JP4946694B2 - 永久磁石式発電機の制御装置 - Google Patents
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Description
この永久磁石式発電機は、ロータに永久磁石部材を配設し、その永久磁石のN極,S極をカバーするステータの櫛部にそれぞれ巻線を巻回し、N極とS極に対応する巻線の巻回方向を互いに逆に巻回し、ステータと回転変動するロータとの間にステータに対して回転移動する磁束制御籠を配置するとともに、ステータにU,V及びW相から成る複数のコイルを巻き上げ、これらのコイルを並列結線した2種のコイル群を常用コイルと低速コイルに構成し、常用コイルと低速コイルとをスイッチを介して直列に結線し、エンジンのアイドリング等の低速時、中速時及び高速時に応答してスイッチのON・OFFを制御して予め決められた所定の発電電圧を得るように制御し、また、磁束制御籠をステータに対して回転移動させて磁束制御籠とステータとの間の空隙量を制御し、予め決められた一定の発電電圧を得るように制御するものである。
永久磁石式発電機には、ステータの櫛部に巻回した巻数がN1のコイル(以下N1ターンという)と、ステータに対して回転移動可能でこの移動により櫛部へ流れる磁束を制御しうる磁束制御籠とが設けられている。
そこで、従来よりバッテリSOCを検知する手法として、バッテリからの充電時及び放電時の電流を積算し、電流の収支に基づいてバッテリSOCを推定する手法(例えば特許文献2参照)や、バッテリ電圧を検出し、このバッテリ電圧からバッテリSOCを推定する手法(例えば特許文献3参照)が広く知られている。
また、上述したように、発電制御においてはコイル巻数及び制御籠位相をエンジン回転数をパラメータとするマップから求めるオープンループ制御を適用しているが、このマップ値はある所定のバッテリSOCのときに目標電圧になるようにキャリブレーションした値であるため、バッテリSOCが変動してしまうと発電電圧が目標電圧値からずれてしまい、発電制御の精度が低下してしまう。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、コスト増を招くことなく高い精度でバッテリのSOCを検知又は推定できるようにした、永久磁石式発電機の制御装置を提供することを目的とする。
また、該制御手段は、該バッテリ残存容量判定手段で判定されたバッテリの残存容量に基づいて該目標発電電圧を設定するのが好ましい(請求項3)。
また、該車両の電気負荷を検出する電気負荷検出手段を有し、該基本制御量設定手段は、該エンジン回転数に加えて電気負荷検出手段で検出された電気負荷に基づいて該基本制御量を設定するのが好ましい(請求項5)
また、該発電機が、該エンジンの出力軸に接続されるとともに永久磁石を備えたロータと、該ロータの外周側でハウジングに固定されるとともに巻線を備えたステータと、該ステータと該ロータとの間に配置され該ステータに対して相対移動して該永久磁石から該ステータへ流れる磁束を制御する磁束制御籠とを有し、該制御手段は、該車両の電気負荷と該エンジン回転数とに基づいて籠位置を設定する籠位置設定手段を備えているのが好ましい(請求項6)。
また、バッテリの残存容量に基づいて目標発電電圧を設定するので、バッテリの状態に適した精度の高い発電電圧を設定することができる(請求項3)。
また、一定時間毎に補正量を平均化するので、一時的なエンジン回転数の上昇による補正量の変動やノイズ等による補正量の変動を抑制することができる利点がある(請求項4)。
また、巻線設定手段を設けることにより電気負荷とエンジン回転数とに基づいて最適な巻線を容易に且つ速やかに設定することができる(請求項7)。
ステータ35は、ステータコア35aとこのステータコア35aに巻き上げられた巻線(コイル)34とから構成されている。ステータコア35aは、周方向に離隔するように配置され形成された複数の櫛部35bと、これらの櫛部35b間に形成されたスロット部35cと、隣接する櫛部35bを連結するため周方向に延びるブリッジ部35dとを備え、巻線34はスロット部35bに配置されている。
この磁束制御籠36をハウジング31に対して回転させるために、磁束制御籠36には、図2に示すように、アクチュエータとしてのDCモータ(磁束制御用DCモータ)37がウォームギア38を介して接続され、図4に示すように、このDCモータ37を制御手段としてのコントローラ(スタータジェネレータ制御ユニット)40により制御するようになっている。なお、本実施形態においては、上記の磁束制御籠36とDCモータ37とウォームギア38とにより、発電機3の発電量を増減させる発電量調整手段6が構成されている。
