JP4974230B2 - 下水熱採熱設備及び下水熱利用システム - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1(特開2003−155705号公報)には、加温された下水路空気を用いた融雪設備が開示されている。これは、融雪対象箇所に放熱用熱交換器を埋設し、該放熱用熱交換器に下水管路内の下水路空気を通過させ、その放熱により融雪機能を得る構成となっており、さらに、放熱用熱交換器内に通過する下水路空気の保有熱を潜熱蓄熱材により蓄熱するようにしている。このように、潜熱蓄熱材を用いることにより、融雪負荷の変動に対応して融雪性能を効果的に利用することが可能である。
また、特許文献1に記載されるように下水路空気を利用する方法は、下水管路と放熱用熱交換器とを連通して形成しており、既存の下水道設備に設置するためには大掛かりな施工が必要となり、また下水に直接接触した空気が熱交換器に通流するため、衛生面で問題が残り、頻繁なメンテナンスも必要となる。さらに、下水道設備から離れた地域で熱利用することは困難である。
さらに、特許文献3に記載されるように、マンホールから採熱する方法では、マンホールが設置されている局所的な部位からしか採熱できず、十分な熱量が確保できないことが考えられる。
従って、本発明は上記従来の技術の問題点に鑑み、既存の下水道設備にも容易に設置可能で施工性が高く、メンテナンスが不要で、且つ高効率にて下水熱を採熱及び利用可能な下水熱採熱設備及び下水熱利用システムを提供することを目的とする。
所定長さの下水道管体が複数直列に接続されてなる下水道管内を通流する下水(下水処理水を含む)から採熱する下水熱採熱設備において、
前記採熱管設備は、夫々の採熱ユニットが対応する一の下水道管体の長さに合わせて設置された複数の採熱ユニットにより構成され、
該採熱ユニットは、夫々熱原水が通流し高熱伝導性材料で形成された採熱管と、該採熱管の間隙及び周囲に充填された保護材とからなるとともに、前記下水道管体夫々の外周面上側を円弧状に被覆するジャケット体として形成され、
前記採熱管は、前記下水道管の長手方向に平行に複数配設された直管と、該直管同士を接続するベント管とから構成されるとともに、該採熱管は、上記した複数の直管とベント管にて一過式の熱原水回路を形成し、該一の熱原水回路を夫々一の採熱ユニット内に組み込んでなることを特徴とする。
さらに本発明において、前記保護材の外周を保温材で被覆することが好ましい。
これにより、採熱量を高くすることができ、効率的な採熱が可能となる。
請求項1の構成を有する採熱設備と前記負荷側熱交換器との間で熱原水を直接循環させるバイパスラインを設けるとともに、前記バイパスラインを、前記ヒートポンプ起動時若しくは前記負荷側熱交換器における低負荷時にのみ開放する開閉弁を設けたことを特徴とする。
これにより、ヒートポンプ停止時の下水熱を循環ポンプのみの運転で蓄熱できるようになる。ヒートポンプ運転時(採熱時)は、下水量の変動に伴う採熱量減少を熱原水の容量、即ち顕熱で補うことが可能である。さらに、下水量が少なくなった時の能力低下を低減可能で、能力変動を吸収することが可能である。
このように、凝縮側、蒸発側のサイクルを切り替える切り替え手段を付加することにより、負荷側熱交換器に対して適宜冷熱若しくは温熱を供給することが可能となる。さらに、下水道管に放熱することも可能となり、冷熱を利用することにより大気へ放熱することがないので、温暖化対策ともなりえる。
即ち、夫々の採熱ユニットを対応する下水道管体の外周側を覆うジャケット状に形成し、直管とベント管からなる採熱管を利用することにより、工場生産ユニットとして現場での施工性を向上させることができ、既存の下水道管にも容易に施工可能である。また下水に直接接触しない構成であるため、メンテナンスが不要で維持コストが低減できる。さらに、採熱管に熱伝導率の高い材質を用いているため、高効率にて採熱が可能である。
さらに、採熱管を層状に複数段設けることにより、採熱量を高くすることができ、効率的な採熱が可能となる。
さらに、前記バイパスライン上に、蓄熱タンクを設けることにより、ヒートポンプ停止時の下水熱を循環ポンプのみの運転で蓄熱できるようになる。
さらにまた、凝縮側、蒸発側のサイクルを切り替える切り替え手段を付加することにより、負荷側熱交換器に対して適宜冷熱若しくは温熱を供給することが可能となる。
