JP4952754B2 - 液体噴射装置および手術用メス、液体噴射装置の制御方法 - Google Patents

液体噴射装置および手術用メス、液体噴射装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、流体をパルス状に噴射する流体噴射装置と、この流体噴射装置の制御方法に関する。
従来、流体をパルス状に噴射して対象物の切断または切除等を行う技術が知られている。例えば、医療分野では、生体組織を切開または切除する手術具としての流体噴射装置として、容積変更手段の駆動によって容積が変化される流体室を有し、流体を脈流に変換してノズルからパルス状に高速噴射させる脈流発生部と、脈流発生部に流体を供給する流体供給部と、脈流発生部と流体供給部とを連通する流体供給チューブとから構成される流体噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−82202号公報
上述した脈流発生部は、容積変更手段の駆動によって流体室の容積を縮小し、流体を脈流に変換してノズルからパルス状に高速噴射させる。また、脈流発生部と流体供給部とを流体供給チューブで連通している。流体噴射装置を手術具として用いる場合、脈流発生部を把持して操作する。従って、流体供給チューブは操作性を高めるために柔軟性を有するものが用いられる。
パルス状に高速噴射させる場合、脈流発生部を駆動すると脈流発生部の内部流路の流路抵抗が増加し、流体供給チューブ内の流体圧力も増加して、柔軟性を有する流体供給チューブは径方向に膨張される。このことにより、脈流発生部を起動したときに、脈流発生部への流体供給量が一時的に減少し、安定した定常流量になるまで時間がかかってしまう。流体供給量が定常流量よりも減少した期間では、所望の安定した流体噴射量が確保できないという課題がある。ここで、定常流量とは、脈流発生部を継続駆動する場合に流体供給部からほぼ一定の流量で供給される流体流量を意味する。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る流体噴射装置は、流体をパルス状に噴射する脈流発生部と、前記脈流発生部に流体を供給する流体供給部と、前記脈流発生部と前記流体供給部とを連通する柔軟性を有する流体供給チューブと、前記脈流発生部と前記流体供給部の駆動制御を行う駆動制御部と、が備えられ、前記駆動制御部は、前記脈流発生部を起動させるとともに、前記流体供給部から第1流量の流体を所定時間供給させ、前記所定時間経過後、前記流体供給部から前記第1流量よりも少ない第2流量の流体を供給させることを特徴とする。
本適用例によれば、脈流発生部を起動したときに、流体供給部から第2流量よりも多い第1流量の流体を供給させることにより、流体供給チューブが膨張することに起因する脈流発生部への流体供給量の一時的な減少を抑制し、いち早く脈動発生部からの流体噴射量を第2流量に近づけることができるため、脈流発生部の起動直後から流体を安定した流体噴射量でパルス状に高速噴射させることができる。
[適用例2]上記適用例に係る流体噴射装置は、前記駆動制御部が、前記流体供給チューブの材質、外径、長さ、並びに厚さの少なくとも一つを含むチューブ情報と、前記第2流量と、を用いて前記所定時間と前記第1流量とを決定することが好ましい。
第1流量と所定時間とは、流体供給チューブの膨張量を決定する要因である材質、外径、長さ、厚さ(肉厚)の少なくとも一つを含むチューブ情報と、第2流量と、を用いて決定する。流体供給チューブの膨張量は、脈流発生部への流体供給の減少量に匹敵する。従って、脈流発生部への流体供給量を精度よく増加させることにより、脈流発生部の起動直後から流体噴射量を安定して噴射させることができる。
[適用例3]本適用例に係る流体噴射装置の制御方法は、流体をパルス状に噴射する脈流発生部と、前記脈流発生部に流体を供給する流体供給部と、前記脈流発生部と前記流体供給部とを連通する柔軟性を有する流体供給チューブと、前記脈流発生部と前記流体供給部の駆動制御を行う駆動制御部と、が備えられている流体噴射装置の制御方法であって、前記駆動制御部が、前記脈流発生部を起動させるとともに、前記流体供給部から第1流量の流体を所定時間供給させることと、前記駆動制御部が、前記所定時間の経過後、前記流体供給部から前記第1流量よりも少ない第2流量の流体を供給させることと、を含むことを特徴とする。
このような制御方法によれば、脈流発生部を起動したときに、流体供給部から第2流量よりも多い第1流量の流体を供給させることにより、流体供給チューブが膨張した場合においても、脈流発生部への流体供給量の減少を抑制し、いち早く脈動発生部からの流体噴射量を第2流量に近づけることができるため、脈流発生部の起動直後から流体を安定してパルス状に高速噴射させることができる。
