以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態である駆動力調整機構60a,60bが搭載された四輪駆動車1について説明する。本実施の形態の駆動力調整機構60a,60bは、原動機10から出力される駆動力を後輪70a,70bにそれぞれ分配するものである。
図1は、駆動力調整機構60a,60bが搭載された四輪駆動車1を示した概略図である。なお、図1に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向を示している。
図1に示すように、四輪駆動車1は、内燃機関であり駆動力を発生する原動機10と、その原動機10から連結軸91を介して入力された駆動力を変速部21により変速して出力するトランスミッション20と、そのトランスミッション20から連結軸92を介して入力された駆動力を前後駆動力分配装置分配部31により連結軸96と中央ドライブシャフト94とに分配する前後駆動力分配装置30と、その前後駆動力分配装置30によって連結軸96に分配された駆動力を前側ドライブシャフト93a,93bに分配する前輪デファレンシャルギヤ部32と、その前輪デファレンシャルギヤ部32で前側ドライブシャフト93a,93bに分配された駆動力が伝達されて回転動作する一対の前輪40a,40bと、前後駆動力分配装置30によって中央ドライブシャフト94に分配された駆動力が伝達され、その伝達された駆動力を後側ドライブシャフト95a,95bに分配する駆動力分配機構50と、その駆動力分配機構50により後側ドライブシャフト95a,95bに分配される駆動力の割合を調整する駆動力調整機構60a,60bと、その駆動力調整機構60a,60bによって後側ドライブシャフト95a,95bそれぞれに調整された駆動力が伝達されて回転動作する一対の後輪70a,70bと、駆動力調整機構60a,60bの各種制御を行う制御装置80とを有して構成されている。なお、駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとは、箱形のケース61の内部に回転可能に固定されている。
なお、前輪デファレンシャルギヤ部32は、連結軸96から伝達される駆動力を前側ドライブシャフト93a,93bに分配すると共に連結軸96の回転数を前側ドライブシャフト93a,93bに分配する装置である。
駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94と連結される入力ギヤユニット51と、入力ギヤユニット51に対して直交する方向(図1矢印Y方向)に配置される出力ギヤユニット52とを有して構成されている。よって、駆動力分配機構50は、入力ギヤユニット51に入力された駆動力を、出力ギヤユニット52により分配し、駆動力分配機構50の左右(図1矢印Y方向両側)に配置された駆動力調整機構60a,60bに駆動力を分配するものである。なお、駆動力分配機構50の詳細な説明は、図3を用いて後述する。
駆動力調整機構60a,60bは、駆動力分配機構50の左右(図1矢印Y方向)に対称に設置され、出力ギヤユニット52の両端部にそれぞれ連結されている。なお、駆動力調整機構60a,60bは、駆動力分配機構50の右側(図1矢印Y方向上側)が駆動力調整機構60aであり、駆動力分配機構50の左側(図1矢印Y方向下側)が駆動力調整機構60bである。
駆動力調整機構60aは、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100aと、駆動力調整部100aにオイルを送り出すオイル供給機構200aと、そのオイル供給機構200aにより圧送されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300aとを有して構成されている。駆動力調整部100aは、伝達される駆動力の調整をオイル供給機構200aがオイルを送り出すことで発生する液圧により行なわれる。また、その液圧は圧力検出機構300aにより検出され、その圧力検出機構300aの検出結果は制御装置80に入力される。駆動力調整機構60bは、駆動力調整機構60aと同様に構成されており、駆動力調整部100bと、オイル供給機構200bと、圧力検出機構300bとを有して構成されている。なお、駆動力調整機構60a,60bの詳細な説明は、図4〜図7を用いて後述する。
制御装置80は、圧力検出機構300a,300bからの入力線81a,81bとオイル供給機構200a,200bへの出力線82a,82bとが接続されるI/Oポート83と、主に液圧の情報に基づきオイル供給機構200a,200bを制御する圧力制御プログラム87と、その圧力制御プログラム87が書き込まれた記憶装置であるROM84と、その圧力制御プログラム87に基づき演算する演算装置であるCPU85と、I/Oポート83とROM84とCPU85とを電気的に接続する接続回路であるバスライン86とを有して構成されている。なお、本実施の形態では、制御装置80は、圧力検出機構300a,300bの検出結果に基づき、駆動力調整部100a,100bが作動するために必要なオイルを供給するオイル供給機構200a,200bを個別にフィードバック制御している。
次に、図2を参照して、駆動力調整機構60aの外観について説明する。図2は、駆動力調整機構60aと、駆動力分配機構50とを拡大して示した側面図である。なお、図2に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
駆動力調整機構60aは、上述したように、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100aと、駆動力調整部100aにオイルを送り出すオイル供給機構200aと、そのオイル供給機構200aより圧送されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300aとを有して構成されている。
オイル供給機構200aは、駆動力調整部100aの下側(図2矢印Z方向下側)に配置されている。また、オイル供給機構200aは、そのオイル供給機構200aにより駆動力調整部100aに供給されたオイルがその駆動力調整部100aから自然落下により排出され、再度、オイル供給機構200aに溜まる構成となっている。さらに、後述するが、本実施の形態では、オイル供給機構200aにオイル貯留室204a(図6参照)が設けられるので、従来のオートマチックトランスミッションやトランスファーケースの例にあるように、オイル貯留室がオイル供給機構200aの下方に配置される場合に比べてオイルを吸い上げて溜める仕事が不要になり、オイルを送り出す効率を向上することができる。
なお、駆動力分配機構50は、ハイポイドギヤを使用して駆動力を分配しているため、駆動力調整部100の回転軸心Pと駆動力分配機構50の回転軸心Tの延長線とは、交わらない構成となっている。
次に、図3から図6を参照して、駆動力分配機構50及び駆動力調整機構60aの詳細な構成について説明する。図3は、図2のIII−III線における駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとの断面図である。なお、図3においては、断面線を省略して図示してある。また、図3に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向であり駆動力分配機構50の回転軸心T方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整部100a,100bの回転軸心P方向を示している。
まず、駆動力分配機構50について説明する。上述したように、駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94(図1参照)により伝達される駆動力の向きと回転速度とを変え、その駆動力を、四輪駆動車1の左右(図1矢印Y方向)それぞれに配置されている駆動力調整機構60a,60bに分配するものである。
図3に示すように、駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94(図1参照)により伝達された駆動力が入力される入力ギヤユニット51と、その入力ギヤユニット51に対して直交する方向(図3矢印Y方向)に配置され、入力ギヤユニット51に入力された駆動力を出力する出力ギヤユニット52とを有して構成されている。
入力ギヤユニット51は、入力ギヤユニット51が有するハイポイドギヤ53に出力ギヤユニット52が有するハイポイドギヤ54が嵌合されることで出力ギヤユニット52に連結され、中央ドライブシャフト94(図1参照)により伝達された駆動力を出力ギヤユニット52へ伝達するものである。
出力ギヤユニット52は、出力ギヤユニット52の両端部に形成される出力シャフトスプライン部55に、出力ギヤユニット52の左右(図3矢印Y方向)に配置されているハブ嵌合部103aが嵌合されることで、入力ギヤユニット51から伝達された駆動力を駆動力調整機構60a,60bに分配するものである。
よって、駆動力分配機構50は、ハイポイドギヤ53,54により入力ギヤユニット51と出力ギヤユニット52とが連結され、出力シャフトスプライン部55及びハブ嵌合部103aにより出力ギヤユニット52と駆動力調整機構60a,60bとが連結されるので、中央ドライブシャフト94(図1参照)により入力ギヤユニット51に入力された駆動力を出力ギヤユニット52の左右に配置されている駆動力調整機構60a,60bに分配することができる。
また、ハイポイドギヤ53とハイポイドギヤ54とのギヤ比によって入力ギヤユニット51と出力ギヤユニット52との回転速度に差を生じさせており、そのギヤ比は、前輪40a及び前輪40b(図1参照)に連結される前側ドライブシャフト93a及び前側ドライブシャフト93b(図1参照)の平均回転速度が出力ギヤユニット52の回転速度より(本実施の形態では、3〜7%)遅くなるように設定されている。即ち、出力ギヤユニット52が後輪70a,70bより速くなるように設定されている。なお、四輪駆動車1が旋回している時には、前輪デファレンシャルギヤ部32によって前側ドライブシャフト93aと前側ドライブシャフト93bとに内輪差による回転速度差が生じているため、前側ドライブシャフト93a及び前側ドライブシャフト93b(図1参照)の平均回転速度を比較基準の回転速度とした。
よって、駆動力調整機構60aにより出力ギヤユニット52から伝達される駆動力を後側ドライブシャフト95a,95bに無駄なく伝達した場合には、後輪70a,70b(図1参照)の回転速度が前輪40a(図1参照)と前輪40b(図1参照)との平均回転速度より(本実施の形態では、3〜7%)速くなる。
ここで、本実施の形態では、駆動力調整機構60a,60bが四輪駆動車1(図1参照)の後輪70a,70b(図1参照)に対して個々に独立して接続されているので、駆動力調整機構60a,60bによって出力ギヤユニット52から伝達される駆動力の伝達を調整することで後輪70a,70bの回転速度を個々に速めることができる。