図1は本発明の実施例1に係る下水熱利用システムの全体構成図、図2は本発明の実施例2に係る下水熱利用システムの全体構成図、図3は本発明の実施例に係る採熱ユニットの断面図、である。
本実施例では、一例として下水熱利用システムを融雪設備に適用した場合につき説明する。しかし、これに限定されるものではなく、例えば冷暖房設備や温水/冷水生成設備などの他の設備にも適用可能である。
本システムは、融雪パイプ等の負荷側熱交換器60に熱原水を供給する熱源設備10と、下水道管50に配設され下水熱を回収する採熱設備20と、を備える。
前記熱源設備10は、蒸発器11と凝縮器12とコンプレッサ13と膨張弁14とを備えたヒートポンプを有する。このとき、空冷チリングユニットを採用することが好ましい。
また、熱源設備10は、採熱設備20に送給する熱原水の流量、送り温度、及び該採熱設備20からの戻り温度を計測する各種計測手段を備えることが好ましい。これらの計測手段により得られた計測値から、採熱量を正確に把握することが可能である。
採熱管21は、上記した複数の直管とベント管にて一過式の熱原水回路を形成している。この一の熱原水回路を一の採熱ユニットとし、採熱設備20は複数の該採熱ユニットを備えている。このように、一過式の熱原水回路を有する採熱ユニットとすることにより、熱源水の滞留時間が長くなり熱交換効率が高くなる。
また、一般に多く採用されている下水道管50は、所定長さ(例えば定尺6m)の下水道管体が複数直列に接続されてなるが、一の採熱ユニットが一の下水道管体に対応するように配設することが好適である。これにより、施工が容易となり、不具合が生じた場合にも補修、交換が簡単に行える。また、上記したように、熱源設備10に設置された計測手段により、各採熱ユニット毎の熱原水流量、送り温度、戻り温度を計測し、各ユニット毎の採熱量を算出するとよい。各計測データは、制御装置(図示略)により一括して収集する。
また、保護材22の外周側は、断熱材23で被覆されている。このように断熱材23にて被覆することにより下水熱の放熱を防止し、採熱効率を向上させることが可能である。
採熱設備20の熱原水出口には、熱原水のライン31が接続され、該ライン31はライン32を介して熱源設備10の蒸発器11に接続されている。蒸発器11を出たライン33は、採熱設備20の熱原水入口に接続され、ライン31、32、33により採熱側循環回路が形成されている。この採熱側循環回路上には、循環ポンプ34が配設される。尚、本実施例にて熱原水には不凍液が用いられる。
また、負荷側熱交換器60の熱原水出口には、熱原水のライン35が接続され、該ライン35はライン36を介して凝縮器12の入口に接続されている。凝縮器12の出口はライン37により負荷側熱交換器60に接続され、ライン35、36、37により負荷側循環回路が形成されている。この負荷側循環回路上には、循環ポンプ38が配設される。
ヒートポンプ運転時に、熱原水は採熱設備20の採熱管21を通流し、下水熱を採熱して高温側熱源水として熱原水出口よりライン31を介して排出される。このとき、三方バルブ40はライン32側に開放されており、バイパスライン41側に熱原水は通流しない。ライン32を通って蒸発器11に導入された熱原水は、該蒸発器11にて吸熱された後、ライン33を介して熱原水入口から採熱設備20内に導入され、循環する。
ヒートポンプは採熱設備20からの下水熱を熱源とし、凝縮器12にて負荷側熱原水との間で熱交換して熱原水が昇温される。この昇温された熱原水は、ライン37を通って負荷側熱交換器60に供給され、融雪に利用される。
このとき、三方バルブ42は、ライン36側に開放されており、ライン44側には熱源水は通流しない。融雪利用後の冷却された熱原水は、ライン35、36を通って凝縮器12に返送され、負荷側循環回路を循環するようになっている。
そこで、本実施例では、これを解消するために上記したバイパスライン41、44を備えた構成としている。即ち、ヒートポンプ起動時は、三方バルブ40、42をバイパスライン41、44側に開放し、採熱設備20から出た熱原水を負荷側熱交換器60に直接導入し、該負荷側熱交換器60からの熱原水を採熱設備20に導入して循環回路を形成するようにしている。このとき、ヒートポンプは稼動せず、循環ポンプ38のみで採熱設備20からの熱原水を負荷側熱交換器60に送り、該負荷側熱交換器60の熱原水温度レベルを上げるようにしている。所定時間運転し、負荷側熱交換器60の熱原水温度がある程度昇温したら、通常運転に戻すとよい。
