JP4977597B2 - 多層ブロー成形品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多層ブロー成形品及びその製造方法に関し、より詳しくは、容器外表面層の光沢性に優れ、しかも透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐環境応力亀裂性に優れた高級感のあるシャンプー、リンス、化粧品、医療用等の多層ブロー成形品(容器)をピンチオフ剥がれやパリソンのべとつきがなく取り扱い性よく得ることができる製造方法に関する。
従来、シャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器の分野において、プラスチック製の中空成形品が広く使用されている。この中空成形品用のプラスチックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートといった樹脂が広く使用されている。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンは、性能、価格等の点から好ましいものとして使用されており、表面光沢性を改良した材料や成形品が数多く提案されている(例えば、特許文献1〜11参照)。
特開平09−058648号公報(特許文献4)には、少なくとも外面がオレフィン系樹脂で構成されたプラスチックボトルにおいて、前記オレフィン系樹脂が特定の式Y < −AX+B(式中、Yはオレフィン系樹脂の密度(g/cm3 )であり、Xはオレフィン系樹脂のメルトテンション(g)であり、Aは0.0116の数、Bは0.962の数である)を満足する密度及びメルトテンションを有し、且つボトル外面が60度以上の光沢度(60゜グロス)を有するプラスチックボトルが提案されている。
しかしながら、その場合、密度とメルトテンションが特定の関係を満たすオレフィン系樹脂が開示されているものの、表層に使用される樹脂や内層に使用される樹脂の具体的な特性については必ずしも十分に記載されておらず、満足できる高光沢の表面外観を有する成形品を得られるわけではない。
特開平09−077039号公報(特許文献5)には、外層から順に、特定密度のポリエチレン系樹脂層/パール顔料を特定量含有した高密度ポリエチレン層/着色顔料を特定量含有した再生ポリエチレンを含む層、によって構成される多層ブロー容器が提案されている。
また、特開平10−315357号公報(特許文献8)には、単層又は複数層で構成されている樹脂製容器の少なくとも1つの層が、メタロセン系触媒を用いて製造され、特定のメルトフローレート、密度を有し、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる微分溶出曲線中のピークが1つであり、該ピーク温度が65℃以上であり、該ピークの高さをHとし、該ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が5以上であり、かつ、Wを温度幅として表したとき15℃を越えないことの性状を有するエチレン単独重合体又はエチレン・炭素数3〜40のα−オレフィン共重合体で形成されている樹脂製容器が提案されている。
また、特開平10−235760号公報(特許文献6)には、特定の密度、メルトフローレートの高圧法ポリエチレンを含有して成る中間層と、融点が113℃以上の他のオレフィン系樹脂を含有して成る内外層との積層体をブロー成形して成る加熱殺菌用ブローバッグが提案されている。
しかしながら、これらの容器の場合、表層の樹脂の密度が高めであるため、柔軟性、柔らかな触感、肌触り等の点で必ずしも満足できる成形品が得られるわけではない。
特開2000−355045号公報(特許文献9)には、メタロセン系触媒でエチレンとハイα−オレフィンとを共重合させて得られるメルトフローレートが4g/10分以下であるポリエチレンと、メタロセン系触媒でエチレンとハイα−オレフィンとを共重合させて得られるメルトフローレートが10g/10分以上であるポリエチレンとを特定の重量比で含有する組成物を少なくとも1層備えたパリソンを吹込成形して成る中空成形品が提案されている。
しかしながら、この容器の場合、表層に使用される樹脂が、メタロセン系触媒を用いて重合されたメルトフローレートの異なる2種類のポリエチレンからなる組成物であるため、結果として分子量分布が大きいものとなり、必ずしも光沢性、透明性の点で満足できる成形品が得られるわけではない。
特開平05−008354号公報 特開平05−310241号公報 特開平08−091341号公報 特開平09−058648号公報 特開平09−077039号公報 特開平10−235760号公報 特開平10−236451号公報 特開平10−315357号公報 特開2000−355045号公報 特開2003−089177号公報 特開2003−095240号公報
本発明の目的は、上記問題点を解決し、容器外表面層の光沢性に優れ、中間層の透明性及び意匠性に優れ、表層に使用する樹脂の厚みを薄くすることができるプラスチック成形品、しかも透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐環境応力亀裂性に優れた高級感のあるプラスチック成形品、及び光沢感があり、さらにムラのない深みのある高光沢性を有し、柔軟性、柔らかな触感、肌触り等の点で優れ、落下衝撃強度等の物性に優れ、容器に外力が加わり変形した場合に白化等の問題を生じることがないシャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器を成形する際に、ピンチオフ剥がれやパリソンのべとつきがなく取り扱い性よく得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、表層と中間層と内層とからなる積層体を形成された多層ブロー成形品において、各層を構成するMRF、密度、Mw/Mnが特定の範囲にあるポリエチレン材料を同時溶融して、特定条件でパリソンを押出し後、吹込み成形するにより、ピンチオフ剥がれやパリソンのべとつきがなく、容器外表面層の光沢性に優れ、中間層の透明性及び意匠性に優れ、表層に使用する樹脂の厚みを薄くすることができるプラスチック成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の表層(A)と中間層(B)と内層(C)とからなる積層体により形成され、表層(A)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、また、中間層(B)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、一方、内層(C)の厚みが積層体の厚み全体に対して70〜96%である多層ブロー成形品であって、
表層(A)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5〜4.0である、メタロセン触媒で製造されたポリエチレン(a)からなり、
中間層(B)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが1.5〜5.0である、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレン(b)からなり、
