JP4963695B2 - 有機蒸気分離用の中空糸エレメント - Google Patents
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管板は、糸束を一体に固着する役割のほか、中空糸と中空糸の間、および、中空糸と容器の間を密封することにより、中空糸膜の内部空間と外部空間を隔絶し、内部空間と外部空間との気密性を保持する役割を持っている。中空糸型のガス分離膜モジュールは、前記管板による気密性が失われると、好適な分離が行われなくなる。
前記エポキシ樹脂組成物の樹脂成分が、下記式(1)で示されるエポキシ化合物(A)、下記式(2)で示されるエポキシ化合物(B)、芳香族アミン化合物(C)とからなり、
前記エポキシ化合物(A)と前記エポキシ化合物(B)が重量比で90:10〜60:40の範囲の割合で配合されていることを特徴とする有機蒸気分離用の中空糸エレメントに関する。
前記エポキシ樹脂組成物として、
式(1)で示されるエポキシ化合物(A)、式(2)で示されるエポキシ化合物(B)、芳香族アミン化合物(C)とからなり、前記エポキシ化合物(A)と前記エポキシ化合物(B)が重量比で90:10〜60:40の範囲の割合で配合されている樹脂成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いる
ことを特徴とする有機蒸気分離用の中空糸エレメントの製造方法に関する。
ここで、エポキシ化合物(B)としては、トリグリシジル−4−アミノフェノールが好ましく、また、芳香族アミン化合物(C)としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。
2 キャリアガス導入口
3 透過ガス排出口
4 非透過ガス排出口
5 筒状容器
6 中空糸束
6a 中空糸膜
7 管板
7a 第一管板
7b 第二管板
8 キャリアガスガイドフィルム
9 芯管
10 芯管の通連孔
11 金型
トリグリシジル−4−アミノフェノールとしては、ジャパンエポキシレジン(株)製 jER630などがあげられる。
エポキシ化合物(A)が90重量%を超え、エポキシ化合物(B)が10重量%未満となると、充填性が著しく劣るなど成形性が悪くなり、また、耐有機溶剤性が悪くなるため好ましくない。エポキシ樹脂(A)が60重量%未満となりエポキシ化合物(B)が、40重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物を硬化した際に大きいひけが生じ、成形がうまくいかない傾向が強いため好ましくない。
化学量論量以上の芳香族アミン化合物を使用すれば、エポキシ樹脂組成物の硬化の際に発熱が大きくなり過ぎて、耐久性の高い管板が形成されないので、好ましくない。また、芳香族アミン化合物の使用割合を化学量論量の6割より少なくすると、エポキシ樹脂組成物の硬化が不十分となり、強固な管板が形成されないので、好ましくない。
また、エポキシ樹脂組成物は、上述の樹脂成分以外の成分、例えば充填剤等を含有していてもよいが、含有せずに樹脂成分だけでもよい。
また、前記図1に示した場合には、芯管の先端は閉じており、第二管板7bに埋設されているが、必ずしも管板によって固着されている必要はなく、熱膨張によるずれなどを吸収する程度の隙間があるのが好ましい。
前記キャリアガスガイドフィルムの材料は特に限定されないが、装置内に供給された混合ガスを実質的に透過しない材料か、又は難透過性の材料であれば如何なるもので形成してもよい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等のプラスチックフィルムあるいはアルミニウムやステンレスの金属箔が好適に用いられる。特に、耐熱性、耐溶剤性、加工性の点でポリイミドフィルムが好適である。また、キャリアガスガイドフィルム8の厚さも特に制限されないが、厚いフィルムが用いられると中空糸が装着される空間を占有して有効膜面積が減少するので、数10μm〜2mm程度の厚みを好ましい範囲として挙げることができる。
前記キャリアガスガイドフィルムは、管板によって中空糸と同様に固着されることが好ましい。更に、芯管の連通孔に近い側の第一管板7aに固着され、第二管板7bには固着せず間隙をあけて、キャリアガスが有機蒸気混合物と向流となるように配置されるのが分離効率を高めるうえで好ましい。
有機蒸気の分離を行う際には、高温流体や高圧流体、あるいは減圧条件にさらされるものであるから、ガス分離膜モジュールの容器には、充分な強度と使用条件下での安定性が必要である。材質には特に限定はないが、金属、プラスチック、ガラス繊維複合材料、およびセラミックが好適に使用される。
