JP4959413B2 - 航空機用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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この発明は、高内圧,高荷重の条件下で使用される航空機用空気入りラジアルタイヤに関し、とくには、補強部材をも含むトレッドの耐剥離性を低下させることなしに、トレッドの耐外傷性を向上させる技術を提案するものである。
航空機用空気入りラジアルタイヤのような重荷重用タイヤでは、負荷走行中に、路面上に存在する石、釘、ボルト、ナット等の異物によってトレッドに外傷を受けることが多く、高内圧、高荷重および高速という苛酷な条件の下で使用されるかかるタイヤにあっては、上述したような外傷が、タイヤバーストやトレッド剥離などの故障にいたるおそれがある。
これがため、航空機用空気入りタイヤにあっては、トレッドの耐外傷性や、外傷の
耐進展性の向上が常に求められている。
そこで、特許文献1には、トレッドゴムとベルトとの間に、波形にくせ付けした多数本の有機繊維撚りコードからなるクラウン保護層を配設した航空機用空気入りタイヤが提案されており、ここでは、有機繊維撚りコードには、芳香族ポリアシド繊維や脂肪族ポリアシド繊維を用いることが好ましいとされ具体的には3300dtex/3の撚りコードが用いられている。
特願平3−14702号公報
上述したような従来技術において、クラウン保護層と、それの半径方向の内外に隣接する層との接合強度を高めて剥離耐久性を確保するためには、クラウン保護層内の波形コードの間隔を、それらの間に十分な量の被覆ゴム等が侵入し得る間隔とすることが必要となる。
これに対し、トレッドの耐外傷性および、トレッドに発生する外傷の耐進展性を高めるべく、波形コードの相互を、隙間のないほどに密に配置した場合は、波形コードの相互間はもちろん、クラウン保護層と、そこへの隣接層とは、波形コードに付着させたディップ層だけで接合されることになるため、高内圧、高荷重および高速で使用されて、内部発熱量もまた多くなる航空機用空気入りラジアルタイヤでは、十分な層間接合力を確保することができず、走行中に、クラウン保護層をも含むトレッドに剥離が生じる懸命があった。
従って従来技術では、タイヤ故障の重大性に鑑み、トレッドのすぐれた耐剥離性を確保するべく、クラウン保護層内の波形コードの配置ピッチを、十分な量の被覆ゴム等の侵入を許容できるものとすることが余儀なくされており、トレッドの、波形コード間に入り込むカット傷等に対する耐外傷性は二義的なものとせざるを得なかった。
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、トレッドの耐剥離性の低下なしに、トレッドの耐外傷性を向上させた航空機用空気入りラジアルタイヤを提供するにある。
この発明に係る航空機用空気入りラジアルタイヤは、一対のビードコア間にトロイダルに延びる、一枚以上のカーカスプライからなるラジアルカーカスと、ラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設したトレッドゴムとを具えるものであって、クラウン保護層を、位相を合わせて引き揃え配置した複数本の、ジグザク状、正弦曲線状等の延在形態をも含む波形コードの、内外二層以上のゴム被覆層により構成し、それぞれのゴム被覆層のそれぞれの波形コードを、層間でも位相を合わせて配置するとともに、相互に隣接するゴム被覆層の一方の波形コードを、他方の被覆層の波形コード間に位置させたものである。
このような航空機用空気入りラジアルタイヤにおいて、波形コードは、有機繊維コードとすること、芳香族ポリアミド繊維を3300dtex/3の繊度に燃ったコードとすることが好ましく、また、クラウン保護層とベルトとの間隔を1.5〜3.0mmの範囲とすることが好ましい。
