JP4967500B2 - インク組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、所定濃度以上のリチウムイオンを含むインク組成物が、インクカートリッジなどのプラスチック製容器や部材と接触した際に、該プラスチック製容器や部材に含まれる高級脂肪酸やその塩に起因して生じる水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の塩の析出を防止又は抑制され目詰まり等が防止された該インク組成物に関する。
インクジェット記録は、微細なノズルからインク組成物を小滴として吐出し、文字や画像(以下、単に「画像」ということもある。)を記録媒体表面に記録する方法である。インクジェット記録方式としては、電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換し、ノズルヘッド部分に貯えたインク組成物を断続的に吐出して記録媒体表面に文字や画像を記録する方法、ノズルヘッド部分に貯えたインク組成物を吐出部分に極近い一部を急速に加熱して泡を発生させて、その泡による体積膨張で断続的に吐出して、記録媒体表面に文字や画像を記録する方法等が実用化されている。
また、インクジェット記録用のインク組成物としては、安全性や印字特性の面から各種染料を水又は有機溶剤、あるいはそれらの混合液に溶解させたものが一般的であるが、様々な特性において、万年筆やボールペンの様な筆記具用インク組成物に比較し、より厳密な条件が要求される。
特に、近年になって、広告用の印刷物の作成にインクジェットプリンタが採用されるようになっており、複数のインク組成物を使用してカラー画像を形成する際には一段と厳しい要求がなされるようになってきている。カラー画像の形成に用いられるインク組成物には、それ自体が良好な発色性を有していることに加え、光沢紙への印刷においてブロンジングのないことや、印字物のその後の保存において変褪色しないこと等の基本的な特性が求められる。また、印字物が室内はもちろんのこと室外にも設置されることがあるため、太陽光をはじめとして種々の光や外気(オゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物等)に晒されることとなり、耐光性、耐ガス性に優れたインク組成物の開発がなされている。これらの特性は着色剤として使用する化合物に依存するところが大きい。
ところが、耐光性、耐ガス性に優れたインク組成物は、その着色剤自体の水溶性が低い傾向にあり、安定した吐出性が得にくいばかりでなく、特にシアン系インク組成物においては光沢紙上でのブロンジングの発生を生じやすいという課題がある。
また、インク組成物は、取り扱いやすい水性溶媒を用いる傾向にあり、着色剤を含め種々の有機系添加剤の水性溶媒中への溶解度を保持するため、リチウム塩を用いることが行われている。具体的には、着色剤のカウンターイオンとしてリチウムイオンを用いるが、リチウム塩を用いると、着色剤の水溶性が高められること、シアン系着色剤において記録物(光沢紙)上でのブロンジングを生じにくいことが知られている。また、シアン系着色剤においてナフタレン骨格にカルボキシル基をもつ化合物(2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等)のリチウム塩を用いることでもシアン系インク組成物のブロンジングを抑制できることが分かっている(特許文献1参照)。しかし、いずれの場合も、インク組成物中のリチウムイオン濃度が増すこととなる。
一方、これらのインクジェット記録用のインク組成物は、インク収容室をもつインクカートリッジに充填され、プリンタにセットされて使用されている。このインクカートリッジを構成する部材には、多くの場合、加工が容易であり、かつコストの安い、種々のプラスチックが用いられている。一般にプラスチックには多くの添加剤が使用されるが、その中には滑剤として用いられる、ステアリン酸に代表される高級脂肪酸が含まれる。この高級脂肪酸は、金属(K,Na,Li等)と結合すると多くの場合、水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の塩を形成する。そのため、インク組成物に接触したプラスチックからインク組成物中に高級脂肪酸が溶出し、インク組成物中の金属と結合して、経時に水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の塩が析出し、目詰まり等の原因となる場合がある。
本発明者らは、金属がリチウムの場合において、他の1価金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)よりもさらに水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の塩を生ずることを確認している。
すなわち、上述のリチウムイオンを多量に含むインク組成物を、前記インクカートリッジに充填し供給する場合、インク組成物中のリチウムイオンがある一定濃度を越えると、経時に、水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の脂肪酸のリチウム塩を析出し、目詰まり等の原因となるという問題を生ずる。