内層(C)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が0.08〜4.0g/10分であり、密度が0.935〜0.967g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが5.0〜28である、フィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレン(c)からなる、ことを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリエチレン(a)は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度が460〜4200Pa・secのポリエチレンであることを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、ポリエチレン(b)は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度が460〜5000Pa・secのポリエチレンであることを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、ポリエチレン(c)は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度が1500〜6600Pa・secのポリエチレンであることを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、表層(A)の厚みは、10μm以上であることを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、成形品表面の光沢値(入射角60°)が、30%以上であることを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
さらに、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、成形品胴部の全厚み部分は、ヘイズが80%以下、かつ全光線透過率が70%以上であることを特徴とする多層ブロー成形品が提供される。
一方、本発明の第の発明によれば、表層(A)と中間層(B)と内層(C)とからなる積層体により形成され、表層(A)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、また、中間層(B)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、一方、内層(C)の厚みが積層体の厚み全体に対して70〜96%である多層ブロー成形品の製造方法において、表層(A)に下記のポリエチレン(a)を、中間層(B)に下記のポリエチレン(b)を、さらに内層(C)に下記のポリエチレン(c)を選定し、同時溶融した後、表面温度が240℃以下となるようにパリソンを押出し、引き続き、吹込み成形することを特徴とする多層ブロー成形品の製造方法が提供される。
ポリエチレン(a):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5〜4.0であるメタロセン触媒で製造されたポリエチレン
ポリエチレン(b):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが1.5〜5.0である直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレン
ポリエチレン(c):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が0.08〜4.0g/10分であり、密度が0.935〜0.967g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが5.0〜28であるフィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレン。
本発明によれば、多層ブロー成形品が特定物性のポリエチレンを採用した、特定材料の表層と中間層と内層とからなるので、表層の透明性が良く、かつ高光沢の成形品が得られ、内層の樹脂とのバランスにより、光沢あるムラのない深みのある外観を達成することができ、しかも透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐環境応力亀裂性に優れた高級感のあるプラスチック成形品が得られる。
特に、容器外表面層の光沢性に優れているとともに、中間層の透明性及び意匠性に優れ、表層に使用する樹脂の厚みを薄くすることができる。
また、その製造に際し、表層にメタロセン触媒で製造されたポリエチレンを、中間層に直鎖状低密度ポリエチレンを、さらに内層にフィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレンを選定しているので、同時溶融した後、特定条件でパリソンを押出し、引き続き、吹込み成形するので、ムラのない深みのある高光沢性のみならず、成形時の取り扱い性、柔軟性、柔らかな触感、肌触り、落下衝撃強度等に優れ、容器に外力が加わり変形した場合に白化等の問題の生じない成形品を生産性よく得ることができ、産業上の有用性は非常に高い。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の多層ブロー成形品は、下記の表層(A)と中間層(B)と内層(C)とからなる積層体により形成され、表層(A)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、また、中間層(B)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、一方、内層(C)の厚みが積層体の厚み全体に対して70〜96%である多層ブロー成形品であって、
表層(A)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5〜4.0である、メタロセン触媒で製造されたポリエチレン(a)からなり、
中間層(B)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが1.5〜5.0である、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレン(b)からなり、
内層(C)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が0.08〜4.0g/10分であり、密度が0.935〜0.967g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが5.0〜28である、フィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレン(c)からなる、ことを特徴とする。
1.各層を構成するポリエチレン材料
(1)表層(A)を構成するポリエチレン(a)
本発明の表層(A)を構成するポリエチレン(a)は、メタロセン触媒で製造されたポリエチレンであり、そのMFRは、1.0〜15g/10分であり、好ましくは2.0〜10g/10分であり、更に好ましくは3.0〜7.0g/10分である。ここで、MFRは、JIS K6922−2:1997に準拠した温度190℃、荷重2.16kgにおける測定値である。
