JP4951893B2 - ポリカプロアミド樹脂微粒子およびそれを含む化粧品 - Google Patents

ポリカプロアミド樹脂微粒子およびそれを含む化粧品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリカプロアミド樹脂からなる微粒子およびそれを使用した化粧品に関する。
ポリアミド(ナイロン)樹脂から誘導される微粒子は皮膚との滑り性が良好であるため、以前より各種化粧品の原料として使用されて来た。その製造方法についても種々の検討がなされて来ている。
例えば、特許文献1に記載されているように、ラウリルラクタムを流動パラフィン中に加熱溶解し、アルカリ性触媒、助触媒などを加えて加熱攪拌することにより、ナイロン12の微粒子を得る方法が記載されている。
また、特許文献2では、ラウリルラクタムをキシレン中で反応させることにより、ナイロン12の粉末を得る方法が記載されている。
上記の方法は重合反応と同時に粒子化する方法であるが、一方、いったん重合したポリアミドを用いて微粒子を製造する方法も知られている。
たとえば、特許文献3では、合成線状ポリアミド樹脂を高温で溶剤に溶解した後、当該溶液を冷却することによりポリアミド樹脂微粒子を沈澱させる方法が記載されている。具体的な例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)やポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)をグリコール系溶剤に溶解した後、冷却することによって粒子を得る方法が記載されている。
さらに特許文献4には、非晶ナイロン樹脂をエチレングリコールとモルホリンまたはジメチルアセトアミドとの混合溶剤に溶解した後、冷却することにより非晶ナイロン樹脂の微粒子を製造する方法が記載されている。
また、特許文献5にはナイロン12樹脂からなる微粒子を用いた化粧品の例が記載されており、ナイロン微粒子を化粧品に使用することが知られている。
しかしながら、特許文献1に記載されているナイロン微粒子の製造方法は、ラウロラクタムを流動パラフィン中で重合させながらポリラウロラクタム(ナイロン12)からなる粒子を作る方法であり、この方法によって得られる微粒子は、表面が非常に平滑であって、表面を多孔質にするといった表面形態の制御は不可能である。仮に重合反応条件を調整して多孔質のナイロン微粒子を製造しようとすると、粒径が大きくなったり、粒子どうしが融着するなど均一な微粒子が得られない。
特許文献2に記載されているナイロン微粒子の製造方法もラウロラクタムやカプロラクタムをキシレンなどの流動媒体中で重合させながらナイロン微粒子を製造する方法であり、この方法によって得られる微粒子は、表面が平滑であって、表面を多孔質にするといった表面形態の制御は不可能である。仮に重合反応条件を調整して多孔質のナイロン微粒子を製造しようとすると、粒径が大きくなったり、粒子どうしが融着するなど均一な微粒子が得られない。
特許文献3に記載されている方法はナイロン66やナイロン610からなる粒子の製造方法であり、この方法を用いることによってポリカプロアミド(ナイロン6)からなるナイロン粒子も得られることが示唆されているが、粒子径の揃った真球状の多孔質粒子が得られるとの記載はなく、粒子径や表面形態を制御することの可能性や条件についての記載はまったく示されていない。また、化粧品用途への使用についても記載されていない。
特許文献4に記載されている方法で得られる粒子は非晶ナイロンからなる粒子であり、実施例にはナイロン6樹脂からなる粒子の製造例も記載されているが、粒子径の揃った真球状の多孔質粒子が得られるとの記載はなく、粒子径や表面形態を制御することの可能性や条件についての記載はまったくない。
特許文献5に記載されている化粧品は表面が滑らかなナイロン12樹脂からなる微粒子を用いた化粧品の1例であって真球状の多孔質のナイロン6樹脂微粒子を用いた化粧品の例は記載されていない。
特公平45−29832号公報 特公平48−2949号公報 米国特許第2639278号明細書 特開平5−32795号公報 特開平9−263523号公報
そこで本発明者らは、粒子径や形状が真球状に揃っており、かつ多孔性であって吸油量の大きいポリカプロアミド樹脂微粒子を得ること、またそのポリカプロアミド樹脂微粒子を用いた化粧品を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、出発原料として特定範囲の相対粘度を有するポリカプロアミド樹脂原料を用いることにより、粒子径や形状が真球状に揃っており、かつ多孔性であって吸油量の大きいポリカプロアミド樹脂粒子が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)相対粘度が1.70〜2.35、吸油量が115〜200mL/gであることを特徴とするポリカプロアミド樹脂微粒子、
(2)平均粒径が5.0〜20.0μmであることを特徴とする(1)のポリカプロアミド樹脂微粒子、
(3)相対粘度が2.10〜2.67のポリカプロアミド樹脂を多価アルコールまたは多価アルコールと水の混合液中で加熱溶解した後、冷却することを特徴とする(1)または(2)のポリカプロアミド樹脂微粒子の製造方法、