上記の問題に対し、例えば、インクと接触するインクタンクの材料中の脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体類の含有量を規定したインクジェット記録装置が提案されている(特許文献2参照)。あるいは、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体類を含有するインクタンクと接触するインク中のナトリウムイオン濃度を規定したインクジェット記録装置が提案されている(特許文献3参照)。また、インク中の脂肪酸含有量を規定した水性インク及びこれを用いたインクジェット記録方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、上記の各技術でも、上述の種々の特性に優れた着色剤を使用したときの水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の脂肪酸リチウム塩の析出を十分に防止することができず、ブロンジングなどのない高い印刷品質や耐光性、耐ガス性等の印字物の保存性と、プラスチック製容器や部材と接触する状態での長期保存時のプリンターの目詰まり等の防止とを、両立できないという課題があった。
特開2004−263155号公報 特許第2874691号公報 特許第2696841号公報 特開平9−3374号公報
本発明は、上記の問題点を解消し、インク組成物とインクカートリッジ等の部材との接触によって生ずる、水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の脂肪酸塩の析出に起因する目詰まり等の弊害を防止したインク組成物を提供するものである。
本出願人は、上記の課題を解決するために、先に、特定濃度のリチウムイオンを含有するインク組成物に、1,2−アルカンジオールあるいは式2で表される化合物を配合して、不溶性もしくは難溶性のリチウム塩に起因する目詰り防止効果を図ったインク組成物を提案している(特開2005−47988参照)。
[化1]
R−X−(C24O)n−(C36O)m−H 式2
(式2中、Rは炭素数4〜20のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、Xは−O−、−COO−又は−NH−を表し、m及びnはそれぞれ独立に0以上20未満の整数を表し、かつ、m+nは1以上30未満である。)
本発明者等は、上記先提案のインク組成物について更なる検討を重ねた結果、先願発明では、高級脂肪酸塩を溶解させるために、上記のように1,2−アルカンジオールあるいは式2で表される化合物を用いているが、これらの化合物とはまったく異なる化合物である特定の化学式で表される特定のグリコールエーテルを用いることで、先願発明以上の効果を奏するとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、具体的には、以下の構成を有する。
(1)炭素数8〜22の高級脂肪酸を含むインク接触部材と接触するインク組成物であって、前記インク組成物は、少なくとも水着色剤、前記インク組成物全量に対して0.01重量%以上のリチウムイオン、及び下記式1で表されるグリコールエーテルのうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記リチウムイオンと下記式1で表されるグリコールエーテルとの重量比が、1:5〜1:30であることを特徴とするインク組成物。
(式1中、nは1〜3の正数、R1はH又は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数5〜7のアルキル基、R3はH又はメチル基を示す。)
)リチウムイオンと、上記式1で表されるグリコールエーテルの重量比が、1:10〜1:30であることを特徴とする(1)に記載のインク組成物。
)上記式1で表されるグリコールエーテルが、下記式11又は式12で表されるグリコールエーテルであることを特徴とする(1)又は)に記載のインク組成物。
〔化3〕
1O−[CH2−CH2−O]n−R2 式11
1O−[CHCH3−CH2−O]n−R2 式12
(式11および式12中、R2は炭素数5又は6のアルキル基を示し、R1とnは式1と同じ。)
)上記式1で表されるグリコールエーテルが、式1中のR2が炭素数6のアルキル基であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
)上記式1で表されるグリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルであることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
)上記式1で表されるグリコールエーテルの含有量が全インク組成物中、0.2〜5重量%であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
)さらに、上記式1で表されるグリコールエーテル以外のグリコールエーテル類を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
)全グリコールエーテルの含有量が全インク組成物中、6〜12重量%であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
)上記式1で表されるグリコールエーテルの含有量が、全グリコールエーテル中、5〜40重量%であることを特徴とする()または()に記載のインク組成物。
10)インクジェット記録方法において用いられることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
11)前記インクジェット記録方法が、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法であることを特徴とする(10)に記載のインク組成物。
12)(1)〜(10記載のインク組成物の中の少なくとも1つを、それぞれ独立に又は一体的に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
