JP4967973B2 - 光学素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子に関するものである。
本出願人は、先の出願において、シリコン基板上にシリコン酸化物からなるマイクロレンズ、プリズム、光導波路等の光学素子を作りこむ技術を提案している(特許文献1参照)。
特許文献1によれば、先ずパターニングしたマスクを用いてシリコン基板をトレンチエッチングし、並設する多数のトレンチを形成する。これにより、トレンチを隔てて複数の柱構造体が並設された状態となる。なお、透過率を向上するために、柱構造体はその長手方向が光軸(光の伝播方向)と平行に延設される。次いで、柱構造体を熱酸化する。これにより、シリコンがシリコン酸化物に置き換えられ、膨張した柱構造体によってトレンチ内が埋められる。そして、所定領域がシリコン基板と一体的なブロックとなる。このようにして形成されたブロックは、その輪郭形状に応じた光学機能を発揮する。
特開2004−271756号公報
ところで、熱酸化が終了した時点で、柱構造体の内部に未酸化領域としてシリコンが残っていると、シリコンは光に対して不透明であるため、光学素子(ブロック)の透過率が低下することとなる。柱構造体の酸化に際しては、柱構造体が完全に酸化されるまで、酸素が柱構造体に供給されるように、柱構造体間にトレンチ乃至トレンチ由来の空隙が存在することが重要である。熱酸化膜はシリコン基板の表面に対して、外側に0.55、内側に0.45の比率で成長していくことが経験的に知られているが、未酸化領域が残らないように確実に柱構造体を酸化するために、柱構造体に対してトレンチを理想状態よりも広めに設定することが考えられる。
このように設定すると、熱酸化が終了した時点で、柱構造体を未酸化領域の無い状態とすることができる。しかしながら、膨張した柱構造体によってトレンチが完全に埋まらないため、柱構造体間にトレンチ由来の空隙が残ることとなる。この複数の空隙はトレンチ由来であるため規則的であり、回折格子としての機能を果たす。したがって、光学素子を透過した光は各次数の回折光となって複数の方向に分割されるが、光学素子としてはそのうちの一方向の光(例えばレンズとしては0次光)のみを必要とするため、実質的に光学素子(ブロック)の透過率が低下することとなる。
これに対し、本出願人は、特願2006−300759号にて、その長手方向が光軸と例えば略垂直となるように複数の柱構造体が並設された光学素子を提案している。これによれば、隙間の長手方向が光軸と略垂直となっているので、上述の回折効果を抑制することができる。
しかしながら、上述の構成及び特許文献1に示される構成のいずれにおいても、柱構造体を熱酸化して、シリコンからシリコン酸化物に置き換える。したがって、柱構造体の幅(短手方向の幅)としては、参加時間を考慮すると数μm程度が上限である。これに対し、長手方向の長さは、短手方向の幅に対して十分に長い長さとなっている。また、シリコン酸化物からなる柱構造体は、線膨張係数の異なるシリコン基板の上面に直線形状をもって立設されている。したがって、熱酸化後の冷却過程で、シリコンとシリコン酸化物の線膨張係数差に基づく応力(圧縮応力)が柱構造体に作用すると、柱構造体が座屈しやすい。また、座屈形状も制御が困難である。
本発明は上記問題点に鑑み、座屈による光学特性の劣化を抑制することのできる光学素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、シリコン基板と、シリコン基板と一体的に形成され、シリコン基板の上面に立設されたシリコン酸化物からなる少なくとも1つの柱構造体とを備え、柱構造体に光を透過させるようにした光学素子であって、柱構造体は、その長手方向の両端部を結んでなる仮想直線に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状とされるとともに、仮想直線と光軸とのなす角が略垂直となるように形成されており、光軸が互いに一致するように並設された複数の柱構造体を有し、互いに隣接する柱構造体間に空隙が形成されていることを特徴とする。
このように本発明では、柱構造体を、例えば弓状(アーチ状)や略S字状のように、その長手方向の両端部を結んでなる仮想直線に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状としている。したがって、柱構造体を熱酸化した後の冷却時において、シリコン基板を構成するシリコンと柱構造体を構成するシリコン酸化物との線膨張係数差に基づく応力(圧縮応力)が柱構造体に作用しても、ダムのようにその構造上の特性から、直線状の柱構造体に比べて、柱構造体の座屈を抑制することができる。なお、この効果については、本発明者によって実際に確認されている。
また、熱酸化後の柱構造体の形状は熱酸化前の形状に倣った形状となり、熱酸化前の状態で、柱構造体は、その長手方向の両端部を結んでなる仮想直線に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状となっている。したがって、熱酸化後の冷却時に柱構造体が多少なりとも座屈したとしても、熱酸化前の曲線形状に倣って座屈する。すなわち、光学素子が所望の光学特性を発揮するように、座屈形状を制御することができる。以上により、本発明によれば、座屈による光学特性の劣化を抑制することができる。
また、仮想直線と光軸とのなす角が略垂直となるように柱構造体が形成されており、光軸が互いに一致するように並設された複数の柱構造体を有し、互いに隣接する柱構造体間に空隙が形成されている。このため、座屈による光学特性の劣化を抑制するとともに、空隙を有しながらも回折効果を抑制することができる。また、複数の柱構造体によって、レンズ効果、プリズム効果を高めることができる。