例えば、四輪駆動車1(図1参照)が前進しつつ左旋回している場合には、駆動力調整機構60aによって出力ギヤユニット52から伝達される駆動力の伝達を調整することで外側となる後輪70a(図1参照)の回転速度を速めて旋回性を向上させることができる。また、例えば、四輪駆動車1(図1参照)が前進しつつ右旋回している場合には、駆動力調整機構60bによって出力ギヤユニット52から伝達される駆動力の伝達を調整することで外側となる後輪70b(図1参照)の回転速度を速めて旋回性を向上させることができる。
なお、入力ギヤユニット51と出力ギヤユニット52とは、ベアリングB1を介してケース61に回転可能に固定されている。よって、入力ギヤユニット51に入力された駆動力は、入力ギヤユニット51とケース61との摺動抵抗、及び、出力ギヤユニット52とケース61との摺動抵抗による大きな損失を受けることなく出力ギヤユニット52へ伝達される。
次に、駆動力調整機構60aの構成の概略について説明する。駆動力調整機構60aは、上述したように、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100aと、駆動力調整部100aにオイルを送り出すオイル供給機構200a(図1参照)と、そのオイル供給機構200aより送り出されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300a(図1参照)とを有して構成されている。
図3に示すように、駆動力調整部100aは、駆動力分配機構50の出力ギヤユニット52により入力される駆動力が伝達される割合を調整する接続機構101aと、その接続機構101aに与える押圧力を増幅するカム機構131aと、そのカム機構131aに押圧力を与えるピストン機構151aと、カム機構131aにピストン機構151aとは逆向きの付勢力を与えるリリース機構171aとを有して構成されている。
また、駆動力調整機構60bの駆動力調整部100bは、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aと同様に構成されており、接続機構101bと、カム機構131bと、ピストン機構151bと、リリース機構171bとを有して構成されている。
次に、図4及び図5を参照して、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの詳細な構成について説明する。なお、図4及び図5の説明においては、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aについて説明し、駆動力調整機構60bの駆動力調整部100bは、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aと同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。
図4は、図3のA部分を拡大した断面図であり、駆動力調整機構60aの一部である駆動力調整部100aとケース61の一部とを示している。図5は、カム機構131aの概略を示した図であり、(a)は、カム機構131aの側面図であり、(b)は、図5(a)のVb−Vb線におけるカム機構131aの断面図である。
また、図4に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向であり駆動力分配機構50の回転軸心T方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの回転軸心P方向を示している。さらに、図5に示す矢印Rは、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの回転軸心Pを中心とする円周方向(図2紙面垂直方向)を示している。
まず、駆動力調整部100aの接続機構101a(図3参照)について詳細に説明する。図4に示すように、接続機構101aは、出力ギヤユニット52から伝達される駆動力が入力されるハブ部102aと、そのハブ部102aに連結される略円筒形状のクラッチドラム部105aと、そのクラッチドラム部105aの内側(回転軸心Pに向かう方向)に連結される複数のドライブプレート106a(本実施の形態では7個)と、その複数のドライブプレート106aの間に交互に一枚ずつ配置される複数のドリブンプレート107a(本実施の形態では7個)と、そのドリブンプレート107a及びドライブプレート106aに隣接して配置され、駆動力調整部100aの回転軸心P方向に並列される各プレート106a,107aの最も外側(矢印Y方向右側)に位置するクラッチリテーナ108aとを有して構成されている。
ハブ部102aは、略環状に形成された部材であり、出力ギヤユニット52に嵌合し略筒状に形成された筒状部102a1と、クラッチドラム部105aと連結される皿状に形成された皿状部102a2とを有して構成されている。筒状部102a1の内側面の一部には、ハブ嵌合部103aが形成されており、そのハブ嵌合部103aと出力ギヤユニット52の出力シャフトスプライン部55とによりスプライン継ぎ手が形成される。
また、皿状部102a2の外側面には、ハブ突起部104aが形成されており、クラッチドラム部105aの内側面には、複数のドラム溝部109aが形成されている。そのハブ突起部104aと、複数のドラム溝部109aとによりスプライン継ぎ手が形成される。よって、ハブ部102aは、出力シャフトスプライン部55から伝達された駆動力をクラッチドラム部105aに伝達することができる。
また、ハブ部102aは、クラッチドラム部105aに内嵌されるスナップリングS3aにより、クラッチドラム部105aに対して駆動力調整部100の回転軸心P方向左側(図4矢印Y方向左側)への動きが規制されている。
クラッチリテーナ108aは、略円板形状の板であり、ハブ部102aと同様にクラッチドラム部105aに内嵌されるものである。また、クラッチリテーナ108aは、クラッチドラム部105aに内嵌されるスナップリングS1aによりクラッチドラム部105aに対して駆動力調整部100aの回転軸心P方向右側(図4矢印Y方向右側)への動きが規制されている。
以上のことから、クラッチドラム部105aには、駆動力調整部100aの回転軸心P方向右側(図4矢印Y方向右側)からハブ部102aに作用する力がスナップリングS3aを介して作用すると共に、駆動力調整部100aの回転軸心P方向左側(図4矢印Y方向左側)からクラッチリテーナ108aに作用する力がスナップリングS1aを介して作用する。よって、クラッチドラム部105aは、ハブ部102aと、クラッチリテーナ108aとに作用する2つの力を受けることができる。後述するが、本実施の形態では、ハブ部102aとクラッチリテーナ108aとに作用する2つの力とは、カム機構131(図3参照)が発生する押圧力とその反力のことを意味している。
ドライブプレート106aは、略円板形状の板であり、ドライブプレート106aの外縁に形成されるドライブプレート突起部110aと、クラッチドラム部105aの内側面に形成される複数のドラム溝部109aとによりスプライン継ぎ手が形成されており、クラッチドラム部105aに内嵌されている。
ドリブンプレート107aは、略円板形状の板であり、ドリブンプレート107aの内側面に形成されるドリブンプレート突起部111aと、シャフト113aの一部に成型されるプレートスプライン軸部112aとによりスプライン継ぎ手が形成され、シャフト113aに外嵌されている。
なお、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとは、後述するカム機構131aのメインカム132aからの押圧力を受けることで、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの微小な隙間を詰めながらクラッチリテーナ108aに動きを規制されるまで、駆動力調整部100aの回転軸心P方向右側(図4矢印Y方向右側)に動作可能に構成されている。
よって、後述するカム機構131aのメインカム132aからの押圧力をドライブプレート106aとドリブンプレート107aとが受けてドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰められると、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に摩擦力が発生する。そのドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する摩擦力は、カム機構131aのメインカム132aからの押圧力に応じて増加され、その押圧力に応じた駆動力がドライブプレート106aからドリブンプレート107aへと伝達される。その結果、クラッチドラム部105aからシャフト113aへ伝達される駆動力の割合が調整される。
ここで、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間で発生する引きずりについて説明する。ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間で発生する引きずりとは、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に介在するオイルの粘着力によって、ドリブンプレート107aがドライブプレート106aの動作する方向に引きずられる現象のことである。
また、この引きずりによって伝達される回転力を引きずりトルクと言い、オイルの粘性が高い(オイルの温度が低い)ほど、また、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間の隙間が狭いほど大きな引きずりトルクとなる。
この引きずりトルクの発生は、駆動力調整部100aの駆動力の伝達精度を悪化させるばかりではなく、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107aでの摩擦熱の発生や、オイル性状の劣化や、四輪駆動車1としては、転がり抵抗の増加による燃費の悪化など、多くの弊害を伴う。
ここで、引きずりを発生させる要因の1つであるエンドプレーについて説明する。ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間は、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの1つ1つの隙間に対して設定される値ではなく。メインカム132aとクラッチリテーナ108aとの間隔寸法値からメインカム132aとクラッチリテーナ108aとの間に収容されるすべてのドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの厚さの合計の厚さ寸法値を引いた値として設定されている。その値がエンドプレーである。
