JP4967894B2 - 信号処理装置、信号処理方法、プログラム、ノイズキャンセリングシステム - Google Patents

信号処理装置、信号処理方法、プログラム、ノイズキャンセリングシステム Download PDF

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Description

本発明は、いわゆるヘッドホンやイヤホンなどの音響再生装置に対する駆動信号を生成するための信号処理装置として、特にノイズキャンセルを行うための駆動信号を生成する信号処理装置とその方法、さらにプログラムに関する。また、上記音響再生装置と上記信号処理装置とを備えて構成されるノイズキャンセリングシステムに関するものである。
特開平3−214892号公報 特開平3−96199号公報
例えばヘッドホンやイヤホンなどの音響再生装置によってオーディオコンテンツを聴取するということが一般的に行われている。そして、このように音響再生装置によってオーディオコンテンツが聴取される際に生じる外部ノイズを抑圧して、遮音効果を高めるようにされたノイズキャンセリングシステムが実用化されている。
一般的にノイズキャンセリングシステムでは、上記各特許文献に記載されるように、音響再生装置側にノイズ検出用のマイクロフォンが備えられ、その収音信号に基づきノイズ成分を打ち消すような逆相信号を生成してこれをオーディオ信号側に加算することで、ノイズキャンセルを実現するようにされている。
ノイズキャンセリングシステムとしては、例えば次の図14にその概要を示すように、FB(フィードバック)方式を採用するものが知られている。
このFB方式に対応するノイズキャンセリングシステムでは、ヘッドホン装置における装着部101の内側に対し、マイクロフォン103が設けられることになる。ここで、装着部101は、聴取者の耳に対して装着される部分であって、この図に示すいわゆる密閉型のヘッドホン装置の場合には、耳全体を密閉するようにして覆うハウジング部分が相当する。このとき、図示するようにして装着部101の内側には、音響再生を行うための振動板ユニット102が設けられているので、上記マイクロフォン103としては、上記振動板ユニット102からの出力音も収音するようにされる。つまり、FB方式では、ヘッドホン装置に対して設けられたマイクロフォン103によって、外部のノイズ源110より発せられた外部ノイズと共に、振動板ユニット102からの出力音も収音することを前提とした手法となっている。このことで、図中マイクロフォン103→マイクアンプ104→FB方式NC(ノイズキャンセル)フィルタ105→加算器106→ドライブ回路108→振動板ユニット102→マイクロフォン103によるフィードバックループが形成されることになる。
マイクロフォン103による収音信号はマイクアンプ104で増幅された後、FB方式NC(ノイズキャンセル)フィルタ105に入力される。
FB方式NCフィルタ105は、上記マイクアンプ104より入力された収音信号に対して、FB方式に対応した所定の信号特性(β特性)を与える(ここでは「−β」)。ここで、このβ特性は、予め上述のフィードバックループを構成する各部の伝達関数(振動板ユニット102からマイクロフォン103までの空間伝達関数も含む)を考慮して、聴取者により外部ノイズが低減されて聴取されるようにして設定されたものとなる。換言すれば、当該β特性が上述したフィードバックループ内において与えられることで、振動板ユニット102を介して出力された音とノイズ源110からの外部ノイズとが装着部101内で空間的にミックスされた際、聴取者によって上記外部ノイズが低減されて知覚されるようになっている。
FB方式NCフィルタ105により信号特性−βが与えられた収音信号は、加算器106により、後述するEQ(イコライザ)107を介して入力されたオーディオ信号と加算され、当該加算器106による加算信号がドライブ回路108に供給される。
ドライブ回路108は、上記加算器106からの加算信号を増幅してドライブ信号を生成し、当該ドライブ信号に基づき振動板ユニット102を駆動する。
ここで、上記説明からも理解されるように、FB方式によるノイズキャンセリングシステムでは、ノイズ信号成分、オーディオ信号成分の双方が同一のフィードバックループ内に入るため、オーディオ信号成分としても、FB方式NCフィルタ105による−β特性が与えられることになる。そして、これに伴いFB方式では、オーディオ信号成分の音質劣化を招くものとなっている。
そこで、このような音質劣化の抑制を図るために、オーディオ信号に対し予めEQ107によるイコライジング処理を施すようにされている。具体的には、図示するように上記EQ107によりイコライジング処理を施したオーディオ信号を、先の加算器106に入力するようにされている。
このようにフィードバックループへの加算前に予めオーディオ信号に対するイコライジング処理を行っておくものとすれば、フィードバックループへの加算後のオーディオ信号成分の音質劣化を効果的に抑制することができる。
ところで、当然のことながらノイズキャンセリングシステムでは、遮音・消音効果の向上を図ることが重視されている。このような遮音・消音効果の向上を図る上では、ヘッドホン装置を装着した聴取者の周囲に生じているノイズの特性(外部ノイズ特性)に応じて、適切なβ特性に切り替えを行うことが有効である。つまり、例えば予め外部ノイズ特性ごとに適切とされるβ特性を複数種類用意しておき、その中から現在の環境に適したβ特性を選択的に設定するというものである。
しかしながら、上述のようにしてオーディオ信号成分の音質劣化の抑制のために、イコライジング処理を行うFB方式の場合には、このようにβ特性を可変とする場合には、設定されたβ特性に応じてEQ107の目標特性も変化させなければないらいものとなってしまう。
ここで、EQ107の実際の構成としては、例えば入力信号に対して所定の目標特性(周波数特性)を与えるアナログフィルタ回路で実現することができるが、その場合、上記のようにβ特性の切り替えに応じてイコライジングの目標特性の切り替えを可能とするには、それぞれ別々の目標特性を設定した複数のアナログフィルタ回路を設けておき、その中からオーディオ信号に対するイコライジング処理を行う回路をスイッチングにより選択するという構成を採ることになる。
このようにアナログ回路で組む場合には、複数のフィルタ回路を備えなければならないという点で、回路実装面積の拡大、及びそれに伴う装置サイズの大型化を招き、また部品点数の増加に伴うコストアップも助長されてしまう。
また、EQ107としてはDSP(Digital Signal Processor)によるデジタル信号処理で実現する構成とすることもできる。つまり、その場合はデジタルフィルタによって入力信号に所要の周波数特性を与えることになる。
この場合、デジタルフィルタを用いることから、特性の変更はフィルタ係数等のパラメータの変更で可能となり、アナログ回路とする場合のように複数のフィルタ回路を構成する必要はなくなるが、目標特性の切り替えを可能とするためにはそれぞれの特性を実現するために必要なデジタルフィルタの係数を用意しておく必要があり、その分、DSPのハードウエアリソースを多く要したり、処理負担の増化を招くものとなってしまう。
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、信号処理装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の信号処理装置は、聴取者の耳に対して装着される装着部を有し、上記装着部の内側に対して、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニットとマイクロフォンとが設けられた音響再生装置における、上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する信号処理装置であって、入力オーディオ信号を第1の目標特性に等化して第1等化信号を生成する第1の等化手段を備える。
また、上記入力オーディオ信号を第2の目標特性に等化して第2等化信号を生成する第2の等化手段を備える。
また、上記マイクロフォンにより得られる収音信号を増幅する増幅手段と、上記増幅手段により増幅された上記収音信号と上記第1等化信号とを加算して第1加算信号を生成する第1の加算手段とを備える。
また、上記第1加算信号に対し、上記音響再生装置外部に生じる外部音が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第1ノイズ低減信号を生成する第1のノイズ低減信号生成手段を備える。
また、上記第1ノイズ低減信号と上記第2等化信号とを加算して第2加算信号を生成する第2の加算手段を備える。
さらに、上記第2加算信号に基づき上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備えるものである。
また、本発明ではノイズキャンセリングシステムとして以下のように構成することとした。
すなわち、本発明のノイズキャンセリングシステムは、聴取者の耳に対して装着される装着部を有し、上記装着部の内側に対して、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニットが設けられた音響再生装置と、上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する信号処理装置とを備えて構成されるものである。
そして、上記音響再生装置は、上記装着部の内側にマイクロフォンを備える。
また、上記信号処理装置は、入力オーディオ信号を第1の目標特性に等化して第1等化信号を生成する第1の等化手段と、上記入力オーディオ信号を第2の目標特性に等化して第2等化信号を生成する第2の等化手段とを備える。
また、上記マイクロフォンにより得られる収音信号を増幅する増幅手段と、上記増幅手段により増幅された上記収音信号と上記第1等化信号とを加算して第1加算信号を生成する第1の加算手段とを備える。
また、上記第1加算信号に対し、上記音響再生装置外部に生じる外部音が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第1ノイズ低減信号を生成する第1のノイズ低減信号生成手段を備える。
また、上記第1ノイズ低減信号と上記第2等化信号とを加算して第2加算信号を生成する第2の加算手段と、上記第2加算信号に基づき上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段とを備えるものである。
上記のように本発明では、フィードバック方式によるノイズキャンセルを行う構成において、ノイズキャンセルのための信号特性(β特性)を付与する前後にオーディオ信号成分を加算するものとしている。すなわち、前側には第1の等化処理を施したオーディオ信号を、後側には第2の等化処理を施したオーディオ信号を加算するものとしている。このようにすることで、後述するようにして第1の等化処理と第2の等化処理にて設定すべき目標特性は、理論的にはβ特性と無相関(無関連)にすることができる。
なお、実際の構成において完全に無相関とすることが困難であるとされる場合にも、従来と比較すれば目標特性とβ特性との相関性(関連性)は大幅に減らすことができることに変わりはなく、その場合においても後述のような充分な効果を奏する。
このようにして本発明によれば、フィードバック方式によるノイズキャンセルを行う場合にオーディオ信号に対して施すべきとされる等化処理の目標特性と、ノイズキャンセルのためにフィードバックループに対して与えられるβ特性とを無相関(無関連)にすることができる。
これにより、β特性を可変とする場合にも、等化処理における目標特性を、変更されたβ特性に応じて変更させる必要はなくなり、その分、等化処理を実現するための構成の簡略化を図ることができる。
例えば、等化手段をアナログ回路で実現する場合には回路規模の縮小化、それに伴う装置小型化が図られ、また部品点数の削減による低コスト化が図られる。また、等化処理をデジタルシグナルプロセッサによるデジタル信号処理で実現する場合には、デジタルフィルタの係数の削減が図られ、その分ハードウェアリソースの削減や処理負担の軽減を図ることができる。
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
<従来の前入れ方式、後入れ方式>
先ずは実施の形態の説明に先立ち、従来のFB(フィードバック)方式によるノイズキャンセリングシステムで採用されていた、前入れ方式と後入れ方式について説明しておく。
図1は、従来のFB方式によるノイズキャンセリングシステムの構成を、フィードバックループを構成する各部の系の伝達関数をブロック化して表している。図1(a)は前入れ方式によるノイズキャンセリングシステムの構成を、また図1(b)は後入れ方式によるノイズキャンセリングシステムの構成を表している。
先ずは、図1(a)、図1(b)の各図に示される各伝達関数ブロックについて、先の図14にて説明したノイズキャンセリングシステムの構成と照らし合わせた場合の対応関係を説明しておく。
先ず、図中の伝達関数ブロック1(伝達関数M)は、図14におけるマイクロフォン103による伝達関数とマイクアンプ104による伝達関数を掛け合わせたものに相当する。また、伝達関数ブロック3(伝達関数−β)は、図14におけるFB方式NC(ノイズキャンセル)フィルタ105によって与えられる信号特性−βに相当する。さらに、伝達関数ブロック4(伝達関数A)は、ドライブ回路108による伝達関数に相当し、伝達関数ブロック5(伝達関数H)は、ヘッドホン装置における振動板ユニット102による伝達関数と、振動板ユニット102からマイクロフォン103までの空間の伝達関数とを掛け合わせたものに相当する。
また、図1(a)における伝達関数ブロック2(伝達関数E1)は、先の図14におけるEQ107と同様の主旨で、音質劣化の抑制を図るために入力オーディオ信号Sに与える周波数特性(目標特性)に相当するものである。
また、図1(b)における伝達関数ブロック6(伝達関数E2)としても、音質劣化の抑制を図るために入力オーディオ信号Sに与える周波数特性に相当するものである。
ここで、「前入れ方式」と「後入れ方式」とは、オーディオ信号成分のフィードバックループ内への加算を、ノイズ低減のための信号特性(−β)を与える前と後の何れで行うかを区別したものとなる。
図1(a)の場合は、伝達関数ブロック2(E1)を介した入力オーディオ信号Sを、伝達関数ブロック3(−β)と伝達関数ブロック1(M)との間に加算するものとしている。すなわち信号特性−βの付与前に加算する前入れ方式となる。
また、図1(b)の場合は、伝達関数ブロック6(E2)を介した入力オーディオ信号Sを、伝達関数ブロック3(−β)と伝達関数ブロック4(A)との間、すなわち信号特性−βの付与後に加算するものとしている。つまり、後入れ方式となる。
なお、確認のために述べておくと、先の図14に示した構成例は、EQ107の出力がFB方式NCフィルタ105とドライブ回路108との間に加算されることからも理解されるように、図1(b)に示される後入れ方式に属するものとなる。
また、図1(a)における伝達関数ブロック2としての周波数特性をE1、図1(b)における伝達関数ブロック6としての周波数特性をE2と区別して示しているように、前入れ方式の場合と後入れ方式の場合とでは、入力オーディオ信号Sに対して与えるべき周波数特性がそれぞれ異なるものとされることになる。
図1(a)における前入れ方式によるノイズキャンセリングシステムにおいては、伝達関数ブロック1(M)を介した信号成分が伝達関数ブロック2(E1)を介した入力オーディオ信号Sと加算されて、伝達関数ブロック3(−β)に入力される。そして、伝達関数ブロック3を介した信号成分は、伝達関数ブロック4(A)→伝達関数ブロック5(H)を介して出力され(図中Q1)、当該出力Q1はノイズ成分Nと空間上でミックスされて、音圧P1として聴取者に聴取されることになる。また、音圧P1は伝達関数ブロック1に入力され、これによってフィードバックループが形成される。
また、図1(b)における後入れ方式によるノイズキャンセリングシステムにおいては、伝達関数ブロック1(M)を介した信号成分が伝達関数ブロック3(−β)に入力され、当該伝達関数ブロック3を介した信号成分が、伝達関数ブロック6(E2)を介した入力オーディオ信号Sと加算されて、伝達関数ブロック4→伝達関数ブロック5を介して出力される(図中Q2)。伝達関数ブロック5からの出力Q2はノイズ成分Nと空間上でミックスされ、音圧P2として聴取者に聴取される。また音圧P2は伝達関数ブロック1に入力され、この場合としても同様にフィードバックループが形成される。
このような前入れ方式、或いは後入れ方式の何れかによる、従来のFB方式のノイズキャンセリングシステムの構成を採るとした場合は、先にも説明したように信号特性−βを可変としたときに、伝達関数ブロック2(E1)又は伝達関数ブロック6(E2)としての、音質劣化抑制のためのイコライジング処理の目標特性も変更しなければならないものとなってしまう。
このようにして、信号特性−βの切り替えに応じ、音質劣化抑制のためのイコライジング処理の目標特性も変化させなければならいという点について、以下で検証してみる。
先ずは、図1(a)に示した前入れ方式を採用する場合について検証してみる。
図1(a)にて説明したように各部の伝達関数をM、E1、−β、A、Hとし、且つ音圧P1、ノイズ成分N、伝達関数ブロック5の出力Q1(計算のための中間値として考える)を定義としたとき、前入れ方式によるノイズキャンセリングシステムでは以下の[式1][式2]の関係が成り立つことになる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
そして、これら[式1][式2]より、次の[式3]が求められる。

