JP4969842B2 - 赤リン系発煙組成物およびその製造方法 - Google Patents
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具体的には、金融施設や対象物等のエリアにおける保護物件を煙により保護したり、侵入者による赤外線透視を防止するために利用する。また、軍事的分野においては、軍用設備、部隊、飛行機、戦闘車両等を、短時間敵の監視を免れるために散弾発射に分散し、迅速で均一な煙を供給する装置の煙供給剤に使用する。
また、赤リンは安価であるから、発煙組成物や赤外線遮蔽発煙組成物の主剤として使われている。しかしながら、赤リンを使って発煙組成物を配合すると、赤リンと空気中の水分とが反応して不快な臭気ガスを発生することが知られていた。
近年、市販の赤リンに、赤リンと空気中の水分との反応を防止するため、あらかじめ赤リンを被覆処理したものが市販されるようになってきた。
そこで、ペレットとしての強度を確保するために、固形のゴムであるクロロプレンゴムやブタジエンゴムをバインダとして使用している。
赤リン系発煙組成物の燃焼により発生する煙が、赤外線を遮蔽する効果があり、赤外線を遮蔽することができる。しかし、赤リン系発煙組成物にブタジエンゴム等を使用する従来のバインダでは、赤リンと発熱剤との反応温度を低下させ、逆に、赤外線遮蔽効果を持つリン酸の生成を阻害するという問題があり、近年、グリシジルアジドポリマ(GAP)等を使用したエネルギーバインダを赤リン系発煙組成物に使用することにより、赤外線吸収率の大きい物質を多量に発生させることが知られている(例えば、特許文献5参照)。
従来の液状不飽和有機化合物や固体有機化合物(HB700)を被覆材として使用した赤リンを、エネルギーバインダが溶けた溶剤と混ぜる際に、赤リンをあらかじめ被覆していた液状不飽和有機化合物もしくは固体有機化合物が溶剤に溶け出し、溶剤が揮発した後に赤リンの被覆が取り除かれるという欠点が明らかになった。
非特許文献2によれば、被覆材に使われている樹脂がアセトンによく溶けるか、被覆材に使われている樹脂がアセトンに溶けるか、被覆材に使われている樹脂がアセトンに少し溶けるか、被覆材に使われている樹脂がアセトンに溶けないかを×、△、○、◎で示し、ポリアミド△、ポリウレタン△、エポキシ樹脂×、フェノール樹脂◎であった。
また、本発明者らは、フェノール樹脂で被覆した赤リンを、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、ポリアルキレングリコールとともに混合すると、製造中でのPH3ガスの発生が抑えられることを見い出した。
そこで、本発明に係る赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとを有することを特徴とする。
また、本発明に係るさらに別の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、フッ素ゴムとを有することを特徴とする。
ポリアルキレングリコールは、水酸基を含む結合剤であり、燃焼時に水分を生成するため、リン酸の生成に必要な水分を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くでき、また、成型した場合、破壊強度を高くする性能を有する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等がある。
フッ素ゴムとしては、例えば、バイトンA(デュポンパフォーマンスエラストマー社製の登録商標)が知られている。バイトンAは、VF2(vinylidene fluoride)およびHFP(hexafluoropropylene)を66%含むフッ素化された炭化水素ポリマーであり、燃焼時に多量の熱を発生するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することで、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度が高くなる性能を有する。また、成型した場合、破壊強度が高くなる性能を有する。
本発明に係る赤リン系発煙組成物の製造方法は、アセトンを用いてエネルギーバインダを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にすることを特徴とする。
また、本発明は、結合剤兼固形剤(バインダ)としてエネルギーバインダ、ポリアルキレングリコールまたはフッ素ゴムを使用しても、バインダを溶かすために使用する溶剤によって赤リンのフェノール樹脂の被覆が溶け出ださず、赤リン系発煙組成物の製造中に、赤リンと空気中の水分との反応によって発生する人体に有毒なPH3ガスを抑えることができる。
本発明が適用される赤リン系発煙組成物としては、特許文献5に開示されるように、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとから成る赤リン系発煙組成物(第一の赤リン系発煙組成物)がある。
赤リンは、燃焼することにより、赤外線遮蔽の要因であるリン酸を生成し、酸化剤と金属粉とは、赤リンを燃焼させるための燃焼熱を供給する。
エネルギーバインダは、燃焼剤兼結合剤であり、燃焼時に発熱反応するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度を高くする性能を有する。エネルギーバインダとしては、例えば、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれる。
ポリアルキレングリコールは、水酸基を含む結合剤であり、燃焼時に水分を生成するため、リン酸の生成に必要な水分を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くでき、また、成型した場合、破壊強度を高くする性能を有する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等がある。
フッ素ゴムとしては、例えば、バイトンA(デュポンパフォーマンスエラストマー社製の登録商標)が知られている。バイトンAは、VF2(vinylidene fluoride)およびHFP(hexafluoropropylene)を66%含む結合剤であり、燃焼時に多量の熱を発生するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することで、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度が高くなる性能を有する。また、成型した場合、破壊強度が高くなる性能を有する。