例えば、四輪駆動車1(図1参照)が直進している場合には、駆動力調整部100a(図1参照)は駆動力を伝達しないように制御され、前輪40a,40b(図1参照)及び後輪70a,70b(図1参照)は同一の回転速度で回転している。また、上述したように、出力ギヤユニット52の回転速度が前輪40a,40bに連結される前側ドライブシャフト93a,93b(図1参照)の平均回転速度より(本実施の形態では、3〜7%)速く回転している。
即ち、出力ギヤユニット52から回転が伝達されているドライブプレート106aと、前輪40aと同一回転速度で回転している後輪70aから後側ドライブシャフト95aを介して回転が伝達されているドリブンプレート107aとには回転速度差が生じている。このように、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に回転速度差が生じると引きずりが発生する。
これに対し、本実施の形態では、エンドプレーが例えば、約0.5mmから約1.0mmの間に設定されており、引きずりトルクを十分に小さな値に抑えることができる。よって、高速道路など高い車速で長時間に渡って直進する場合には、引きずりの発生により起こるドライブプレート106a及びドリブンプレート107aでの摩擦熱の発生や、オイル性状の劣化や、引きずりトルクによって内部抵抗が増加しておこる燃費の悪化などを押さえることができる。
ここで、図8を参照して、上述したエンドプレーの設定根拠を説明する。図8は、エンドプレーと引きずりトルクとの関係を表したグラフである。なお、グラフ中の実線で示された曲線HTは、オイル温度が80℃である時のエンドプレーと引きずりトルクとの関係を示す曲線であり、点線で示された曲線MTは、オイル温度が20℃である時のエンドプレーと引きずりトルクとの関係を示す曲線であり、一点鎖線で示された曲線LTは、オイル温度が−30℃である時のエンドプレーと引きずりトルクとの関係を示す曲線である。
図8に示すように、引きずりトルクは、オイルの温度が低いほど大きな値となり、また、エンドプレーの値が小さいほどオイルの温度によって大きく変化する。その特性を考慮してオイルの温度変化の影響を受けにくいエンドプレーとして約0.5mmを下限のエンドプレーとした。また、駆動力調整部100a(図1参照)は多数生産されるものなので、量産による部品寸法バラツキを考慮して上限のエンドプレーを約1.0mmとした。
しかしながら、エンドプレーを大きく設定すると、上述したようにドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を詰めて摩擦力が発生する構成であるので、隙間を詰めるための時間が掛かるようになり、駆動力調整機構60a(図1参照)の応答性が悪くなる。
これに対し、本実施の形態では、回転力を利用して力を増幅するカム機構131a(図3参照)を駆動力調整部100aに設けることで応答性の向上が図られている。
まず、駆動力調整部100aのカム機構131a(図3参照)について詳細に説明する。カム機構131aは、クラッチドラム部105aから伝達される駆動力(回転力)を利用した増幅機構であり、駆動力調整部100aの回転軸芯P方向(図4矢印Y方向)においてクラッチリテーナ108aと対向する位置に配置されている。
また、カム機構131a(図3参照)は、後述するピストン機構151a(図3参照)により押圧される押し圧部材140aと、その押し圧部材140aに押圧される複数(本実施の形態では2枚)のプライマリードライブプレート135aと、そのプライマリードライブプレート135aの間に配置されるプライマリードリブンプレート136aと、そのプライマリードリブンプレート136aに連結されるプライマリーカム133aと、シャフト113aに連結されるメインカム132aと、プライマリーカム133aとメインカム132aとに狭持される複数(本実施の形態では6個)のボール134aと、プライマリーカム133aに隣接するベアリングB2aとを有して構成されている。
プライマリードライブプレート135aは、略円板形状の板であり、プライマリードライブプレート135aの外縁に形成されるプライマリードライブプレート突起部137aと、クラッチドラム部105aの内側面に形成される複数のドラム溝部109aとによりスプライン継ぎ手が形成され、クラッチドラム部105aに内嵌されている。
プライマリードリブンプレート136aは、略円板形状の板であり、プライマリードリブンプレート136aの内側面に形成されるプライマリードリブンプレート突起部138aと、プライマリーカム突起部139aとによりスプライン継ぎ手が形成され、プライマリーカム133aに外嵌されている。
よって、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとは、後述するピストン機構151aからの押圧力を受けることでプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの微小な隙間を詰めながら駆動力調整部100aの回転軸心Pの軸心方向右側(図4矢印Y方向右側)に動作可能に構成されている。また、プライマリードライブプレート135aは、クラッチドラム部105aに内嵌されるスナップリングS2aにより、クラッチドラム部105aに対して駆動力調整部100aの回転軸心Pの軸心方向右側(図4矢印Y方向右側)への動きが規制されている。
このように、後述するピストン機構151a(図3参照)からの押圧力をプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとが受けて、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間が詰まると、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に摩擦力が発生する。
そのプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に発生する摩擦力は、ピストン機構151aからの押圧力に応じて増加され、その押圧力に応じた駆動力がプライマリードライブプレート135aからプライマリードリブンプレート136aへと伝達される。その結果、プライマリーカム133aへ伝達される駆動力の割合が調整される。
また、プライマリーカム133aのメインカム132aに対向する面には、プライマリーカム溝部141aが形成されており、メインカム132aのプライマリーカム133aに対向する面には、メインカム溝部142aが形成されている。このプライマリーカム溝141aとメインカム溝142aとの間に、ボール134aが挟持されている。
ここで、図5を参照して、プライマリーカム133aとメインカム132aとボール134aとの詳細な構成及び動作について説明する。なお、図5(a)は、図4の左側(図4矢印Y方向左側)から右側(図4矢印Y方向右側)を見た状態が図示されている。
図5(a)に示すように、プライマリーカム133aは、略環状の部材であり、メインカム132aと対向する面(図5(a)に示すプライマリーカム133aにおいて紙面垂直方向奧側の面)に環状のプライマリーカム溝部141aが形成されている。また、プライマリーカム133aの外周面には、プライマリーカム突起部139aが形成されており、このプライマリーカム突起部139aとプライマリードリブンプレート136a(図4参照)のプライマリードリブンプレート突起部138aとによりスプライン継ぎ手が形成される。
また、メインカム132aは、略環状の部材であり、プライマリーカム133aと対向する面(図5(a)に示すメインカム132aにおいて紙面垂直方向視手前側の面)に環状のメインカム溝部142aが形成されている。メインカム132aの内周面には、メインカム突起部144aが形成されており、そのメインカム突起部144aとシャフト113a(図4参照)に形成されるカムスプライン軸部143a(図4参照)とによりスプライン継ぎ手が形成される。
また、図5(a)に示すように、プライマリーカム溝部141aとメインカム溝部142aとは、同形状に形成されており、そのプライマリーカム溝部141aとメインカム溝部142aとの間にボール134aが複数個(本実施の形態では6個)収容されている。
次に、図5(b)を参照して、プライマリーカム133aに駆動力が伝達された時のメインカム132aと、プライマリーカム133aと、ボール134aとのそれぞれの動作について説明する。図5(b)に示すように、メインカム溝部142aとプライマリーカム溝部141aとは、溝部の深さが円周方向(図5(b)矢印R方向)に緩やかに変化している。
また、図5(b)において、プライマリーカム133aの実線で示されている状態が、プライマリーカム133aにクラッチドラム部105aからの駆動力が伝達されていない時の位置であり、ボール134aは、プライマリーカム溝部141aとメインカム溝部142aとの深い部分に収容されている。
なお、後述するリリース機構171aの説明のため、この位置を基準位置と称す。また、プライマリーカム133aが基準位置にある場合のメインカム132aとの距離は、駆動力調整部100aの回転軸心P方向(図5(b)矢印Y方向)において幅L1となる。
図5(b)において、プライマリーカム133aの破線で示されている状態が、プライマリーカム133aにクラッチドラム部105aからの駆動力が伝達された時の位置であり、プライマリーカム133aがメインカム132aに対して円周方向(図5(b)矢印R方向右側)に移動している。この状態では、ボール134aは、プライマリーカム133aへ駆動力が伝達されていない時(実線で示した状態、基準位置)に比べて浅い部分に収容されている。
なお、後述するリリース機構171aの説明のため、この位置を作動位置と称す。また、プライマリーカム133aが作動位置にある場合のメインカム132aとの距離は、駆動力調整部100aの回転軸心P方向(図5(b)矢印Y方向)において幅L2となる。
図5(b)に示すように、プライマリーカム133aとメインカム132aとの幅は、幅L1に比べて幅L2の方が広くなっている。これは、プライマリーカム133aに伝達される駆動力により、プライマリーカム133aがメインカム132aに対して駆動力調整部100aの回転軸心Pを中心に回転した場合に、ボール134aが各溝部141a,142aの深さが浅い部分まで転がり、プライマリーカム133aとメインカム132aとの幅が広がるためである。その結果、プライマリーカム133aとメインカム132aとの間に、押圧力とその押圧力に対する反力とが発生する。また、その押圧力は、ピストン機構151aにより発生される押圧力の数十倍(本実施の形態では略20倍)に増幅されている。
このように、カム機構131a(図3参照)は、ピストン機構151a(図3参照)によって発生された押圧力を簡単な構成で増幅できる。よって、ピストン機構151a(図3参照)が小さな押圧力を発生するだけで、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとは大きな押圧力で押しつけられる。