さて、コントローラ40は、永久磁石式発電機3による発電時には、主にロータの回転速度(即ち、エンジン回転数に応じたロータ回転数)rと、発電電圧Vとに応じて、磁束制御籠36の回転位相の制御と共に、各スイッチ43a〜43cの開閉制御、及び、サブコイル34bのボリューム調整を行うようになっている。
ところで、このような発電機3を自動車に搭載した場合には、車両の電気負荷の変動(ヘッドライトのオンオフやエアコンのオンオフ或いはオーディオのオンオフ等)によって発電特性が変化してしまい、発電制御が不安定となるおそれがある。
なお、本実施形態においては、具体的には、コイル34は、エンジン回転数の増大又は電気負荷の増大に従い、以下の順番で切り換えられるようになっている。
1.N1ターン
2.N2ターン
3.N2ターン+弱め界磁
4.N3ターン
5.N3ターン+弱め界磁
ここで、コイル34の選択及び磁束制御籠36の位相は、それぞれコントローラ40内に設けられたマップ(図5の符号7,8参照)により設定されるようになっている。これについては詳しくは後述する。
このうち、巻線設定マップ7はエンジン回転数と電気負荷とに基づいて複数のコイル34から最適な巻線を選択する手段であって、本実施形態では図6(a)に示すようなマップとして設けられている。また、籠位置設定手段8は、エンジン回転数と電気負荷とに基づいて籠位置を設定する手段であって、本実施形態では図6(b)に示すようなマップとして設けられている。なお、これらのマップ7,8は、上述したように本実施形態ではエンジン回転数と電気負荷とをパラメータとしてコイル巻数及び籠位置を設定するマップとして構成されているが、少なくともエンジン回転数に基づいてコイル巻数及び籠位置を設定できればよく、電気負荷をパラメータとして設定しなくてもよい。ただし、より高い精度で発電制御を行うのであれば、電気負荷をパラメータとして適用するのが好ましい。
一方、籠位置設定マップ8は、図6(b)に示すように、各コイル毎にそれぞれ独立したマップとしてコントローラ40に記憶されており、本実施形態においては、上述した5つのコイルのマップM1〜M5として記憶されている。また、各マップM1〜M5には電気負荷と回転数とに応じた籠位置(目標籠位置)がそれぞれ記憶されている。そして、上述の巻線設定手段7からの情報に基づいて、複数のマップの中から現在設定されているコイルに対応するマップを選択すると、このマップから電気負荷と回転数とに基づいて磁束制御籠36の目標籠位置(基本制御量)を求めるようになっている。なお、言うまでもなく各マップで設定される目標籠位置とは、そのときのエンジン回転数と電気負荷とにおいて発生電圧が目標電圧となるような籠位置である。
Vt1>Vt2>Vt3
Vt1′>Vt2′>Vt3′
Vt1′>Vt1
Vt2′>Vt2
Vt3>Vt3′
これは、SOCが低下している状況では、同じエンジン回転数、同じ負荷であっても余分に発電するように制御しないとSOC低下分を補うことができないからであり、また、同じSOCが低下している状況であっても、減速中の場合にはエンジン回転数も低下するため、目標電圧を加速時及び定常運転時の目標電圧よりも大きな値に設定する必要があるからである。
一方、上述したように籠位置設定マップ8では、バッテリ41が所定のSOC(ここでは80%)のときに、目標電圧Vtになるような籠位置が設定されているため、目標電圧がSOCの変動にともない変動すると、目標電圧Vtと実際の発電電圧Vrとの間に乖離が生じることになる。
ここで、補正量設定マップ9は、上記電圧差ΔVをパラメータとして、この電圧差ΔVを解消する補正量を予めキャリブレーションにより記憶させたマップであって、このマップにより発電機2の発電電圧がフィードバック補正されるようになっている。したがって、この補正量設定マップ9は電圧フィードバック補正部ということもできる。なお、この補正量設定マップ9では、籠位置設定マップ8で設定される磁束制御籠36の目標籠位置(基本制御量)に対する補正位相(角度)として出力されるようになっている。
また、このようにしてコイル34の巻数及び磁束制御籠36の位相が設定されると、コントローラ40からコイル34及びアクチュエータ(モータ)37に対して作動制御信号が出力される。そして、コイル34の巻数が切り換えられるとともに、アクチュエータ37が作動してウォームギア38を介して磁束制御籠36の位相が変更される。
このSOC判定マップ10は、バッテリSOCによりフィードバック補正量が変化するという特性を利用したものであって、本実施形態の場合には上述のようにSOC=80%を基準として籠位置設定マップ8を作成しているため、図7に示すようにフィードバック補正量が0のとき、バッテリSOCが80%となるようなマップとして設けられている。