(4)ポリカプロアミド樹脂の末端基濃度(mol/g)が下記式(1)を満足することを特徴とする(3)のポリカプロアミド樹脂微粒子の製造方法、
末端アミノ基濃度 + 2.0×10-5 < 末端カルボキシル基濃度 (1)
(5)多価アルコールがエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンから選ばれる少なくとも1種以上である(3)または(4)のポリアミド樹脂微粒子の製造方法、
(6)(1)または(2)のポリカプロアミド樹脂微粒子を含む化粧品、
(7)ファンデーション、ほほ紅、アイシャドー、クレンジング剤、洗顔クリーム、日焼け止めクリーム、制汗剤またはプレシェーブローションである(6)の化粧品、
を提供するものである。
本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子は形状が真球状に揃っており、しかも多孔質であって吸油性が大きい。また、この粒子を用いて得られる化粧品は、従来のナイロン樹脂微粒子に比べて皮膚との接触感覚が良好である。
本発明で用いられるポリカプロアミド樹脂とは、ε−カプロラクタムを水存在下で加熱するか、アミノカプロン酸を重縮合することによって得られるポリアミド樹脂、すなわちナイロン6樹脂のことである。その構成単位は下記化学式で示される。
Figure 0004951893
なお、全構造単位に占めるモル%が5モル%以下であれば、上記化学式以外のポリアミド単位を含んでもかまわず、具体例として、ウンデカラクタム、ドデカラクタムなどのε−カプロラクタム以外のラクタムから得られるポリアミド単位、2−アミノ酢酸、3−アミノプロピオン酸、4−アミノブタン酸、5−アミノペンタン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸から得られるポリアミド単位、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、3−メチル−1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサンなどのジアミンとコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸から得られるポリアミド単位、あるいはこれらのポリアミド単位の任意の組み合わせが挙げられる。
本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子の相対粘度は1.70〜2.35であることが必須である。ここで言う相対粘度とは、98%硫酸100mLに1gのポリカプロアミドを溶解した溶液を用い、25℃でウベローデ粘度計によって測定した値のことを言う。相対粘度が1.70より低い場合、および2.35より高い場合には得られる粒子の多孔性や真球性、粒径の均一性が損なわれる。一方、本発明で用いられるポリカプロアミド樹脂の相対粘度は、得られるポリカプロアミド樹脂微粒子の相対粘度を勘案すれば、相対粘度は2.10〜2.67が必須であり、好ましくは2.10〜2.50より好ましくは、2.20〜2.45である。
また、本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子は吸油量が115〜200mL/gの範囲にあることが必須である。ここで言う吸油量とは、温度23℃、相対湿度50%の環境下、精秤した約1gのサンプルにアマニ油を少しずつ滴下して練り合わせた後、パテ状の塊から最後の1滴で螺旋状に巻くことができるようになった状態の時を終点とし、以下の式(2)に基づいて計算される値のことを言う。
吸油量(mL/g)=滴下したアマニ油の容量(mL)/試料質量(g) (2)
吸油量が115〜200mL/gの範囲からはずれると、化粧品原料として使用した時の感触が低減し、製品としての使用に耐えない。本発明における好ましい吸油量としては120〜160mL/g、より好ましくは135〜150mL/gである。
本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子の平均粒径には特に制限はないが化粧品材料として使用する時の皮膚との接触感覚の観点から5.0〜20.0μmの範囲にあることが好ましい。この範囲からはずれると化粧品原料として使用した時の感触が低下するため好ましくない。より好ましい平均粒径は5〜17μmであり、更に好ましくは10〜15μmである。ここでいう平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による50%メジアン径のことを言う。
次に本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子の製造方法を以下に記す。
