JP4951144B1 - マイクロウェルアレイチップおよび細胞の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板の表面に複数のマイクロウェルを有するマイクロウェル層を有し、1つのマイクロウェルに1つの生体細胞のみを収容する形状と寸法を有し、マイクロウェルの底面に磁性膜を有し、磁性膜以外の磁性部材を有さず、磁性膜の表面およびマイクロウェル層の表面は、遮光膜およびシリカ膜またはパリレン膜からなる多層膜を有する、マイクロウェルアレイチップ。このマイクロウェルアレイのマイクロウェルに検体細胞を収容し、目的細胞を回収する方法。
【選択図】なし
Description
本発明のマイクロウェルアレイチップは、基板の少なくとも一方の主表面にマイクロウェル層を有し、
前記マイクロウェル層が有する複数のマイクロウェルは、1つのマイクロウェルに1つの生体細胞のみを収容する形状と寸法を有し、
前記マイクロウェルの底面の一部または全部に磁性膜を有し、前記磁性膜以外の磁性部材を有さず、
前記磁性膜の表面および前記マイクロウェル層の表面は、マイクロウェル層を構成する材料からの自家蛍光を抑える遮光膜およびシリカ膜またはパリレン膜からなる多層膜を有する。
本発明のマイクロウェルアレイチップは、基板の少なくとも一方の主表面にマイクロウェル層を有する。マイクロウェル層は複数のマイクロウェルを有し、かつ各マイクロウェルは、1つのマイクロウェルに1つの生体細胞のみを収容する形状と寸法を有する。
マイクロウェルは、その底面の一部または全部に磁性膜を有する。さらに、本発明のマイクロウェルアレイチップは、前記磁性膜以外の磁性部材を有さない。磁性膜形状は特に制限はない。図3に磁性膜形状の例を示す。円や多角形など様々な形状をとることができる。ウェル底面の形状に必ずしもあわせる必要はなく、膜のない領域を作成することで、主表面反対側からウェル内での反応を観察することも可能である。
磁性膜の表面およびマイクロウェル層の表面は、マイクロウェル層を構成する材料からの自家蛍光を抑える遮光膜およびシリカ膜またはパリレン膜からなる多層膜を有する。
(1) ガラス基板の主表面上に下地電極を蒸着あるいはめっきなどにより形成する。下地電極は、クロム、ニッケルなどの金属、あるいはITO、ZnOなどの透明電極材料あるいはポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子膜などの透明電極材料などガラスと密着性のよい材料を選択する。
(2) 感光性樹脂例えば東京応化工業株式会社ネガレジストPMER N-CA3000PMなどをスピンコートなどにより塗布する。
(3) この感光性樹脂をフォトリソグラフィにてマイクロウェルを形成する。対応する樹脂があれば、ナノインプリント技術を用いて形成しても同じ結果が得られる。
(4) マイクロウェルから露出した下地電極上に電気めっきなどにて、磁性膜を成膜する。磁性膜は、例えばニッケル膜であり、スルファミン酸ニッケル浴などによって形成する。
(5) スパッタ法などにより、シリコンを成膜、その後シリカ膜を成膜する。あるいはシリコンを成膜、パリレン膜を成膜する。膜厚は、それぞれ0.1ミクロン以上であり、用途、樹脂材料により適宜設定できる。
(6) 酸素プラズマクリーニング、オゾン水洗浄、過酸化水素水洗浄、UVオゾン洗浄などにより、表面を清浄化する。このとき、表面に親水基が高密度で存在できるよる配慮する。
(7) 疎水化処理剤、例えばシランカップリング剤に表面を暴露することで、チップ表面を疎水化する。シランカップリング剤は、例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を選択することができる。
[電気めっき方法]
Ni-P、Ni-B、Co-Ni-P、Co-P系合金、Ni-Fe系合金、Co-Ni-Fe系合金などの電気めっき膜は、磁気特性としては強磁性をしめす。しかしリンを含む例えば8%以上のニッケルめっき膜は、非磁性であり、磁性を発生させるためには熱処理などが必要となるため本発明には最適な手法ではない。
A) サンプルを脱脂処理する。
B) スルファミン酸ニッケル浴を約50℃に暖め、陽極としてニッケル板、陰極として発明品サンプルを浴内に浸漬させる。
C) 約1〜100mAの電流を電極間に10秒から60分程度流す。
D) サンプルを浴から取り出し、水で洗浄を行う。
E) めっき厚は、0.5ミクロンから5ミクロンであり、好ましくは1ミクロンから3ミクロンの間とする。
ニッケル電気めっき法には、他にワット浴なども使用される。
