JP4979119B2 - 汚染土壌浄化構造体の構築方法 - Google Patents

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本発明は、汚染物質を含んだ地盤を浄化するために、鉄粉を含む透水性の汚染土壌浄化構造体を地盤中に構築する構築方法に関する。
近年、半導体工業やクリーニング工業などで脱脂洗浄に用いられていたトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素系化合物による土壌汚染が環境問題となっており、係る汚染土壌を浄化する手段として、例えば特許文献1に開示されているように、鉄粉を含んだスラリーを汚染された地盤中に注入する方法が提案されている。
特開2005−350976号公報
鉄粉は土壌の汚染物質を効率よく無害化することができるが、特許文献1に開示された方法では、スラリー化する際に鉄粉が水と接触して高熱を生じてしまうため、危険性が高い。また、スラリー化するためのプラント、スラリーを地盤中に注入するためのポンプ等の設備が必要な上、前述したように高熱を発生するためにこれら設備の消耗が激しく、コスト高を招いてしまう。
本発明の課題は、上記問題を解決し、汚染された地下水を通過させることで効率よく汚染土壌を浄化するための、鉄粉を含んだ透水性の構造体を、特別な設備を伴わずに乾燥状態で構築する方法を提供することにある。
本発明は、地盤中に透水性の汚染土壌浄化構造体を構築する方法であって、外側に搬送スクリュを備えたスパイラルロッドを、該搬送スクリュの搬送方向が該スパイラルロッドの圧入方向と一致するように回転させながら地盤中に圧入すると共に、少なくとも鉄粉と骨材とを含むバラ荷を乾燥状態で搬送スクリュに供給して圧入方向に搬送する圧入工程と、スパイラルロッドの先端が所定の深さにまで達した後、バラ荷を乾燥状態で搬送スクリュに供給しながら該スパイラルロッドを圧入時と同じ方向に回転させながら引き上げる引き上げ工程とを有することを特徴とする。
本発明においては、前記圧入工程と引き上げ工程とをスパイラルロッドの圧入位置をずらしながら複数回繰り返すことにより、壁状の構造体を構築することを好ましい態様として含む。
また、本発明においては、複数本のスパイラルロッドを平行に隣接させて配置し、隣接するスパイラルロッドの回転方向が互いに逆方向になるように回転させながら同時に圧入することを好ましい態様として含む。また、本発明において、前記搬送スクリュは、先端側の端部の外径が他の部分よりも大きくなっていてもよい。
本発明によれば、鉄粉と骨材とを含むバラ荷を乾燥状態で削孔内に搬送するため、構築作業中に高熱を発生する恐れがなく、安全性が高い。また、骨材の素材や大きさを自由に選択することができるため、構造体の透水性を任意に設定することができ、土壌の浄化効果の高い構造体を提供することができる。また、鉄粉との混合に適した粒径、素材の骨材を用いることができるため、浄化効率の高い構造体を提供することができる。
また、本発明によれば、スパイラルロッドの圧入と同時にバラ荷を供給するため、削孔内に密に且つ均一にバラ荷を充填することができ、強度の高い構造体を構築することができる。
さらに、本発明の構築方法ではスパイラルロッドの圧入時に残土が発生しないため、汚染土壌の処理作業が不要である。また、構築作業に水を用いないため、水の供給が困難な箇所での作業も容易であり、汚染水の処理作業も不要である。
本発明により構築される汚染土壌浄化構造体によって浄化する対象となる汚染物質は、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタンなどの有機塩素系化合物である。係る構造体は鉄粉を含んだ透水性の構造体であり、上記汚染物質を含む地下水が該構造体内を通過する際に鉄粉に接触することで、鉄粉による還元分解或いは鉄粉が触媒として作用する脱塩化水素反応によって、地下水に含まれる汚染物質が無害化される。
本発明の汚染土壌浄化構造体の構築方法を図1を参照して説明する。図中、1はスパイラルロッド、2は搬送スクリュ、3はホッパー、4はバラ荷、5は地盤、6は削孔、7は汚染土壌浄化構造体である。また、図2に本発明で好ましく用いられるスパイラルロッドの拡大図を示す。図2(a)は図1の工程で用いたスパイラルロッドであり、図2(b)は他の構成例である。図2中、12は最大径スクリュ、13は先端ビットである。
