JP4980322B2 - 多層配線板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、多層配線板およびその製造方法に係り、特に、配線板と磁性シートとを積層させたノイズ抑制型多層配線板に好適に利用できる多層配線板およびその製造方法に関する。
一般的に、磁性シートとは、軟質性結着材または硬質性結着材を基材とするシートの内部または表面に磁性材料が配合されたシートであり、高周波機器の分野においては主に放射ノイズに対する抑制を目的として用いられている。これは、磁性シートが高い磁性損失(透磁率の虚数項)μ”を有することに起因する。伝送路から放射された電磁界成分が磁性シートを通過する際、磁性シートは磁界成分を熱量に変換する。また、磁界成分の熱量変換に追従して電界成分も減衰する。これにより、磁性シートはノイズ抑制効果を発揮する。
図9および図10に示すように、磁性シート104の内部に配合された磁性材料が軟磁性金属扁平粉末108の場合、その配向によって磁性シート104の特性が大きく変化する。例えば、図9に示すように、軟磁性金属扁平粉末108の法線方向H8が磁性シート104の厚さ方向H4と平行になる場合、換言すると、磁性シート104の縦断面図において軟磁性金属扁平粉末108が水平に配向された場合、ノイズ抑制効果が最大になることが知られている。その一方、図10に示すように、軟磁性金属扁平粉末108の法線方向H8が磁性シート104の厚さ方向H4と直交する場合、換言すると、磁性シート104の縦断面図において軟磁性金属扁平粉末108が縦方向に配向された場合、軟磁性金属扁平粉末108が水平に配向された場合と比較して、磁性シート104の比誘電率が10倍程度増加することが知られている。
そこで、従来の多層配線板に磁性シート104のノイズ抑制効果を利用する場合には、その一例として、図11に示すように、磁性シート104の縦断面図において軟磁性金属扁平粉末108が水平に配向された磁性シート104を1枚(または2枚以上)の配線板102とともに積層させたノイズ抑制型多層配線板101Aになっていた。また、従来の多層配線板に磁性シート104の高い比誘電率を利用する場合には、その一例として、図12に示すように、磁性シート104の縦断面図において軟磁性金属扁平粉末108が縦方向に配向された磁性シート104を2枚の平板電極106、107が対向するように配置された2枚の配線板102、103の間に挟んで積層させた高誘電率型多層配線板101Bになっていた。
特開2005−228908号公報
しかしながら、図9または図10に示すように、磁性シート104に配合されたすべての軟磁性金属扁平粉末108の配向は同一方向に揃っているため、ノイズ抑制型多層配線板101Aに対して高い比誘電率を付加させることはできず、また、高誘電率型多層配線板101Bに対して高いノイズ抑制効果を付加することができないという問題があった。そのため、従来の多層配線板101A、101Bにノイズ抑制効果および高い比誘電率を同時付加する場合、積層される2枚の配線板102、103にそれぞれ形成される対向電極の間に誘電基板を挟みこみ、その誘電基板の片面に磁性シート104を貼付しなければならず、煩雑な製造工程が必要であった。
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ノイズ抑制効果および高い比誘電率をともに有し、かつ、その製造を容易にすることができる多層配線板およびその製造方法を提供することを本発明の目的としている。
前述した目的を達成するため、本発明の多層配線板は、その第1の態様として、コンデンサに用いられる1個または2個以上の平板電極を表面または裏面にそれぞれ有しており、各々の平板電極を対向させて積層されている2枚の配線板と、軟磁性金属扁平粉末を混合した結着材を硬化させたシートであって2枚の配線板に挟まれている磁性シートとを備えており、2枚の配線板において積層方向に対向する2枚の平板電極に挟まれた磁性シートの軟磁性金属扁平粉末は、その法線方向が積層方向と直交するように配列されていることを特徴としている。
本発明の第1の態様の多層配線板によれば、対向する2枚の平板電極の間に挟まれた磁性シートの所定の領域のみ誘電率が高くなっているので、磁性シートを積層させた多層配線板に大容量のコンデンサを配置することができる。
本発明の第2の態様の多層配線板は、第1の態様の多層配線板において、2枚の配線板において積層方向に対向する2枚の平板電極に挟まれていない磁性シートの軟磁性金属扁平粉末は、その法線方向が積層方向と平行になるように配列されていることを特徴としている。
本発明の第2の態様の多層配線板によれば、前述した磁性シートの所定の領域以外の領域において磁性シートのノイズ抑制効果を高めることができる。
本発明の第3の態様の多層配線板は、第1または第2の態様の多層配線板において、磁性シートは、磁性シートの周縁を囲む枠形状または空洞形状であって硬化後における所望する磁性シートの厚さと同等の厚さまたは深さに設定されたフレーム基板の枠内または空洞内に挿入された状態において、2枚の配線板に挟まれていることを特徴としている。
本発明の第3の態様の多層配線板によれば、多層配線板の積層時に磁性シートが所望の厚さよりも薄くなりすぎて期待する磁気特性よりも劣化することを防止することができる。
本発明の第4の態様の多層配線板は、第3の態様の多層配線板において、フレーム基板は、樹脂製であることを特徴としている。
本発明の第4の態様の多層配線板によれば、形成容易性かつ絶縁性に優れたフレーム基板を作成することができる。
本発明の第5の態様の多層配線板は、第1から第4のいずれか1の態様の多層配線板において、各々の平板電極は、2枚の配線板における磁性シートとの接触面にそれぞれ形成されていることを特徴としている。
本発明の第5の態様の多層配線板によれば、各々の平板電極と磁性シートとの間に何も介在せずに直接接触するので、コンデンサの容量を最大に設定することができる。