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載のように、互いに隣接する柱構造体において、一部同士が互いに融着された構成とすると良い。これによれば、柱構造体の力学的強度を高めることができる。したがって、例えば座屈による光学特性の劣化をさらに抑制することができる。また、一部のみを融着させているので、広い範囲が融着された構成と比べて、レンズ効果、プリズム効果を高めることができる。
請求項1又は請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載のように、光の透過領域において、光軸に沿う方向における空隙の最大幅が、光の波長よりも狭くされた構成とすると良い。これによれば、複数の柱構造体を光が透過する際に、空隙における内部散乱を低減することができる。
請求項1〜3いずれかに記載の発明においては、請求項4に記載のように、シリコン基板と一体的に形成され、シリコン基板の上面に立設されたシリコン及びシリコン酸化物からなる柱状のアンカー部を備え、アンカー部は、柱構造体の短手方向の幅よりも光軸に沿う方向及び仮想直線に沿う方向に広い幅を有し、柱構造体の少なくとも一方の端部に対して配置されて、複数の柱構造体における同一側の端部間を連結する構成としても良い。これによれば、複数の柱構造体の端部がアンカー部に連結されているので、アンカー部によって光を遮ることなく、柱構造体の力学的強度を高めることができる。したがって、例えば座屈による光学特性の劣化をさらに抑制することができる。
請求項1〜4いずれかに記載の発明においては、請求項5に記載のように、仮想直線に対して一方に凸の弓状とされた弓状構造体を柱構造体として採用しても良い。このように弓状(換言すれば、アーチ状、略C字状)の柱構造体であれば、その構造上の特性から、柱構造体の座屈を効果的に抑制することができる。
請求項5に記載の発明においては、請求項6に記載のように、弓状構造体として、その短手方向の幅が、端部から中央部に向けて広くされた凸レンズ構造体を採用しても良い。このように、凸レンズ構造体は所謂凸メニスカスレンズとなっており、中央部が周辺部(端部)よりも厚いので、光を集光することができる。
また、請求項7に記載のように、弓状構造体として、その短手方向の幅が、中央部から端部に向けて広くされた凹レンズ構造体を採用しても良い。このように、凹レンズ構造体は所謂凹メニスカスレンズとなっており、中央部が周辺部(端部)よりも薄いので、光を発散させることができる。
また、請求項8に記載のように、弓状構造体として、凸レンズ構造体と凹レンズ構造体とを有する構成としても良い。これによれば、凸レンズ構造体と凹レンズ構造体を並設することで、球面収差を低減することもできる。
また、請求項9に記載のように、弓状構造体として、その短手方向の幅が、長手方向における一方の端部から他方の端部に向けて広くされたプリズム構造体を採用しても良い。これによれば、プリズム構造体を透過する光を分散させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態に示す光学素子及びその製造方法は、基本部分は本出願人による特開2004−271756号公報、特開2007−102196号公報、特願2006−300759号などと同じであるので、特に特徴部分について詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光学素子の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1をレンズ側から見た平面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。図4、図2のIV−IV線に沿う断面図である。なお、図2においては、便宜上、アンカー部のうち、未酸化領域を破線で示している。
図1及び図2に示すように、光学素子100は、要部として、シリコン基板1と、シリコン基板1の上面に配置され、光を透過させるレンズ部2と、シリコン基板1の上面に配置され、レンズ部2の端部と連結されたアンカー部3と、を有している。
レンズ部2は、シリコン基板1の上面に立設されたシリコン酸化物からなる5つの柱構造体4によって構成されている。この柱構造体4の下面は、図3及び図4に示すように下方に膨らんだ円弧面となっており、レンズ部2は、シリコン基板1と接着剤を介さずに、微小な凹凸形状の境界面で接続されている。すなわち、レンズ部2は、シリコン基板1の上面から、シリコン基板1との境界面である下面が水平方向に連続する凹凸形状を有する状態で立設されており、シリコン基板1と一体的に形成されている。そして、光学素子100のうち、レンズ部2に光を透過させるように(光学的な機能を果たさせるように)なっている。また、レンズ部2は、熱伝導性に優れるシリコン基板1と接着層を介さずに直接接しているため、放熱特性に優れている。