無電解めっきによっても磁性膜が形成可能である。例えばNi-P、Ni-B、Co-Ni-P、Co-P系合金、Ni-Fe系合金、Co-Ni-Fe系合金などが挙げられる。Ni-Pの場合、Pの含有量が8%以上では析出状態では非磁性となってしまう。ただし、300℃以上の熱処理を行うと高いPの含有においても磁化される。無電解ニッケルめっき膜は、例えば硫酸ニッケルと次亜リン酸ナトリウムの浴で作製することが可能である。無電解めっきによるとガラスや樹脂基板に直接めっきを行うことが可能である。
反射防止膜は、前述のように下地電極または磁性膜の表面において入射光に対し生じる反射光を軽減し、透過率を向上させる目的で利用される。反射防止膜の形成は、下地電極面上に設ける場合には、上記工程(1)と(2)の間に行う。この場合、下地電極となるクロム膜上に形成される酸化クロム膜が反射防止膜となる。クロム膜と酸化クロム膜はスパッタ蒸着などによって形成されるが、単層のクロム膜を425℃の空気雰囲気中で2時間熱処理することで酸化クロム膜を形成する方法を選択できる。
パリレンはパラキシレンの重合体であるポリパラキシリレンである。パリレン膜は、原料であるジパラキリレレンモノマーを蒸発させ、それをさらに熱分解によってラジカルパラキシリレンを生成し、目的のサンプル上でポリパラキシリレンの重合膜として形成される。本材料の特徴として、コンフォーマルな成膜が可能で、ピンホールもなく、疎水性の表面をもつことなどがある。0.2〜1ミクロン程度の膜を形成することで十分な性能が得られる。医療機器に利用される際に問題となる生体への毒性はほとんどなく、アメリカ薬局方(USP)によって定義されているUSPプラスチック・クラスVI試験の生物学的用件を満たしている。表面が疎水性であることから、タンパクとの結合性も良好で、抗体などの結合性能も優れている。本発明においても、蛍光標識付抗体によって、その結合能を確認した。
シリカとは、金属シリコンと酸素が結合した二酸化ケイ素あるいは、それを主成分に構成される材料のことである。成膜は、スパッタ蒸着、ポリシラザンなどを用いるコーティングなどにより行われる。スパッタ蒸着では、おもにSiO2ターゲットを利用して成膜する方法がとられる。またポリシラザンは、例えばクラリアント社アクアミカがあり、溶液中のパーヒドロポリシラザンが空気中の水分と反応してシリカガラスに転化する。
本発明は上記本発明のマイクロウェルアレイの少なくとも一部のマイクロウェルに、検体細胞を収容する方法を包含する。この方法は、
前記検体細胞に磁気ビーズを取り付ける工程、および
磁気ビーズを取り付けた検体細胞をマイクロウェルアレイチップのマイクロウェル層の表面に供給して、1つのマイクロウェルに1つの細胞を収容する工程、
を含む。
本発明は、上記方法でマイクロウェルに収容した目的細胞を特定し、特定した目的細胞をウェルから回収することを含む目的細胞の回収方法も包含する。
前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で細胞を培養し、
培養液を除去した後に、検体細胞に含まれる目的細胞によって産生される物質に特異的に結合する標識物質、又は、目的細胞によって産生される物質と結合性を有する物質の被覆層に特異的に結合する標識物質を、前記被覆層に供給し、
前記被覆層の物質に結合した、目的細胞によって産生された物質を、前記標識物質により検出して、目的細胞を特定することにより、目的細胞をスクリーニングする。
磁性膜を磁界から外し、マイクロマニピュレータによりガラスキャピラリ内に目的細胞を緩衝液または培養液と共に吸引し、任意の容器へ吐出することにより回収できる。
図7に製造方法例を示す。
(1) 基板、例えばガラス基板7aの主表面上に下地電極7bを蒸着あるいは無電解めっきなどにより形成する。下地電極は、クロム、ニッケルなどガラスと密着性のよい材料を選択する。また、非磁性材料であることが好ましい。
(2) 感光性樹脂7c例えば東京応化工業株式会社ネガレジストPMER N-CA3000PMなどを下地電極7b上にスピンコートなどにより塗布する。この感光性樹脂7cにフォトリソグラフィにてマイクロウェル7dを形成する。あるいは、ナノインプリント技術を用いて形成しても同じ結果が得られる。
(3) 電気めっき法によりマイクロウェル7dの底に露出した下地電極7bに磁性膜7eを作製する。磁性膜は、例えばニッケル膜であり、スルファミン酸ニッケル浴などによって形成する。