表層(A)のポリエチレンのMFRが1.0g/10分未満では、成形品の表面が荒れる傾向があり、15g/10分を超えると、押出されたパリソンの表面がべとつく傾向にあり、ダイス先端を汚すおそれが生じたり、表面に異物が付着しやすくなる、金型キャビティーでのエアー抜きが悪くなり成形容器に凹凸模様が発生する等の問題が発生する。
また、ポリエチレン(a)の密度は、0.870〜0.928g/cmであり、好ましくは0.900〜0.922g/cm、更に好ましくは0.910〜0.920g/cmであり、表面の柔軟性が求められる場合0.905〜0.915g/cmが好適である。ここで、密度は、JIS K6922−1及び2:1997に準拠して測定したものである。表層(A)のポリエチレンの密度が0.870g/cm未満では、多層成形容器の剛性が劣り、座屈強度が低下したり、耐熱性が低下する傾向にあり、0.928g/cmを超えると、結晶化速度が速くなり金型キャビティー面のエアー抜きが難しくなり、成形品表面に凹凸模様が発生しやすくなる。
さらに、表層(A)のポリエチレン(a)のGPC測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、1.5〜4.0、好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.3である。表層(A)のポリエチレンのGPC測定によるMw/Mnが1.5未満ではパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなり、4.0を超えるとパリソンの表面肌が細かく荒れてしまう傾向がある。
本発明において、ポリエチレンの重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、以下のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求められる。
(i)測定条件
ーターズ社製150C型を使用して、下記の条件でGPC測定を行い、重量平均分子量(Mw)を求る。
カラム:Shodex HT−G(昭和電工(株)製)及び同・HT−806M(昭和電工(株)製)×2本
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:140℃
流量:1.0ml/分
注入量:300μl
(ii)サンプル調整
市販の4mlスクリュートップバイアル瓶に、試料約3mg及び溶媒3.0mlを量り採り、センシュー科学製SSC−9300型攪拌機を用い、温度150℃で2時間振とうを行った。
(iii)分子量の計算
GPCクロマトデータは、1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版(株)発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算する。
(iv)カラムの較正
カラムの較正は、昭和電工(株)製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S―1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/l溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とする。
なお、ポリスチレンの分子量は、次式を用いてポリエチレンの分子量に換算する。
PE=0.468×MPS
さらに、表層(A)のポリエチレンの粘度は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定され、460〜4200Pa・sec、好ましくは700〜3500Pa・sec、さらに好ましくは1000〜3000Pa・secである。当該粘度が460Pa・sec未満では、押出されたパリソンの表面がべとつく傾向にあり、ダイス先端を汚すおそれが生じたり、表面に異物が付着しやすくなり、金型キャビティーでのエアー抜きが悪くなって成形容器に凹凸模様が発生し、4200Pa・secを超えると、成形品の表面が荒れる傾向がある。
キャピログラフによる粘度は、キャピログラフを用い、ノズル径1mmφのノズルを使用し、ランド長さ20mm、流入角90°、測定温度190℃、せん断速度23sec−1で測定することにより求められる。本発明にいうキャピログラフとは、樹脂の溶融粘度を示し、成形時のスクリュー及びダイヘッド内での樹脂の流動性を意味する。
(2)中間層(B)を構成するポリエチレン(b)
本発明の中間層(B)を構成するポリエチレン(b)は、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレンであって、MFRが1.0〜15g/10分であり、好ましくは2.0〜10g/10分であり、更に好ましくは3.0〜7.0g/10分である。中間層(B)のポリエチレンのMFRが1.0g/10分未満では、表層(A)又は内層(C)との層間に鱗模様が発生しやすくなり、15g/10分を超えると、パリソンがドローダウンしやすくなる傾向にある。
また、中間層(B)のポリエチレンの密度は、0.870〜0.928g/cmであり、好ましくは0.900〜0.922g/cm、更に好ましくは0.910〜0.920g/cmであり、表面の柔軟性が求められる場合は0.905〜0.915g/cmが好適である。中間層(B)のポリエチレンの密度が0.870g/cm未満では、多層成形容器の剛性が劣り、座屈強度が低下したり、耐熱性が低下する傾向にあり、0.928g/cmを超えると、透明性が低下する傾向にある。
さらに、中間層(B)のポリエチレンの重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、GPC測定により測定され、1.5〜5.0、好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.3である。中間層(B)のポリエチレンのGPC測定によるMw/Mnが1.5未満ではパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなり、5.0を超えると表層(A)に影響し、パリソン表面肌に細かい凹凸が発生しやすくなる傾向にある。
さらに、中間層(B)のポリエチレンのキャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度は、460〜5000Pa・sec、好ましくは700〜3500Pa・sec、さらに好ましくは1000〜3000Pa・secである。当該粘度が上記範囲を外れると、表層(A)と内層(C)と中間層としての両層緩衝効果を発揮できず、表層(A)又は内層(C)と間に鱗状模様の低減効果を発揮できない。なお、中間層(B)のポリエチレンとして、表層(A)のポリエチレンと同じものを用いてもよい。
(3)内層(C)を構成するポリエチレン(c)