図2に示すように、各柱構造体4は互いに同一の形状及び大きさを有しており、短手方向の幅に対して長手方向の長さが十分に長く、長手方向の端部4a,4bを結んでなる仮想直線5に対して、一方側に1つの凸を有する弓状の構造体(換言すれば、アーチ状構造体、略C字状構造体)となっている。すなわち、柱構造体4の長手側面4c,4dがともに曲面となっている。また、短手方向の幅は、端部4a,4bから長手の中央部4e(光軸6と交わる部位)に向けて広くされ、柱構造体4が光を集める機能を有する凸レンズ構造体となっている。換言すれば、長手側面4c,4dの曲率半径が互いに異なっている。具体的には、柱構造体4の短手方向の幅は、熱酸化による酸化時間を考慮して最も幅の広い中央部4eで数μm(熱酸化前の状態で1〜3μm程度)とされ、力学的強度を考慮して最も幅の狭い端部4a,4bで0.5〜1μm程度となっている。このように、柱構造体4は所謂凸メニスカスレンズとなっている。そして、各柱構造体4における仮想直線5と光軸6とのなす角が略垂直となり、且つ、複数の柱構造体4において光軸6が互いに一致する(重なる)ように、5つの柱構造体4がシリコン基板1の同一面状に並設されている。
また、隣り合う柱構造体4は、その長手方向において、中央部4eを含む一部の領域7(図2に示す一点鎖線で囲まれた凸の頂点付近の領域)のみが互いに融着されている。そして、隣り合う柱構造体4における融着されない部位の間に、空隙8が形成されている。この空隙8は、柱構造体4の中央部4e側から端部4a,4b側に向けて、それぞれ幅が広くなっている。
このように、レンズ部2では、柱構造体4における仮想直線5に対して垂直方向に光が伝播されるように柱構造体4が弓状に延設されており、長手側面4c,4dを隣り合う柱構造体4との接触面及び空隙8との境界面として、複数の柱構造体4が並設(平行に配置)されている。これにより、隣り合う柱構造体4の間に空隙8を有するものの、回折効果が抑制された構造となっている。また、凸メニスカスレンズである5つの柱構造体4が並設されて1つのレンズ部2が構成されている。これにより、1つの柱構造体4によって構成されたレンズ部2よりもレンズ効果を高める(例えば焦点距離を短くする)ようになっている。
アンカー部3は、シリコン基板1の上面に立設された柱状部であり、長手方向における柱構造体4の端部4a,4bに対してそれぞれ配置されて、同一側における複数の柱構造体4の端部4a間、端部4b間をそれぞれ連結している。また、柱構造体4の短手方向の幅よりも光軸6に沿う方向及び柱構造体4の長手方向において広い幅を有しており、シリコン酸化物の内部に未酸化領域3aとしてのシリコンを含んでいる。このようにアンカー部3を有する構成とすると、複数の柱構造体4が、剛性の高いアンカー部3を介して互いに連結されるので、各柱構造体4の力学的強度を向上することができる。なお、未酸化領域3aを有するものの、柱構造体4の長手方向において、柱構造体4の端部4a,4bよりも外側に配置されており、未酸化領域3aが光を遮らないようになっている。
なお、シリコン基板1におけるレンズ部2の下部領域には、レンズ部2と同形状の台座部9が形成されている。また、シリコン基板1上において、シリコン基板1と一体的に形成されたレンズ部2及びアンカー部3は、その周囲(下面を除く)がオープンスペースとなっている(周囲にシリコン基板1が配置されていない)。また、本実施形態に係るレンズ部2(柱構造体4)は、その高さが10μm以上、具体的には100μm程度となっており、アンカー部3を含めた仮想直線5に沿う方向(光軸6に垂直な方向)の幅は500μm程度となっている。
次に、上述した光学素子100の製造方法の一例を、図2〜図6を用いて説明する。図5は、第1工程に相当するトレンチエッチング工程を説明するための平面図である。図6は、図5のVI−VI線に沿う断面図である。なお、上述したように、基本的な製造方法は本出願人による特開2004−271756号公報に記載と同じであるので、詳細については参照されたい。
先ず、シリコン基板1上に、フォトレジスト、シリコン酸化物、シリコン窒化物などからなり、所望のパターニングがされたマスク10を形成し、このマスク10を用いて、シリコン基板1にレンズ部2及びアンカー部3のパターニングを行う。具体的には、図5及び図6に示すように、マスク10の開口部からエッチングを行って、シリコン基板1に内部トレンチ11及び外部トレンチ12を形成する。なお、内部トレンチ11は、複数の柱構造体4を隔てるものであり、熱酸化後において空隙8となる。
このトレンチエッチング工程(マスク10のパターニング含む)においては、熱酸化後の状態で、柱構造体4が、長手方向の端部4a,4bを結んでなる仮想直線5に対して、一方側に1つの凸を有する弓状の構造体となり、短手方向の幅が、端部4a,4bから中央部4e(光軸6と交わる部位)に向けて広くなり、各柱構造体4における仮想直線5と光軸6とのなす角が略垂直となり、且つ、複数の柱構造体4において光軸6が互いに一致するように、内部トレンチ11及び外部トレンチ12を形成する。したがって、トレンチエッチングが終了した時点(熱酸化の前の時点)で、柱構造体4は、長手方向の端部4a,4bを結んでなる仮想直線5に対して、一方側に1つの凸を有する弓状の構造体となっており、短手方向の幅が、端部4a,4bから中央部4e(光軸6と交わる部位)に向けて広くなっている。また、隣り合う柱構造体4は、熱酸化時の膨張によってその一部同士が互いに融着されるように、トレンチエッチングが終了した時点(熱酸化の前の時点)では、その長手方向全体にわたって内部トレンチ11が介在されている。
ここで、外部トレンチ12は、内部トレンチ11のトレンチ幅に比べて十分広く、熱酸化が終了した時点で、外部トレンチ12内に空隙が残るように形成される。このようにすると、レンズ部2の側面(並設方向における端部の柱構造体4の長手側面4a,4b)がシリコンと接しないので、シリコン酸化物とシリコンとの線膨張係数差による座屈を抑制することができる。また、外部トレンチ12は、マイクロローディング効果により、内部トレンチ11よりも深くエッチングされる。したがって、光学素子100において、レンズ部2は、同形状のシリコンからなる台座部9を介してシリコン基板1に連結されることとなり、これにより、光の入射・出射の際にシリコン基板1が光の経路を妨げることを抑制することができる。
