JP4969842B2 - 赤リン系発煙組成物およびその製造方法 - Google Patents

赤リン系発煙組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、可視光線波長域および赤外線波長域の不透過な煙を発生し、遮蔽したい対象物の発する可視光線および赤外線を遮蔽することにより、赤外線探知システムから所定時間の間免れたり、カムフラージュにするために利用する赤リン系発煙組成物とその製造方法に関するものである。
具体的には、金融施設や対象物等のエリアにおける保護物件を煙により保護したり、侵入者による赤外線透視を防止するために利用する。また、軍事的分野においては、軍用設備、部隊、飛行機、戦闘車両等を、短時間敵の監視を免れるために散弾発射に分散し、迅速で均一な煙を供給する装置の煙供給剤に使用する。
従来、赤リンを酸化反応(燃焼)させて、この発煙により可視光線波長域や赤外線波長域を遮蔽する技術があり、特に、その際生成するリン酸により赤外線吸収を有効にする技術がある。
また、赤リンは安価であるから、発煙組成物や赤外線遮蔽発煙組成物の主剤として使われている。しかしながら、赤リンを使って発煙組成物を配合すると、赤リンと空気中の水分とが反応して不快な臭気ガスを発生することが知られていた。
例えば、赤リン系発煙組成物において、赤リンを金属粉、酸化剤等と混合したり、貯蔵したりする際、赤リンと空気中の水分とが反応して赤リンが分解し、作業者が吸い込むと人体に良くないガス(以下、「不快な臭気ガス」と称する)を発生する虞がある。そこで、このようなガスの発生を防ぐために、赤リンをオレイン酸、ひまし油等の液状不飽和有機化合物で被覆することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、赤リン系発煙組成物が貯蔵中に不快な臭気ガスを発生し、場合によっては金属の腐食を引き起こし、安全性を損なう虞があるので、それを防ぐために赤リンと液状不飽和有機化合物とを混ぜ、赤リンを被覆材で被覆することで赤リンと空気中の水分との反応による不快な臭気ガス、例えば、ホスフィン(以下、PH3と称する)ガスの発生を防いでいる。しかしながら、被覆材として液状不飽和有機化合物を含んだ赤リン系発煙組成物は、プレスで成型してペレットを製造しても、赤リン系発煙組成物の中に液体を含んでいるため、ペレットの強度を確保できないという問題がある。そのため、この赤リン系発煙組成物は、金属等の容器の中にプレスで押し込めて使用しなければならない。
また、赤リンの被覆材に固体有機化合物を使用した例としては、ポリアミド(商品名ナイロン)、ポリウレタン、EVA(ethylene vinyl acetate)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂がある(例えば、非特許文献1、特許文献2参照)。
近年、市販の赤リンに、赤リンと空気中の水分との反応を防止するため、あらかじめ赤リンを被覆処理したものが市販されるようになってきた。
非特許文献1では、被覆材としてエポキシ樹脂で被覆した赤リンとして、独国のクラリアント社(Clariant GmbH)のHB700等の開示がある。ここでは、赤リンを固体有機化合物で被覆することにより、赤リンの保管・貯蔵経過日数とPH3ガスの発生量の関係を調べている。そして、HB700で被覆処理した赤リンと未処理の赤リンとを25℃、65%湿度の雰囲気に14日間保管すると、未処理の赤リンが、HB700で被覆処理した赤リンに比べ、PH3ガスの発生量が40倍以上、28日の保管では50倍以上であり、固体有機化合物での赤リンの被覆がPH3ガスの発生を抑制することを示している。
また、赤リン、マグネシウム金属粉およびセシウム化合物等の酸化剤からなる発煙成分と、これに結合剤(バインダ)としてクロロプレンゴム系バインダを加えて赤リン系発煙組成物を製造し、この赤リン系発煙組成物をペレット状に加圧成型し、弾殻等に組み込んで赤外線を遮蔽する発煙剤として使用することが知られている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3では、赤外線が大気中を通過する際、大気成分により選択的に吸収される0.7〜1.5μm、2〜2.5μm、3〜3.5μmおよび8〜12μmの波長、いわゆる“大気の窓”で作動することにより、大気で遮蔽できない波長での遮蔽性能を持った煙を選択的に供給することが開示されている。この装置は、一つの装置の中に複数の赤リン系発煙組成物のペレットを包含し、煙の発生が必要な時に、発火の指令信号により、装置に内蔵された発火装置が作動する。その作動によって、複数のペレットが着火し、ペレットが燃えながら赤外線を遮蔽する煙を発生し続け、広範囲に飛び散ることにより、赤外線遮蔽のできる容積を確保している。
すなわち、赤リン系発煙組成物に含まれる赤リンと空気中の水分との反応によるPH3ガスの発生を防ぐための有機化合物(被覆材)に、液状不飽和有機化合物を使用していては、ペレットの強度を確保できない。