本発明で用いられるスパイラルロッド1は、図2に示すように、後端から先端近傍まで搬送スクリュ2を備え、また、好ましくは先端部に、該搬送スクリュ2と巻き方向が逆の先端ビット13を備えている。先端ビット13の具体的な構造としては、図2(a)の如く螺旋状のスクリュや、図2(b)に示すように、傾斜方向が搬送スクリュ2の巻き方向とは逆方向となるように付設した羽根などが挙げられる。また、図2の構成例では、搬送スクリュ2の先端側の端部の外径が他の部分よりも大きくなっており、当該スパイラルロッド1の最大径スクリュとなっている。
先ず、搬送スクリュ2を備えたスパイラルロッド1を地盤5に圧入する〔図1(a)〕。この時、スパイラルロッド1を囲むようにホッパー3を配設し、ホッパー3内にバラ荷4を収納しておく。この状態で、スパイラルロッド1を、搬送スクリュ2の搬送方向が圧入方向(矢印B方向)と一致するように回転(矢印A方向)させながら圧入する。即ち、図1において、スパイラルロッド1の後端から見た場合、搬送スクリュ2はスパイラルロッド1後端から先端に向かって時計回りに形成されており、該スパイラルロッド1を図1(a)に示すようにスパイラルロッド1の後端から見て反時計回りに回転させた場合、搬送スクリュ2の搬送方向はスパイラルロッド1の後端から先端に向かう方向となり、スパイラルロッド1の圧入方向と一致する。即ち、通常、地盤を掘削する際に回転させて圧入を容易にするために搬送スクリュ2を利用する場合とは逆方向に回転させることになり、これにより、ホッパー3内に収納されたバラ荷4が搬送スクリュ2に供給され、圧入方向、即ちスパイラルロッド1の先端に向かって搬送される。
一方、本例のスパイラルロッド1の先端部には、搬送スクリュ2と巻き方向が逆の先端ビット13が付設されているため、硬い地盤であっても該先端ビット13によって容易に掘削され、土砂がスパイラルロッド1の後端に向かって排除される。先端ビット13によって後方に搬送された土砂は、搬送スクリュ2によって供給されたバラ荷4と最大径スクリュ12付近でぶつかり合い、共にスパイラルロッド1から離れる方向に押しやられ、結果として強固な削孔内壁を形成する。
本例において、スパイラルロッド1の先端部に付設した先端ビット13は、地盤を掘削し、土砂を排除するための部材であるため、地盤に食い入りやすいように外径が小さい方が好ましく、図2に示すように、スパイラルロッド1の先端の円錐形に沿って搬送スクリュ2よりも外径が小さくなるように形成される。
スパイラルロッド1の先端が所定の深さまで達した時点〔図1(b)〕で、スパイラルロッド1の圧入で形成された削孔6内壁とスパイラルロッド1との間隙にはバラ荷4が充填されている。この状態でスパイラルロッド1を引き上げるが、その際、スパイラルロッド1の圧入時と同じ方向にスパイラルロッド1を回転させる(矢印A方向)。即ち、搬送スクリュ2の搬送方向はスパイラルロッド1の引き上げ方向(矢印B’)とは逆方向となる〔図1(c)〕。よって、スパイラルロッド1を引き上げながらも搬送スクリュ2には引き続きバラ荷4が供給され、スパイラルロッド1の先端部においては、該先端が引き上げられると同時にバラ荷4が供給されるため、バラ荷4が密に且つ均一に連続充填された構造体7が完成する〔図1(d)〕。
本発明の特徴は、上記工程によって削孔6内に充填するバラ荷4として、少なくとも鉄粉と骨材とを用いることにある。骨材としては砂や礫、多孔質の粒状体、廃プラ等が好ましく用いられ、削孔6内に充填後に周囲の地盤5から浸出する地下水を透過するための適度な空隙を形成しうるものであれば適宜用いることができる。また、鉄粉以外にも、固形成分であれば、汚染物質を浄化する、或いは浄化を促進する材料を添加してもかまわない。
本発明においては、上記したように、鉄粉を骨材と混合してスパイラルロッド1の圧入及び引き上げと同時に搬送スクリュ2によって削孔6内に供給するため、乾燥状態で供給することができ、骨材の素材や粒径を問わない。よって、透水性を備えた構造体を構築するために適した素材、粒径の骨材を用いることができ、ホッパー3に収納する時点で鉄粉と骨材を混合すれば良く、また、その際に発熱の恐れがなく、安全性が高い。
