JP4974513B2 - 易解体可能な構造用接着剤 - Google Patents
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Description
このような接着剤としては、熱可塑性接着剤は、加熱により接合部の解体が可能であるが、いったん冷却すると再び接着力が復活し、解体の場合は、接着剤だけを加熱することは、困難であるため、高温となった接合物の解体は、危険性の高いものであった。この問題を解決するため、熱可塑性よりもより高強度の接着力が要求される熱硬化性接着剤にも適用可能な熱膨張性マイクロカプセル混入接着剤などの開発が進められている(非特許文献1参照)。
しかしながら、接着剤に熱膨張性マイクロカプセルを混入する方法は、加熱によって、接着力を低下させることは可能であるが、加熱によって膨張し、解体を容易にするマイクロカプセルを接着剤に混入することは、接着初期強度を低下させるという構造用接着剤にとっては無視できない問題があった。
すなわち、本発明は、エポキシ化合物が使用される分野(特に構造用接着剤分野)において、接着強度を維持しつつ(少なくとも常温での引張り強さが10MPa以上)、外的刺激を与えることで、易剥離性(易解体性)を有する組成物を提供することにある。
(1)エポキシ樹脂を主成分とする接着剤であって、その構成が、エポキシ樹脂、硬化剤、および、アジドメチル基を有する化合物である有機アジド化合物からなることを特徴とする易解体可能な構造用接着剤。
(2)主剤及び硬化剤からなる2液混合タイプのエポキシ樹脂系接着剤であって、アジドメチル基を有する化合物である有機アジド化合物を配合することを特徴とする易解体可能な構造用接着剤。
外的刺激とは、熱、火、超音波、等の物理的な刺激をいい、より具体的には、熱による刺激としては、熱風加熱、赤外線照射、高周波加熱、化学反応熱、摩擦熱等が挙げられる。本発明の接着剤に上記刺激が与えられると、含有された有機アジド化合物が発熱分解することで、外的に与えられた以上の刺激が接着部に生じ、接着力を有する成分が分解し、接着物質の接着力が、消失(あるいは、大きく低下)し、易解体が可能となる。外的刺激を受けることで、分解が生じるが、その際発熱分解することで、分解の継続性、または、分解を生じさせる刺激の量を少なくすることが可能となるため、分解時に発熱することがきわめて重要である。違う視点でみれば、接着剤中に発熱分解物質が含有されていることにより、外的刺激の量を抑えることができ、具体的には、加熱の場合、加熱温度の極小化が図られ、リサイクルなどの要求で解体物質の性能を過熱によって損ないたくない場合などに好都合である。
本発明者は、エポキシ樹脂と、ポリアミン系硬化剤を主とした組成に、有機アジド化合物を用いた実験を実施し、強度が低下しないことを見出した。その際実験に使用した化合物は、AMMO(3−azidomethyl−3 methyloxetane)ポリマー、GAP(Glycidyl Ajido Polymer)であるが、両末端を他の用途で使用するために水酸基化したものであった(イソシアネートで架橋させるためOH基化していた)。
アジドメチル基を有する化合物の特性は、本発明者等が、取り扱い安全性の面で検討した結果を公開している(「工業火薬」第51巻、第4号(工業火薬協会、1990年)第240〜245ページ)。
これらアジド化合物は、光(電磁波、ここでは、電子線を含む。水銀灯などの紫外線照射器、あるいは、レーザー発信機から生起される。)によって、分解する。
具体的には例えば次の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
3−azido oxetane, 3−azido−2,2−dinitropropyl−2,3−diazidopropyl ether, 1,3−diazidoisopropyl Fluorodinitroethyl Formal, Bis(1,2−diazido−4−oxa−6,6−dinitroheptyl Formal, Azidomethyl N,N−bis−(fluorodinitroethyl)amine
本発明の場合の添加量制限は、有機アジド化合物と主剤であるエポキシ樹脂だけでは、通常の使用条件で硬化反応が認められず、有機アジド化合物+エポキシ樹脂用硬化剤+エポキシ樹脂の組み合わせで強度発現することから、有機アジド化合物の添加量は、エポキシ樹脂用硬化剤の添加量(実施例では35重量部)より小なることが望ましく、実施例で示したごとく、通常、主剤であるエポキシ樹脂に対して、35重量部以下が好ましい。また、下限としては、本来何度で解体するかは、システム上の設計に起因する問題であり、制約はないが、解体に用いる装置の負荷を軽減するため、例えば、GAPの分解発熱量が、約767[Cal/g]であることから、接着剤比熱を0.25[Cal/g・℃]とすると10%の添加で307℃(767*10%*1/0.25)の温度上昇が可能となるため、その程度の温度上昇機能は、素材にもたせたいことから、主剤であるエポキシ樹脂に対して10重量部以上がよい。
実施例で用いたポリマーは下記のようにして合成又は入手した。
<AMMO>
3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンをトシル化した後、極性溶媒中で、アジ化ソーダを使用して、アジド化し、AMMOモノマーを得た。このモノマーを三フッ化ホウ素エチルエーテルを重合触媒として1,4ブタンジオールを開始剤としてジクロロメタン溶媒中で重合し,飽和食塩水で、重合反応を停止させ、ポリマーを得る事ができた。
