JP4948277B2 - コネクティングロッド - Google Patents

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本発明はコネクティングロッドに関し、特に、長手方向の一端部近傍にピストンが接続されるとともに、長手方向の他端部近傍にクランク軸が接続されるコネクティングロッドに関する。
自動車等に搭載される内燃機関(エンジン)においては、混合気を燃焼させて得られる熱エネルギによりピストンを往復動させて、このピストンの往復動をコネクティングロッド(コンロッド)と呼ばれる部材を介して、クランク軸の回転運動に変換する機構が採用されている。
この種のエンジンでは、ピストンの温度上昇を極力抑制する必要がある。最近においては、ピストンの温度上昇を抑制するものとして、例えば、コンロッドの小端部からピストンの一部にオイルを噴射することにより、ピストンを直接冷却するという技術の提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、コンロッドには長期的な耐久性が要求されるため、コンロッドの強度をなお一層向上するためのものとして、コンロッド本体に繊維強化材を埋設する技術の提案がなされている(特許文献3参照)
特開平9−004463号公報 特開2006−104954号公報 特開平6−280849号公報
上記ピストンを直接冷却する技術としては、例えば、図7(a)、図7(b)に示されるような構成を採用することができる。すなわち、図7(a)に示されるように、コンロッド本体の中央部にエンジンオイルが流通可能な油穴を形成しておき、この油穴を介して、クランク軸側(紙面下側)からピストン側(紙面上側)へエンジンオイルを供給すると、ピストン側に供給されたエンジンオイルの一部が、コンロッド本体の上端部からピストンに向けて噴射されるというものである。
しかしながら、このような構成を有するコンロッドでは、コンロッド本体の中央部に油穴が形成されているため、図7(a)のB−B線断面図である図7(b)に示されるように、油穴の周辺に、強度を確保するための補強部を設けておく必要がある。
したがって、この補強部の分だけ、コンロッド本体(コンロッド全体)の重量が増加することから、エンジンの出力低下や騒音悪化などが生じてしまうおそれがある。また、補強部を設けることにより、コンロッド本体の形状が複雑化するため、コンロッド本体の製造が難しくなり、製造コストの増大を引き起こす可能性がある。また、製造が難しくなることで、コンロッド間に製造バラツキが生じ、ひいては品質の低下を引き起こすおそれもある。
また、特許文献3に記載のように、コンロッド本体に強化用繊維を埋設する場合、コンロッド本体自体を熱に非常に強い樹脂(例えば、CFRP)などで構成する必要があるが、そのような樹脂は現段階では汎用品ではないため、入手が比較的困難であり、コンロッドの製造コストが向上するおそれがある。
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、形状を複雑化することなく強度を向上させるとともに、ピストンの冷却性能を向上させることが可能なコネクティングロッドを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のコネクティングロッドは、長手方向の一端部近傍にピストンが接続されるとともに、長手方向の他端部近傍にクランク軸が接続されるコネクティングロッドであって、前記クランク軸側から前記ピストン側にオイルを導く油穴が、前記長手方向にほぼ沿って形成されたコネクティングロッド本体と、前記長手方向にほぼ沿った方向に配向した状態で、前記コネクティングロッド本体の前記油穴を通過するオイルと接触するように前記油穴内部に設けられた炭素繊維強化金属と、を備えることを特徴とする。
これによれば、炭素繊維強化金属を、コネクティングロッド本体の長手方向にほぼ沿った方向に配向した状態で設けることから、コネクティングロッド本体の座屈強度向上を図ることが可能となる。また、コネクティングロッド本体の油穴近傍に従来のように補強部を設ける必要が無いため、コネクティングロッド全体の軽量化、簡略化を図ることが可能となる。更に、炭素繊維強化金属は、高熱伝導特性を有しているため、油穴近傍の温度の低下、ひいては、油穴を通過するオイルの温度の低下を実現することができる。これにより、ピストンとの間の潤滑が改善されるので、磨耗を抑制することができる。また、温度の低下したオイルを用いてピストンの冷却を行うことで、効果的な冷却を実現できる。すなわち、本発明のコネクティングロッドによれば、コネクティングロッド本体の形状を複雑化することなく強度を向上させるとともに、ピストンの冷却性能を向上させることが可能となる。