(4) スパッタ法などにより、シリコン膜7fを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。また、シリコン膜の代わりにステンレス鋼、チタン、チタン合金、アパタイトなども選択できるが、生体への毒性のないものであれば本発明において遮光膜材料が限定されないことはもちろんのことである。
(5) シリコン膜8f上にスパッタ法などによりシリカ膜7gを成膜する。あるいはパリレン膜8gを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。
(6) シリカ膜7gは、酸素プラズマクリーニング、オゾン水洗浄、過酸化水素水洗浄、UVオゾン洗浄などにより、表面を清浄化する。このとき、表面に親水基が高密度で存在できるよう配慮する。パリレン膜7gの場合、本作業および(7)作業は必要としない。
(7) 疎水化処理剤、例えばシランカップリング剤に表面を暴露することで、チップ表面を疎水化する。シランカップリング剤は、例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を選択することができる。
図8に製造方法例を示す。
(1) 基板、例えばガラス基板8aの主表面上に下地電極8bを蒸着あるいは無電解めっきなどにより形成する。下地電極は、クロム、ニッケルなどガラスと密着性のよい材料を選択する。また、非磁性材料であることが好ましい。さらに、反射防止膜8cを形成する。反射防止膜8cは、下地電極8bが例えばクロムであった場合、酸化処理を行うことで形成される。また、日産化学工業株式会社反射防止コーティング剤XHRiCを塗布してもよい。
(2) 感光性樹脂8c例えば東京応化工業株式会社ネガレジストPMER N-CA3000PMなどを反射防止膜8c上にスピンコートなどにより塗布する。この感光性樹脂9cをフォトリソグラフィにてマイクロウェル8dを形成する。あるいは、ナノインプリント技術を用いて形成しても同じ結果が得られる。
(3) 電気めっき法によりマイクロウェル8dの底に露出した下地電極8bに磁性膜8eを作製する。磁性膜は、例えばニッケル膜であり、スルファミン酸ニッケル浴などによって形成する。
(4) スパッタ法などにより、シリコン膜8fを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途、樹脂材料により適宜設定できる。また、シリコン膜の代わりにステンレス鋼、チタン、チタン合金、アパタイト、光学的遮光膜なども選択できるが、生体への毒性のないものであれば本発明において遮光膜材料が限定されないことはもちろんのことである。
(5) シリコン膜8f上にスパッタ法などによりシリカ膜8gを成膜する。あるいはパリレン膜8gを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。
(6) シリカ膜8gは、酸素プラズマクリーニング、オゾン水洗浄、過酸化水素水洗浄、UVオゾン洗浄などにより、表面を清浄化する。このとき、表面に親水基が高密度で存在できるよう配慮する。パリレン膜8gの場合、本作業および(7)作業は必要としない。
(7) 疎水化処理剤、例えばシランカップリング剤に表面を暴露することで、チップ表面を疎水化する。シランカップリング剤は、例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を選択することができる。
図9に製造方法例を示す。
(1) 基板、例えばガラス基板9aの主表面上に下地電極9bを蒸着あるいは無電解めっきなどにより形成する。下地電極9bは、クロム、ニッケルなど金属材料やITOなどの透明電極材料などのガラスと密着性のよい材料を選択する。また、非磁性材料であることが好ましい。
(2) 感光性樹脂9c例えば東京応化工業株式会社ポジレジストOFPR-800などを下地電極9b上にスピンコートなどにより塗布する。この感光性樹脂9cをフォトリソグラフィにて所望の磁性膜パターンと同形に形成する。
(3) 電気めっき法により感光性樹脂9cの底に露出した下地電極9bに磁性膜9dを作製する。磁性膜は、例えばニッケル膜であり、スルファミン酸ニッケル浴などによって形成する。
(4) 感光性樹脂9cを有機溶剤などで除去し、さらに磁性膜9dより露出した下地電極9bをエッチングによって除去する。なお、下地電極が透明電極の場合はこのエッチング作業は不要である。
(5) 感光性樹脂9e例えば東京応化工業株式会社ネガレジストPMER N-CA3000PMや東レ・ダウコーニング株式会社WL-5351に代表される感光性PDMS樹脂などを基板主表面にスピンコートなどにより塗布する。
(6) 感光性樹脂9eをガラス基板9a裏面より露光を行い、マイクロウェル9fを形成する。
