JP2005119896A - 赤外線遮蔽発煙組成物 - Google Patents

赤外線遮蔽発煙組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2005119896A
JP2005119896A JP2003354559A JP2003354559A JP2005119896A JP 2005119896 A JP2005119896 A JP 2005119896A JP 2003354559 A JP2003354559 A JP 2003354559A JP 2003354559 A JP2003354559 A JP 2003354559A JP 2005119896 A JP2005119896 A JP 2005119896A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
infrared
smoke
red phosphorus
weight
binder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003354559A
Other languages
English (en)
Inventor
Haruyuki Arisawa
治幸 有澤
Shotaro Iwai
正太郎 岩井
Ryoji Mizuno
亮二 水野
Yoshimasa Suzuki
慶正 鈴木
Yasunori Matsunaga
康紀 松永
Yoshimi Suzuki
義美 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Steel Works Ltd
Nippon Koki Co Ltd
Technical Research and Development Institute of Japan Defence Agency
Original Assignee
Japan Steel Works Ltd
Nippon Koki Co Ltd
Technical Research and Development Institute of Japan Defence Agency
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Steel Works Ltd, Nippon Koki Co Ltd, Technical Research and Development Institute of Japan Defence Agency filed Critical Japan Steel Works Ltd
Priority to JP2003354559A priority Critical patent/JP2005119896A/ja
Publication of JP2005119896A publication Critical patent/JP2005119896A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】
煙生成剤の主剤として赤リンを用いた赤外線遮蔽発煙組成物において、赤外線の吸収効率を改善(煙濃度を向上)し、可視光線波長域はもとより赤外線波長域で遮蔽効果が著しく高く、特に8〜12μmの遠赤外線波長域で赤外線の透過性が著しく低下する。
【解決手段】
赤リンと、硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとを有し、例えば、赤リン55〜75重量%と、酸化剤5〜30重量%と、金属粉5〜10重量%と、エネルギーバインダ5〜20重量%とから成る。ここで、エネルギーバインダは、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methyl)methyloxetane)またはAMMO(3-azido metyl-3-methyloxetane)から選ばれ、酸化剤は、明礬である。