この場合において、前記炭素繊維強化金属は、CFRMであることとすることができる。
また、本発明では、前記炭素繊維強化金属は、前記コネクティングロッド本体の前記油穴の中心部近傍において束ねられた状態で設けられていることとすることができる。かかる場合には、炭素繊維強化金属を束ねることで、炭素繊維強化金属全体の強度を向上させることが可能となる。
また、本発明では、前記炭素繊維強化金属は、前記コネクティングロッド本体の前記油穴を形成する周部近傍に配置されていることとすることができる。かかる場合には、油穴の外周部に対して炭素繊維強化金属を固定することができるので、製造が容易となる。
また、本発明では、前記炭素繊維強化金属は、前記コネクティングロッド本体の前記油穴全体に、前記オイルが通過可能な程度の粗密度で設けられていることとすることができる。かかる場合には、炭素繊維強化金属のオイルとの接触面積を大きくすることができるので、オイルを効果的に冷却することが可能となる。
本発明によれば、形状を複雑化することなく強度を向上することができるとともに、ピストンの冷却性能を向上することが可能なコネクティングロッドを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
図1には、内燃機関100のうちの、シリンダブロック10、ピストン20近傍が示されている。この図1に示されるように、内燃機関100のシリンダブロック10のシリンダ10a内には、ピストン20が上下方向に摺動可能に設けられている。また、このピストン20には、コネクティングロッド(以下、「コンロッド」と呼ぶ)30の上端部が連結されており、コンロッド30の下端部には、クランク軸22が連結されている。これについて具体的に説明すると、ピストン20には、図1の紙面直交方向を長手方向とするピストンピン21が設けられており、コンロッド30の上端部近傍には、ピストンピン21の径よりも一回り大きい径を有する小端穴32a(図2参照)が形成されているので、コンロッド30とピストン20とは、小端穴32aにピストンピン21が挿入された状態で連結されている。また、クランク軸22には、図1の紙面直交方向を長手方向とするクランクピン22aが設けられており、コンロッド30の下端部近傍には、クランクピン22aの径よりも一回り大きい径を有する大端穴32bが形成されているので、コンロッド30とクランク軸22とは、大端穴32bにクランクピン22aが挿入された状態で連結されている。
図2には、図1のコンロッド30を取り出した状態が示されている。この図2に示されるように、コンロッド30は、図2の上下方向を長手方向とするコンロッド本体(コラム)34と、このコンロッド本体34の下端部に対して、複数本のコンロッドボルト36により取り付けられたキャップ38と、を備えている。このうち、キャップ38が結合された側の端部に大端穴51が形成された状態となっている。コンロッド本体34及びキャップ38は、例えば、クロムモリブデン鋼や炭素鋼などを材料として製造される。
コンロッド本体34には、エンジンオイルを流通させるための油穴34aが、大端穴32bから小端穴32aにかけて、かつ、コンロッド本体34の長手方向に沿った状態で貫通形成されている。この油穴34aの一端(下端)は、大端穴32bの内周面に開口する大端側油口35aとされ、他端は、小端穴32aの内周面に開口する小端側油口35bとされている。また、コンロッド本体34の上端部には、コンロッド本体34の長手方向に対して所定角度をなす方向に沿って、オイルジェット34b,34cが形成されている。
このように構成されるコンロッド本体34では、不図示のオイルポンプから送られたエンジンオイルが、図3に示されるように、油穴34aを下側から上側に向けて流通する。そして、そのエンジンオイルは、コンロッド本体34の小端穴32aとピストンピン21との間の隙間を通過した後、オイルジェット34b,34cのそれぞれから、ピストン20(ピストン20の下面)に向けて噴射されるようになっている。
