。このような適用方法は、一方の側のみに、または両側に対称的に用いることができる。

図１６および１７の実施形態では、固定装置１２を用いることによって、プレートまたは固定棒の椎骨への押し付けを、遠位アンカー３４の取り付けとは無関係に調整することができ、有利である。すなわち、近位アンカー５０は、適切な押し付け力が固定棒／板から椎骨に渡ってかけられるまで、ボディ２８に対して遠位方向に進められる。

修正された実施形態では、近位アンカーを、プレートまたは固定棒の一部に連結するか、または、これらの一部として形成してもよい。このような構成では、装置が患者内に移植された後の自己締付けが可能となる。

図１８に示されているように、固定装置１２Ａ、１２Ｂを用いて追加の装置なしに安定性を得ることができる。この例では、固定装置１２Ａ、１２Ｂは、関節面ねじとして使用されている。すなわち、固定装置は第１の椎骨の関節面を通って、通常下方の第２の椎骨の関節面の内側まで延びている。この処置は、図示の実施形態のように、通常左右対称に行われる（必ずそうする必要はない）。したがって、椎弓根ねじを隣接する椎骨や仙骨に結合する安定棒がなく、かつ、棘突起を通って延びることができる、椎弓板をつなぐねじがない場合でも、固定装置１２Ａ、１２Ｂを用いて、結合部の治癒に応じてＬ３やＬ４等の２個の椎骨を互いに安定させることができる。一つの実施形態では、固定装置１２Ａ、１２Ｂは、ボディ２８の長さが約１０ｍｍ〜３０ｍｍであり、ボディの直径が約３ｍｍ〜５．５ｍｍである。

図１９は、固定装置１２Ａ’、１２Ｂ’が、椎弓板間・関節面ねじとして用いられる、脊椎固定用の修正された構成を示している。図１９に示されているように、この使用の実施形態では、固定装置は、第１の椎骨の棘突起と関節面とを通って、通常下方の第２の椎骨の関節面の内部まで延びている。前述の実施形態と同様に、この処置は通常左右対称に行われる（必ずそうする必要はない）。一つの実施形態では、固定装置１２Ａ、１２Ｂは、ボディ２８の長さが約５０ｍｍ〜９０ｍｍであり、ボディの直径が約４ｍｍ〜５．５ｍｍである。

図２０は、固定装置１２Ａ”、１２Ｂ”が関節面・椎弓根ねじとして用いられる（たとえば、バウチャー技術に用いられる）、脊椎固定用の別の修正された構成を示している。このような実施形態では、固定装置は、第１の椎骨の関節面を通って、通常下方の第２の椎骨の椎弓根の内部まで延びている。前述の実施形態と同様に、この処置は通常左右対称に行われる（必ずそうする必要はない）。このような実施形態では、固定装置１２Ａ、１２Ｂは、ボディ２８の長さが約２０ｍｍ〜４０ｍｍであり、直径が約３．０ｍｍから５．５ｍｍである。

図１８、１９、２０の実施形態では、近位アンカーのフランジは通常、椎骨の外面に直接支持される。外面は通常、平らではなく、かつ／または、固定装置の挿入角は外面に垂直ではないため、斜めに固定されたフランジは外面の一部にしか接触できない。すなわち、フランジの接触面を、椎骨の外面と同一面に設けることができない。このため、大きな応力集中のために椎骨に亀裂が生じる恐れがある。この結果、結合率は不十分なものになる。

このため、これらの用途では、図７〜１５を参照して説明した実施形態の角度調整可能なフランジが特に有利である。フランジはボディに対して回転することができ、それによって、骨接触面を椎骨の外面により密着させて設けることができるためである。このため、骨接触面をより広く利用でき、固定装置によって支持される力は、椎骨のより広い範囲に分散する。これらの角度調整可能なフランジは、脊椎ケージおよびロッドと一緒に使用することもできる。これらの実施形態では、固定装置のボディの角度は、固定ロッドまたは固定板の接触面と垂直でなくてもよい。このような状況でも、角度調整可能なフランジを使えば、フランジが回転して、フランジを回転ロッドおよび回転板と同一面に設けることが可能となる。図７および９に関連して説明した実施形態では、フランジをたとえばねじまたはボルトによって固定ロッドまたは固定板に連結できるように、フランジに開口部を設けてもよい。