Figure 0004967894
ここで、ノイズ成分Nについては考慮せず、聴取者に聴取させたいオーディオ信号成分の音圧特性(つまり理想的なオーディオ信号特性)を、P1=KSとする。
なお、上記「K」の特性は、周波数特性をもたないゲイン分のみであるとすると、入力オーディオ信号Sの成分をそのまま音圧P1として伝達させることに相当し、或いはK=Hとすれば、伝達関数Hを介した特性となり、ノイズキャンセル機能を効かせないパッシブ性能と等価となり、ノイズキャンセルのON/OFFによって音の差を付けない場合に用いられる。音圧P1に特定の特性をもたせるのであれば、周波数特性を考慮してKの特性を設計すればよい。
上記のようにしてノイズ成分Nについては考慮せずにP1=KSとおくと、先の[式3]より、次の[式4]が成立する。

Figure 0004967894
そして、この[式4]より、E1は次の[式5]で表されるものとなる。

Figure 0004967894
続いて、図1(b)に示した後入れ方式の場合について検証してみる。
図1(b)に示す後入れ方式の場合のノイズキャンセリングシステムにおいては、次の[式6][式7]が成り立ち、これによって[式8]が求まる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
Figure 0004967894
そして、この場合もノイズ成分Nを考慮せずにP2=KSとおくと、上記[式8]より次の[式9]が導かれる。

Figure 0004967894
この[式9]より、E2は次の[式10]で表されるものとなる。

Figure 0004967894
このようにして、前入れ方式、後入れ方式のそれぞれの場合に対応して音質劣化抑制のためのイコライジング処理で設定されるべき目標特性E1、E2としては、それぞれ[式5][式10]で表されるものとなる。
そして、これら[式5][式10]に注目すると、E1、E2としては、それぞれβに依存するものとなることが理解できる。すなわち、E1、E2はそれぞれβと相関(関連)するものとなっており、このことで、βを可変とする場合は、それに応じてE1、E2も変更しなければならないものである。
<実施の形態としての前後入れ方式>
ここで、上記により説明した各式において、音圧P1、音圧P2を表す[式3]、[式8]に着目してみると、前入れ方式の場合における[式3]では、入力オーディオ信号Sに与えられる係数には、分子にβが含まれていることが確認できる。一方で、後入れ方式とした場合の[式8]においては、入力オーディオ信号Sに与えられる係数の分子にβが含まれないものとなっている。
この点に鑑み、本出願人は、次の図2に示されるように伝達関数ブロック3(β)の前後に対してオーディオ信号成分を加算する構成を想起した。そして、この構成について、E1、E2の試算を行ったところ、E1、E2がβと無相関(無関連)となることを確認した。
先ずは図2により、実施の形態としての前後入れ方式によるノイズキャンセリングシステムの構成について説明する。なおこの図2においても、先の図1と同様にノイズキャンセリングシステムを構成する各部を伝達関数ブロック化して表している。
この図に示されるように、実施の形態としての前後入れ方式では、先の図1(a)と同様に伝達関数ブロック2(E1)を介した入力オーディオ信号Sを伝達関数ブロック1(M)と伝達関数ブロック3(−β)との間に加算すると共に、さらに図1(b)と同様に、伝達関数ブロック6(E2)を介した入力オーディオ信号Sを伝達関数ブロック3(−β)と伝達関数ブロック4(A)との間に加算するものである。
このような前後入れ方式によるノイズキャンセリングシステムにおいて、図2に示されているように伝達関数ブロック5の出力をQ3、当該出力Q3とノイズ成分Nとが空間的にミックスされて聴取者に聴取される音圧をP3と定義すると、以下の[式11][式12]が成り立つ。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
そして、これら[式11][式12]より、[式13]が求まり、これを整理すると[式14]が導出される。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
ここで、この場合もノイズ成分Nを考慮せずにP3=KSとおくと、上記[式14]より、次の[式15]が導かれる。

Figure 0004967894
これを展開して次の[式16]とおく。

Figure 0004967894
ここで、上記[式16]において、信号特性(−β)を可変とすることを考慮してβの値を変数として考え、両辺の係数を比較してみると、E1については、次の[式17]とすればよいものとなる。