本発明の第6の態様の多層配線板は、第1から第5のいずれか1の態様の多層配線板において、2枚の配線板は、積層方向に貫通する1個または2個以上の硬化補助孔を有する配線板であることを特徴としている。
本発明の第6の態様の多層配線板によれば、硬化補助孔を介して磁性シートの熱交換や結着材の蒸発が容易になるため、磁性シートの硬化前であっても2枚の配線板の間に積層させることができる。
また、本発明の多層配線板の製造方法は、その第1の態様として、軟磁性金属扁平粉末を結着材に混合して得たスラリーをシート状に加工することによりスラリーシートを形成するスラリーシート形成工程と、表面または裏面にそれぞれ形成された1個または2個以上の平板電極を積層方向に対向させた2枚の配線板の間にスラリーシートを挟む積層工程と、スラリーシート形成工程の後であって積層工程の前後いずれかにおいて、積層方向に対向する2枚の平板電極に挟まれる予定の又は挟まれたスラリーシートの軟磁性金属扁平粉末に対してスラリーシートの厚さ方向または積層方向に磁場を局所印加することにより、局所磁場印加された軟磁性金属扁平粉末をその法線方向がスラリーシートの厚さ方向または積層方向と直交するように配列させる局所磁場印加工程と、積層工程および局所磁場印加工程の後において、2枚の配線板に挟まれたスラリーシートを積層状態において積層方向に熱加圧することにより、スラリーシートを硬化させた磁性シートを形成する硬化工程とを備えることを特徴としている。
本発明の第1の態様の多層配線板の製造方法によれば、対向する2枚の平板電極の間に挟まれた磁性シートの所定の領域のみ誘電率が高くなるので、磁性シートを積層させたノイズ抑制効果のある多層配線板に大容量のコンデンサを配置した多層配線板を製造することができる。また、スラリーシートの積層後硬化前に磁性シートの所定の領域にのみ積層方向への磁場を局所印加する場合、磁性シートの所定の領域を確実に特定して軟磁性金属扁平粉末の配向を変更することができる。
本発明の第2の態様の多層配線板の製造方法は、第1の態様の多層配線板の製造方法において、局所磁場印加工程においては、通電された第2のコイルの中心軸方向とスラリーシートの厚さ方向または積層方向とが平行になるように第2のコイルの端部周辺または内部に2枚の配線板に挟まれる予定の又は挟まれたスラリーシートを配置することにより、スラリーシートの厚さ方向または積層方向に磁場を印加することを特徴としている。
本発明の第2の態様の多層配線板の製造方法によれば、第2のコイルの端部周辺または内部においては他の位置と比較して磁束密度が高いので、軟磁性金属扁平粉末の配向を同一方向に容易に局所変更することができる。
本発明の第3の態様の多層配線板の製造方法は、第2の態様の多層配線板の製造方法において、第2のコイルは、同一軸上の2箇所において1本の金属線を同一方向に巻回することにより直列配置された2連コイルであり、局所磁場印加工程においては、第2のコイルの内部であってその連結領域に2枚の配線板に挟まれる予定の又は挟まれたスラリーシートを配置することを特徴としている。
本発明の第3の態様の多層配線板の製造方法によれば、第2のコイルの内部の磁束密度はその端部周辺の磁束密度よりも高くなっているが、第2のコイルは2連コイルになっており、第2のコイルに対する当該スラリーシートの内部配置が容易になっているので、軟磁性金属扁平粉末の配向を同一方向により一層容易に局所変更することができる。
本発明の第4の態様の多層配線板の製造方法は、第1から第3のいずれか1の態様の多層配線板の製造方法において、スラリーシート形成工程の後であって局所磁場印加工程の前において、スラリーシートに混合されたすべての軟磁性金属扁平粉末に対してスラリーシートの厚さ方向または積層方向と直交方向に磁場を全体印加することにより、全体磁場印加された軟磁性金属扁平粉末をその法線方向がスラリーシートの厚さ方向または積層方向と平行になるように配列させる全体磁場印加工程を備えることを特徴としている。
本発明の第4の態様の多層配線板の製造方法によれば、前述した磁性シートの所定の領域において高誘電率を維持しつつ、その所定の領域以外の領域において磁性シートのノイズ抑制効果を高めることができる。
本発明の第5の態様の多層配線板の製造方法は、第4の態様の多層配線板の製造方法において、全体磁場印加工程においては、通電された第1の空芯コイルの中心軸方向とスラリーシートの厚さ方向または積層方向とが直交するように第1の空芯コイルの内部に2枚の配線板に挟まれる予定の又は挟まれたスラリーシートを通過させることにより、スラリーシートの全域に対してスラリーシートの厚さ方向または積層方向と直交方向に磁場を印加することを特徴としている。
本発明の第5の態様の多層配線板の製造方法によれば、第1の空芯コイルの内部通過によりすべての軟磁性金属扁平粉末の配向を容易に変更することができる。
本発明の第6の態様の多層配線板の製造方法は、第1から第5のいずれか1の態様の多層配線板の製造方法において、スラリーシート形成工程の後であって積層工程の前において、枠形状または空洞形状であって磁性シートの厚さと同等の厚さまたは深さに設定されたフレーム基板の枠内または空洞内にスラリーシートを挿入するフレーム基板配置工程を備えることを特徴としている。
本発明の第6の態様の多層配線板の製造方法によれば、硬化工程において2枚の配線板に挟まれたスラリーシートを積層方向に熱加圧しても、2枚の配線板の間隔が一定になるようにフレーム基板が支持するので、スラリーシートに熱加圧時の圧力が加わりすぎて所望の厚さよりも薄くなることを防止することができる。
本発明の第7の態様の多層配線板の製造方法は、第6の態様の多層配線板の製造方法において、フレーム基板は、樹脂製であることを特徴としている。
本発明の第7の態様の多層配線板の製造方法によれば、形成容易性かつ絶縁性に優れたフレーム基板を作成することができる。
本発明の第8の態様の多層配線板の製造方法は、第1から第7のいずれか1の態様の多層配線板の製造方法において、各々の平板電極は、2枚の配線板におけるスラリーシートとの接触面にそれぞれ形成されていることを特徴としている。