また、ピストン機構151a(図3参照)の押圧力は、カム機構131a(図3参照)によって増幅されるので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを押しつけている力の略20分の1でよい。すなわち、カム機構131aを省略してピストン機構151aにて直接ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを押さえつける場合に比べて、オイルポンプ202aにより発生すべき圧力値を小さく設定することができる。
よって、オイルポンプ202aを駆動させる電動モータ201aを小型化でき、駆動力調整機構60a(図1参照)の軽量化を図ることができる。さらに、電動モータ201aの消費電力を押さえることができるので車載された発電装置(図示せず)を小型化でき、四輪駆動車1の軽量化を図ることができる。また、電動モータ201aの消費電力が小さくなるので、その消費電力より大きな消費電力となるモータを電動モータ201aに用いることができ、それにより、モータの選択肢が増える。その結果、流通量が多く価格が低いモータを選択することも可能となりコスト削減を図ることができる。
また、カム機構131a(図3参照)は、クラッチドラム部105a(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差によって接続機構101a(図3参照)を押しつける方向(図3矢印Y方向)に広がる。即ち、クラッチドラム部105a(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差が大きいほど、カム機構131a(図3参照)が接続機構101a(図3参照)に向かって広がる速度が速くなる。
よって、クラッチドラム部105a(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差を大きく設定すれば、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を広く設定したとしても、駆動力調整機構60a(図1参照)の応答性を損なうことがない。従って、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を広く設定して引きずりを低減させつつ駆動力調整機構60a(図1参照)の応答性を確保することができる。
なお、本実施の形態では、後輪70a(図1参照)と後輪70b(図1参照)との平均回転速度が前輪40a(図1参照)と前輪40b(図1参照)との平均回転速度より3〜7%速くなるように、クラッチドラム部105a(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差がハイポイドギヤ53(図3参照)とハイポイドギヤ54(図3参照)とのギヤ比によって設定されている。よって、エンドプレーの上限値が約1.0mmであっても、駆動力調整機構60a(図1参照)の応答性が確保されている。
また、カム機構131a(図3参照)を介してドライブプレート106a(図4参照)とドリブンプレート107a(図4参照)との隙間を詰めているので、ピストン機構151a(図3参照)は、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間のみを詰めれば良い。よって、ピストン機構151a(図3参照)に対してオイル供給機構200a(図6参照)から送り出されるオイル量が少なくてもクラッチドラム105a(図4参照)からの駆動力をシャフト113a(図4参照)に伝えることができる。従って、オイル供給機構200aに設けられるオイルポンプ202a(図6参照)を小型化することができるので、駆動力調整機構60a(図1参照)の軽量化を図ることができる。
ここで、図4を参照して、カム機構131aが発生する押圧力とその反力の伝わり方について説明する。本実施の形態では、プライマリーカム133aと、メインカム132aと、ボール134aとにより発生する押圧力は、複数のドライブプレート106aと、複数のドリブンプレート107aと、クラッチリテーナ108aと、スナップリングS1aとを介してクラッチドラム部105aに伝達される。また、プライマリーカム133aと、メインカム132aと、ボール134aにより発生される押圧力の反力は、ベアリングB2aと、ハブ部102aと、スナップリングS3aとを介してクラッチドラム部105aに伝達される。即ち、カム機構131aが発生する押圧力と、その反力とは、接続機構101aの構成部材によって伝達されクラッチドラム部105aに作用する。
よって、カム機構131aが発生する押圧力とその反力とは、クラッチドラム部105aに伝わりケース61やピストン機構151aなどには伝わらない。従って、カム機構131aが発生する押圧力とその反力とに基づいて駆動力調整機構60a(図1参照)の強度を確保する場合には、接続機構101aとカム機構131aとに対して強度の確保を行えばよく、ケース61やピストン機構151a又はベアリングB3aなどに対してスラスト力(図4矢印Y方向の力)に対する強度確保の必要はない。その結果、強度確保の対象となる部材が少なくなるので、ピストン機構151a又はベアリングB3aの小型化やケース61の薄肉化が可能となり、駆動力調整機構60a(図1参照)の軽量化及びコスト削減を図ることができる。
リリース機構171aは、皿ばねであり、メインカム132aが基準位置に向かって移動するようにメインカム132aを、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108aから離間する方向に(図4矢印Y方向左側)に付勢しており、複数のドライブプレート106aと、複数のドリブンプレート107aとの引きずりを低減させるものである。また、リリース機構171aは、略環状の弾性部材であり、図4に示すように、メインカム132aと、プレートスプライン軸部112aとの間に狭持固定されている。よって、メインカム132aが、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108a側(図4矢印Y方向右側)に移動すると、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108aから離間する方向(図4矢印Y方向左側)への付勢力が発生する。
また、リリース機構171aは、メインカム132aとドライブプレート106aとに働くオイルの粘着力と、メインカム132aの内周面に形成されるメインカム突起部144aとシャフト113aに形成されるカムスプライン軸部143aとの摩擦力と、ボール134aの転がり抵抗力とプライマリードライブプレート135a及びプライマリードリブンプレートの引きずりにより発生されるメインカム132aの反力とをあわせた力を上回る付勢力を発生するように構成されている。
つまり、リリース機構171aには、上記複数の力より大きな付勢力を発生するばね定数や初期荷重が設定されている。その結果、カム機構131からの押圧力の供給がなくなると、リリース機構171aの付勢力によりメインカム132aは作動位置から基準位置に向かって移動し、ドライブプレート106aとメインカム132aとの引きずりを低減することができる。従って、引きずりによって余分な駆動力がクラッチドラム部105aからシャフト113aに伝達されることを低減することができる。
上述したように、本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとは、後述するピストン機構151a(図3参照)により発生される押圧力によって摩擦力が発生する。そのプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に発生する摩擦力によってクラッチドラム部105aから伝達される駆動力をカム機構131a(図3参照)により増幅し、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に摩擦力を発生させる構成となっている。即ち、ピストン機構151aの押圧力によって、各プレート135a,136a,106a,107aとの間に摩擦力を発生させることができる。
また、ピストン機構151a(図3参照)は、ピストン室154a内に発生する圧力の上昇によってピストン本体153aをプライマリードライブプレート135a及びプライマリードリブンプレート136aの方向(図4矢印Y方向)に移動して押圧力を発生する為、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に隙間を設定して引きずりを低減させることができる。
これに対し、電磁力により押圧力を発生させ各プレート135a,136a,106a,107aとの間に摩擦力を発生させる方法があるが、この方法は、電磁力を発生させるためにコイルを通電し、アーマチャと呼ばれる部材の内部に磁束を発生させ、そのアーマチャをコイルが引きつけることで、押圧力を発生させることができる。即ち、アーマチャとコイルとの間に複数のプレート(本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとを示す。)を配置し、アーマチャをコイルがひきつける力を複数のプレートの押圧力とし、その押圧力によりプレートとプレートとの間に摩擦力を発生させる構成となる。
この電磁力により押圧力を発生させる方法は、オイルの液圧を使用しないため、オイルの粘度の影響を受けにくい特徴があるが、その代わりに、アーマチャとコイルの間には磁束を通す必要がある。そのため、電磁力を使って押圧力を発生する方法は、磁束を通す部材(主に鉄)のみを用いて複数のプレートを構成しなければならない。
また、磁束を強く安定させるために、上述した複数のプレート(本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとを示す。)とアーマチャとは常時接触させておく必要がある。その結果、プレートの引きずりが発生しその引きずりによってカム機構132aはスラスト力(図4矢印Y方向の力)を発生する。それにより、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰まりさらに引きずりが発生する。そのため、リリース機構171aには、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を詰めないように、そのスラスト力分の押圧力に勝るばね定数や初期荷重を設定する必要があり、リリース機構171aが大型化する。
しかし、本実施の形態では、ピストン機構151aの押圧力によって摩擦力を発生させる構成であるので、磁束を通す部材でプレートを構成しなくても良い。よって、透磁性のない材料(金属以外の材料)を使うことができる。そこで、本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136a、及び、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aは、透磁性のないペーパー材を用いて構成されている。