(7) スパッタ法などにより、シリコン膜9gを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。また、シリコン膜の代わりにステンレス鋼、チタン、チタン合金、アパタイト、光学的遮光膜なども選択できるが、生体への毒性のないものであれば本発明において遮光膜材料が限定されないことはもちろんのことである。
(8) シリコン膜9g上にスパッタ法などによりシリカ膜9hを成膜する。あるいはパリレン膜9hを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。
(9)シリカ膜9hは、酸素プラズマクリーニング、オゾン水洗浄、過酸化水素水洗浄、UVオゾン洗浄などにより、表面を清浄化する。このとき、表面に親水基が高密度で存在できるよう配慮する。パリレン膜9hの場合、本作業および(10)の作業は必要としない。
(10)疎水化処理剤、例えばシランカップリング剤にマイクロウェルアレイチップ表面を暴露することで、チップ表面を疎水化する。シランカップリング剤は、例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を選択することができる。
図10にナノインプリント技術を用いた製法例を示す。
(1) 基板、例えばガラス基板10aの主表面上に下地電極10bを蒸着あるいは無電解めっきなどにより形成する。下地電極は、クロム、ニッケルなど金属材料やITOなどの透明電極材料などのガラスと密着性のよい材料を選択する。また、非磁性材料であることが好ましい。
(2) 感光性樹脂10c例えば東洋合成工業株式会社PAK-1などを下地電極10b上にスピンコートなどにより塗布する。熱可塑性樹脂を選択することも可能である。
(3) 感光性樹脂10cをナノインプリント技術にてマイクロウェル10dを形成する。このときマイクロウェル10dの底に残膜が発生するため、ドライエッチングなどにより除去する必要がある。
(4) 電気めっき法によりマイクロウェル10dの底に露出した下地電極10bに磁性膜10eを作製する。磁性膜は、例えばニッケル膜であり、スルファミン酸ニッケル浴などによって形成する。
(5) スパッタ法などにより、シリコン膜10fを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途、樹脂材料により適宜設定できる。また、シリコン膜の代わりにステンレス鋼、チタン、チタン合金、アパタイト、光学的遮光膜なども選択できるが、生体への毒性のないものであれば本発明において遮光膜材料が限定されないことはもちろんのことである。
(6) シリコン膜10f上にスパッタ法などによりシリカ膜10gを成膜する。あるいはパリレン膜10gを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。
(7) シリカ膜10gは、酸素プラズマクリーニング、オゾン水洗浄、過酸化水素水洗浄、UVオゾン洗浄などにより、表面を清浄化する。このとき、表面に親水基が高密度で存在できるよう配慮する。パリレン膜10gの場合、本作業および(8)作業は必要としない。
(8) 疎水化処理剤、例えばシランカップリング剤に表面を暴露することで、チップ表面を疎水化する。シランカップリング剤は、例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を選択することができる。
図11に製造方法例を示す。
(1) 基板、例えばガラス基板11aの主表面上に感光性樹脂11bをスピンコートなどにより形成する。感光性樹脂11bは、例えば東京応化工業株式会社ネガレジストPMER N-CA3000PMなどが挙げられる。
(2) 感光性樹脂11bをフォトリソグラフィにてマイクロウェル11cに形成する。あるいは、ナノインプリント技術を用いて形成しても同じ結果が得られる。
(3) 無電解めっき法によりマイクロウェル11cの底に露出した基板11a表面に磁性膜11dを作製する。磁性膜は、例えばニッケル膜であり、Ni-P、Ni-B、Co-Ni-P、Co-P系合金、Ni-Fe系合金、Co-Ni-Fe系合金などが挙げられる。
(4) スパッタ法などにより、シリコン膜11eを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途、樹脂材料により適宜設定できるまた、シリコン膜の代わりにステンレス鋼、チタン、チタン合金、アパタイト、光学的遮光膜なども選択できるが、生体への毒性のないものであれば本発明において遮光膜材料が限定されないことはもちろんのことである。