上記の実施形態で、近位アンカーの一部を受け入れる端ぐりを第１の椎骨に穿孔するのが有利である場合がある。このような実施形態では、近位アンカーが少なくとも部分的に椎骨の外面より下になるように、端ぐりは通常、近位アンカーの外径よりわずかに大きな直径を有していることとなろう。

脊椎のある領域では、関節面結合を横切る距離や、隣接する関節面を貫通する寸法が比較的小さい。これらの状況では、固定に貫通ボア、すなわち、遠位関節面の遠位皮質を貫通する開口部が含まれることが望ましい場合がある。上述の固定装置は、遠位アンカーが骨に埋め込まれる盲穴に適用することもできるし、遠位らせんが遠位皮質内に延び、場合によっては遠位皮質を貫通する貫通ボアに適用することもできる。しかし、図２１〜２３に示されている固定装置５００などの、貫通ボア固定装置を用いてもよい。

図２１〜２３に示されているように、貫通ボア固定装置５００は、近位端３０と遠位端３２との間を延びるボディ２８を含んでいる。遠位端３２は、以下に詳しく説明する遠位アンカー３４を含んでいる。近位端３０は破断点３１を含んでいてもよい。他の実施形態では、近位端３０は、破断点３１を含んでいなくてもよく、図４を参照して上述した引張りピン３８と共に使用してもよい。

保持構造５８は、近位限界６２と遠位限界６４との間に、ボディ２８に沿って軸方向に間隔を置いて配置されている。前述の実施形態と同様に、保持構造５８は、１方向のラチェット状移動および／またはねじ式移動を可能にするように、近位アンカーと相互作用するように構成することができる。ボディ２８は、図７〜１５を参照して上述した角度調整式フランジおよび近位アンカーを含む、上述の近位アンカーのいずれと共に使用してもかまわない。

遠位アンカー３４は、遠位皮質骨または他の表面海綿骨あるいは内部海綿骨と噛み合う、斜面を有する拡張部やバーブ５０２等の、摩擦力を強化する複数の構造、または複数のしまりばめ構造を有している。

図示の実施形態は、互いに９０°の角度で配置された４つのバーブ５０２を含んでいるが、本明細書の開示を踏まえれば当業者には明らかなように、１個から１２個程度、あるいはそれ以上の任意の数のバーブ５０２を用いることができる。バーブ５０２は、ボディ２８の長手方向軸線の周りに、半径方向に対称に分布させることができる。各バーブ５０２は、皮質骨の遠位面、またはバーブ５０２が固定される他の構造または表面に接触する横方向の噛合い面５０４を備えている。横方向の噛合い面５０４は、ボディ２８の長手方向軸線を横断する平面上に設けられてもよいし、ボディ２８の長手方向軸線に対して傾斜して設けられてもよい。

移植プロセス中に、バーブ５０２が半径方向内側へ容易に押し付けられ、その後バーブ５０２が半径方向外側に動かされて、遠位骨の表面と噛み合うように、図示の実施形態の各バーブ５０２は、可とう性のレバーアームまたはヒンジ付きレバーアーム５０６によって保持されている。レバーアーム５０６は、ボディの側壁に複数の軸方向長穴５０８を作ることによって形成することができる。軸方向長穴５０８は、中央孔５１０と協働して、各バーブ５０２を個々のレバーアーム５０６に互いに分離する。軸方向長穴５０８の軸方向長さは、たわみが好適に分布する所望の長さや、横方向の動きの所望の範囲に応じて変えることができ、所望の構成材料に応じて変えることもできる。

遠位端３０の長穴５０８の周方向の幅としては、バーブ５０２の寸法と協働して各バーブ５０２の半径方向内側へのたわみを可能にし、それによって、ボディ２６を、横方向の噛合い面５０２のすぐ近位側のピン２８の外径に概ね等しい内径を有する事前に穿孔された穴にプレス嵌めできるような幅が選択される。このために、各長穴５０８は、遠位端における比較的大きな寸法から、軸方向長穴５０８の近位側終端部における比較的小さな寸法へと、周方向の幅が徐々に小さくなっている。