実施形態1に係る流体噴射装置を示す構成説明図。 実施形態1に係る脈流発生部を液体の噴射方向に沿って切断した断面図。 実施形態1に係る制御系の概略構成を示す構成説明図。 実施形態1による制御を行わない場合の噴射流量を模式的に示すグラフ。 実施形態1に係る流体噴射装置の制御方法を示すフロー説明図。 実施形態1に係る制御を行った場合の噴射流量を模式的に示すグラフ。 実施形態2に係る脈流発生部をダイアフラムに対して垂直方向に切断した切断面を示す側面部分断面図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メス等様々に採用可能であるが、以下に説明する実施形態では、生体組織を切開または切除することに好適な流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施形態にて用いる流体は、水または生理食塩水等の液体である。なお、以降説明する図2、図7は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る手術具としての流体噴射装置を示す構成説明図である。図1において、流体噴射装置1は、液体を収容する液体供給容器2(以降、単に容器2と表す)と、流体供給部としてのポンプ10と、ポンプ10から供給される液体を脈流に変換させパルス状に噴射する脈流発生部20と、を備えている。ポンプ10と脈流発生部20とは、液体供給チューブ4(以降、単にチューブ4と表す)によって連通されている。
脈流発生部20には、細いパイプ状の接続流路管90が接続され、接続流路管90の先端部には流路径が縮小されたノズル95が挿着されている。
また、流体噴射装置1は、ポンプ10と脈流発生部20それぞれの駆動制御をするための駆動制御部15が備えられている。図1では、駆動制御部15はポンプ10と脈流発生部20から離間した位置に配設されているが、ポンプ10を含む駆動制御部として構成してもよい。
脈流発生部20は、脈流発生部起動スイッチ25と、ポンプ10からの供給流量を選択する供給流量切換スイッチ26とを備えている。流体噴射装置1を手術具として用いる場合、脈流発生部20を把持して操作するため、脈流発生部起動スイッチ25と供給流量切換スイッチ26を手元に備えることで操作性を高めている。なお、脈流発生部起動スイッチ25は脈流発生部20の起動及び停止、供給流量切換スイッチ26はポンプ10の定常供給量の選択的切換えを司る。
まず、流体噴射装置1における液体の流動を簡単に説明する。容器2に収容された液体は、ポンプ10によって吸引され、一定の圧力でチューブ4を介して脈流発生部20に供給される。つまり、チューブ4の膨張が無い場合は、一定の流量(定常流量と表す)で供給される。脈流発生部20には、流体室80と、この流体室80の容積を変化させる容積変更手段としての圧電素子30及びダイアフラム40と(共に、図2、参照)を備えており、容積変更手段を駆動して流体室80の容積を変化させて脈流を発生し、接続流路管90、ノズル95を介して液体をパルス状に高速噴射する。ここで脈流とは、液体の流れる方向が一定で、液体の流量または流速が周期的または不定期な変動を伴った液体の流動を意味する。脈流には、液体の流動と停止とを繰り返す間欠流も含むが、液体の流量または流速が周期的または不定期な変動していればよいため、必ずしも間欠流である必要はない。同様に、液体をパルス状に噴射するとは、噴射する液体の流量または移動速度が周期的または不定期に変動した液体の噴射を意味する。パルス状の噴射の一例として、液体の噴射と非噴射とを繰り返す間欠噴射が挙げられるが、噴射する液体の流量または移動速度が周期的または不定期に変動していればよいため、必ずしも間欠噴射である必要はない。脈流発生部20については、図2を参照して後述する。
ここで、この流体噴射装置1を用いて手術をする際、術者が把持する部位は脈流発生部20である。従って、術者による操作性を高めるために、チューブ4はできるだけ柔軟であることが好ましい。流体供給チューブの剛性は特に限定しないが、流体供給チューブ内の流体圧力に応じて、流体供給チューブが径方向に膨張する程度の柔軟性を有するチューブであればよい。
次に、本実施形態に係る脈流発生部20の構造について説明する。
図2は、本実施形態に係る脈流発生部を液体の噴射方向に沿って切断した断面図である。脈流発生部20は、ポンプ10からチューブ4を介して流体室80に液体を供給する入口流路81と、流体室80の容積を変化させる容積変更手段としての圧電素子30及びダイアフラム40と、流体室80から流体噴射開口部96まで液体を送出する出口流路82と、を有して構成されている。