また、立体的なレンズ形状を得るためには、よりアスペクト比(深さ/幅)の高い内部トレンチ11(及び外部トレンチ12)を形成する必要がある。また、光学特性を高めるために、内部トレンチ11の断面プロファイルの垂直性を確保する必要がある。これに対し、本実施形態においては、特開2000−299310号公報のエッチング技術(所謂DRIE法)を利用して、形成したトレンチの内面(側面と底面)に保護酸化膜を形成し、底面の酸化膜を反応性イオンエッチングにて除去し、この底面から引き続きシリコン基板1のエッチングを行うというように保護酸化膜の形成工程とトレンチ底部のエッチング工程を繰り返し行うようにしている。これにより、アスペクト比「60」程度まで断面プロファイルが極めて垂直な内部トレンチ11を形成することができる。
また、本実施形態においては、第1工程に相当するトレンチエッチング工程終了後、シリコン基板1全体を水素雰囲気中でアニール処理する。このアニール処理は必ずしも必要ではないが、実施によって各トレンチ11,12の側壁の表面粗さを小さく(トレンチ側壁表面の平坦性を向上)することができるので、熱酸化を行うことで平滑な表面を持つレンズ面(長手側面4c,4d)を得ることができる。この技術に関しては特開2002−231945号公報に開示されている。
アニール処理後、マスク10をフッ酸溶液への浸漬等により除去する。そして、柱構造体4全体がシリコンからシリコン酸化物に置き換わるまで、第2工程に相当する熱酸化工程を実施する。この熱酸化工程においては、トレンチエッチング工程で予め設定された条件により、柱構造体4に対して、全体が酸化するのに十分な酸素が内部トレンチ11や外部トレンチ12を介して供給され、図2〜図4に示すように、シリコンがシリコン酸化物に置き換えられる。また、アンカー部3は、表面から所定範囲が酸化されてシリコン酸化物に置き換えられ、シリコン酸化物の内部にシリコンの未酸化領域3aを含む構造となる。なお、熱酸化膜はシリコン基板1の表面に対して、外側に0.55、内側に0.45の比率で成長していくことが経験的に知られている。したがって、この熱酸化によって、柱構造体4の短手方向の幅は2.22倍に膨張する。
本実施形態においては、トレンチエッチングにより弓状とされた柱構造体4の体積膨張(シリコン酸化物への置換)により、柱構造体4の全てがシリコン酸化物に置き換えられる前に、隣り合う柱構造体4のうち、中央部4eを含む一部同士(一方は長手側面4c、他方は長手側面4d)が互いに接触する。そして、柱構造体4におけるシリコン残りの部分がシリコン酸化物に置き換えられる間に、接触部分が融着する。この条件は、トレンチエッチング工程で予め設定されている。
また、柱構造体4(及び柱構造体4に連結されたアンカー部3)の体積膨張により、柱構造体4間の内部トレンチ11はその一部がそれぞれ埋められ、残った部分が空隙8となる。ここで、光軸6に沿う方向における空隙8の幅としては、内部散乱などによる透過率の低下を抑制する上で狭いほど好ましい。本実施形態においては、レンズ部2(柱構造体4)における光を透過させる光透過領域13(図2に示す二点鎖線で囲まれた領域であって、所謂レンズの有効径に相当する領域)において、光軸6に沿う方向における空隙8の最大幅が、光の波長よりも狭くなるようにトレンチエッチング工程で予め設定されている。このような構成とすると、複数の柱構造体4を光が透過する際に、空隙8における内部散乱を低減することができる。
そして、熱酸化工程後の冷却を経て、レンズ部2の周囲における外部トレンチ12と重なる位置でシリコン基板1をダイシングする。これにより、図1〜4に示したレンズ部2を備える光学素子100を形成することができる。なお、熱酸化工程後、各柱構造体4の長手側面4c,4dにおける光の表面反射を抑制するために、所謂無反射コート(ARコート)を周知の成膜プロセスによって長手側面4c,4dに成膜しても良い。これによれば、長手側面4c,4dにおける表面反射を抑制し、光の透過率を高めることができる。
次に、本実施形態に示した光学素子100及びその製造方法の効果について説明する。先ず、本実施形態においては、シリコン酸化物からなる柱構造体4が、その長手方向の両端部4a,4bを結んでなる仮想直線5に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状となっている。具体的には、柱構造体4が、仮想直線5に対して一方に凸の弓状(アーチ状)とされた弓状構造体となっている。このような弓状構造体(曲線形状の柱構造体)では、トンネルやダムなどでも知られているように、外部応力が作用すると断面内に一様な圧縮応力が生じる。また、一方向から受ける外部応力を分散させることができる。これらの効果などにより、弓状構造体は、直線状の構造体よりも曲げが発生しにくいことが知られている。本実施形態においては、図7に示すように、熱酸化工程後の冷却(例えば約1000℃から室温への冷却)時において、シリコン基板1を構成するシリコンと柱構造体4を構成するシリコン酸化物との線膨張係数差に基づく応力が柱構造体4に作用する。具体的には、線膨張率(20℃)は、シリコンが2.6×10−6/℃、溶融石英(シリコン酸化物)が0.4〜0.55×10−6/℃である。したがって、シリコン基板1の収縮量が柱構造体4よりも大きく、この収縮量の差による応力(圧縮応力)が柱構造体4に作用する。しかしながら、このような応力が作用しても、上述した構造上の特性から、例えば図7に示すように、柱構造体4にはその内部に短手方向において一様な圧縮応力14が生じる。また、外部から作用する応力が分散される。すなわち、短手方向に柱構造体4が変形しにくい。これに対し、直線状の柱構造体4では、応力(長手方向に沿う圧縮応力)を分散することができず、長さの等しい上述の弓状構造体よりも座屈荷重が低いため、例えば図8に示すように、長手方向の長さが長いものほど短手方向への変形、すなわち座屈が生じ易い。このように、本実施形態によれば、直線状の柱構造体4に比べて、柱構造体4の座屈を抑制することができる。図7は、曲線形状の効果を示す平面図である。図8は、図7に対する比較例を示す平面図である。