固定装置５００は、ロック案内ワイヤ５２０と共に使用することができる。案内ワイヤは遠位端５２２と近位端５２４とを有している。図示の案内ワイヤ５２０は、案内ワイヤ５２０の遠位端５２２に配置されたロック部５２６と、好ましくは遠位端５２２から案内ワイヤ５２０の近位端５２４まで延びる細長い部分５２８とを有している。細長い部分５２８の直径Ｄ１は概ね、ロック部５２６の直径Ｄ２より小さい。案内ワイヤ５２０は、ステンレススチール、チタン、または他の任意の適切な材料で作ることができる。

案内ワイヤ５０２上のロック部５２６は、本明細書の開示を踏まえれば当業者には明らかであろうが、様々な形態のうちから任意の形態をとり、目的の機能を実現することができる。たとえば、図示の概ね円筒状のロック構造を使用してもよい。あるいは、近位部５２８よりも断面が大きくなっている他の様々な構成から任意の構成を使用してもよい。所望の押し付け力と、ロック部１５６がピンの遠位端３０に嵌めあわされる態様に応じて、円錐、球その他の形状を利用してもよい。

案内ワイヤ５０２は、近位端がピン２６の孔５１０の中に、ねじで挿入されるようにされている。図２２を参照すると、孔５１０は、第１の部分５３０と第２の部分５３２とを有していることが好ましい。第１の部分５３０は、概ねピン２６のレバーアームの領域内の遠位端３０に配置されている。第２の部分５３２は、第１の部分５３０からピン２８の近位端２８まで延びていることが好ましい。第１の部分５３０の内径は概ね、第２の部分５３２の直径より大きい。このため、第１の部分５３０と第２の部分５３２との間の接合部は、ボディ２８の長手方向軸線を横切る方向に設けられた、横方向の環状噛合い面５３４を形成している。

上述のように、案内ワイヤ５２０は、近位端がボディ３８の孔５１０の中に、ねじで挿入されるようにされている。このため、細長い部分５２８の直径Ｄ１は孔１１の第２の部分５３０の直径より小さい。これに対して、ロック部５２６の直径Ｄ２は、第１の部分５３０の直径以上よりわずかに小さいか、等しいか、わずかに大きく、かつ第２の部分５３２の直径より大きいことが好ましい。この構成によって、ロック部５３６は、第１の部分５３０の中に、近位方向に引き込まれることができ、一方、ロックピン５３６がボディ２８を通って近位方向に抜けることが防止される。

さらに、設置後にロック案内ワイヤ５０２の遠位方向への移動に抵抗する様々な摩擦力強化表面または表面構造のうちから、任意の表面または構造を設けてもよい。たとえば、孔５１０の内面に設けられた対応する表面構造と協働してロック案内ワイヤ５２０を取外し可能に孔５１０内に保持する、半径方向内側または半径方向外側に向けられた様々な表面構造のうちから、任意の構造を、ロック案内ワイヤ５２０の長さ方向に沿って設けてもよい。実施形態では、ロック部５２６の外径上に設けられた環状のリッジ５４０と協働する円筒状の溝が、孔５１０の内面に設けられている。ロック案内ワイヤまたは案内ピンが近位方向に孔５２０内に引き込まれてロック構造と噛み合い、一方で、ロック案内ワイヤが通常の使用時にはずれる可能性がほとんどまたは全くなくなるように、ロック構造がロック案内ワイヤ５２０の遠位方向への移動に対して十分に抵抗するように、相補的な表面構造の公差を定めることができる。さらにロック案内ワイヤ５２０の近位方向への移動にも抵抗するために、図示のロック部５２６は、半径方向外側に向けられたフランジ５４２も含んでいる。

使用の際には、医師が骨を評価し、骨ドリルを選び、貫通穴を穿孔した後、案内ワイヤ５２０の遠位端およびボディ２８の遠位端３０は、遠位部５２６およびバーブ５０２が遠位孔から出るまで、貫通穴の中を進められる。近位アンカーは、ピンボディ２８を貫通穴の中に入れる前でも、またはピンボディ２８を貫通穴内に配置した後でも、骨固定装置５００に設けることができる。

案内ワイヤ５２０は、その後、遠位部５２６が少なくとも部分的にピン２６の第１の部分５３０に入るまで、引き込まれることが好ましい。次に、近位アンカー３６は、遠位アンカー３４を骨、固定板、またはロッドの遠位側の構成部にぴったりと接触させるように、回すかまたはその他の方法で、ボディ２８に対して遠位方向に進められる。このようにして、案内ワイヤ５２０の遠位部５２６の少なくとも一部がボディ２８にロックされる。これによって、バーブ５０２およびレバーアーム５０６が半径方向内側に圧縮されるのが防止され、バーブ５０２は、骨の遠位側の構成部にぴったりと接触したままになる。