そこで、ペレットとしての強度を確保するために、固形のゴムであるクロロプレンゴムやブタジエンゴムをバインダとして使用している。
また、赤リン、酸化鉄、アルミニウム粉末およびマグネシウム粉末から成る発煙成分と、これに結合剤(バインダ)としてエラストマー(ブタジエンゴム)を加えて成型体にしている赤リン系発煙組成物が知られている(例えば、特許文献4参照)。
赤リン系発煙組成物の燃焼により発生する煙が、赤外線を遮蔽する効果があり、赤外線を遮蔽することができる。しかし、赤リン系発煙組成物にブタジエンゴム等を使用する従来のバインダでは、赤リンと発熱剤との反応温度を低下させ、逆に、赤外線遮蔽効果を持つリン酸の生成を阻害するという問題があり、近年、グリシジルアジドポリマ(GAP)等を使用したエネルギーバインダを赤リン系発煙組成物に使用することにより、赤外線吸収率の大きい物質を多量に発生させることが知られている(例えば、特許文献5参照)。
赤リン系発煙組成物の製造には、アセトン、酢酸ブチル、トルエン等が使用されるが、エネルギーバインダを使用した赤リン系発煙組成物を製造するときのバインダを溶かす溶剤にはアセトンを使用する。この理由は、アセトンがエネルギーバインダを溶かすことはもちろん、アセトンが作業者に対する健康への負荷が少ないこと、価格が安いこと等から最も多用されている。赤リンの被覆材がアセトンに溶けることがなければ、バインダが溶けた溶剤と被覆された赤リンとを混ぜても、被覆材が溶剤によって溶けることがない。
エネルギーバインダを赤リンと混ぜて赤リン系発煙組成物を製造する場合は、エネルギーバインダを溶剤に溶かし、エネルギーバインダが溶剤に溶けた状態で赤リンおよび金属粉等の他成分と混ぜる。混ぜた後、溶剤を揮発させて赤リン系発煙組成物から抜き取る。
従来の液状不飽和有機化合物や固体有機化合物(HB700)を被覆材として使用した赤リンを、エネルギーバインダが溶けた溶剤と混ぜる際に、赤リンをあらかじめ被覆していた液状不飽和有機化合物もしくは固体有機化合物が溶剤に溶け出し、溶剤が揮発した後に赤リンの被覆が取り除かれるという欠点が明らかになった。
ただし、エネルギーバインダが混ぜられた赤リン系発煙組成物を加圧成型によりペレットにすると、ペレットが空気と接触する面積は、ペレットの表面積だけに限られ、ペレット内部の赤リンはエネルギーバインダを介して押し固められているので、直接空気と接触することはない。赤リン系発煙組成物を混ぜ、溶剤を揮発させる時と、溶剤が揮発してからペレットに加圧成型するまでの間は、空気と接触することになる。
この赤リンが空気と接触している期間は、赤リン系発煙組成物をペレットに加圧成型する作業者がPH3ガスに晒され、不快な臭いを感じるときである。この不快な臭いは、濃度的には人体に悪影響を及ぼすものではないが、人によっては頭痛、吐き気を感じることもある。
非特許文献2によれば、被覆材に使われている樹脂がアセトンによく溶けるか、被覆材に使われている樹脂がアセトンに溶けるか、被覆材に使われている樹脂がアセトンに少し溶けるか、被覆材に使われている樹脂がアセトンに溶けないかを×、△、○、◎で示し、ポリアミド△、ポリウレタン△、エポキシ樹脂×、フェノール樹脂◎であった。
エポキシ樹脂で被覆された赤リンが、赤リン系発煙組成物の製造には最も不適であり、ポリアミド、ポリウレタンで被覆された赤リン系発煙組成物もあまり適さないことが分かった。それに反し、フェノール樹脂で被覆した赤リンであれば、赤リン系発煙組成物を製造する際、バインダを溶かした溶剤に赤リンの被覆材が溶け出す可能性がないことが予想される(例えば、非特許文献2参照)。
特開昭49−134815号公報 特開平11−322312号公報 特公昭60−42194号公報 特公昭49−7207号公報 特開2005−119896号公報 Improvements in Stability of Red Phosphorus. 27th International Pyrotechnics Seminar -Special Session on Red phosphorus P879〜886 Tuesday July 18th/Grand Junction. Colorado.(赤リンの安定性改良.第27回国際火工品セミナー.赤リンに関する特別セッション) 研究用総合機器カタログ 80000 2003→2005(アズワン株式会社発行)
以上のように、従来の赤リン系発煙組成物において、赤リンは、赤リンの粒子が有機化合物で被覆されているが、アセトンのような有機溶剤を使用することによって、赤リンを被覆している有機化合物が溶解するという欠点があった。特に、赤リンとエネルギーバインダ(例えば、GAP)とを混合する際に、溶剤によっては、人体に悪影響を及ぼすPH3ガスが発生するという問題があった。
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、赤リン系発煙組成物の製造中にPH3ガスの発生を抑えることが可能な赤リン系発煙組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前述した諸問題を解決するために鋭意研究した結果、フェノール樹脂で被覆した赤リンを、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとともに混合すると、製造中でのPH3ガスの発生が抑えられることを見い出した。