また、トレンチエッチング工程後(熱酸化工程前)の状態で、柱構造体4を、その長手方向の両端部4a,4bを結んでなる仮想直線5に対し、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状とする。したがって、熱酸化後の柱構造体4の形状は、熱酸化前の形状に倣い、その長手方向の両端部4a,4bを結んでなる仮想直線5に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状となる。このように、本実施形態においては、熱酸化工程後(冷却前)の状態で、柱構造体4が曲線形状(弓状)となっている。したがって、熱酸化後の冷却時に、収縮量の差による応力によって柱構造体4が仮に座屈したとしても、熱酸化前の曲線形状に倣って座屈する(本実施形態においては、弓状の凸側に崩れる)こととなる。すなわち、光学素子100(レンズ部2)が所望の光学特性を発揮するように、座屈した後の柱構造体4の形状を制御することができる。
以上により、本実施形態に係る光学素子100及びその製造方法によれば、座屈による光学特性の劣化を抑制することができる。なお、本発明者は、長手方向の長さが等しい条件で、直線状の柱構造体を複数並設したものと、弓状の柱構造体を複数並設したものを上述した製造方法によってそれぞれ形成し、熱酸化後の冷却を経て、柱構造体がどのように変形するかについて顕微鏡観察を行った。その結果、直線状の柱構造体では座屈が生じたが、弓状の柱構造体では座屈が抑制されていることを確認している。
また、本実施形態においては、隣り合う柱構造体4の間に空隙8が形成される構成でありながら、仮想直線5と光軸6とのなす角が略垂直となり、光軸6が互いに一致するように複数の柱構造体4がシリコン基板1上に並設されている。したがって、空隙8を有しながらも周期的に形成された空隙8による回折効果を抑制し、実質的な光の透過率を高めることができる。特に本実施形態においては、柱構造体4の光透過領域13において、光軸6に沿う方向における空隙8の最大幅が光の波長よりも狭くなっている。したがって、空隙8による内部散乱を低減し、光の透過率をより高めることができる。
また、本実施形態においては、弓状の柱構造体4を光軸6が互いに一致するように複数並設している。したがって、1つの柱構造体4では、酸化時間及び力学的強度による形状の制約(短手方向の幅の制約)によってレンズ効果が小さいものの、柱構造体4を複数並設しているので、レンズ効果を高める(焦点距離を短くする)ことができる。
また、本実施形態においては、隣り合う柱構造体4の一部(凸頂点付近)が互いに融着されている。したがって、各柱構造体4の力学的強度を高めることができる。したがって、例えば座屈による光学特性の劣化をさらに抑制することができる。また、衝撃などの外部応力に対して柱構造体4を破損しにくくすることができる。また、融着された領域7は1つのレンズとして機能することとなるが、光透過領域13におけるそれ以外の領域は、各柱構造体4がそれぞれレンズとして機能する。したがって、光透過領域13において広い範囲が融着された構成や、光透過領域13のうちの端部側が融着された構成と比べて、レンズ効果を高めることができる。
また、本実施形態においては、複数の柱構造体4の端部4a間及び端部4b間が、アンカー部3によってそれぞれ連結されている。したがって、アンカー部3によって光を遮ることなく、柱構造体4の力学的強度を高めることができる。これにより、例えば座屈による光学特性の劣化をさらに抑制することができる。また、衝撃などの外部応力に対して柱構造体4を破損しにくくすることができる。
なお、本実施形態においては、レンズ部2が5つの柱構造体4によって構成される例を示した。しかしながら、柱構造体4の本数は上記例に限定されるものではない。1つの柱構造体4のみによってレンズ部2が構成されても良いし、5本以外の複数本としても良い。
また、レンズ部2における光透過領域13は、上記例に限定されるものではない。柱構造体4における長手方向全てが、光透過領域13に含まれる構成としても良い。
また、本実施形態においては、隣り合う柱構造体4の一部同士が互いに融着される例を示した。しかしながら、例えば図9に示すように、隣り合う柱構造体4が互いに融着されず、長手方向全体にわたって空隙8が介在された構成としても良い。図9は変形例を示す平面図である。また、隣り合う柱構造体4の一部同士が互いに融着されないものの、互いに接触される構成としても良い。さらには、複数の柱構造体4のうち、一部の柱構造体4のみが互いに融着される構成としても良い。柱構造体4の力学的強度の点からは、一部が接触されると良く、より好ましくは一部が融着されると良い。