Description

本発明は、赤外線域で不透過な煙を発生し、赤外線域の遮蔽を可能とする赤外線遮蔽発煙組成物に関する。
具体的には、対象物の発する赤外線に対する探知から所定時間の間免れるカムフラージュに利用したり、また、金融施設や対象物などのエリアにおける保護物件を煙により保護する際、侵入者による赤外線透視を防止するために利用する。
従来、カムフラージュなどに用いる発煙組成物は、例えば六塩化エタン(以下、HCと称する)系発煙組成物(HC、酸化亜鉛、アルミニウム粉)、四塩化チタン、赤リン系、黄リン系などの発煙組成物がある(例えば、非特許文献1参照)。
これら発煙組成物は、可視光遮蔽性が優れており、発煙飛しょう体、または信号用煙薬として広く用いられている。
しかしながら、近年、技術革新に伴い、監視手段においては、付加的に赤外線探知装置および赤外線映像装置を活用することが一般化しているため、従来の可視光線を遮蔽するだけの発煙組成物では、赤外線探知装置などに対して有効ではない。
これらの問題を解決するために、従来、赤外線遮蔽に有効な発煙組成物として、赤リン、金属粉およびセシウム化合物などの組成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この発煙組成物では、発生する煙を対象物の周りに展開させると、対象物から放射される熱線を散乱したり、吸収することにより赤外線を放射する対象物を遮蔽し、探知装置に対して誤認させることができるとされている。
また、ここでは、対象物から発生した赤外線は、CO2および水蒸気のような大気成分により一定の波長の赤外線は選択的に吸収されるので、赤外線の探知装置は、0.7〜1.5μm、2〜2.5μm、3〜5μmおよび8〜12μmにあるいわゆる大気の「窓」で有利に作動する。8〜12μmの範囲において、煙、もやおよび通常の煙による妨害が最小となるので、特に8〜12μmの範囲で赤外線放射の高い吸収または反射に有効な発煙組成物が要望されている。
このため、特許文献1では、赤外線波長域での放射を吸収するためにセシウム化合物が有効であり、赤リンのような煙生成剤、並びに金属粉末に赤外線波長域で放射を吸収するセシウム化合物を付加的に混入した発煙組成物が、特に3〜5μm、8〜12μmの範囲で赤外線放射の高い吸収または反射するのに有効であるとしている。
しかしながら、セシウム化合物を添加すると、一定の波長の赤外線、特に3〜5μmもしくは8〜12μmの波長を有する赤外線の透過性が著しく低下することが何に起因するのか従来確認されておらず、原因を解明すべくセシウム塩の近赤外線範囲の振動、吸収現象などの検討が為されたようであるが、十分な理論を見い出すことはこの先の実験にゆだねるとされている。
また、特許文献1では、セシウム化合物を混入しない赤リン(0.65Kg)から成る煙生成剤と、酸化鉄(0.15Kg)、アルミニウム粉末(0.15Kg)およびマグネシウム粉末(0.15Kg)から成る発熱剤と、エラストマーまたはバインダとから成る発煙組成物は、3.5μmおよび10μmでは50%より低い遮蔽であったことが開示されている。
特公昭60−42194号(第2頁、第3頁、第4頁例2) 「AMCP706-185 Engineering Design Handbook Military Pyrotechnic Series」(米国),HEADQUARTERS,U.S.ARMY MATERIEL COMAND社,1967年4月18日発行,7-11
しかしながら、セシウム化合物を混入しない赤リンから成る煙生成剤と、発熱剤と、バインダとから成る発煙組成物は、可視光線波長域で白煙を生成する発煙組成物として公知であり、付加的に赤外線遮蔽効果が認められている。
この赤リンは、入手も容易であり、かつ経済的にも安価なので、赤外線波長域で遮蔽効率を高くすることができれば、赤外線遮蔽発煙組成物としては優れたものになると考えられ、遮蔽効率を改善することが課題であった。
また、特許文献1で示されているように、例えば、煙生成剤として赤リン、酸化鉄、アルミニウム粉末およびマグネシウム粉末とから成る発煙成分と、これに加えて、圧縮成型体にするためにバインダが使用されているが、このバインダにはブタジエンゴムなどが使用されている。
このような従来のバインダは、圧縮成型体の形状を維持するための役目を持つもので、赤リンと発熱剤の反応により煙を効率よく生成するためには本来不要のものであり、これを添加させることにより、赤リンと発熱剤の反応温度を低下させ、逆に、リン酸の生成を阻害するという問題があった。