(5) シリコン膜11e上にスパッタ法などによりシリカ膜11fを成膜する。あるいはパリレン膜11fを成膜する。膜厚は、0.1ミクロン以上であり、用途により適宜設定できる。
(6) シリカ膜11fは、酸素プラズマクリーニング、オゾン水洗浄、過酸化水素水洗浄、UVオゾン洗浄などにより、表面を清浄化する。このとき、表面に親水基が高密度で存在できるよう配慮する。パリレン膜11fの場合、本作業および(7)作業は必要としない。
(7) 疎水化処理剤、例えばシランカップリング剤にマイクロウェルアレイチップ表面を暴露することで、チップ表面を疎水化する。シランカップリング剤は、例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を選択することができる。
磁性膜の効果の確認
(1)磁気ビーズによる細胞の標識
2x106個のマウスBリンパ球に終濃度5μg/mLのビオチン化抗マウスB220抗体を添加して4℃で15分間静置した。PBSで2回洗浄し、不要な抗体を除去した。次に、表面がビオチン化されたマウスBリンパ球に5μLのストレプトアビジンが固定化された直径250nmの磁気ビーズ(Micromod社、粒子度2.5〜3.0 g/cm3)を添加して室温で30分間転倒混和した。さらに、生細胞の蛍光染色剤であるCellTrace Oregon Green 488(invitrogen社)を終濃度1μg/mLで添加して室温で5分間静置し、細胞を蛍光染色した。PBSで2回洗浄し、不要な蛍光染色剤を除去して、磁気標識および蛍光染色されたマウスBリンパ球を得た。
本発明によるマイクロウェルアレイチップは磁性膜のあるもの(実施例2)とないもの(実施例2より磁性膜形成を省いたもの)を用意した。マイクロウェルの寸法は、開口径10ミクロン、深さ12ミクロンである。表面をブロッキングするため、PBSで1/500希釈したLipidure-BL203(5wt%、日本油脂株式会社)を添加した。真空ポンプを利用して減圧することによりチップ表面およびマイクロウェル内に溶液を満たした後、室温で15分間静置した。PBSで洗浄し、余分なブロッキング剤を除去した。各マイクロウェルアレイチップをネオジム磁石(磁束密度500mT)の上に設置し、ウェル数と同数の(1)の細胞を添加して2分間静置した。蛍光顕微鏡(オリンパス株式会社)にてOregon Green 488の蛍光を観察した。
結果、図12に示すように、磁性膜がない場合、細胞は散在しているが、磁性膜がある場合、細胞は整然と並んでおりマイクロウェル内に強制的に収容されていることが確認できた。
細胞利用率の比較
(1)磁気ビーズによる細胞の標識
ヒト末梢血Bリンパ球をサイトカイン等により刺激し、抗体を分泌するよう分化させた細胞にビオチン化抗ヒトCD38抗体(Milteny Biotec社)を結合させた。次に、細胞表面がビオチン標識されたヒトBリンパ球にストレプトアビジンが固定された直径250nmの磁気ビーズを5μL添加して室温で30分間転倒混和した。さらに、生細胞の蛍光染色剤であるCellTrace Oregon Green 488を終濃度1μg/mLで添加して室温で5分間静置し、細胞を蛍光染色した。PBSで2回洗浄し、不要な蛍光染色剤を除去して、磁気標識および蛍光染色されたヒトBリンパ球を得た。
(2)細胞の収容
シリコン製のマイクロウェルアレイチップ(開口径15ミクロン、深さ17ミクロン)と本発明によるマイクロウェルアレイチップ(実施例2による:開口径15ミクロン、深さ17ミクロン)の表面をブロッキングするため、PBSで1/500希釈したLipidure-BL203を添加した。真空ポンプを利用して減圧することによりチップ表面およびマイクロウェル内に溶液を満たした後、室温で15分間静置した。PBSで洗浄し、余分なブロッキング剤を除去した。シリコン製のマイクロウェルアレイチップにはウェル数の4倍の磁気標識していないヒトリンパ球細胞を添加し、5分間静置した。さらにピペットにより穏やかに撹拌し、5分間静置することを2回繰り返した。本発明によるマイクロウェルアレイチップはネオジム磁石の上に設置し、ウェル数の0.65倍の(1)の細胞を添加して2分間静置した。さらにピペットにより穏やかに撹拌し、2分間静置することを2回繰り返した。次に、各マイクロウェルアレイチップのウェルに収容されなかった余分な細胞をPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡にてOregon Green 488蛍光を観察した。