また、本発明者らは、フェノール樹脂で被覆した赤リンを、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、ポリアルキレングリコールとともに混合すると、製造中でのPH3ガスの発生が抑えられることを見い出した。
さらに、本発明者らは、フェノール樹脂で被覆した赤リンを、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、フッ素ゴムとともに混合すると、製造中でのPH3ガスの発生が抑えられることを見い出した。
そこで、本発明に係る赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとを有することを特徴とする。
また、本発明に係る別の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、ポリアルキレングリコールとを有することを特徴とする。
また、本発明に係るさらに別の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、フッ素ゴムとを有することを特徴とする。
本発明において、エネルギーバインダは、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれる。
ポリアルキレングリコールは、水酸基を含む結合剤であり、燃焼時に水分を生成するため、リン酸の生成に必要な水分を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くでき、また、成型した場合、破壊強度を高くする性能を有する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等がある。
フッ素ゴムとしては、例えば、バイトンA(デュポンパフォーマンスエラストマー社製の登録商標)が知られている。バイトンAは、VF2(vinylidene fluoride)およびHFP(hexafluoropropylene)を66%含むフッ素化された炭化水素ポリマーであり、燃焼時に多量の熱を発生するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することで、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度が高くなる性能を有する。また、成型した場合、破壊強度が高くなる性能を有する。
酸化剤は、硝酸塩として、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸ナトリウム等があり、硫酸塩として、硫酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬等があり、過硫酸塩として、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸バリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等があり、酸化物として、二酸化マンガン、酸化第二鉄、二酸化珪素等がある。
金属粉としては、マグネシウム、アルミニウム、珪素等がある。
本発明に係る赤リン系発煙組成物の製造方法は、アセトンを用いてエネルギーバインダを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にすることを特徴とする。
本発明に係る別の赤リン系発煙組成物の製造方法は、アセトンを用いてエネルギーバインダとポリアルキレングリコールを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にすることを特徴とする。
本発明に係るさらに別の赤リン系発煙組成物に係る製造方法は、アセトンを用いてエネルギーバインダとフッ素ゴムとを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にすることを特徴とする。
本発明は、溶剤としてアセトンを用いる赤リン系発煙組成物の製造方法において、耐溶剤性の高いフェノール樹脂を被覆した赤リンを使用するので、従来のエポキシ樹脂を被覆した赤リンを使用する製造方法に比べてPH3ガスの発生を大きく抑制でき、作業中に作業者に頭痛・吐き気等を感じさせることがないという利点がある。
また、本発明は、結合剤兼固形剤(バインダ)としてエネルギーバインダ、ポリアルキレングリコールまたはフッ素ゴムを使用しても、バインダを溶かすために使用する溶剤によって赤リンのフェノール樹脂の被覆が溶け出ださず、赤リン系発煙組成物の製造中に、赤リンと空気中の水分との反応によって発生する人体に有毒なPH3ガスを抑えることができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