この発明に係る航空機用空気入りラジアルタイヤでは、とくに、クラウン保護層を、位相を合わせて引き揃え配置した複数本の波形コードの、内外二層以上のゴム被覆層により構成し、それぞれのゴム被覆層のそれぞれの波形コードを、層間でもまた互いに位相を合わせて配置するとともに、相互に隣接するゴム被覆層の一方の波形コードを、他方のゴム被覆層の波形コード間に位置させることで、クラウン保護層の構成に寄与する各ゴム被覆層内では、それぞれの波形コードを、被覆ゴム等の侵入を許容するに十分な間隔をおいて位置させることによって、クラウン保護層と隣接層との接合強度を高めて、クラウン保護層をも含む、トレッドの耐剥離性を十分に確保することができ、また、波形コードを含む複数のゴム被覆層を、半径方向の内外に所要に応じて積層することにより、波形コードの打込み密度、ひいては、クラウン保護層の総強力を高めて、トレッドの耐外傷性を大きく向上させることができる。
なおここで、トレッドの耐外傷性の点だけに着目するならば、ゴム被覆層間もしくは層内で、波形コードを相互に交差させて延在させることも可能であるが、これによれば、波形コードの交差部分に、タイヤの負荷転動に伴う大きな歪が発生することになり、そこでの波形コードのセパレーションに起因するトレッド剥離のおそれがあるので、それぞれの波形コードを交差させて配置することは、トレッドの剥離耐久性の観点からは望ましくない。
そこで、上記タイヤでは、二層以上のゴム被覆層の各々で、複数本の波形コードのそれぞれを位相を合わせて配置するとともに、それぞれのゴム被覆層のそれぞれの波形コードを層間でもまた位相を合わせて配置して、波形コードの交差を防ぐことによって、トレッドの剥離耐久性の低下の懸念を排除している。
しかもこのタイヤでは、相互に隣接するゴム被覆層の一方の波形コードを、他方のゴム被覆層の波形コード間に位置させて、トレッド踏面側から透視したときのコード間隙を、極く狭小ないしは零とすることで、外傷の、コード間隙を経た内部への入り込みを効果的に防止することができる。
ところで、波形コードを有機繊維コードとしたときは、それを金属コードとする場合に比してタイヤの軽量化を図ることができ、また、波形コードを、芳香族ポリアミド繊維を3300dtex/3の繊度に撚ったコードとしたときは、波形コードの強度および太さを最適なものとすることができる。
そしてまた、クラウン保護層とベルトとの間隔を1.5〜3.0mmの範囲とした場合には、トレッド部の発熱を抑制しつつ、タイヤの更生に際する、所期した通りのバフ加工等を簡易なものとすることができる。
すなわち、両者の間隔が1.5mm未満では、トレッドゴムの、バフ加工等による除去に際してベルトを損傷するおそれが高くなり、一方それが3.0mmを越えると、クラウン保護層とベルトとの間に配設されるクッションゴム等のゴム層の発熱量が多くなりすぎ、また、タイヤ重量の増加が余儀なくされることになる。
図1は、この発明に係る航空機用空気入りラジアルタイヤの実施形態を、その半部について示す幅方向断面図であり、図中1はトレッド部を、2はトレッド部1の両側部に連続して半径方向内方に延びる、対をなすサイドウォール部を、3は、各サイドウォール部の内周側に連続するビード部をそれぞれ示す。
ここでは、それぞれのビード部3に配設した一対のビードコア4間に、一枚以上、たとえば五枚のカーカスプライからなるラジアルカーカス5をトロイダルに延在させて設け、それらのカーカスプライのうちの四枚を、それらの各側部部分が、ビードコア4の周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻き返されたターンアッププライとし、残りの一枚を、ターンアッププライの巻き返し部分を覆って半径方向内方に延びるダウンプライとしている。
また、ラジアルカーカス5のクラウン域の外周側には、複数のベルト層、たとえば、層間でコードが相互に交差する複数のベルト層からなるベルト6を配設し、そして、このベルト6の外周側に、たとえば、クッションゴム7、クラウン保護層8およびトレッドゴム9のそれぞれを順次に配設する。