近位アンカーに適切な締め付け力がかけられた後には、ボディ３２の近位端および案内ワイヤ２０の近位端は、切り離されるか、または他の方法で取り外されることが好ましい。

修正された実施形態を含む図示の固定装置のさらなる詳細は、２００１年３月２２日に出願された、骨固定システムという名称の米国特許出願第８１５２６３号に開示されており、これを利用することもできる。同出願は、引用によって本明細書に全体的に組み入れられる。

使用時には、図２１〜２３の固定ピンは、脊椎の隣接する関節面の間、または脊椎の他の構成部の間などに設けられた、任意の貫通ボアへの適用に用いることができる。これには、本明細書の他の箇所で論じられるように、プレートやロッド等の追加部材を用いて、または用いないで、隣接する骨断片を固定することが、共に含まれる。固定ピン５００は、近位皮質の遠位面と噛み合って、脊椎における固定を実現するのに用いることもできる。

上述の固定装置は、従来の生体吸収可能または非吸収な部材、それらの組合せ、およびそれらの均等物で作ることができる。さらに、同種移植片等の自然の部材を用いることもできる。吸収可能な部材の例には、ラクチド、グリコリド、炭酸トリメチレン、カプロラクトン、およびｐ−ジオキサノンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにその混合物が含まれる。以下の２つの混合物が有用である場合がある。（１）引用によって本明細書に組み入れられる米国特許第４６４６７４１号に開示された、ポリ（ｐ−ジオキサノン）とラクチド／グリコリドコポリマーの混合物。（２）一方のポリマーが高ラクチド含有ポリマーであり、他方のポリマーが、引用によって組み入れられる米国特許第４８８９１１９号に開示された高グリコリド含有ポリマーである、２つまたは３つ以上のポリマーの高グリコリド含有混合物。他の生体吸収可能な材料は、２０００年４月２６日に出願され、開示内容が引用によって本明細書に全体的に組み入れられる、同時係属出願第０９／５５８０５７号に開示されている。

固定装置は、ステンレススチール、チタン、それらの合金、ポリマー、複合材料などとそれらの均等物を含む、従来の非吸収の生体適合材料で作ることができる。一つの実施形態では、遠位アンカーは金属らせんを有し、ボディおよび近位アンカーは生体吸収可能な材料を有している。あるいは、遠位アンカーは生体吸収可能な材料を有し、近位アンカーは、生体吸収可能な材料または生体非吸収の材料を有している。他の例では、遠位アンカーおよびボディはいずれも非吸収可能な材料を有し、これらは吸収可能なリンク部材によって連結されている。この構造は、遠位アンカーとボディとの間に同心状の嵌めあい部を設け、吸収可能な横ピンがそこを通って延びることによって実現することができる。この実施形態では、ピンが消滅した後でボディを取り除き、遠位アンカーを骨内に残すことができる。

本発明の構成部材（または、アンカー表面の一部または全部の上にある、生体吸収可能な高分子コーティング層）は、抗生物質、化学療法物質、血管形成成長因子、傷の治癒を促進する物質、成長ホルモン、血栓形成防止剤、骨成長促進物質または促進剤など等の１つまたは２つ以上の生理活性物質を含んでよい。これらの生理活性移植物は、機械的支持を可能にするだけでなく、傷の治癒にも寄与するため、望ましい場合がある。

さらに、これらの構成部材は、骨取込みや、人体への吸収の速度または一様性の向上等の様々な目的を実現する、修正された様々な構造のいずれかを備えることができる。たとえば、骨取込みは、マイクロピットが形成されるかまたは他の方法でテクスチャ加工された表面を構成部材上に設けることによって改善することができる。あるいは、装置を通る曲がりくねった経路を形成する連続気泡発泡体材料でアンカーおよびボディを製造することによって、ボディおよびカラー全体にわたって毛管経路を設けることができる。この構成は、装置の、体液にさらされる表面積を大きくし、それによって吸収率が一般的に高められる。あるいは、当業者には本明細書の開示を踏まえて理解されるであろうが、レーザ穿孔または他の技術によって毛管経路を設けてもよい。一般に、アンカーが毛管経路または連続気泡発泡体通路によって透過できる範囲は、所望のポリマーの特定の強度および吸収特性を考慮して、装置の所望の構造完全性と所望の再吸収時間とのバランスを取ることによって決定できる。