4P(赤リン)+ 燃焼熱 → P4(g) ・・・(式1)
大気中の酸素と反応して五酸化リンを生成する。
P4(g)+ 5O2 → 2P2O5 + 熱 ・・・(式2)
五酸化リンは、大気中の水分と反応してリン酸を生成する。
このリン酸(水和物)は、赤外線を吸収する性質を有しており、その赤外線吸収特性は、図1に示すリン酸スペクトルのリファレンスシートによる赤外線吸収スペクトルで示される波形とほぼ一致する。
また、ここでは8〜12μm帯において、赤外線吸収特性が特に良いことが分かる。
また、式3は大気中の水分という気象条件に左右されるため、大気中の水分が少ないと、リン酸煙の濃度が減少してしまう。
従来の、ブタジエン等の一般に使用されている結合剤は、燃焼する際に吸熱反応を示すため、赤リンの気化に必要な式1に示す燃焼熱を奪ってしまう。
このことから、第一の赤リン系発煙組成物では、エネルギーバインダと呼ばれる燃焼剤兼結合剤を用いることとした。このエネルギーバインダは、従来一般に使用されている結合剤と違って燃焼する際に発熱反応を示すため、赤リンを気化させるために必要な式1に示す燃焼熱を補足することができる。そのため、主剤の赤リンの含有量を減らしたり、酸化剤、金属等を増やしたりすることなく、赤リンを完全に気化させることができる。
また、燃焼する際に吸熱反応を示すため、赤リンの気化に必要な式1に示す燃焼熱を補うバインダとして、従来一般に使用されている結合剤と違って燃焼する際に発熱反応を示すバイトンを用いることにより、赤リンを気化させるために必要な式1に示す燃焼熱を補足することができる。そのため、主剤の赤リンの含有量を減らしたり、酸化剤、金属等を増やしたりすることなく、完全に気化させることができる。
同時に、本発明者は、主成分として赤リン、酸化剤として硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩あるいは酸化物、可燃剤として金属粉、結合剤としてエネルギ−バインダおよびバイトンを有する第三の赤リン系発煙組成物を見い出した。
また、付加的性能である燃焼速度と破壊強度に関しては、以下に示すような相反する特徴を示す。
逆に、水酸基を多く含むバインダであるポリアルキレングリコールは、燃焼速度が比較的小さく、成型した時の破壊強度は比較的大きい傾向がある。
第二の赤リン系発煙組成物および第三の赤リン系発煙組成物の大きな特徴は、結合剤にエネルギーバインダとポリアルキレングリコールとの組合せ、またはエネルギーバインダとバイトンAとの組合せのいずれかを混合したことにより、赤外線遮蔽性能が従来よりも向上し、所定の成型強度を維持できることにある。
通常、破壊強度や燃焼速度は、結合剤の含有量の増減や酸化剤、金属等の含有量を増減させることによって調整できるが、組成中の成分によって制御範囲は限られてしまう。
しかし、この赤外線遮蔽性能が高い2種類の結合剤の相反する特性を利用して、組成物中の結合剤の配合比を調節することにより、赤外線遮蔽性能を向上しつつ破壊強度や燃焼速度の幅広い制御範囲を確保することができる。
例えば、遠方に放出する場合は、破壊強度を高くすることによって放出圧力に耐えられる赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成され、逆に、近距離で成型品を粉砕し瞬時に煙幕を形成させる場合は、破壊強度を低くした赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成される。
しかし、本発明が適用される第一の赤リン系発煙組成物は、HB700のようにエポキシ樹脂などに被覆された赤リンは、製造過程においてPH3ガスを発生することが知られている。また、第二および第三の赤リン系発煙組成物は、公知ではないが、第一の赤リン系発煙組成物を、(1)赤外線遮蔽の要因であるリン酸の煙濃度が従来より高い組成物とする、および(2)赤外線遮蔽性能を保持しつつ、破壊強度、燃焼速度の制御範囲が広い組成物とする第二の赤リン系発煙組成物および第三の赤リン系発煙組成物においても、同様にHB700のようにエポキシ樹脂などに被覆された赤リンは、製造過程においてPH3ガスを発生することが確認できた。
次に、エポキシ樹脂で被覆された赤リンとフェノール樹脂で被覆された赤リンを用いて、赤リン系発煙組成物の製造過程においてPH3ガスが発生するか否かを確認した。
本実験例では、下記の3つの赤リン系発煙組成物を作製した。
第一の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂を被覆した赤リンを用いて、エネルギーバインダをアセトンの溶剤に溶解した溶液中に、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを混合した。
第三の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂を被覆した赤リンを用いて、エネルギーバインダとフッ素ゴムとをアセトンの溶剤に溶解した溶液中に、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを混合した。
次に、第一ないし第三の赤リン系発煙組成物について、製造過程におけるPH3ガスの発生を確認するための実験例を詳細に述べる。
被覆された赤リンが、溶剤、水によってPH3ガスを発生しないことを確認するため、フェノール樹脂で被覆されたLP(国産)とエポキシ樹脂で被覆されたHB(輸入)との比較を行った。
比較実験例は、200ccビーカにLP(国産)10gを入れたものと、HB(輸入)10gを入れたものを3個づつ計6個を用意した。アセトン100cc、水100cc、酢酸メチル100ccをLP(国産)の入ったビーカに別々に入れ、LP(国産)とアセトン、水、酢酸メチルでPH3が発生するか否かを調べた。
各ビーカに溶剤を入れた直後に密封し、室内に室温のまま放置した。