ポリカプロアミド樹脂を多価アルコールまたは多価アルコールと水との混合物中に浸漬し、80〜300℃程度で加熱、攪拌しながらポリカプロアミド樹脂を溶解する。溶解温度は好ましくは100〜280℃、更に好ましくは120〜250℃である。温度が低すぎると、ポリカプロアミド樹脂が十分に溶解しなかったり、溶解はしても析出時に粒径が不均一になったり、粒子どうしが融着したような形態の粒子が生成する傾向を示す。また温度が高すぎるとポリカプロアミド樹脂が分解し、黄色く着色したり、粒径が不均一になったり、形状が歪んだりする傾向を示す。この際、ポリカプロアミド樹脂が酸化劣化しないように不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの雰囲気下で行うことが好ましい。また、溶解した時のポリカプロアミド濃度は5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。濃度が低すぎると粒子が細かくなり過ぎ、得られた微粒子が2次凝集する傾向を示す。また、濃度が高すぎると粒径が大きくなり過ぎたり、析出時に粒子どうしが融着したような形状を示す傾向が出てくる。ポリカプロアミド樹脂が溶解したら、室温下で自然放冷するか、容器全体を一定温度にコントロールされた場所で冷却するか、容器の周囲に水、あるいは空気や不活性ガスを当てるなどして冷却する。1分〜60分で冷却することにより、溶解していたポリカプロアミド樹脂が真球状の粒子として析出する。ゆっくり冷却すると粒径の大きな粒子が得られるが、粒子どうしが融着したような形状の粒子を生成することがあるので注意が必要である。一方、急冷すると粒径の小さいな粒子が得られるが、やはり粒子どうしが融着したような形状の粒子を生成することがあるので注意が必要である。溶液の冷却プログラムは目的とする粒径、使用する容器、ポリカプロアミド溶液の濃度などによって異なるので、適宜調整が必要である。例えば、平均粒径が20.0μmを上回るポリカプロアミド樹脂微粒子の場合、ポリカプロアミド溶液濃度を好ましくは5重量%以下とし、冷却速度を好ましくは0.1℃/分以下の条件で冷却することで得られ、平均粒径が5.0μmを下回るポリカプロアミド樹脂微粒子の場合、ポリカプロアミド溶液濃度を好ましくは5〜10重量%とし、冷却速度を好ましくは100℃/分以上の条件で冷却することで得られる。また、本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子の好ましい平均粒径である5.0〜20.0μmの条件で析出させる場合は、ポリカプロアミド溶液濃度を好ましくは5〜30重量%とし、冷却速度を0.1℃/分〜100℃/分の条件で冷却することにより得られる。析出したポリカプロアミド樹脂微粒子を遠心分離によりケークとして分離し、得られたケークを真空乾燥することにより、純粋なポリカプロアミド樹脂微粒子を得る。
本発明で用いられる、ポリカプロアミド樹脂微粒子の原料であるポリカプロアミド樹脂は、末端基濃度(mol/g)、すなわち末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度は下式(1)を満足することが好ましい。
末端アミノ基濃度 + 2.0×10-5 < 末端カルボキシル基濃度 (1)
上記式の範囲からはずれると粒径が不均一になる傾向及び吸油量が低下する傾向を示し、化粧品原料として使用した時の感触が低下傾向を示す。なお、ここでいる末端アミノ基濃度とは、サンプル約1gを精秤し、フェノール/エタノール混合溶媒(フェノール濃度83.5wt%)50mLに溶解し、該溶液に指示薬としてチモールブルーを添加し、0.02規定の塩酸で滴定して求めた値である。また、末端カルボキシル基濃度とは、サンプル約0.5gを精秤し、ベンジルアルコール20mLに190℃で溶解し、該溶液に指示薬としてフェノールフタレインを添加して0.02規定の水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定して求めた値である。
ここで使用される多価アルコールとは、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物のことである。例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのジオ−ル類、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジオール、1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどの芳香族系ジオール、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルカンポリオール、蔗糖などの糖類、ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコールに代表される糖誘導体、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンなどのポリグリセリンおよびジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどのポリアルカンポリオールなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用される。これらの中でも特にエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンが好ましく用いられる。