本発明が適用される赤リン系発煙組成物としては、特許文献5に開示されるように、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとから成る赤リン系発煙組成物(第一の赤リン系発煙組成物)がある。
赤リンは、燃焼することにより、赤外線遮蔽の要因であるリン酸を生成し、酸化剤と金属粉とは、赤リンを燃焼させるための燃焼熱を供給する。
酸化剤は、硝酸塩として、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸ナトリウム等があり、硫酸塩として、硫酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬等があり、過硫酸塩として、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸バリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等があり、酸化物として、二酸化マンガン、酸化第二鉄、二酸化珪素等がある。
金属粉としては、マグネシウム、アルミニウム、珪素等がある。
エネルギーバインダは、燃焼剤兼結合剤であり、燃焼時に発熱反応するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度を高くする性能を有する。エネルギーバインダとしては、例えば、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれる。
本発明が適用される第二の赤リン系発煙組成物は、赤外線遮蔽の要因であるリン酸の煙濃度が従来より高い赤リン系発煙組成物を構成するために、第一の赤リン系発煙組成物にポリアルキレングリコールを添加している。
ポリアルキレングリコールは、水酸基を含む結合剤であり、燃焼時に水分を生成するため、リン酸の生成に必要な水分を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くでき、また、成型した場合、破壊強度を高くする性能を有する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等がある。
本発明が適用される第三の赤リン系発煙組成物は、赤外線遮蔽性能を保持しつつ、破壊強度、燃焼速度の制御範囲が広い赤リン系発煙組成物を構成するために、第一の赤リン系発煙組成物にフッ素ゴムを添加している。
フッ素ゴムとしては、例えば、バイトンA(デュポンパフォーマンスエラストマー社製の登録商標)が知られている。バイトンAは、VF2(vinylidene fluoride)およびHFP(hexafluoropropylene)を66%含む結合剤であり、燃焼時に多量の熱を発生するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することで、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度が高くなる性能を有する。また、成型した場合、破壊強度が高くなる性能を有する。
ところで、赤外線遮蔽発煙組成物において、赤リンは、酸化剤、金属、非金属の反応熱により気化する。
4P(赤リン)+ 燃焼熱 → P4(g) ・・・(式1)
大気中の酸素と反応して五酸化リンを生成する。
4(g)+ 5O2 → 2P25 + 熱 ・・・(式2)
五酸化リンは、大気中の水分と反応してリン酸を生成する。
25 + 3H2O → 2H3PO4 + 熱 ・・・(式3)
このリン酸(水和物)は、赤外線を吸収する性質を有しており、その赤外線吸収特性は、図1に示すリン酸スペクトルのリファレンスシートによる赤外線吸収スペクトルで示される波形とほぼ一致する。
また、ここでは8〜12μm帯において、赤外線吸収特性が特に良いことが分かる。
上記の反応を100%実現することが理想であるが、赤リンの含有量を増加させると、式1の赤リンを気化させるための、酸化剤、金属、非金属の反応による、燃焼熱が不足し、結果として未反応の赤リンが生じる。
また、式3は大気中の水分という気象条件に左右されるため、大気中の水分が少ないと、リン酸煙の濃度が減少してしまう。
そこで、本発明者は、赤リンの気化を効率良く行うとともに成型強度を維持する成分として結合剤に注目した。
従来の、ブタジエン等の一般に使用されている結合剤は、燃焼する際に吸熱反応を示すため、赤リンの気化に必要な式1に示す燃焼熱を奪ってしまう。
このことから、第一の赤リン系発煙組成物では、エネルギーバインダと呼ばれる燃焼剤兼結合剤を用いることとした。このエネルギーバインダは、従来一般に使用されている結合剤と違って燃焼する際に発熱反応を示すため、赤リンを気化させるために必要な式1に示す燃焼熱を補足することができる。そのため、主剤の赤リンの含有量を減らしたり、酸化剤、金属等を増やしたりすることなく、赤リンを完全に気化させることができる。