13)インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として(1)〜(11)のいずれかに記載のインク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
14)(1)〜(11)のいずれかに記載のインク組成物を用いて記録された、又は(13)に記載の記録方法により記録されたことを特徴とする記録物。
なお、本発明において、リチウムイオンの重量は、イオンではなく金属として換算された重量の値とする。
本発明は、上記構成により、リチウムイオンを先提案のものより多量に含むインク組成物であっても、式1で表される特定グリコールエーテルを少ない量で配合することにより、プラスチック製のインクカートリッジやインクタンクなどのインク接触部材との接触による不溶もしくは難溶性の異物の析出を防止又は抑制することができ、目詰まり特性が向上するという効果を奏することができる。
また、本発明のインク組成物によれば、リチウムイオン量210ppm未満のインク組成物においても確認されている高級脂肪酸のリチウム塩の析出を、有効に防止・抑制することができ、印刷画像品質のさらなる向上を確保することがきる。
本発明に係るインク組成物は、リチウムイオンをインク組成物全量に対し0.01重量%以上含有する場合において効果がある。画像品質の寿命を数十年単位で延長させた最近のインク組成物においては、高濃度でリチウムイオンを含有する場合はもとより、この程度の低い濃度でリチウムイオンを含有する場合であっても、滑剤としてステアリン酸などの高級脂肪酸を含有するプラスチック製のインクカートリッジやインクタンクなどに収納しておくと、インク組成物と前記部材の接触によって経時にインク組成物中に高級脂肪酸が溶出したときに、水・有機溶媒に不溶もしくは難溶の高級脂肪酸リチウム塩が析出し、これが異物として、印刷時の目詰まり等を引き起こしたり、あるいは目詰まりが生じずに印刷できたとしても、画像品質の低下を招くことがある。
上記のインク接触部材の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ナイロン、不飽和ポリエステル樹脂、PET、アラミド樹脂等の樹脂や、スチレンブタジエンゴム(SBR),ブタジエンゴム、クロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、EPDM、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴム等があげられる。
これらの部材は、前述の通り、一般に高級脂肪酸類を含有する。高級脂肪酸類としては炭素数8〜22のものが一般に使用され、中でもステアリン酸及びその塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸及びその塩、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸及びその塩、ベヘン酸アミド、オレイン酸及びその塩、オレイン酸アミド、エルカ酸及びその塩、エルカ酸アミド等から選ばれる一種又は二種以上が使用されている。
本発明のインク組成物は、インク接触部材からインクへの高級脂肪酸溶出量が多い部材からなるインクカートリッジやインクタンクなどに収納されて供給、保存、使用される場合に特に好適である。
本発明のインク組成物は、上記高級脂肪酸リチウム塩を可溶化させる成分として、上記式1で表されるグリコールエーテルを含有する。
式1において、R2の炭素数が1のものは、高級脂肪酸リチウム塩を可溶化する能力が極めて低く、この炭素数が大きくなるほど可溶化能は向上し、炭素数5以上で飛躍的に向上して、炭素数6のもので、可溶化能力と式1で表されるグリコールエーテルの溶解性をよりよく両立させることができる一方で、炭素数が大きすぎると、このグリコールエーテル自体の溶解性が低下してしまい、8以上の炭素数のものではインク組成物の製造が極めて困難ないしは不可能となるため、7以下の炭素数とする必要がある。
また、R1は炭素数が1〜3のアルキル基、R3はH又はCH3基であり、nは1〜3の正数であれば、画像品質を低下させることなく、上記高級脂肪酸リチウム塩を十分に溶解することができる。
上記式1で表されるグリコールエーテルは、上記式11と式12で表すことができ、式11および式12中のR2は炭素数5又は6のアルキル基が好ましい。
また、式11で表されるグリコールエーテルの少なくとも1種、式12で表されるグリコールエーテルの少なくとも1種、あるいは式11で表されるグリコールエーテルの少なくとも1種と式12で表されるグリコールエーテルの少なくとも1種との混合体を使用することもでき、この式11で表されるグリコールエーテルの少なくとも1種と式12で表されるグリコールエーテルの少なくとも1種を混合して使用する場合の、両グリコールエーテルの割合は特に限定されず、どのような割合であってもよい。
上記式1(式11、式12)で表されるグリコールエーテルは、上記のように、R2の炭素数6のものが高級脂肪酸リチウム塩の可溶化能力と、このグリコールエーテルの溶解性とを、よりよく両立させる機能を有しており、本発明においては特にジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルが好適である。
インク組成物中のリチウムイオンと、式1で表されるグリコールエーテルの重量比は、1:5〜1:30であることが好ましく、脂肪酸リチウム塩の溶解能力向上の観点からは1:10〜1:30であることがより好ましい。