本発明の内層(C)を構成するポリエチレン(c)は、フィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレンであって、MFRは0.08〜4.0g/10分であり、好ましくは0.15〜1.5g/10分、更に好ましくは0.2〜0.5g/10分である。MFRは、JIS K6922−2:1997に準拠した温度190℃、荷重2.16kgにおける測定値である。内層(C)のポリエチレンのMFRが0.08g/10分未満では、中間層(B)と内層(C)の界面において鱗状の模様が発生しやすくなり、また押出されたパリソンの温度が高くなりピンチオフに悪影響をおよぼす。また、4.0g/10分を超えると鱗状の模様は発生しにくいが、耐ドローダウン性が悪化する傾向にあり成形時の肉厚調整が難しくなる。
また、内層(C)のポリエチレンの密度は、0.935〜0.967g/cmであり、好ましくは0.945〜0.958g/cm、更に好ましくは0.952〜0.957g/cmである。内層(C)のポリエチレンの密度が0.935g/cm未満では、多層成形容器の剛性が劣り、座屈強度が低下し、0.967g/cmを超えると、透明性(ヘイズ)が悪くなる傾向がある。
さらに、内層(C)のポリエチレンのMw/Mnは、前記GPC測定によるものであり、5.0〜28、好ましくは7.0〜25、更に好ましくは10〜20である。内層(C)のポリエチレンのMw/Mnが5.0未満では、パリソン表面の肌が細かく荒れてしまう傾向にあり、Mw/Mnが28を超えると中間層(B)と内層(C)の界面において鱗状の模様が発生しやすくなる。
さらに、内層(C)のポリエチレンは、粘度(キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定)が、1500〜6600Pa・sec、好ましくは2000〜5000Pa・sec、更に好ましくは3000〜4000Pa・secである。当該粘度が1500Pa・sec未満では、耐ドローダウン性が悪化する傾向にあり成形時の肉厚調整が難しくなり、6600Pa・secを超えるとパリソンの樹脂温度が上がりピンチオフ肉厚が薄くなり強度低下し易くなる。
本発明の内層(C)のポリエチレンのメルトフローレートに対する中間層(B)のポリエチレンのメルトフローレートの値は1.0〜60、好ましくは2.0〜40、更に好ましくは3.0〜20である。この値が1.0未満、すなわち中間層樹脂と内層樹脂のMFR値が低い組み合わせでは中間層に凹凸が生じ、逆に60を超える場合、すなわちMFR値が高い組み合わせでは、ドローダウンしブロー成形時の成形品の肉厚調整がし難くなり、中間層(B)と内層(C)の界面でのメルトフラクチャーが発生しやすくなり、中間層(B)と内層(C)の比率において中間層(B)の厚みを薄くすることが出来なくなる。
2.ポリエチレン材料の製造方法
本発明の表層(A)、中間層(B)及び内層(C)のポリエチレンは、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得られる。
また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
本発明の表層(A)に使用されるポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて重合される。メタロセン触媒とは、活性点が比較的単一な、いわゆるシングルサイト触媒と呼ばれる種類の触媒であり、代表的なものとして、遷移金属のメタロセン錯体、例えばジルコニウムやチタンのビスシクロペンタジエニル錯体に助触媒としてのメチルアルミノキサン等を反応させて得られる触媒が挙げられ、各種の錯体、助触媒、担体等を種々組み合わせた均一又は不均一触媒である。
メタロセン触媒としては、例えば、特開昭58−19309号、同59−95292号、同59−23011号、同60−35006号、同60−35007号、同60−35008号、同60−35009号、同61−130314号、特開平3−163088号公報等で公知であるものが挙げられる。
本発明の中間層(B)に使用されるポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレンである。直鎖状低密度ポリエチレンの場合、チーグラー触媒、フィリップス触媒等の各種触媒を用いて製造される。
本発明の内層(C)に使用されるポリエチレンは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等の各種触媒を用いて製造される。重合触媒は、水素がオレフィン重合の連鎖移動作用を示すような触媒であればいずれも使用することができる。
具体的には、固体触媒成分と有機金属化合物とからなり、水素がオレフィン重合の連鎖移動作用を示すようなスラリー法オレフィン重合に適する触媒であればいずれも使用することができる。好ましくは重合活性点が局在している不均一系触媒である。
上記固体触媒成分としては、遷移金属化合物を含有するオレフィン重合用の固体触媒として用いられるものであれば特に制限はない。遷移金属化合物としては、周期表第4族〜第10族、好ましくは第4族〜第6族の元素の化合物を使用することができ、具体例としては、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo等の化合物が挙げられる。
本発明の内層(C)に使用されるポリエチレンを製造する触媒としては、Cr含有触媒、特にフィリップス触媒が好ましい。フィリップス触媒(クロム系触媒)によるポリエチレンで成形したものは、他の触媒によるポリエチレンに比べ、パリソンに鱗模様が発生しにくくなる。
本発明において用いられるポリエチレンは、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができる。エチレン系重合体の重合条件のうち重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。重合圧力は、大気圧〜約100kg/cmの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンの重合を行うことにより製造することができる。
上記重合において、重合器に供給される水素は、連鎖移動剤として消費され、生成するエチレン系重合体の平均分子量を決定するほか、一部は溶媒に溶解して重合器から排出される。溶媒中への水素の溶解度は、小さく、重合器内に大量の気相部が存在しない限り、触媒の重合活性点付近の水素濃度は低い。そのため、水素供給量を変化させれば、触媒の重合活性点における水素濃度が速やかに変化し、生成するエチレン系重合体の分子量は、短時間の間に水素供給量に追随して変化する。従って、短い周期で水素供給量を変化させれば、より均質な製品を製造することができる。また、水素供給量の変化の態様は、連続的に変化させるよりも不連続的に変化させる方が、分子量分布を広げる効果が得られるので、好ましい。
また、本発明に係るエチレン系重合体においては、水素供給量を変化させることが重要であるが、その他の重合条件、例えば重合温度、触媒供給量、エチレンなどのオレフィンの供給量、1−ブテンなどのコモノマーの供給量、溶媒の供給量等を、適宜に水素の変化と同時に又は別個に変化させることも重要である。
本発明のポリエチレンのMFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより分子量を下げて、結果としてMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより分子量を上げて、結果としてMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより分子量を下げて、結果としてMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより分子量を上げて、結果としてMFRを小さくすることができる。