ダイアフラム40は、円盤状の金属薄板からなり、周縁部が下ケース50と上ケース70によって密着固定されている。圧電素子30は、本実施形態では積層型圧電素子であって、両端部の一方がダイアフラム40に、他方が底板60に固着されている。
流体室80は、上ケース70のダイアフラム40に対向する面に形成される凹部とダイアフラム40とによって形成される空間である。流体室80の略中央部には出口流路82が開口されている。
上ケース70と下ケース50とは、それぞれ対向する面において接合一体化されている。上ケース70には、出口流路82に連通する接続流路91を有する接続流路管90が嵌着され、接続流路管90の先端部にはノズル95が挿着されている。そして、ノズル95には、流路径が出口流路82よりも縮小された流体噴射開口部96が開口されている。
上ケース70には、流体室80と連通する入口流路81が形成され、入口流路81にはチューブ4が取付けられている。
次に、本実施形態における脈流発生部20の流体吐出動作について図1、図2を参照して説明する。本実施形態の脈流発生部20の流体吐出は、入口流路81側の合成イナータンスL1と出口流路82側の合成イナータンスL2の差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
入口流路81側の合成イナータンスL1は、入口流路81の範囲において算出される。また、出口流路82側の合成イナータンスL2は、出口流路82の範囲において算出される。
なお、接続流路管90の管壁の厚さは、流体の圧力伝播に十分な剛性を有している。
そして、本実施形態では、入口流路81側の合成イナータンスL1が出口流路82側の合成イナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路81の流路長及び断面積、出口流路82の流路長及び断面積を設定する。
次に、流体噴射動作について説明する。
ポンプ10によって入口流路81には、常に一定圧力(定常流量)で液体が供給されている。その結果、圧電素子30が動作を行わない場合、ポンプ10の吐出力と入口流路側全体の流路抵抗の差によって液体は流体室80内に流動する。
ここで、圧電素子30に駆動信号が入力され圧電素子30がダイアフラム40の流体室80側の面の法線方向に急激に伸長したとすると、伸張した圧電素子30によってダイアフラム40が押圧され、ダイアフラム40が流体室80の容積を縮小する方向に変形する。流体室80内の圧力は、入口流路側及び出口流路側の合成イナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
この圧力は、入口流路81に加えられていたポンプ10による圧力よりはるかに大きいため、入口流路81から流体室80内への液体の流入はその圧力によって減少し、出口流路82からの流出は増加する。
しかし、入口流路側の合成イナータンスL1は、出口流路側の合成イナータンスL2よりも大きく、入口流路81から流体室80へ流入する流量の減少量よりも、出口流路82から吐出される液体の増加量のほうが大きいため、接続流路91にパルス状の液体吐出、つまり、脈流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管90内(接続流路91)を伝播して、先端のノズル95の流体噴射開口部96から液体が噴射される。
ここで、流体噴射開口部96の流路径は、出口流路82の流路径よりも縮小されているので、液体はさらに高圧となり、パルス状の液滴となって高速噴射される。
一方、流体室80内は、入口流路81からの液体流入量の減少と出口流路82からの液体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。そして、圧電素子30を元の形状に復元すると、ポンプ10の圧力と、流体室80内の真空状態の双方によって一定時間経過後、入口流路81の液体は圧電素子30の動作前(伸長前)と同様な速度で流体室80内に向かう流れが復帰する。
入口流路81内の液体の流動が復帰した後、圧電素子30の伸長があれば、流体噴射開口部96からパルス状の液滴を継続して噴射する。