Figure 0004967894
また、E2については次の[式18]のようになる。

Figure 0004967894
これら[式17][式18]により、この場合のE1、E2はβと無相関(無関連)となることが理解できる。
このようにして実施の形態としての前後入れ方式による構成とすれば、音質劣化抑制のために入力オーディオ信号Sに対して行うべきイコライジング処理における目標特性(E1、E2)を、βと無相関なものとすることができる。すなわちこれにより、ノイズキャンセルのためにフィードバックループに対して与えるべきβ特性を可変とする場合に、目標特性E1、E2を変更する必要はないものとできる。
ここで確認のために述べておくと、上記による式中、ドライブ回路23による伝達関数A(アンプ特性A)や、マイク・マイクアンプ特性である伝達関数Mは、通常はフラットな特性であることを考えると、これらがイコライジングの特性カーブに直接影響を与えるものとはならいことになる。すなわち、上記目標特性E1に関して言えば、上記伝達関数Mを考慮してほぼフラットな特性、つまりゲイン成分だけで構成することが可能となるものである。
図3は、これら目標特性E1、目標特性E2を実現するためのイコライザの構成の具体例を示している。
この図3中の破線により囲うように、入力オーディオ信号Sに対して目標特性E1、目標特性E2を与える構成としては、入力オーディオ信号Sに対し信号特性Kを与える伝達関数ブロック7を共通に設けた上で、当該伝達関数ブロック7からの出力を分岐させて、それぞれ信号特性−Mを与える伝達関数ブロック8と、信号特性1/AHを与える伝達関数ブロック9とに入力させるものとする。
これにより、上記伝達関数ブロック7と伝達関数ブロック8とによりオーディオ信号Sに対し目標特性E1=−KMを与えることができ、一方、伝達関数ブロック7と伝達関数ブロック9とによりオーディオ信号Sに対し目標特性E2=K/AHを与えることができる。
なお、実際には、1/Hなる特性を厳密に設定することは困難であるので、これを模した特性、或いは近似した特性を設定することになる。
また、図3において、破線により囲う以外の構成は先の図2に示すものと同様であるため同一符号を付して説明は省略した。
<第1の実施の形態>
以下、上記により説明した実施の形態としての前後入れ方式を採用した、各実施の形態としての信号処理装置の構成について説明していく。
図4は、本発明の第1の実施の形態としての信号処理装置について説明するための図として、第1の実施の形態の信号処理装置を備えて構成されるオーディオプレイヤ15と、当該オーディオプレイヤ15と接続されて音響再生を行うヘッドホン11とを備えて成るノイズキャンセリングシステム10の構成を示している。なお、図4ではオーディオプレイヤ15とヘッドホン11の双方の内部構成をブロック図により示している。
ここで、以下では説明の簡単のために1チャンネル分のオーディオ信号に対応した構成のみを示すが、複数チャンネルのオーディオ信号に対応する構成とする場合には、各チャンネルごとに以下で説明するフィードバックループ系の構成を設けるものとすればよい。また、以下の説明において、「ノイズキャンセル」については単に「NC」とも表記する。
図4において、先ずヘッドホン11としては、例えば先の図14にて例示したような聴取者の耳全体を密閉するようにして覆うようにされた装着部101を有する、いわゆる密閉型のヘッドホン装置であるものとする。図示するようにヘッドホン11には、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニット12と、マイクロフォン13とが備えられている。振動板ユニット12は、装着部101の内側に対して設けられ、後述するドライブ回路23からのドライブ信号(ドライブ電圧)に基づき内部の振動板を振動させて、上記ドライブ信号に応じた音を出力するように構成される。
また、上記マイクロフォン13は、聴取者によって振動板ユニット12からの出力音とヘッドホン11外部の音(外部音)とが聴取される聴取点と近接するような位置関係となるようにして、装着部101の内側に対して設けられる。
なお、実施の形態におけるヘッドホンとしては、聴取者の耳に対して装着される装着部が単に聴取者の耳に対してあてがわれるようにされるオープンエア型と呼ばれるタイプのものや、装着部が外耳道(耳の穴)に挿入されるインナー型(イヤホン)など、他のタイプのものとすることもできる。
何れのタイプとする場合も、上記振動板ユニット12とマイクロフォン13としては、装着部の内側に対して設けられればよい。このように振動板ユニット12とマイクロフォン13とが同じ装着部の内側に対して設けられることで、マイクロフォン13によって振動板ユニット12からの出力音と外部音の双方を収音させることができる。つまり、これによってFB方式によるフィードバックループが成立するように図ることができる。
上記マイクロフォン13による収音信号は、図示するマイク入力端子Tminを介してオーディオプレイヤ15側のマイクアンプ16に対して供給され、ここで増幅される。
なお、図示の都合上省略したが、ヘッドホン11側には、実際には上記マイク入力端子Tminと接続されるマイク出力端子が備えられ、上記収音信号は、これらのマイク入/出力端子が接続されて上記マイクアンプ16に対して供給されるものとなる。
オーディオプレイヤ15側においては、上記マイクアンプ16により増幅された上記収音信号に基づきFB方式によるノイズキャンセルを行うための構成として、加算器17、イコライザ(EQ)18、第1イコライザ19、第2イコライザ20、FB方式NCフィルタ21、加算器22、ドライブ回路23が備えられている。
先ず、上記イコライザ18、第1イコライザ19、第2イコライザ20は、それぞれ先の図3に示した伝達関数ブロック7、伝達関数ブロック8、伝達関数ブロック9に対応するものであり、イコライザ18は、入力されるオーディオ信号に対して所要の信号特性Kを与えると共に、第1イコライザ19、第2イコライザ20は、先に説明した前後入れ方式に対応する音質劣化抑制のための信号特性−M、信号特性1/HMを与える。
具体的に、上記イコライザ18は、入力されるオーディオ信号に対し上記信号特性Kを目標特性としたイコライジング処理を行って、その結果を第1イコライザ19、第2イコライザ20のぞれぞれに対して供給する。第1イコライザ19は、上記イコライザ18より入力したオーディオ信号に対し、信号特性−Mを目標特性としたイコライジング処理を行い、加算器17に出力する。また、第2イコライザ20は、上記イコライザ18より入力したオーディオ信号に対し、信号特性1/HMを目標特性としたイコライジング処理を行い、加算器22に出力する。
これにより、上記加算器17に対しては、実施の形態としての前後入れ方式による前入れ側の系に対応して目標特性E1=−KMが与えられたオーディオ信号が供給される。また、上記加算器22に対しては、前後入れ方式による後入れ側の系に対応して目標特性E2=K/HMが与えられたオーディオ信号が供給されるものとなる。
なお、以下では便宜上、上記第1イコライザ19から加算器17に供給されるオーディオ信号を第1EQ信号とし、上記第2イコライザ20から加算器22に供給されるオーディオ信号を第2EQ信号とする。
なお、図示による説明は省略したが、上記イコライザ18に供給されるオーディオ信号は、オーディオプレイヤ15に備えられる図示されない再生部により再生出力されたオーディオ信号となる。つまり、この場合のオーディオプレイヤ15には、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ、或いはCD(Compact Disc)などのリムーバブルメディアに記録されたオーディオコンテンツを再生する再生部が備えられており、上記イコライザ18には、当該再生部により再生されたオーディオ信号が入力されることになる。
上記加算器17は、上記第1イコライザ19からのオーディオ信号と、先に述べたマイクアンプ16からの収音信号とが入力され、これらを加算した第1加算信号を生成する。この第1加算信号は、FB方式NCフィルタ21に対して供給される。
FB方式NCフィルタ21は、FB方式によるノイズキャンセリングシステムに対応する信号特性(β特性)を与えるフィルタ回路とされる。具体的には、信号特性−βを与える。なお、この信号特性(−β)としては、FB方式によるノイズキャンセリングシステムの系中における各回路や空間の伝達関数を考慮して、外部音がキャンセルされて聴取者に聴取されるようにするために、フィードバックループ内に与えられるべきとして設定された信号特性(周波数−振幅特性や周波数−位相特性)となる。
そしてこの場合、FB方式NCフィルタ21は、上記信号特性(−β)として複数の異なる特性を可変的に設定できるように構成されている。FB方式NCフィルタ21は、このような信号特性(−β)の切り替えを、後述する制御部25からの切替指示に基づき行うようにされる。
FB方式NCフィルタ21により信号特性−βが与えられた第1加算信号は、上述した加算器22に供給される。加算器22は、上記FB方式NCフィルタ21を介した上記第1加算信号と、第2イコライザ20から供給される第2EQ信号とを加算し、これを第2加算信号としてドライブ回路23に供給する。
ドライブ回路23は、上記加算器22により生成される第2加算信号を入力し、これを増幅して振動板ユニット12内の振動板を駆動するためのドライブ信号を生成する。
ドライブ回路23により生成されたドライブ信号は、信号出力端子Toを介してヘッドホン11の振動板ユニット12に対して供給される。
なお、このようなドライブ信号の系についても、実際には、ヘッドホン11側に上記信号出力端子Toに接続される信号入力端子が備えられ、上記ドライブ信号は、上記信号出力端子Toから当該信号入力端子を介して振動板ユニット12に供給されるものとなる。