式1で表されるグリコールエーテルがリチウムイオンに対して上記範囲内であれば、高級脂肪酸リチウム塩の析出を十分に防止することができ、目詰まり等のインク吐出弊害を有効に防止して吐出安定性を向上させることができ、高い画像品質(ブリードや速乾性等を良好にすることができる)を得ることができる。
式1で表されるグリコールエーテルはインクの浸透促進剤としての作用をも有しているが、本発明では、浸透促進剤としてこれら以外のグリコールエーテル類の少なくとも1種を、これらのグリコールエーテルと共に配合することが好ましい。
この浸透促進剤としてのグリコールエーテル類を添加することにより、本発明のインク組成物の接液性(インク組成物がプリンタにおいて接する各種部材や接着剤へのアッタクをいい、アタックが強くなると、部材の溶解や亀裂の発生、あるいは接着剤の溶解に伴う剥がれが発生する場合がある)を悪化させずに浸透性を向上させるとともに、カラー印刷を行った場合の隣合うカラーインクとの境界のブリードが減少し、速乾性が向上し、極めて鮮明な画像を得ることができる。一方において、式1で表されるグリコールエーテル以外のグリコールエーテルのみを含むインク組成物においては、高級脂肪酸リチウム塩に対して多少の溶解能はあるものの、本発明のインク組成物におけるような優れた溶解能を得ることはできない。従って、本発明のインク組成物においては、両者を含むことが好ましい。
式1で表されるグリコールエーテルは、全インク組成物中0.2〜5重量%、好ましくは1〜4重量%の範囲で含有していることが適しており、また全グリコールエーテル中5〜40重量%の範囲で含有していることが好ましい。
本発明のインク組成物の着色剤は、耐光性及び耐ガス性等を大きく損ねない範囲で種々の着色剤を用いることができ、通常のインク、とりわけインクジェット記録に使用される染料、又は顔料が使用できる。
染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応性染料等を使用することができる。また、顔料としては、有機顔料と無機顔料を使用することができる。
本発明で用いるインク組成物においては、前記の着色剤を1種で、又は2種以上を混合して、使用することができる。また着色剤の含有量は、インク組成物全量に対し0.5〜12重量%が好ましく、より好ましくは1.0〜10重量%である。
さらに、本発明は、着色剤のカウンターイオンとしてリチウムイオンを持つ場合において有効である。
本発明のインク組成物は、主溶媒として、水又は水と水溶性有機溶媒の混合液を使用することが好ましい。
水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を用いることができる。また、長期保存の観点から、紫外線照射や過酸化水素添加などの各種化学滅菌処理を施した水が好ましい。
本発明のインク組成物において、主溶媒として使用される場合の水の含有量は、インク組成物の全重量に対し、40〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。
本発明のインク組成物は、さらに蒸気圧が純水よりも小さい水溶性有機溶剤及び/又は糖類から選ばれる保湿剤を含むことができる。保湿剤を含むことにより、インクジェット記録方式において、水分の蒸発を抑制してインクを保湿することができる。また、水溶性有機溶剤であれば、吐出安定性を向上させたり、インク特性を変化させることなく粘度を容易に変更させたりすることができる。
水溶性有機溶剤は、溶質を溶解する能力を持つ媒体を指しており、有機性で蒸気圧が水より小さい水溶性の溶媒から選ばれる。具体的には、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピレンアルコール、n−ブチルアルコール等のアルキルアルコール類、アセトニルアセトン等のケトン類、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール、グリセリン等が挙げられる。
また、糖類は、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等が挙げられる。
上記の保湿剤は、インク組成物全量に対して5〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の範囲で添加されることが適している。5重量%以上であれば、保湿性が得られ、また50重量%以下であれば、インクジェット記録に用いられる粘度に調整しやすい。
さらに、本発明のインク組成物には、インクの速やかな定着( 浸透性) を得ると同時に、1ドットの真円度を保つのに効果的な添加剤として、ノニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられるが、市販の例えば、エアープロダクツ社のサーフィノール104、82、465、485、TGや日信化学社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010等が使用可能である。その添加量は、少なすぎれば十分な浸透性が得られず、多すぎても画像の滲みの発生を生じやすいため、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%が適しているとする。
また、本発明のインク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、アルギン酸ナトリウム等の水溶性ポリマー、水溶性樹脂、フッ素系界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加することができる。
pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤の例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類およびそれらの変性物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム等)等のアンモニウム塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩類や燐酸塩類等、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン類、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素等の尿素類、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレット等のビウレット類等、L−アスコルビン酸およびその塩類を挙げることができる。
防腐剤、防黴剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社製、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN(商品名))等が挙げられる。
これらの成分は、単独又は各群内および各群間において複数種選択して混合して用いることもできる。
本発明のインク組成物において、インク組成物の全ての成分の量は、インク組成物の粘度が20℃で10mPa・s未満であるように選択されるのが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、その表面張力が20℃で45mN/m以下であるのが好ましく、より好ましくは25〜45mN/mの範囲である。
さらに、本発明のインク組成物は、20℃におけるpHが8.0〜10.5の範囲になるよう調整されるのが好ましい。
本発明のインク組成物の調製方法としては、例えば、各成分を十分混合溶解し、孔径0.8μmのメンブランフィルターで加圧濾過したのち、真空ポンプを用いて脱気処理して調製する方法などがある。
本発明のインク組成物はペン等の一般の筆記具類、記録計、ペンプロッター、スタンプ等に好適に使用することができるが、インクジェット記録用インク組成物としてさらに好適に使用できる。
このインクジェット記録方法は、インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させる方法である。例えば、(1)静電吸引方式(ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから噴射されたインク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式)、(2)小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式(噴射したインク滴は噴射と同時に帯電され、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式)、(3)圧電素子を用いる方式(インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式)、(4)熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式(インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱起泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式)が挙げられる。
本発明のインク組成物は、色毎にそれぞれを独立させて、あるいは一体的にインクカートリッジに収容して使用されることが好ましい。
本発明における記録媒体は、例えば、紙(ゼロックスP(商品名:富士ゼロックス社製)、Xerox 4024(商品名:Xerox Co.(米国))、写真用紙クリスピア<高光沢>(商品名:セイコーエプソン社製)など)等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。また、写真画質を印刷する場合の記録媒体は、JIS Z 8741に準拠した光沢度計を用いて、測定角度60°で測定した光沢度が30以上であるものが好ましい。
特に、インクジェット専用記録媒体である「写真用紙クリスピア<高光沢>:型番 KA420SCK(セイコーエプソン株式会社製):JIS Z 8741に準拠した光沢度計(PG−1M:日本電色工業株式会社製)を用いて、測定角度60°で測定した光沢度が63」が好ましい。
本発明の記録物は、前述の構成のインク組成物を用いて、上記インクジェット記録方法により記録が行われたものであり、本発明のインク組成物を用いることにより、印字品質が良好な記録物を得ることができる。
次に本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例中に記述した材料、組成、及び作成方法に何等限定されるものではない。
<インク組成物の調製>
表1〜表4に示す配合比で各成分を常温にて1時間攪拌した後、0.8μmのメンブランフィルターで濾過して、各インク組成物を得た。なお、表中に示すインクの各成分量はインク全量に対する各成分の重量%を示す。
表1〜表4中、*1はC.I.ダイレクトブルー199であり、図1に示す分光特性を有しており、*2はAir Products社製アセチレングリコール系界面活性剤、*3はアーチケミカルズジャパン社製防腐・防かび剤、*4の有効溶剤量は式1で表されるグリコールエーテルの総量である。