続いて、本実施形態に係る流体噴射装置1の制御方法について説明する。まず、流体噴射装置1の制御系の構成について図面を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る制御系の概略構成を示す構成説明図である。制御系としては、ポンプ10及び脈流発生部20(具体的には圧電素子30)の駆動を制御する駆動制御部15と、脈流発生部起動スイッチ25と、ポンプ10の供給流量切換スイッチ26と、ポンプ駆動スイッチ28と、から構成されている。
脈流発生部起動スイッチ25と供給流量切換スイッチ26とは、脈流発生部20に配設され、ポンプ駆動スイッチ28はポンプ10に配設される。なお、ポンプ駆動スイッチ28は脈流発生部20または駆動制御部15に配設してもよい。
駆動制御部15は、ポンプ駆動回路153と圧電素子駆動回路154と、両回路を制御する制御回路151とを有している。駆動制御部15はLUT(Look Up Table)152をさらに有している。LUT152には、ポンプ10による指定の定常流量と、チューブ情報と、これらから算出される増加流量と増加流量指定時間(以降、単に指定時間と表すことがある)等が含まれる。図3では図示を省略しているが、LUT152はRAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等のメモリー(記憶手段)にデータとして記憶されている。
チューブ情報は、チューブ情報入力手段27によって制御回路151に入力され、制御回路151内の演算部(図示せず)によって、チューブ情報と指定される定常流量とから増加流量と増加流量で供給する指定時間を算出してLUTを作成する。チューブ情報入力手段27としては、キーボードまたは入力スイッチ等を用いることができる。なお、LUTは、実験によって求めたチューブ情報および指定される定常流量と、増加流量および増加流量で供給する指定時間との関係に基づいて、流体噴射装置1の出荷前に予め作成してもよい。
次に、LUTの内容について説明する。表1は、本実施形態に係るLUTの1例を示している。
Figure 0004952754
本例では、指定の流量(定常流量)と、チューブ情報としてチューブ材質、チューブ外径、チューブ長さ、チューブ厚さ(チューブの肉厚)と、定常流量及びチューブ情報を用いて算出される制御条件として増加流量と、この増加流量を流動する指定時間と、を算出している。
ここで、定常流量は、チューブ内の上昇圧力を算出するために必要な要素であり、チューブ材質は、チューブの物理定数(ヤング率)を決定する要素である。
流体噴射装置1を駆動する場合、まず、供給流量切換スイッチ26により定常流量を指定し、ポンプ駆動スイッチ28を操作しポンプ10を駆動する。その際、チューブ情報入力手段27から使用されるチューブ4のチューブ情報を制御回路151に入力する。制御回路151からのチューブ情報に基づく読み出し信号により、LUT152からは脈流発生部20の制御条件が読み出される。
そして、脈流発生部起動スイッチ25を操作して脈流発生部20を起動すると、LUT152から読み出された増加流量と流量増加で流動する指定時間に基づきポンプ10が駆動される。
(流体噴射装置の制御方法)
続いて、流体噴射装置の制御方法について説明する。まず、本実施形態による制御を行わない場合について説明する。
図4は、本実施形態による制御を行わない場合の噴射流量を模式的に示すグラフである。ポンプ10は指定された定常流量q1の液体を供給している。ここで、脈流発生部20を起動すると、脈流発生部20の流路抵抗が無い場合もしくは著しく小さい場合は、供給流量(定常流量)と噴射流量(定常噴射量)はほぼ等しくなる。
しかし、圧電素子30を駆動し液体をパルス状に噴射させる場合、脈流発生部20内部流路の流路抵抗が増加し、チューブ4内の流体圧力も増加して、柔軟性を有するチューブ4は径方向に膨張される。このことにより、脈流発生部20への流体供給量が一時的に流量q2に減少し、安定した定常流量になるまで時間がかかってしまう。例えば、時間t1で脈流発生部20を起動すると、起動から時間t2に至る期間では、供給流量の減少により所望の安定した流体噴射ができない。
また、このような脈流発生部20への供給流量の減少が発生すると、時間t1〜時間t2の期間では、流体噴射量が減少し、極端に減少する場合には、流体室80に液体がない状態で圧電素子30が空駆動されてしまうことがある。
そこで、脈流発生部20の起動直後から所望の噴射流量(定常噴射量)を確保するためにポンプ10からの供給流量を制御する。
図5は、本実施形態に係る流体噴射装置の制御方法を示すフロー説明図である。図5に示すフローに沿って説明する。図1、図3、図4も参照する。
図5に表す制御のフローは、ポンプ10を駆動して液体を定常流量で脈流発生部20に供給している状態から、脈流発生部20を起動させ、定常駆動(例えば、生体組織の切開手術等)を継続した後停止させる間のフローを表している。