本発明のポリエチレンの密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができ、コモノマーの量を増やすと小さくすることができる。
本発明のポリエチレンのGPC測定によるMw/Mnを大きくするには、分子量の異なる成分を混合すること等により達成できる。
本発明のポリエチレンの粘度は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定され、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより分子量を下げて、結果として当該粘度を小さくすることができ、重合温度を下げることにより分子量を上げて、結果として当該粘度を大きくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより分子量を下げて、結果として当該粘度を小さくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより分子量を上げて、結果として当該粘度を大きくすることができる。
上記の方法により製造されたエチレン系重合体は、表層(A)に使用されるポリエチレンの場合、又は中間層(B)に使用されるポリエチレンの場合は1種類単独で使用することが好ましく、内層(C)に使用されるポリエチレンの場合は1種類でも複数種類を混合して使用してもよく、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られるエチレン系重合体には、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、パール顔料、光輝材、偏光パール顔料、架橋剤、発泡剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。着色方法としてはベース樹脂に必要量添加したコンパウンドでも、高濃度添加したマスターバッチを後ブレンドしてもよい。
添加剤として、例えば酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能である。いずれの場合でも、上記エチレン系重合体に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
3.多層ブロー成形品の製造方法
本発明の多層ブロー成形品の製造方法は、表層(A)に下記のポリエチレン(a)を、中間層(B)に下記の直鎖状低密度ポリエチレン(b)を、さらに内層(C)に下記のポリエチレン(c)を選定し、同時溶融した後、表面温度が240℃以下となるようにパリソンを押出し、引き続き、吹込み成形することを特徴とする。
ポリエチレン(a):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5〜4.0であるメタロセン触媒で製造されたポリエチレン
ポリエチレン(b):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが1.5〜5.0である直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレン
ポリエチレン(c):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が0.08〜4.0g/10分であり、密度が0.935〜0.967g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが5.0〜28であるフィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレン
本発明の多層ブロー成形体(多層容器)は、多層ブロー成形機で多層成形することにより得ることができる。具体的には3種類以上の押出機からなり、3種類以上の層構成をなすことができるヘッド構造を有するブロー成形機を用いることが好ましい。さらに、表層(A)と中間層(B)と内層(C)の3層を有する前記構造に加えて、成形時に発生したバリを使用した再生樹脂層のための押出機を備えた、4層構造のヘッドを有するブロー成形機を用いてもよい。また、ガスバリヤー層を付加させた容器を作る場合は、さらに押出機の追加やヘッドの層構成を変更した多層ブロー成形機を使用してもよい。型締め装置は通常のブロー成形機に備えつけられているもので対応可能である。成形条件は、求める成形品の大きさ、形状によって適宜設定可能である。
又、本発明の多層容器にスクリーンによる印刷等や、多層ブロー成形時に金型内にラベルを挿入し成形するインモールドラベルや、シュリンクフイルム並ぶにストレッチフイルム等でのデコレーッションを施してもかまわない。
本発明の多層ブロー成形体の製造に用いられる冷却金型は、通常ブロー成形時の金型を用いることができる。金型のキャビティー面は、サンドブラスト仕上げがされており、金型キャビティー面でパリソンを挟み、エアーピンでパリソンを膨らませた時に金型キャビティーとパリソンの間に存在するエアーを抜くために施されていることが多い。
本発明において前記のポリエチレンを使用すると、金型キャビティー面の表面粗さRa値(ブラスト仕上げ、JIS−B0601:1982に準拠して測定)が0.2〜0.9μmの範囲の各金型にて成形を行うことにより、ムラのない深みのある光沢容器を得ることが出来る。金型キャビティー面の表面粗さRa値が0.9μmを超えると、金型キャビティー面を転写してしまい成形された容器の表面は光沢が低下したものになってしまう。また、表面粗さRa値が0.20μm未満ではエアー抜きが悪く、成形された容器の表面に不均一模様が発生してしまう。
これにより得られる多層ブロー成形品の大きさは、特に限定されないが10mlから2000ml程度が望ましい。また、容器の形状も特に限定されない。
また、前記積層体には、本発明の目的を逸脱しない限り、前記表層(A)と中間層(B)と内層(C)以外の層を含めることもできる。例えば、中間層(B)と内層(C)との間などに、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)等のガスバリヤー樹脂や、バリヤー樹脂と中間層(B)もしくは内層(C)との接着を目的とする接着樹脂層(例えば無水マレイン酸等の不飽和化合物でグラフト変性されたポリオレフィン等からなる層)を設けることもできる。また、内溶液への影響の少ない樹脂を最内層に設けたり、最内面にコーティング等の加工を施すこともできる。さらに、成形品製造コス卜低減の観点から、成形時に発生するバリ等を粉砕した再生樹脂材料を使用した再生層を設けてもよい。
本発明の多層ブロー成形品(積層体)の厚みは、必ずしも限定されないが、全体の厚みとして、好ましくは0.1〜2.5mm、より好ましくは0.3〜1.5mmである。多層ブロー成形品の表層(A)は、厚みが10μm以上であることが好ましく、更に好ましくは15〜300μmである。表層(A)の厚みが10μm未満では、層が切れやすくなり光沢が低下してしまう。