本発明の有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールを用いた有機蒸気混合物を分離する方法において、中空糸膜の内部空間を一次側(原料ガス供給側)とする中空フィード、反対に中空糸膜の外部空間を一次側とする場合をシェルフィードのどちらであっても良い。中空糸膜を有効に利用するためには、原料ガスの偏流が起こりにくい中空フィードが好ましい。
シェルフィード、中空フィードのいずれの場合においても、ガス分離膜モジュールによる有機蒸気混合物を分離する方法は、下記の方法によって行われる。すなわち、混合ガス導入口からガス分離膜モジュール内の一次側の空間に供給された有機蒸気混合物は、中空糸膜の表面に接しながら流れて、非透過ガス排出口からモジュール外へ排出される。その間、中空糸膜を透過した透過ガスは、二次側の空間に設置された透過ガス排出口からモジュール外に排出される。中空糸膜は選択的透過性を有しているので、膜を透過した透過ガスは、高透過成分に富んでおり、非透過ガス排出口から排出される非透過ガスは、高透過成分の濃度が減少している。
具体的には、膜の二次側を減圧に保持して、中空糸膜の両側における高透過成分の分圧差を確保する方法が挙げられる。また、膜の二次側表面にキャリアガスを流通させる方法が挙げられる。その中で、膜の二次側表面にキャリアガスを流通させる方法が好ましく、かつ、キャリアガスが中空糸膜を挟んで有機蒸気混合物と向流になるように構成することが好ましい。
また、有機蒸気混合物は有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールへ供給され中空糸内部を流通して非透過ガス排出口から排出されるまでの間で凝縮しない程度以上に十分高温に過熱された有機蒸気混合物として供給されることが好ましい。
本発明の有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールへ供給される有機蒸気混合物は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上の温度のものである。
また、必要に応じて有機蒸気混合物を、その温度を保持しながら圧力を低下させる処理をおこなった後、有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールへ供給しても構わない。圧力を低下させる処理方法は、通常の減圧弁等に拠っても良いし、気化したガス混合物をデミスター(ミストセパレーター)などで処理してミストを除去すると同時に圧損を発生させることに拠っても良い。
エポキシ化合物(A)として jER604(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エポキシ化合物(B)として jER630(ジャパンエポキシレジン(株)製)、および芳香族アミン化合物(C)としてMDA−220(三井化学ポリウレタン(株)製)を用いた。
所定量のjER604、jER630およびMDA−220を均一に混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
前記の手法で調製したエポキシ樹脂組成物を、キャストすることにより形成した薄膜を、180℃で4時間硬化させて、厚さ100μmのエポキシ樹脂硬化物からなる薄膜を作成した。前記薄膜を、幅2mm、長さ30mmの短冊状に切断して試験片とした。
前記試験片を、引張り試験機を用いて、引張り速度2mm/min、チャック間距離20mmとして、引張り破断強度、弾性率(ヤング率)、引張り破断伸度の測定を行った。測定は、温度23℃、湿度50%RHの調湿条件下で行った。
前記試験片を120℃で2時間真空乾燥を行った後重量(初期重量)を測定した。その後、130℃のエタノールに5日間浸漬した。エタノールから試験片を取り出し、120℃で3日間真空乾燥し、その後で、重量(浸漬後重量)を測定した。
エタノール抽出量(%)は、下式によって算出した。
エタノール抽出量(%)=(初期重量−浸漬後重量)/(初期重量)×100
エタノール抽出量は、エタノール浸漬によって溶出される量を測定したものであって、耐有機蒸気性の指標になる。すなわち、この値が大きいと、有機蒸気分離を行う際に、有機蒸気による影響を受けやすいことを意味する。
ポリイミド中空糸膜(長さ;100cm、外径;500μm)を12000本集束した糸束を、図2bに示す様にφ100mmの金型内に配置した。糸束を金型を下にして実質的に直立させ、前記の手法で調製した60℃のエポキシ樹脂組成物を40℃に保温した金型内にゆっくりと注入した後、120℃に加温してエポキシ樹脂の硬化を行うことにより管板の成形を行った。管板の厚みが90mm程度となるようにエポキシ樹脂の注入量を制御した。硬化後、中空糸エレメントを容器から取り出して目視により観察し、更に管板を略半分に割って中心部の状態についても目視により観察した。