本発明の第8の態様の多層配線板の製造方法によれば、各々の平板電極と磁性シートとの間に何も介在せずに直接接触するので、コンデンサの容量を最大に設定することができる。
本発明の第9の態様の多層配線板の製造方法は、第1から第8のいずれか1の態様の多層配線板の製造方法において、2枚の配線板は、積層方向に貫通する1個または2個以上の硬化補助孔を有する配線板であることを特徴としている。
本発明の第9の態様の多層配線板の製造方法によれば、硬化補助孔を介して磁性シートの熱交換や結着材の蒸発が容易になるため、磁性シートの硬化前に2枚の配線板の間に積層させたとしても、硬化補助孔が形成されていない場合と比較して磁性シートの硬化を促進することができる。
本発明の多層配線板によれば、磁性シートの一部の領域においては比誘電率が高く、また、その他の領域においてはノイズ抑制効果が高いので、その磁性シートを積層させた多層配線板に対してノイズ抑制効果および高い比誘電率を同時に発揮させることができるという効果を奏する。
また、本発明の多層配線板の製造方法によれば、2枚の配線板の間に積層されるスラリーシートに局所磁場を印加して硬化することにより、軟磁性金属扁平粉末の配向が他の領域と局所的に異なる磁性シートが作成されるので、その磁性シートを2枚の配線板の間に挟むことにより、ノイズ抑制効果および高い比誘電率を同時に発揮する多層配線板の製造を容易にすることができるという効果を奏する。
以下、図を用いて、本発明の多層配線板およびその製造方法をその一実施形態により説明する。
はじめに、本実施形態の多層配線板を説明する。図1は、本実施形態の多層配線板の分解斜視図を示している。本実施形態の多層配線板1は、図1に示すように、2枚の配線板2、3および磁性シート4を備える3層型多層配線板1となっている。また、本実施形態の多層配線板1においては、フレーム基板5が任意に追加されている。
配線板2、3は、樹脂基板の表面または裏面に配線パターン2pや接地電極3pが形成されたものであり、本実施形態においては2枚用意されている。これら2枚の配線板2、3は、コンデンサに用いられる1個または2個以上の平板電極(図1においては1枚の配線板につき4個の平板電極6、7が設けられている。)6、7をそれらの表面または裏面にそれぞれ有しており、2枚の配線板2、3を積層することによって各々の平板電極6、7が対向している。
ここで、コンデンサの大容量化を所望する場合、各々の平板電極6、7は2枚の配線板2、3における磁性シート4との接触面、すなわち上層の配線板2であればその裏面2bに、下層の配線板3であればその表面3aに、それぞれ形成されていることが好ましい。また、2枚の配線板2、3には、積層方向H1に貫通する1個または2個以上の硬化補助孔(図1においては1枚の配線板につき4個の硬化補助孔2hが設けられている。)2hを有することが好ましい。
磁性シート4は、図2および図3に示すような軟磁性金属扁平粉末8を混合した結着材9を硬化させたシートであり、2枚の配線板2、3に挟まれている。
本実施形態の磁性シート4は、軟磁性金属扁平粉末8および結着材9を含有したスラリーを、ドクターブレード法または軟磁性金属扁平粉末8を結着材9に噴射するコーテイング法によりシート加工し、磁場を印加した後に熱加圧によりシートを硬化させて得られる。
軟磁性金属としては、非晶質相を主相とするアモルファス金属やガラス転移を示す金属ガラス合金、特にFe基金属ガラス合金を用いることが好ましい。Fe基金属ガラス合金の組成としては、一例として、Fe100−x−y−z−w−tSi(M:Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Pt、Pd、Auより選ばれる1種または2種以上の元素)を用いることができる。この組成比を示すx、y、z、w、tは、0.5原子%≦x≦8原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦8原子%、1原子%≦w≦12原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%である。また、他の一例としては、従来から用いられているFe−Al−Ga−C−P−Si−B系合金やその他のFe基以外の組成の金属ガラス合金をも用いることができる。
軟磁性金属に金属ガラス合金を用いる場合、はじめに、所望する組成の金属ガラス合金溶湯を液体急冷法により急冷して得られた合金薄帯を粉砕するか、あるいは、水アトマイズ法もしくはガスアトマイズ法により得られた球状粒子をアトライタ等により機械的に粉砕することにより、金属ガラス合金の扁平粉末を得る。得られた金属ガラス合金については内部応力の緩和を目的として必要に応じて熱処理することが好ましい。熱処理温度Taはキュリー温度Tc以上ガラス遷移温度Tg以下の範囲であることが好ましい。
軟磁性金属扁平粉末8のアスペクト比(長径/厚さ)は、2.5以上が好ましく、12以上がより好ましい。軟磁性金属扁平粉末8のアスペクト比が2.5以上の場合、磁性シート4の透磁率の虚数項μ”は10以上となる。また、そのアスペクト比が12以上の場合、磁性シート4の透磁率の虚数項μ”は15以上となる。なお、軟磁性金属扁平粉末8のアスペクト比が高いほど磁性シート4の圧縮形成時に軟磁性金属扁平粉末8が配向してGHz帯域の透磁率の虚数項μ”が高くなるために電波吸収特性が向上するが、現在の製造技術のレベルからアスペクト比の上限は250程度である。
また、Fe基金属ガラス合金としては、ΔTx=Tx−Tg>25K(ΔTx:過冷却液体の温度間隔、Tx:結晶化開始温度、Tg:ガラス遷移温度)の式を満たすものが好ましい。前述の式を満たすFe基金属ガラス合金は、軟磁気特性に優れており、磁性シート4の透磁率の虚数項μ”が10以上、場合によっては15以上となり、GHz帯域での電磁波抑制効果が向上し、高周波ノイズを効果的に抑制する。
