JP4953435B2 - バイオディーゼル油製造用固体触媒及び当該固体触媒の製造方法 - Google Patents

バイオディーゼル油製造用固体触媒及び当該固体触媒の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、原料油脂からバイオディーゼル油(BDF)を製造するのに適した固体触媒(バイオディーゼル油製造用固体触媒)並びに、当該固体触媒の製造方法に関するものである。
地球温暖化ガスと大気汚染物質の排出量を削減し、来るべき「エネルギー循環型社会」の構築に極めて重要なバイオディーゼル油は、油脂を構成する各種トリアシルグリセリドのアルコリシス反応によって得られる。
触媒として水酸化アルカリを用いる「水酸化アルカリ法」については、例えば下記の特許文献1及び2に記載されているが、このような方法の場合には、生成したバイオディーゼル油にアルカリが混入するので(300ppm程度)、水洗浄精製が不可欠となり大量のアルカリ廃水が発生する。また、副生グリセリンも強アルカリ性となり、その処分に多額のコストを要する。更に、この方法の場合には、石鹸生成による生成物の乳化が起こるので分離操作が困難であり、又、製造装置が回分操作方式であるために、反応効率が低く、操作が煩雑であるという問題点もあった。
米国特許第2380944号明細書 特開平7−197047号公報
そこで、これらの問題を解決するために、本発明者等は、WO2006/134845号において、特殊な調製操作によって得られた高活性酸化カルシウムによる固体触媒反応法を提案した。この発明によって、水酸化アルカリを用いた場合と同じ反応効率で、アルカリの混入を大幅に低減したバイオディーゼル油を生成することができた。ただし、ディーゼルエンジンへの負荷を勘案すると、生成したバイオディーゼル油に若干残存するカルシウム分を、吸着剤等によって除去することが好ましい。欧米諸国では、カルシウム分のような無機分の含有量を、その硫酸塩ベースで200〜300ppm以下とするよう規格化されている。
本発明は、無機分の混入量が少ない、より高品質なバイオディーゼル油を製造するのに適した固体触媒並びに、当該固体触媒の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、カルシウム分の混入について研究した結果、高活性な酸化カルシウムはバイオディーゼル油生成の反応場にて副生するグリセリンと反応し、カルシウムジグリセロキシドへ変わり、この化学種も高活性な触媒として作用することを見出した。また、酸化カルシウムとグリセリンの反応の際には、水を副生し、これが生成バイオディーゼル油へのカルシウム分混入を促進することも見出した。副生水分によるカルシウム分の混入促進の原因は明らかではないが、液相の極性増加がイオン結晶性のカルシウム化合物の液中分散性を高めたためと推察される。この結果に基づき、酸化カルシウムを事前にグリセリンと反応させてカルシウムジグリセロキシドへ変え、副生水分を除去した後に反応へ用いることを特徴とする本発明を提案するに至った。これにより、生成するバイオディーゼル油へのカルシウムの混入を大幅に低減することができた。
本発明のバイオディーゼル油製造用固体触媒は、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒であって、当該触媒が、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウム、又は当該酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムのいずれか一方を原料とし、当該原料をグリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることによって得られたカルシウムジグリセロキシドであることを特徴とする。
尚、本願明細書において、触媒活性を決定する「塩基強度(H_)」は、Hammett試薬の変色点(酸性色から塩基性色への変化)を示す酸乖離指数(pKa)を表しており、pKa=9.3のフェノールフタレインを色変化させる固体塩基は、塩基強度がフェノールフタレインのpKaである9.3を超えていると評価し、「塩基強度(H_)9.3以上」と表記している。
又、本発明のバイオディーゼル油製造用固体触媒は、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒であって、当該触媒が、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウム、又は当該酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムのいずれか一方を原料とし、当該原料をメタノールと加熱還流下で反応させることによって得られたカルシウムメトキシドであり、当該カルシウムメトキシドの表面積が40m/g以上であることを特徴とするものでもある。
更に、本発明は、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒であって、当該触媒が、担体物質の表面にカルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドが被覆された複合材料であることを特徴とするものでもある。
更に、本発明は、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒の製造方法であって、当該方法は、以下の工程A及びB:
