JP4985085B2 - ポリイミドの分解・回収方法 - Google Patents
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Description
これらの優れた性能を有するポリイミドは多くの工業製品に使用されており、使用済み製品や不良製品の再生処理や再資源化が困難であり、現状は残念ながら、そのまま埋め立て廃棄処分されるか又は焼却廃棄処分されている。
埋め立て廃棄処分には用地の確保や、あるいは焼却処分には焼却炉が必要であり、地球環境に対する影響が大きい。特に近年の地球環境汚染問題や資源枯渇の問題が叫ばれるようになって以来、有効に再利用する回収方法が重要な課題となってきている。
この課題解決のために、ポリイミドを化学的に分解するケミカルリサイクルの手段や技術が提案されている。
1.ジアミン類と、カルボン酸類とを重縮合して得られたポリイミドを、(A)分子内にアミノ基を有する水溶性化合物、(B)水溶性アルコールの少なくとも一種、(C)水、を含む処理液中において、加水分解する工程を少なくとも含むことを特徴とするポリイミドの分解・回収方法。
2.加水分解が95℃を超え、200℃未満の温度でなされる前記1のポリイミドの分解・回収方法。
3.ポリイミドのカルボン酸類の主成分がピロメリット酸である前記1又は2いずれかのポリイミドの分解・回収方法。
4.ポリイミドのジアミン類の主成分がベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンである前記1〜3いずれかのポリイミドの分解・回収方法。
5.(A)分子内にアミノ基を有する水溶性化合物を、ポリイミド1000000質量部に対し、アミノ基が2600〜5200当量となるように用いる前記1〜4いずれかのポリイミドの分解・回収方法。
6.ポリイミドの水に対する濃度が20質量%以上である前記1〜5いずれかのポリイミドの分解・回収方法。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
また、上記のABCDの一種以上の組み合わせが好ましい。
本発明で好ましく使用できるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類は、例えば4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが挙げられそれらのイミド結合性誘導体を含めてジアミン類と称する(以下同)ものであり、これらの中で4,4’−ジアミノジフェニルエーテル類が好ましく使用でき、本発明における各上記例のポリイミド中で70モル%以上使用することが好ましい。
また、フェニレンジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンが挙げられるが中でもp−フェニレンジアミン類が好ましく使用でき、本発明における各上記例のポリイミド中で70モル%以上使用することが好ましい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とするポリイミドベンゾオキサゾールに使用される、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
同様に、B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせや、C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせの場合においても、全芳香族ジアミン類の30モル%未満であれば下記に例示されるジアミン類の中で該当ジアミン類以外のものを併用してのポリイミドフィルムであってもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば前記限定に係らず下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有する前駆体複合体を形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
本発明における(B)水溶性アルコールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールメチルセロソルブ、エチレングリコールエチルセロソルブ、やエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンのエステルやアミノ誘導体やスルフォン酸誘導体などが挙げられる。
上記の(A)分子内にアミノ基を有する水溶性化合物と(B)水溶性アルコールとは両者がアルカリ性水中に併存して存在すべきものであり、相手ポリイミドの分解のし易さなどを顧慮して適宜選択使用すればよい。また、この両者に加えて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ性物質を適宜添加使用してもよい。
(C)水、については純水ないしイオン交換水を用いることが好ましい。
処理液中のアミノ基の絶対量は、処理されるポリイミド中のイミド基1当量に対し、2当量未満に抑えることが好ましい。アミノ基量を増すことにより分解速度を上げることが可能であるが、必要以上にアミノ基量を増すと、最終的に得られた分解物から当該アミノ基を含む化合物を除去することが困難となり、回収された分解物のリサイクルに支障を来す場合がある。また、処理容器などの耐食性に問題が生じる場合があり、不必要に高価な耐食性材料を用いた設備としなければならないなど工業化に当たって支障がでる場合がある。
本発明におけるポリイミドフィルムの処理量は、水に対して20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、21質量%以上65質量%以下がなお好ましく、24質量%以上60質量%以下とすることが好ましい。処理量がこの範囲に満たないと処理効率が悪くなる。処理量がこの範囲を超えると、処理後の流動性が悪化し、回収作業に支障が出る場合がある。