このペーパー材は、金属材料を使った部材に比べて耐ジャダー性が良好な材料であるので、各プレート135a,136a及び106a,107aの摩擦面に金属材料を使ったプレートを使用する場合に対して、耐ジャダー性向上を目的とするプレートの表面形状の最適化や、プレートの表面処理による摩擦特性の安定化などの特殊加工や、摩擦特性を改善するための特殊オイルの使用などを行う必要がなくなる。その結果、プレートの表面形状の最適化や、プレートの表面処理による摩擦特性の安定化などの特殊加工を行うことによる製作工程の追加や、オイルに添加剤を追加しなくてよいので、製作工程におけるコスト削減を図れると共にランニングコスト削減を図ることができる。
また、磁束により押圧力を発生しないので、磁束を強く安定させる必要がなく、複数のプレート(本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとを示す。)の間に隙間を持たせることができる。よって、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの引きずりにより、カム機構132aがスラスト力を発生させドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰まることがないので、スラスト力分の押圧力に勝るばね定数や初期荷重を設定する必要がなく、リリース機構171aが大型化することを防止することができる。
また、電磁力を使って発生される押圧力と、オイルの液圧により発生される押圧力および駆動力によって増幅される押圧力とが混在しないので、プレートの材料の統一やオイル室の1室化及び同種オイルの使用が可能となり、コスト削減、部品管理工数削減および組み立て工数削減を図ることができる。
以上のように、本実施の形態では、オイルの液圧により発生される押圧力、及び、駆動力によって増幅される押圧力を用いるので、電磁力を使って発生される押圧力を用いる場合に比べて、プレートの材料の選択範囲が広くなり、耐ジャダー性が良好なペーパー材を選択し、プレートの表面形状の最適化のための特殊加工や摩擦特性を改善する為の特殊オイルの使用の必要性がなくなる。さらに、引きずりが発生しづらいので小さな駆動力を伝達する場合の駆動力の制御精度を向上させることができる。
次に、ピストン機構151a(図3参照)について説明する。図4に示すように、ピストン機構151aは、オイル供給機構200a(図2参照)から送られてくるオイルの液圧により、押圧力を発生し、その押圧力をカム機構131a(図3参照)に伝達する機構であり、オイル供給機構200aから送られてくるオイルで満たされるピストン室154aと、オイル供給機構200aから送られてくるオイルの液圧により押圧力を発生させるピストン本体部153aと、ピストン本体部153aに外嵌されるシリンダー部152aと、ピストン室154aに満たされたオイルに混入した気体(空気)を放出するステムブリーダ155a(図6参照)と、ピストン本体部153aに対して駆動力調整部100aの回転軸心Pを中心として回転しているカム機構131aの押し圧部材140aにピストン本体部153aからの押圧力を円滑に伝達するベアリングB3aとを有して構成されている。
ピストン室154aは、略環形状をしたピストン本体部153aが略環形状をしたシリンダー部152aに内嵌されることにより形成される空間であり、オイル供給機構200a(図2参照)から送られてくるオイルで満たされている。そのピストン室154aの上部(図6矢印Z方向上部)には、ピストン本体部153aの上部に形成される貫通孔であるステムブリーダ155aが配設されており、ピストン室154aは、オイル回収室64aとステムブリーダ155aを介して連通されている。よって、オイル供給機構200aからピストン室154aへ送られてきたオイルは、そのオイルに混入した気体(空気)と共にオイル回収室64aへと放出される。
なお、ステムブリーダ155aは、主にオイルに混入した気体(空気)をオイル回収室64aへ放出するものであり、オイルに混入した気体(空気)を通り易く、オイルを通り難くするために環状の隙間形状としても良い。なお、その環状の隙間形状は、貫通孔であるステムブリーダ155aにその内径より小さな外径に形成される円筒部材を挿入して構成しても良い。
ベアリングB3aは、ピストン本体部153a(図3参照)と、カム機構131a(図3参照)の押し圧部材140aとの間に隣接して配置されており、カム機構131aの押し圧部材140aは、ハブ部102aの回転に伴って回転するのでピストン本体部153aに対して回転している。即ち、ベアリングB3aは、回転差による抵抗を発生させないように作動しており、ピストン本体部153aから伝達される押圧力は、カム機構131aの押し圧部材140aに円滑に伝達されている。
また、ピストン本体部153a(図3参照)から伝達される押圧力は、カム機構131a(図3参照)により増幅されるため、カム機構131aを有さない場合に比べて、そのピストン本体部153aから伝達される押圧力を十分小さくすることができる。よって、カム機構131aを有さない場合に比べて、ベアリングB3aを低負荷のものにすることができ、ベアリングB3aの選択肢が増えコスト削減を図ることができる。
次に、図6を参照して、オイル供給機構200aの詳細な構成ついて説明する。図6は、図2のVI−VI線における駆動力調整機構60aを示した断面図である。なお、図6においては、接続機構101a、カム機構131a及びリリース機構171aに関係する符号は省略して図示する。また、図6に示す矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整部100aの回転軸心P方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
図6に示すように、オイル供給機構200aは、駆動力調整部100aにオイルを送り出すものであり、電動モータ201aと、その電動モータ201aにより駆動されるオイルポンプ202aと、そのオイルポンプ202aにより送り出されるオイルが貯留されるオイル貯留室204aと、電動モータ201aとオイルポンプ202aとの間でオイル貯留室204aの壁部を形成する電動モータ凸部203aとを有して構成されている。
図6に示すように、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aと、オイルポンプ202aとは、駆動力調整部100aの回転軸心P方向(図6矢印Y方向)に隣接して配置されている。なお、オイル貯留室204aは、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aの先端面(図6矢印Y方向左側の面)に密接されるオイルポンプ202aと、電動モータ凸部203aとに囲まれて形成されている空間である。即ち、電動モータ201aとオイルポンプ202aとがオイル貯留室204aの壁部を兼ねている。
また、電動モータ201aは、回転力を出力する円柱形状の軸であるモータ軸部207aを有している。そのモータ軸部207aは、オイル貯留室204aを貫通してオイルポンプ202aと連結している。即ち、オイル貯留室204aの空間の一部にモータ軸部207aを配置し、電動モータ201aとオイルポンプ202aとが最短距離(直線上)で接続されている。よって、オイル貯留室204aの外部にモータ軸部207aを配置する場所を省略でき、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとで構成される装置を小型化することができる。
また、オイル貯留室204aは、オイルポンプ202aと水平な位置に隣接して配置されているので、例えば、オイル貯留室がオイルポンプ202aから離れた下方に配置され、その下方に配置されたオイル貯留室から吸い上げ通路を介してオイルを吸い上げる場合に比べて、オイルを吸い上げる仕事と通路内の管路抵抗とを削減することができる。
また、オイルポンプ202aは、右側(図6矢印Y方向右側の面)にポンプ吸入口205aを配置すると共に、左側(図6矢印Y方向左側の面)にポンプ吐出口206aを配置している。即ち、オイル供給機構200aは、オイル貯留室204aからオイルを送り出す際にはオイルの送られる方向が直線方向となるので、管路抵抗の影響を受けにくく、効率よくオイルを送り出すことができる。
また、電動モータ凸部203aは、オイルポンプ202aと同じ直径を有する略円筒形状の部材であり、オイル回収穴208aとポンプ内壁209aとを有している。オイル回収穴208aは、電動モータ凸部203aの上部(図6矢印Z方向上部)に設置される貫通孔であり、回収通路210aを介してオイル回収室64aに連結されている。また、ポンプ内壁209aは、オイル回収穴208aに連成される電動モータ凸部203aの内側の壁であり、オイル回収穴208aに向かって上昇傾斜して形成されている。
よって、オイル回収室64aからオイル貯留室204aに気体(空気)を混入したオイルが流入した場合、オイル貯留室204aに気体(空気)を滞留させること無く、オイル回収穴208aへ移送し、回収通路210aを介して気体(空気)だけをオイル回収室64aに戻すことができる。
さらに、ポンプ吸入口205aは、オイル貯留室204aの深部(図6矢印Z方向下部)に設置されている。よって、オイル貯留室204aの深部まで到達する気体(空気)の割合は非常に少ないので、気体(空気)がオイル貯留室204aに滞留している間でも、その気体(空気)がポンプ吸入口205aからオイルポンプ202aへ流入されることを非常に少なくすることができる。
このように、混入した気体(空気)は、オイル回収室64aへ排出されやすく、且つ、オイルポンプ202aに流入し難いので、オイルポンプ202aにオイルと気体(空気)が混入したときに発生する異音を押さえることができると共に、オイルポンプ202aが送り出すオイルに気体(空気)が混入し難く、ダンパー効果を低減し、オイルポンプ202aによって発生されるオイルの液圧を早期に所望の液圧(ピストン機構151aを押圧するのに必要な液圧)にまで上昇させることができる。
オイルポンプ202aと、電動モータ凸部203aとは同じ直径を有する略円柱形状の部材であり、ケース61の外縁に形成される凹部挿入孔213aに一体となって内嵌され、電動モータ201aをケース61に対して固定することによりオイルポンプ202aは電動モータ凸部203aによりケース61に押さえつけられて固定される。
このように、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aと、オイルポンプ202aとは水平方向(図6矢印Y方向)に隣接して配置されており、且つ、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aとの直径が同一なので、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aとを凹部挿入孔213aへ重ねて挿入でき、且つ、簡単に組みつけができる。