工程A:生石灰、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム及び消石灰からなるグループより選ばれた触媒原料を準備し、当該触媒原料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成することにより、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウムを得る工程、
工程B:前記工程Aで得られた酸化カルシウムを、グリセリンのメタノール溶液または、植物油とメタノールの混合液と加熱還流下で反応させてカルシウムジグリセロキシドを得る工程を含むことを特徴とする。
又、本発明は、上記の固体触媒の製造方法における前記工程Bにおいて、前記酸化カルシウムを水と作用させて水酸化カルシウムにした後でグリセリンのメタノール溶液または、植物油とメタノールの混合液と加熱還流下で反応させ、カルシウムジグリセロキシドを得ることを特徴とするものでもある。
更に、本発明は、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒の製造方法であって、当該方法は、以下の工程A及びB’:
工程A:生石灰、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム及び消石灰からなるグループより選ばれた触媒原料を準備し、当該触媒原料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成することにより、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウムを得る工程、
工程B’:前記工程Aで得られた酸化カルシウムをメタノールと加熱還流下で反応させることにより、表面積が40m/g以上であるカルシウムメトキシドを得る工程
を含むことを特徴とする。
又、本発明は、上記の固体触媒の製造方法における前記工程B’において、前記酸化カルシウムを水と作用させて水酸化カルシウムにした後でメタノールと加熱還流下で反応させ、カルシウムメトキシドを得ることを特徴とするものでもある。
更に、本発明は、担体物質の表面に、カルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドが被覆されたバイオディーゼル油製造用の固体触媒を製造するための方法であって、
担体物質と水酸化カルシウムのモル比が4以上となる組成で、これらの混合水スラリーを調製後、このスラリーに炭酸ガスを吹き込み、固定化されていないバルク粒子が生成することなく、前記担体物質表面に炭酸カルシウムが2.5μm以上の層厚で析出するように複数回に分けて固定化を行い、その後、当該混合水スラリーから炭酸カルシウムで被覆された複合材料を取り出し、得られた複合材料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成して、表面が酸化カルシウムで被覆された複合材料を得、更に、当該複合材料をメタノール、植物油とメタノールの混合液又は、グリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることにより、担体表面がカルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドにより被覆された複合材料を得ることを特徴とする。
又、本発明は、担体物質の表面に、カルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドが被覆されたバイオディーゼル油製造用の固体触媒を製造するための方法であって、
前記担体物質として炭素質材料を選択し、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム又は水酸化カルシウムを、水溶液状又はアルコール溶液状で含浸することで当該担体物質へ固定化し、得られた複合材料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成して、表面が酸化カルシウムで被覆された複合材料を得、更に、当該複合材料をメタノール、植物油とメタノールの混合液又は、グリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることにより、担体表面がカルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドにより被覆された複合材料を得ることを特徴とする。
高活性な酸化カルシウムを使用した時と遜色ない反応実績を挙げながら、無機分の残存量がより少ない高品質なバイオディーゼル油が得られる。
(1)本発明によるカルシウムジグリセロキシドの調製
本発明では、酸化カルシウム、あるいは、この酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムを原料に用い、この原料とグリセリンのメタノール溶液との加熱還流下の反応によって得られたカルシウムジグリセロキシド(Ca(C)をバイオディーゼル製造用の触媒に用いるが、原料の酸化カルシウムは、WO2006/134845号に記載の方法で得られた塩基強度15.0以上、塩基量0.1mmol/g以上のものが調製効率を高めるうえで好ましいが、表面が若干被毒された塩基強度9.3以上のものを用いることができる。このような物性を有する酸化カルシウムは、生石灰、炭酸カルシウム及び消石灰からなるグループより選ばれた原料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成することにより得られる(工程A)。この工程Aで用いる不活性ガスを、炭酸ガス濃度1ppm以下で実質的に水分を含んでいない高純度仕様のものを用いれば、触媒原料としてより好ましい、塩基強度15.0以上で塩基量0.1mmol/g以上の酸化カルシウムが得られる。なお、水酸化カルシウムを原料にすることも本発明では可能であるが、この場合、カルシウムジグリセロキシドの生成速度は遅くなり、水酸化カルシウムの表面が炭酸化されていると生成速度がより遅くなることに留意しなければならない。反応に用いるグリセリンとメタノールは水分含有量の少ないものがよく、試薬特級グレード(水分0.1wt%以下)が望ましい。尚、グリセリンは、100%グリセリンでも良い。
