JP4963419B2 - フレキシブル表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、薄型で軽量な大画面のフレキシブル表示装置(以下、単に表示装置と省略する場合がある。)の技術分野に属し、特に巻き取ってあるいは折り曲げて収納することが可能な表示装置に関する。
現在、LCDや有機ELディスプレイに代表される薄型の表示装置の需要が急速に増大しているが、市場では更なる薄型化・軽量化が求められている。すなわち、近い将来、フレキシブルな表示装置の実現が切望されている。フレキシブルな表示装置は、大画面でありながら、薄くて軽いことから、巻き取ったり折り曲げたりすることが可能であり、気楽に携帯して搬送することが出来る。一方で、従来の表示装置では問題にならなかった搬送時の落下や衝撃、巻き取りあるいは折り曲げ収納時の接触面の摩擦・摩耗の問題が発生する。
従来、LCDや有機ELディスプレイ等の表示装置では、ガラス基体が使用されているが、フレキシブルな表示装置の場合は、前述した薄型化・軽量化・大画面化・耐衝撃性・フレキシブル性の特性が必要となることから、主に基体材料の見直しが検討されている。
ガラス基体を利用する場合は、従来のガラスを材質的に強化して薄くする検討が進められている(特許文献1参照)。
また、ガラス以外では、高分子フィルムや金属薄膜を基体とすることが検討されている(特許文献2、3、4、5参照)。
さらに、ガラスと高分子フィルムの複合基体も検討されている(特許文献6、7参照)。
特開2005−019082号公報 特開2000−12213号公報 特開2004−281086号公報 特公平6−70919号公報 特開平7−282980号公報 特開2004−079432号公報 特開2006−024530号公報
しかしながら、ガラス基体の場合は、薄くしても耐衝撃性に問題があり、また、巻き取って(例えば直径100mmに)収納するレベルまで割らずに曲げることは不可能である。
また、高分子フィルムや金属薄膜を基体とした場合は、薄型化・軽量化・大画面化・フレキシブル性等に問題は無い。しかし、巻き取ったり折り曲げたりして収納する際に、発光面が対向面に接触することで簡単に傷付いてしまい、発光面に問題が生じるという課題があった。
本発明は、フレキシブル表示装置を自由な大きさに巻き取って収納した際、発光面側の表面と裏面側の表面との接触によって前記発光面側の表面に傷が付くことを防止でき、安心して小さく収納することが可能なフレキシブル表示装置を提供することである。
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るフレキシブル表示装置は、
フレキシブルな基体の上に発光素子が形成されており、発光面側の表面と裏面側の表面とが接触するように巻き取り可能なトップエミッションタイプのフレキシブル表示装置において、
発光面側の表面に、SiNからなる無機封止層と、前記無機封止層の外側に配置された高分子フィルムとを備え、
発光面側の表面の硬さは、裏面側の表面の硬さより大きいことを特徴とする。
本発明のフレキシブル表示装置は、発光面側の表面の硬さを裏面側の表面の硬さより大きくした。そのため、表示装置を巻き取ってあるいは折り曲げて収納する際に、発光面側の表面と裏面側の表面とが接触することによって生じる傷の発生を、前記発光面側の表面ではほとんど防止することができる。ひいては、大きなサイズの表示装置を安心して小さく収納することが可能となる。
ちなみに、表示装置の発光面側の表面の硬さを裏面側の表面の硬さより大きくする手法としては、発光面側の高分子フィルムに、硬さ(ヤング率、軽荷重引裂強度、ヴィカース硬度等)が裏面側の部材より大きいものを採用するだけで実現可能である。そのため、特別な材料や工程や装置を必要とせず、パネルの大幅なコストアップは避けられる。
本発明は、上記問題点に鑑みて鋭意検討した結果得られたものであり、フレキシブル表示装置を巻き取ってあるいは折り曲げて収納する際に、発光面側の表面と裏面側の表面との摩擦によって前記発光面側の表面が傷付かないように工夫したものである。
すなわち、本発明の表示装置は、発光面側の表面の硬さを裏面側の表面の硬さより大きくすることで、前記課題を克服した。表示装置を曲げて巻き取った場合、表示装置の発光面側の表面と裏面側の表面とが接触する。この時、発光面側の表面を硬くして、その裏面側の表面を軟らかくすることで、接触時の圧力や摩擦は、軟らかい面(裏面側の表面)が傷付くことで緩和される。しかも、接触面にゴミが介在した場合も、軟らかい面があることで、硬い面(発光面側の表面)は傷付かない。また、軟らかい面の粗さを大きくすることで、摩擦係数を下げ、硬い面が傷付くのを防止する。
以下、図1を用いて本発明を具体的に説明する。