本実施例1のシステム及び運転方法によれば、ヒートポンプ時の温度逆転状態を緩和し、消費動力の低減が可能である。同様に、低負荷時においても消費動力を低減することが可能である。さらに、下水量が少なくなった時の能力低下を低減可能で、能力変動を吸収することが可能である。
図2において、本システムは、融雪パイプ等の負荷側熱交換器60に熱原水を供給する熱源設備10と、下水道管50に配設され下水熱を回収する採熱設備20と、を備えるとともに、該採熱設備20と負荷側熱交換器60とを直接接続するバイパスライン41、44上に、蓄熱タンク48を設けた構成としている。
熱源設備内の熱原水タンクの温度を一定に保つことにより各採ユニットへの入口温度条件を固定する。各採熱設備への供給熱原水量が所定の数値となるように、流量計の指示値を確認しながら採熱設備のバルブにより流量を調整する。採熱ユニット毎に、熱原水流量、入口温度、出口温度を計測する。出入り温度差、熱原水流量及び熱源水物性により採熱量を算出する。
採熱量Qの計算式は以下の通りである。
Q=(To−Ti)×Qb×ρb×cb/(60×1000)
ここで、To:熱原水出口温度(℃)、Ti:熱原水入口温度(℃)、Qb:採熱ユニットの熱原水流量(L/min)、ρb:熱原水密度(1026kg/m3)、cb:熱原水比熱(4009J/kg/K)である。
日時を変えて複数回実験を行い、各実験条件として、条件1ではユニット流量5L/min、条件2ではユニット流量10L/min、条件3ではユニット流量10L/min、条件4ではユニット流量10L/min、条件5ではユニット流量7.5L/minとした。また何れの条件においても採熱管への熱原水の送り温度は0℃とした。
また、保護材を配設した実施例2は、保護材を配設しなかった実施例1に比べて何れの実験条件においても採熱量が高くなった。従って、保護材を配設することが採熱効率の向上に有効であることが明らかとなった。
11 蒸発器
12 凝縮器
13 コンプレッサ
14 膨張弁
20 採熱ユニット
21 採熱管
22 保護材
23 保温材
40、42 三方バルブ
41、44 バイパスライン
50 下水道管
60 負荷側熱交換器
Claims (6)
- 所定長さの下水道管体が複数直列に接続されてなる下水道管内を通流する下水(下水処理水を含む)から採熱する下水熱採熱設備において、
前記採熱管設備は、夫々の採熱ユニットが対応する一の下水道管体の長さに合わせて設置された複数の採熱ユニットにより構成され、
該採熱ユニットは、夫々熱原水が通流し高熱伝導性材料で形成された採熱管と、該採熱管の間隙及び周囲に充填された保護材とからなるとともに、前記下水道管体夫々の外周面上側を円弧状に被覆するジャケット体として形成され、
前記採熱管は、前記下水道管の長手方向に平行に複数配設された直管と、該直管同士を接続するベント管とから構成されるとともに、該採熱管は、上記した複数の直管とベント管にて一過式の熱原水回路を形成し、該一の熱原水回路を夫々一の採熱ユニット内に組み込んでなることを特徴とする下水熱採熱設備。 - 前記採熱管が前記採熱ユニットの厚み方向に対して層状に複数段設けられ、前記熱原水を、外周側に位置する採熱管から内周側に位置する採熱管に向けて通流するようにしたことを特徴とする請求項1記載の下水熱採熱設備。
- 前記採熱ユニットは、前記下水道管体の外周面上側に沿う円弧状ジャケット体として形成されたことを特徴とする請求項1記載の下水熱採熱設備。
- 所定長さの下水道管体が複数直列に接続されてなる下水道管内を通流する下水から採熱する採熱設備と、該採熱設備にて採熱した下水熱を熱源とするヒートポンプを有した熱源設備とを備え、該熱源設備から負荷側熱交換器に熱供給することにより下水熱を有効利用するようにした下水熱利用システムにおいて、
請求項1の構成を有する採熱設備と前記負荷側熱交換器との間で熱原水を直接循環させるバイパスラインを設けるとともに、前記バイパスラインを、前記ヒートポンプ起動時若しくは前記負荷側熱交換器における低負荷時にのみ開放する開閉弁を設けたことを特徴とする下水熱利用システム。 - 前記バイパスライン上に、蓄熱タンクを設けたことを特徴とする請求項4記載の下水熱利用システム。
- 前記ヒートポンプの凝縮側サイクルと蒸発側サイクルを切り替える切り替え手段を備え、前記負荷側熱交換器に、前記切り替え手段を介して冷熱と温熱を選択的に供給するようにしたことを特徴とする請求項4記載の下水熱利用システム。
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