次の工程Bでは、上記の酸化カルシウムとグリセリンのメタノール溶液を、加熱発生蒸気の冷却凝縮管を装備した容器へ装入し、加熱を行う。反応温度は、加熱によるメタノール蒸気の発生と凝縮がバランスして、メタノールの沸点近傍となる(約65℃)。冷却凝縮管の出口は大気開放で、流体によるシール機構を備えておくのが好ましい。また、加熱時には、窒素ガス等の不活性ガスを流通させるのが好ましい。酸化カルシウムとグリセリンの反応は攪拌状態のもとで2時間以上行う。反応操作は回分方式、流通方式のいずれで実施しても構わない。
反応後は、粉末固体状生成物をろ過等の操作によって残存溶液から分離・回収し、生成物に付着した水分を除去するための乾燥操作を行うことによって、本発明の「バイオディーゼル油製造用のカルシウムジグリセロキシド触媒」が得られる。本発明のバイオディーゼル油製造用カルシウムジグリセロキシド触媒は、バイオディーゼル油製造の副生品であるグリセリンの有効利活用に繋がる。
又、本発明では、上記の触媒製造法において、植物油とメタノールの混合液を加熱還流下で酸化カルシウムと反応させて得られたカルシウムジグリセロキシドをバイオディーゼル製造用の触媒に用いることができる。この場合、植物油とメタノールとのエステル交換反応(バイオディーゼル生成反応)によって、グリセリンが生成し、これと原料が反応して、カルシウムジグリセロキシドが得られ、植物油としては、不純物の含有がわずかな食用グレードのものが望ましく、大豆油、菜種油、パーム油等の油種は問わない。この触媒製造法は、グリセリンを事前に準備することが困難な場合の代替方法として有用である。
(2)本発明によるカルシウムメトキシドの調製
更に、本発明では、原料として前述の塩基強度9.3以上の酸化カルシウムを準備し(工程A)、当該原料をメタノールと加熱還流下で反応(工程B’)させることによって得られた、表面積が40m/g以上のカルシウムメトキシド(Ca(OCH)をバイオディーゼル製造用の触媒に用いることができ、この際、上記の酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムを原料として用いることもできる。
本発明者等は、バイオディーゼル油生成の反応場におけるカルシウムジグリセロキシドへの変換メカニズムを検討する際に、反応場で共存するメタノールの影響を調べた結果、酸化カルシウムとメタノールの反応によって生成するカルシウムメトキシドも安定な化学種として高い触媒活性を発揮することを見出した。カルシウムメトキシドは、従来よりバイオディーゼル油生成反応に活性な触媒であると知られていた(例えば下記の非特許文献1)。しかしながら、金属カルシウムとメタノールの反応によって得られたものが用いられており、本発明と比べて触媒調製に難点を抱えていた。金属カルシウムは大気下での反応性が高く、発火の恐れがあるため、そのハンドリングには細心の注意が必要である。一方、本発明では安全性の高い酸化カルシウムを扱うので、ハンドリングは極めて容易である。酸化カルシウムとメタノールからカルシウムメトキシドを得ることも既往文献に記されているが、常温下の反応であるため調製に長い時間を要する割には得られるカルシウムメトキシドの表面積が極めて小さく(2m/g)、「触媒」としての利用は全く想定されていない(例えば下記の非特許文献2)。これに対して、本発明では加熱還流下で反応させているので、得られるカルシウムメトキシドは表面積が大きく(40m/g)、高活性発現の要因となっている。従って、本発明では、酸化カルシウムとメタノールを加熱還流下で反応させることによって得た、高い表面積のカルシウムメトキシドを触媒に用いることも特徴の一つである。なお、カルシウムメトキシドが生成する際にも水分を副生するので、これを除去することは欠かせない。
S. Gryglewicz, Bioresources Technology, 70 (1999) 249-253 荒井康夫ほか,日本化学会誌,9 (1981) 1402-1408
(3)水酸化カルシウムとCOの反応を利用した本発明の担持型触媒の調製
本発明では反応装置へ実装可能な触媒として、カルシウムジグリセロキシドあるいはカルシウムメトキシドを担体物質へ固定化した複合材料も提案している。このような複合材料は成形性に優れ、反応装置内での触媒と生成物との分離が極めて容易となる。触媒物質の固定化では、担体物質のポロシティや表面化学性状がアンカーフォースとして作用するので、バイオディーゼル油へのカルシウム分混入を抑制する効果が期待される。
本発明者等は、カルシウムジグリセロキシドやカルシウムメトキシドの前駆体である酸化カルシウムがシリカ、アルミナのような一般的な担体物質と反応しやすく、複合材料の前処理工程における焼成操作時に不活性な珪酸カルシウムや珪酸アルミニウムを生成してしまう欠点を明らかにした。これを補うには、担体物質表面に触媒前駆体となるカルシウム化合物を多量に担持し、表面近傍のカルシウム化合物を犠牲にして、活性成分粒子を残存させることを考え付いた。しかし、このような複合材料を通常の含浸操作で調製すると、担体物質に固定化されないバルク粒子が多く発生してしまう。そこで、水酸化カルシウムに炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムの微細粒子を製造する工業技術を利用し、簡便に多量の触媒前駆体(酸化カルシウム)を担体物質へ固定化する方法を開発した。この方法によると、原料組成(担体物質/水酸化カルシウムモル比)のみを管理し、固定化操作を複数回繰り返すことで、担体物質表面に炭酸カルシウムを2.5μm以上の層厚で析出させた、高い活性を発現する実装型触媒の前駆体が得られる。この場合、炭酸カルシウムが担体物質表面に多層状態で固定化され、担体物質に近いものは焼成時に不活性な化合物となるが、一部が酸化カルシウムとして残存する。ここで、固定化操作の繰り返し回数が少なく、炭酸カルシウムの層厚が2.5μm未満であると、担体表面の酸化カルシウムのすべてが担体物質と反応し、不活性な化合物を生成する(図1参照)。また、原料組成を考慮せず、1回の操作で酸化カルシウムを固定化しようとすると、担体表面での不均一核生成が起こる割合が減少するため、均一核生成によるバルク粒子の発生が多くなり、非固定化粒子が多くなってしまう。