また、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとを回転軸心P方向に隣接して一体に形成しているので、オイル供給機構200aを小型化することができるだけでなく、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとを組み合わせて他の装置に簡単に取り付けて使用することができる。よって、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとが一体に形成された装置の汎用性を高めることができる。
オイル供給機構200aは、気体(空気)が混入した循環後のオイルを回収し、気体(空気)を分離してから、そのオイルをピストン機構151aに送り出している。しかし、オイルに混入している気体(空気)を完璧に取り除くことは非常に難しい。そこで、ピストン機構151aは、オイルに混入している気体(空気)を取り除くために、ピストン室154aの上部(図6矢印Z方向上部)にステムブリーダ155aを配置している。
よって、気体(空気)が混入したオイルがピストン機構151aに送り出された場合でも、気体(空気)はピストン室154aの上部に自然に移送され、そのピストン室154aに溜まった気体(空気)は、ステムブリーダ155aからオイルと一緒にオイル回収室64aへ排出される。
このように、ピストン室154aに気体(空気)が混入したオイルが送られても、その気体(空気)は滞留することなく排出されるので、オイル供給機構200aから送られてくるオイルの液圧を安定してピストン本体部153aの押圧力に変えることができる。
また、オイルポンプ202aが停止された状態が長く続くと、ピストン室154a内のオイルはオイルポンプ202aの隙間を通ってオイル回収室64aに徐々に逆流し、ピストン室154a内には、オイルの変わりにステムブリーダ155aを通って気体(空気)が流入する。
このように、ピストン室154a内に気体(空気)が流入した状態からピストン室154a内の圧力を所定の圧力まで上昇させる場合には、ピストン室154a内をオイルで充満させる必要があり、オイルが充満されるまでは、気体(空気)が混在しているためピストン室154a内の圧力の上昇が鈍くなる。よって、所定の圧力値になるまでに時間がかかり制御精度が悪化する。
ここで、本実施の形態では、電動モータ201aを常時運転させピストン室154a内に常にオイルが供給されるように構成されている。これにより、ピストン室154a内が常にオイルで充満され、ピストン室154aにオイルが充満される時間が省略される。よって、ピストン室154a内の圧力の上昇の遅れが無くなり、制御精度を改善することができる。
また、ピストン室154a内の圧力値の大きさは、ピストンシール部材218a,219aの摺動抵抗より大きくしても良い。この場合、ピストン本体153aが押圧力を発生しプライマリープレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間を詰めてエンドプレーを無くすことができる。よって、ピストン室154aの圧力上昇に遅れることなくプライマリープレート135aからプライマリードリブンプレート136aに駆動力が伝達される。
よって、ピストン室154a内の圧力上昇に対する駆動力伝達の応答遅れが無くなり、制御精度を改善しつつ応答性を速くすることができる。なお、プライマリープレート135a及びプライマリードリブンプレート136a(図4参照)の数は、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a(図4参照)の数に比べて少ないので、数が少ない分、引きずりによる発熱量が少ない。さらに、ピストン本体153aがピストン室154a内の圧力により移動されて、ベアリングB3a及び押圧部材140aを介してプライマリープレート135a及びプライマリードリブンプレート136aのエンドプレーが0mmとなり、プライマリープレート135a及びプライマリードリブンプレート136aに押圧力が掛かったとしても、その押圧力は、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a(図4参照)に掛かる押圧力の略20分の1であり、問題となるほどの発熱量が発生されることはない。
さらに、ピストン室154a内の圧力値の大きさを、その圧力によりカム機構131a(図4参照)から発生される押圧力がリリース機構171a(図4参照)の付勢力より小さくなるように設定しても良い。この場合、メインカム132a(図4参照)の移動がリリース機構171によって規制されるのでドライブプレート106a(図4参照)とドリブンプレート107a(図4参照)とのエンドプレーが確保される。
よって、ドライブプレート106a(図4参照)とドリブンプレート107a(図4参照)とにカム機構131a(図4参照)からの押圧力が作用しないので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する引きずりトルクを低減することができる。その結果、余分な駆動力がクラッチドラム部105a(図4参照)からシャフト113a(図4参照)に伝達されることを低減することができる。
また、上述したリリース機構171aの付勢力は、量産された場合の下限の付勢力に設定しても良い。この場合、量産品においてもドライブプレート106aとドリブンプレート107aとにカム機構131aからの押圧力が作用しないので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する引きずりトルクを低減することができる。よって、量産品においても余分な駆動力がクラッチドラム部105a(図4参照)からシャフト113a(図4参照)に伝達されることを低減することができる。
このように、本実施の形態では、オイルポンプ202aによりピストン室154a内に所定の圧力を常時発生させることにより、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する引きずりトルクを低減させ、余分な駆動力を伝えることなく応答性を向上させることができる。
また、上述したように駆動力調整機構60aでは、駆動力調整部100aにより、四輪駆動車1の旋回時における旋回性の向上と、高速直進走行時の駆動力調整部100aの発熱防止と、駆動力伝達の応答性の向上とが図られている。
具体的には、四輪駆動車1が左旋回する場合には、出力ギヤユニット52は、前輪40a、40bの平均回転速度より速い回転速度で回転しているので、出力ギヤユニット52から伝達される駆動力が後輪70aに伝達されると、四輪駆動車1の旋回性の向上が図られる。同様に右旋回の場合には、後輪70bに出力ギヤユニット52から伝達された駆動力が伝達されることで旋回性の向上が図られる。即ち、旋回方向の外側の後輪(後輪70a又は後輪70b)が駆動されることで四輪駆動車1の旋回性の向上が図られている。
また、四輪駆動車1が直進している場合には、後輪70aに駆動力が伝達されておらず、旋回性向上の為に前輪40a、40bの平均回転速度に対して回転速度差が与えられた出力ギヤユニット52と、前輪40aと前輪40bとの平均回転速度と同じ回転速度の後輪70aとの間に回転速度差が発生しているが、十分なエンドプレーを確保できるので引きずりトルクの発生を抑えることができる。
また、プライマリープレート135aとプライマリードリブンプレート136aとに比べて、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとは数が多く与えられる押圧力の程度も大きいので発生する引きずりトルクが大きい。そこで、本実施の形態では、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとのエンドプレーが約0.5mmから約1.0mmの間に設定されており、高速直進走行時の駆動力調整部100aの発熱防止が図られている。
また、駆動力調整部100aが駆動力を伝達する場合には、プライマリープレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間と、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間とを詰めることで摩擦力を発生させて駆動力が伝えられる。従って、隙間を詰める時間が駆動力伝達の応答性となる。
そこで、本実施の形態では、回転力を押圧力に増幅する機構であるカム機構131aにて押圧力を増幅しているので、増幅前の弱い力が与えられるプライマリープレート135aとプライマリードリブンプレート136aとのエンドプレーを約0mmに設定し、隙間を詰める時間を約0秒とした。
さらに、約0.5mmから約1.0mmのエンドプレーが設定されるドライブプレート106aとドリブンプレート107aとは、回転速度差を利用して隙間を詰めるので、約0.5mmから約1.0mmのエンドプレーが有っても、その回転速度差により、約0.5mmから約1.0mmのエンドプレーを問題とならない速さで詰めることができる。このようにして、駆動力伝達の応答性の向上が図られている。
次に、図7を参照して、駆動力調整機構60aのオイル通路の構成について詳細に説明する。図7は、駆動力調整機構60aのオイル通路の構成を示した図であり、(a)は、駆動力調整機構60aの回転軸心P方向視におけるオイルの通路の概略を示した概略図であり、(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における断面図であり、(c)は、図7(a)のVIIc−VIIc線における断面図である。
なお、図7においては、斜線で示された部分がオイル通路である。また、図7においては、オイル通路以外の断面線は省略して図示する。図7に示す矢印Xは、四輪駆動車1(図1参照)の前後方向であり、駆動力分配機構50(図1参照)の回転軸心T方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
駆動力調整機構60aのオイル通路は、ピストン機構151aのピストン本体部153aを動作させるためのオイルを供給する通路である。さらに、駆動力調整機構60aのオイル通路は、オイルを循環させることでオイルに混入した気体(空気)を滞留させること無く排出する機構であり、気体(空気)の混入によるダンパー効果を低減し、オイルの液圧を早期に安定させるものである。
図7(a)に示すように、駆動力調整機構60aのオイル通路は、主に、略環状のピストン室154aと、そのピストン室154aに連通して形成される圧力検出通路301aと、圧力検出通路301aに取着されるセンシング部302aと、ピストン室154aに連通して形成される第一供給通路211aとによりオイルの流れる流路が形成される。