制御部25は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリを備えたマイクロコンピュータで構成され、オーディオプレイヤ15の全体制御を行う。
制御部25に対しては、操作部24からの操作信号が供給される。操作部24は、例えばオーディオプレイヤ15の筐体外部に表出するようにして設けられた複数の操作子を備え、操作の行われた操作子に対応する操作入力信号を上記制御部25に対して供給するように構成される。
この場合、上記操作部24を介したユーザの操作入力としては、少なくともFB方式NCフィルタ21における信号特性を選択するための操作入力が可能とされる。制御部25は、このような信号特性の選択操作に応じて、選択された信号特性への切替を指示するための切替指示信号をFB方式NCフィルタ21に対して供給する。
このような第1の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム10の構成により、先に説明した実施の形態としての前後入れ方式によるノイズキャンセリングシステムを実現することができる。
前後入れ方式の採用により、第1イコライザ19、第2イコライザ20にて設定されるべき目標特性と信号特性−βとを無相関にすることができ、FB方式NCフィルタ21における信号特性−βの切り替えによらず、これら第1イコライザ19、第2イコライザ20における目標特性は一定とすることができる。
この場合、第1イコライザ19、第2イコライザ20としてはアナログ回路で構成される場合を例示しているが、このようなアナログの回路構成とする場合、従来の前入れ方式または後入れ方式を採用する際には、先に説明したようにそれぞれの信号特性−βに対応させた別々の目標特性を設定した複数のフィルタ回路を設けておく必要があったが、上記本実施の形態の構成によれば、イコライジング処理の目標特性は一定とすることができるので、上記第1イコライザ19、第2イコライザ20としてのフィルタ回路はそれぞれ1つのみ設ければよいものとすることができる。
この結果、従来と比較して回路実装面積の削減やそれによる装置の小型化が図られ、また部品点数の削減による装置製造コストの削減も図ることができる。
<第2の実施の形態>
ここで、第1の実施の形態では、FB方式NCフィルタ21としてもアナログ回路により構成するものとしているが、このようなアナログ回路構成によって信号特性−βの切り替えを可能とするためには、イコライザの場合と同様、例えばそれぞれ別々の信号特性−βを与えるように構成された複数のフィルタ回路を設け、制御部25からの切替指示信号に応じてこれら複数のフィルタ回路を選択するスイッチを設けておき、当該スイッチの切り替えによって第1加算信号に何れかのフィルタ回路による信号特性−βを与えるように構成することになる。つまり、フィルタ回路を複数備える分、回路実装スペースの拡大化に伴う装置の大型化や、コストアップなどが問題となる。
そこで、第2の実施の形態では、図4にて説明したFB方式NCフィルタ21としての動作を、DSP(Digital Signal Processor)によるデジタル信号処理によって実現するように構成する。
図5は、第2の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム30の構成を示している。第2の実施の形態のノイズキャンセリングシステム30は、先の第1の実施の形態のノイズキャンセリングシステム10の構成に基づいた上で、オーディオプレイヤ側の一部の構成のみを変更したものとなる。従って、この図5において、既に第1の実施の形態で説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
図5において、ノイズキャンセリングシステム30では、第1の実施の形態の場合のオーディオプレイヤ15に代えて、オーディオプレイヤ31が備えられる。
この場合のオーディオプレイヤ31において、マイクアンプ16からの収音信号は、A/D変換器33を介してデジタル信号に変換されてDSP35に入力される。また、オーディオ信号はA/D変換器25を介してデジタル信号に変換されてDSP35に入力される。また、DSP35により出力されるデジタル信号(第2加算信号)は、D/A変換器36を介してアナログ信号に変換されてドライブ回路23に供給される。
この図5では、DSP35が乗算器や加算器、レジスタなどのハードウエアリソースを用いたデジタル信号処理で実現する動作を、機能ごとにブロック化して示している。このような機能ブロックとして示した場合、DSP35内には、加算器17に相当する加算処理部35a、イコライザ18に相当するEQ処理部35b、第1イコライザ19に相当する第1EQ処理部35c、第2イコライザ20に相当する第2EQ処理部35d、FB方式NCフィルタ21に相当するNCフィルタ処理部35e、加算器22に相当する加算処理部35fが備えられるものとなる。
この場合、上記EQ処理部35b、第1EQ処理部35c、第2EQ処理部35dとしては、例えばIIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどで構成されたデジタルフィルタとしての信号処理により所要の周波数特性を与えるものとなる。
EQ処理部35bは、上述したA/D変換器34を介して入力されるオーディオ信号に対し、目標特性Kとしての周波数特性を与える。また第1EQ処理部35cは、上記EQ処理部35bによりイコライジング処理されたオーディオ信号に対し、目標特性−Mとしての周波数特性を与える。
また、第2EQ処理部35dは、上記EQ処理部35bによりイコライジング処理されたオーディオ信号に対し、目標特性1/HMとしての周波数特性を与える。
また、上記加算処理部35aは、A/D変換器33を介して入力される収音信号と、上記第1EQ処理部35cによりイコライジング処理されたオーディオ信号(第1EQ信号)とを加算し、第1加算信号を生成する。
NCフィルタ処理部35eは、例えばIIRフィルタなどを用いたデジタルフィルタによる信号処理によって、入力信号に所要の信号特性を与える。このようなデジタルフィルタに与えるフィルタ係数などのパラメータ(単に係数とも言う)を変更することにより、入力信号に与える信号特性を変更することができる。
NCフィルタ処理部35eは、上記デジタルフィルタの係数を、制御部32より指示された係数に変更設定する。これによって、ユーザ操作に応じて選択された信号特性−βに切り替えを行うことが可能とされている。
ここで、先の図4に示した制御部25は、アナログ回路によるFB方式NCフィルタ21に対応して、スイッチの切替制御信号としての切替指示信号を出力するものとなるが、この場合の上記制御部32は、切替・係数指示信号として、特性の切替指示と共に、操作部24に対する操作に基づき選択された信号特性−βが得られるようにするための係数も指示するようにされている。
この場合、オーディオプレイヤ31では、予め電車内や飛行機内など、聴取者が置かれるとして想定される外部環境ごとに最適とされる各種のNCモードが用意され、ユーザは、操作部24に対する操作により、これらのNCモードを選択するようにされる。制御部32は、このように選択されたNCモードと対応づけられた係数を、DSP35(NCフィルタ処理部35e)に対して指示するようにされている。
加算処理部35fは、上記NCフィルタ処理部35eにより信号特性−βが付与された第1加算信号と、第2EQ処理部35dにより生成された第2EQ信号とを加算し、第2加算信号を生成する。この第2加算信号は、先に述べたD/A変換器36に対して供給される。
上記により説明したDSP35内の各機能ブロックとしての動作は、DSP35に対するプログラミングにより実現される。
具体的に、この場合のオーディオプレイヤ31には、DSP35が読み出し可能なメモリ37が備えられ、当該メモリ37内に格納されるDSPプログラム37aに従ってDSP35が動作することで、上記により説明した各機能ブロックとしての動作が実現される。
上記により説明した第2の実施の形態としてのオーディオプレイヤ31のように、DSP35によるデジタル信号処理によって信号特性−βの切り替えを行うように構成するものとすれば、先の第1の実施の形態のようにアナログ回路による構成とする場合と比較して、部品点数の削減、それに伴う低コスト化、及び回路実装面積の縮小化による装置の小型化が図られる。
また、第2の実施の形態では、音質劣化抑制のための各イコライザの動作についてもDSP35によるデジタル信号処理で実現するものとしているが、このことによれば、アナログ回路による各イコライザの実装スペースを省略することができ、この点でも装置小型化、部品点数の省略、低コスト化を図ることができる。なお、このような装置小型化や低コスト化の効果は、DSP35のデジタル信号処理により加算器17、22としての動作も実現するようにしたことについても同様のことが言える。
なお、確認のために述べておくと、これら装置小型化や部品点数の削減などの効果は、オーディオプレイヤ31において、他の機能部位(例えば各種音声信号処理を実現する機能部位)と共用のDSP(及びA/D変換器、D/A変換器)が備えられていることを前提としたものである。つまり、もともと他の機能部位の動作実現のためのDSPが備わっていれば、そのDSPに対するプログラミングを変更するのみで、図5にて説明したDSP35としての動作を実現させることができるので、このことを考慮すれば、別途のアナログ回路による追加構成は不要とすることができ、装置小型化や部品点数の削減等の効果を得ることができるということになる。