赤リンは、水と反応してPH3ガスを発生するので、水とLP(国産)とを直接混ぜた試料1が発生するPH3量と、水とHB(輸入)とを直接混ぜた試料2が発生するPH3量を求めて比較することにより、LP(国産)、HB(輸入)の被覆の違いによる水と赤リンとの反応によるPH3ガスの発生量を調べた。同様に、アセトンとLP(国産)とを混ぜた試料3と、アセトンとHB(輸入)とを混ぜた試料4とにより、アセトンと赤リンの被覆材の違いによるPH3ガスの発生量を調べた。また、アセトン以外の溶剤として酢酸メチルを用いてPH3ガスの発生量を調べた。酢酸メチルとLP(国産)とを直接混ぜた試料5が発生するPH3量、酢酸メチルとHB(輸入)とを直接混ぜた試料6が発生するPH3量とにより、酢酸メチルと赤リンの被覆の違いによるPH3ガスの発生量を調べた。
この結果から、アセトン、酢酸メチルは、LP(国産)と反応してPH3を発生しないことが分かった。しかし、水とLP(国産)とは反応し、PH3ガスを発生することが分かった。
この結果から、アセトン、酢酸メチルは、HB(輸入)と反応してPH3ガスを発生しないことが分かった。しかし、水とHB(輸入)とは反応し、PH3ガスを発生することが分かった。
赤リン(LP(国産)、赤リン(HB(輸入))を使って赤リン系発煙組成物を製造することにより、実際の製造作業中のPH3ガスの発生の有無とできた赤リン系発煙組成物の性能とを調べた。
結果を表1に示す。
A:臭いが無いか、少し臭いがするが作業に影響なし。
B:臭いが強く5分程度の作業で、人によっては吐き気を催す。
GAP5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(LP(国産)65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム22.5%、可燃剤としてのMg7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
(実施例2)
GAP2.5%とPEG2.5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(LP(国産)65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム22.5%、金属粉としてのマグネシウム粉末7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
(実施例3)
GAP1.5%、バイトンA1.5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(LP(国産)65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム24%、金属粉としてのマグネシウム粉末8%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
(比較例1)
GAP5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての赤リン(HB(輸入))65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム22.5%、可燃剤としてのMg7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
(比較例2)
GAP2.5%とPEG2.5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(HB(輸入))65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム2.5%、金属粉としてのマグネシウム粉末7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
(結論)
本実施例において、赤外線透過率は、黒体炉(熱源)とIRスペクトルアナライザーとの距離を1mとし、発煙組成物を燃焼させる前のデータ(Io)を得た後、完全に燃焼させ燃焼チャンバ内の煙をファンで攪拌し、煙が均一になったところで、データ(I)を得て、この燃焼前後の強度比から算出している。
発煙濃度C(g/m3)は、この赤外線透過率(%)と計測距離L(m)とリン酸の吸収係数α(m2/g)から、光の減衰を表す次式のランバートベール則によって算出した。
ここで、expは、指数関数exponentialを表し、吸収係数α(赤リンの吸光係数α:0.38)は物質固有値である。発煙物質はリン酸が主となるため、実験例例組成物中では定数となる。
次に、発煙濃度について説明する。
実施例1,2,3、比較例1,2で示したとおり、赤リンの被覆材を従来のエポキシ樹脂からフェノール樹脂の被覆に変えても、それから製造する赤外線発煙組成物の赤外線遮蔽性能には影響が無いことが分かった。しかも、フェノール樹脂を赤リンの被覆材に使用することにより、赤外線発煙組成物の製造中の有毒なPH3ガスの発生が抑えられることができ、ひいては作業性もよくなり、製造のコスト低減につながることが分かった。
Claims (6)
- フェノール樹脂で被覆された赤リンと、
硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、
金属粉と、
エネルギーバインダと、
ポリアルキレングリコールと
から成ることを特徴とする赤リン系発煙組成物。 - フェノール樹脂で被覆された赤リンと、
硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、
金属粉と、
エネルギーバインダと、
フッ素ゴムと
から成ることを特徴とする赤リン系発煙組成物。 - 前記エネルギーバインダは、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤リン系発煙組成物。
- 前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載の赤リン系発煙組成物。
- 請求項1記載の赤リン系発煙組成物の製造方法において、
アセトンを用いてエネルギーバインダとポリアルキレングリコールを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にする
ことを特徴とする赤リン系発煙組成物の製造方法。 - 請求項2記載の赤リン系発煙組成物に係る製造方法において、
アセトンを用いてエネルギーバインダとフッ素ゴムとを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にする
ことを特徴とする赤リン系発煙組成物の製造方法。
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