また、赤外線遮蔽発煙組成物を燃焼させることによって得られる赤外線遮蔽効果の原理としては、赤外線の散乱、吸収、放射の3つの要因がある。赤外線の散乱は、可視光では有効であるが、赤外線の散乱効果は小さく(Mie理論より)、赤外線の放射は、赤外線遮蔽発煙組成物の燃焼により生じた反応熱および水和熱が反応後次第に低下していくので、遮蔽の持続性がなくなるという問題があった。
これに対し、赤外線の吸収は、発煙組成物が燃焼した際に赤外線吸収率の大きい物質を多量に発生させることにより、対象物から発生される赤外線を吸収し、赤外線域の遮蔽を有効にするという利点があった。
そこで、本発明の目的は、この中で一番大きい有効な要因が赤外線の吸収であることに着目し、煙生成剤の主剤として赤リンを用いた赤外線遮蔽発煙組成物において、赤外線の吸収効率を改善し、可視光線波長域はもとより赤外線波長域で遮蔽効果が著しく高く、特に8〜12μmの遠赤外線波長域で赤外線の透過性が著しく低下する赤外線遮蔽発煙組成物を提供することにある。
請求項1に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、赤リンと、硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとを有する。
ここで、硝酸塩としては、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸ナトリウムなどがあり、硫酸塩としては、硫酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬などがあり、過硫酸塩としては、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸バリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなどがあり、酸化物としては、二酸化マンガン、酸化第二鉄、二酸化珪素などがある。また、金属粉としては、マグネシウム、アルミニウム、珪素などがある。
請求項2に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、請求項1記載の赤外線遮蔽発煙組成物において、エネルギーバインダが、GAP(グリシジルアジドポリマー:Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-ビス(アジドメチル)メチルオキセタン:3,3-bis(azido methyl)methyloxetane)またはAMMO(3-アジドメチル-3-メチルオキセタン:3-azido metyl-3-methyloxetane)から選ばれる。
請求項3に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、請求項1または請求項2記載の赤外線遮蔽発煙組成物において、赤リン55〜75重量%と、酸化剤5〜30重量%と、金属粉5〜10重量%と、エネルギーバインダ5〜20重量%とを有する。
赤外線遮蔽は、煙濃度に大きく影響され、煙濃度が高い程、遮蔽性能が向上することが明らかである。そこで、煙濃度を高めるためには、次の1)〜3)が考えられる。
1)発煙剤自身の発煙率の向上、すなわち、限られた薬量で、発煙量を向上させる。
2)単位時間あたりの発煙量の増加、すなわち、煙は、一定の空間に蓄積される訳でなく流動的であり、一定の空間の煙濃度を高めるためには、単位時間あたりの発煙量(燃焼時間)を向上させる必要がある。
3)発煙剤全体の質量の増加、すなわち、組成に拘わらず、薬量を増加すれば発煙量が増加することは明らかである。しかし、製品を考える場合、薬量が少なく費用対効果の高いものが必要である。
このうち、発煙剤の組成によるのは、1),2)となる。以上を考慮して請求項3の数値限定を行った。
先ず、赤リン55〜75重量%について説明する。1)の理由から、赤リン含有量が多い方が好ましいが、その分、赤リンの反応に必要な熱量を供給する酸化剤、金属、エネルギーバインダの量が減少してしまうため、燃焼中断や極端に燃焼時間が長くなり、2)の理由のように単位時間当たりの発煙量(煙濃度)が減少して、その結果、遮蔽性能が落ちてしまう。その上限を、実験の結果から75%とし、下限55%については、特許文献1に開示されており比較例とした比較例B(赤リン60%)に対して、エネルギーバインダを用いることにより、赤リン55重量%で同等の発煙量を有し、燃焼時間も短くなることから、範囲を決定した。