このため、SOC判定マップ10は、図7に示すようにフィードバック補正量が大きくなるほど(発電量が小さくなるほど)、現在のバッテリSOCが大きいと判定するような特性のマップに設定されている。なお、このSOC判定マップ10についても、予め実験等によりキャリブレーションにより求めたものが用いられる。
これは、ノイズ等によりフィードバック補正量が一時的に変動すると、バッテリSOCの推定値がハンチングするためであり、このようなハンチングを防止するべく、一定時間のフィードバック補正量の平均値を用いてバッテリSOCを推定するようになっている。
また、すでに説明したが、本実施形態ではバッテリSOCが低下すると、これを補うべく要求発電量も変化するようになっており、このSOC判定マップ10で推定されたバッテリSOCに基づいて、目標発電電圧が設定されるようになっている。つまり、このSOC判定マップ10でバッテリSOCが推定されると、このバッテリSOCは図示しない目標発電電圧設定手段に入力され、目標発電電圧設定手段では図8に示すようなフローチャートに基づいて目標発電電圧を設定するようになっている。
まず、ステップS1においてエンジン回転数と電気負荷とから巻線設定マップ7を用いてコイル34の巻数を決定する。次に、ステップS2に進み、ステップS1で設定された巻数のコイルに対応するマップを籠位置設定マップ8に記憶された複数のマップM1〜M5の中から選択するとともに、エンジン回転数と電気負荷とに基づいて選択されたマップから磁束制御籠36の目標籠位置(基本制御量)を設定する。
また、ステップS7において、上記フィードバック補正量に基づいてバッテリ41のSOCをが推定される。これはバッテリSOCが低下するほどフィードバック補正量が大きくなる特性を利用している。
さて、図10(d)に示すように、エンジン1が比較的低回転域で、且つ定常運転状態にあるときに、t=t1においてエンジン回転数が急増すると、(a)に示すように、コイル34の巻数は発電が小さくなる側のコイルに切り換えられるとともに、(b)に示すように、エンジン回転数に応じて磁束制御籠36の位相が変動する。また、これ以降もエンジン回転数の変動に伴い、(a),(b)に示すように、コイル巻数及び籠位相が変動する。
これに対し、本装置のように、実発電電圧と目標発電電圧との差がなくなるようにフィードバック補正量を加味することにより、(b)に示すように籠位置が線Pから線Qに補正され、これにより、(c)に示すように発電電圧が目標電圧に近づけることができる(線R参照)。なお、(b)に示す網掛け処理を施した部分がフィードバック補正量に相当する。
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る永久磁石式発電機の制御装置によれば、少なくともエンジン回転数に基づいて磁束制御籠36(発電量調整手段)に対する目標籠位置(基本制御量)を設定するとともに、発電機の実際の発電電圧と目標発電電圧との差に基づき目標籠位置に対するフィードバック補正量を求め、上記フィードバック補正量を加味して磁束制御籠36(及びアクチュエータ37)の作動を制御することにより、高い精度で発電機の作動を制御することができる。また、上記フィードバック補正量とバッテリ41の残存容量(SOC)とは強い相関関係があるので、これを利用してバッテリSOCを推定することにより、コスト増を招くことなく高い精度でバッテリのSOCを推定することができるという特有の利点がある。
また、エンジン回転数に加えて電気負荷を用いて目標籠位置(基本制御量)を設定するので精度の高い発電制御を行うことができる。すなわち、電気負荷を考慮しない場合には、電気機器の負荷の変動に伴い目標電圧に対するオーバシュートやアンダシュートが生じて実際の発電電圧がハンチングするおそれがあったが、エンジン回転数及び電気負荷に基づいて磁束制御籠の目標位相を設定することにより、負荷変動が生じても発電電圧のハンチング抑制することができる。
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態においては、SOC判定マップ10でバッテリSOCが推定されるとバッテリSOCを目標発電電圧設定手段にフィードバックし、フィードバックにより更新されたバッテリSOCと運転状態とに基づいて目標発電電圧を設定するように構成されているが、これに代えて目標発電電圧を設定する際のバッテリSOCをフィードバックせずに所定値(例えば80%)に固定しておいてもよい。この場合、目標発電電圧と実発電電圧との差異は大きくなるが、このような場合であっても、この電圧の偏差に基づいて実際のSOCを判定することができる。したがって、バッテリSOCを求めることのみを目的とするのであれば、求めたバッテリSOCを目標発電電圧設定手段にフィードバックしなくてもよい。