図1に示す表示装置は、発光素子として有機EL素子を用いた構成としている。基体11は透明な高分子フィルムあるいは金属フィルム(金属箔)あるいはそれらの積層体である。高分子フィルムとしては、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PES(ポリエチレンスルフォン)等が好ましい。金属フィルムとしては、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、ステンレス鋼(SUS)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Ti(チタン)やその合金等が好ましい。高分子フィルムの場合、水分透過性を改善する目的で、その片面あるいは両面に無機膜あるいは有機膜から成る、又はそれらを積層して成るバリア層を形成するのが通常である。これらのバリア層は、膜厚が数μm以下と薄いため、『表面の硬さ』としては、高分子フィルムの硬さが支配的となる。
この基体11上には、絶縁層12、第1電極13、有機層14、第2電極15をこの順に形成しており、さらに封止層を含めた保護層16を最上面に形成している。
保護層16は、発光層14を外界から保護するもので、無機膜あるいは有機高分子膜から成る、又はそれらを積層して成る。無機膜としては、SiN、SiOC等、有機高分子膜としては、熱硬化性樹脂等が用いられる。また、高分子フィルムを保護層16上に、あるいは保護層16として発光層14上に貼り付けることも可能である。高分子フィルムの場合、上述したように水分透過性を改善する目的で、その片面あるいは両面に無機膜あるいは有機膜から成る、又はそれらを積層して成るバリア層を形成するのが通常であるが、保護層16の構成は特に限定しない。
本発明の表示装置の発光面側の表面と裏面側の表面とは、図1の構成の有機EL素子がトップエミッションタイプ(基体と反対側に向けて発光するタイプ)の場合、基体11の下面11(A)を裏面側の表面、保護層16の上面16(C)を発光面側の表面と呼ぶ。図1の構成の有機EL素子がボトムエミッションタイプ(基体側に発光するタイプ)の場合、基体11の下面11(A)を発光面側の表面、保護層16の上面16(C)を裏面側の表面と呼ぶ。
つまり、本実施形態では上記基体11の下面11(B)と保護層16の上面16(C)との機械的硬さにアンバランスを持たせ、裏面側の表面の硬さをH(B)、発光面側の表面の硬さをH(F)とした場合、H(B)<H(F)とする。そして、好ましくは1.1≦H(F)/H(B)≦10、さらに好ましくは1.6≦H(F)/H(B)≦3.5の範囲とする。接触面の応力を裏面側の表面が吸収することで、発光面側の表面に傷が付くことを防止できる。
ここで、基体11や保護膜16の『硬さ』とは、同じ膜厚における「ビッカース硬度」、「軽荷重引裂強度」、「ヤング率」等のいずれかの大小関係で比較した。使用する高分子フィルムの「ヤング率」や「軽荷重引裂強度」は、それらのカタログ値を用いることができる。ビッカース硬度は、JIS Z 2244「ヴッカース硬さ試験」において定義された方法で計測でき、概ね10〜400の範囲であった。
さらに、裏面側の表面の粗さは、算術平均粗さRa(以下、算術平均粗さをRaと省略する。)≧1.5nmとすることで、接触面の摩擦係数を低減し、発光面側の表面に傷が付くことを効果的に防止できる。しかも、摩擦による摩耗は、軟らかくて表面が粗れている裏面側の表面でのみ進行するため、発光面側の表面が傷付くことを防止できる。
図1に示す表示装置について、他の構成材料を具体的に説明する。
絶縁層12は、必要に応じて形成すれば良く、SiO 2 (酸化シリコン)、SiN(窒化シリコン)、AlN(窒化アルミ)、Al 2 3 (酸化アルミ)、有機高分子材料等が好ましい。
第1電極13及び第2電極15としては、ITO、IZO、Al等が必要に応じて選択して使われる。
有機層14としては、例えばホール注入層、発光層、電子注入層をこの順に積層形成する。
なお、図示していないが、必要に応じて、画素分離用の隔壁(バンク)や平坦化膜、カラーフィルター、円偏光板等を積層形成しても良い。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図2は、本発明の第1の実施例によるフレキシブル表示装置の構成を示したものである。
基体21は、PESフィルム(約30インチ対角サイズ)であり、その両面には、SiNの薄膜の積層体から成るバリア層を0.5μmの膜厚で形成している。
PESフィルム(以下、基体と同一の符号21を付する場合がある。)21の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて100μm、ヤング率は2,300MPa、軽荷重引裂強度は2.0MPaであった。PESフィルム21の下面21(A)のビッカース硬度は150であった。PESフィルム21の表面粗さは、下面21(A)でRa=1.5nm、上面21(B)でRa=0.6nmであった。