ポリカプロアミド樹脂を多価アルコールまたは多価アルコールと水との混合物に溶解する際に、溶解を促進するために少量のアルカリ化合物を添加しても良い。具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩などが挙げられ、より具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸リチウムなどが挙げられる。特に好ましいのは炭酸カルシウムである。その使用量は使用するポリカプロアミドに対して0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
また、上記のようなアルカリ化合物を使用した時には、ポリカプロアミド樹脂微粒子を分離する前に中和しておくことが好ましく、酸性化合物を添加することにより中和できる。具体的には、鉱酸、有機酸などが挙げられ、より具体的には塩酸、硫酸、硝酸、亜硫酸、亜硝酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、燐酸、ポリ燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸などが挙げられる。特に好ましいのは硫酸である。その使用量は、先に使用したアルカリ化合物を中和するのに必要な量である。
本発明で得られたポリカプロアミド樹脂微粒子は、形状が真球状であり、粒径が揃っており、しかも吸油量が大きいため、化粧品のベース原料として有用である。具体的な化粧品としては、ファンデーション、ほほ紅、アイシャドー、クレンジング剤、洗顔クリーム、日焼け止めクリーム、制汗剤、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、おしろい、化粧水、パック、マッサージクリーム、乳液、モイスチャークリーム、美容液、口紅、アイライナー、ネイルエナメル、石鹸、入浴剤、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、サンオイル、脱色・脱毛クリーム、防虫ローション、防虫スプレー、ヘアリキッド、ポマード、ヘアカラー剤、オーデコロン、シャンプー、リンス、整髪剤に有用であるが、とりわけファンデーション、ほほ紅、アイシャドー、クレンジング剤、洗顔クリーム、日焼け止めクリーム、制汗剤、プレシェーブローションに有用である。
また、これまでに知られているポリアミド樹脂微粒子は比較的表面が滑らかであり、吸油量が低かったが、本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子は、表面形態が多孔質状であり、吸油量が高い。更にこれまでに知られているポリアミド樹脂微粒子は水系溶剤への分散性が劣っていたが、本発明のポリカプロアミド樹脂粒子は、従来のポリアミド樹脂微粒子に比べて水系溶剤への分散性に優れている。従って、本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子をファンデーションなどの化粧品に使用した時には、うるおい感を保ちながらもさっぱりとした感触、清涼感に優れた感触、さらさら感、滑らかさ、フィット感(なじみ感)のような感触を与えるという利点がある。またポリカプロアミド樹脂の持つ吸水性や本発明の粒子が持つ高い吸油性は、化粧崩れを防ぎ、化粧持ちがよい「ロングラステイング効果」や、滑り性や良分散性に基づく均一な仕上がり、ソフトフォーカス(皺をぼかしやすいこと)、ナチュラルな仕上がりなどの効果がある。さらにオイル類に分散する時の分散性に優れるという利点もあり、これまでにない新感触の化粧品を創出する可能性を有している。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例、比較例で得られるポリカプロアミド樹脂微粒子の特性評価は以下のようにして実施した。
走査型電子顕微鏡による形態観察:日本電子データム製JSM−6360LVを用いて観察した。
平均粒径:マイクロトラック社9.0L(MT3000)を用い、分散媒としてエタノ−ルを使用して測定し、50%メジアン径(累積中位径)を平均粒径(単位:μm)とした。
吸油量:温度23℃、相対湿度50%で環境下、精秤した約1gの粒子サンプルにアマニ油を少しずつ滴下して練り合わせた後、パテ状の塊から最後の1滴で螺旋状に巻くことができるようになった状態の時を終点とし、以下の式(2)に基づいて算出した。
吸油量(mL/g)=滴下したアマニ油の容量(mL)/試料質量(g)(2)
水系溶剤への分散性:蒸留水90mL、エチレングリコール10mLの混合溶剤の中にポリカプロアミド樹脂微粒子1gを添加し、攪拌棒を用いて良く攪拌した。攪拌することで粒子が溶剤中に均一に混ざる状態を○、溶剤と分離して浮いてしまう、あるいは沈降してしまう、あるいは塊状に固まってしまうといった状態を×とし、これらの中間状態を△とした。
[ポリカプロアミドの製造]
[参考例1]ポリカプロアミド樹脂(A−1)の製造
30Lのステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム10kg、安息香酸43g、イオン交換水200gを仕込み、窒素置換の後、密閉して250℃で10時間加熱・撹拌することによりポリカプロアミド樹脂を調製した。得られたポリカプロアミド樹脂をオートクレーブの下部よりストランド状に引き取り、カッティングしてペレットとした。このペレットを沸騰水中で15時間抽出した後、80℃で24時間真空乾燥した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−1)の相対粘度ηrは2.31、末端アミノ基濃度[NH]は4.8×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は7.2×10−5mol/gであった。
[参考例2]ポリカプロアミド樹脂(A−2)の製造
安息香酸の代わりに、酢酸を21g使用した以外は、参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−2)の相対粘度ηrは2.35、末端アミノ基濃度[NH]は4.9×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は7.4×10−5mol/gであった。
[参考例3]ポリカプロアミド樹脂(A−3)の製造
重合時間を12時間とした以外は参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−3)の相対粘度ηrは2.48、末端アミノ基濃度[NH]は3.8×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は6.2×10−5mol/gであった。
[参考例4]ポリカプロアミド樹脂(A−4)の製造
重合時間を8.5時間とした以外は参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−4)の相対粘度ηrは2.15、末端アミノ基濃度[NH]は5.2×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は8.1×10−5mol/gであった。
[参考例5]ポリカプロアミド樹脂(A−5)の製造
安息香酸を使用せず、重合時間を8時間とした以外は、参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−5)の相対粘度ηrは2.35、末端アミノ基濃度[NH]は7.10×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は7.30×10−5mol/gであった。
[参考例6]ポリカプロアミド樹脂(A−6)の製造
安息香酸の代わりに、ヘキサメチレンジアミンを41g使用した以外は、参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−6)の相対粘度ηrは2.33、末端アミノ基濃度[NH]は7.1×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は4.7×10−5mol/gであった。
[参考例7]ポリカプロアミド樹脂(A−7)の製造
安息香酸を21gとし、重合時間を15時間にする以外は、参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−7)の相対粘度ηrは2.70、末端アミノ基濃度[NH]は3.9×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は5.4×10−5mol/gであった。
[参考例8]ポリカプロアミド樹脂(A−8)の製造
重合時間を8時間にする以外は、参考例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂を製造した。得られたポリカプロアミド樹脂(A−8)の相対粘度ηrは2.07、末端アミノ基濃度[NH]は6.5×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は8.7×10−5mol/gであった。
[参考例9]ポリラウロアミド樹脂微粒子の製造
無水ラウロラクタム190g、流動パラフィン1200mL、ステアリン酸カリウム3.8gを温度計、攪拌機、環流冷却器つきの4つ口フラスコに入れ、フラスコ内部を乾燥窒素で置換した後、160℃に加熱し、ラウロラクタムを流動パラフィンに溶解させた。当該溶液を160℃に保ちつつ、カプロラクタムカリウム塩7.6g、三塩化リン1.12gを添加し、2時間攪拌した。溶液を室温まで冷却後、当該溶液を濾過し、生成したポリラウロアミド樹脂微粒子を単離した。当該粒子をn−ブタノールで洗浄後、更に水洗し、真空乾燥機で一晩真空乾燥した。150gの粒子が得られ、当該粒子の相対粘度は2.91、平均粒径は15.1μm、吸油量は75.2mL/gであった。
<実施例1>