原料に用いる水酸化カルシウムは純度95%以上のものが良い。同等純度の酸化カルシウムを準備し、COとの反応の前に水と反応させて水酸化カルシウムを得ても良い。水はイオン交換水程度のグレードで良い。COは純度100%のものを供給しても良いが、工業的には窒素のような不活性ガスで希釈してから供給するのが一般的である(CO濃度は約30%)。水酸化カルシウムとCOの反応によって生成する炭酸カルシウムを固定化する担体物質は、特に限定されず、工業触媒担体として一般的なシリカやアルミナを用いることができる。ここで留意するのは担体物質と水酸化カルシウムのモル比を4以上とすることにあり、これによって、炭酸カルシウムの生成量が制限され、生成する炭酸カルシウムのすべてが担体物質へ固定化される。上記モル比が4未満となると、図1に示されるようにして、バルク粒子が生成し、均一分散した触媒前駆体の完全な固定化を達成できない。
上記原料のうち、水酸化カルシウムと担体物質を、金属製あるいは樹脂製の大気開放型の容器の中で水に分散させる。この容器は、周囲に温度調節用の流体を通せるようなジャケットが備わり、底部にはCOガス吹き込めるようなノズルを有している。水酸化カルシウムと担体物質が分散している水スラリーを攪拌しながら18℃以下の温度に調製し、その後、COを吹き込む。COの吹き込み量は水酸化カルシウムとの接触速度が0.6mol/(mol・min)以上となるようにする。水酸化カルシウムとCOの反応は、pHで管理することが可能である。反応当初から終了間近まではpHが12から11程度へと漸減し、その後急激に7程度まで低下してから、7.5〜8で落ち着く。このpHの落ち着きが認められたら水酸化カルシウムとCOの反応は完結している。ここで注意することは、固定化操作を複数回繰り返して、担体物質表面に析出する炭酸カルシウムの層厚を2.5μm以上にしなければならないことである。
その後、上記操作によって得られた炭酸カルシウム/担体物質の被覆型複合材料を焼成することによって、固定化した炭酸カルシウムを触媒前駆体である酸化カルシウムへ変換する。このときの焼成操作は、不活性ガス雰囲気下で行う。WO2006/134845号と同様に、CO濃度が1ppm以下で実質的に水分を含まない不活性ガスを用いれば、調製効率が高く、好ましい。焼成温度は750℃以上とし、750℃以下の焼成では酸化カルシウムが得られない。焼成後の複合材料は、グリセリンやメタノールと反応させて酸化カルシウムをカルシウムジグリセロキシドあるいはカルシウムメトキシドへ変換する。このようにして得られた本発明のバイオディーゼル油製造用固体触媒は、バイオディーゼル生成反応に活性を発揮する。
(4)炭素質材料を担体物質とした本発明による担持型触媒の調製
担体物質に炭素質材料を選択すれば、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、あるいは水酸化カルシウムを、水溶液状またはアルコール溶液状で含浸することで担体物質へ固定化することが可能である。上記カルシウム化合物を含浸した炭素質材料は、その後、不活性ガスの流通下で750℃以上の温度で焼成することで、表面が酸化カルシウムで被覆された複合材料となり、この複合材料を、メタノール、植物油‐メタノール混合液又は、グリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることで得られた、カルシウムメトキシドあるいはカルシウムジグリセロキシドで被覆された炭素質材料を、バイオディーゼル製造用の触媒に用いる。
担体物質である炭素質材料は、高温下でも触媒前駆体の酸化カルシウムと反応することのないので、少量のカルシウム化合物を、公知の簡便な技術である含浸操作によって触媒前駆体の原料を担体物質へ固定化できる。炭素質材料としては、カーボンブラック、活性炭等を利用できる。
又、焼成操作は、不活性ガス雰囲気下で行う。WO2006/134845号と同様に、CO濃度が1ppm以下で実質的に水分を含まない不活性ガスを用いれば、より好ましい。焼成温度は原料に用いたカルシウム化合物によって異なり、酢酸カルシウムで750℃以上、水酸化カルシウムで450℃以上、硝酸カルシウムで600℃以上とする。焼成後の複合材料はグリセリンやメタノールと反応させて酸化カルシウムをカルシウムジグリセロキシド、あるいはカルシウムメトキシドへ変換する。
I.カルシウムジグリセロキシドとカルシウムメトキシドの触媒性能
(1)触媒調製
<触媒A> 水酸化カルシウムとCOの反応によって得た炭酸カルシウム微細粒子1.40g(表面積10m/g)を、高純度ヘリウムガス(太陽日産製:CO濃度1ppm以下、露点−70℃以下)を流通させながら、ステンレス製の管状反応器(内径30mm×長さ600mm)の中で900℃、1.5時間焼成して得られた酸化カルシウム。生成量は0.78gであり、指示薬法によって塩基強度が15.0以上18.4以下で、塩基量が0.15mmol/gであることが確認された。表面積は13m/gであった。