さらに、図7(c)に示すように、駆動力調整機構60aのオイル通路は、第一供給通路211aに連通して形成される第二供給通路212aと、その第二供給通路212aにオイルを送り出すオイルポンプ202aと、そのオイルポンプ202aへ供給されるオイルを貯めているオイル貯留室204aと、そのオイル貯留室204aとオイル回収室64aとに連通して形成される回収通路210aと、ピストン室154aの上部に連通して形成されるステムブリーダ155aと、そのステムブリーダ155aによりピストン室154aと連通されるオイル回収室64aとによりオイルの流れる流路が形成される。
図7(a)に示すように、ピストン室154aは、環状の通路であり、その上部(図7(a)矢印Z方向上部)にステムブリーダ155aを有している。即ち、ピストン室154aに流入したオイルに混入している気体(空気)は、ピストン室154aの壁面(湾曲した面)に沿って移送され、オイルポンプ202aより送り出されたオイルと共にピストン室154aの上部に取着されるステムブリーダ155aから排出される。
よって、オイルに混入している気体は、ピストン室154aの湾曲した面により上部へ移送されるので、ピストン室154a内に留まることを抑制することができる。その結果、気体(空気)の混入によるダンパー効果を低減し、オイルの液圧を早期に安定させることができる。
また、図7(a)に示すように、圧力検出通路301aは、水平面に対して傾斜を持つ直線形状の孔であり、圧力検出通路301aの上端(図7(a)矢印Z方向上端)は、ピストン室154aのステムブリーダ155aより下方に開口214aを介して連通して形成されている。
よって、圧力検出通路301aは、ピストン室154aに向かって上昇傾斜して形成されるので、圧力検出通路301aに混入した気体(空気)を圧力検出通路301aの壁面に沿ってピストン室154aに移送することができる。従って、圧力検出通路301aに混入した気体(空気)は、ステムブリーダ155aから円滑に排出されるので、ピストン室154aと圧力検出通路301aとに気体(空気)が滞留した場合に比べて、オイルの液圧による気体(空気)の容積変化分と同じ容積のオイルをオイルポンプ202aから圧送する必要が無くなり、ダンパー効果を低減できるので、オイルポンプ202aより送り出されたオイルの液圧を早期に安定させることができる。
また、圧力検出通路301aの下端部(図7(b)矢印Z方向下端部)に連成される第二取付口217aには、センシング部302aを螺着するためのネジ溝が形成され、センシング部302aは、圧力検出通路301aの第二取付口217aに螺着されることで取り付けられる。
このように、センシング部302aは、ステムブリーダ155aより下方(図7(a)矢印Z方向下方)に取り付けられるので、ステムブリーダ155aの上方(図7(a)矢印Z方向上方)に気体(空気)が残留しても気体(空気)の影響を受けない。その結果、センシング部302aによって計測されるオイルの液圧の測定精度を向上させることができる。
図7(c)に示すように、第一供給通路211aは、圧力検出通路301aと同様に、水平面に対して傾斜を持つ直線形状の孔であり、第一供給通路211aの上端は、ピストン室154aに連通して形成され、第一供給通路211aの下端部には、取付口215aが連成され、ピストン室154aに向かって上昇傾斜して形成されている。
よって、第一供給通路211aに混入した気体(空気)は、第一供給通路211aの壁面に沿って移送され、ピストン室154aに排出される。従って、圧力検出通路301aと同様に、オイルの液圧による気体(空気)の容積変化分と同じ容積のオイルをオイルポンプ202aから圧送する必要が無くなり、ダンパー効果を低減できるので、オイルポンプ202aより送り出されたオイルの液圧を早期に安定させることができる。
センシング部302a(図7(b)参照)にて検出されたオイルの液圧値は、センシング部302aにより電気信号に変えられ、入力線81a(図1参照)を介して制御装置80(図1参照)へ送られる。また、オイル供給機構200aを構成する電動モータ201aは、センシング部302aより送られた電気信号を元に制御装置80により出力線82a(図1参照)を介して制御される。即ち、検出されたオイルの液圧値を元に制御装置80により電動モータ201aはフィードバック制御が実施されている。よって、オイルの液圧の検出精度を向上させることは、フィードバック制御の精度を向上させることにつながる。
具体的には、そのフィードバック制御は、ROM84(図1参照)に格納された圧力制御プログラム87(図1参照)を用いて、センシング部302a(図7(b)参照)から送られた電気信号に対応した出力信号を設定するものである。なお、上述したように圧力制御プログラム87は、目標とする駆動力を伝達するのに必要な圧力をピストン室154aに供給するように、電動モータ201aに供給される電力値を設定するものである。
電動モータ201a及びオイルポンプ202aは、コスト削減を図るために汎用品が使用されるが、汎用品である電動モータ201aは出力バラツキを持っており、汎用品であるオイルポンプ202aは摺動抵抗のバラツキを持っている。即ち、電動モータ201aに供給される電力値が一定であっても、電動モータ201aにより発生されるピストン室154a内の圧力にバラツキが生じる。
しかし、本実施の形態では、フィードバック制御によりセンシング部302aの電気信号に基づいて、目標とする駆動力を伝達するのに必要な圧力がピストン室154aに供給されるように、電動モータ201aを制御するので、汎用品である電動モータ201a及びオイルポンプ202aを使用したとしても、ピストン室154a内の圧力値を所望の値に調整することができる。
また、オイル供給機構200a自体の温度が変化することでオイルの粘性と各部クリアランスと電動モータ201aの出力特性とが変化し、電動モータ201aに供給される電力値に対する、ピストン室154a内の圧力値が変化する場合がある。しかし、本実施の形態では、フィードバック制御によりセンシング部302aの電気信号に基づいて、目標とする駆動力を伝達するのに必要な圧力がピストン室154aに供給されるように、電動モータ201aを制御するので、オイル供給機構200a自体が温度変化しオイルの粘性と各部のクリアランスと電動モータ201aの出力特性とが変化したとしてもピストン室154a内の圧力値を所望の値に調整することができる。
このように、フィードバック制御によりバラツキやオイル供給機構200aの温度変化などに関係なくピストン室154aの圧力を精度よく設定することができるので、オイル供給機構200aにより駆動力の伝達が調整される駆動力調整部100aを搭載する四輪駆動車1(図1参照)の運転状況が変化しても、所望する駆動力を出力ギヤユニット52(図1参照)から後輪70a(図1参照)に伝達することができる。
そこで、図7(b)に示すように、本実施の形態では、センシング部302aをピストン室154aではなく圧力検出通路301aに取り付けている。上述したが、圧力検出通路301aは、上端がピストン室154aに連通して形成されているので、圧力検出通路301aの内部ではオイルの流れが発生しづらい構造になっている。さらに、圧力検出通路301a内の気体は、ピストン室154aに移送されるので、センシング部302aはオイル内に位置することになる。
よって、オイルの流れによる圧力損失が発生することがないので、オイルの流れによる影響を受けることなく、ピストン室154a内のオイルの液圧を測定することができる。これにより、センシング部302aが気体に触れずにオイル内に位置しているのでオイルの液圧の検出精度を向上させることができる。
次に、図9を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態は、圧力検出通路301aにセンシング部302aを取り付ける構成としたが、これに代えて、第の実施の形態では、第一供給通路211aにセンシング部302aを取り付ける構成とした。よって、第2実施の形態では、センシング部302aの取り付け位置以外は第1実施の形態と同様となるので、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9は、第2実施の形態の駆動力調整機構60aを示した断面図である。なお、図9においては、駆動力調整機構60aの符号は省略して図示する。また、図9に示す矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整機構60a,60bの回転軸心P方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
図9に示すように、センシング部302aは、第一供給通路211aの上端(図9矢印Z方向上端)に連成される第二開口216aと対称な位置である第一供給通路211aの下端(図9矢印Z方向下端)に形成される第二取付口217aに取り付けられている。この場合、第一供給通路211aの下端を遮蔽する埋栓が不要となるので、部品点数を削減でき、コスト削減を図ることができる。また、センシング部302aを取り付けるだけで、第一供給通路211aを外部に対して遮蔽できるので、製作工程を削減でき、コスト削減を図ることができる。また、第2実施の形態では、圧力検出通路301aが不要となるので、加工の手間が無くなり、コスト削減を図ることもできる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
また、上記各実施の形態では、ステムブリーダ155aは、ピストン室154aに隣接するピストン本体部153aの上部に取着されているが、必ずしもピストン本体部153aの上部に取着される必要はなく、例えば、ピストン本体部153aの最上部に取着されても良い。この場合、気体(空気)が滞留せずに円滑に排出されるので、オイルの液圧による気体(空気)の容積変化分と同じ容積のオイルをオイルポンプ202aから圧送する必要が無くなり、ダンパー効果が低減されるので、オイルポンプ202aより送り出されたオイルの液圧を早期に安定させることができる。また、ステムブリーダ155aは、センシング部302aより上部に配置すれば、センシング部302aが常にオイル内に存在することとなるので、少なくともセンシング部302aの上部であれば、如何なる場所に取り付けても良い。
また、上記各実施の形態では、リリース機構171aに皿ばねを用いたが、必ずしも皿ばねである必要はなく、例えば、環形のゴム状弾性体を用いても良い。
以下に、本発明の駆動力伝達装置および液体送出装置の変形例を示す。