ところで、コンロッド本体34の小端穴32aと大端穴32bの間の部分は、図2のA−A線断面図である図4から分かるように、断面略H字状の形状を有している。また、コンロッド本体34の中心部に形成された油穴34a内部には、例えば断面の直径が10μm程度のCFRM(Carbon Fiber Reinforced Metals)を約2000本束ねて棒状にしたCFRM束50が、油穴34aの長手方向に関して配向した状態で設けられている。このCFRM束50は、油穴34aの内周面に対して所定間隔をあけた状態で設けられている。
ここで、CFRMは、例えば、エポキシ樹脂を含浸させ、平板状にし(これを、プリプレグと呼ぶ)、アルミ、チタンなどの軽金属をコアにして巻き付けることにより製造される強化金属である。このCFRMは、高強度、高弾性、高張力の性質を有するとともに、その長手方向(配向方向)に関しては、高熱伝導性(例えば、熱伝導率500〜900W/(m・K))を有している。
本実施形態では、コンロッド本体34の油穴34a内にCFRM束50が設けられていることにより、CFRM束50の高強度性を利用して、コンロッド本体34の座屈強度を向上させることが可能であるとともに、CFRM束50の高熱伝導性を利用して、油穴34a近傍及びこの油穴34aを通過するエンジンオイルの温度を低下させることが可能となっている。
以上のように構成される内燃機関100では、ピストン20の上方の空間で、ガソリンと空気の混合気が爆発すると、ピストンがシリンダ10a内で上下運動し、この上下運動が、コンロッド30を介してクランク軸22に伝達されることにより、回転運動に変換される。自動車などでは、この内燃機関100で発生した回転力を駆動力として用いる。また、上記のような内燃機関100の動作が行われている間、ピストン20の温度が上昇しそうになっても、不図示のオイルポンプから供給されるエンジンオイルが、図3に矢印で示されるように、コンロッド34の油穴34a、小端穴32aとピストンピン21との間の隙間、及びオイルジェット34b,34cを介して、ピストン20のオイルジェット34b,34cと対向する部分に噴射されることで、ピストン20(ピストン20の下面)が冷却されるようになっている。
以上説明したように、本実施形態によると、CFRMを、コンロッド本体34の長手方向にほぼ沿った方向に配向した状態で設けることから、座屈強度を向上することができる。また、特に、本実施形態では、CFRMを束ねて棒状にしたCFRM束50を油穴34a内に設けているため、座屈強度を非常に高く設定することが可能である。これにより、従来のようにコンロッド本体34に補強部(図7参照)を設けずに、コンロッドの強度を向上することができるのでコンロッド本体34の小型、軽量化を図ることができる。
また、上記のようにコンロッド全体の軽量化を図ることができるので、内燃機関の出力の向上(特に高速域における出力向上)が可能であるとともに、慣性質量低減に伴う2次の加振力の低下により、騒音を低減することが可能である。
また、コンロッド本体の形状が簡素化されることにより、製造が容易となるので、製造コストの低減や、コンロッド30間の製造バラツキが低減されることによる品質の向上を図ることが可能である。また、CFRM束を設けるために、コンロッド本体34に、別途CFRM束用の挿入穴を形成する必要が無いことから、この点からもコンロッド本体34の製造が容易になる。
また、CFRM束50が油穴34aの長手方向に対して、高熱伝導特性を有していることから、コンロッド本体34の油穴34a付近の温度を低減することが可能であり、また、油穴34aを通過するエンジンオイルの温度を低下させることが可能である。これにより、小端穴32aに供給されるエンジンオイルの温度低下に伴い、ピストンピン21の潤滑が改善されるため、ピストンピン21と小端穴32aとの間の磨耗が抑制される。また、磨耗が抑制されることによりピストンピン21とコンロッド30の耐久性が向上するため、設計上、ピストンピン21の径の縮小及びコンロッド30の幅の短縮などを実現することが可能となる。したがって、この点からも騒音低減を図ることが可能となる。
また、ピストン20に噴出されるエンジンオイルの温度が低下するため、ピストン20の冷却が促進し、ひいては出力向上(高筒内圧化)を実現することが可能となる。更に、本実施形態による、油穴34a及び油穴34aを通過するエンジンオイルの温度の低下は、ピストン20などの冷却に必要とするエンジンオイルの量の低減にもつながるため、エンジンオイルの消費低減を図ることが可能であるとともに、油穴34aの径を、CFRM束50を設けた分だけ広げたりする必要もない。