ある連続気泡生体吸収可能材料が、腸骨稜のヒト海綿骨の構造に類似し、かつヒト（哺乳類）の腸骨稜海綿骨によって示される値を超える物性（強度）値を有する、相互に接続し、連続気泡網目構造の形をしたポリ（ヒドロキシ）酸として、米国特許第６００５１６１号に記載されている。この構造全体は、ヒトの腸骨稜、すなわち海綿骨の物性値に少なくとも等しい物性値を、移植後少なくとも９０日にわたって維持するといわれている。

上述の実施形態では、遠位アンカーは、事前に穿孔された穴および／またはセルフタッピングと共に使用されるように構成できることを理解されたい。

本発明の構成部材は、材料の種類に応じて公知の殺菌技術のいずれかによって殺菌することができる。適切な殺菌技術には、熱殺菌、コバルト６０の照射や電子ビームなどの放射線殺菌、酸化エチレン殺菌などが含まれる。

本発明の各骨固定装置の特定の寸法は、当業者には本明細書の開示を踏まえて明らかなように、目的の用途に応じて容易に変更することができる。さらに、本発明をいくつかの好ましい実施形態に関して説明したが、当業者には、本明細書の開示を踏まえて、寸法、構成、および材料の変更を含む本発明の他の実施形態は明らかであろう。さらに、本明細書のいずれかの実施形態に関して述べられたすべての特徴は、本明細書の他の実施形態に使用できるように、容易に適合させることができる。異なる実施形態における同様の特徴を示すのに異なる用語または参照番号が使用されているが、明示的に述べられた差異以外の差異を意味しない。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ記述されるものであり、本明細書に開示された好ましい実施形態に限定されない。

椎骨に移植された固定装置の例示的な実施形態を有する椎骨の一部の側面図である。 図１の固定装置と同様の例示的な固定装置の側方斜視図である。 図２の固定装置の側面図である。 図３の線４−４を通る断面図である。 図４の部分４Ａの拡大図である。 固定装置が第１の位置に設けられた、図４の部分４Ｂの拡大図である。 固定装置が第２の位置に設けられた、図４の部分４Ｃの拡大図である。 図３の線５−５を通る断面図である。 図１の骨固定装置用の近位アンカーの他の実施形態の側方斜視図である。 図６Ａの近位アンカーの断面図である。 図１の骨固定装置用の近位アンカーの他の実施形態の側方斜視図である。 図６Ｃの近位アンカーの断面図である。 図１の骨固定装置用の近位アンカーの他の実施形態の断面図である。 図６Ｅの近位アンカーの断面図である。 角度調整式の近位アンカープレートの断面図である。 図７の近位アンカープレートの正面斜視図である。 骨固定装置の修正された実施形態の底面斜視図である。 図９の骨固定装置の組立てられていない側方斜視図である。 図９の骨固定装置の組立てられていない側面図である。 図１１の骨固定装置のフランジおよび近位アンカーの断面図である。 図９の骨固定装置の組立てられていない底面斜視図である。 骨固定装置の他の修正された実施形態の組立てられていない側方斜視図である。 図９の骨固定装置の組立てられていない側面図である。 脊柱の一部と、図１の固定装置を含む固定システムの背面図である。 脊柱と、図１の固定装置を含む修正された固定システムの背面図である。 図９の固定装置が関節面間ねじとして使用されている腰椎の一部の背面図である。 図９の固定装置が椎弓板間ねじとして使用されている腰椎の一部の背面図である。 図９の固定装置が関節面−椎弓根間ねじとして使用されている腰椎の一部の背面図である。 骨固定装置の他の実施形態の側方斜視図である。 図２０の骨固定装置の正面図である。 図２０の骨固定装置の断面図である。

Claims (19)