図13にウェル数25x25個の4つクラスタに細胞が収容された様子と各クラスタへの細胞の収容率を示した。結果、細胞の収容率は、シリコン製マイクロウェルアレイチップでは平均50.2%、本発明によるマイクロウェルアレイチップでは平均66.6%であった。さらに、使用した細胞数に対する収容された細胞数の割合を利用率と定義して算出すると、シリコン製マイクロウェルアレイチップでは平均11.8%、本発明によるマイクロウェルアレイチップでは平均92.7%であった。本発明では使用した細胞のほとんどをマイクロウェルに収容できることが確認できた。
分泌IgG抗体の検出像の比較
(1)磁気ビーズによる細胞の標識
ヒト末梢血Bリンパ球をサイトカイン等により刺激し、抗体を分泌するよう分化させた細胞にビオチン化抗ヒトCD38抗体を結合させた。次に、細胞表面がビオチン標識された2x106個のヒトBリンパ球にストレプトアビジンが固定された直径250nmの磁気ビーズを5μL添加して室温で30分間転倒混和した。さらに、細胞表面の膜型IgG抗体をブロッキングするため、ヤギ抗ヒトIgG抗体(Cappel社)を終濃度10μg/mLで添加して4℃で15分間静置した。PBSで2回洗浄し、不要な抗体を除去して、磁気標識されたヒトBリンパ球を得た。
PBSで希釈した10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG抗体をシリコン製のマイクロウェルアレイチップ(開口径15ミクロン、深さ17ミクロン)と本発明によるマイクロウェルアレイチップ(実施例2による:開口径15ミクロン、深さ17ミクロン)の表面に添加し、室温で2時間静置して表面にヒトIgG抗体を捕捉するための抗体をコートした。次に、表面をブロッキングするため、PBSで1/500希釈したLipidure-BL203を添加した。真空ポンプを利用して減圧することによりチップ表面およびマイクロウェル内に溶液を満たした後、室温で15分間静置した。10%FBSを含むRPMI1640培地で洗浄し、余分なブロッキング剤を除去した。シリコン製のマイクロウェルアレイチップと本発明によるマイクロウェルアレイチップに(1)の細胞をそれぞれ重力沈降と磁気吸引により収容した後、ウェルに収容されなかった余分な細胞を、10%FBSを含むRPMI1640培地で洗浄した。
(2)の各マイクロアレイチップに10%FBSを含むRPMI1640培地を満たし、37℃、5%CO2のインキュベーター内で3時間静置した。この間、磁界はかけていない。培養終了後、培地を除去してPBSで洗浄した。細胞から分泌され、表面に捕捉されたヒトIgG抗体を検出するため、PBSで1/1000希釈したCy3標識抗ヒトIgG抗体(Chemicon社)を添加し、室温で30分間静置した。余分な蛍光標識抗体をPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡にてCy3蛍光を観察した。
結果、図14に示すように検出像に差異はなく、本発明ではシリコン製のマイクロウェルアレイチップと同様に特定の物質を分泌する細胞をスクリーニングできることが確認できた。
抗原特異的IgG抗体分泌細胞の取得
(1)磁気ビーズによる細胞の標識
ヒト末梢血Bリンパ球をサイトカイン等により刺激し、抗体を分泌するよう分化させた細胞にビオチン化抗ヒトCD38抗体を結合させた。次に、細胞表面がビオチン標識されたヒトBリンパ球に5μLのストレプトアビジンが固定された直径250nmの磁気ビーズを添加して室温で30分間転倒混和した。さらに、細胞表面の膜型抗体をブロッキングするため、ヤギ抗ヒトIgG抗体(Cappel社)を終濃度10μg/mLで添加して4℃で15分間静置した。PBSで2回洗浄し、不要な抗体を除去して、磁気標識されたヒトBリンパ球を得た。
PBSで希釈した10μg/mLのインフルエンザウイルスHA抗原(Sino Biological社)をシリコン製のマイクロウェルアレイチップ(開口径15ミクロン、深さ17ミクロン)と本発明によるマイクロウェルアレイチップ(実施例2による:開口径15ミクロン、深さ17ミクロン)の表面に添加し、室温で2時間静置して表面に抗原をコートした。次に、表面をブロッキングするため、PBSで1/500希釈したLipidure-BL203を添加した。真空ポンプを利用して減圧することによりチップ表面およびマイクロウェル内に溶液を満たした後、室温で15分間静置した。10%FBSを含むRPMI1640培地で洗浄し、余分なブロッキング剤を除去した。ネオジム磁石上に設置した本発明によるマイクロウェルアレイチップに(1)の細胞を添加し、磁気吸引により収容した後、ウェルに収容されなかった余分な細胞を、10%FBSを含むRPMI1640培地で洗浄した。