なお、上記実施形態では、CFRMを束にして、図4に示されるように、油穴34aの中心部近傍に設けることとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図5に示されるように、油穴34aの内周面から所定幅の環状領域に、上記実施形態のCFRM束50よりも少ない本数のCFRMを束ねたCFRM束150を設けることとしても良い。この場合にも、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
また、これに限らず、図6に示されるように、上記実施形態のCFRM束50よりも少ない本数のCFRMを束ねたCFRM束250を、油穴34aの中に粗な状態で(エンジンオイルが油穴34a内を通過可能な程度の粗密度で)設けることとしても良い。この場合、CFRM束250とエンジンオイルとの接触面積が図4、図5の場合と比べて大きくなるので、エンジンオイルの冷却性能が向上する。この場合、例えば、所定の連結部材を用いてCFRM束250の一部同士を連結することにより、CFRM束250同士の位置関係を固定することとすれば良い。
なお、上記実施形態では、油穴34a内にCFRMを設けることとしたが、これに限られるものではなく、その他の炭素繊維強化複合体、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を束にして設けることとしても良い。このCFRPは、炭素繊維にエポキシ樹脂などの高分子材料を含浸した後、硬化させて成形した複合材料である。このCFRPも、CFRM同様、高強度、高熱伝導性を有しているので、CFRPを用いても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、CFRMとCFRMのいずれか一方に限らず、CFRMとCFRPの両方を適当な配分で用いることも可能である。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
内燃機関のシリンダブロック及びピストン近傍を取り出して示す図である。 図1からコンロッドを取り出して、一部断面して示す図である。 油穴及びオイルジェットの作用を説明するための図である。 図2のA−A線断面図である。 変形例に係るコンロッド本体の断面図(その1)である。 変形例に係るコンロッド本体の断面図(その2)である。 従来の技術を説明するための図である。
符号の説明
20 ピストン
22 クランク軸
30 コンロッド
34 コンロッド本体
34a 油穴
50 CFRM束

Claims (5)

  1. 長手方向の一端部近傍にピストンが接続されるとともに、長手方向の他端部近傍にクランク軸が接続されるコネクティングロッドであって、
    前記クランク軸側から前記ピストン側にオイルを導く油穴が、前記長手方向にほぼ沿って形成されたコネクティングロッド本体と、
    前記長手方向にほぼ沿った方向に配向した状態で、前記コネクティングロッド本体の前記油穴を通過するオイルと接触するように前記油穴内部に設けられた炭素繊維強化金属と、を備えるコネクティングロッド。
  2. 前記炭素繊維強化金属は、CFRMであることを特徴とする請求項1に記載のコネクティングロッド。
  3. 前記炭素繊維強化金属は、前記コネクティングロッド本体の前記油穴の中心部近傍において束ねられた状態で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクティングロッド。
  4. 前記炭素繊維強化金属は、前記コネクティングロッド本体の前記油穴を形成する周面近傍に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクティングロッド。
  5. 前記炭素繊維強化金属は、前記コネクティングロッド本体の前記油穴全体に、前記オイルが通過可能な程度の粗密度で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクティングロッド。
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