この場合、予測エンジン回転数を用いたフィードフォワード制御により発電機3の作動を制御するのが好ましい。また、予測エンジン回転数を用いることにより、籠位置制御の応答遅れに起因する電圧制御のオーバシュートやアンダシュートをさらに抑制することができる。また、エンジン回転数の予測手法については、エンジン1の定常運転時には逐次最小二乗法(第1の予測手法)を用い、また、エンジンの1の過渡運転時には変速機2のトルクコンバータのトルク収支モデル(第2の予測手法)を用いてエンジン回転数を予測するのが好ましい。
なお、発電機2の細部の構成についても本実施形態のものに限定されず種々変更可能である。
2 トランスミッション
3 モータジェネレータ(永久磁石式発電機)
4 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
5 負荷センサ(電気負荷検出手段)
6 発電量調整手段
7 巻線設定マップ(巻線設定手段)
8 籠位置設定マップ(籠位置設定手段)
9 補正量設定マップ(補正量設定手段)
10 SOC判定マップ(バッテリ残存容量推定手段)
11 出力軸(クランクシャフト)
12 アイドルストップ制御可否判定手段
31 ハウジング
32 永久磁石部材
33 ロータ
33a 隙間
34 巻線(コイル)
35 ステータ
35a ステータコア
35b 櫛部
35c スロット部
35d ブリッジ部
36 磁束制御籠
36a 歯部
37 DCモータ(アクチュエータ)
38 ウォームギア
40 コントローラ又はスタータジェネレータ制御ユニット(制御手段)
41 バッテリ
42 整流器
43 スイッチ
Claims (7)
- 車両のエンジンに接続され該エンジンの駆動力により発電する永久磁石式の発電機と、
該発電機の発電量を増減させる発電量調整手段と、
該エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
該エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数に基づいて該発電量調整手段に対する基本制御量を設定する基本制御量設定手段と、
該発電機の目標発電電圧を設定する目標発電電圧設定手段と、
該発電機の実際の発電電圧と該発電機の目標発電電圧との差に基づき該発電量調整手段に対する補正量を求める補正量設定手段と、
該基本制御量設定手段で設定された基本制御量及び該補正量設定手段で設定された補正量に基づいて該発電量調整手段の作動を制御する制御手段と、
該補正量設定手段で設定された補正量に基づきバッテリの残存容量を推定するバッテリ残存容量推定手段とを有する
ことを特徴とする、永久磁石式発電機の制御装置。 - 該制御手段は、該バッテリ残存容量判定手段で判定されたバッテリの残存容量に基づいて該車両のアイドルストップ制御の可否を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の永久磁石式発電機の制御装置。 - 該制御手段は、該バッテリ残存容量判定手段で判定されたバッテリの残存容量に基づいて該目標発電電圧を設定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の永久磁石式発電機の制御装置。 - 該残存容量判定手段は、一定時間ごとに該補正量を平均化した値に基づいて該バッテリの残存容量を推定する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の永久磁石式発電機の制御装置。 - 該車両の電気負荷を検出する電気負荷検出手段を有し、
該基本制御量設定手段は、該エンジン回転数に加えて電気負荷検出手段で検出された電気負荷に基づいて該基本制御量を設定する
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の永久磁石式発電機の制御装置。 - 該発電機が、
該エンジンの出力軸に接続されるとともに永久磁石を備えたロータと、
該ロータの外周側でハウジングに固定されるとともに巻線を備えたステータと、
該ステータと該ロータとの間に配置され該ステータに対して相対移動して該永久磁石から該ステータへ流れる磁束を制御する磁束制御籠とを有し、
該制御手段は、該車両の電気負荷と該エンジン回転数とに基づいて籠位置を設定する籠位置設定手段をそなえている
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の永久磁石式発電機の制御装置。 - 該巻線としては、巻き数及び/又は巻き方向の異なる複数の巻線が用意され、
該制御手段は、該電気負荷と該エンジン回転数とに基づいて該複数の巻線から最適な巻線を選択する巻線設定手段をそなえている
ことを特徴とする、請求項6記載の永久磁石式発電機の制御装置。
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