また、本実施形態においては、弓状の柱構造体の例として、その短手方向の幅が、端部から中央部に向けて広くされた柱構造体4(凸レンズ構造体)の例を示した。しかしながら、柱構造体は上記形状に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、柱構造体として、長手方向の端部15a,15bを結んでなる仮想直線16に対して、一方側に1つの凸を有する弓状の構造体であって、その短手方向の幅が、中央部15cから端部15a,15bに向けて広くされた弓状の柱構造体15(凹レンズ構造体)を採用しても良い。このような柱構造体15は、所謂凹メニスカスレンズであり、中央部15cが周辺部(端部15a,15b)よりも薄いので、光を発散させることができる。特に図10に示す例では、弓状構造体として、凸レンズ構造体である柱構造体4と凹レンズ構造体である柱構造体15とを、光軸6が互いに一致するように並設した構成となっている。このような構成とすると、球面収差を低減することができる。図10は、変形例を示す平面図である。なお、図10に示す例では、柱構造体4と柱構造体15によってレンズ部2が構成される例を示したが、柱構造体15のみによってレンズ部2を構成することもできる。
また、例えば図11に示すように、柱構造体として、長手側面の少なくとも一方(図11に示す例では一方の長手側面17a)に、フレネル面が形成された柱構造体17(フレネルレンズ)を採用することもできる。これによれば、光軸6に沿う方向において、レンズ部2の体格を小型化することができる。このような光学素子100は、上述した製造方法を用いて形成することができる。図11は、変形例を示す平面図である。なお、図11においては、柱構造体4と柱構造体17によってレンズ部2が構成される例を示したが、柱構造体17のみによってレンズ部2を構成することもできる。また、回折型レンズとしての柱構造体を採用することによっても、光軸6に沿う方向において、レンズ部2の体格を小型化することができる。
また、本実施形態においては、弓形の柱構造体4が凸側を光軸6に沿う方向の同一側として複数並設される例を示した。しかしながら、例えば図12に示すように、複数の柱構造体4のうち、一部を光軸6に沿う方向の一方の側に凸とし、一部を逆方向に凸としても良い。図12は、変形例を示す平面図である。
また、柱構造体4がレンズであり、柱構造体4によってレンズ部2が構成される例を示した。しかしながら、光学素子100としては、レンズに限定されるものではない。例えば図13に示すように、弓状の柱構造体として、その短手方向の幅が、長手方向における一方の端部18aから他方の端部18bに向けて広くされたプリズム構造体である柱構造体18を採用し、柱構造体18によってプリズム部19を構成しても良い。これによれば、柱構造体18を透過する光を分散させることができる。図13は、変形例を示す平面図である。なお、図13に示す例では、3つの柱構造体18を光軸が互いに一致するように並設している。このように、複数の柱構造体18によってプリズム部19を構成すると、上述したレンズ部2と同様の理由で、プリズム効果(光の偏向角)を高めることができる。また、隣り合う柱構造体18のうち、短手方向の幅が太い側の一部(図13に示す二点鎖線20で囲まれた領域内の部分)同士が、互いに融着されている。したがって、柱構造体18の力学的強度を高めることができる。また、図13に示す柱構造体18に代えて、薄型プリズムであるブレーズドグレーティングを構成しても良い。さらには、レンズ部2とプリズム部19とを、光軸が互いに一致するように同一のシリコン基板1上に形成した構成としても良い。
また、本実施形態においては、柱構造体の形状として弓状の例を示した。しかしながら、柱構造体の形状は上記例に限定されるものではない。柱構造体の形状としては、その長手方向の両端部を結んでなる仮想直線に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状であれば良い。例えば弓状(アーチ状)以外にも、略S字状のように、その長手方向の両端部を結んでなる仮想直線に対して両側に凸を有する連続した曲線形状の柱構造体を採用することもできる。ただし、レンズやプリズムの機能、及び、光学素子100(レンズ部2、プリズム部19)の大きさなどを考慮すると、弓状の柱構造体を採用することが好ましい。
また、本実施形態においては、例えば弓状の柱構造体4に対し、凹側の長手側面4cを入射側、凸側の長手側面4dを出射側とする例を示した。しかしながら、入射と出射を逆としても良い。
また、本実施形態においては、光学素子100が、アンカー部3を有する例を示した。しかしながら、アンカー部3を有さない構成とすることもできる。
また、本実施形態においては、並設される複数の柱構造体4が、互いに同一の形状及び大きさを有する例を示した。しかしながら、光軸が互いに一致するように並設されれば、複数の柱構造体4の少なくも1つとして、形状や大きさが異なるものを含んでも良い。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図14及び図15に基づいて説明する。図14は、第2実施形態に係る光学素子の概略構成を示す平面図である。図15は、図14のXV−XV線に沿う断面図である。
第2実施形態に係る光学素子及びその製造方法は、第1実施形態に示した光学素子100及びその製造方法と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。また、本実施形態において、第1実施形態と同様の機能を有する要素については、同一の符号を付与するものとする。
