JP4948255B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
(1)外輪に係止されたシールリングの内径側外側面のうち、円周方向複数個所に、内輪のシール溝の内側面に向けて突出部を形成する(例えば特許文献1)。
(2)内輪に円環状のスリンガを固定する。このスリンガは、シールと転動体との間に配設され、その内周縁部が内輪の外径面に固定される(例えば特許文献2)。
(3)シールリップ形状の変更、およびラビリンスすきまを形成する(例えば特許文献3)。
(4)封入したグリース中に、不動態化酸化剤を添加する(例えば特許文献4)。
(5)例えば、ポリαオレフィン系合成油からなる潤滑基油とジウレア系増ちょう剤とからなるウレアグリースに、ビスマスジチオカーバメートを添加する(例えば特許文献5)。
上記保持器および上記グリース組成物を適用することにより、水素脆性がない状態で軸受が運転可能でかつ、グリース漏れもないため、封入したグリースの持つ潤滑寿命特性が十分に発揮される。さらに、グリース漏れによる、エンジン補機用ベルトへの浸食やすべりによる異音等の外部汚染問題も解消される。
さらに、保持器のポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくしたので、内輪肩部や内輪シール溝にグリースが付着し難くなる。このことは、特に外輪回転時に特徴的に現れる。これにより、シールが接触形、非接触形のいずれの場合にも、グリースの漏洩を防止できる。また、シールリップの緊迫力を強くする必要がないため、トルクが増大しない。その他第1の転がり軸受と同様の作用、効果を奏する。
この軸受は、内輪1と外輪2の軌道面1a,2aの間に、複数の転動体3を介在させ、これら転動体3を保持する後述する保持器4を設け、両側に軸受空間を密封する非接触形のシール部材5を設けたものである。転動体3は例えば玉からなり、この場合、軸受はシール付きの深溝玉軸受とされている。少なくとも前記転動体3の周囲に、本発明のグリース組成物Gsが封入される。
また、転がり軸受について、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる方法を鋭意検討の結果、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリース組成物を封入した転がり軸受を用いて、急加減速試験を行ったところ、軸受寿命を延長できることがわかった。
グリース組成物にアルミニウム系添加剤を配合することにより、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面においてアルミニウム化合物が反応し、酸化鉄と共にアルミニウム被膜が軸受転走面に生成することが、軸受転走面の表面分析の結果わかった。
この軸受転走面に生成した酸化鉄およびアルミニウム被膜が、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制して、水素脆性による特異な剥離を防止できるため、転がり軸受の寿命が延長するものと考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明において特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高いアルミニウム粉末である。
アルミニウム系添加剤の配合割合がこの配合範囲未満であると、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また、アルミニウム系添加剤の配合割合が上記配合範囲を超えても、剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
これらの中で、耐熱性と潤滑性に優れたアルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
上記ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリンアミン、オレインアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
ベースグリース100重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1重量部以上40重量部以下、好ましくは3重量部以上30重量部以下配合される。増ちょう剤の含有量が1重量部未満では増ちょう効果が少なくなり、増ちょう剤の含有量が40重量部を超えると、得られたベースグリースが硬くなり過ぎ、所期の効果が得られ難くなる。
実施例1〜実施例8
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1の通りである。
MDIを溶解した溶液を攪拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃以上120℃以下で30分間攪拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これにアルミニウム系添加剤および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えてさらに100℃以上120℃以下で10分間攪拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
得られたグリース組成物の急加減速試験を行った。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、急加減速試験を行った。この急加減速試験は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を1960N、回転速度は0rpm以上18000rpm以下で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に0.1Aの電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500時間で打ち切った。
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行って評価した。結果を表1に示す。
上記保持器4について、図2ないし図11と共に説明する。
この保持器4は、図2に斜視図で示すように、各玉を保持するポケット50を円周方向の複数箇所に有し、各ポケット50の内面を凹球面状としたリング状のものである。この保持器4は、図3に斜視図で示す環状体の保持器半体51の2個を、軸方向に対面して重ね合わせ、リベット孔52に挿通したリベット53で互いに接合して一体に構成される。これら保持器半体51は、内面がポケット50の半分を形成する部分的な球殻状の形状の球殻状板部50Aを複数有し、隣合うポケット50間の部分となる平板部51aと球殻状板部50Aとが円周方向に交互に並んだものとされる。前記球殻状板部50Aは、球殻の一部となる部分であり、換言すれば、内外両面が球面状となったカウンタシンク形状の膨らみ部分である。保持器半体51の軸方向の投影形状は、半径方向幅が全周に渡って一定のリング状である。
なお、この実施形態では凹み部54Aを2箇所としたが、3箇所以上としても良い。
ポケット50における内面形状は、球面状に限らず、玉配列ピッチ円PCDよりも内径側の部分が、保持器内径側開口縁に近づくに従って小径となる形状であれば良く、例えば玉配列ピッチ円PCDよりも外径側の部分が円筒面状、内径側の部分が円すい面状であっても良い。