結着材9としては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂などの耐熱性樹脂、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂のいずれを用いても良い。ここで、磁性シート4については、軟磁性金属扁平粉末8や結着材9の他に、キシレン、トルエン、イソプロピルアルコールなどの分散媒やステアリン酸塩からなる潤滑剤が添加されていてもよい。
磁性シート4における軟磁性金属扁平粉末8の含有率としては、軟磁性金属扁平粉末8に金属ガラス合金を用いる場合、41体積%以上83体積%以下の範囲であることが好ましい。軟磁性金属扁平粉末8の含有率が41体積%以上あれば、磁性シート4の透磁率の虚数項μ”が10以上になるので、ノイズ抑制効果が有効に発揮される。また、その含有率が83体積%以下であれば、隣位する軟磁性金属扁平粉末8同士が接触することがなくなるので、磁性シート4のインピーダンス低下を有効に防止する。
磁性シート4の厚みtは、磁性シート4の熱加圧前において25μm以上440μm以下の範囲とすることが好ましい。熱加圧前の磁性シート4の厚みtが25μm以上440μm以下の範囲であれば、磁性シート4の透磁率の虚数項μ”が10以上になる。なお、熱加圧前の磁性シート4の厚みtが55μm以上400μm以下の範囲であれば、透磁率の虚数項μ”が15以上になる。
ここで、図1に示すように、磁性シート4の全域のうち、2枚の配線板2、3において積層方向H1に対向する2枚の平板電極6、7に挟まれた領域を所定の領域4A2と称する。また、軟磁性金属扁平粉末8の面内方向PD8および法線方向H8を図2のように規定する。この場合、磁性シート4の所定の領域4A2に配合された軟磁性金属扁平粉末8は、図3に示すように、その法線方向H8が積層方向H1と直交するように(言い換えると、その面内方向PD8が磁性シートの面内方向PD4と直交するように)、配列されている。また、磁性シート4の全域のうち、2枚の配線板2、3において積層方向H1に対向する2枚の平板電極6、7に挟まれていない領域、すなわち所定の領域4A2以外の領域を他の領域4A1と称する。この場合、磁性シート4の他の領域4A1に配合された軟磁性金属扁平粉末8は、その法線方向H8が積層方向H1と平行になるように配列されている。
フレーム基板5は、磁性シート4の周縁を囲む枠形状に形成されている。このフレーム基板5の厚さは、硬化後における所望する磁性シート4の厚さと同等に設定されている。また、その外寸は、2枚の配線板2、3の外寸と同等に設定されている。そして、磁性シート4は、フレーム基板5の枠内に挿入された状態において、2枚の配線板2、3に挟まれている。
このフレーム基板5としては、樹脂製であることが好ましい。
次に、本実施形態の多層配線板1の製造方法を説明する。
本実施形態の多層配線板1は、スラリーシート4S形成工程、積層工程、局所磁場印加工程および硬化工程を順に経て製造される。また、本実施形態においては、前述の工程の他、フレーム基板配置工程および全体磁場印加工程が任意に追加されている。
本実施形態の第1の工程となるスラリーシート形成工程は、軟磁性金属扁平粉末8を結着材9に混合して得たスラリーをシート状に加工することにより、図1に示す磁性シート4と同形状のスラリーシート4Sを形成する。スラリーからスラリーシート4Sを形成する方法は種々のパターンが考えられる。本実施形態においては、圧延ローラおよびドクターブレードを用いてシート加工している。圧延ローラは、スラリーを均一の厚さに圧延するともに、軟磁性金属扁平粉末8の法線方向H8が厚さ方向H4と平行になるように軟磁性金属扁平粉末8の配向をおおまかに揃えるものである。また、ドクターブレードは、スラリーを所望の厚さ、例えば前述した通り25μm以上440μm以下の範囲に整えるものであり、スラリーシート4Sの幅よりも長く設定されている。
本実施形態の第2の工程となる全体磁場印加工程においては、スラリーシート4Sに混合されたすべての軟磁性金属扁平粉末8、つまりスラリーシート4Sの全域に対してスラリーシート4Sの厚さ方向H4と直交方向に磁場を全体印加する。具体的な手段としては、図4に示すように、PETフィルムからなる長尺フィルム13に載置されておりスラリーシート加工装置14から搬送されるスラリーシート4Sの搬送経路に第1の空芯コイル15を配置し、通電した第1の空芯コイル15の内部にスラリーシート4Sを通過させる。
第1の空芯コイル15としては、直径もしくは長径が長尺フィルム13の幅(長尺フィルム13の長手方向(長尺方向)と直交する方向)よりも大きな円形もしくは楕円形のコイルが選択されている。第1の空芯コイル15の中心軸方向15sにスラリーシート4Sを通過させるので、第1の空芯コイル15の内部の磁場印加方向はスラリーシート4Sの法線方向と直交することになる。これにより、全体磁場印加された軟磁性金属扁平粉末8の法線方向H8がスラリーシート4Sの厚さ方向H4と平行になるようにそれらの軟磁性金属扁平粉末8は配列される。
本実施形態の第3の工程となるフレーム基板配置工程においては、図1に示すようなフレーム基板5を形成し、そのフレーム基板5の枠内にスラリーシート4Sを挿入する。後の工程においてスラリーシート4Sが硬化する際、スラリーシート4Sの厚さはフレーム基板5と同等の厚さまで熱圧縮される。そのため、フレーム基板配置工程においては、スラリーシート4Sの厚さはフレーム基板5の厚さよりも厚くなっていても良い。なお、フレーム基板5が樹脂製である場合、フレーム基板5を上層の配線板2の裏面2bまたは下層の配線板3の表面3aに薄膜形成しても良い。
本実施形態の第4の工程となる積層工程は、フレーム基板5に挿入されたスラリーシート4Sをフレーム基板5ごと2枚の配線板2、3の間に挟んでそれらを積層する。前述の通り、2枚の配線板2、3には平板電極6、7および硬化補助孔2hがそれぞれ形成されている。