さらに、式3の五酸化リンからリン酸の生成を効率良く行うため、大気中の水分を補足することに注目し、燃焼時に水分を生成する成分を鋭意研究した。その結果、水酸基(−OH基)を多く含むポリアルキレングリコールを用いることで、分解時に水分(H2O)を生成し、式3の反応に必要な水分を補足できることが分かった。
また、燃焼する際に吸熱反応を示すため、赤リンの気化に必要な式1に示す燃焼熱を補うバインダとして、従来一般に使用されている結合剤と違って燃焼する際に発熱反応を示すバイトンを用いることにより、赤リンを気化させるために必要な式1に示す燃焼熱を補足することができる。そのため、主剤の赤リンの含有量を減らしたり、酸化剤、金属等を増やしたりすることなく、完全に気化させることができる。
そこで、本発明者は、主成分として赤リン、酸化剤として硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩あるいは酸化物、可燃剤として金属粉、結合剤としてエネルギ−バインダおよびポリアルキレングリコールを有する第二の赤リン系発煙組成物を見い出した。
同時に、本発明者は、主成分として赤リン、酸化剤として硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩あるいは酸化物、可燃剤として金属粉、結合剤としてエネルギ−バインダおよびバイトンを有する第三の赤リン系発煙組成物を見い出した。
前記3つの結合剤に共通する特徴は、赤外線遮蔽性能が従来よりも格段に向上する点である。その理由は、式1から式3に示した赤リンからリン酸を生成する反応が、従来の結合剤よりも、効率良く進むためだと思われる。
また、付加的性能である燃焼速度と破壊強度に関しては、以下に示すような相反する特徴を示す。
エネルギーバインダは、燃焼剤兼結合剤であるため、燃焼速度が比較的大きく、成型した時の破壊強度は比較的小さい傾向がある。
逆に、水酸基を多く含むバインダであるポリアルキレングリコールは、燃焼速度が比較的小さく、成型した時の破壊強度は比較的大きい傾向がある。
第二の赤リン系発煙組成物および第三の赤リン系発煙組成物の大きな特徴は、結合剤にエネルギーバインダとポリアルキレングリコールとの組合せ、またはエネルギーバインダとバイトンAとの組合せのいずれかを混合したことにより、赤外線遮蔽性能が従来よりも向上し、所定の成型強度を維持できることにある。
しかも、2組の結合剤は、破壊強度や燃焼速度に対して相反する特性をもつため、混合することによって幅広い破壊強度や燃焼速度の特性を有する発煙組成物を実現できる。
通常、破壊強度や燃焼速度は、結合剤の含有量の増減や酸化剤、金属等の含有量を増減させることによって調整できるが、組成中の成分によって制御範囲は限られてしまう。
しかし、この赤外線遮蔽性能が高い2種類の結合剤の相反する特性を利用して、組成物中の結合剤の配合比を調節することにより、赤外線遮蔽性能を向上しつつ破壊強度や燃焼速度の幅広い制御範囲を確保することができる。
この幅広い制御範囲によって、様々な製品の要求を満たすことができる。
例えば、遠方に放出する場合は、破壊強度を高くすることによって放出圧力に耐えられる赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成され、逆に、近距離で成型品を粉砕し瞬時に煙幕を形成させる場合は、破壊強度を低くした赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成される。
また、長時間の煙幕を持続させる場合は、燃焼速度を低くした赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成され、逆に短時間の煙幕で十分な場合、燃焼速度を高くした赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成される。
しかし、本発明が適用される第一の赤リン系発煙組成物は、HB700のようにエポキシ樹脂などに被覆された赤リンは、製造過程においてPH3ガスを発生することが知られている。また、第二および第三の赤リン系発煙組成物は、公知ではないが、第一の赤リン系発煙組成物を、(1)赤外線遮蔽の要因であるリン酸の煙濃度が従来より高い組成物とする、および(2)赤外線遮蔽性能を保持しつつ、破壊強度、燃焼速度の制御範囲が広い組成物とする第二の赤リン系発煙組成物および第三の赤リン系発煙組成物においても、同様にHB700のようにエポキシ樹脂などに被覆された赤リンは、製造過程においてPH3ガスを発生することが確認できた。
(実験例)
次に、エポキシ樹脂で被覆された赤リンとフェノール樹脂で被覆された赤リンを用いて、赤リン系発煙組成物の製造過程においてPH3ガスが発生するか否かを確認した。
本実験例では、下記の3つの赤リン系発煙組成物を作製した。
第一の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂を被覆した赤リンを用いて、エネルギーバインダをアセトンの溶剤に溶解した溶液中に、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを混合した。