PESフィルム21上に、絶縁層22としてSiO 2 膜を500nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、第1電極23としてCr薄膜を100nmの膜厚でスパッタ形成している。第1電極23上に、有機層24としてホール注入層、発光層、電子注入層をこの順にそれぞれ約60nmの膜厚でスピンコーターを用いて塗布形成している。有機層24上に、第2電極25としてITO膜を150nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、無機封止層26としてSiNの薄膜を全厚4μmとなるように、CVD法で積層形成している。無機封止層26上に、PENフィルム27を接着して形成している。
PENフィルム27は、その両面にSiNの薄膜から成るバリア層を0.5μmの膜厚で形成している。PENフィルム27の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて50μm、ヤング率は6,100MPa、軽荷重引裂強度は6.0MPaであった。PENフィルム27の上面27(C)のビッカース硬度は350であった。PENフィルム27は、対向するどちらの面を上面27(C)にしても良いが、ここでは、両面粗さの大きい方を上面27(C)とした。上面27(C)のRaは2.0nmであった。
本実施例で作製した表示装置は、トップエミッションタイプであることから、発光面側の表面はPENフィルム27の上面27(C)であり、裏面側の表面はPESフィルム21の下面21(A)である。この発光面側のPENフィルム27と裏面側のPESフィルム21との機械特性を比較すると、発光面側のPENフィルム27は裏面側のPESフィルム21に対して、ヤング率が約2.7倍、軽荷重引裂強度が3.0倍、ビッカース硬度が2.3倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面27(C)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、裏面側の表面21(A)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面27(C)には全く傷が付いていなかった。つまり、発光面側のPENフィルム27の硬さを、裏面側のPESフィルム21の2.3〜3.0倍とすることで、発光面の表面27(C)に全く傷が付かないようにすることができた。
しかも、裏面側の表面21(A)の傷は、発光面側の表面27(C)へ全く影響を与えない。
<実施例2>
実施例1において、裏面側のPESフィルムをPCフィルムとした他は、実施例1と同じとした。なお、本実施例の説明は、図2を流用しながら行う。
基体21のPCフィルム(約30インチ対角サイズ)は、その両面には、SiNの薄膜の積層体から成るバリア層を0.5μmの膜厚で形成している。
PCフィルム(以下、基体と同一の符号21を付する場合がある。)21の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて125μm、ヤング率は1,800MPa、軽荷重引裂強度は1.8MPaであった。PCフィルム21の下面21(A)のビッカース硬度は100であった。PCフィルム21の表面粗さは、下面21(A)でRa=3.5nm、上面21(B)でRa=0.8nmであった。
本実施例で作製した表示装置も、実施例1と同様にトップエミッションタイプである。発光面側のPENフィルム27と裏面側のPCフィルム21との機械特性を比較すると、発光面側のPENフィルム27は裏面側のPCフィルム21に対して、ヤング率が約3.4倍、軽荷重引裂強度が3.3倍、ビッカース硬度が3.5倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面27(C)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、裏面側の表面21(A)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面27(C)には全く傷が付いていなかった。つまり、発光面側のPENフィルム27の硬さを、裏面側のPCフィルム21の硬さの3.3〜3.5倍とすることで、発光面側の表面27(C)に全く傷が付かないようにすることができた。
しかも、裏面側の表面21(A)の傷は、発光面側の表面27(C)へ全く影響を与えない。実施例1と比較すると、裏面側の表面21(A)の傷の数は少なかった。これは、PCフィルムがPESフィルムと比較してより軟らかかったことで、面接触時の衝撃がさらに緩和されたことに加えて、PCフィルムの下面の表面粗さを大きくしたことで、摩擦係数が小さくなり、傷が付きにくくなったと考えられる。