駆動力を発生する原動機と、その原動機によって発生する駆動力が入力される入力軸と、その入力軸に入力された駆動力が出力される出力軸と、その出力軸と前記入力軸とを連結するクラッチ機構とを備えた駆動力伝達装置において、前記クラッチ機構に設けられ、前記入力軸側と出力軸側とを連結可能な多板クラッチと、その多板クラッチを押圧して前記入力軸側と出力軸側とを連結させるピストン部材と、そのピストン部材を駆動する液圧が供給される供給路と、その供給路内の液圧を検出する検出手段と、その検出手段による検出結果に基づいて、前記供給路に供給する液圧の供給および停止を行う液圧供給手段と、前記供給路内の液体および気体のうち少なくとも気体を放出する放出口とを備え、前記検出手段は、垂直方向において、前記放出口より下方で且つ、前記液圧供給手段による液圧の供給および停止に伴い前記供給路内の液面が変化した場合に最も下降した液面より下方に配置されることを特徴とする駆動力伝達装置A1。
駆動力伝達装置A1において、前記供給路は、前記ピストン部材に隣接して形成されそのピストン部材を駆動する液圧が供給される供給室と、その供給室より下流側に形成されその供給室と前記液圧供給手段との間を連通する連通路とを有し、前記検出手段は、前記連通路を介して前記供給室に供給される液圧を検出するものであることを特徴とする駆動力伝達装置A2。
駆動力伝達装置A1又はA2において、前記供給路に連通し、前記検出手段が取り付ける取付通路を備え、前記取付通路は、水平方向に対して、前記検出手段から前記供給路と連通する開口への方向が上方傾斜して形成されていることを特徴とする駆動力伝達装置A3。
駆動力伝達装置A3において、前記取付通路には、前記供給路と連通する開口と、その開口に対称的に形成され前記検出手段が取り付けられる取付口とが形成されており、前記取付口は、前記検出手段が取り付けられると密閉される形状に形成されていることを特徴とする駆動力伝達装置A4。
駆動力伝達装置A1からA4のいずれかにおいて、前記供給路は、前記ピストン部材に隣接して形成されそのピストン部材を駆動する液圧が供給される供給室と、その供給室より下流側に形成されその供給室と前記液圧供給手段との間を連通する連通路とを有し、前記放出口は、垂直方向において、前記供給室より上方または前記供給室の上部に設けられていることを特徴とする駆動力伝達装置A5。
駆動力伝達装置A1からA5のいずれかにおいて、前記クラッチ機構は、前記ピストン部材により押圧されるプライマリークラッチ(第1多板クラッチ)と、そのプライマリークラッチ(第1多板クラッチ)が連結された場合に、前記ピストン部材の押圧力をカム機構によって増幅する増幅機構と、その増幅機構により増幅された押圧力によって押圧され、前記入力軸と出力軸とを連結して駆動力を伝動するメインクラッチ(第2多板クラッチ)とを備え、前記入力軸側から出力軸側に、前記ピストン部材、プライマリークラッチ(第1多板クラッチ)、増幅機構およびメインクラッチ(第2多板クラッチ)の順に配置されると共に、そのピストン部材、プライマリークラッチ(第1多板クラッチ)、増幅機構およびメインクラッチ(第2多板クラッチ)が配置される方向と、前記ピストン部材が駆動する方向とが同方向に構成されていることを特徴とする駆動力伝達装置A6。
液体が流通する流通路と、その流通路を流通する液体が貯留される液体貯留室と、その液体貯留室に貯留された液体を前記流通路に送り出す液体送出手段と、その液体送出手段に対して、前記液体貯留室に貯留された液体を前記流通路に送り出す駆動力を付与する駆動手段とを備え、前記液体貯留室は、前記液体送出手段と駆動手段との間で且つ、その液体送出手段および駆動手段のそれぞれに隣接して配置されることを特徴とする液体送出装置B1。
液体送出装置B1において、前記液体送出手段と駆動手段との間を連結し、前記駆動手段により付与される駆動力を前記液体送出手段に伝動する駆動力伝動手段を備え、その駆動力伝達手段は、前記液体貯留室内に配置されていることを特徴とする液体送出装置B2。
液体送出装置B1又はB2において、前記流通路に送り出された液体が放出される放出口と、その放出口から放出された液体を、前記液体貯留室に循環される循環路とを備え、前記液体送出手段、液体貯留室および駆動手段は、水平方向に並設されており、その循環路は、前記液体貯留室の上部に形成された上部開口と連通すると共に、前記流通路は、前記液体貯留室の側部に形成された側部開口と連通していることを特徴とする液体送出装置B3。
液体送出装置B3において、前記側部開口は、垂直方向において、前記液体貯留室の下部に形成されていることを特徴とする液体送出装置B4。
液体送出装置B3又はB4において、前記液体貯留室内に設けられ、前記駆動手段または液体送出手段の少なくとも一方の側部から前記循環路と連通する上部開口に亘って上方傾斜した傾斜面を備えていることを特徴とする液体送出装置B5。
液体送出装置B1からB5のいずれかにおいて、駆動力を発生する原動機と、その原動機によって発生する駆動力が入力される入力軸と、その入力軸に入力された駆動力が出力される出力軸と、その出力軸と前記入力軸とを連結可能なクラッチ機構と、そのクラッチ機構を押圧して前記入力軸と出力軸とを連結させるピストン部材とを有する駆動力伝達装置を備え、前記流通路は、前記ピストン部材を駆動させる液圧が供給される供給室に連通していることを特徴とする液体送出装置B6。
駆動力を発生する原動機と、その原動機によって発生する駆動力が入力される入力軸と、その入力軸に入力された駆動力が出力される出力軸と、前記入力軸から前記出力軸に伝達される駆動力を断続するメインクラッチとを備えたものであって、前記メインクラッチよりも前記入力軸側において前記入力軸から伝達される駆動力を断続するプライマリクラッチと、液圧を発生する液圧ポンプと、その液圧ポンプによって発生する液圧で前記プライマリクラッチを押圧するピストンと、前記プライマリクラッチと嵌合し、前記ピストンによって前記プライマリクラッチが締結されている状態で、前記プライマリクラッチを介して前記入力軸から入力される駆動力を利用して、前記ピストンの押圧力よりも増幅した押圧力で前記メインクラッチを押圧し、前記メインクラッチを締結するカム機構とを備えていることを特徴とする駆動力伝達装置C1。
駆動力伝達装置C1において、前記液圧ポンプを駆動する電動モータと、前記液圧ポンプから前記ピストンに通じる液圧回路内の液圧を検出する液圧検出手段と、その液圧検出手段の検出結果に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを備えていることを特徴とする駆動力伝達装置C2。
駆動力伝達装置C2において、前記カム機構は、前記プライマリクラッチと嵌合するプライマリカムと、そのプライマリカムと対向配置され、前記出力軸に対して移動可能に嵌合し、前記メインクラッチを押圧するメインカムと、そのメインカムと前記プライマリカムとの間に移動可能に配置されるカムフォロアと、そのカムフォロアの移動経路であって、前記メインカムの前記プライマリカムとの対向面と、前記プライマリカムの前記メインカムとの対向面との少なくとも一方に、深さが連続的に変化するように形成されたカム溝とを備えていることを特徴とする駆動力伝達装置C3。
駆動力伝達装置C3において、前記メインクラッチと前記メインカムとの間に配置され、前記メインカムが前記メインクラッチを押圧する方向とは反対方向に前記メインカムを付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする駆動力伝達装置C4。
駆動力伝達装置C4において、前記制御手段は、前記液圧回路内の液体に対し、前記液圧回路内に液体が充満されるために必要なイニシャル圧力、又は、前記プライマリクラッチのがたつきを抑制するために前記ピストンの摺動抵抗よりも大きいイニシャル圧力が常時負荷されるように前記電動モータを制御することを特徴とする駆動力伝達装置C5。
駆動力伝達装置C5において、前記イニシャル圧力は、前記付勢部材が前記メインカムを付勢する付勢力よりも小さく設定されていることを特徴とする駆動力伝達装置C6。
駆動力伝達装置C6において、前記メインクラッチと、前記プライマリクラッチと、前記ピストンと、前記カム機構と、前記出力軸と、前記付勢部材とは、前記入力軸を挟んだ両側に各々配置されており、前記出力軸の各々は、その各々に後輪が取着される後輪軸であり、前記入力軸に連結され、一対の前輪の各々が取着される一対の前輪軸のうちの少なくとも一方よりも前記入力軸を常時高速で回転させる伝達ギヤ比が設定されているギヤ機構を備えていることを特徴とする駆動力伝達装置C7。
駆動力伝達装置C4からC7のいずれかにおいて、前記付勢部材は、前記出力軸を挿通する皿バネによって構成されていることを特徴とする駆動力伝達装置C8。
駆動力伝達装置C1からC8のいずれかにおいて、前記プライマリクラッチの摩擦材は紙製で構成されていることを特徴とする駆動力伝達装置C9。
駆動力を発生する原動機と、その原動機によって発生する駆動力が入力される入力軸と、その入力軸に入力された駆動力が出力される出力軸と、前記入力軸から前記出力軸に伝達される駆動力を断続するメインクラッチとを備えたものであって、前記メインクラッチよりも前記入力軸側において前記入力軸から伝達される駆動力を断続するプライマリクラッチと、そのプライマリクラッチよりも入力軸側において前記入力軸を挿嵌するハブと、液圧を発生する液圧ポンプと、前記プライマリクラッチとの間に前記ハブを挟んだ位置に配置され、前記液圧ポンプによって発生する液圧で作動するピストンと、前記ハブを貫通して前記ピストンと前記プライマリクラッチとを回転可能に連結し、前記ピストンの押圧力によって前記プライマリクラッチを押圧する第1押圧部材と、前記ピストンとの間に前記ハブを挟んだ側において前記ハブと対向配置され、前記プライマリクラッチと嵌合し、前記第1押圧部材によって前記プライマリクラッチが締結されている状態で、前記プライマリクラッチを介して前記入力軸から入力される駆動力を利用して、前記ピストンの押圧力よりも増幅した押圧力で前記メインクラッチを押圧し、前記メインクラッチを締結するカム機構と、そのカム機構と前記ハブとを回転可能に連結し、前記カム機構によって前記メインクラッチを押圧することで前記カム機構に発生する反力で前記ハブを押圧する第2押圧部材とを備えていることを特徴とする駆動力伝達装置D1。
駆動力伝達装置D1において、前記ハブと、前記プライマリクラッチと、前記カム機構と、前記メインクラッチとを内包し、前記ハブと、前記プライマリクラッチと、前記メインクラッチとの各々と嵌合する筒状のクラッチドラムと、そのクラッチドラムの前記ハブと嵌合する部分とは反対側に嵌合し、前記メインクラッチと対向する位置に垂下する支持プレートとを備えていることを特徴とする駆動伝達装置D2。
駆動力伝達装置D1又は2において、前記カム機構は、前記プライマリクラッチと嵌合するプライマリカムと、そのプライマリカムと対向配置され、前記出力軸に対して移動可能に嵌合し、前記メインクラッチを押圧するメインカムと、そのメインカムと前記プライマリカムとの間に移動可能に配置されるカムフォロアと、そのカムフォロアの移動経路であって、前記メインカムの前記プライマリカムとの対向面と、前記プライマリカムの前記メインカムとの対向面との少なくとも一方に、深さが連続的に変化するように形成されたカム溝とを備えていることを特徴とする駆動力伝達装置D3。