第二の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂を被覆した赤リンを用いて、エネルギーバインダとポリアルキレングリコールとをアセトンの溶剤に溶解した溶液中に、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを混合した。
第三の赤リン系発煙組成物は、フェノール樹脂を被覆した赤リンを用いて、エネルギーバインダとフッ素ゴムとをアセトンの溶剤に溶解した溶液中に、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを混合した。
また、第一ないし第三の赤リン系発煙組成物は、初期生成時は粉末状であるが、この粉末状赤リン系発煙組成物を、例えば、約120MPaのプレス圧力で圧搾成型し、例えば、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状にした。
次に、第一ないし第三の赤リン系発煙組成物について、製造過程におけるPH3ガスの発生を確認するための実験例を詳細に述べる。
使用した赤リンは、日本化学工業株式会社製の商品名ヒシガードLP(以下、LP(国産)と、独国のクラリアント社製のHB700(以下、HB(輸入))である。LP(国産)は、フェノール樹脂で赤リンを被覆している。赤リンの純度は96.8%、残りがフェノール樹脂である。HB(輸入)は、エポキシ樹脂で赤リンを被覆している。赤リンの純度は96.5%、残りがエポキシ樹脂である。
(実験例方法)
被覆された赤リンが、溶剤、水によってPH3ガスを発生しないことを確認するため、フェノール樹脂で被覆されたLP(国産)とエポキシ樹脂で被覆されたHB(輸入)との比較を行った。
比較実験例は、200ccビーカにLP(国産)10gを入れたものと、HB(輸入)10gを入れたものを3個づつ計6個を用意した。アセトン100cc、水100cc、酢酸メチル100ccをLP(国産)の入ったビーカに別々に入れ、LP(国産)とアセトン、水、酢酸メチルでPH3が発生するか否かを調べた。
同様に、アセトン100cc、水100cc、酢酸メチル100ccをHB(輸入)の入ったビーカにも別々に入れ、HB(輸入)とアセトン、水、酢酸メチルでPH3が発生するか否かを調べた。
各ビーカに溶剤を入れた直後に密封し、室内に室温のまま放置した。
赤リンは、水と反応してPH3ガスを発生するので、水とLP(国産)とを直接混ぜた試料1が発生するPH3量と、水とHB(輸入)とを直接混ぜた試料2が発生するPH3量を求めて比較することにより、LP(国産)、HB(輸入)の被覆の違いによる水と赤リンとの反応によるPH3ガスの発生量を調べた。同様に、アセトンとLP(国産)とを混ぜた試料3と、アセトンとHB(輸入)とを混ぜた試料4とにより、アセトンと赤リンの被覆材の違いによるPH3ガスの発生量を調べた。また、アセトン以外の溶剤として酢酸メチルを用いてPH3ガスの発生量を調べた。酢酸メチルとLP(国産)とを直接混ぜた試料5が発生するPH3量、酢酸メチルとHB(輸入)とを直接混ぜた試料6が発生するPH3量とにより、酢酸メチルと赤リンの被覆の違いによるPH3ガスの発生量を調べた。
水、アセトン、酢酸メチルと、LP(国産)、HB(輸入)との直接の反応によるPH3ガスの発生量は、試料1〜6ともそれぞれ、被覆赤リン10gを水、または溶剤50ccとともに容量200ccのビーカに入れ(試料入りビーカ)、ビーカの上をポリエチレンシートで覆って蓋をすることにより密閉をした。各試料入りビーカは1日経過後、検知管をポリエチレンシートに突き刺してビーカ内に発生したPH3ガスの測定を行った。その後、ポリエチレンシートを交換することにより再び密閉して、次の経過日での測定に供した。以下、同様の測定により7日間の経過日まで測定を行った。
図2はフェノール樹脂で被覆されたLP(国産)を、水、アセトン、酢酸メチルに浸して、7日間経過した場合のPH3ガスの発生量と経過日数との関係を示す。
この結果から、アセトン、酢酸メチルは、LP(国産)と反応してPH3を発生しないことが分かった。しかし、水とLP(国産)とは反応し、PH3ガスを発生することが分かった。
図3は、エポキシ樹脂で被覆されたHB(輸入)を、水、アセトン、酢酸メチルに浸して、7日間経過した場合のPH3ガスの発生量と経過日数との関係を示す。
この結果から、アセトン、酢酸メチルは、HB(輸入)と反応してPH3ガスを発生しないことが分かった。しかし、水とHB(輸入)とは反応し、PH3ガスを発生することが分かった。
また、LP(国産)とHB(輸入)とが水と反応してPH3ガスを発生する量は、1日目で、LP(国産)が1ppmであるのに比べ、HB(輸入)が5ppmであった。7日目では、LP(国産)が2ppmであり、HB(輸入)が17ppmであった。このことから、フェノール樹脂で被覆した赤リンが、エポキシ樹脂で被覆した赤リンに比べ、水との反応に対して効果があることが分かった。