第1実施形態においては、長手方向の端部4a,4bを結んでなる仮想直線5が光軸6(換言すれば、光の伝播方向)と略垂直となるように曲線形状の柱構造体4がシリコン基板1上に延設される例を示した。これに対し、図14及び図15に示す例では、曲線形状の柱構造体21が光の伝播方向に対して略垂直に並設されている点を特徴とする。そして、並設された複数の柱構造体21により、光導波路22が構成されている点を特徴とする。このような光導波路及びその製造方法については、柱構造体が曲線形状である点を除いては、本出願人による例えば特開2004−271756号公報、特開2005−345630号公報、特開2007−78395号公報に記載されているものを適用することができる。したがって、特徴点以外についての本実施形態における詳細な説明は割愛する。
具体的には、シリコン基板1の上面に台座部9が形成され、この台座部9上に光導波路22が形成されている。光導波路22は、第1実施形態に示した柱構造体4同様、シリコン基板1をトレンチエッチングし、熱酸化によってシリコンをシリコン酸化物に置き換えてなる柱構造体21を、光の伝播方向に対して略垂直に並設して構成されている。各柱構造体21は、その短手方向の幅が略均一となっており、その長手方向の両端部21a,21bを結んでなる仮想直線23(図14中の破線)に対して、両側にそれぞれ1つの凸を有する連続した曲線形状(略S字状)となっている。具体的には、光を光導波路22内に閉じ込めて伝播が可能な緩やかな曲線形状となっている。本実施形態においては、光導波路22が3つの柱構造体21によって構成されており、隣り合う柱構造体21の間に空隙24が形成されている。このように、空隙24を有する構成とすると、熱酸化時において、柱構造体21を完全に酸化することができる。
ここで、複数の柱構造体21が光の伝播方向に対して略垂直に並設された構成においては、隣り合う柱構造体21の間に空隙24があると、周期的に配置された空隙24によって回折現象が生じ、実質的な光の透過率が減少することとなる。そこで、本実施形態においては、空隙24をシリコン酸化物からなる埋め込み層25によって埋め込んでおり、これによって、光導波路22が1つのシリコン酸化物ブロックとして構成されている。なお、埋め込み層25の形成には、例えばCVDによる成膜やシリコン酸化物が溶解した超臨界流体の流し込みによる成膜を採用することができる。このような成膜方法は、本出願人による例えば特開2004−271756号公報、特開2007−102196号公報に記載されているので参照されたい。
また、本実施形態においては、光を光導波路22内に閉じ込めるために、光導波路22に対して、ゲルマニウム、リン、スズ、及びホウ素のいずれかの不純物が上下方向に濃度分布をもつように添加し、これによって光導波路22の上下方向に屈折率分布をもたせている。なお、シリコンに、ゲルマニウム、リン、及びスズのいずれかをドープした状態で熱酸化を行うとシリコン酸化物の屈折率が上がり、ホウ素をドープした状態で熱酸化を行うとシリコン酸化物の屈折率が下がることが知られている。したがって、光導波路22の上下方向では、屈折率の差により、屈折率の高い中央付近に光が閉じ込められる。また、横方向では、光導波路22の周囲がオープンスペースであるため、光導波路22内に光が閉じ込められる。この点については、本出願人による特開2004−271756号公報に記載されているので参照されたい。
このように構成される光学素子100においては、光導波路22を構成する柱構造体21を曲線形状(略S字状)としている。したがって、第1実施形態に示した弓状の柱構造体4と同様の効果により、直線状の柱構造体に比べて、柱構造体21の座屈を抑制することができる。また、熱酸化後の冷却時に、シリコン基板1を構成するシリコンと柱構造体21のシリコン酸化物との収縮量の差による応力によって、柱構造体21が仮に座屈したとしても、熱酸化前の曲線形状に倣って座屈することとなる。したがって、本実施形態に係る光学素子100によれば、座屈による光学特性の劣化を抑制することができる。
また、本実施形態においては、柱構造体21間の空隙24を、成膜によるシリコン酸化物(埋め込み層25)によって埋め込んでいる。したがって、空隙24による回折現象を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、3つの柱構造体21により、光導波路22が構成される例を示した。しかしながら、光導波路22を構成する柱構造体21の本数は上記例に限定されるものではなく、複数であればよい。
また、本実施形態においては、略S字状の柱構造体21の例を示した。しかしながら、柱構造体21の曲線形状としては、上記例に限定されるものではない。例えば、短手方向の幅が略均一の弓状の構造体や凸部を複数有する蛇行状の構造体を採用することもできる。
また、本実施形態においては、複数の柱構造体21の間に空隙24が形成され、この空隙24が埋め込み層25によって埋め込まれる例を示した。しかしながら、空隙24が埋め込み層25によって埋め込まれない構成においても、曲線形状の柱構造体21を適用することができる。また、複数の柱構造体21の間に空隙24が形成されず、理想的に柱構造体21が熱酸化されて、隣り合う柱構造体21が、その長手方向全体にわたって少なくとも互いに接する(好ましくは融着される)構成においても、曲線形状を適用することができる。