本実施例及び比較例において、インク中にリチウムイオンを含有させる化合物の例として、着色剤にはカウンターイオンがリチウムカチオンである下記式3で表される化合物のリチウム塩を用い、また、添加剤には、ブロンズ現象の緩和・解消剤として添加されるナフタレンカルボン酸の中和剤(pH調整剤)として水酸化リチウム1水和物を用いた。
式3
これらのインク組成物について以下の試験を行った。結果を表5に示す。
但し、比較例4及び比較例9に関しては、インク作成時に内容物の分離が発生し、均一なインクが作成できなかったため、下記の評価を断念した。
<耐材料試験>
インクカートリッジに用いられるプラスチック材料と同一の材料(高級脂肪酸類としてステアリン酸を1.4224重量%含むポリプロピレン樹脂)で30mm×40mm×2mmの平板を作製し、これを上記インク組成物10gを入れたテフロン(登録商標)製容器に4枚を平板同士が重ならないように投入して密閉し、この容器を70℃の環境下で6日間放置した。その後、この容器を0℃の環境下で3日間冷却した後、容器内のインク組成物を10μmの金属フィルターにて析出物をろ過した。金属フィルター上に濾集された異物量と濾過の状況により耐材料性を下記の判定基準で評価した。
A:異物が全く濾集されない。
B:若干の異物が濾集されるが、インク全量の濾過が可能であった。
C:多少の異物が濾集されるが、インク全量の濾過が可能であった。
D:かなりの異物が濾集されるが、インク全量の濾過が可能であった。
E:異物が山積され目詰まりを起こし、インク全量を濾過する事ができなかった。
<耐ブロンズ試験>
インクジェットプリンタPM−A700(商品名:セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷試験を行った。このプリンタ用の専用シアンカートリッジに、実施例7〜17及び比較例5〜8,10,11のインク組成物をそれぞれ充填した。
このカートリッジを前記プリンタに装着し、25℃、50%RHの環境下で、写真用紙クリスピア<高光沢>:型番 KA420SCK(セイコーエプソン株式会社製)に、1インチ平米当たり1.5〜2.2mgの打ち込み量になるようにベタ印字し印刷物を得た。
得られた印刷物を、光沢度計(PG−1M:日本電色工業株式会社)を用いて、測定角度60°で測定し、印刷物及び記録媒体の光沢度をそれぞれ求めた。
印刷物の光沢度から記録媒体の光沢度を引いた計算値から以下の判定基準により、耐ブロンズ性を評価した。
A:15未満
B:15以上35未満
C:35以上55未満
D:55以上
また、上記実施例1〜6及び比較例1〜3のインク組成物を前記インクジェットプリンタPM−A700を用い、これの専用ブラックカートリッジに充填し、インクジェット専用記録媒体(写真用紙クリスピア<高光沢>;セイコーエプソン株式会社製、型番;KA420SCK)に対し、それぞれのインク組成物に対し、OD(Optical Density)値が0.9〜1.1の範囲に入るように調整して印刷を行った。これを直射日光のあたらない常温常湿環境にて1日放置して、評価用の記録物を得た。
<耐光性試験>
蛍光灯耐候性試験機STF−11(商品名:(株)スガ試験機製)を用い、24℃、相対湿度60%RH、照度70,000 luxの条件下にて、上記記録物を21日間曝露した。
曝露後、それぞれの記録物のOD値を、反射濃度計(「Spectrolino」(商品名、Gretag社製)を用いて測定し、次式により光学濃度残存率(ROD)を求め、下記判定基準により、評価した。
ROD(%)=(D/D0)×100
D:曝露試験後のOD
0:曝露試験前のOD
(但し、測定条件は、光源:D50,視野角:2度)
A:RODが80%以上
B:RODが60%以上80%未満
C:RODが40%以上60%未満
D:RODが40%未満
<耐オゾン性評価>
上記記録物を、オゾンウエザーメーターOMS−H型(商品名、(株)スガ試験機製)を用い、24℃、相対湿度60%RH、オゾン濃度10ppmの条件下にて12時間曝露した。
曝露後、それぞれの記録物のODを、耐光性試験で用いたものと同じ反射濃度計を用い、耐光性試験と同じ測定条件で測定し、耐光性試験と同じ式により光学濃度残存率(ROD)を求め、下記判定基準により評価した。
A:RODが80%以上
B:RODが60%以上80%未満
C:RODが40%以上60%未満
D:RODが40%未満
<ブリード評価>
インクジェットプリンタPM−A700(商品名:セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷試験を行った。このプリンタ用の専用シアンカートリッジに、実施例7〜18のインク組成物をそれぞれ充填した。
このカートリッジを前記プリンタに装着し、24℃、60%RHの環境下で、写真用紙クリスピア<高光沢>:型番 KA420SCK(セイコーエプソン株式会社製)に、イエローインクとシアンインクを隣接するように交互に印字を行った。そして、その境界領域の印字品質を目視で確認して、以下の判定基準により、ブリード性を評価した。
A:境界領域が明確に残存している
B:境界領域に崩れが確認され、インクが混合しているのが確認される。
C:本来の境界領域が確認できないレベルである。
<接液性試験>
インクジェットプリンタPM−A700(商品名:セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷試験を行った。このプリンタ用の専用シアンカートリッジに、実施例7〜18のインク組成物をそれぞれ充填した。
このカートリッジを前記プリンタに装着し、50℃の環境下で2週間恒温槽に放置した。放置後、室温まで冷却したプリンタからプリントヘッドを取り外し、接着剤で接合されている部分に関し、外観を観察し、以下の判定基準により、接液性を評価した。