LP(国産)、HB(輸入)とも、アセトン、酢酸メチルと反応してPH3ガスを発生しないことが分かった。しかし、HB(輸入)が水と反応してPH3ガスを発生する量が、LP(国産)より多いことが確認できた。このことから、HB(輸入)は水と反応し、被覆材であるエポキシ樹脂はアセトンに溶けやすいので、赤リン系発煙組成物製造中に被覆が破壊しやすいことが分かった。
次に、本発明を実施例で説明する。
赤リン(LP(国産)、赤リン(HB(輸入))を使って赤リン系発煙組成物を製造することにより、実際の製造作業中のPH3ガスの発生の有無とできた赤リン系発煙組成物の性能とを調べた。
結果を表1に示す。
Figure 0004969842
表1において、作業中の臭いの程度を臭いの段階として、下記のA,Bに分けた。
A:臭いが無いか、少し臭いがするが作業に影響なし。
B:臭いが強く5分程度の作業で、人によっては吐き気を催す。
(実施例1)
GAP5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(LP(国産)65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム22.5%、可燃剤としてのMg7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
この作業中、作業者が異臭を感じたり、頭痛等の不快な症状を訴えることは無かった。臭いの段階としてはAであった。
(実施例2)
GAP2.5%とPEG2.5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(LP(国産)65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム22.5%、金属粉としてのマグネシウム粉末7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
この作業中、作業者が異臭を感じたり、頭痛等の不快な症状を訴えることは無かった。臭いの段階としてはAであった。
(実施例3)
GAP1.5%、バイトンA1.5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(LP(国産)65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム24%、金属粉としてのマグネシウム粉末8%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
この作業中、作業者が異臭を感じたり、頭痛等の不快な症状を訴えることは無かった。臭いの段階としてはAであった。
(比較例1)
GAP5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての赤リン(HB(輸入))65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム22.5%、可燃剤としてのMg7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
この作業中、作業者は攪拌作業中に異臭を感じ、それ以後、防毒マスクを着用して作業を継続した。臭いの段階としてはBであった。
(比較例2)
GAP2.5%とPEG2.5%をアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての(HB(輸入))65%、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム2.5%、金属粉としてのマグネシウム粉末7.5%を順に添加して、均一な組成になるまで攪拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで攪拌し続ける。そして粉末にする。次に、攪拌した混合物の粉末を金型に入れ、プレスを用いて約120MPaの圧力で圧搾成型し、薬量1.5g、径10mmの円柱ペレット状に製造成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図4で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、8〜12μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
この作業中、作業者は攪拌作業中に異臭を感じ、それ以後、防毒マスクを着用して作業を継続した。臭いの段階としてはBであった。
(結論)
本実施例において、赤外線透過率は、黒体炉(熱源)とIRスペクトルアナライザーとの距離を1mとし、発煙組成物を燃焼させる前のデータ(Io)を得た後、完全に燃焼させ燃焼チャンバ内の煙をファンで攪拌し、煙が均一になったところで、データ(I)を得て、この燃焼前後の強度比から算出している。
表1には、実施例1〜3と比較例1〜2の組成、およびペレットを燃焼させた際の赤外線透過率、発煙濃度も示す。ここで、発煙濃度の高い数値は赤外線吸収の効果が高いものである。