また、第2の実施の形態の場合のように第1イコライザ18、第2イコライザ20による動作をDSPによるデジタル信号処理で実現するとした場合においても、前後入れ方式とすることによるメリットはある。つまり、従来の前入れ方式、後入れ方式とする場合において同様に各イコライザとしての動作をDSPにより実現するとした場合は、目標特性E1、E2をβに応じて可変とするために、デジタルフィルタについては、それぞれのβに応じたフィルタ特性を実現するためのパラメータ(フィルタ係数など)をメモリ上に格納しておく必要があるが、本例のように前後入れ方式としてE1、E2をβと無相関とすることができれば、格納しておくべきパラメータの種類はより少ないもの(理論的には1種のみ)とでき、その分、DSPのハードウエアリソースの削減、処理負担の軽減を図ることができる。
ここで、これまでの説明から理解されるように、本発明の本質は、音質劣化抑制のためにオーディオ信号に施すイコライジング処理の目標特性をβ特性と無相関とすることにあるが、実際においては、先の[式17][式18]に示した特性を完全にシミュレートとすることは、場合によっては困難となることが予想できなくもない。すなわち、例えば設定される信号特性−βの種類によっては、第1イコライザ18、第2イコライザ20における目標特性もこれに応じて変更しなければならい可能性があることは否定できない。
しかしながら、そのような場合にあっても、実施の形態としての前後入れ方式とすることによるメリットは依然として多分にある。そもそもノイズキャンセルのためのβ特性は、例えば300Hz以下など低周波数帯域に関し、比較的大きなゲインアップを行う(例えば30dB以上)ことでフィードバック量を稼ぎ、その効果でノイズキャンセリングを行うものとなる。このことによると、先に説明した従来の前入れ方式、後入れ方式の目標特性E1、E2では分子や分母にβが含まれているため、その分極端なゲインアップ(或いはダウン)を要するフィルタ特性が必要となってしまうことになる。これは、有限なbitの中で演算するDSPに関しては、ヘッドマージンやノイズフロアを考えると不利な処理となる。
これに対し、実施の形態の前後入れ方式を採用する場合には、原理的にはβ特性の変更に応じて目標特性E1、E2を変更させる必要はないことからも理解されるように、βの変更に応じてイコライジング処理の目標特性を変更することがあるとしても、従来方式の場合のような極端なフィルタ特性を与える必要はないものとできる。この意味で、実施の形態としての前後入れ方式は有効であり、より実用的な手法であると言える。
<第3の実施の形態>
続いて、第3の実施の形態について説明する。
図6は、第3の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム40の構成を示している。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様にDSP35によるデジタル信号処理でNCフィルタ処理を行うとした上で、別途、アナログ回路によるNCフィルタ42によりNCフィルタ処理を行う系を追加するものである。
具体的には、図中のオーディオプレイヤ41として、先の図5に示したオーディオプレイヤ31の構成に対しNCフィルタ42と加算器43とを追加するものとしている。なお、この場合のヘッドホン11の構成、及びオーディオプレイヤ41の上記NCフィルタ42と加算器43以外の構成は先の第2の実施の形態の場合と同様となるので同一符号を付して説明は省略する。
ここで、第2の実施の形態のようにNCフィルタ処理をDSP35によるデジタル信号処理で実現する場合、DSP35に対してデジタル信号による収音信号を入力するためのA/D変換器33、及びDSP35による出力信号をアナログ信号に変換するためのD/A変換器36を設けることになるが、この場合には、これらA/D変換器33、D/A変換器36における遅延がNC動作に悪影響を与えてしまうことが考えられ得る。すなわち、例えばNCの対象帯域を比較的高い周波数まで広範囲に設定する場合には、A/D変換器33、D/A変換器36における遅延が生じることによってNCフィルタ処理で付与されたNC信号成分の位相が多く回転することで、かえってノイズ成分を強調してしまったり、発振が生じやすくなってしまうといった事態を引き起こしかねない。
そこで第3の実施の形態としては、DSP35においては所定の周波数までの帯域を対象としたNCフィルタ処理を行うものとし、遅延が問題となる高域についてのNCフィルタ処理を、上記のように別途設けられたNCフィルタ42を用いて行うようにするものである。
図6において、マイクアンプ16からの収音信号は、この場合はA/D変換器33とNCフィルタ42とに分岐して供給される。NCフィルタ42は、上記マイクアンプ16から供給される収音信号に対し、固定による信号特性を付与するアナログフィルタ回路として構成される。当該NCフィルタ42に対して設定される信号特性としては、この図に示されるFB方式によるノイズキャンセリングシステムの系中における各回路や空間の伝達関数を考慮して、外部音の所定周波数以上の帯域がキャンセルされて聴取者に聴取されるようにするために収音信号に対して与えるべきとして設定された信号特性となる。
なお、以下ではDSP35によるNCフィルタ処理部35eに設定される信号特性と区別する意味で、NCフィルタ42に設定される信号特性については「−βa」と表記する。DSP35によるNCフィルタ処理部35eにおける信号特性については「−βd」とする。
確認のために述べておくと、この場合のDSP35における上記信号特性−βdとしては、外部音の所定周波数以下の帯域がキャンセルされて聴取者に聴取されるようにするために収音信号に対して与えるべきとして設定された信号特性となる。つまりこの場合のDSP35(NCフィルタ処理部35e)においては、このように所定周波数以下の帯域をキャンセルするようにして設定された複数の信号特性−βdのうちから、操作に応じた信号特性−βdを選択的に設定するようにされる。
なお、先に説明したように、NCフィルタ処理部35eとしては、制御部32から指示される係数に基づき信号特性の切り替えを行うものであることから、実際の構成においては、制御部32にて各NCモードと対応づけられる係数として、上記のように所定周波数以下の帯域がキャンセルされて聴取者に聴取されるように設定された係数を格納しておくということになる。
ここで、上記により説明したように、高域についてNCフィルタ処理を行うNCフィルタ42側では、信号特性−βaを固定の特性としているが、これは、もともとノイズキャンセルの対象とすべき帯域がオーディオ信号成分の聴き取りに障害となるとされる低域部分であって、高域部分についてノイズ特性に応じ信号特性を可変としても、聴感上の遮音効果の改善は期待できるものではないことによる。
すなわち、高域については固定の信号特性によるノイズキャンセリングで充分であって、DSP35側で低域側について可変による信号特性付与を行うものとすることで、外部ノイズ特性に応じた適切なノイズキャンセリングを行うことができるものである。
NCフィルタ42により信号特性−βaが与えられた収音信号は、図示するようにしてD/A変換器36とドライブ回路23との間に挿入された加算器43に対して供給され、ここでD/A変換器36からの出力信号(第2加算信号)と加算されてドライブ回路23に対して供給される。
次の図7は、図6に示した第3の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム40の構成を、先の図2と同様に各部を伝達関数ブロック化して示したものである。
この図7において、伝達関数ブロック1(M)は、図6との対応ではマイクロフォン13のマイク特性とマイクアンプ16のマイクアンプ特性を掛け合わせたものに相当する。また、伝達関数ブロック4(A)は、パワーアンプ特性などドライブ回路23により与えられる信号特性に相当するものとなり、伝達関数ブロック5(H)は、振動板ユニット12の構造等によって出力音に与えられる特性(いわゆるヘッドホン特性)に相当する伝達関数と、振動板ユニット12からマイクロフォン13までの空間の伝達関数とを掛け合わせたものとなる。
図示するようにして、この場合のノイズキャンセリングシステムでは、伝達関数ブロック1を介して入力された収音信号が、A/D変換器33に相当する伝達関数ブロック45(βz1)と、NCフィルタ42に相当する伝達関数ブロック50(−βa)とにそれぞれ分岐して供給される。
一方で、入力オーディオ信号Sが伝達関数ブロック46(E1)と伝達関数ブロック47(E2)とに供給される。伝達関数ブロック46は、図6におけるイコライザ処理部35bと第1EQ処理部35cとの組に相当し、入力オーディオ信号Sに対し目標特性E1を与える。また伝達関数ブロック47はイコライザ処理部35bと第1EQ処理部35cとの組に相当し、入力オーディオ信号Sに目標特性E2を与えるものとなる。
上述した伝達関数ブロック1(M)を介して入力され収音信号は、伝達関数ブロック45(βz1)を介した後、伝達関数ブロック46を介した入力オーディオ信号S(第1EQ信号)と加算され、伝達関数ブロック48(−βd)に供給され、ここで信号特性−βdが与えられる。そして、このように信号特性−βdが与えられた後、伝達関数ブロック47を介した入力オーディオ信号S(第2EQ信号)と加算され、第2加算信号として伝達関数ブロック49(βz2)に供給される。この伝達関数ブロック49は、D/A変換器36に相当するものである。
上記伝達関数ブロック49を介した第2加算信号は、上述した伝達関数ブロック50により信号特性−βaが与えられた収音信号と加算され、伝達関数ブロック4(A)に供給される。この伝達関数ブロック4以降の構成は先の図2の場合と同様となる。
ここで、この図7からも明らかなように、第3の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム40の構成とした場合は、A/D変換器33の伝達関数(βz1)及びD/A変換器36の伝達関数(βz2)も、β特性の一部に寄与するものとして扱う必要がある。また、この場合のβ特性としては、アナログパスとしてのNCフィルタ42の信号特性−βaも含める必要がある。
つまりこの場合、フィードバックループに与えられる総合的なβ特性としては、次のようになる。