まず、脈流発生部20を駆動させる前に、チューブ情報入力手段27によりチューブ情報を制御回路151に入力する(ステップ10、なお、以降ステップをSTと表す)。仮にチューブ情報として、チューブ材質A、チューブ外径2mm、チューブ長さ1000mm、チューブ厚さ1mmを入力する。
続いて、供給流量切換スイッチ26を操作して指定の流量(定常流量)を選択する(ST20)。仮に100ml/h(ml/時間)を選択したものとする。すると、入力したチューブ情報と指定の流量(指定の定常流量)から、例えば表1に示したLUTを参照して、増加流量30ml/hと流量を増加させる指定時間5s(5秒)が決定される。
続いて、脈流発生部起動スイッチ25を操作して脈流発生部20を起動し、駆動を開始する(ST30)。この際、制御回路151からLUT152に対して読み出し信号が送出され、制御条件(増加流量30ml/h、指定時間5s)が読み出される。
脈流発生部20が駆動開始するとほぼ同時に、制御条件に基づきポンプ10からの液体供給量を増加させる(ST40)。増加流量は30ml/hのため、ポンプ10からの供給流量は指定された定常流量100ml/hに増加流量30ml/hを上乗せした130ml/hとなる。
ここで、制御回路151では、増加流量で供給されている時間(指定時間)の経過を計測して指定時間(5秒)を指定どおり経過したかを判定する(ST50)。指定時間5秒に達しない間(NO)は増加流量で供給を継続する。指定時間を経過した(YES)後、ポンプ10からの液体供給量を定常流量に減少させて(ST60)その状態を継続する(ST70)。このST70の期間が手術等による脈流発生部20の使用期間である。
そして、手術等を休止または終了する場合は、脈流発生部起動スイッチ25を操作して脈流発生部20を駆動停止させる(ST80)。従って、脈流発生部起動スイッチ25は、起動操作と停止操作が可能な2状態切換スイッチである。
そして、流体噴射装置1を駆動停止させるか一時休止とするかを判定し(ST90)、駆動停止の場合にはポンプ駆動スイッチ28を操作してポンプ10を駆動停止させる(ST100)。
また、ST90にて一時休止とした場合には、ポンプ駆動スイッチ28を操作せずにポンプ10の駆動を維持する。そして、脈流発生部20を再度駆動する場合は、脈流発生部起動スイッチ25を操作し、脈流発生部20を起動させる(ST30)。この場合の脈流発生部駆動停止(ST80)期間は一時休止期間である。
なお、一時休止期間後に再起動するときに指定の流量(定常流量)を200ml/hに切換える必要性が生じた場合は、供給流量切換スイッチ26を操作して200ml/hを選択すれば、入力されたチューブ情報に対応した増加流量及び指定時間で液体供給量を制御することが可能である。脈流発生部20を継続駆動する場合は、そのままポンプ10及び脈流発生部20の駆動を継続する。
続いて、上述したような制御方法による流体噴射量について説明する。
図6は、本実施形態に係る制御を行った場合の噴射流量を模式的に示すグラフである。本実施形態では、脈流発生部20の起動(図示A)とほぼ同時に、ポンプ10からの液体供給量を増加し、指定の増加流量及び指定時間に達したときに供給量を減少させ(図示B)、定常流量q1に復帰させる(図示C)。
従って、脈流発生部20を起動直後の液体の噴射流量の減少q3は、本実施形態による制御を行わない場合の噴射量の減少q2に対してごく僅かであり、脈流発生部20を起動してから定常噴射量を得ることが可能となるまでの時間を従来と比較して短縮することができる。
以上説明した本実施形態による流体噴射装置及び、この流体噴射装置の制御方法によれば、脈流発生部20を起動したときに、ポンプ10からの流体供給量を定常流量よりもチューブ4の膨張による減少量を補うように増加させることにより、脈流発生部20の起動直後から液体を安定してパルス状に高速噴射させることができる。
また、脈流発生部20(具体的には流体室80)への供給流量が減少した状態または無い状態で圧電素子30を駆動すると、圧電素子30の伸縮に伴う発熱に加え流体室80内の断熱効果による発熱、及び冷媒としても作用する液体の量が不十分であるために圧電素子30の温度上昇を引き起こす可能性がある。本実施形態によれば供給流量が十分にあるため、この温度上昇に起因する圧電素子30の劣化を防止することができるという効果がある。
また、チューブ情報と、指定された定常流量と、から算出された指定時間と増加流量とに基づきポンプ10を駆動させることから、供給流量を精度よく増加させ、脈流発生部20の起動直後から液体を安定して噴射させることができる。