発煙濃度C(g/m3)は、この赤外線透過率(%)と計測距離L(m)とリン酸の吸収係数α(m2/g)から、光の減衰を表す次式のランバートベール則によって算出した。
(赤外線透過率)=exp(−α・C・L)×100
ここで、expは、指数関数exponentialを表し、吸収係数α(赤リンの吸光係数α:0.38)は物質固有値である。発煙物質はリン酸が主となるため、実験例例組成物中では定数となる。
次に、発煙濃度について説明する。
赤リン、酸化剤、可燃剤およびバインダの配合比が等しく、バインダの種類がGAP(エネルギーバインダ)の場合、赤リンを65重量%入れた実施例1は、赤外線透過率52.4%、発煙濃度(g/m3)1.70であり、赤リンの量を65重量%入れGAPを用いた比較例1は、赤外線透過率51.5%、発煙濃度(g/m3)1.73となり、LP(国産)を用いた実施例1とHB(輸入)を用いた比較例1とで性能的に差が見られなかった。
また、赤リン、酸化剤、可燃剤およびバインダの配合比が等しく、バインダの種類がGAPとPEG(ポリアルキレングリコール)の混合物の場合、赤リンを65重量%入れた実施例2は、赤外線透過率50.6%、発煙濃度(g/m3)1.79であり、赤リンの量を65重量%入れた比較例2は、赤外線透過率50.8%、発煙濃度(g/m3)1.76となり、LP(国産)の赤リンを用いた実施例2とHB(輸入)の赤リンを用いた比較例2とで性能的に差が見られなかった。
また、赤リン、酸化剤、可燃剤の種類が同じでバインダをバイトンAに変更した実施例3では、赤外線透過率48.2%、発煙濃度(g/m3)1.88であり、赤外線透過量、赤外線透過率に少し差が見られたが、これは赤リンと酸化剤、可燃剤、バインダの組成比率、種類の違いによるものである。
実施例1,2,3、比較例1,2で示したとおり、赤リンの被覆材を従来のエポキシ樹脂からフェノール樹脂の被覆に変えても、それから製造する赤外線発煙組成物の赤外線遮蔽性能には影響が無いことが分かった。しかも、フェノール樹脂を赤リンの被覆材に使用することにより、赤外線発煙組成物の製造中の有毒なPH3ガスの発生が抑えられることができ、ひいては作業性もよくなり、製造のコスト低減につながることが分かった。
本発明に係る赤外線発煙組成物は、煙幕を生成する盗難防止装置の発煙剤として組み込み、保護物件を煙幕で保護する際、可視光線波長域と赤外光線波長域を遮断することができるので、侵入者が赤外線ゴーグルや赤外線フィルタを装着したビデオカメラ等で透視し犯罪行為を続行したりあるいは逃走したりする等の行為を防御することに利用できる。
リン酸の赤外線吸収スペクトル(波形図)を示すグラフである。 LP(国産)を、水、アセトン、酢酸メチルに浸したときのPH3ガスの発生経過を示すグラフである。 HB(輸入)を、水、アセトン、酢酸メチルに浸したときのPH3ガスの発生経過を示すグラフである。 赤外線透過率の計測装置の模式図である。

Claims (6)

  1. フェノール樹脂で被覆された赤リンと、
    硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、
    金属粉と、
    エネルギーバインダと
    ポリアルキレングリコールと
    から成ることを特徴とする赤リン系発煙組成物。
  2. フェノール樹脂で被覆された赤リンと、
    硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、
    金属粉と、
    エネルギーバインダと、
    フッ素ゴムと
    から成ることを特徴とする赤リン系発煙組成物。
  3. 前記エネルギーバインダは、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤リン系発煙組成物。
  4. 前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項記載の赤リン系発煙組成物。
  5. 請求項1記載の赤リン系発煙組成物の製造方法において、
    アセトンを用いてエネルギーバインダとポリアルキレングリコールを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にする
    ことを特徴とする赤リン系発煙組成物の製造方法
  6. 請求項記載の赤リン系発煙組成物に係る製造方法において、
    アセトンを用いてエネルギーバインダとフッ素ゴムとを溶解させた溶液中に、フェノール樹脂で被覆された赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉とを順に添加し、均一な組成物になるまで攪拌してペースト状の混合物に生成し、このペースト状混合物を乾燥するまで攪拌し粉末状にする
    ことを特徴とする赤リン系発煙組成物の製造方法。

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