β=(βz1・βd・βz2+βa)
このように「β=(βz1・βd・βz2+βa)」となる第3の実施の形態の場合、音質劣化抑制のために設定されるべき目標特性E1、目標特性E2がどのようなものとなるか、以下で検証してみる。
先ず、図7に示されているように各部の伝達関数をM、βz1、βd、βz2、E1、E2βa、A、Hとし、且つ音圧P5、ノイズ成分N、計算のための中間値Q4(伝達関数ブロック5の出力)を定義としたとき、この場合のノイズキャンセリングシステムでは以下の[式19][式20]の関係が成り立つことになる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
上記[式20]を展開すると、

Figure 0004967894
となり、さらにこの[式21]の右辺、左辺を整理して[式22]とおく。

Figure 0004967894
ここで、先の「β=(βz1・βd・βz2+βa)」の前提によると、上記[式22]は、次の[式23]とおくことができる。

Figure 0004967894
この場合もノイズ成分Nについては考慮せず、オーディオ信号成分についてのみ着目してP5=KSとおくと、上記[式23]より、次の[式24]が成立する。

Figure 0004967894
ここで、β=(βz1・βd・βz2+βa)より、[式24]は次の[式25]となる。

Figure 0004967894
さらに、[式25]について、両辺をSで除算して展開すると以下のようになる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
ここで、先の図6の説明によれば、この場合において可変とされるのは「βd」のみであり、従ってこの場合はE1、E2にβdの項目が含まれないようにすればよい。従ってこの場合は、上記[式27]についてβdを変数とみなすものとし、その上で両辺を係数比較すると、E1については[式28]、E2については[式29]とおくことができる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
これら[式28]と[式29]を整理して、[式30]、[式31]とおく。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
このとき、オーディオ信号Sに対して行われるイコライジング処理は、周波数−振幅特性を調整するものとし、周波数−位相特性は問わないものであるとすると、A/D変換器33の特性βz1、D/A変換器36の特性βz2は、ほぼ遅延に関するものとなり、また振幅特性はサンプリング周波数の半分近くまでフラットであるとすると、βz1、βz2の影響は無視することができる。
このことより、上記[式30]については[式32]とおくことができ、また[式31]については[式33]とおくことができる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
以上のようにして、この場合の目標特性E1、E2についても、βd特性に対して無相関とすることができる。
具体的に、先の図6に示した構成において、DSP35によるEQ処理部35dにて目標特性をKと設定するとした場合には、第1EQ処理部35cでは目標特性を−Mに設定し、第2EQ処理部35dでは目標特性を(1+βa)/AHと設定すればよいものとなる。
なお、この場合も厳密には1/Hなる特性を設定することは困難であるので、第2EQ処理部35dにおいては、上記(1+βa)/AHを模した、または近似した特性を設定することになる。
なお、先の第2の実施の形態については、目標特性E1、E2の導出手法についての説明は省略したが、第2の実施の形態の場合はアナログパスによるβa特性が無いということと、上記[式32][式33]とを勘案すれば、第2の実施の形態にて設定されるべき目標特性E1、E2としては、第1の実施の形態の場合と同様に[式17]、[式18]とすればよいことがわかる。
<第4の実施の形態>
図8は、第4の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム51の構成を示している。なお、この図8において、既にこれまでで説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
第4の実施の形態は、これまでの各実施の形態において信号特性の切り替えをユーザ操作に基づき行うようにしていたものを、ノイズ解析結果に基づき装置側で自動的に行うようにしたものである。
この図8に示されるように、ノイズキャンセリングシステム51としては、ヘッドホン11とオーディオプレイヤ52とを備える。オーディオプレイヤ52は、先の図6に示したオーディオプレイヤ41に対し、DSP35内にノイズ解析処理部35gとしての信号処理機能を追加したものとなっている。
また、このノイズ解析処理部35gによるノイズ解析結果に基づき、最適とされる信号特性−βdを設定するためのノイズ特性・係数対応情報37cが、メモリ37内に格納されている。このノイズ特性・係数対応情報37cは、例えば先に述べた各種のNCモードで想定される各ノイズ特性ごとに、最適とされる信号特性−βdを得るにあたってNC信フィルタ処理部35eにて設定されるべき係数が対応づけられた情報となる。
ノイズ解析処理部35gは、A/D変換器33を介してDSP35に入力された収音信号について、外部ノイズ特性を解析するための所定の音響解析処理を実行し、この解析の結果判定された外部のノイズ特性に対応する係数を、上記メモリ37内のノイズ特性・係数対応情報から読み出す。そして、このように読み出した係数を、NCフィルタ処理部35eとしてのデジタルフィルタの係数として設定する。
これにより、外部ノイズ特性に応じた最適とされる信号特性−βdに切り替えが行われるようになっている。
なお、先にも述べたように、DSP35における各機能ブロックとしての信号処理機能は、DSP35に対するプログラミングにより得ることができる。この場合、メモリ37内には、先の第2の実施の形態で説明したものと同様のDSP35としての信号処理機能に加え、上記ノイズ解析処理部35gとしての処理が実現されるようにするためのDSPプログラム37bが格納されている。
ここで、図8においては、制御部32と操作部24を省略して示しているが、これは、第4の実施の形態に係る動作について制御部、操作部が関与しないということを意味するものであって、実際の構成において、オーディオプレイヤ52の全体制御を行う制御部、ユーザの操作入力を可能とする操作部が省略されることを意味するものではない。
<第5の実施の形態>
図9は、第5の実施の形態としてのヘッドホン55の構成を示している。なお、この図においても既に説明済みの部分については同一符号を付して説明を省略する。
第5の実施の形態は、振動板ユニット12に対する駆動信号を生成するための信号処理を行う構成を、ヘッドホン装置に対して一体的に組み込んだものである。
図示するようにして、この場合のヘッドホン55には、振動板ユニット12とマイクロフォン13と共に、先の図8に示したオーディオプレイヤ52側が備えていたマイクアンプ16、A/D変換器33、A/D変換器34、DSP35、D/A変換器36、メモリ37、NCフィルタ42、加算器43、ドライブ回路23が備えられている。なおこの場合、マイクロフォン13からマイクアンプ16に対して収音信号を供給するにあたってのマイク入力端子Tminは省略される。同様に、ドライブ回路23から振動板ユニット12に対してドライブ信号を供給するにあたっての信号出力端子Toとしても省略される。
そしてこの場合、オーディオ信号は、図示するオーディオ入力端子TAinを介して、外部のオーディオプレイヤなど、オーディオ信号の再生出力を行う再生装置より入力されるものとなる。
なお、図9では、このようなヘッドホン55として、第4の実施の形態としての信号処理装置を適用した構成とする場合を例示したが、当然のことながら、第1〜第3の実施の形態としての信号処理装置の何れかを適用した構成とできることは言うまでもない。
<第6の実施の形態>
図10は、第6の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステム60の構成を示している。なお、この図においても既に説明済みの部分は同一符号を付して説明を省略する。
第6の実施の形態は、これまでDSP35による処理で実現してきた動作を、CPUの処理によって実現するようにしたものである。
図10において、ノイズキャンセリングシステム60としては、ヘッドホン11とオーディオプレイヤ61とを備える。この場合のオーディオプレイヤ61は、先の図5に示したオーディオプレイヤ31の構成に対し、DSP35、メモリ37に代えて、CPU62、メモリ部63がそれぞれ設けられる。
また、制御部32は省略され、操作部24からの操作入力信号がCPU62に対して供給されるようになっている。
なお、例えばこのようなオーディオプレイヤ61としては、特にノート型のパーソナルコンピュータやPDAなど、ポータブルタイプのコンピュータ装置を想定したものとなる。
上記メモリ部63は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Randam Access Memory)、不揮発性メモリ等、CPU62が読み出し可能な記憶手段を包括的に示している。メモリ部63には、CPU62によって次の図11で説明する処理動作を実行させるためのNC処理プログラム63aが格納されている。
図11は、上記NC処理プログラム63aに基づいてCPU62が実行する処理動作を示したフローチャートである。
なお、この図11において、CPU62では、オーディオ信号、収音信号を所定のフレーム単位で扱うものとされる。すなわち、ステップS101〜S104の処理では、信号の加算、特性付与をこのフレーム単位で行うようにされる。
先ず、ステップS101においては、オーディオ信号にE1、E2特性をそれぞれ付与するための処理を実行する。すなわち、図10に示されるA/D変換器34を介して入力されるオーディオ信号について、先の図5にて説明したEQ処理部35bと第1EQ処理部35cとの組によるものと同様の信号特性付与を行うことで、オーディオ信号に対し目標特性E1を付与した第1EQ信号を生成すると共に、図5にて説明したEQ処理部35bと第2EQ処理部35dとの組によるものと同様の信号特性付与を行うことで、上記オーディオ信号に対し目標特性E2を付与した第2EQ信号を生成する。
続くステップS102では、収音信号に第1EQ信号を加算する処理を行う。つまり、A/D変換器33を介して入力される収音信号に対し、上記ステップS101にて生成した第1EQ信号を加算して、第1加算信号を生成する。
次のステップS103では、第1加算信号に対するNCフィルタ処理を実行する。すなわち、上記第1加算信号に対し、信号特性−βを付与するための所要のフィルタ特性を有するデジタルフィルタとしての演算処理を行う。
続くステップS104では、上記ステップS103によって得られたNCフィルタ処理後の信号に、先のステップS101にて得られた第2EQ信号を加算して出力する処理を行う。
次のステップS105では、β特性の切替操作が行われたか否かを判別する。図10に示した操作部24からの操作入力に基づき、β特性の切替操作が行われたとされる状態となったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS106に進んでNCフィルタの係数を変更する処理を実行する。具体的には、先のステップS104としてのデジタルフィルタ処理で用いる係数を、切替操作に応じた係数に変更設定する処理を行う。
なおこの場合も、上記切替操作としては、実際にはNCモードを選択する操作となる。すなわち実際には、NCモードごとに係数が対応づけられたモード・係数対応情報がメモリ部63内に格納されており、CPU62は、当該モード・係数対応情報にて選択されたNCモードと対応づけられている係数をステップS104の処理で用いる係数として変更設定することになる。
上記ステップS106の処理を実行すると、図示するようにしてステップS101に戻るようにされる。
一方、上記ステップS105において、β特性の切替操作がなされていないとして否定結果が得られた場合は、ステップS106に進み、処理を終了すべき状態となったか否かを判別する。例えば、電源オフを指示する操作入力やノイズキャンセル動作の停止を指示する操作入力が行われるなど、予め設定された処理終了のための所定のトリガの発生有無を判別する。
ステップS107において、処理を終了すべき状態となっていないとして否定結果が得られた場合は、ステップS101に戻るようにされる。また、処理を終了すべき状態となったとして肯定結果が得られた場合は処理動作を終了する。
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば各実施の形態では、NCフィルタ処理において「−β」なる特性を付与するものとしたが、例えばオーディオ信号の極性を反転して−極性により入力するものとし、ドライブ回路23にて反転アンプによりオーディオ信号を増幅してドライブ信号を生成するように構成した場合には、NCフィルタ処理にて付与する信号特性は「−β」ではなく「β」となる。
図12(a)は、この場合のノイズキャンセリングシステムの構成を伝達関数ブロック化して示している。なお、図12(a)では一例として、先の第1の実施の形態の場合に対応したノイズキャンセリングシステムの構成を示している。
この場合は、上記反転アンプに対応する伝達関数ブロックとして、先の図2に示した伝達関数ブロック4(A)に代え、伝達関数ブロック66(−A)が設けられることになる。また、NCフィルタに相当する伝達関数ブロック3(−β)に代えて、伝達関数ブロック65(β)が設けられる。他の構成は図2の場合と同様となる。
ここで、この図12(a)に示す構成とした場合に、音質劣化抑制のためにオーディオ信号Sに対して施すべきイコライジング処理の目標特性E1、E2について検証してみる。
先ず、この場合の伝達関数ブロック5(H)からの出力をQ5、この出力Q5とノイズ成分Nとが空間上でミックスされて得られる音圧を音圧P5とおくと、先の図3の場合と同様に、以下の[式34][式35]が成り立つ。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
そして、これら[式34][式35]より、[式36]が求まり、これを整理すると[式37]が導出される。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
ここで、この場合もノイズ成分Nを考慮せずにP5=KSとおくと、上記[式37]より次の[式38]が導かれる。