次に、エネルギーバインダ5〜20重量%について説明する。エネルギーバインダは、赤リンの反応に必要な熱量を供給する役割があるため、量が多い方が好ましいと考えられるが、バインダとしての役割も有するため、量が多すぎると燃焼残渣が外界からの酸素の供給を遮断してしまう。また、その分、本来、熱量供給剤としての性能を持つ、酸化剤、金属の量が減少するため、結果として、燃焼中断や燃焼時間が極端に長くなることから、その限界点を20重量%とし、下限5重量%については、結合剤としての役割を果たすための限界量から決定した。
次に、酸化剤5〜30重量%と、金属粉5〜10重量%とについては、赤リンとエネルギーバインダの範囲から、これらを可能にする範囲とした。
請求項4に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、酸化剤が、明礬である。明礬には、アンモニウムアルミニウム明礬、カリウムアルミニウム明礬などがある。
本発明の赤外線遮蔽発煙組成物は、赤リンの燃焼効率が良いので、発煙濃度(赤外線吸収)が高く、可視光線波長域はもとより赤外線波長域において遮蔽効果(赤外線吸収)が著しく良い。特に、8〜12μmの遠赤外線波長域に遮蔽効果が顕著に現れる。
以下、本発明を実施形態により説明する。
煙生成剤の赤リンは、次の通り反応する。
Figure 2005119896
Figure 2005119896
(1)式は、赤リンと大気中の酸素が反応して酸化リンを生成し、(2)式は酸化リンと大気中の水が反応してリン酸を生成することを表す。
このリン酸(水和物)は、赤外線を吸収する性質を有しており、その吸収特性は、図1に示すように、リン酸スペクトルのリファレンスシートによる赤外線吸収スペクトルで示される波形とほぼ一致する。また、図1に示すリン酸の赤外線吸収スペクトルでは、8〜12μm帯において赤外線吸収特性が特に良いことが分かる。
従って、好ましい赤外線遮蔽発煙組成物は、高濃度のリン酸を多量に発生させるために、赤リンの反応率を高めること、また、赤リンの含有量をできる限り多くすることが必要である。
このことから、本発明者は、所定の燃焼速度を保つとともに、赤リンを100%効率良く燃焼させて、高濃度のリン酸を多量に生成させることについて鋭意研究した。
そして、硝酸塩などの酸化剤と、GAPなどのエネルギーバインダとでマグネシウムあるいはアルミニウムなどの金属粉が酸化され、この時の発熱によって赤リンが気化し、大気中の酸素と化合して、赤リンが効率よく燃焼し、酸化リンが生成することを見い出した。
そこで、本発明者は、赤外線遮蔽に効果のある因子(成分)を赤外線吸収スペクトルの結果から、赤外線遮蔽性能値である発煙吸収係数(α)と発煙濃度(C)の積(α・C)を算出し、タグチメソッド(品質工学的手法あるいは統計学的手法といわれている。田口玄一「技術開発のための品質工学」日本規格協会(1994))を用いて赤外線遮蔽に影響を与える因子(成分)の解析を試みた。
そこで、表1に示すように、因子に対して要因を設定し、18種類の組成物を混和した。それら組成物を薬量30mg,φ3mmに圧填成形し、試料として燃焼させた。
Figure 2005119896
その結果、図2に示すように、赤外線遮蔽に最も影響を与える因子は、赤リン、金属、バインダの順であることが分かり、さらにこの要因の中では、赤リン、硫酸塩、アルミニウムおよびエネルギーバインダとの組合せが、最も赤外線遮蔽性能が高いという解析結果が得られた。
さらに、この解析結果をもとに実験を繰り返し行った結果、赤リンを主剤とする煙生成剤と、硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダとを含有することで、赤リンの含有量を多くできることと、同じ含有量でもリン酸濃度を増し、赤外線の遮蔽効果(赤外線吸収=発煙濃度)を高めることが分かった。
エネルギーバインダを加えると、赤外線遮蔽効果が高まる理由は、以下の通りと考察できる。
硝酸塩などの酸化剤と、GAPなどのエネルギーバインダによりマグネシウムまたはアルミニウムなどの金属粉が酸化され、この時の発熱によって赤リンが気化し、大気中の酸素と化合し、赤リンが燃焼し、酸化リンが生成し、酸化リンになった後、水分を取り込んでリン酸を生成する。リン酸が吸収に影響を及ぼすことは、図1に示した赤外線スペクトルの吸収特性から明らかであり、このリン酸濃度を増すことが、赤外線吸収効果を高めることとなる。
従来のバインダは、酸化剤と金属粉との燃焼熱により分解されるため、赤リンを反応させるのに必要な熱量を奪うので、リン酸生成に対してマイナス要因であった。