また、指定時間と増加流量とは、流体供給チューブの材質と外径と長さと厚さとを含むチューブ情報と、定常流量と、を用いて算出され、これらの制御情報をLUT152として入力しておき、脈流発生部20の起動に従ってLUT152より読み出すことから、操作者(術者)は都度、指定時間と増加流量を計算して入力する必要がなく、操作性を高めることができる。
(実施形態2)
続いて、実施形態2に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。前述した実施形態1が、脈流発生部を術者が把持して操作する場合の構成を例示していることに対して、実施形態2は、脈流発生部をチューブ先端に装着し血管等の細管組織内に挿入可能な構成であることに特徴を有している。なお、実施形態2において、実施形態1との共通部分には同じ符号を附し、相違箇所を中心に説明する。
図7は、実施形態2に係る脈流発生部をダイアフラムに対して垂直方向に切断した切断面を示す側面部分断面図である。脈流発生部120は、上ケース170と下ケース150の互いの対向面が接合された状態で、断面形状がほぼ円形の筒状に構成されている。下ケース150の上ケース170との対向面には凹部が穿設され、この凹部と上ケース170の下ケース150との対向面に密着固定されるダイアフラム140とで流体室180が構成されている。
下ケース150には、流体室180に連通する入口流路181と出口流路182とが形成され、ダイアフラム140の流体室180に対して反対側の表面には圧電素子130が固着されている。なお、出口流路182の先端部は流体噴射開口部97である。
図7から明らかなように、実施形態2に係る脈流発生部120は、入口流路181、流体室180、および出口流路182が一直線上に形成されている。このような構成にすることによって、液体が衝突する壁部を少なくすることができるため、液体が衝突する壁部において滞留する気泡を減らすことができる。その結果、滞留した気泡の影響によって流体室180の圧力が低下することを防止し、十分な切除能力を有する脈流を安定して発生させることができる。
また、図7において、ダイアフラム140は、流体室180の底面(下ケース150によって形成される面)と平行に配置されている。言い換えれば、ダイアフラム140は液体の流れる方向に対して平行に配置されているとも言える。このような構成にすることによって、脈流発生部120の外径をチューブ6の外径と同程度にすることができ、後述するように脈流発生部120を血管等の細管組織に挿入することが可能となる。
また、ダイアフラム140を流体室180の底面と平行に配置することによって、ダイアフラム140が流体室180を形成する面積を大きくすることができる。これにより、ダイアフラム140の変形によって流体室の容積を縮小する量(=流体室の排除体積)を大きくすることができる。例えばダイアフラム140を流体室180の底面と垂直に配置すると、ダイアフラム140が流体室180を形成する面積は脈流発生部120の外径に制限され、ダイアフラム140の変形によって流体室の排除体積を大きくすることができない。
その結果、十分な切除能力を有する脈流を発生させることが難しくなる。その点、実施形態2の構成では、脈流発生部120の外径に制限されることなく、ダイアフラム140の変形によって流体室の排除体積を大きくすることができるため、十分な切除能力を有する脈流を発生させることができ、好ましい。
このように構成される脈流発生部120は、チューブ6に接続される。ここで、脈流発生部120は、血管等の細管組織に挿入して、細管組織内の付着物等を除去することに好適な装置であって、外径は2mm〜5mm程度である。従って、チューブ6の外径は、脈流発生部120の外径とほぼ等しい。しかるに、チューブ6はカテーテルと考えることができる。
このように構成される細い筒状の脈流発生部であっても、前述した実施形態1と同様な効果が得られ、しかも、細管組織内に挿入して、細管組織内壁の付着物の除去に好適な手術器具として有効である。
さらに、細管構造物の管内の洗浄等にも用いることが可能である。
なお、本実施形態では、脈流発生部起動スイッチ25、供給流量切換スイッチ26、ポンプ駆動スイッチ28は、駆動制御部15またはポンプ10に配設される。
本実施形態における流体噴射装置1の駆動制御は、前述した実施形態1と同じ制御方法によって行うことができる。
なお、前述した実施形態1、実施形態2では、LUT152に制御情報を格納しているが、チューブ4に圧力センサーを配設し、圧力センサーの圧力変化によりチューブ4の膨張を検出して、フィードバック信号に基づきポンプ10からの供給流量を制御する構成とすることができる。