<触媒B> 上記と同じ酸化カルシウム0.78gをグリセリンのメタノール溶液150ml(グリセリン濃度50wt%、いずれも和光純薬製試薬特級品)で窒素ガス雰囲気下、2時間の加熱還流状態で反応させて得られた粉末状固体粒子。粉末X線回折測定結果から、生成した粉末状固体粒子はカルシウムジグリセロキシドと同定された。表面積は10m/gであった。
<触媒C> 上記の酸化カルシウム0.78gを植物油100mlとメタノール50mlの混合液(いずれも和光純薬製試薬特級品)で窒素ガス雰囲気下、2時間の加熱還流状態で反応させて得られた粉末状固体粒子。粉末X線回折測定結果から、生成した粉末状固体粒子はカルシウムジグリセロキシドと同定された。表面積は11m/gであった。
<触媒D> 上記の酸化カルシウム0.78gを100mlのメタノール(和光純薬製試薬特級品)で窒素ガス雰囲気下、2時間の加熱還流状態で反応させて得られた粉末状固体粒子。粉末X線回折測定結果から、生成した粉末状固体粒子はカルシウムメトキシドと同定された。表面積は44m/gであった。
(2)触媒性能評価
上記の触媒A〜Dについて、それぞれ調製後の全量(カルシウム分で0.56g)を大豆油(和光純薬製試薬特級品)100mlとメタノール50mlと共にパイレックス(登録商標)ガラス製のバッチ反応器(内容積500ml)内へ装入した。触媒B、C、Dについては、反応へ用いる前に90℃で4時間真空乾燥することで、触媒表面に残存する水分を除去した。用いた大豆油は水分0.01wt%以下、酸価0.1mg−KOH/g以下の食用グレードのものである。原料油、触媒等を装入した後は、攪拌させながら反応器を加熱し、還流状態を2時間保持し、反応を行った。反応後は、生成物を取り出し、静置層において比重差からグリセリンを、ろ過によって懸濁する触媒粒子を除去し、バイオディーゼル油である脂肪酸メチルエステルの生成率を求めるためのサンプル液を得た。脂肪酸メチルエステル(FAME)の生成率は、ガスクロマトグラフ分析の結果から算出した。
また、生成したバイオディーゼル油へのカルシウム混入量は、湿式法によってカルシウム分を抽出し、ICP−AES分析により定量した。
その結果を以下の表1に示す。
[表1]
表1 カルシウムジグリセロキシド、カルシウムメトキシドの触媒性能


FAME 触媒 油中
生成率[%] 回収率 カルシウム分
0.5h 1.0h 2.0h [wt%] [ppm]
触媒A 酸化カルシウム 73 92 98 81 187
触媒B カルシウムジグリセロキシド 56 70 87 88 41
(グリセリンとの反応)
触媒C カルシウムジグリセロキシド 60 72 86 88 44
(植物油との反応)
触媒D カルシウムメトキシド 15 24 61 87 54

(3)結果
表1の実験結果から、触媒A〜Dのいずれも、バイオディーゼル油を生成する大豆油とメタノールのエステル交換反応に活性であることがわかる。カルシウムメトキシドから成る触媒Dは他と比べて若干の低活性であるが、実生産時には触媒の増量によって補える程度と判断できる。
ここで、生成したバイオディーゼル油へ混入するカルシウム分に着目すると、酸化カルシウムから成る触媒Aでは、187ppmであった。一方、カルシウムジグリセロキシドから成る触媒B、Cでは生成バイオディーゼル油へのカルシウム混入量が40ppm程度であり、触媒Aと比べてカルシウム分含有量が大幅に低減されている。これらは硫酸灰分に換算すると130〜140ppmであり、欧米諸国の厳しい品質規格をクリアできている。また、カルシウムメトキシドから成る触媒Dでもカルシウム分が54ppm(硫酸灰分で180ppm相当)まで低減された。
以上の結果から、本発明の製造方法を用いることによって、カルシウム分の混入がより少ない高品質なバイオディーゼル油を、高活性酸化カルシウムに匹敵する反応効率で製造できることが判った。
II.カルシウムジグリセロキシド/メトキシド担持型触媒の効果
(1)触媒調製
<触媒E> 水酸化カルシウム(和光純薬製試薬特級品:純度96wt%)1.85gと担体物質としてのシリカパウダー(富士シリシア製、表面積470m/g、粒子径53μm)12.0gを(担体物質/水酸化カルシウムのモル比=8)、内容積3Lの底部ノズル付きステンレス製円筒容器内で、2Lの蒸留水を用いて分散させた。その後、400rpmで攪拌しながら容器ジャケットへ冷却水を供給し、容器内の分散スラリーの温度を18℃に調節した。温度調節後はCO-窒素混合ガス(CO濃度30%)3.3L/minを容器底部ノズルから供給し、シリカへの炭酸カルシウム微細粒子固定化操作を開始した。スラリーのpHが低下し、炭酸カルシウムの生成が完結したのを確認してから、水酸化カルシウム1.85gをスラリーへ添加し、第2回目の固定化操作を行った。この固定化操作はあと2回繰り返された(層厚:2.8μm)。
合計4回の固定化操作を実施した後は、スラリー内の粉末状固体をろ過によって回収し、90℃で4時間の真空乾燥によって水分を除去した。乾燥後の粉末状固体に対して、CO濃度1ppm以下で実質的に水分を含まないヘリウム雰囲気下で900℃-1.5時間の焼成を施し、シリカ担体に固定化されている炭酸カルシウムを酸化カルシウムへ変換した。この酸化カルシウムは、上記の触媒Bと同じ操作でグリセリンと反応させ、バイオディーゼル生成反応用のシリカ担持カルシウムジグリセロキシド触媒を得た。(表面積:37m/g)。
<触媒F> 日本エンバイロケミカル製活性炭「カルボラフィン」(粉末状、1560m/g)10gへ、酢酸カルシウム4水和物(和光純薬製試薬特級品、純度99wt%)3.2gを30mlの蒸留水と共に含浸させた。含浸後は、90℃で4時間減圧乾燥することによって水分を除去した。その後、触媒Eと同じ操作で焼成と、その後のグリセリンとの反応を行い、バイオディーゼル生成反応用の炭素担持カルシウムジグリセロキシド触媒を得た。(表面積:71m/g)