<GAP>
GAPポリマーに関しては、米国特許第4,268,450号明細書の開示に従って合成した。
<PPG>
PPG(ポリプロピレングリコール、ジオール型)は和光純薬製 製品コード番号162−09475を使用した。これは両末端が水酸基であり、ポリエーテル構造であるが、アジドメチル基の部分が、メチル基になっている構造であり、比較対照物として、アジド基の硬化剤としての反応性を確認するために使用した。
本発明の効果を実証するために、以下の実験を実施した。
評価するエポキシ樹脂基本組成として、主剤としてビスフェノールF型エポキシ(旭電化工業製 アデカレジンEP−4901)、ブチルグリシジルエーテル(日本油脂製 エピオールB−4)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(旭電化工業製 アデカグリシロールED−529E)を85/5/10の組成比で、100重量部とし、硬化剤として、変性脂肪族ポリアミン(旭電化工業製 アデカハードナーEH−463)35重量部を使用した。
この基本組成(以下、「基本組成1」という。)を混合し、100重量部としたものに各種ポリマーを混合し、直径約2.85cm円柱の金属チップ(重さ139.5g)円形断面部に塗布し、同じ形状の金属チップで挟み、加温装置で100℃2時間加温して硬化させ、引張り試験を行って引張強度を測定した。
引張り強さの試験条件は、測定温度:25℃、引張速度:5mm/minとした。
実施例及び比較例の接着剤の組成及び評価結果を表1に示す。
実施例1〜3でアジド基が硬化反応に有効に寄与することが実証できたので、本実施例では、加熱により、接着剤層で破壊が起こることが機能を確認するためには極めて重要であるとの判断から、接着厚みを厚くし、明らかに接着剤内部で、引張試験の際破断が生じるようにし、実験を実施した。そのため基本組成1の100重量部に日本アエロジル製ASL200を6.6重量部添加し、粘度を増加させ、接着厚みが1mmになるように冶具を用いて試作した。
前記基本組成1にエアロジルを添加したものを100重量部とし、これを「基本組成2」とした。
表2に示すような各種組成の樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物について、加熱条件として、100℃2時間で硬化させた後、280℃で約1時間加熱して冷却するという条件を採用したこと以外は実施例1と同様の条件で引張り試験を行って引張強度を測定した。
なお、この試験では、厚みを1mmとしたため、試験を3回実施し、かつ、本発明の目的上、評価に際しては最大強度をもって比較することが望ましいと判断して最大強度の値を測定値とした。
有機アジド化合物が、アクリル系接着剤に併用された場合の強度特性について、データを取得した。主剤として、一方社油脂工業株製の溶剤型アクリル系粘着剤AS−409(成分 アクリル系共重合樹脂)と架橋剤B−45(変性ポリイソシアネート)に光反応性をもたせるため、エポキシアクリレート樹脂(EA 共栄社化学 品番3000M)とジエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学 品番2EG)、その他の光開始剤(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を加えた系で実験を行った。
AS−409とB−45とは、化学量論的には重量比で100対4.5という関係にあるが、本比較例で用いたGAPが両末端OH基を有することから、イソシアネートとの反応性が予想されるため、AS−409とB−45を100対3.6(イソシアネートが、GAP水酸基とは化学量論的に反応しにくい関係)及び100対7.5(イソシアネートが、GAPと化学量論的に反応しやすい関係)で実施した。
表3に示した配合組成のものを混合して得た接着剤を、PET(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上にバーコーターで塗膜し、60℃で溶剤を揮発させ、1晩養生したのち、シリコンウエハー上に幅20mmで貼り付け、角度90度でピール強度を測定した(1mm/min)
各比較例の組成割合及び評価結果を表3に示す。
比較例6と比較例8との比較からは、不要な化学量論以上のイソシアネートも反応に寄与しないことから、先の実施例で添加したPPGのように単に強度を低下させることがわかる。
比較例7と比較例9の対比からは、GAPは、イシシアネートと反応し、強度を増加させることがわかる。
上記より、有機アジド化合物をアクリル系接着剤に使用する場合、強度を保持させるためには、両末端を水酸基化したものを用いるのであれば、硬化反応に寄与させるためには、イソシアネート化合物等の増量が必要なことがわかる。
以上の結果からも、有機アジド化合物 特にアジドメチル基が、エポキシ硬化反応に寄与していることを明らかにできた。
Claims (2)
- エポキシ樹脂を主成分とする接着剤であって、その構成が、エポキシ樹脂、硬化剤、および、アジドメチル基を有する化合物である有機アジド化合物からなることを特徴とする易解体可能な構造用接着剤。
- 主剤及び硬化剤からなる2液混合タイプのエポキシ樹脂系接着剤であって、アジドメチル基を有する化合物である有機アジド化合物を配合することを特徴とする易解体可能な構造用接着剤。
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