JP4979980B2 - 吸着固定用緩衝シート - Google Patents

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この発明は、例えば液晶パネル、電子部品の製造工程などにおいて、ガラス板、電子部品などのワークをエアーで吸着固定するときに、ワークとの間で用いる緩衝用シートに関する。
従来、液晶パネル、電子部品などの製造工程では、電子部品などのワークをエアーで吸着して移動したり、或いは固定することが頻繁に行われている。そしてその場合には、ワークを傷つけないようにするためにワークと吸着板との間に緩衝シートとして多孔質プラスチックシートを挿入して用いられている。ここに用いられる多孔質プラスチックシートとしては、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のプラスチックシートが多く用いられてきた。
こうした多孔質プラスチックの緩衝シートを複数の開口部を設けた金属板などの吸着板に固定する方法は、例えば取り付け金具などを用いて緩衝シートの外周を金属板に固定したり、或いは通気孔を有する両面粘着テープを用いてその片面を開口部を設けた金属板に固定するとともに、他方の面を緩衝シートに貼り付けるなどで固定しているものである。
また、液晶用のガラス板や電子部品製造工程などにおける吸着搬送・真空固定などのために、多孔質シートに両面で異なる接着強度を持ち、複数の貫通孔が穿設されている両面粘着テープの接着強度の大きい側の面が貼着されている吸着固定用シートが公知である。(例えば、特許文献1,特許請求の範囲参照。)
特開2003−277702号公報
しかしながら、従来用いられてきた多孔質プラスチックシートは絶縁体であるために帯電防止性がなく、ワークの取り付け・取り外しに際して静電気が発生し、ワークにダメージを与えることがあった。こうした静電気のトラブルを防止するためにイオナイザーなどの静電防止装置を取り付けることが行われているが、付帯設備としての追加費用および設置スペースを必要とするなどの問題があった。
また、緩衝シートを吸着板へ固定する場合に、取り付け方法によっては緩衝シートが全面に密着している訳ではないので、吸着板の表面に凹凸が発生して帯電防止用のイオナイザーによる送風によってシート端面がめくれてワークの移動に支障をきたすなどの問題があった。また、上記の先行技術のもは、両面で接着強度の異なる粘着テープを用いなければならず、しかもその粘着テープにその都度パンチグなどで貫通孔を形成しなければならず煩雑でコスト高となるものであった。
さらに、この先行技術の多孔質シートは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末を金型に充填し、これをUHMWPEの融点以上に加熱された水蒸気雰囲気中で焼結してブロック状成形体として、これを冷却して旋盤などにより所定の厚さに切断して得るもので、その工程が非常に煩雑であった。しかも、この先行技術のものはポリエチレンであるので耐熱性においても十分でなく使用が限定されるものであった。
この発明は、基材の織布に帯電防止性を有するフッ素樹脂被膜を形成して多孔質シートとし、その片面に通気性を有する粘着剤層を設けて、耐熱性、通気性、柔軟性を有する吸着固定用緩衝を得ようとするものである。
この発明は、通気性および帯電防止性を有する多孔質シートの片面に、均一な通気性を有する粘着剤層を設け、前記多孔質シートは織布に帯電防止性を付与したフッ素樹脂被膜を形成したシートであることを特徴とする吸着固定用緩衝シート(請求項1)、通気性および帯電防止性を有する多孔質シートの片面に、均一な通気性を有する粘着剤層を設け、前記多孔質シートはフッ素樹脂の多孔質シートであることを特徴とする吸着固定用緩衝シート(請求項2)である。
この発明によれば、帯電性の多孔質シートを、織布に帯電防止性を付与したフッ素樹脂被膜を形成したシートとしたので、帯電性は勿論のこと耐熱性においても優れて耐久性のある緩衝シートとすることができる。また、この発明によれば織布にフッ素樹脂被膜を形成し、その片面に通気性の粘着剤層を形成しただけのものであるから作成が容易でコスト的にも優れたものである。さらに、この発明では帯電性を得るために帯電防止剤を添加したフッ素樹脂被膜を基材の織布に形成するので、織布の編目との絡みで帯電防止剤が緩衝シートから脱落することがなくて長期にわたって多孔質シートの帯電防止性能を保持させることができる。
この発明の吸着固定緩衝シートは、通気性および帯電防止性を有する多孔質シートの片面に均一な通気性を有する粘着剤層を設けたものである。この発明で用いる多孔質シートは、通気性および帯電防止性を有するものであれば特に限定されないが、織布或いは不織布に帯電防止性を付与したフッ素樹脂被膜を形成したシートが好ましく使用される。