<実施例3>
図3は、本発明の第3の実施例によるフレキシブル表示装置の構成を示したものである。
基体31は、PCフィルム(約30インチ対角サイズ)であり、バリア層は形成していない。PCフィルム(以下、基体と同一の符号31を付する場合がある。)31の膜厚は100μm、ヤング率は1,800MPa、軽荷重引裂強度は1.8MPaであった。PCフィルム31の下面31(A)のビッカース硬度は100であった。PCフィルム31の表面粗さは、下面31(A)でRa=3.0nm、上面31(B)でRa=0.5nmであった。PCフィルム31上に、SUSの金属フィルム38(膜厚10μm)をメッキ形成しており、PCフィルム31と金属フィルム38との積層複合基体39としている。
基体39上に、絶縁層32としてSiO 2 膜を500nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、第1電極33としてCr薄膜を100nmの膜厚でスパッタ形成している。第1電極33上に、有機層34としてホール注入層、発光層、電子注入層をこの順にそれぞれ約60nmの膜厚でスピンコーターを用いて塗布形成している。有機層34上に、第2電極35としてITO膜を150nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、無機封止層36としてSiNの薄膜が全厚4μmとなるように、CVD法で積層形成している。無機封止層36上に、PENフィルム37を接着して形成している。
PENフィルム37は、その両面にSiNの薄膜から成るバリア層をそれぞれ0.5μmの膜厚で形成している。PENフィルム37の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて50μm、ヤング率は6,100MPa、軽荷重引裂強度は6.0Mpaであった。PENフィルム37の上面37(C)のビッカース硬度は350であった。PENフィルム37の上面37(C)のRaは2.0nmであった。
本実施例で作製した表示装置は、トップエミッションタイプであることから、発光面側の表面はPENフィルム37の上面37(C)であり、裏面側の表面はPCフィルム31の下面31(A)である。この発光面側のPENフィルム37と裏面側のPCフィルム31との機械特性を比較すると、発光面側のPENフィルム37は裏面側のPCフィルム31に対して、ヤング率が約3.4倍、軽荷重引裂強度が3.3倍、ビッカース硬度が3.5倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面37(C)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、裏面側の表面31(A)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面37(C)には全く傷が付いていなかった。つまり、発光面側のPENフィルム37の硬さを、裏面側のPCフィルム31の硬さの3.3〜3.5倍とすることで、発光面側の表面に全く傷が付かないようにすることができた。
しかも、裏面側の表面31(A)の傷は、発光面側の表面37(C)へ全く影響を与えない。また、金属フィルム38があることで、表示装置の通電時の昇温がほとんど無かった。
さらに、PCフィルム31と金属フィルム38との複合基体であることから、フレキシビリティと放熱効果を兼備した表示装置が提供できた。
参考実施例
図4は、本発明の第参考実施例によるフレキシブル表示装置の構成を示したものである。
基体41は、PENフィルム(約30インチ対角サイズ)であり、その両面には、SiNの薄膜の積層体から成るバリア層を0.5μmの膜厚で形成している。
PENフィルム(以下、基体と同一の符号41を付する場合がある。)41の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて100μm、ヤング率は6,100MPa、軽荷重引裂強度は6.0MPaであった。PENフィルム41の下面41(A)のビッカース硬度は350であった。PENフィルム41の表面粗さは、下面41(A)でRa=2.0nm、上面41(B)でRa=0.5nmであった。
PENフィルム41上に、絶縁層42としてSiO 2 膜を500nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、第1電極43としてITO薄膜を100nmの膜厚でスパッタ形成している。第1電極42上に、有機層44としてホール注入層、発光層、電子注入層をこの順にそれぞれ約60nmの膜厚でスピンコーターを用いて塗布形成している。有機層44上に、第2電極45としてAl膜を150nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、無機封止層46としてSiNの薄膜を全厚4μmとなるように、CVD法で積層形成している。無機封止層46上に、PIフィルム47を接着して形成している。