(2)触媒性能評価
カルシウム含有量0.56gに相当する量の触媒E、Fに対して、上記「カルシウムジグリセロキシドとカルシウムメトキシドの触媒性能」と同じ操作を行った。
その結果を、以下の表2に示す。
[表2]


表2 担持型カルシウムジグリセロキシド触媒の性能
FAME 油中
生成率[%] カルシウム分
0.5h 1.0h 2.0h [ppm]
触媒E カルシウムジグリセロキシド/シリカ 84 88 98 26
(炭酸カルシウム、析出沈殿法)
触媒F カルシウムジグリセロキシド/活性炭 91 94 97 19
(酢酸カルシウム、含浸法)
触媒B カルシウムジグリセロキシド 56 70 87 41

(3)結果
表2においては、触媒E、Fの性能を触媒Bと比較している。いずれも触媒物質は、カルシウムジグリセロキシドである。触媒E、Fは大豆油とメタノールのエステル交換反応に対して、触媒Bよりも高活性であることがわかる。これは、担体物質上に微細な触媒物質粒子を固定化できたため、バルク粒子である触媒Bよりも反応に有効な表面が多かったためと推察される。
また、生成したバイオディーゼルに混入するカルシウム分は、触媒Eで26ppm、触媒Fでは19ppmとなり、バルク粒子の触媒Bよりも少ない結果となった。これは、担体表面のポロシティや化学性状によって、触媒物質のアンカーフォースが増したためと推察される。
以上の結果から、担体物質への固定化は実装型触媒の調製に有利なだけでなく、生成したバイオディーゼルへのカルシウム分混入の低減と活性向上に効果があった。
III.触媒表面積の影響(触媒D)
(1)触媒調製
<触媒D−1> 触媒Dの前駆体に用いた酸化カルシウム0.78gをメタノール100mlと密栓付きガラスフラスコ内で混合し、窒素ガスを封入後、24時間振とうした。その後、ろ過を経て回収した粉末状固体は、カルシウムメトキシドと水酸化カルシウムの混合物であることがX線回折測定によって同定された。表面積は1.8m/gであった。これを「触媒D−1」とし、加熱還流状態で酸化カルシウムとメタノールが反応することによって得られた高表面積のカルシウムメトキシドから成る触媒Dと比較した。
(2)触媒性能評価
上記「カルシウムジグリセロキシドとカルシウムメトキシドの触媒性能」と同じ操作を行った。
(3)結果
40m/gを越える表面積のカルシウムメトキシドから成る触媒Dは、2時間の反応で61%のFAME生成率をもたらしたが、表面積が2m/g程度の触媒D−1は、活性が極めて低く、2時間の反応で12%しかFAMEが生成しなかった。
以上のことから、酸化カルシウムとメタノールを加熱還流状態で反応させて40m/gの高表面積カルシウムメトキシドを得る本発明により、バイオディーゼル油生成反応用の高活性な触媒を提供できることが確認された。
IV.触媒Eの固定化操作の影響
(1)触媒調製
<触媒E−1> 水酸化カルシウムとシリカが分散する水スラリーへCOを吹き込むことによって、炭酸カルシウムをシリカ表面に固定化した複合材料について、水酸化カルシウム3.7gとシリカ12gを2Lの蒸留水で分散させ、3.3L/minの流量でCO-窒素混合ガスを吹き込んだ。全ての水酸化カルシウムが炭酸カルシウムへ変わったのをpHの変化から確認した後に、再度、水酸化カルシウム3.7gを投入し、同様の操作を行った。これにより、カルシウム含有量が上記の触媒E(固定化操作4回繰り返し)と同一の複合材料が得られた(炭酸カルシウムの層厚:約2.5μm)。この複合材料に対して、CO濃度1ppm以下で実質的に水分を含まないヘリウム雰囲気下900℃-1.5時間の焼成と、グリセリンとの反応を施し、バイオディーゼル生成反応へ供する触媒「E−1」を得た。
<触媒E−2> 水酸化カルシウム7.4gとシリカ12gを2Lの蒸留水で分散させ、6.6L/minの流量でCO-窒素混合ガスを吹き込んで、炭酸カルシウムをシリカ表面に固定化する操作を1回だけ行い、カルシウム含有量が上記の触媒E(固定化操作4回繰り返し)と同一の複合材料が得られた。これは、上記と同様の焼成と、その後のグリセリンとの反応を経て、バイオディーゼル生成反応へ供する触媒「E−2」へ変換された。(炭酸カルシウムの層厚:約1.7μm、バルク粒子が発生)
<触媒E−3> 水酸化カルシウム7.4gを分散させた水スラリーへ3.3L/minのCO-窒素混合ガスを吹き込むことで得た炭酸カルシウム1.40gに対して、上記と同様の焼成と、その後のグリセリンとの反応を施し、カルシウムジグリセロキシドを準備した。これを、上記と同様の操作の焼成を経たシリカ1.68gと混合し、触媒「E−3」とした。
<触媒E−4> 触媒Eと同様の方法で調製した炭酸カルシウム/シリカ複合材料であるが、炭酸カルシウムの固定化における繰り返し操作を3回で止めた。これにより、カルシウム含有量が触媒Eの4分の3となる試料(炭酸カルシウムの層厚:約2.2μm)が得られた。これは、上記と同様の焼成と、その後のグリセリンとの反応を経て、バイオディーゼル生成反応へ供する触媒「E−4」へ変換された。
<触媒E−5> 触媒Eと同様の方法で調製した炭酸カルシウム/シリカ複合材料であるが、炭酸カルシウムの固定化における繰り返し操作を6回まで増やした。これにより、カルシウム含有量が触媒Eの1.5倍となる試料(炭酸カルシウムの層厚:約3.4μm)が得られた。これは、上記と同様の焼成と、その後のグリセリンとの反応を経て、バイオディーゼル生成反応へ供する触媒「E−5」へ変換された。
(2)触媒性能評価
触媒E−1〜E−5の活性を触媒Eと比較するため、上記「カルシウムジグリセロキシドとカルシウムメトキシドの触媒性能」と同じ操作を行った。いずれの触媒もカルシウム含有量で0.56gに相当する量を用いた。