織布或いは不織布は耐熱性のものが好ましい。耐熱性繊維の織布としては、ガラス繊維織布、アラミド繊維織布、カーボン繊維織布などがあげられるが、コストなどの面からガラス繊維織布が好ましい。フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコシキアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)などがあげられる。耐熱性の織布、不織布の表面にフッ素樹脂層を設けた多孔質シートとしては、ガラス繊維織布或いは不織布の表面にPTFEの樹脂を設けた多孔質シートが汎用的で好ましい。
ガラス繊維の織布にPTFEを被覆した多孔質シートは、PTFE粉末の水分散溶液をガラス繊維織布にコーティングして焼成することによって得ることができる。この多孔質シートの通気性はガラス繊維の仕様、水分散液の樹脂濃度、コーティング回数などにより決定されるが、通気量が0.25〜20cm3/cm2・S(JIS L 1096フラジール法)の範囲になるようにするのが好ましい。通気量が0.25cm3/cm2・S 未満の場合は、通気量が少なくワークを十分な力で吸引することが困難となる。また、通気量が20cm3/cm2・S より大きくなると、ワークを十分な力で吸引することはできるが多孔質シートの強度が低下してしまい好ましくない。
電防止性を得るためには、導電性カーボン粉末やセラミック系導電粉末などの帯電防止剤をPTFEに混合し、この混合物を多孔質シートの製造に用いる。帯電防止剤の含有量は特に限定されないが、通常フッ素樹脂に対して帯電防止剤を0.5〜10重量%混合し、抵抗値を10 Ω以下とするのが好ましい。抵抗値が10 Ω以下であるとPTFEの多孔質シートに静電気が帯電することなく、静電気によるワークへのダメージを防止することができる。
多孔質シートの厚みは、通常0.05〜1mmのものが使用される。多孔質シートの厚さが0.05mm未満の場合は薄すぎて強度および取扱いが低下して好ましくない。また、シートの厚さが1mmを超える場合は多孔質シートのコストが高くなって経済的に好ましくない。
多孔質シートはフッ素樹脂単体で用いてもよい。これらは例えば焼結多孔質シート、延伸多孔質膜、気孔形成材を用いて得られる多孔質シートなどが挙げられるが、粒子の脱落、異物の混入による汚染防止などからPTFEの焼結多孔質シートが好ましい。PTFE焼結多孔質シートの製法として、例えば特公平4−23658に示されているように、未焼成PTFEを融点以上の温度で焼成し、焼成したPTFEを粉砕してPTFE粉末とする。この粉末を1g/cm2〜800kg/cm2の圧力で円筒形状に成形し、再びPTFEの融点以上の温度で焼成して円筒状の多孔質体とする。次いで、この円筒状の多孔質体を旋盤で切削することにより所定の厚みの多孔質シートを得る。
PTFE粉末の成形に際して、成形圧力が1g/cm2未満では通気量20cm3/cm2・Sを満足するものの多孔質シートの強度が低下して好ましくない。また、成形圧力が800g/cm2を超える場合は通気量0.25cm3/cm2・Sを満足することが出来ない。この多孔質シートの通気性は、ここで用いる粉末の粒径や焼結時の加圧圧力等により決定されるが、通気量が0.25〜20cm3/cm2・S(JIS L 1096 フラジール法)の範囲となるようにすることが好ましい。多孔質シートはフッ素樹脂単体で用いる場合でも、帯電防止剤を添加してこれに帯電防止性を付与することは上記と同様である。
その後、この多孔質シートの表面に通気性の粘着剤を塗布などしてこの発明の吸着固定用緩衝シートとする。粘着剤層の厚みは通常0.01〜0.1mmとする。粘着剤の厚みがこの範囲未満では接着不良となり、またこれを超えると粘着剤のはみ出しが生じて好ましくない。
上記の粘着剤を多孔質シートに設ける方法としては、多孔質シートに粘着剤を直接塗布する方法の他に、予めセパレータの上に粘着剤を塗布してここに粘着剤層を形成し、これを多孔質シートの片面に重ね合わせて粘着財層を多孔質シートの面に転写する方法があり、この転写法が好ましい。
粘着剤には公知ないし慣用の粘着剤を適宜選択して使用できる。例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系の各種の粘着剤が挙げられるが、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤に用いられる架橋剤としては特に限定されず、例えばイソシアネート基を有する架橋剤、エポキシ基を有する架橋剤などが上げられる。