A:接着剤の膨潤は、全く観られない。
B:接着剤の膨順は確認されるものの、接着強度に関しては特に問題無し。
C:接着剤の膨順が確認され、接着強度に関しても低下が確認される。
表1〜表5から明らかなように、式1で表される特定のグリコールエーテルを配合した本発明のインク組成物は、プラスチック製の部材に接触して70℃もの高温下に長時間置かれた際に該部材から溶出する脂肪酸が、該インク組成物に0.01重量%以上の濃度で含有されているリチウムイオンと結合して生じる水・有機溶剤に不溶もしくは難溶の塩の析出を、効果的に抑制することができる。一方、式1で表されるグリコールエーテルを配合しない比較のインク組成物では、前述のように内容物の分離や、異物の析出など種々の弊害が観察される。
また、式1で表されるグリコールエーテルのみを用いている実施例16と実施例17では、式1で表されるグリコールエーテルを全インク組成物中2重量%含む実施例16は、上記難溶塩の析出抑制性と接液性には極めて優れるもののブリード性が若干低下し、式1で表されるグリコールエーテルを全インク組成物中10重量%含む実施例17は、上記難溶塩の析出抑制性とブリード性には極めて優れるものの接液性が若干低下するのに対し、式1で表されるグリコールエーテルと他のグリコールエーテルを併用する実施例7〜15と実施例18では、上記難溶塩の析出抑制性、ブリード性、接液性のいずれにおいても極めて優れた効果を示すことが判る。
実施例及び比較例で使用した染料(C.I.ダイレクトブルー199)の分光特性(吸収波長)を示す図である。

Claims (14)

  1. 炭素数8〜22の高級脂肪酸を含むインク接触部材と接触するインク組成物であって、
    前記インク組成物は、少なくとも水着色剤、前記インク組成物全量に対して0.01重量%以上のリチウムイオン、及び下記式1で表されるグリコールエーテルのうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記リチウムイオンと下記式1で表されるグリコールエーテルとの重量比が、1:5〜1:30であることを特徴とするインク組成物。

    (式1中、nは1〜3の正数、R1はH又は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数5〜7のアルキル基、R3はH又はメチル基を示す。)
  2. リチウムイオンと、上記式1で表されるグリコールエーテルの重量比が、1:10〜1:30であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
  3. 上記式1で表されるグリコールエーテルが、下記式11又は式12で表されるグリコールエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク組成物。
    〔化2〕
    1O−[CH2−CH2−O]n−R2 式11
    1O−[CHCH3−CH2−O]n−R2 式12
    (式11および式12中、R2は炭素数5又は6のアルキル基を示し、R1とnは式1と同じ。)
  4. 上記式1で表されるグリコールエーテルが、式1中のR2が炭素数6のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のインク組成物。
  5. 上記式1で表されるグリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のインク組成物。
  6. 上記式1で表されるグリコールエーテルの含有量が全インク組成物中、0.2〜5重量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のインク組成物。
  7. さらに、上記式1で表されるグリコールエーテル以外のグリコールエーテル類を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のインク組成物。
  8. 全グリコールエーテルの含有量が全インク組成物中、6〜12重量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のインク組成物。
  9. 上記式1で表されるグリコールエーテルの含有量が、全グリコールエーテル中、5〜40重量%であることを特徴とする請求項またはに記載のインク組成物。
  10. インクジェット記録方法において用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のインク組成物。
  11. 前記インクジェット記録方法が、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法であることを特徴とする請求項10に記載のインク組成物。
  12. 請求項1〜10記載のインク組成物の中の少なくとも1つを、それぞれ独立に又は一体的に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
  13. インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として請求項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
  14. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて記録された、又は請求項13に記載の記録方法により記録されたことを特徴とする記録物。
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