本実施形態の第5の工程となる局所磁場印加工程は、スラリーシート4Sにおいて積層方向H1に対向する2枚の平板電極6、7に挟まれた軟磁性金属扁平粉末8、すなわち図1に示したスラリーシート4Sの所定の領域4A2に対して積層方向H1に磁場を局所印加する。具体的には、図5に示すように、通電された第2のコイル16から生じた磁場を利用してスラリーシート4Sの所定の領域4A2に磁場を局所印加する。
本実施形態の第2のコイル16は、同一軸上の2箇所において1本の金属線を同一方向に巻回することにより直列配置された2連コイル16a、16bであり、この中心軸方向16sと積層方向H1とが平行になるように配置されている。また、2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sは、第2のコイル16の内部であってその連結領域16mに配置される。これにより、スラリーシート4Sの所定の領域4A2のみに積層方向H1の磁場が局所印加されるので、局所磁場印加された軟磁性金属扁平粉末8の法線方向H8が積層方向H1と直交するようにそれらが配列させる。
なお、第2のコイル16が2連コイル16a、16bではなく通常の円柱コイルである場合、2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sは、図6に示すように、第2のコイル16の端部周辺に配置する。
本実施形態の第6の工程(最終工程)となる硬化工程は、前述までの工程が終了した後、2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sを積層状態において積層方向H1に熱加圧する。磁性シート4の結着材9は熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であっても熱加圧および冷却を経ることにより硬化するので、熱加圧を行なうことによりスラリーシート4Sを硬化させた磁性シート4が形成される。また、熱加圧を行なうことにより、磁性シート4が2枚の配線板2、3と接着し、多層配線板1が形成される。
次に、本実施形態の多層配線板1の作用を説明する。
本実施形態の多層配線板1においては、図1および図3に示すように、各々4個の平板電極6、7を有する2枚の配線板2、3の間に磁性シート4が積層されており、各々上下2個の平板電極6、7に挟まれた磁性シート4の所定の領域4A2における軟磁性金属扁平粉末8はその法線方向H8が積層方向H1と直交するように配列されている。かかる軟磁性金属扁平粉末8の配向が上記の通りになっていると、磁性シート4の所定の領域4A2のみの誘電率が高くなるので、従来技術のように誘電基板を挟みこむ必要がなく、1枚の磁性シート4のみを用いて多層配線板1に大容量のコンデンサを配置することができる。
また、各々4個の平板電極6、7は、図1および図3に示すように、上下2枚の配線板2、3における磁性シート4との接触面、すなわち上層の配線板2であればその裏面2bに、下層の配線板3であればその表面3aに、それぞれ形成されている。コンデンサの容量については、対向電極の対向面積が不変であればその対向距離が短いほど大容量になる。つまり、各々上下2枚の平板電極6、7と磁性シート4との間に何も介在せずに直接接触させることにより、配線板2、3の厚さ分だけ各々上下2枚の平板電極6、7の対向距離が近づく。また、磁性シート4の所定の領域4A2の誘電率よりも低い誘電率の空気層を排除することもできる。これにより、コンデンサの容量を最大に設定することができる。
その一方、図1および図3に示すように、各々上下2枚の平板電極6、7に挟まれていない領域、すなわち磁性シート4の他の領域4A1における軟磁性金属扁平粉末8は、その法線方向H8が積層方向H1と平行になるように配列されている。かかる軟磁性金属扁平粉末8の配向が上記の通りになっていると、磁性シート4の他の領域4A1においては従来からよく知られた高いノイズ抑制効果が生じるため、磁性シート4全体としてそのノイズ抑制効果を高めることができる。
上記の磁性シート4の磁気特性は、軟磁性金属扁平粉末8の形状やそのアスペクト比の他に、軟磁性金属扁平粉末8の密度や配向によっても大きく変化する。ここで、磁性シート4の厚さが所望の厚さよりも薄くなり過ぎた場合、軟磁性金属扁平粉末8の配向や磁性シート4の厚さ方向H4における軟磁性金属扁平粉末8の密度が変化するため、所望の磁気特性を得ることが困難となる。そこで、本実施形態の磁性シート4は、図1および図3に示すように、フレーム基板5の枠内に挿入された状態において2枚の配線板2、3に挟まれている。これにより、多層配線板1の積層時に磁性シート4が所望の厚さよりも薄くなりすぎて、所望する磁気特性よりも劣化することを防止することができる。
本実施形態のフレーム基板5としては、樹脂製のものが選択されている。そのため、フレーム基板5としての上記役割を果たしつつ、形成容易性かつ絶縁性に優れたフレーム基板5を作成することができる。
また、磁性シート4を挟む2枚の配線板2、3には、積層方向H1に4個の硬化補助孔2hがそれぞれ貫通している。これによって、硬化補助孔2hを介して磁性シート4の熱交換や結着材9の蒸発が容易になるため、硬化前の磁性シート4であっても2枚の配線板2、3の間に積層させることができる。
次に、本実施形態の多層配線板1の製造方法の作用を説明する。
本実施形態の多層配線板1の製造方法においては、第4の工程となる積層工程の後に第5の工程となる局所磁場印加工程が設けられている。この局所磁場印加工程においては、スラリーシート4Sの所定の領域4A2のみに対して積層方向H1に磁場を局所印加する。スラリーシート4Sの所定の領域4A2において局所磁場印加された軟磁性金属扁平粉末8は、その法線方向H8がスラリーシート4Sの厚さ方向H4または積層方向H1と直交するように配列させるので、磁性シート4の所定の領域4A2のみ誘電率が高くなる。ここで、磁性シート4は圧延加工などによってシート加工されており一定のノイズ抑制効果を発揮するため、本実施形態の多層配線板1はノイズ抑制効果の他に、大容量のコンデンサ機能を発揮する。すなわち、ノイズ抑制効果を有する磁性シート4に局所的に高誘電率をもたせた多層配線板1を製造することができる。