Figure 0004967894
これを展開して次の[式39]とおく。

Figure 0004967894
さらに、上記[式39]において、この場合もβを変数として考え両辺の係数を比較してみると、E1については[式40]、E2については[式41]となる。

Figure 0004967894
Figure 0004967894
これら[式40][式41]からも明らかなように、この場合のE1、E2としてもβと無相関となる。
図12(b)は、上記目標特性E1、目標特性E2を実現するためのイコライザの構成の具体例を示している。この場合、上記[式40]からも明らかなように、前入れ側の伝達関数ブロック8(−M)は図3の場合と同様となる。一方、後入れ側については、図3の伝達関数ブロック9(1/AH)に代えて、上記[式41]に基づく−1/AHによる特性を与えるための伝達関数ブロック68が設けられることになる。
また、これまでの説明では、β特性を付与するためのフィルタ特性そのものを変化させる場合に本発明を適用するものとしたが、例えば次の図13に示されるようにして、フィードバックループ系に対しゲインコントロールのための構成を付加した場合にも本発明を適用することができる。
図13は、このようなゲインコントロールのための構成を付加した場合の信号処理装置の構成について説明するための図である。なお、この図13では先の第2の実施の形態の場合と同様にNCフィルタ処理とオーディオ信号に対するイコライジング処理をDSP35のデジタル信号処理で実現する場合の構成を例示し、DSP35以外の構成は例えば先の図2に示したものと同様となるので図示は省略している。また、この場合も、DSP35により実現される処理機能をブロック化して示しており、この図に示される各処理機能はDSP35が図中のメモリ37内に格納されるDSPプログラム37dに基づいたデジタル信号処理を行うことで実現されるものとなる。
この図13においても、既に説明済みの部分については同一符号を付して説明を省略する。
図13に示されるように、この場合のDSP35では、加算処理部35aにより得られる第1加算信号が、ゲイン調整処理部35hに対して入力される。そして、当該ゲイン調整処理部35hによるゲイン調整の施された第1加算信号がNCフィルタ処理部35eに入力されるようになっている。また、A/D変換器33を介して入力される収音信号は、加算処理部35aと共にレベル監視・ハウリング検出処理部35iに対しても分岐して供給される。
上記レベル監視・ハウリング検出処理部35iは、レベル監視機能として、例えば予め設定された所定の閾値に基づき、収音信号レベルが極大とされるレベルに到達したか否かを判定する。また、これと共にハウリング検出機能として、例えば予め設定されたハウリングの発生が予測される帯域の信号について経時的なレベル変化を検出した結果に基づき、発振によるハウリングが発生した状態となったか否かを判定する。
上記ゲイン調整処理部35hは、レベル監視・ハウリング検出処理部35iにより収音信号レベルが上記極大とされるレベルに到達したと判定された場合、及び発振によるハウリングが発生したと判定された場合に、入力信号のゲイン(つまりフィードバックループ系のゲイン)を下げるように動作する。
このような構成により、出力音のレベルが急激に極大化した場合や発振によるハウリングが生じた場合に、聴取者の耳を保護することができると共に、システムの誤動作の防止を図ることができる。
ここで、このようなフィードバックループ系のゲインコントロールを行う構成を付加した場合は、NCフィルタ処理部35eにおけるフィルタ特性が変更されなくても、ゲインの変化に伴ってフィードバックループ系全体で見た場合のβ特性が変化するものとなってしまう。
このとき、仮に上記ゲインコントロールのための構成を従来の前入れ方式や後入れ方式を採用する場合に付加したとすると、イコライジング処理の目標特性を変化させないとした場合には、フィードバックループ系のゲイン低下に対し、相対的にイコライジング処理が過剰なものとなってしまい、聴取者に対して異音を知覚させてしまうことになる。通常、このようなゲインコントロール処理は、上記のようなレベル検出結果やハウリング発生有無に応じて時間軸上で連続的に行われることから、これに伴い音質も連続的に変化してしまい、その結果、聴取者に対して大きな違和感を与える虞がある。
このような問題を回避するにあたっては、ゲインコントロールに応じてイコライジング処理の目標特性も連続的に変化させるようにすればよいが、実際において、このような処理は負担が大きく、例えばDSPで実現しようとする場合には処理に要するリソースも格段に大きくなり、実現が困難となる。
これに対し、図13に示されるように実施の形態としての前後入れ方式を採用した構成とすれば、イコライジング処理の目標特性はβ特性と無相関にできることから、イコライジング処理の目標特性を固定としても、ゲインコントロールに依る音質の変化の防止を図ることができる。すなわち、聴取者に対し違和感を与えることなく、ゲインコントロールによる保護機能・誤動作防止機能を実現することができる。
なお、上記説明では、ゲイン調整処理部35hによるゲインコントロールが、NCフィルタ処理の前に行われる場合を例示したが、これに代えてNCフィルタ処理の後に実行されるようにしてもよい。但し、ここで注意すべき点は、ゲインコントロールとしては、前後入れ方式に対応させて、第1EQ処理部35cによる等化処理が施されたオーディオ信号成分が加算された後から、第2EQ処理部35dによる等化処理が施されたオーディオ信号成分が加算される前までの間に行われるようにする必要があるという点である。すなわち、これまでの説明から理解されるように、β特性とイコライジング処理の目標特性とが無相関となるのは、前後入れ方式として、βの可変要素となる処理が第1EQ信号の加算後から第2EQ信号の加算前までの間に行われる場合である。従って、βの可変要素となるゲインコントロール処理としては、少なくとも第1EQ信号の加算後から第2EQ信号の加算前までの間に行われる必要があることになる。
また、上記説明では、ゲインコントロール処理はレベル検出とハウリング検出の結果に基づき行うものとしたが、これらの何れか一方のみ、或いはその他の検出結果に基づきゲイン調整を行うように構成することもできる。その場合も、同様にゲインコントロールに応じてイコライジング処理の目標特性を連続的に変化させずに済むという効果は同様に得ることができる。
また、図13では変形例としての動作をデジタル信号処理で実現する場合の構成を例示したが、アナログ回路により同様の動作が得られるように構成することも勿論可能である。
また、これまでの説明では、本発明の信号処理装置が、ヘッドホン単体、或いはヘッドホンと当該ヘッドホンと有線接続されるオーディオプレイヤとを備えて構成されたノイズキャンセリングシステムに適用される場合を例示したが、この他にも、例えば補聴器や携帯電話機、或いは携帯電話機による通話音声を受信・聴取するためのヘッドセットなどにも本発明の信号処理装置を適用することができる。
例えば補聴器に適用される場合、入力オーディオ信号Sは、外部の音声を収音するようにして設けたマイクロフォン(ノイズキャンセルのためのフィードバックループを形成するためのマイクロフォン13とは異なる)により収音された音声信号となる。また、携帯電話機、ヘッドセットであれば、入力オーディオ信号Sは電話通信による受信信号に基づく音声信号となる。
或いは、本発明の信号処理装置は、例えば無線により外部のオーディオプレイヤからの再生オーディオ信号を受信し、当該受信したオーディオ信号に基づき、有線接続されたヘッドホンの振動板ユニットを駆動するように構成される受信ユニットにも適用できる。この場合、ヘッドホンには振動板ユニットとマイクロフォンを備え、上記受信ユニット側に本発明の信号処理装置としての構成を与えるものとなる。
前入れ方式としてのノイズキャンセリングシステムの構成を伝達関数ブロックにより示した図である。 後入れ方式としてのノイズキャンセリングシステムの構成を伝達関数ブロックにより示した図である。 実施の形態としての前後入れ方式によるノイズキャンセリングシステムの構成を伝達関数ブロックにより示した図である。 本発明の第1の実施の形態としての信号処理装置を備えたノイズキャンセリングシステムの内部構成を示したブロック図である。 第2の実施の形態としての信号処理装置を備えたノイズキャンセリングシステムの内部構成を示したブロック図である。 第3の実施の形態としての信号処理装置を備えたノイズキャンセリングシステムの内部構成を示したブロック図である。 第3の実施の形態のノイズキャンセリングシステムの構成を、各部を伝達関数ブロック化して示した図である。 第4の実施の形態としての信号処理装置を備えたノイズキャンセリングシステムの内部構成を示したブロック図である。 第5の実施の形態としての信号処理装置を備えたヘッドホンの内部構成を示したブロック図である。 第6の実施の形態としての信号処理装置を備えたノイズキャンセリングシステムの内部構成を示したブロック図である。 第6の実施の形態の信号処理装置が備えるCPUにより行われる処理動作を示したフローチャートである。 変形例としてのノイズキャンセリングシステムの構成について説明するための図である。 変形例としての信号処理装置の構成について説明するための図である。 FB(フィードバック)方式によるノイズキャンセリングシステムの概要について説明するための図である。
符号の説明
10,30,40,51,60 ノイズキャンセリングシステム、11,55 ヘッドホン、12 振動板ユニット、13 マイクロフォン、15,31,41,52,61 オーディオプレイヤ、16 マイクアンプ、17,22 加算器、18 イコライザ(EQ)、19 第1イコライザ、20 第2イコライザ、21 FB方式NCフィルタ、23 ドライブ回路、24 操作部、25,32 制御部、33,34 A/D変換器、35 DSP、35a,35f 加算処理部、35b EQ処理部、35c 第1EQ処理部、35d 第2EQ処理部、35e NCフィルタ処理部、35g ノイズ解析処理部、35h ゲイン調整処理部、35i レベル監視・ハウリング検出処理部、36 D/A変換器、37 メモリ、37a,37b,37d DSPプログラム、37c ノイズ特性・係数対応情報、42 NCフィルタ、43 加算器

Claims (20)