ところで、ここにおけるクラウン保護層8は、図2(a)に展開平面図で例示するように、位相を合わせて引き揃え配置した複数本の波形コード10を、図2(b)に幅方向断面図で例示するようにゴム被覆してなる内外二層以上、図では二層のゴム被覆層11a,11bにより構成してなり、また、それぞれのゴム被覆層11a,11b内のそれぞれの波形コード10を、層内のみならず、層間でもまた位相を合わせた配置とするとともに、相互に隣接するゴム被覆層11a,11bの一方の波形コード10が、図2(b)に示すところから明らかなように、他方のゴム被覆層内の波形コード10間に延在する配置とし、より好ましくは、一方のゴム被覆層11a,11b内の波形コード10を、他方のゴム被覆層11a,11b内の波形コード10間の中央部分に位置させて、各ゴム被覆層11a,11b内の、それぞれの波形コード10の配設間隔を、耐剥離性のために、波形コード間への被覆ゴム等の侵入を十分に許容できる寸法とするとともに、耐外傷のために、クラウン保護層8を全体としてみたときの、それぞれの波形コード10の延在形態を、図2(c)にそれらの透視展開図で例示するように、全ての層内の波形コード10の相互が、ほとんどもしくは全く隙間なしに密に整列して延在する形態とする。
以上のように構成してなるタイヤによれば、クラウン保護層8の特有の構造により、波形コード10の十分な配設密度の下で、トレッドの耐剥離性の低下なしに、トレッドの耐外傷性を大きく向上させることができる。
なお、図1および2に示すところでは、クラウン保護層8を内外二層のゴム被覆11a,11bにて構成することとしているも、三層以上のゴム被覆層をもってクラウン保護層8を構成し得ることはもちろんである。
ここで、波形コードは、芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維その他の有機繊維コードとすることが、タイヤの軽量化等の点で有利であり、なかでも、芳香族ポリアミド繊維を、3300dtex/3の繊度に撚ったコードとすることが、強度、コード太さの点で好適である。
そしてまた好ましくは、クラウン保護層8とベルト6との間隔、ひいては、それらの間に介装したクッションゴム7の厚みを1.5〜3.0mmの範囲とし、これにより、クッションゴム7の発熱を有利に抑制しつつ、タイヤの更正に際する、適正なバフ加工を簡易なものとする。
クラウン保護層の構造を変化させた、サイズが50×20.0 R22 32PRのそれぞれの比較例タイヤおよび実施例タイヤを、アメリカ合衆国の産業規格である“THE TIRE AND RIM ASSOCIAITIN INC.のYEAR BOOK”に規定される標準リムに組付けるとともに、タイヤへの充填内圧を1520kPa(220psi)とし、タイヤへの負荷質量を25900kg(57100lbs)とした場合の、突起ドラム走行後の、クラウン保護層のコード切れ、ならびに、負荷を、上記質量の120%とした離陸試験での、トレッド剥離が発生するまでの離陸回数を調べたところ、表1に指数で示す結果を得た。
なお、表中の「コード切れ箇所数」については、指数値の小さい方が、「離陸試験回数」については、指数値の大きい方がすぐれた結果を示すものとした。
また、表1中には、比較例タイヤ1〜3および実施例タイヤの諸元も併せて示す。
ところで、表1中の比較例タイヤ1は、クラウン保護層を、図3(a)の幅方向断面図で示すように、相互に位相を合わせて引き揃え配置したそれぞれの波形コードをゴム被覆してなる一層のゴム被膜層にて構成し、そのゴム被覆層内の波形コードの配置間隔を、図2(b)に示す各ゴム被覆層11a,11b内のそれと等しくしたものであり、比較例タイヤ2は、波形コードの配設密度を、図3(a)に示すものの1.5倍としたものであり、比較例タイヤ3は、内外二層のゴム被覆層からなるクラウン保護層において、内層側ゴム被覆層内の波形コードと、外層側ゴム被覆層内の波形コードとを、図3(b)にそれら透視展開平面図で示すように、相互の交差形態で延在させたものである。なおここでの、各ゴム被覆層内での波形コードの配設間隔は、図3(a)に示すものと同様とした。
そして実施例タイヤのクラウン保護層は、図2に関して先に述べた構成を有するものとした。
Figure 0004959413
なお、ここでの突起ドラム試験は、△型の突起を取り付けたドラム上を、16km/h(10mph)の速度で4.8km(3mile)走行させた後、タイヤを解剖して波形コードの切断の有無と切断個数を測定することにより行い、