1. 近位端と遠位端とを有する細長いボディと、
   前記遠位端に設けられた遠位アンカーと、
   前記ボディの、前記アンカーより近位側に設けられた第１の保持構造と、
   前記ボディによって移動可能に支持された、かつ、半径方向に延在する丸い面を有する近位アンカーと、
   前記第１の保持構造に相補的であり、かつ、前記ボディの前記近位アンカーに対して近位方向へのラチェット状の動きを許容するように構成され、前記近位アンカーで前記ボディの遠位方向への動きには抵抗するようにしている、前記近位アンカーに設けられた少なくとも１つの第２の相補的な保持構造と、
   前記近位アンカーを受けるように構成されている角度調節可能なフランジであって、前記近位アンカーの丸い面に対応する内面を有し、前記近位アンカーと前記ボディの長手方向軸線に対して前記フランジの角度調整を可能とするように構成され、前記ボディに対する前記近位アンカーのラチェット状の動きの間、前記近位アンカーによって、近位方向の軸移動が抑制されるフランジと、を有し、
   前記遠位アンカーは、上側椎骨の関節面を通して、すぐ下の椎骨の椎弓根内に、前記椎弓根内の所望の位置に座着されるまで前進されるように構成され、前記細長いボディの近位端は、前記上側椎骨の関節面を通して上方に伸びて、前記上側椎骨の関節面を前記すぐ下の椎骨の椎弓根に向けて押し付けるために、前記フランジが前記上側椎骨の関節面に接触するまで、前記近位アンカーが前記細長いボディにラチェット結合することができる、脊椎固定装置。
2. 前記近位アンカーは管状のハウジングを有している、請求項１に記載の脊椎固定装置。
3. 前記近位アンカーの前記管状のハウジングを受け入れるが、前記フランジの遠位方向への動きに抵抗するような大きさの少なくとも１つの孔を有する、少なくとも１枚の固定板と組み合わされる、請求項２に記載の脊椎固定装置。
4. 前記遠位アンカーはらせんフランジを有している、請求項１に記載の脊椎固定装置。
5. 前記遠位アンカーは、椎骨の孔を通して遠位方向に挿入されるため、複数の軸方向長欠によって分離される前記ボディの軸方向延長部からなるレバーアームが半径方向内側に押し込まれる軸方向から、前記レバーアームが半径方向外方に動いて前記椎骨に係合して前記椎骨を通る軸方向の動きに抵抗する展開方向まで動くことができる、請求項１に記載の脊椎固定装置。
6. 前記ボディおよび前記近位アンカーの前記各保持構造は、前記ボディが、回転せずに前記近位アンカーに対して近位方向へ動くことができるようにされている、請求項１に記載の脊椎固定装置。
7. 前記ボディおよび前記近位アンカーの前記各保持構造は、前記ボディが、回転によって前記近位アンカーに対して近位方向へ動くことができるようにされている、請求項１に記載の脊椎固定装置。
8. 前記相補的な表面構造は、前記近位アンカーに設けられた球状の外面と、前記フランジに設けられた対応する球状のくぼみとを有している、請求項１に記載の脊椎固定装置。
9. 前記フランジは、概ね前記遠位アンカーに面し、複数のスパイクを含む骨接触面を含んでいる、請求項１に記載の脊椎固定装置。
10. 前記ボディは、長さが約８ｍｍから約８０ｍｍである、請求項１に記載の脊椎固定装置。
11. 前記ボディは、長さが約２０ｍｍから約４０ｍｍである、請求項１に記載の脊椎固定装置。
12. 前記ボディは、最大直径が約３．０ｍｍから約５．５ｍｍである、請求項１１に記載の脊椎固定装置。
13. 前記ボディは、長さが約１０ｍｍから約３０ｍｍである、請求項１に記載の脊椎固定装置。
14. 前記ボディは、最大直径が約３．０ｍｍから約５．５ｍｍである、請求項１３に記載の脊椎固定装置。
15. 前記ボディは、長さが約５０ｍｍから約９０ｍｍである、請求項１に記載の脊椎固定装置。
16. 前記ボディは、最大直径が約４．０ｍｍから約５．５ｍｍである、請求項１５に記載の脊椎固定装置。
17. 前記ボディは、最大直径が約３．０ｍｍから約５．５ｍｍである、請求項１に記載の脊椎固定装置。
18. さらに前記脊椎固定装置の細長いボディを通して前記ボディの長尺軸方向に沿って延在する孔を有する、請求項５に記載の脊椎固定装置。
19. さらに、前記孔を通して延在する案内ワイヤを有し、前記案内ワイヤが、前記孔の遠位部分の中に、前記細長いボディに対して近位方向に引き込まれて、前記遠位アンカーを前記展開方向へ移動させる、請求項１８に記載の脊椎固定装置。

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