また、局所磁場印加工程が積層工程の前に行なわれる場合は磁性シート4の所定の領域4A2となる位置を予想して局所磁場印加を行なわなければならないが、本実施形態の第5の工程となる局所磁場印加工程は、第4の工程となる積層工程の後であって第6の工程(最終工程)となる硬化工程の前に設けられており、スラリーシート4Sの積層後硬化前に磁性シート4の所定の領域4A2にのみ積層方向H1への磁場を局所印加している。そのため、各々上下2枚の平板電極6、7に挟まれる磁性シート4の所定の領域4A2を確実に特定して軟磁性金属扁平粉末8の配向を変更することができる。
また、本実施形態の局所磁場印加工程においては、図5または図6に示すように、2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4S、具体的には各々上下2枚の平板電極6、7に挟まれた磁性シート4の所定の領域4A2を第2のコイル16の内部または端部周辺に配置し、多層配線板1の積層方向H1に磁場を局所印加している。第2のコイル16の内部または端部周辺においては第2のコイル16における内部または端部周辺以外の他の位置と比較して磁束密度が高いので、軟磁性金属扁平粉末8の配向を同一方向に揃えることを容易に行なうことができる。
第2のコイル16の内部については、磁力線Lの直進性および磁束密度が高いが、その形状が円柱コイルの場合はその内部に2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sを配置するのが困難になる。そこで、本実施形態の第2のコイル16としては、図5に示すように、前述した所定の条件の2連コイル16a、16bが用いられている。また、局所磁場印加工程においては、2連コイル形状の第2のコイル16の内部であってその連結領域16mに2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sを配置している。第2のコイル16が図5に示すような2連コイル形状であれば、2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sを第2のコイル16の内部に配置することが容易になるので、軟磁性金属扁平粉末8の配向を同一方向に揃えることをより一層容易にすることができる。
また、多層配線板1に形成されるコンデンサの容量増大の方法として、本実施形態の多層配線板1の製造方法においては、各々上下2枚の平板電極6、7が2枚の配線板2、3におけるスラリーシート4Sとの接触面にそれぞれ形成されている。各々上下2枚の平板電極6、7と磁性シート4との間には何も介在しておらず、それらの平板電極6、7が磁性シート4に直接接触することになるので、平板電極6、7の対向面積が同じであればコンデンサの容量を最大に設定することができる。
一方、本実施形態の多層配線板1の製造方法においては、スラリーシート形成工程の後であって局所磁場印加工程の前に全体磁場印加工程を備えている。スラリーシート4Sが形成されている段階においては、ある程度、軟磁性金属扁平粉末8の法線方向H8がスラリーシート4Sの厚さ方向H4と平行方向に揃うが、さらに良好な配向性を得るため、スラリーシート4Sに混合されたすべての軟磁性金属扁平粉末8に対してスラリーシート4Sの厚さ方向H4と直交方向に磁場を全体印加し、全体磁場印加された軟磁性金属扁平粉末8の法線方向H8がスラリーシート4Sの厚さ方向H4と平行になるようにそれらの軟磁性金属扁平粉末8を配列させている。局所磁場印加工程の前に全体磁場印加工程を行なっておけば、スラリーシート4Sに含有される軟磁性金属扁平粉末8の配向をすべて揃えた後、スラリーシート4Sの所定の領域4A2に含有される軟磁性金属扁平粉末8の配向を局所的に変更することができるので、磁性シート4の所定の領域4A2において高誘電率を維持しつつ、その他の領域4A1において磁性シート4のノイズ抑制効果を高めることができる。
また、上記の全体磁場印加工程においては、スラリーシート4Sの全域に対してスラリーシート4Sの厚さ方向H4と直交方向に磁場を全体印加するため、図4に示すように、通電された第1の空芯コイル15の中心軸方向15sとスラリーシート4Sの厚さ方向H4とが直交するように第1の空芯コイル15の内部に2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sを通過させている。第1の空芯コイル15の内部の磁力線Lは第1の空芯コイル15の中心軸方向15sと平行に発生するため、その内部にスラリーシート4Sを通過させることにより、すべての軟磁性金属扁平粉末8の配向を同一方向に容易に揃えることができる。
軟磁性金属扁平粉末8の配向はスラリーシート4Sに熱圧縮を加えることによっても変化してしまうので、積層工程および硬化工程において全体磁場印加工程や局所磁場印加工程によって揃えた軟磁性金属扁平粉末8の配向が意図せずに変わってしまうおそれがある。そこで、本実施形態の多層配線板1の製造方法においては、スラリーシート形成工程の後であって積層工程の前においてフレーム基板配置工程が設けられており、スラリーシート4Sがフレーム基板5の枠内に挿入されてから積層されている。これにより、硬化工程において2枚の配線板2、3に挟まれたスラリーシート4Sを積層方向H1に熱加圧しても、2枚の配線板2、3の間隔が一定になるようにフレーム基板5が支持するので、スラリーシート4Sに熱加圧時の圧力が加わりすぎてもフレーム基板5の厚さに基づいてスラリーシート4Sの所望の厚さが確保され、軟磁性金属扁平粉末8の配向が意図せずに変わってしまうことを防止することができる。
なお、このフレーム基板5が樹脂製であれば、例えば配線板2、3におけるスラリーシート4Sの接触面に薄膜形成することができるので、形成容易性かつ絶縁性に優れたフレーム基板5を作成することができる。