また、供給流量切換スイッチ26をダイヤル式スイッチとし、LUT152(表1)の制御条件(a1〜a6、b4〜b6)を直接選択する構成としてもよい。
また、前述した実施形態1、実施形態2では、ダイアフラムを圧電素子によって押圧することによって脈流を発生させる構成としたが、これに限らず、脈流を発生させる構成であれば他の形態でも構わない。例えばピストン(プランジャー)を圧電素子を用いて駆動することによって流体室の容積を縮小させ、脈流を発生させてもよい。また、流体室内の液体をレーザー誘起によって泡状(バブル)にし、バブルを噴射させることによって脈流を発生するようにしてもよい。
また、前述した実施形態1では、LUTの1例として、指定の流量(定常流量)と、チューブ情報としてチューブ材質、チューブ外径、チューブ長さ、チューブ厚さ(チューブの肉厚)と、定常流量及びチューブ情報とを用いて算出される制御条件として増加流量と、この増加流量を流動する指定時間と、を算出する構成としたが、これに限らず、接続するチューブから増加流量と増加流量を流動する指定時間とを導出できればよい。例えば、チューブ情報として、チューブ材質、チューブ外径、チューブ長さ、チューブ厚さ(チューブの肉厚)の少なくともいずれかが含まれていればよい。
また、前述した実施形態1では、LUTを参照して、入力されたチューブ情報に対応する制御条件(増加流量と増加流量を流動する指定時間)を決定する構成としたが、入力されたチューブ情報に対応する制御条件がLUTに存在しない場合には、LUTとして記憶されている複数のチューブ情報および制御条件から、入力されたチューブ情報に最適と思われる制御条件を公知の補間演算によって求めるようにしてもよい。これにより、入力されたチューブ情報に対応する制御条件がLUTに存在しない場合であっても、適切と思われる制御条件を導出することが可能となる。
また、前述した実施形態1では、チューブ情報をチューブ情報入力手段27によって入力するように構成したが、これに限らず、チューブに貼り付けられたRF−IDやバーコードを読み込むことによってチューブ情報を制御回路151に入力するように構成してもよい。これにより、チューブ情報をユーザーが入力する手間を軽減することができる。
1…流体噴射装置、4…チューブ、10…流体供給部としてのポンプ、15…駆動制御部、20…脈流発生部、30…容積変更手段としての圧電素子、40…ダイアフラム。

Claims (3)

  1. 体をパルス状に噴射する脈流発生部と、
    前記脈流発生部に体を供給する流体供給部と、
    前記脈流発生部と前記流体供給部とを連通する柔軟性を有する流体供給チューブと、
    指定された流量に基づき、前記脈流発生部と前記流体供給部の駆動制御を行う駆動制御部と、が備えられ、
    前記指定された流量を第2流量、前記第2流量に増加流量を上乗せした流量を第1流量としたとき、
    前記駆動制御部は、前記脈流発生部を起動させるとともに、前記流体供給部から前記第1流量の体を所定時間供給させ、前記所定時間経過後、前記流体供給部から前記2流量の体を供給させ、前記流体供給チューブ材質、チューブ外径、チューブ長さ、チューブ厚さの少なくとも一つを含むチューブ情報と、前記第2流量と、を用いて前記所定時間と前記増加流量とを決定することを特徴とする体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の液体噴射装置を用いた手術用メス。
  3. 体をパルス状に噴射する脈流発生部と、前記脈流発生部に体を供給する流体供給部と、前記脈流発生部と前記流体供給部とを連通する柔軟性を有する流体供給チューブと、指定された流量に基づき、前記脈流発生部と前記流体供給部の駆動制御を行う駆動制御部と、が備えられている流体噴射装置の制御方法であって、
    指定された流量を第2流量、前記第2流量に増加流量を上乗せした流量を第1流量としたとき、
    前記駆動制御部が、前記脈流発生部を起動させるとともに、前記流体供給部から第1流量の体を所定時間供給させることと、
    前記駆動制御部が、前記所定時間の経過後、前記流体供給部から前記2流量の体を供給させることと、
    前記流体供給チューブの材質、外径、長さ、並びに厚さの少なくとも一つを含むチューブ情報と、前記第2流量と、を用いて前記所定時間と前記増加流量とを決定することと、
    を含むことを特徴とする体噴射装置の制御方法。
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