PIフィルム47は、その両面にSiNの薄膜から成るバリア層をそれぞれ0.5μmの膜厚で形成している。PIフィルム47の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて25μm、ヤング率は3,650MPa、軽荷重引裂強度は3.8MPaであった。PIフィルム47の上面47(C)のビッカース硬度は200であった。PIフィルム47の上面47(C)のRaは2.0nmであった。
本実施例で作製した表示装置は、ボトムエミッションタイプであることから、発光面側の表面はPENフィルム41の下面41(A)であり、裏面側の表面はPIフィルム47の上面47(C)である。この発光面側のPENフィルム41と裏面側のPIフィルム47との機械特性を比較すると、発光面側のPENフィルム41は裏面側のPIフィルム47に対して、ヤング率が約1.7倍、軽荷重引裂強度が1.6倍、ビッカース硬度が1.8倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面41(A)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、裏面側の表面47(C)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面41(A)には全く傷が付いていなかった。つまり、発光面側のPENフィルム41の硬さを、裏面側のPIフィルム47の硬さの1.6〜1.8倍とすることで、発光面側の表面41(A)に全く傷が付かないようにすることができた。
しかも、裏面側の表面47(C)の傷は、発光側の表面41(A)へ全く影響を与えない。
参考実施例
図5は、本発明の第参考実施例によるフレキシブル表示装置の構成を示したものである。
基体51は、PENフィルム(約30インチ対角サイズ)であり、その両面には、SiNの薄膜の積層体から成るバリア層を6μmの膜厚で形成している。
PENフィルム(以下、基体と同一の符号51を付する場合がある。)51の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて50μm、ヤング率は6,100MPa、軽荷重引裂強度は6.0MPaであった。PENフィルム51の下面51(A)のビッカース硬度は350であった。PENフィルム51の表面粗さは、下面51(A)でRa=2.0nm、上面51(B)でRa=0.5nmであった。
PENフィルム51上に、絶縁層52としてSiO 2 膜を500nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、第1電極53としてITO薄膜を100nmの膜厚でスパッタ形成している。第1電極53上に、有機層54としてホール注入層、発光層、電子注入層をこの順にそれぞれ約60nmの膜厚でディスペンサーを用いて塗布形成している。有機層54上に、第2電極55としてAl膜を150nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、無機封止層56としてSiNの薄膜を全厚6μmとなるように、CVD法で積層形成している。無機封止層58上に、基体のPENフィルム51と全く同じPENフィルム57を接着して形成している。
PENフィルム57上に、ポリイミド樹脂(前駆体)を塗布し、ポリイミド樹脂層58を3μmの膜厚で形成している。ポリイミド樹脂層58のヤング率は3,650MPa、軽荷重引裂強度は3.8MPaであった。ポリイミド樹脂層58の上面58(C)のビッカース硬度は200であった。ポリイミド樹脂層58の表面粗さは、上面58(C)でRa=3.0nmであった。
本実施例で作製した表示装置は、ボトムエミッションタイプであることから、発光面側の表面はPENフィルム51の下面51(A)であり、裏面側の表面はポリイミド樹脂層58の上面58(C)である。この発光面側のPENフィルム51と裏面側のポリイミド樹脂層58との機械特性を比較すると、発光面側のPENフィルム51は裏面側のポリイミド樹脂層58に対して、ヤング率が約1.7倍、軽荷重引裂強度が1.6倍、ビッカース硬度が1.8倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面51(A)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、裏面側の表面58(C)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面51(A)には全く傷が付いていなかった。つまり、軟らかいポリイミド樹脂層58を裏面側のPENフィルム57にコートするだけで、本発明の効果が得られた。