(2)の各マイクロアレイチップに10%FBSを含むRPMI1640培地を満たし、37℃、5%CO2のインキュベーター内で3時間静置した。この間、磁界はかけていない。培養終了後、培地を除去してPBSで洗浄した。細胞から分泌され、表面にコートされた抗原に結合した抗原特異的なIgG抗体を検出するため、PBSで1/1000希釈したCy3標識抗ヒトIgG抗体を添加し、室温で30分間静置した。余分な蛍光標識抗体をPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡にてCy3蛍光を観察した。
蛍光顕微鏡下でHA抗原特異的IgG抗体のCy3蛍光および生細胞のOregon Green 488蛍光を観察し、マイクロマニピュレーター(eppendorf)により目的の抗体分泌細胞を回収した。細胞回収前後の様子を図15に示した。Cy3蛍光は赤色で、Oregon Green 488蛍光は緑色で表示した。細胞を回収したウェルに矢印をつけた。
(5)抗体の発現
回収した細胞からRT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)により抗体遺伝子可変領域を増幅し、抗体遺伝子定常領域を含む発現ベクターに組込んだ。CHO-S細胞(invitrogen社)に抗体遺伝子を導入し、培養上清に発現した抗体がHA抗原に結合するIgG抗体であるかELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)によって検査した。ヒトIgG抗体の検出はペルオキシダーゼ標識抗体によって行い、ペルオキシダーゼの発色基質はOPD(o-phenylenediamine dihydrochloride,測定波長492nm)を使用した。
図16Aに培養上清中のヒトIgG抗体を定量したELISAの結果を、図16BにHA抗原に結合した培養上清中のIgG抗体を検出したELISAの結果を示した。取得した抗体がHA抗原に特異的に結合する抗体であることが確認できた。
Claims (12)
- 基板の少なくとも一方の主表面にマイクロウェル層を有し、
前記マイクロウェル層が有する複数のマイクロウェルは、1つのマイクロウェルに1つの生体細胞のみを収容する形状と寸法を有し、
前記マイクロウェルの底面の一部または全部に磁性膜を有し、前記磁性膜以外の磁性部材を有さず、
前記磁性膜の表面および前記マイクロウェル層の表面は、マイクロウェル層を構成する材料からの自家蛍光を抑える遮光膜およびシリカ膜またはパリレン膜からなる多層膜を有する、マイクロウェルアレイチップ。 - 前記マイクロウェル層は感光性樹脂または熱可塑性樹脂からなる、請求項1に記載のマイクロウェルアレイチップ。
- 前記基板と前記マイクロウェル層との間に下地電極層を有する1または2に記載のマイクロウェルアレイチップ。
- 前記下地電極層は透明電極材料からなる請求項3に記載のマイクロウェルアレイチップ。
- 前記下地電極と前記マイクロウェル層との間に反射防止膜を有する請求項3または4に記載のマイクロウェルアレイチップ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロウェルアレイの少なくとも一部のマイクロウェルに、検体細胞を収容する方法であって、
前記検体細胞に磁気ビーズを取り付ける工程、および
磁気ビーズを取り付けた検体細胞をマイクロウェルアレイチップのマイクロウェル層の表面に供給して、1つのマイクロウェルに1つの細胞を収容する工程、
を含む、前記方法。 - 細胞のマイクロウェルへの収容は、基板底部側から外部磁石で磁気ビーズを吸引することで促進する請求項6に記載の方法。
- 前記検体細胞が免疫細胞、ガン細胞、ハイブリドーマ、または細胞株である請求項6または7に記載の方法。
- 前記検体細胞が抗原特異的リンパ球を含む請求項6または7に記載の方法。
- 請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法でマイクロウェルに収容した細胞の中から目的細胞を特定し、特定した目的細胞をウェルから回収することを含む目的細胞の回収方法。
- 目的細胞が、抗原特異的抗体分泌細胞である請求項10に記載の回収方法。
- 目的細胞が、特異的免疫グロブリン産生細胞または特異的サイトカイン産生細胞である請求項10または11に記載の回収方法。
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