参考例1で製造したポリカプロアミド樹脂(A−1)100gに対し、525gのエチレングリコールを添加し、窒素雰囲気下、180℃で攪拌した。30分攪拌するとポリカプロアミド樹脂が溶解したので、当該溶液を166℃に保温したステンレスバットにあけ、その温度で30分間放置した。ポリカプロアミド樹脂微粒子が沈澱したので、当該沈澱液を遠心分離機にかけ、エチレングリコールを除去し、ポリカプロアミド樹脂微粒子のケークを得た。このケークを取り出し、バットの上に広げて真空乾燥機中、80℃で24時間乾燥した。得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1および図2に示す。
真球状であり、表面が多孔状であることがわかる。この粒子の相対粘度は1.96、平均粒径は12.8μm、吸油量は139.8mL/gであった。また水系溶剤への分散性は○であった。
<実施例2>
参考例2で製造したポリカプロアミド樹脂(A−2)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は1.99、平均粒径は13.1μm、吸油量は139.4mL/gであった。また水系溶剤への分散性は○であった。
<実施例3>
参考例3で製造したポリカプロアミド樹脂(A−3)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は2.20、平均粒径は14.3μm、吸油量は130.6mL/gであった。また水系溶剤への分散性は○であった。
<実施例4>
参考例4で製造したポリカプロアミド樹脂(A−4)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は1.76、平均粒径は14.4μm、吸油量は128.9mL/gであった。また水系溶剤への分散性は○であった。
<実施例5>
参考例5で製造したポリカプロアミド樹脂(A−5)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は2.00、平均粒径は14.1μm、吸油量は128.5mL/gであった。また水系溶剤への分散性は○であった。
<実施例6>
参考例6で製造したポリカプロアミド樹脂(A−6)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は1.97、平均粒径は14.3μm、吸油量は128.7mL/gであった。また水系溶剤への分散性は○であった。
実施例1より、本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子は真球状かつ多孔質であり、吸油量が大きいことがわかる。また水系溶剤への分散性に優れることがわかる。
実施例2より、原料となるポリカプロアミド樹脂の末端封鎖剤を変更しても微粒子は真球状かつ多孔質であり、吸油量の大きい粒子が得られることがわかる。また水系溶剤への分散性に優れることがわかる。
実施例3より、原料となるポリカプロアミド樹脂の相対粘度が比較的高くても微粒子は真球状かつ多孔質であり、吸油量の大きい粒子が得られることがわかる。また水系溶剤への分散性に優れることがわかる。ただし、実施例1〜2に比べて粒径が若干大きく、吸油量も若干低下している。
実施例4より、原料となるポリカプロアミド樹脂の相対粘度が比較的低くても微粒子は真球状かつ多孔質であり、吸油量の大きい粒子が得られることがわかる。また水系溶剤への分散性に優れることがわかる。ただし、実施例1〜2に比べて粒径が若干大きく、吸油量も若干低下している。
実施例5より、原料となるポリカプロアミド樹脂を末端封鎖しなくても微粒子は真球状かつ多孔質であり、吸油量の大きい粒子が得られることがわかる。また水系溶剤への分散性に優れることがわかる。ただし、実施例1〜2に比べて粒径が若干大きく、吸油量も若干低下している。
実施例6より、原料となるポリカプロアミド樹脂の末端アミノ基濃度の方が多くても真球状かつ多孔質であり、吸油量の大きい粒子が得られることがわかる。また水系溶剤への分散性に優れることがわかる。ただし、実施例1〜2に比べて粒径が若干大きく、吸油量も若干低下している。
<比較例1>
参考例7で製造したポリカプロアミド樹脂(A−7)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は2.40、平均粒径は15.5μm、吸油量は110.2mL/gであった。また水系溶剤への分散性は△であった。
<比較例2>
参考例8で製造したポリカプロアミド樹脂(A−8)を使用する以外は実施例1と同様にしてポリカプロアミド樹脂微粒子を製造した。相対粘度は1.68、平均粒径は15.6μm、吸油量は108.9mL/gであった。また水系溶剤への分散性は△であった。
<比較例3>
上中下に3分割された3段ジャケット付攪拌機にエチレングリコール600Lとモルホリン400Lを投入し、更に参考例1で製造したポリカプロアミド樹脂A−1を50kg投入した。当該混合物を窒素雰囲気下160℃で攪拌して樹脂を溶解した後、25rpmで攪拌しながら上段ジャケットに18℃の水を流通させて1時間冷却し、更に中断ジャケットに18℃の水を流通させて30分冷却し、更に下段ジャケットに18℃の水を流通させて30分冷却した。この状態で更に3時間攪拌するとポリカプロアミド樹脂微粒子が析出したので、濾過によってポリカプロアミド樹脂微粒子を単離した。当該粒子を水洗し、更に真空乾燥機で一晩乾燥した。得られたポリカプロアミド樹脂微粒子の相対粘度は3.34、平均粒径は16.0μm、吸油量は80.9mL・gであった。また水系溶剤への分散性は×であった。