糸束内充填性に関しては、エポキシ樹脂組成物を充填すべき領域の全ての部分にエポキシ樹脂組成物が充填されている場合を○、充填すべき空間の50%以上が充填されなかった場合を×と評価した。
液上りに関しては、成形された管板の平均の厚みと比較して、厚みのもっとも厚い部分が平均の厚みより20mm以上厚いものを×、差が20mm未満であるものを○と評価した。
ひけに関しては、成形された管板の外周部に直径20mm以上の範囲でひけが生じているのを×、5mm以上のひけが生じなかったものを○と評価した。
前記方法により、jER604 70重量部、jER630 30重量部およびMDA−220 44.1重量部からなる組成のエポキシ樹脂組成物を調製した。
このエポキシ樹脂組成物を硬化した試験片の機械特性とエタノール抽出量を測定した結果を表1に示す。ヤング率は2.9GPa、伸度は6.6%となった。エタノール抽出量は1.0%と低い値であった。このエポキシ樹脂組成物を用いて管板の成形性の評価した結果を表1に示す。
管板の成形性の評価方法と同様の方法で中空糸束の両端部に管板を成形して、中空糸エレメントを製造したところ、良好な形状の管板を得ることができた。
表1に示した組成のエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。また、管板の成形性の評価方法と同様の方法で中空糸束の両端部に管板を成形して、中空糸エレメントを製造したところ、良好な形状の管板を得ることができた。
前記方法により、jER630 100重量部およびMDA−220 50.6重量部からなる組成のエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
エポキシ樹脂組成物の組成を、jER604 50重量部、jER630 50重量部、およびMDA−220 46.0重量部として、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
また、管板の成形性の評価方法と同様の方法で中空糸束の両端部に管板を成形して、中空糸エレメントを製造したところ、液上りが激しく、またひけが大きくでき、良好な管板を得ることができなかった。
前記方法により、jER604 100重量部およびMDA−220 41.3重量部からなる組成のエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
このエポキシ樹脂組成物を用いて管板の成形性の評価した結果を表2に示す。また、管板の成形性の評価方法と同様の方法で中空糸束の両端部に管板を成形して、中空糸エレメントを製造したところ、エポキシ樹脂組成物が金型内に十分に充填されず、良好な管板を得ることができなかった。
エポキシ化合物(A):jER604と、エポキシ化合物(B):jER630との混合物の粘度を回転粘度計(ローターのずり速度10sec−1)を用いて温度40℃で測定した結果を、図3に示す。エポキシ化合物(A)とエポキシ化合物(B)が混合比により変化していることから、重量比が90:10〜60:40の範囲で使用時に適切な粘度を有すると推定される。
以上の結果より、本発明において使用されるエポキシ樹脂組成物は、成型性に優れ、静置成形により、簡便に管板を成形できることが判った。また、その硬化物は、水蒸気が共存する条件(調湿条件)下でも、機械的特性に優れ、エタノール抽出量が少なく有機溶媒に対する耐久性が高い。従って、静置成形で成形した管板を用いた有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールにより、長時間安定して有機混合物の分離を行う事ができることが示された。
ポリイミド中空糸膜(膜面積 1.9m2)を集束した糸束の両端部に、実施例1での組成のエポキシ樹脂組成物を用いて管板を作成し、有機蒸気分離用の中空糸エレメントを作成した。前記中空糸エレメントを収納した図1の構成の有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールを用いて、イソプロパノールの脱水を行った。イソプロパノール95.13重量%及び水4.87重量%を含有する溶液を、加熱して120℃の有機蒸気混合物としてガス分離膜モジュールへ供給して、脱水操作を行った。