また、スラリーシート4Sを挟む2枚の配線板2、3には、図1に示すように、積層方向H1に貫通する各々4個の硬化補助孔2hが形成されている。スラリーシート4Sの硬化工程においては、硬化補助孔2hを介して磁性シート4の熱交換や結着材9の蒸発が容易になるため、磁性シート4の硬化前に2枚の配線板2、3の間に積層させたとしても、硬化補助孔2hが形成されていない場合と比較して磁性シート4の硬化を促進することができる。
すなわち、本実施形態の多層配線板1によれば、磁性シート4の所定の領域4A2においては比誘電率が高く、また、その他の領域4A1においてはノイズ抑制効果が高いので、その磁性シート4を積層させた多層配線板1に対してノイズ抑制効果および高い比誘電率を同時に発揮させることができるという作用効果を奏する。
また、本実施形態の多層配線板1の製造方法によれば、2枚の配線板2、3の間に積層されるスラリーシート4Sに局所磁場を印加して硬化することにより、軟磁性金属扁平粉末8の配向が他の領域4A1と局所的に異なる磁性シート4が作成されるので、その磁性シート4を2枚の配線板2、3の間に挟むことにより、ノイズ抑制効果および高い比誘電率を同時に発揮する多層配線板1の製造を容易にすることができるという作用効果を奏する。
なお、本実施形態は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態の多層配線板1は3層型多層配線板であるが、他の実施形態においては、2枚の配線板2、3の間に磁性シート4が挟まれた3層を含む4層以上の多層配線板1であっても良い。
フレーム基板5は、枠形状でなく、平板の中央付近を矩形凹状に窪ませてなる空洞(キャビティ)形状であってもよい。その場合、フレーム基板5の深さは硬化後における所望する磁性シート4の厚さと同等に設定しておく。
本実施形態の第2の工程となる全体磁場印加工程は、第1の工程となるスラリーシート形成工程の後であって第5の工程となる局所磁場印加工程の前に行なわれていればよい。ここで、スラリーシート4Sの厚さ方向H4は多層配線板1の積層方向H1と平行であるため、積層工程後に全体磁場印加工程を行なう場合、「スラリーシート4Sの厚さ方向H4」を「多層配線板1の積層方向H1」と置き換えて考えればよい。
本実施形態の第3の工程となるフレーム基板配置工程は、第1の工程となるスラリーシート形成工程の後であって第4の工程となる積層工程の前に行なわれていればよいので、第2の工程となる全体磁場印加工程の前に行なわれても良い。
本実施形態の第5の工程となる局部磁場印加工程は、第1の工程となるスラリーシート形成工程の後であって第5の工程となる硬化工程の前(つまり、第4の工程となる積層工程の前後いずれか)において行なわれていればよい。局部磁場印加工程を積層工程前に行なう場合、図7または図8に示すように、例えば、第1の空芯コイル15の内部にスラリーシート4Sを通過させた後、第2のコイル16によって局所的に磁場を印加すればよい。その際、スラリーシート4Sは未だ2枚の平板電極6、7に挟まれていないので、スラリーシート4Sの所定の領域4A2、すなわち2枚の平板電極6、7に挟まれる予定の軟磁性金属扁平粉末8に対してスラリーシート4Sの厚さ方向H4に磁場を局所印加する。これにより、それらの軟磁性金属扁平粉末8の法線方向H8がスラリーシート4Sの厚さ方向H4と直交するようにそれらが配列する。ただし、局所磁場印加工程を行なう場合、全体磁場印加工程よりも後に行なうことが必須となる。
さらに、本実施形態の多層配線板1の製造方法においては、フレーム基板配置工程や全体磁場印加工程は任意に追加された工程のため、それらの工程を省いても良い。
本実施形態の多層配線板を示す分解斜視図 本実施形態の軟磁性金属扁平粉末の一例を示す斜視図 図1の3−3矢視断面図 本実施形態の全体磁場印加工程の一例を示す概念図 本実施形態の局所磁場印加工程において2連コイル形状の第2のコイルを用いた場合を示す概念図 本実施形態の局所磁場印加工程において通常の円柱形状の第2のコイルを用いた場合を示す概念図 本実施形態の全体磁場印加工程の直後に局所磁場印加工程を行なう場合であって局所磁場印加工程において2連コイル形状の第2のコイルを用いた場合を示す概念図 本実施形態の全体磁場印加工程の直後に局所磁場印加工程を行なう場合であって局所磁場印加工程において通常の円柱形状の第2のコイルを用いた場合を示す概念図 従来の磁性シートであって軟磁性金属扁平粉末が水平方向に配向したものを示す縦断面図 従来の磁性シートであって軟磁性金属扁平粉末が縦方向に配向したものを示す縦断面図 従来の多層配線板において配線板の下面に図9に示した磁性シートを積層させた状態を示す斜視図 従来の多層配線板において2枚の配線板の間に図10に示した磁性シートを積層させた状態を示す分解斜視図
符号の説明
1 多層配線板
2、3 配線板
4 磁性シート
4S スラリーシート(硬化前の磁性シート)
5 フレーム基板
6、7 平板電極
8 軟磁性金属扁平粉末
15 第1の空芯コイル
16 第2のコイル
16a、16b 2連コイル

Claims (15)

  1. コンデンサに用いられる1個または2個以上の平板電極を表面または裏面にそれぞれ有しており、各々の前記平板電極を対向させて積層されている2枚の配線板と、
    軟磁性金属扁平粉末を混合した結着材を硬化させたシートであって前記2枚の配線板に挟まれている磁性シートと
    を備えており、
    前記2枚の配線板において積層方向に対向する2枚の平板電極に挟まれた前記磁性シートの軟磁性金属扁平粉末は、その法線方向が前記積層方向と直交するように配列されている
    ことを特徴とする多層配線板。
  2. 前記2枚の配線板において積層方向に対向する2枚の平板電極に挟まれていない前記磁性シートの軟磁性金属扁平粉末は、その法線方向が前記積層方向と平行になるように配列されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の多層配線板。