また、本実施形態においては、曲線形状の柱構造体21が光の伝播方向に対して略垂直に並設され、並設された複数の柱構造体21により、光導波路22が構成される例を示した。しかしながら、光学素子100の例としては、光導波路22を備えるものに限定されるものではない。例えば図16に示す例では、曲線形状の柱構造体26として、その短手方向の幅が略均一であり、その長手方向の両端部26a,26bを結んでなる仮想直線27(図16中の破線)に対して、一方に凸を有する連続した曲線形状(弓状)の構造体を採用している。そして、このような柱構造体26を、仮想直線27が光軸6と略平行となるように複数並設することで、レンズ部2が構成されている。この光学素子100では、隣り合う柱構造体26の間に空隙28が形成され、この空隙28内が成膜によるシリコン酸化物29によって埋められている。また、シリコン基板1の上面であって柱構造体26の外周側に、シリコン酸化物からなりレンズ部2の輪郭を形成する輪郭用柱構造体30が形成されている。そして、この輪郭用柱構造体30によって、複数の柱構造体26の端部26a間、端部26b間がそれぞれ連結されている。また、輪郭用柱構造体30によって、レンズ部2の入射面2a、出射面2bが規定されており、レンズ部2が凸型のシリンドリカルレンズとなっている。このように、レンズ部2を構成する柱構造体26に対しても、曲線形状を適用することができる。図16は、変形例を示す平面図である。なお、図16においては、空隙28をシリコン酸化物29で埋め込む例を示したが、空隙28が埋め込まれない構成においても、曲線形状の柱構造体26を適用することができる。また、複数の柱構造体26の間に空隙28が形成されず、理想的に柱構造体26が熱酸化されて、隣り合う柱構造体26が、その長手方向全体にわたって少なくとも互いに接する(好ましくは融着される)構成においても、曲線形状を適用することができる。また、図16では、レンズ部2の例を示したが、それ以外にも、プリズムを構成する柱構造体に対して曲線形状を適用することもできる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
第1実施形態に係る光学素子の概略構成を示す斜視図である。 図1をレンズ側から見た平面図である。 図2のIII−III線に沿う断面図である。 図2のIV−IV線に沿う断面図である。 トレンチエッチング工程を説明するための平面図である。 図5のVI−VI線に沿う断面図である。 曲線形状の効果を示す平面図である。 図7に対する比較例を示す平面図である。 変形例を示す平面図である。 変形例を示す平面図である。 変形例を示す平面図である。 変形例を示す平面図である。 変形例を示す平面図である。 第2実施形態に係る光学素子の概略構成を示す平面図である。 図14のXV−XV線に沿う断面図である。 変形例を示す平面図である。
符号の説明
1・・・シリコン基板
2・・・レンズ部
3・・・アンカー部
4・・・柱構造体(凸レンズ構造体)
4a,4b・・・端部
4e・・・中央部
5・・・仮想直線
6・・・光軸
8・・・空隙
100・・・光学素子

Claims (9)

  1. シリコン基板と、
    前記シリコン基板と一体的に形成され、前記シリコン基板の上面に立設されたシリコン酸化物からなる少なくとも1つの柱構造体とを備え、
    前記柱構造体に光を透過させるようにした光学素子であって、
    前記柱構造体は、その長手方向の両端部を結んでなる仮想直線に対して、少なくとも一方に凸の連続した曲線形状とされるとともに、前記仮想直線と光軸とのなす角が略垂直となるように形成されており、
    前記光軸が互いに一致するように並設された複数の前記柱構造体を有し、
    互いに隣接する前記柱構造体間に空隙が形成されていることを特徴とする光学素子。
  2. 互いに隣接する前記柱構造体は、一部が互いに融着されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記光の透過領域において、前記光軸に沿う方向における前記空隙の最大幅が、前記光の波長よりも狭くされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記シリコン基板と一体的に形成され、前記シリコン基板の上面に立設されたシリコン及びシリコン酸化物からなる柱状のアンカー部を備え、
    前記アンカー部は、前記柱構造体の短手方向の幅よりも前記光軸に沿う方向及び前記仮想直線に沿う方向に広い幅を有し、前記柱構造体の少なくとも一方の端部に対して配置されて、複数の前記柱構造体における同一側の端部間を連結していることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の光学素子。
  5. 前記柱構造体は、前記仮想直線に対し、一方に凸の弓状とされた弓状構造体であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の光学素子。
  6. 前記弓状構造体は、その短手方向の幅が、前記端部から前記中央部に向けて広くされた凸レンズ構造体であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  7. 前記弓状構造体は、その短手方向の幅が、前記中央部から前記端部に向けて広くされた凹レンズ構造体であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  8. 前記弓状構造体として、その短手方向の幅が、前記端部から前記中央部に向けて広くされた凸レンズ構造体と、前記中央部から前記端部に向けて広くされた凹レンズ構造体とを有することを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  9. 前記弓状構造体は、その短手方向の幅が、前記長手方向における一方の前記端部から他方の前記端部に向けて広くされたプリズム構造体であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
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