本発明の多層ブロー成形品全体の厚みに対する各層の厚みの割合は、特に制限されるわけではないが、表層(A)の厚みの割合は2〜15%、中間層(B)の厚みの割合は2〜15%、内層(C)の厚みの割合は70〜96%が好ましい。更に好ましい表層(A)の厚みの割合は3〜10%、中間層(B)の厚みの割合は4〜10%、内層(C)の厚みの割合は80〜93%である。
表層(A)の厚みの割合が2%未満では、表層(A)の一部欠損が発生しやすくなり、15%を超えると、容器の剛性が低下してしまう。中間層(B)の厚みの割合が2%未満では、中間層(B)と表層(A)及び中間層(B)と内層(C)の間でメルトフラクチャーが発生しやすく、15%を超えると容器の剛性が低下する傾向にある。内層(C)の厚みの割合が70%未満では容器の剛性が低下する傾向にあり、96%を超えると透明性が低下する傾向にある。
本発明の多層ブロー成形品の表面は、光沢性に優れており、JIS−Z8741:1997に準拠し入射角が60°にて測定される光沢値が30%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上である。光沢値が30%未満では、光沢感の損なわれた外観となる。
また、多層ブロー成形品の胴部の全厚み部分は、JIS−K7105:1981に準拠して測定されるヘイズが80%以下、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、更に好ましくは、ヘイズが70%以下、全光線透過率が80%以上である。ヘイズが上記範囲を外れると、光沢感が劣る傾向にあり高級感が損なわれる。
本発明の多層ブロー成形品は、前記の通り、光沢と深みのある外観を有し、しかも透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐環境応力亀裂性に優れた高級感のあるプラスチック成形品であり、また、ムラのない深みのある高光沢性のみならず、柔軟性、柔らかな触感、肌触り等に優れ、取り扱い性、落下衝撃強度等の物性に優れ、容器に外力が加わり変形した場合に白化等の問題が生じることはない。そのためシャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器、食用油等の食品用容器等として好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
(1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(2)密度:JIS K6922−1及び2:1997に準じて測定した。
(3)GPC:GPC測定は、以下の方法で行った。
(i)測定条件
ーターズ社製150C型を使用して、下記の条件でGPC測定を行い、重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:Shodex HT−G(昭和電工(株)製)及び同・HT−806M(昭和電工(株)製)×2本
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:140℃
流量:1.0ml/分
注入量:300μl
(ii)サンプル調整
市販の4mlスクリュートップバイアル瓶に試料約3mg及び溶媒3.0mlを量り採り、センシュー科学製SSC−9300型攪拌機を用い、温度150℃で2時間振とうを行った。
(iii)分子量の計算
GPCクロマトデータは1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版(株)発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算した。
(iv)カラムの較正
カラムの較正は、昭和電工(株)製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S―1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/l溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とした。
なお、ポリスチレンの分子量は、次式を用いてポリエチレンの分子量に換算した。
PE=0.468×MPS
(4)層の厚み:成形容器胴部の全厚み部分の断面を実体顕微鏡にて、30倍に拡大し各層厚みを測定した。層比率は、表層(A)と中間層(B)と内層(C)の厚みを測定し、全体厚みに対する各層の比率を計算し、中間層材(B)による表層(A)及び中間層(B)の薄肉化効果を判断した。
(5)キャピログラフによる粘度:東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、ノズル径1mmφのノズルを使用し、ランド長さ20mm、流入角90°、測定温度190℃、せん断速度23sec−1で測定した。
(6)光沢度:JIS Z8741:1997に準拠して入射角が60°にて測定した。
(7)ヘイズ:JIS K7105:1981に準拠して測定した。
(8)全光線透過率:JIS K7105:1981に準拠して測定した。
(9)パリソン温度:押出された樹脂を棒状熱電対温度計にて測定した。
(10)表面粗さ:JIS B0601:1982に準拠して金型キャビティー面の表面粗さを測定した。
(11)容器壁面外観:ブロー成形品である容器の外観を目視判定により、その状態を評価し、ムラがなく光沢感の良いもの又はそれに近いものを「光沢良好」、若干ムラがあるもの又は光沢感のないものを「光沢あり」、明らかに光沢感のないものを「光沢劣る」、光沢はあるが表層(A)と中間層(B)又は中間層(B)と内層(C)の間でメルトフラクチャーが発生したものを「鱗模様発生」とした。
(12)ピンチオフ剥がれ:成形した容器底部のパリソン融着部(ピンチオフ)の剥がれを目視で判定し、剥がれが無いものを「無」、剥がれが有るものを「有」とした。
(13)パリソンべとつき性:押出されたパリソンを金型で挟み、金型外のパリソンをカッターで切断し、そのときに、パリソンが糸を引くか引かないかを目視で判断し、糸を引かないものを「無」、糸を引くものを「有」とした。
(14)ドローダウン:押出機のダイより押出されたパリソン長さが60cmに到達する時間を12cmに到達する時間で割った値であり、3.0以上はドローダウン「無」、3.0未満はドローダウン「有」とした。
1.表層(A)用樹脂