その結果を以下の表3に示す。
[表3]
表3 炭酸カルシウム固定化操作が触媒性能に及ぼす影響

FAME
生成率[%]
モル比 0.5h 1.0h 2.0h

触媒E SiO2/Ca(OH)2=8、4回繰り返し 84 88 98
触媒E-1 SiO2/Ca(OH)2=4、2回繰り返し 65 81 97
触媒E-2 SiO2/Ca(OH)2=2、1回のみ 2 5 13
触媒E-3 触媒成分と担体の物理混合 5 10 19
触媒E-4 SiO2/Ca(OH)2=8、3回繰り返し 4 8 17
触媒E-5 SiO2/Ca(OH)2=8、6回繰り返し 86 91 97
※いずれの触媒もカルシウムジグリセロキシド/SiO2の複合材料
(3)結果
上記表3より、シリカ/水酸化カルシウムモル比=8の条件で固定化操作を4回繰り返すことによって得られた触媒Eは0.5時間の反応でFAME生成率が80%を越えている。シリカ/水酸化カルシウムモル比を4に下げて調製した触媒E−1も、触媒Eと比べてFAME生成率が若干下がっているものの、充分な活性を発揮している。一方、水酸化カルシウムを用いた固定化を1回だけの操作で済ませた触媒E−2(シリカ/水酸化カルシウムモル比=2)ではFAME生成率が10%に満たなかった。この理由は触媒E−3の結果が示唆している。触媒E−3は、カルシウムジグリセロキシドとシリカを物理混合したものであり、シリカに被覆されていないカルシウムジグリセロキシドのバルク粒子が多い。この触媒E−3も、FAME生成率が極めて低くなった。カルシウムジグリセロキシドがバルク粒子として存在する場合には、シリカと負の相互作用が働き、触媒活性が低下したと考えられる。触媒E−2で活性が低かったのも、固定化されていないカルシウムジグリセロキシドのバルク粒子が多く、触媒E−3とよく似た粒子構造となっていたためであろう。
触媒E−4も触媒Eと比べて活性が非常に低い結果となった。これは、炭酸カルシウムを均一に固定化できたものの、繰り返し操作が3回であったために炭酸カルシウム層が薄く、焼成後に触媒前駆体(酸化カルシウム)として残存する粒子が少なかったためと考えられる。繰り返し操作を6回まで増やした触媒E−5は、触媒EよりもFAME生成率が大きくなった。
以上のことから、水酸化カルシウムとCOの反応を利用して炭酸カルシウムを担体物質へ固定化し、焼成とその後のグリセリンとの反応を経て触媒を調製する場合は、担体物質/水酸化カルシウムモル比を4以上で炭酸カルシウムを生成させる固定化操作を複数回繰り返し、担体表面の炭酸カルシウム層厚を2.5μm以上とすることが必要である。
V.触媒担体種の影響
(1)触媒調製
<触媒F−1> 触媒Eの担体と同じシリカ10gへ、酢酸カルシウム4水和物(和光純薬製試薬特級品、純度99wt%)3.2gを30mlの蒸留水と共に含浸させた。その後は触媒Fの調製と同様に操作し、シリカ担持触媒(触媒F−1)を得た。
<触媒F−2> 10gのγ-アルミナ(触媒化成性、表面積300m/g)へ、酢酸カルシウム4水和物(和光純薬製試薬特級品、純度99wt%)3.2gを30mlの蒸留水と共に含浸させた。その後は触媒Fの調製と同様に操作し、アルミナ担持触媒(触媒F−2)を得た。
(2)触媒性能評価
触媒F−1、F−2の活性を、上記「カルシウムジグリセロキシドとカルシウムメトキシドの触媒性能」と同じ操作で評価した。いずれの触媒もカルシウム含有量で0.56gに相当する量を用いた。
(3)結果
触媒F−1、F−2のいずれも2時間反応させてもFAMEは全く生成しなかった。これは、担体表面に含浸した酢酸カルシウムが焼成によって酸化カルシウムとなる際に、そのすべてが担体物質と反応し、不活性な化合物になったためと考えられる。
従って、公知の簡便な技術によって担持カルシウムグリセロキシド触媒を得るには、活性炭のような炭素質材料を選定せねばならないことが明らかであった。
本発明の固体触媒は、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応により、欧米諸国で既に適用されている品質規格に適合し得るバイオディーゼル油を効率良く製造するのに有用である。又、本発明の製法を用いることによって、高品質なバイオディーゼル油を効率良く製造するのに適した高活性な固体触媒が製造できる。
(1)担体物質と水酸化カルシウムのモル比が4以下の場合、(2)担体物質と水酸化カルシウムのモル比を4以上で、固定化操作の繰り返し回数が1回の場合、(3)担体物質と水酸化カルシウムのモル比を4以上で、固定化操作の繰り返し回数が2回以上の各場合において得られる、焼成後の生成物(複合材料)の構成を示す概念図である。

Claims (8)

  1. 原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒であって、当該触媒が、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウム、又は当該酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムのいずれか一方を原料とし、当該原料をグリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることによって得られたカルシウムジグリセロキシドであることを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒。