また、エネルギーバインダと従来使用されているバインダの自己熱分解性の大小を比較するため、アルミニウム25重量%および硝酸カリウム重量65%に、エネルギーバインダとしてGAP10重量%を添加した組成物と、アルミニウム25重量%および硝酸カリウム重量65%に、従来バインダとしてHTPB10重量%(水酸基末端ポリブタジエン)を添加した組成物とを用意し、これらの燃焼温度を計算した。
その結果、エネルギーバインダであるGAPは3226度K、従来バインダであるHTPBは2896度Kとなり、エネルギーバインダを使用することにより、反応時の燃焼温度を高くできることが分かり、赤外線の吸収効果の大きいリン酸を従来バインダに比べてより多量に発生させることが可能となった。
一方、従来バインダは、反応熱がエネルギーバインダに比べ低いので、未反応状態の赤リンも多くなり、リン酸へ転換する比率が低下することにより、それにつれて赤外線吸収率も低下した。
本発明の実施例を表2および表3に基づいて説明する。
表2は、本発明の実施例1〜5と比較例A〜Eの組成を示す。
表3は、表2の実施例1〜5と比較例A〜Eについて、赤外線透過率、発煙濃度および燃焼時間を示す。
表2に示す通り、実施例1〜5には本発明に係る赤外線遮蔽発煙組成物を用意した。また、実施例1〜5は、エネルギーバインダとしてGAPを用いた。
なお、本発明に用いるGAPは、少しの硬化剤を含有するものである。例えば、後述するところの実施例あるいは比較例では、GAP自体:硬化剤=83%:13%の割合で含有している。
各実施例の発煙組成物は、エネルギーバインダとしてGAPに溶剤を加えて粘度を低くし、さらに、煙生成剤として赤リン、発熱剤として酸化剤であるカリウムアルミニウム明礬および金属粉であるマグネシウムとを入れて攪拌混和した。
次に、この混和した発煙組成物を常温で一定時間乾燥させて、溶剤を揮発させた。
そして、この発煙組成物を金型に入れ、プレスで圧搾成形し、ペレット(4g円柱ペレット)状に製造した。
また、比較例A,D,Eは、各実施例と同じ成分を用い、比較例Bは、酸化剤に硝酸セシウムとバインダにポリブタジエンを用い、比較例Cは、バインダにポリブタジエンを用いた。これら比較例A〜Eも製造方法においては実施例1〜5と同様とした。
このようにして成形されたペレット(4g円柱ペレット)を、図3で示す燃焼チャンバ(1m×1m×1m)内で燃焼させ、3〜14μm波長域の赤外線透過率(%)を計測した。
赤外線透過率は、黒体炉(熱源)とIRスペクトルアナライザーとの距離を1mとし、発煙組成物を燃焼させる前のデータ(Io)を得た後、完全に燃焼させ燃焼チャンバ内の煙をファンで攪拌し、煙が均一になったところで、データ(1)を得て、この燃焼前後の強度比から算出している。
また、燃焼時間は、約60秒以内であれば有用な範囲とし、測定方法はストップウォッチによる目視で行った。
表3は、実施例1〜5と比較例A〜Eの組成を燃焼させた際の赤外線透過率、発煙濃度および燃焼時間を示す。ここで、発煙濃度の高い数値は赤外線吸収の効果が高いものである。
発煙濃度C(g/m3)は、この赤外線透過率(%)と計測距離L(m)とリン酸の吸収係数α(m2/g)から、光の減衰を表す次式のランバートベール則によって算出した。
(透過率)=exp(−α・C・L)×100
ここで、expは、指数関数exponentialを表す。
次に、表2および表3に基づいて発煙濃度について説明する。
赤リン、酸化剤、金属粉およびバインダの配合比が等しく、バインダの種類がGAP(エネルギーバインダ)とポリブタジエンとで異なる例の場合、赤リンを有効範囲(65重量%)に入れGAPを用いた実施例2は、赤外線透過率57.9%、発煙濃度(g/m3)1.418であり、赤リンの量を有効範囲(65重量%)に入れポリブタジエンを用いた比較例Cは、赤外線透過率63.5%、発煙濃度(g/m3)1.181となり、エネルギーバインダのGAPを用いた実施例2の方が、発煙濃度で20%向上した。
また、赤リンの配合を65重量%と等しくしGAP(エネルギーバインダ)の添加量を増加した例の場合、GAPを20重量%用いた実施例4は、発煙濃度(g/m3)1.620であり、GAPを12重量%用いた実施例2は、発煙濃度(g/m3)1.418となり、GAPを5重量%用いた実施例3は、発煙濃度(g/m3)1.260となり、GAPを増加させた方が、発煙濃度(g/m3)で12%〜28%向上した。
しかし、GAPの配合量を25重量%と増やした比較例Dでは、発煙濃度(g/m3)1.692となり、発煙濃度は向上したが、燃焼が非常に遅く、屋外での使用に耐えられない燃焼速度であった。