ポリエチレン(A−1)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが0.7g/10分、密度が0.905g/cm、Mw/Mnが2.1、キャピログラフによる粘度が5000Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(A−2)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが1.0g/10分、密度が0.870g/cm、Mw/Mnが2.5、キャピログラフによる粘度が4050Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(A−3)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが2.0g/10分、密度が0.918g/cm、Mw/Mnが2.6、キャピログラフによる粘度が2800Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(A−4)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが4.0g/10分、密度が0.918g/cm、Mw/Mnが3.3、キャピログラフによる粘度が1600Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(A−5)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが15g/10分、密度が0.928g/cm、Mw/Mnが2.6、キャピログラフによる粘度が500Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(A−6)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが20g/10分、密度が0.925g/cm、Mw/Mnが2.9、キャピログラフによる粘度が370Pa・secのポリエチレンを使用した。
2.中間層(B)用樹脂
ポリエチレン(B−1)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが1.0g/10分、密度が0.870g/cm、Mw/Mnが2.5、キャピログラフによる粘度が4050Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−2)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが1.5g/10分、密度が0.928g/cm、Mw/Mnが2.4、キャピログラフによる粘度が3400Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−3)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが2.0g/10分、密度が0.918g/cm、Mw/Mnが2.6、キャピログラフによる粘度が2800Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−4)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが12g/10分、密度が0.918g/cm、Mw/Mnが3.3、キャピログラフによる粘度が600Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−5)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが15g/10分、密度が0.928g/cm、Mw/Mnが2.6、キャピログラフによる粘度が500Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−6)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが20g/10分、密度が0.925g/cm、Mw/Mnが2.9、キャピログラフによる粘度が370Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−7)
メタロセン触媒を用いて得られた、MFRが0.6g/10分、密度が0.918g/cm、Mw/Mnが1.8、キャピログラフによる粘度が5900Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−8)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが1.0g/10分、密度が0.920g/cm、Mw/Mnが3.8、キャピログラフによる粘度が4500Pa・secの直鎖状低密度ポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(B−9)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが2.6g/10分、密度が0.915g/cm、Mw/Mnが4.2、キャピログラフによる粘度が2200Pa・secの直鎖状低密度ポリエチレンを使用した。
3.内層(C)用樹脂
ポリエチレン(C−1)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが0.1g/10分、密度が0.951g/cm、Mw/Mnが15、キャピログラフによる粘度が6000Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(C−2)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが0.3g/10分、密度が0.935g/cm、Mw/Mnが25、キャピログラフによる粘度が3850Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(C−3)
フィリップス触媒を用いて得られた、MFRが0.3g/10分、密度が0.954g/cm、Mw/Mnが9、キャピログラフによる粘度が3800Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(C−4)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが1.5g/10分、密度が0.967g/cm、Mw/Mnが6、キャピログラフによる粘度が1800Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(C−5)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが5.0g/10分、密度が0.967g/cm、Mw/Mnが20、キャピログラフによる粘度が1120Pa・secのポリエチレンを使用した。
ポリエチレン(C−6)
チーグラー触媒を用いて得られた、MFRが0.07g/10分、密度が0.935g/cm、Mw/Mnが16、キャピログラフによる粘度が7000Pa・secのポリエチレンを使用した。
[実施例1]
3層ヘッド構造で表層(A)用樹脂のスクリュー径が30mmφ、中間層(B)用樹脂のスクリュー径が40mmφ、内層(C)用樹脂のスクリュー径が50mmφのブロー成形機にて、定めた温度設定下でスクリュー回転数を調整し、表層(A)と中間層(B)と内層(C)の層比率を変化させたパリソンを押出し、550mlの偏平容器用のブロー金型(キャビティー面粗さRa値0.4μmの金型)、金型温度20℃、ブロー圧力6kg/cm、ボトル重量38g(容器胴部の肉厚は0.8〜0.9mm)、成形サイクル12秒にて、ブロー成形を行なった。
表層(A)の樹脂としてポリエチレン(A−3)、中間層(B)の樹脂としてポリエチレン(B−2)、内層(C)の樹脂としてポリエチレン(C−2)を使用し、パリソン温度が218℃にて多層ブロー成形を行ない、中空容器を得た。この得られた容器の諸物性を表1に示した。
[実施例2]〜[実施例10]
表1の条件とした以外は実施例1と同様に行なった。この得られた容器の諸物性を表1に示した。