比較例1〜2より、ポリカプロアミド樹脂微粒子の相対粘度が高すぎる、あるいは低すぎると吸油量は低く、水系溶剤への分散性は劣っていた。
また、比較例3より、本発明とは異なる方法で得られたポリカプロアミド樹脂微粒子は多孔性ではなく、そのために吸油量は低く、水系溶剤への分散性は劣っていた。
<実施例7〜18>、<比較例4〜11>
実施例1〜6で得られたポリカプロアミド樹脂微粒子および比較例1〜3で得られたポリカプロアミド樹脂微粒子、参考例9で得られたポリラウロアミド樹脂微粒子を用い、以下のようにして試験用乳白液とホワイトUVローションを製造した。
乳白液
[処方]
以下の原材料のうち、植物性乳化ワックス、ホホバオイル、キサンタンガム、シルクパウダーはナチュラルラボラトリーズ製のものを使用した。他の原材料は試薬として購入した。
植物性乳化ワックス(アラキデス−20とステアリルアルコール混合物):20g
ホホバオイル:20g
キサンタンガム:20g
蒸留水:400mL
実施例、比較例、参考例のポリカプロアミド樹脂微粒子:10g
シルクパウダー:10g
[製造方法]
ホホバオイルと乳化ワックスを攪拌しながら50〜60℃に加熱し、完全に溶解す る(A液)。蒸留水、ポリカプロアミド樹脂微粒子、シルクパウダーを攪拌しながら50〜60℃に加熱し、2分間攪拌する(B液)。A液にB液の半量を50〜60℃の温度で混合し、良く攪拌する。この混合物にキサンタンガムを少量ずつ攪拌しながら添加し、更にB液の残り半分を攪拌しながら追添加する。良く攪拌し、塊ができないように均一になるように攪拌した。
ホワイトUVローション
[処方]
以下の原材料のうち、植物性プラセンタ、微粒酸化チタン、タルクはナチュラルラボラトリーズから購入した。他の原材料は試薬として購入した。
植物性プラセンタ(ナチュラルラボラトリーズ製):14滴
微粒子酸化チタン(平均粒径0.03μm):10g
実施例、比較例、参考例のポリカプロアミド樹脂微粒子:10g
タルク:2.5g
グリセリン:10mL
蒸留水:190mL
[製造方法]
酸化チタン、ポリカプロアミド樹脂微粒子、タルクの混合物に蒸留水、プラセンタ、グリセリンを加えて良く攪拌した。放置すると2層に分離するので、使用前に容器を激しく震盪し、均一にして使用した。
上記乳白液の適量を手の甲に塗布し、その際の、うるおい感を保ちながらもさっぱりとした感触、清涼感に優れた感触、さらさら感、滑らかさ、フィット感(なじみ感)を調査した。
各感触について、良い:5点、やや良い:4点、ふつう:3点、やや悪い:2点、悪い:1点とし、20人の評価結果を平均した。結果を表1にまとめて示す。
Figure 0004951893
また、上記ホワイトUVローションについても同様の調査を行った。結果を表2にまとめて示す。
Figure 0004951893
実施例7〜18、比較例4〜11より、本発明のポリカプロアミド樹脂微粒子を使用した化粧品は皮膚に接触した時の感触に優れていることがわかる。
実施例1で得られたポリカプロアミド樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍) 実施例1で得られたポリカプロアミド樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率:5000倍)

Claims (7)

  1. 相対粘度が1.70〜2.35、吸油量が115〜200mL/gであることを特徴とするポリカプロアミド樹脂微粒子。
  2. 平均粒径が5.0〜20.0μmであることを特徴とする請求項1に記載のポリカプロアミド樹脂微粒子。
  3. 相対粘度が2.10〜2.67のポリカプロアミド樹脂を多価アルコールまたは多価アルコールと水の混合液中で加熱溶解した後、冷却することを特徴とする請求項1または2に記載のポリカプロアミド樹脂微粒子の製造方法。
  4. ポリカプロアミド樹脂の末端基濃度(mol/g)が下記式(1)を満足することを特徴とする請求項3に記載のポリカプロアミド樹脂微粒子の製造方法。
    末端アミノ基濃度 + 2.0×10-5 < 末端カルボキシル基濃度 (1)
  5. 多価アルコールがエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンから選ばれる少なくとも1種以上である請求項3または4に記載のポリアミド樹脂微粒子の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載のポリカプロアミド樹脂微粒子を含む化粧品。
  7. ファンデーション、ほほ紅、アイシャドー、クレンジング剤、洗顔クリーム、日焼け止めクリーム、制汗剤またはプレシェーブローションである請求項6記載の化粧品。
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