粘着剤層に均一な通気性を付与する方法としては、一般的にアクリル系粘着剤に過酸化ベンゾイルなどの過酸化物を配合し高温で架橋する方法、アクリル系粘着剤に架橋剤を配合し高温で架橋する方法、アクリル系粘着剤とアクリル系粘着剤に非相溶の化合物よりなり架橋密度をコントロールする方法などがある。架橋剤はベースポリマー100重量部に対して0.01〜5重量%配合するのが、適度の粘着強度を得るために好ましい。架橋剤がベースポリマー100重量部に対して0.01未満であると、架橋が不充分で粘着強度が低下し好ましくない。また、架橋剤が5重量%を超えると未反応の架橋剤が残り、粘着特性に悪影響を与えて好ましくない。
上記の粘着剤層を形成することによって粘着剤層が均一な通気孔を有し、多孔質シートの通気性を著しく低下させることなく吸着固定の性能を維持することができる。吸着固定用シートとしては通気量が1〜20cm3/cm2・S(JIS L 1069フラジール法)の範囲であることが好ましい。通気量が1cm3/cm2・S未満であるとワークを吸着固定することが難しい。また、通気量が20cm3/cm2・Sを超えるとワークを吸着固定することはできるが多孔質シートの強度が低下する。
多孔質シートは、その粘着剤層を設ける表面に必要に応じてコロナ放電処理などの物理処理または金属ナトリウム処理などの化学的処理を行って接着剤との接着性を向上させるようにする。また、このような処理を行うことによって多孔質シートの張替え時の吸着板への糊残りをしにくくすることもできる。
この吸着固定用緩衝シートの接着強度は、SUS板に対して1〜15N/25mm の範囲であることが好ましく、シートの入り替え時の粘着剤の糊残りをしにくくするには1〜3N/25mm の範囲がさらに好ましい。なお、この接着強度はJIS Z 0237 180℃剥離試験によるものである。
本発明の吸着固定用シートは、例えばセパレータの表面に粘着剤層を塗布、乾燥、架橋させて粘着剤層を形成した後、これを多孔質シートに貼りあわせ
粘着剤層を転写させることによって製造することができる。このセパレータとしては、紙、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフイルムが上げられる。セパレータの表面には粘着剤層の剥離性を高めるため必要に応じてシリコーン処理が行われる。
(実施例1)
平織りのガラス繊維織布に導電性カーボン粉末を5重量%混合したPTFEの水分散液をコーティングし焼成して得られた多孔質シート(中興化成工業製品,商品名FGB・207‐6,厚み0.11mm,通気量が7.9cm3/cm2・S,表面抵抗率1.6×10 Ω)の片面に均一な通気性を有するアクリル系粘着剤(0.02mm厚さ)を塗布し、吸着固定用緩衝シートを作成した。このシートの特性は、接着強度が1.73N/25mm(JIS Z 0237,180℃剥離)で、通気量が3.05cm3/cm2・Sであった。
別に、図1に示すようなSUS製の吸引パネル1(200×200mm,穴径1mmφ,ピッチ2mm,100個)に、多孔質シート2の片面に粘着剤層3を設けた吸着固定用緩衝シート4を取り付け、これを用いてワーク5(ガラス板)の取り付け、取り外しを行って、その際に静電気によるトラブルの発生の有無を調べた。その結果、ガラス板の取り付け取り外しには、静電気によるトラブルの発生は全くなかった。なお、図1で6は吸引パネルの吸引管である。
(実施例2)
アラミド繊維の織布に導電性カーボン粉末を5重量%混合したPTFEの水分散液をコーティングし焼成して得られた多孔質シート(厚み0.1mm,通気量12.4cm3/cm2・S,表面抵抗率2.1×10Ω)の片面に均一な通気性を有するアクリル系粘着剤(0.02mm厚さ)を塗布し、吸着固定用緩衝シートを作成した。この吸着固定用緩衝シートの特性は、接着強度が1.95N/25mm(JIS Z 0237,180℃剥離)で、通気量が3.43cm3/cm2・Sであった。
この吸着固定用緩衝シートを、実施例1と同様にして図1に示すようにして貼り付け、ワーク5(ガラス板)を取り付け、取り外しする際に剥離帯電によるトラブルの発生の有無を調べた。その結果、ガラス板の取り付け取り外しには、静電気によるトラブルの発生は全くなかった。
この発明の一実施例になる吸着固定用緩衝シートを吸引パネルに取り付けた場合を示した説明図。
符号の説明
1…吸引パネル、2…多孔質シート、3…粘着剤層、4…吸着固定用緩衝シート、5…ワーク、6…吸引管。

Claims (2)

  1. 通気性および帯電防止性を有する多孔質シートの片面に、均一な通気性を有する粘着剤層を設け、前記多孔質シートは織布に帯電防止性を付与したフッ素樹脂被膜を形成したシートであることを特徴とする吸着固定用緩衝シート。
  2. 通気性および帯電防止性を有する多孔質シートの片面に、均一な通気性を有する粘着剤層を設け、前記多孔質シートはフッ素樹脂の多孔質シートであることを特徴とする吸着固定用緩衝シート。
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