このようにして得られた2つの保持器半体51を、図10(C)のように重ね合わせ、図10(D)のように保持器半体51の平板部51aが重なり合う部分をリベット53で接合して保持器4とする。
この実施形態では、上記したように、仕上げ押し工程に用いる凸側プレス金型56の半球状凸面に、ポケット50(球殻状板部50A)における凹み部54Aの内面を成形する凹み部成形用型部56aを部分的に形成しているので、仕上げ押し工程で凹み部54Aも同時に成形でき、製造工程を増やすことなく効率的に保持器4を製造できる。
図12および図13はこの実施形態(それぞれ図5の実施形態、および図6の実施形態)の保持器4を用いた玉軸受のグリース付着状態を示し、図14は一般的な鉄板打ち抜き保持器を用いた玉軸受のグリース付着状態を示す。
この実施形態にかかる転がり軸受の保持器4では、ポケット50の形状を上記したように従来例のものと異なるものとしたことにより、内輪肩部へのグリースの付着を無くすことができる。すなわち、玉に最もグリースが付着する位置である保持器内径側の開口縁に開口する凹み部を設けたため、グリースの掻き取りが生じる際の、玉の表面の掻き取りが減少し、保持器内径面に溜まるグリース量が減少する。
上記保持器4,59および上記グリース組成物を適用することにより、水素脆性がない状態で軸受が運転可能でかつ、グリース漏れもないため、封入したグリースの持つ潤滑寿命特性が十分に発揮される。さらに、グリース漏れによる、エンジン補機用ベルトへの浸食やすべりによる異音等の外部汚染問題も解消される。
この保持器4Aは、図1と共に前述した転がり軸受に用いられる保持器であって、玉3を保持するポケット50を円周方向の複数個所に有するリング状であり、2個の環状体の保持器半体51を軸方向に対面して重ね合わせてなる。これら保持器半体51は、それぞれ内面が前記各ポケットの半分を形成する球殻状板部50Aと、隣合うポケット50間の部分となる平板部51aとが円周方向に交互に並ぶ形状とされる。各保持器半体51は、金属板のプレス成形品(例えば鉄板打ち抜き品)であり、平板部51aに設けられたリベット孔52に挿通したリベット53により、2枚の保持器半体51が互いに接合して一体に構成される。以上の構成は、図2ないし図6に示す実施形態と同様である。
また、保持器4Aは、図17,図19に示すように、内輪1の軌道面1aの両側の肩部高さとなる外径面部1bに、軸方向に重なる範囲を持つ。
そこで、保持器4Aの内径部において、内輪1の肩部となる外径面部1bと軸方向に重なり合う範囲Wのみの板厚を薄くしており、これにより、実質上の保持器4Aの強度の低下が無く、かつグリース漏れを防止可能な玉軸受用保持器4Aが成立する。このように、軸受からグリースが漏れないので、軸受の長寿命化を図ることができる。また、漏れたグリースがベルト等に付着せず、ベルト鳴きの発生を未然に防止しベルトを痛めることがない。
保持器に使用される合成樹脂材料としては、例えばPA66、PA46等のポリアミド樹脂やポリフェニルサルファイド樹脂が好適であり、さらに必要に応じてグラスファイバ等の強化繊維材を混入してもよい。
また、2枚の環状部材64を結合して1個の保持器とする構成に限らず、鋼材から所定の形状に削り出すもみ抜き保持器としてもよく、あるいは樹脂材料で一体に成形した成形保持器としてもよい。
以上説明したように、転がり軸受において、この軸受に組み込まれる前記保持器は、ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくしたことにより、内輪肩部や内輪シール溝にグリースが付着し難くなる。このことは、特に外輪回転時に特徴的に現れる。これにより、シールが接触形、非接触形のいずれの場合にも、グリースの漏洩を防止できる。すなわち非接触形のシールを適用することが可能となり、低トルク化を図ることが可能となる。また、シールリップの緊迫力を強くする必要がないため、トルクが増大しない。ポケットのある円周方向部分の内径面が、軸方向から見て凹曲線となる曲面形状、および複数の角部を有する多角形状のいずれの場合でも、上記の各作用が得られる。
2…外輪
3…玉
4,4A,4B…保持器
4Ba…ポケット
5…シール部材
50…ポケット
54,54A,54B…凹み部
Gs…グリース組成物
PCD…玉配列ピッチ円
Ri,Rp…半径
Claims (4)
- 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪の間の軸受空間にグリース組成物を封入し、前記外輪または内輪に設けたシール部材で前記軸受空間を塞ぐ転がり軸受において、
前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、前記添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、このアルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース100重量部に対して0.05重量部以上10重量部以下であり、
前記保持器は、複数の玉をそれぞれ保持するポケットを円周方向の複数箇所に有し、各ポケットの内面を、玉配列ピッチ円よりも内径側の部分が、保持器内径側開口縁に近づくに従って小径となる凹曲面状としたリング状の保持器であって、前記各ポケットの内面に、保持器内径側の開口縁から保持器外径側に延びる凹み部を設け、前記アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムまたは硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする転がり軸受。 - 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪の間の軸受空間にグリース組成物を封入し、前記外輪または内輪に設けたシール部材で前記軸受空間を塞ぐ転がり軸受において、
前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、前記添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、このアルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース100重量部に対して0.05重量部以上10重量部以下であり、
前記保持器は、複数の玉をそれぞれ保持するポケットを円周方向の複数箇所に有し、前記ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくし、前記アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムまたは硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする転がり軸受。 - 請求項1または請求項2において、前記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤である転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油である転がり軸受。
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