有機酸例えば酢酸、蓚酸、クエン酸を使用してもよくまたこれらの有機酸を前記無機酸の水溶液に併用してもよい。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックスDMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると褐色で粘調なポリアミド酸溶液aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.0dl/gであった。
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液bが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
ポリアミド酸溶液aをステンレスベルトに、スキージ/ベルト間のギャップを950μmとしてコーティングし、110℃にて15分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離しグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムを連続式の熱処理炉に通し、第1段が150℃で2分、続いて200℃にて2分間熱処理した後、495℃にて4分間熱処理し、イミド化反応を進行させポリイミドフィルムAを得た。ポリイミドフィルムAのイミド結合当量は概ね5235m当量/kgである。
ポリアミド酸溶液bをステンレスベルトに、スキージ/ベルト間のギャップを950μmとしてコーティングし、100℃にて20分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離しグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムを連続式の熱処理炉に通し、第1段が130℃で2分、続いて180℃にて2分間熱処理した後、400℃にて4分間熱処理し、イミド化反応を進行させポリイミドフィルムBを得た。ポリイミドフィルムBのイミド結合当量は概ね5465m当量/kgである。
ポリアミド酸溶液cをステンレスベルトに、スキージ/ベルト間のギャップを950μmとしてコーティングし、110℃にて15分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離しグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムを連続式の熱処理炉に通し、100℃から450℃にかけて50℃/分の速度にて昇温し、450℃にて2分保持し、約1分間にて50℃程度まで冷却するプロファイルにて熱処理を行いポリイミドフィルムCを得た。ポリイミドフィルムCのイミド結合当量は概ね5222m当量/kgである。
ポリイミドフィルムAおよびポリイミドフィルムAを作製する際に生じたフィルム屑を裁断機にて平均辺長5mm程度の細片に破砕した。得られた細片を、攪拌羽根と環流管を備えたフラスコに入れ、表1.に示す組成となるように含アミノ基化合物、アルコール、水を仕込み、表1.に示す温度、時間にて処理した。結果を表1に示す。
表中、「アミノ基/ポリイミド質量」は含アミノ基化合物のアミノ基当量とポリイミド質量の比である。表中、ポリイミド欄のA、B、Cは各ポリイミドフィルムおよび各ポリイミドフィルムを作製する際に生じたフィルム屑の使用量を示す。
「処理後の流動性」については、処理後サンプルの状態を目視判定したものである。
「未分解物量」は処理後の容器内容物を100メッシュのステンレス網で濾過し、ステンレス網上に残った固形物を水洗乾燥して求めた固形物質量部である。
ステンレスメッシュでの濾過により得られた濾液にアミノ基当量の1.2倍の塩酸を加え、生じた沈殿を5B濾紙で濾過・水洗・乾燥し、回収物とした。得られた回収物量を表1に示す。
以下同様に、ポリイミドフィルムおよびポリイミドフィルムを作製する際に生じたフィルム屑の使用量、含アミノ基化合物、アルコール、水の量を表1〜4に示すように変えて実験を行った。結果を表1〜4に示す。なお、処理環境が「密閉」で、温度条件が100℃以上125℃未満の場合に於いては、回転式染色試験機ミニカラー(テクサム技研社製)を用い、同試験機のステンレス製ポットを用いて処理を行った。処理温度が125℃以上の場合は、密閉したミニカラー試験機用ポットを、PCT試験器(平山製作所製)に入れて処理を行った。
Claims (5)
- ジアミン類と、カルボン酸類とを重縮合して得られたポリイミドを、(A)モノエタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ヒドラジン1水和物、エチレンジアミン、およびジメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1種以上の、分子内にアミノ基を有する水溶性化合物、(B)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールメチルセロソルブ、エチレングリコールエチルセロソルブ、やエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンのエステルやアミノ誘導体、及びスルフォン酸誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上の水溶性アルコール 、(C)水、を含む処理液中において、加水分解工程を少なくとも含み、該加水分解工程が95℃を超え、200℃未満の温度でなされることを特徴とするポリイミドの分解・回収方法。
- ポリイミドのカルボン酸類の主成分がピロメリット酸である請求項1 に記載のポリイミドの分解・回収方法。
- ポリイミドのジアミン類の主成分がベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンである請求項1〜2いずれかに記載のポリイミドの分解・回収方法。
- (A)分子内にアミノ基を有する水溶性化合物を、ポリイミド1000000質量部に対し、アミノ基が2600〜5200当量となるように用いる請求項1〜3いずれかに記載のポリイミドの分解・回収方法。
- ポリイミドの水に対する濃度が20質量%以上である請求項1〜4いずれかに記載のポリイミドの分解・回収方法。
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