  2. 原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒であって、当該触媒が、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウム、又は当該酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムのいずれか一方を原料とし、当該原料をメタノールと加熱還流下で反応させることによって得られたカルシウムメトキシドであり、当該カルシウムメトキシドの表面積が40m/g以上であることを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒。
  3. 原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒を製造するための方法であって、当該方法が、以下の工程A及びB:
    工程A:生石灰、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム及び消石灰からなるグループより選ばれた触媒原料を準備し、当該触媒原料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成することにより、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウムを得る工程、
    工程B:前記工程Aで得られた酸化カルシウムを、グリセリンのメタノール溶液または、植物油とメタノールの混合液と加熱還流下で反応させてカルシウムジグリセロキシドを得る工程
    を含むことを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒の製造方法。
  4. 前記工程Bにおいて、前記酸化カルシウムを水と作用させて水酸化カルシウムにした後でグリセリンのメタノール溶液または、植物油とメタノールの混合液と加熱還流下で反応させ、カルシウムジグリセロキシドを得ることを特徴とする請求項3に記載のバイオディーゼル油製造用固体触媒の製造方法。
  5. 原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒を製造するための方法であって、当該方法が、以下の工程A及びB’:
    工程A:生石灰、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム及び消石灰からなるグループより選ばれた触媒原料を準備し、当該触媒原料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成することにより、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウムを得る工程、
    工程B’:前記工程Aで得られた酸化カルシウムをメタノールと加熱還流下で反応させることにより、表面積が40m /g以上であるカルシウムメトキシドを得る工程
    を含むことを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒の製造方法。
  6. 前記工程B’において、前記酸化カルシウムを水と作用させて水酸化カルシウムにした後でメタノールと加熱還流下で反応させ、カルシウムメトキシドを得ることを特徴とする請求項5に記載のバイオディーゼル油製造用固体触媒の製造方法。
  7. 担体物質の表面に、カルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドが被覆されたバイオディーゼル油製造用の固体触媒を製造するための方法であって、
    担体物質と水酸化カルシウムのモル比が4以上となる組成で、これらの混合水スラリーを調製後、このスラリーに炭酸ガスを吹き込み、固定化されていないバルク粒子が生成することなく、前記担体物質表面に炭酸カルシウムが2.5μm以上の層厚で析出するように複数回に分けて固定化を行い、その後、当該混合水スラリーから炭酸カルシウムで被覆された複合材料を取り出し、得られた複合材料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成して、表面が酸化カルシウムで被覆された複合材料を得、更に、当該複合材料をメタノール、植物油とメタノールの混合液又は、グリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることにより、担体表面がカルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドにより被覆された複合材料を得ることを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒の製造方法。
  8. 担体物質の表面に、カルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドが被覆されたバイオディーゼル油製造用の固体触媒を製造するための方法であって、
    前記担体物質として炭素質材料を選択し、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム又は水酸化カルシウムを、水溶液状又はアルコール溶液状で含浸することで当該担体物質へ固定化し、得られた複合材料を、不活性ガス雰囲気下にて焼成して、表面が酸化カルシウムで被覆された複合材料を得、更に、当該複合材料をメタノール、植物油とメタノールの混合液又は、グリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることにより、担体表面がカルシウムメトキシド又はカルシウムジグリセロキシドにより被覆された複合材料を得ることを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒の製造方法。
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