  3. 前記磁性シートは、前記磁性シートの周縁を囲む枠形状または空洞形状であって硬化後における所望する前記磁性シートの厚さと同等の厚さまたは深さに設定されたフレーム基板の枠内または空洞内に挿入された状態において、前記2枚の配線板に挟まれている
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層配線板。
  4. 前記フレーム基板は、樹脂製である
    ことを特徴とする請求項3に記載の多層配線板。
  5. 各々の前記平板電極は、前記2枚の配線板における前記磁性シートとの接触面にそれぞれ形成されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多層配線板。
  6. 前記2枚の配線板は、前記積層方向に貫通する1個または2個以上の硬化補助孔を有する配線板である
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多層配線板。
  7. 軟磁性金属扁平粉末を結着材に混合して得たスラリーをシート状に加工することによりスラリーシートを形成するスラリーシート形成工程と、
    表面または裏面にそれぞれ形成された1個または2個以上の平板電極を積層方向に対向させた2枚の配線板の間に前記スラリーシートを挟む積層工程と、
    前記スラリーシート形成工程の後であって前記積層工程の前後いずれかにおいて、前記積層方向に対向する2枚の平板電極に挟まれる予定の又は挟まれた前記スラリーシートの軟磁性金属扁平粉末に対して前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向に磁場を局所印加することにより、局所磁場印加された前記軟磁性金属扁平粉末をその法線方向が前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向と直交するように配列させる局所磁場印加工程と、
    前記積層工程および前記局所磁場印加工程の後において、前記2枚の配線板に挟まれた前記スラリーシートを積層状態において前記積層方向に熱加圧することにより、前記スラリーシートを硬化させた磁性シートを形成する硬化工程と
    を備えることを特徴とする多層配線板の製造方法。
  8. 前記局所磁場印加工程においては、通電された第2のコイルの中心軸方向と前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向とが平行になるように前記第2のコイルの端部周辺または内部に前記2枚の配線板に挟まれる予定の又は挟まれた前記スラリーシートを配置することにより、前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向に磁場を印加する
    ことを特徴とする請求項7に記載の多層配線板の製造方法。
  9. 前記第2のコイルは、同一軸上の2箇所において1本の金属線を同一方向に巻回することにより直列配置された2連コイルであり、
    前記局所磁場印加工程においては、前記第2のコイルの内部であってその連結領域に前記2枚の配線板に挟まれる予定の又は挟まれた前記スラリーシートを配置する
    ことを特徴とする請求項7に記載の多層配線板の製造方法。
  10. 前記スラリーシート形成工程の後であって前記局所磁場印加工程の前において、前記スラリーシートに混合されたすべての軟磁性金属扁平粉末に対して前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向と直交方向に磁場を全体印加することにより、全体磁場印加された前記軟磁性金属扁平粉末をその法線方向が前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向と平行になるように配列させる全体磁場印加工程を備える
    ことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の多層配線板の製造方法。
  11. 前記全体磁場印加工程においては、通電された第1の空芯コイルの中心軸方向と前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向とが直交するように前記第1の空芯コイルの内部に前記2枚の配線板に挟まれる予定の又は挟まれた前記スラリーシートを通過させることにより、前記スラリーシートの全域に対して前記スラリーシートの厚さ方向または前記積層方向と直交方向に磁場を印加する
    ことを特徴とする請求項10に記載の多層配線板の製造方法。
  12. 前記スラリーシート形成工程の後であって前記積層工程の前において、枠形状または空洞形状であって前記磁性シートの厚さと同等の厚さまたは深さに設定されたフレーム基板の枠内または空洞内に前記スラリーシートを挿入するフレーム基板配置工程を備える
    ことを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の多層配線板の製造方法。
  13. 前記フレーム基板は、樹脂製である
    ことを特徴とする請求項12に記載の多層配線板の製造方法。
  14. 各々の前記平板電極は、前記2枚の配線板における前記スラリーシートとの接触面にそれぞれ形成されている
    ことを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか1項に記載の多層配線板の製造方法。
  15. 前記2枚の配線板は、前記積層方向に貫通する1個または2個以上の硬化補助孔を有する配線板である
    ことを特徴とする請求項7から請求項14のいずれか1項に記載の多層配線板の製造方法。
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