また、赤リンの配合を異なる量にしGAPを12重量%と等しく配合した例の場合、赤リンを75重量%入れた実施例5は、発煙濃度(g/m3)1.643であり、赤リンを65重量%入れた実施例2は、発煙濃度(g/m3)1.418となり、赤リンを55重量%入れた実施例1は、発煙濃度(g/m3)1.190となり、赤リンの配合量を増加させると発煙濃度が向上した。
しかし、赤リンを55重量%入れバインダとしてGAP(エネルギーバインダ)を用いた実施例1は、発煙濃度(g/m3)1.190であり、赤リンを65重量%入れバインダとしてポリブタジエンを用いた比較例Cは、発煙濃度(g/m3)1.181となり、実施例1の方は赤リン配合量が比較例Cよりも18重量%も少ないが、GAP(エネルギーバインダ)を用いたことで発煙濃度が向上したことが分かる。
また、赤リン、酸化剤、金属粉およびバインダを同じ組成とし、赤リンの配合量を可能な限り増やした例の場合、赤リンを75重量%入れた実施例5は、発煙濃度(g/m3)1.643であり、赤リンを80重量%入れた比較例Eは、立ち消え(燃焼中断)となり計測不可であった。
Figure 2005119896
Figure 2005119896
次に、表2および表3に基づいて燃焼時間について説明する。
実施例1と比較例Aでは、実施例1の方が燃焼時間が早い。これは、両方ともエネルギーバインダであるGAPを同量(12重量%)としているが、比較例Aは、酸化剤の量を実施例1より10重量%も多く入れたことが主因である。このことは、GAPの量を同量(12重量%)とした実施例2(酸化剤18重量%)と実施例5(酸化剤8重量%)でも同様なことがいえる。
しかしながら、実施例3の酸化剤の量(25重量%)は、実施例4の酸化剤の量(10重量%)より1.5倍も多く入れているが、実施例4の方が僅かであるが燃焼時間が早い。これは、エネルギーバインダであるGAPの量を、実施例3(5重量%)より実施例4(20重量%)の方で3倍多く入れたことが主因である。
また、実施例2と比較例Cでは、バインダの種類以外、他の成分および配合量は同じであるが、実施例2の方で燃焼時問が早い。これは、実施例2はエネルギーバインダであるGAP(12重量%)を用い、比較例Cは一般のバインダであるポリブタジエン(12重量%)を用いたことが主因である。
また、比較例Dは、エネルギーバインダであるGAP量を25重量%と多くしたため、酸化剤の量が少なくなったことが主因と考えられる。
また、比較例Eは、赤リンの配合量を80重量%としたため、GAPおよび酸化剤の配合量が少なくなったことが主因と考えられる。
次に、全体考察を述べる。
赤リン系発煙剤の場合、リン酸の煙物質が赤外線の吸収物質として支配的であり、赤リンの含有量が多いほど赤外線遮蔽効果が高いことが分かる。
同じ赤リンの含有量でも、バインダをGAPのようなエネルギーバインダを用いることで、発煙濃度(赤外線吸収)をより一層高められて赤外線透過率が低くなり、赤外線遮蔽性能の向上に影響を与えることが分かった。
しかしながら、同じGAPを用いても、燃焼性や着火性から赤リンの含有量には限界があり、80重量%未満であることが分かった。
また、本発明に用いるGAPは、赤外線透過率を低くし、発煙濃度(赤外線吸収)をより一層高めることを目的としているので、その効果を維持するためにには、その含有量は20重量%以下であることが分かった。
また、燃焼時間は、用途、薬量、圧填方法、燃焼容器内の圧力など、諸条件で変わることはあるが、本実施例では4g円柱ペレットを容器には入れず、直に燃焼チャンバ内で燃焼させ、数回の平均値を得て、有用な範囲である60sec以内を確認した。
よって、赤外線遮蔽発煙組成物として本発明の主たる目的である赤外線遮蔽効果を向上させるため、煙生成剤である赤リンを如何に効率よく燃焼(反応)させて、煙濃度を高め、赤外線を吸収させるかは、赤リン−酸化剤−金属粉−エネルギーバインダとの組合せおよび配合量を適宜調整するかであることが分かった。
本発明に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、煙幕を生成する盗難防止装置の発煙剤として組み込み、保護物件を煙幕で保護する際、可視光域と赤外光域を遮断することで、侵入者が赤外線ゴーグルや赤外線フイルタを装着したビデオカメラなどで透視し犯罪行為を続行したりあるいは逃走するなどを防止することに利用できる。
リン酸の赤外線吸収スペクトル(波形図)。 赤外線遮蔽に影響を与える因子・要因(成分)の解析結果(棒グラフ)。 赤外線透過率の計測装置の模式図。