その分離膜モジュールにおける脱水操作においては、乾燥窒素ガス(キャリアガス)を120℃に加熱し、中空糸膜の外側(中空糸の周辺部、透過側)に流通させると共に、中空糸膜の透過側を100mmHgに減圧して、混合ガス中の水蒸気を選択的に膜透過させて分離することによって混合ガスの脱水操作を行った。分離膜モジュールの透過蒸気および非透過蒸気は、冷却されて凝縮させて、透過蒸気および非透過蒸気の凝縮液を得て、回収した。その脱水操作の結果を、表3に示す。1年間連続で運転を行ったが、性能の変化は認められなかった。また、運転後に管板の外観を目視で確認したところ、クラックなどは見られず、良好であった。
Claims (12)
- 選択的透過性を有する多数の中空糸膜からなる糸束の少なくとも一方の端部が、エポキシ樹脂組成物の硬化物により形成される管板によって、固着され、結束されている、有機蒸気分離を行うための分離膜モジュールを構成する中空糸エレメントであって、
前記エポキシ樹脂組成物の樹脂成分が、下記式(1)で示されるエポキシ化合物(A)、下記式(2)で示されるエポキシ化合物(B)、芳香族アミン化合物(C)とからなり、
前記エポキシ化合物(A)と前記エポキシ化合物(B)が重量比で90:10〜60:40の範囲の割合で配合されている
ことを特徴とする有機蒸気分離用の中空糸エレメント。
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基または水素原子を表す。) - エポキシ化合物(B)が、トリグリシジル−4−アミノフェノールであることを特徴とする請求項1に記載の有機蒸気分離用の中空糸エレメント。
- 芳香族アミン化合物(C)が、4,4’−ジアミノジフェニルメタンであることを特徴とする請求項1乃至2に記載の有機蒸気分離用の中空糸エレメント。
- 前記中空糸エレメントが、多数の中空糸膜からなる糸束の略中心部にガスを導入する機能を持つ芯管を持つことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機蒸気分離用の中空糸エレメント。
- 前記中空糸エレメントが、多数の中空糸膜からなる糸束の外周部をキャリアガスガイドフィルムによって覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機蒸気分離用の中空糸エレメント。
- 選択的透過性を有する多数の中空糸膜からなる糸束の端部を金型に入れ、次いでエポキシ樹脂組成物を金型内に注入した後、エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより糸束の端部に管板を形成して、中空糸膜の端部の固着、結束を行う有機蒸気分離用の中空糸エレメントの製造方法において、
前記エポキシ樹脂組成物として、
式(1)で示されるエポキシ化合物(A)、式(2)で示されるエポキシ化合物(B)、芳香族アミン化合物(C)とからなり、前記エポキシ化合物(A)と前記エポキシ化合物(B)が重量比で90:10〜60:40の範囲の割合で配合されている樹脂成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いる
ことを特徴とする有機蒸気分離用の中空糸エレメントの製造方法。
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基または水素原子を表す。) - 金型に注入したエポキシ樹脂組成物を静置した状態で硬化させ、管板を形成することを特徴とする請求項6に記載の有機蒸気分離用の中空糸エレメントの製造方法。
- 少なくとも混合ガス導入口、透過ガス排出口および非透過ガス排出口を有する容器内に、請求項1乃至5のいずれかに記載の有機蒸気分離用の中空糸エレメントが収納されて構成されていることを特徴とする有機蒸気分離用ガス分離膜モジュール。
- 前記容器が、さらにキャリアガス導入口を有することを特徴とする請求項8に記載の有機蒸気分離用ガス分離膜モジュール。
- 混合ガス導入口、非透過ガス排出口が中空糸膜の内部空間に通じ、キャリアガス導入口および透過ガス排出口が中空糸膜の外部空間に通じるように構成されていることを特徴とする請求項8乃至9に記載の有機蒸気分離用ガス分離膜モジュール。
- 請求項8乃至10のいずれかに記載の有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールを用いることを特徴とする有機蒸気混合物を分離する方法。
- 有機蒸気混合物を混合蒸気導入口から80℃以上で導入し、高透過成分を中空糸膜を選択的に透過させ、透過蒸気又は非透過蒸気として高純度化した有機蒸気を得ることを特徴とする請求項11に記載の有機蒸気混合物を分離する方法。
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