本発明による汚染土壌浄化構造体は、スパイラルロッド1を1本で、圧入工程及び引き上げ工程を1回行うことによって構築した場合には柱状となるが、係る圧入工程及び引き上げ工程をスパイラルロッド1の圧入位置を少しずつずらしながら繰り返すことにより、壁状に構築することができる。さらに、2本以上、好ましくは3本のスパイラルロッド1を平行に隣接させて配置し、3本同時に圧入工程及び引き上げ工程を実施することにより、3本分の幅を有する構造体を1回の工程によって構築することができる。よって、壁状の構造体を構築する場合には、より効率よく作業を実施することができる。
本発明において、スパイラルロッドを3本同時に用いる場合の圧入工程を図3に示す。図3に示すように、複数本のスパイラルロッド1a〜1cを同時に用いる場合には、隣接するスパイラルロッド1aと1b、及び1bと1cの回転方向が互いに逆方向になるように回転させながら行う。そのため、スパイラルロッド1aと1c、及び、1bの搬送スクリュ2の巻き方向は逆に構成されている。このように、回転方向を互い違いに設定することによって、隣接するスパイラルロッド1aと1b、1bと1c間の土砂がスパイラルロッド間より効率よく排除される。
また、図3の工程によって、3本の柱状の構造体が並んだ壁状の構造体が得られるが、係る壁状の構造体に壁の厚さが極端に薄い箇所が生じる、或いは、隣接する柱の間に間隙が生じるのを防止するために、図4に示すように、各スパイラルロッドの形成する削孔6a〜6cが互いに重複するように、スパイラルロッド1a〜1cを配置することが好ましい。また、その際には、スパイラルロッド1a〜1cの外側に取り付けた搬送スクリュ2が互いに接触しないように上下にずらせて配置することが望ましい。例えば、図2に示した搬送スクリュ2の先端の外径が最大径スクリュ12となっている場合には、該最大径スクリュ12が互いに接触しないように、図3に示したように複数本のスパイラルロッド1a〜1cを上下方向にずらせて配置することにより、図4に示したように各スパイラルロッドの形成する削孔6a〜6cを互いに重複させ、壁の厚さが均一な壁状構造体を構築することができる。
本発明によって構築される汚染土壌浄化構造体は、スパイラルロッド1本で1回の工程で構築される柱状の構造体の他、複数回の工程もしくはスパイラルロッド複数本で1回或いは複数回の工程で構築される壁状構造体まで、構築される地盤の状態や必要とされる領域、地盤上の建築物等に応じて適宜選択される。例えば、既存の施設の下方の土壌が汚染されている場合には、該施設の下方の土壌を取り囲むように壁状の構造体を構築し、汚染土壌から浸出する地下水を該構造体に通過させることで浄化し、周囲への汚染の拡大を防止することができる。
本発明の汚染土壌浄化構造体の構築工程を示す模式図である。 本発明において用いられるスパイラルロッドの構成例を示す図である。 本発明において複数本のスパイラルロッドを同時に用いる場合の圧入工程を示す模式図である。 図3の工程で形成される削孔の横断面模式図である。
符号の説明
1,1a〜1c スパイラルロッド
2 搬送スクリュ
3 ホッパー
4 バラ荷
5 地盤
6,6a〜6c 削孔
7 汚染土壌浄化構造体
12 最大径スクリュ
13 先端ビット

Claims (4)

  1. 地盤中に透水性の汚染土壌浄化構造体を構築する方法であって、
    外側に搬送スクリュを備えたスパイラルロッドを、該搬送スクリュの搬送方向が該スパイラルロッドの圧入方向と一致するように回転させながら地盤中に圧入すると共に、少なくとも鉄粉と骨材とを含むバラ荷を乾燥状態で搬送スクリュに供給して圧入方向に搬送する圧入工程と、
    スパイラルロッドの先端が所定の深さにまで達した後、バラ荷を乾燥状態で搬送スクリュに供給しながら該スパイラルロッドを圧入時と同じ方向に回転させながら引き上げる引き上げ工程とを有することを特徴とする汚染土壌浄化構造体の構築方法。
  2. 前記圧入工程と引き上げ工程とをスパイラルロッドの圧入位置をずらしながら複数回繰り返すことにより、壁状の構造体を構築する請求項1に記載の汚染土壌浄化構造体の構築方法。
  3. 複数本のスパイラルロッドを平行に隣接させて配置し、隣接するスパイラルロッドの回転方向が互いに逆方向になるように回転させながら同時に圧入する請求項1または2に記載の汚染土壌浄化構造体の構築方法。
  4. 前記搬送スクリュは、先端側の端部の外径が他の部分よりも大きくなっている、請求項1〜3のいずれかに記載の汚染土壌浄化構造体の構築方法。
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