  1. 聴取者の耳に対して装着される装着部を有し、上記装着部の内側に対して、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニットとマイクロフォンとが設けられた音響再生装置における、上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する信号処理装置であって、
    入力オーディオ信号を第1の目標特性に等化して第1等化信号を生成する第1の等化手段と、
    上記入力オーディオ信号を第2の目標特性に等化して第2等化信号を生成する第2の等化手段と、
    上記マイクロフォンにより得られる収音信号を増幅する増幅手段と、
    上記増幅手段により増幅された上記収音信号と上記第1等化信号とを加算して第1加算信号を生成する第1の加算手段と、
    上記第1加算信号に対し、上記音響再生装置外部に生じる外部音が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第1ノイズ低減信号を生成する第1のノイズ低減信号生成手段と、
    上記第1ノイズ低減信号と上記第2等化信号とを加算して第2加算信号を生成する第2の加算手段と、
    上記第2加算信号に基づき上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
    を備えることを特徴とする信号処理装置。
  2. 上記第1の等化手段における上記第1の目標特性が、上記マイクロフォンによる伝達関数と上記増幅手段が備えるマイクアンプによる伝達関数とに基づき設定され、
    上記第2の等化手段における上記第2の目標特性が、上記駆動信号生成手段が備えるアンプによる伝達関数と上記振動板ユニットによる伝達関数と上記振動板ユニットから上記マイクロフォンまでの空間の伝達関数とに基づき設定されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  3. 上記第1の目標特性は、上記マイクロフォンによる伝達関数と上記増幅手段が備えるマイクアンプによる伝達関数とを掛け合わせた伝達関数に基づき設定され、
    上記第2の目標特性は、上記駆動信号生成手段が備えるアンプによる伝達関数をA、上記振動板ユニットによる伝達関数と上記振動板ユニットから上記マイクロフォンまでの空間の伝達関数とを掛け合わせた伝達関数をHとしたとき、1/AHに基づく特性が設定される、
    ことを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
  4. 上記第1のノイズ低減信号生成手段は、
    複数の上記信号特性から選択した信号特性を上記第1加算信号に対して付与するように構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  5. 少なくとも上記第1のノイズ低減信号生成手段がデジタルシグナルプロセッサによるデジタル信号処理により実現されるように構成されている、
    ことを特徴とする請求項4に記載の信号処理装置。
  6. さらに、上記第1の等化手段、上記第1の加算手段、上記第2の加算手段が上記デジタルシグナルプロセッサによるデジタル信号処理により実現されるように構成されている、
    ことを特徴とする請求項5に記載の信号処理装置。
  7. 上記収音信号に基づいて上記外部音についての解析を行った結果に基づき、上記第1のノイズ低減信号生成手段における信号特性が切り替えられるように制御を行う切替制御手段を備える、
    ことを特徴とする請求項4に記載の信号処理装置。
  8. 上記第1のノイズ低減信号生成手段に設定される上記信号特性は、上記外部音の第1の周波数帯域の成分がキャンセルされて上記聴取者に聴取されるようにして設定されており、
    上記増幅手段により増幅された収音信号を入力すると共に、当該収音信号に対し、上記外部音における上記第1の周波数帯域よりも高域となる第2の周波数帯域の成分が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第2ノイズ低減信号を生成する第2のノイズ低減信号生成手段と、
    上記第2ノイズ低減信号と上記第2加算信号とを加算して第3加算信号を生成する第3の加算手段をさらに備えると共に、
    上記駆動信号生成手段は、上記第3加算信号に基づき上記駆動信号を生成する、
    ことを特徴とする請求項4に記載の信号処理装置。
  9. さらに、上記第1の加算手段により生成される上記第1加算信号、又は上記第1のノイズ低減信号生成手段により生成される上記第1ノイズ低減信号についてゲイン調整を行うゲイン調整手段を備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  10. 聴取者の耳に対して装着される装着部を有し、上記装着部の内側に対して、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニットとマイクロフォンとが設けられた音響再生装置における、上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する信号処理方法であって、
    入力オーディオ信号を第1の目標特性に等化して第1等化信号を生成する第1の等化手順と、
    上記入力オーディオ信号を第2の目標特性に等化して第2等化信号を生成する第2の等化手順と、
    上記マイクロフォンにより得られる収音信号を増幅する増幅手順と、
    上記増幅手順により増幅した上記収音信号と上記第1等化信号とを加算して第1加算信号を生成する第1の加算手順と、
    上記第1加算信号に対し、上記音響再生装置外部に生じる外部音が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第1ノイズ低減信号を生成する第1のノイズ低減信号生成手順と、
    上記第1ノイズ低減信号と上記第2等化信号とを加算して第2加算信号を生成する第2の加算手順と、
    上記第2加算信号に基づき上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手順と、
    を備えることを特徴とする信号処理方法。
  11. 上記第1の等化手順における上記第1の目標特性が、上記マイクロフォンによる伝達関数と上記増幅手順で用いるマイクアンプによる伝達関数とに基づき設定され、
    上記第2の等化手順における上記第2の目標特性が、上記駆動信号生成手順で用いるアンプによる伝達関数と上記振動板ユニットによる伝達関数と上記振動板ユニットから上記マイクロフォンまでの空間の伝達関数とに基づき設定されている、
    ことを特徴とする請求項10に記載の信号処理方法。
  12. 上記第1の目標特性は、上記マイクロフォンによる伝達関数と上記増幅手順で用いるマイクアンプによる伝達関数とを掛け合わせた伝達関数に基づき設定され、
    上記第2の目標特性は、上記駆動信号生成手順で用いるアンプによる伝達関数をA、上記振動板ユニットによる伝達関数と上記振動板ユニットから上記マイクロフォンまでの空間の伝達関数とを掛け合わせた伝達関数をHとしたとき、1/AHに基づく特性が設定される、
    ことを特徴とする請求項10に記載の信号処理方法。
  13. 上記第1のノイズ低減信号生成手順では、
    複数の上記信号特性から選択した信号特性を上記第1加算信号に対して付与する、
    ことを特徴とする請求項10に記載の信号処理方法。
  14. 少なくとも上記第1のノイズ低減信号生成手順をデジタルシグナルプロセッサによるデジタル信号処理により行う、
    ことを特徴とする請求項13に記載の信号処理方法。
  15. さらに、上記第1の等化手順、上記第1の加算手順、上記第2の加算手順を上記デジタルシグナルプロセッサによるデジタル信号処理で行う、
    ことを特徴とする請求項14に記載の信号処理方法。
  16. 上記収音信号に基づいて上記外部音についての解析を行った結果に基づき、上記第1のノイズ低減信号生成手順における信号特性が切り替えられるように制御を行う切替制御手順を備える、
    ことを特徴とする請求項13に記載の信号処理方法。
  17. 上記第1のノイズ低減信号生成手順で設定される上記信号特性は、上記外部音の第1の周波数帯域の成分がキャンセルされて上記聴取者に聴取されるようにして設定されており、
    上記増幅手順により増幅した収音信号を入力すると共に、当該収音信号に対し、上記外部音における上記第1の周波数帯域よりも高域となる第2の周波数帯域の成分が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第2ノイズ低減信号を生成する第2のノイズ低減信号生成手順と、
    上記第2ノイズ低減信号と上記第2加算信号とを加算して第3加算信号を生成する第3の加算手順をさらに備えると共に、
    上記駆動信号生成手順では、上記第3加算信号に基づき上記駆動信号を生成する、
    ことを特徴とする請求項13に記載の信号処理方法。
  18. さらに、上記第1の加算手順により生成される上記第1加算信号、又は上記第1のノイズ低減信号生成手順により生成される上記第1ノイズ低減信号についてゲイン調整を行うゲイン調整手順を備える、
    ことを特徴とする請求項10に記載の信号処理方法。
  19. 聴取者の耳に対して装着される装着部を有し、上記装着部の内側に対して、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニットとマイクロフォンとが設けられた音響再生装置における、上記振動板を駆動するための駆動信号を生成するにあたって、上記マイクロフォンによる収音動作に基づき得られる収音信号とオーディオ信号とを入力して処理するようにされた信号処理装置によって実行されるプログラムであって、
    上記オーディオ信号を第1の目標特性に等化して第1等化信号を生成する第1の等化処理と、
    上記オーディオ信号を第2の目標特性に等化して第2等化信号を生成する第2の等化処理と、
    上記マイクロフォンによる収音動作に基づき得られる収音信号と上記第1等化信号とを加算して第1加算信号を生成する第1の加算処理と、
    上記第1加算信号に対し、上記音響再生装置外部に生じる外部音が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第1ノイズ低減信号を生成する第1のノイズ低減信号生成処理と、
    上記第1ノイズ低減信号と上記第2等化信号とを加算して第2加算信号を生成する第2の加算処理と、
    を上記信号処理装置に実行させるプログラム。
  20. 聴取者の耳に対して装着される装着部を有し、上記装着部の内側に対して、音響再生のための振動板を備えた振動板ユニットが設けられた音響再生装置と、上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する信号処理装置とを備えて構成されるノイズキャンセリングシステムであって、
    上記音響再生装置は、
    上記装着部の内側にマイクロフォンを備え、
    上記信号処理装置は、
    入力オーディオ信号を第1の目標特性に等化して第1等化信号を生成する第1の等化手段と、
    上記入力オーディオ信号を第2の目標特性に等化して第2等化信号を生成する第2の等化手段と、
    上記マイクロフォンにより得られる収音信号を増幅する増幅手段と、
    上記増幅手段により増幅された上記収音信号と上記第1等化信号とを加算して第1加算信号を生成する第1の加算手段と、
    上記第1加算信号に対し、上記音響再生装置外部に生じる外部音が低減されて上記聴取者に聴取されるようにして設定されたフィードバック方式に対応する信号特性を与えることで、第1ノイズ低減信号を生成する第1のノイズ低減信号生成手段と、
    上記第1ノイズ低減信号と上記第2等化信号とを加算して第2加算信号を生成する第2の加算手段と、
    上記第2加算信号に基づき上記振動板を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段とを備える、
    ことを特徴とするノイズキャンセリングシステム。
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