Claims (4)

  1. 赤リンと、硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギ−バインダとを有することを特徴とする赤外線遮蔽発煙組成物。
  2. 前記エネルギーバインダは、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methyl)methyloxetane)またはAMMO(3-azido metyl-3-methyloxetane)から選ばれることを特徴とする請求項1記載の赤外線遮蔽発煙組成物。
  3. 赤リン55〜75重量%と、酸化剤5〜30重量%と、金属粉5〜10重量%と、エネルギーバインダ5〜20重量%とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤外線遮蔽発煙組成物。
  4. 酸化剤は、明礬であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の赤外線遮蔽発煙組成物。
JP2003354559A 2003-10-15 2003-10-15 赤外線遮蔽発煙組成物 Pending JP2005119896A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003354559A JP2005119896A (ja) 2003-10-15 2003-10-15 赤外線遮蔽発煙組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003354559A JP2005119896A (ja) 2003-10-15 2003-10-15 赤外線遮蔽発煙組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005119896A true JP2005119896A (ja) 2005-05-12

Family

ID=34612434

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003354559A Pending JP2005119896A (ja) 2003-10-15 2003-10-15 赤外線遮蔽発煙組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005119896A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007161500A (ja) * 2005-12-09 2007-06-28 Nippon Koki Co Ltd 赤リン系発煙組成物およびその製造方法
CN113554694A (zh) * 2021-09-22 2021-10-26 中国人民解放军国防科技大学 一种烟幕释放过程中红外有效遮蔽面积的获取方法和系统

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007161500A (ja) * 2005-12-09 2007-06-28 Nippon Koki Co Ltd 赤リン系発煙組成物およびその製造方法
CN113554694A (zh) * 2021-09-22 2021-10-26 中国人民解放军国防科技大学 一种烟幕释放过程中红外有效遮蔽面积的获取方法和系统

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US3912561A (en) Pyrotechnic compositions for gas generation
Sabatini A review of illuminating pyrotechnics
JP3592714B2 (ja) カムフラージュのための火煙術用煙幕組成物と、煙幕エレメントでのその利用
Sabatini et al. High‐Nitrogen‐based pyrotechnics: development of perchlorate‐free green‐light illuminants for military and civilian applications
JP2002540058A (ja) 赤外スペクトル内で強度に放射性でありかつ可視スペクトル内で不透過性のエーロゾルを発生させる花火技術的活性材料
EP2463259B1 (de) Hocheleistungswirkmasse für pyrotechnische Infrarotscheinziele
NL192923C (nl) Rookontwikkelende pyrotechnische samenstelling en munitie die deze bevat.
JPH08169791A (ja) 非火薬破砕組成物
JP2005119896A (ja) 赤外線遮蔽発煙組成物
EP2468700B1 (de) Pyrotechnische Scheinzielwirkmasse für Infrarotscheinziele
CA1237581A (en) Pyrotechnical smoke charges
RU2203259C2 (ru) Пиротехнический инфракрасный трассирующий состав
DE102010053783A1 (de) Hochleistungswirkmasse für pyrotechnische Infrarotscheinziele
JP4969842B2 (ja) 赤リン系発煙組成物およびその製造方法
JP6539132B2 (ja) 発煙剤組成物および発煙装置
JP4969841B2 (ja) 赤外線遮蔽発煙組成物
CN107108389B (zh) 具有低点燃温度的邻氯苯亚甲基丙二腈(cs)类自燃式烟火组合物
Zhao et al. Combustion catalyst: Nano-fe2o3 and nano-thermite al/fe2o3 with different shapes
WO2018066312A1 (ja) 発煙剤組成物及び発煙器
RU2761938C1 (ru) Аэрозольобразующее топливо для объемного пожаротушения
EP2360134A2 (en) Non-toxic, heavy metal-free zinc peroxide-containing IR tracer compositions and IR tracer projectiles containing same generating a dim visability IR trace
US20190152874A1 (en) Efficient smoke composition in visible and infrared ranges
KR20130077930A (ko) 인플레이터용 가스발생제 조성물, 이를 이용한 가스발생제 및 이의 제조방법
JPH07172970A (ja) 発煙組成物
EP0299835A1 (fr) Composition pyrotechnique pour la production de fumée opaque aux rayonnements infrarouges, procédé de fabrication et leurre comportant une telle composition

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050617

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090407

A521 Written amendment

Effective date: 20090601

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A02 Decision of refusal

Effective date: 20090623

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02