また離陸試験は、速度を0から376km/h(235mph)まで一定の加速度で加速して、3505.2m(11500ft)走行して離陸する試験を、故障が発生するまで繰り返し、その繰り返し回数を比較することにより行った。
120%の負荷を設定したのは、トレッド剥離を促進するためである。
表1によれば、比較例タイヤ2は、比較例タイヤ1(従来品)対比コードの打ち込みを1.5倍にしたものなので、突起ドラム走行後のコード切れ箇所が減っており、耐外傷性は向上しているものの、隣接コード間隔が12%まで減少してしまうため、充分な剥離抗力が得られず、120%離陸試験の走行回数が少なくなっている。
すなわち、トレッドの耐剥離耐久性が低下している。
比較例タイヤ3は、従来品を2枚交錯するように重ねたものである。2枚重ねたため、コードの打ち込みが2倍となって、突起ドラム試験では良好な結果が得られたが、120%離陸試験では、コードの交錯点を起点としたトレッド剥離が従来品対比早期に発生している。
しかるに、実施例タイヤは、千鳥配列でコードの打ち込みを1.5倍とし、隣接コード間隔は従来品と同じに設定したものであるので、千鳥配列にすることによって、隣接コード間隔を従来品と同じにしたままで、打ち込みを上げ、幅方向のコード間隙間をなくすことができる。
これがため、突起ドラム試験では従来品対比コード破断本数が少なくなって、耐外傷性が向上している。なお、同じ打ち込みの比較例タイヤ2に比べて破断本数が多いのは、千鳥配列のため、上側のコードの方が突起による入力が大きいためと考えられる。
加えて、120%離陸試験では従来品同等の結果である。これは、コード間隔を従来品と同等にしたことで従来品と同等の剥離抗力が確保できたためと考えられる。
表1の試験結果に示すとおり、千鳥配列にすることによって、耐外傷性が向上し、かつ耐トレッド剥離性を確保することができる。
この発明の実施の形態をタイヤの半部について示す幅方向断面図である。 クラウン保護層のゴム被覆層およびそれぞれの波形コードの配設態様を示す拡大図である。 比較例タイヤの波形コードの配列を示す図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 ビードコア
5 カーカス
6 ベルト
7 クッションゴム
8 クラウン保護層
9 トレッドゴム
10 波形コード
11a,11b ゴム被覆層

Claims (4)

  1. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる、一枚以上のカーカスプライからなるラジアルカーカスと、ラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設した複数のベルト層からなるベルトと、ベルトの外周側に配設したクラウン保護層と、クラウン保護層の外周側に配設したトレッドゴムとを具える航空機用空気入りラジアルタイヤにおいて、
    クラウン保護層を、位相を合わせて引き揃え配置した複数本の波形コードの、内外二層以上のゴム被覆層により構成し、それぞれのゴム被覆層のそれぞれの波形コードを、層間でも位相を合わせて配置するとともに、相互に隣接するゴム被覆層の一方の波形コードを、他方のゴム被覆層の波形コード間に位置させてなる航空機用空気入りラジアルタイヤ。
  2. 波形コードを有機繊維コードとしてなる請求項1に記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
  3. 波形コードを、芳香族ポリアミド繊維を3300dtex/3の繊度に撚ったコードとしてなる請求項1もしくは2に記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
  4. クラウン保護層とベルトとの間隔を1.5〜3.0mmの範囲としてなる請求項1〜3のいずれかに記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
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