しかも、裏面側の表面58(C)に発生した傷は、発光面側の表面51(A)に全く影響を与えない。
特に、上記表示装置は発光面側と裏面側とに等厚のPENフィルムを配置していることから、カールが極めて少なく平坦性の良い表示装置に仕上がった。
参考実施例
図6は、本発明の第参考実施例によるフレキシブル表示装置の構成を示したものである。
基体61は、PESフィルム(約30インチ対角サイズ)であり、その両面には、SiNの薄膜の積層体から成るバリア層を6μmの膜厚で形成している。
PESフィルム(以下、基体と同一の符号61を付する場合がある。)61の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて50μm、ヤング率は2,300MPa、軽荷重引裂強度は2.0MPa、ビッカース硬度は150であった。
PESフィルム61上に、実施例5と同様の順で有機EL素子を形成し、その上に、PESフィルム61と同じPESフィルム67を接着して形成している。PESフィルム67の上面67(C)の表面粗さは、Ra=0.6nmであった。
PESフィルム61の下面61(A)に、熱硬化型のエポキシ樹脂層69を3μmの膜厚で塗布形成している。エポキシ樹脂層69のヤング率は6,500MPa、軽荷重引裂強度は6.2MPa、ビッカース硬度は400であった。
本実施例で作製した表示装置は、ボトムエミッションタイプであることから、その発光面側の表面はエポキシ樹脂69の下面であり、裏面側の表面はPESフィルム67の上面67(C)である。この発光面側のエポキシ樹脂69と裏面側のPESフィルム67との機械特性を比較すると、発光面側のエポキシ樹脂69は裏面側のPESフィルム67に対して、ヤング率が約2.8倍、軽荷重引裂強度が3.1倍、ビッカース硬度が2.7倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、裏面側の表面67(C)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面には全く傷が付いていなかった。つまり、硬いエポキシ樹脂層69を発光面側のPESフィルム61にコートするだけで、本発明の効果が得られた。
しかも、裏面側の表面67(C)に発生した傷は、発光面側の表面へ全く影響を与えない。
特に、上記表示装置は発光面側と裏面側とに等厚のPESフィルムを配置していることから、カールが極めて少なく平坦性の良いパネルに仕上がった。
<実施例
実施例1において、PESフィルム21の表面粗さを、下面21(A)をRa=0.6nm、上面21(B)をRa=0.6nmとした他は、実施例1と同じとした。本実施例で作製した表示装置の機械特性は、実施例1と同じであった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面27(C)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を500回繰り返したところ、裏面側の表面21(A)には多数の傷が付いた反面、発光面側の表面27(C)には全く傷が付いていなかった。さらに、この行為を続けて500回繰り返したところ、発光面側の表面27(C)にも若干の傷が付いた。
本実施例の表示装置は、実施例1の表示装置と比較すると、耐久性が若干劣った。しかし、実用上は問題の無いレベルであった。
<比較例1>
実施例5において、PENフィルム57上にポリイミド樹脂層58を形成しない他は、実施例5と同じとした。
すなわち、本比較例の表示装置は、有機EL素子が発光面側と裏面側とに配置された等厚のPENフィルムに挿まれている。したがって、発光面側と裏面側とのPENフィルムの機械特性は同じである。
本比較例で作製した表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面51(A)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、発光面側の表面51(A)と裏面側の表面との両面に同等に多数の傷が付いた。発光面側の表面51(A)に傷が付くと、発光時に傷が目立って問題であった。
<比較例2>
図3を用いて、本比較例のフレキシブル表示装置の構成を説明する。
基体31は、PETフィルム(約30インチ対角サイズ)であり、その下面31(A)に、SiNの薄膜の積層体から成るバリア層を6μmの膜厚で形成している。