[比較例1]〜[比較例7]
表1の条件とした以外は実施例1と同様に行なった。この得られた容器の諸物性を表1に示した。
Figure 0004977597
表1の評価結果から明らかなように、実施例1〜10では、いずれも外観光沢が良好であり、適度な透明性能を有し、ピンチオフ剥がれがなく、パリソンのべとつきがなく、良好である。すなわち、実施例では、本発明により表層(A)と中間層(B)と内層(C)にそれぞれ特定物性のポリエチレンを採用し、特定の多層構造を採用するので、多層ブロー成形においてパリソンを押し出す際に、表層(A)の樹脂が適度な流動性を有し、中間層(B)の樹脂が表層(A)樹脂と内層(C)樹脂の流動時の粘度差を緩和させるため、高度の光沢表面を生成させ、かつ適度な透明性を現出させることができ、ムラのない深みのある光沢外観を呈する容器が得られることがわかる。
一方、比較例1〜7では、容器の光沢外観、外観状態、適度な透明性能、ピンチオフ剥がれ、又はパリソンのべとつき性のいずれかの一つ以上の性能評価が悪い結果となっていることがわかる。すなわち、比較例1,2は、表層(A)の樹脂であるポリエチレン(a)のMFRが本発明の範囲を外れているので、成形品外観の光沢、表面光沢度が劣っている。また、比較例3,4は、内層(C)の樹脂であるポリエチレン(c)のMFRが本発明の範囲を外れているので、成形品外観の光沢はよいが、ドローダウン性、又はピンチオフ剥がれが劣っている。そして、比較例5,6は、中間層(B)の樹脂であるポリエチレン(b)のMFRが本発明の範囲を外れているので、成形品外観の光沢、ドローダウン性、又はヘイズが劣っている。比較例7は、中間層(B)の樹脂を用いなかったが、比較例6と同様に、成形品外観の光沢、ヘイズが劣っている。
本発明によれば、表面光沢性に優れたプラスチック製ブロー成形品、特に、容器外表面層の光沢性に優れ、しかも透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐環境応力亀裂性に優れた高級感のある中空容器、例えば、シャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器として広く利用できる多層ブロー成形品を提供できる。

Claims (8)

  1. 下記の表層(A)と中間層(B)と内層(C)とからなる積層体により形成され、表層(A)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、また、中間層(B)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、一方、内層(C)の厚みが積層体の厚み全体に対して70〜96%である多層ブロー成形品であって、
    表層(A)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5〜4.0である、メタロセン触媒で製造されたポリエチレン(a)からなり、
    中間層(B)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが1.5〜5.0である、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレン(b)からなり、
    内層(C)は、MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が0.08〜4.0g/10分であり、密度が0.935〜0.967g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが5.0〜28である、フィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレン(c)からなる、
    ことを特徴とする多層ブロー成形品。
  2. ポリエチレン(a)は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度が460〜4200Pa・secのポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の多層ブロー成形品。
  3. ポリエチレン(b)は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度が460〜5000Pa・secのポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層ブロー成形品。
  4. ポリエチレン(c)は、キャピログラフを用いて温度190℃、剪断速度23sec−1で測定される粘度が1500〜6600Pa・secのポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
  5. 表層(A)の厚みは、10μm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
  6. 成形品表面の光沢値(入射角60°)は、30%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
  7. 成形品胴部の全厚み部分は、ヘイズが80%以下、かつ全光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
  8. 表層(A)と中間層(B)と内層(C)とからなる積層体により形成され、表層(A)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、また、中間層(B)の厚みが積層体の厚み全体に対して2〜15%、一方、内層(C)の厚みが積層体の厚み全体に対して70〜96%である多層ブロー成形品の製造方法において、
    表層(A)に下記のポリエチレン(a)を、中間層(B)に下記のポリエチレン(b)を、さらに内層(C)に下記のポリエチレン(c)を選定し、同時溶融した後、表面温度が240℃以下となるようにパリソンを押出し、引き続き、吹込み成形することを特徴とする多層ブロー成形品の製造方法。
    ポリエチレン(a):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5〜4.0であるメタロセン触媒で製造されたポリエチレン
    ポリエチレン(b):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が1.0〜15g/10分であり、密度が0.870〜0.928g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが1.5〜5.0である直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒で製造されたポリエチレン
    ポリエチレン(c):MFR(温度190℃、荷重2.16kg)が0.08〜4.0g/10分であり、密度が0.935〜0.967g/cmであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるMw/Mnが5.0〜28であるフィリップス触媒又はチーグラー触媒で製造されたポリエチレン
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