PETフィルム(以下、基体と同一の符号31を付する場合がある。)31の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて50μm、ヤング率は5,400MPa、軽荷重引裂強度は7.3MPaであった。PETフィルム31の下面31(A)のビッカース硬度は300であった。PETフィルム31の表面粗さは、下面31(A)でRa=2.5nm、上面31(B)でRa=0.5nmであった。このPETフィルム31上に、SUSの金属フィルム38(10μm厚)をメッキ形成して、PETフィルム31と金属フィルム38との積層複合基体39としている。
基体39上に、絶縁層32としてSiO 2 膜を500nmの膜厚でスパッタ形成しており、その上に、第1電極33としてCr薄膜を100nm厚スパッタ形成している。第1電極33上に、有機層34としてホール注入層、発光層、電子注入層をこの順にそれぞれ約60nmの膜厚でスピンコーターを用いて塗布形成している。有機層34上に、第2電極35としてITO膜を150nm厚スパッタ形成しており、その上に、無機封止層36としてSiNの薄膜を全厚6μmとなるように、CVD法で積層形成している。無機封止層36上に、PCフィルム37を接着して形成している。
PCフィルム37は、その両面にSiNの薄膜から成るバリア層をそれぞれ5μmの膜厚で形成している。PCフィルム37の膜厚は、バリア層の膜厚も含めて50μm、ヤング率は1,800MPa、軽荷重引裂強度は1.8MPaであった。PCフィルム37の上面37(C)のビッカース硬度は100であった。PCフィルム37の上面37(C)のRaは2.0nmであった。
本比較例で作製した表示装置は、トップエミッションタイプであることから、発光面側の表面はPCフィルム37の上面37(C)であり、裏面側の表面はPETフィルム31の下面31(A)である。この発光面側のPCフィルム37と裏面側のPETフィルム31との機械特性を比較すると、発光面側のPCフィルム37は裏面側のPETフィルム31に対して、ヤング率が約0.3倍、軽荷重引裂強度が0.2倍、ビッカース硬度が0.3倍であった。
上記表示装置のフレキシブル性を生かして、発光面側の表面37(C)を内側にして直径約10cm程度の筒状に巻き取り、次に広げて元に戻した。この行為を1,000回繰り返したところ、発光面側の表面37(C)には多数の傷が付いた。発光面側の表面37(C)に傷が付くと、発光時に傷が目立って問題であった。
本発明のフレキシブル表示装置の基本構成を説明する図である。 本発明のフレキシブル表示装置(実施例1、2)を説明する図である。 本発明のフレキシブル表示装置(実施例3、比較例2)を説明する図である。 本発明のフレキシブル表示装置(参考実施例)を説明する図である。 本発明のフレキシブル表示装置(参考実施例、比較例1)を説明する図である。 本発明のフレキシブル表示装置(参考実施例)を説明する図である。
符号の説明
11、21、31、41、51、61、27、37、47、57、67 高分子フィルム
12、22、32、42、52、62 絶縁層
13、23、33、43、53、63 第1電極
14、24、34、44、54、64 有機層
15、25、35、45、55、65 第2電極
16、26、36、46、56、66 保護層
58、69 樹脂層

Claims (5)

  1. フレキシブルな基体の上に発光素子が形成されており、発光面側の表面と裏面側の表面とが接触するように巻き取り可能なトップエミッションタイプのフレキシブル表示装置において、
    発光面側の表面に、SiNからなる無機封止層と、前記無機封止層の外側に配置された高分子フィルムとを備え、
    発光面側の表面の硬さは、裏面側の表面の硬さより大きいことを特徴とする、フレキシブル表示装置。
  2. 発光面側の表面の硬さH(F)は、裏面側の表面の硬さH(B)に対して、1.6≦H(F)/H(B)≦3.5であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル表示装置。
  3. 面側の表面の粗さは、算術平均粗さRa≧1.5nmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のフレキシブル表示装置。
  4. 前記高分子フィルムは、ポリエチレンナフタレートフィルムであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフレキシブル表示装置。
  5. 前記高分子フィルムが、その片面或いは両面に、無機膜或いは有機膜からなる、或いはそれらを積層してなるバリア層を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブル表示装置。
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