JP4943130B2 - 掘進機および多連円弧トンネルの施工方法 - Google Patents

掘進機および多連円弧トンネルの施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも3連以上の多連円弧トンネルを曲線パイプルーフを使用しながら施工するに際し、曲線パイプルーフを形成する鋼管(曲線鋼管)を地盤内に推進させる際に使用される掘進機と、この掘進機を使用して施工される多連円弧トンネルの施工方法に関するものである。
地下道路トンネルのランプ部をはじめとして地中にてトンネルを接合することによって断面が多連円弧状のトンネルを施工する方法として、従来は大規模な開削工法が適用されてきたが、用地確保、地上交通への影響、工期の長期化とそれに伴う工費の増大、さらには大深度トンネルへの対応などから、より安全かつ経済的なトンネル接合方法が切望されており、建設各社が検討/開発を進めている。
上記する多連円弧トンネルの施工方法の実施例として、例えば、間隔を置いて併設した2つのトンネルを先行施工し、双方のトンネル間を円弧状のパイプルーフ(いわゆる曲線パイプルーフ)で繋ぐとともにパイプルーフ間を鉛直方向の支保工にて支持し、上方のパイプルーフ直下を掘削しながらトンネル同士を繋ぐ接合体を構築し、双方のトンネル同士を連通させ、トンネル内に本設構造体を施工する技術がある。
上記曲線パイプルーフ用の鋼管を地盤内に推進するに際し、一般には鋼管の先端開口部から回転ビットを具備する小口径の掘進機を挿通させ、この回転ビットに連通するノズルを介して高圧水を地盤内に噴射しながら地盤を穿孔して鋼管を地盤内に挿入(推進)させていく方法や泥水の循環によって鋼管を地盤内に挿入していく方法などが適用される。
この小口径掘進機をより具体的に説明すると、鋼管内に掘進機が内在した姿勢で地盤を切削するいわゆる内在型の掘進機と、鋼管先端から掘進機を構成する鋼殻全体が突出した姿勢で地盤を切削するいわゆる外在型の掘進機とに分けることができる。また、いずれの型式による場合でも、その排土方式としてはバキューム吸引方式と泥水循環方式を適用することができる。
内在型掘進機のメリットは、その構造が比較的シンプルでその製作コストが比較的安価なことと、掘進機が他方のトンネル側に到達した後にパイプルーフ用鋼管の内部を介して該掘進機を発進側のトンネルで回収できることである。一方、内在型掘進機のデメリットとしては、曲線パイプルーフの有する湾曲線形に沿って掘進していくことが困難なことである。このため、上記する曲線パイプルーフの推進施工にこの内在型掘進機を採用した場合には、鋼管推進開始時の推進方向や角度を精度よく設定することが要求され、さらには、推進途中で推進方向の修正が余儀なくされた場合に対応することはできない。
それに対して外在型掘進機の場合には、公知の中折れ機構を具備する掘進機とすることで曲線パイプルーフの線形に沿って地盤内掘進が可能となり、推進途中の軌道修正も容易に実行できる。しかし、パイプルーフ用鋼管の内部を介して発進側トンネルに該掘進機を回収することはできず、さらには中折れ機構を具備することで掘進機の製作コストが極めて高価となる。
ところで、上記する中折れ機構以外の構成にてその推進方向を軌道修正可能な掘進機にかかる従来技術として例えば特許文献1,2を挙げることができる。特許文献1に開示の掘進機は、円筒状の外筒先端からテーパヘッドを突出させ、このテーパヘッドをヒンジ部を中心に折り曲げることによって方向修正し、その方向修正側に地盤の受働土圧を受けないように地盤を切削する掘進機である。一方、特許文献2に開示の掘進機は、鋼管先端部に掘削手段をばね機構を介して傾斜可能に支持し、径方向に伸縮する姿勢制御用シリンダの回転および伸縮によって掘削手段の傾斜角度および傾斜方向を制御し、軌道修正時には逆転駆動して姿勢制御用シリンダを所定方向に向けて回転させ、姿勢制御用シリンダを伸長して掘削手段を所定方向に傾斜させる掘進機である。
特開平3−202591号公報 特開2001−90476号公報
上記する特許文献1に開示の掘進機では、テーパヘッドが地盤から受働土圧を受けないように地盤切削をおこなう制御が極めて困難であり、曲線パイプルーフの線形に沿ってかかる制御を実行しながら掘進機を推進させる場合には施工効率の低下が否めない。一方、特許文献2に開示の掘進機では、掘進機の軌道修正に際して姿勢制御用シリンダを回転および伸縮させる機構であることから掘進機の構成が複雑となり、さらに、この構成では排土方式として泥水循環方式を適用することはできない。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、曲線パイプルーフを施工するに際し、比較的簡素な構成で掘進機の軌道修正を精度よく実行できる掘進機と、該掘進機を使用してなる多連円弧トンネルの施工方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による掘進機は、地盤内に曲線パイプルーフ用の鋼管を推進させる際に使用される掘進機であって、前記掘進機は、パイプルーフ用の鋼管の前方に配設され、その先端にカッタフェイスを備える筒状の鋼殻体と、該鋼管内部に配設される管路であって、前記カッタフェイス前方に流体を供給する管路と該カッタフェイス前方から切削土を回収する管路と、を少なくとも具備しており、前記鋼殻体の外周面における周方向の少なくとも3以上の箇所には、流体の供給量に応じてその大きさが変化する膨張体が設けられており、それぞれの膨張体の大きさを変化させることで膨張体の地盤に対する押圧力が調整され、掘進機の掘進方向が制御されるようになっていることを特徴とするものである。
曲線パイプルーフは、例えば3連円弧トンネルの施工に際し、先行して併設する2つのトンネルを施工し、双方のトンネルの周側同士を曲線パイプルーフで繋いで支保工を構築し、その内部にトンネル同士を接続する本設接合体を構築する施工方法において、この曲線パイプルーフ用の曲線鋼管を地盤内に推進する際に使用できる。ここで、曲線パイプルーフは、1つの曲率からなる円弧のみならず、2以上の曲率円弧が連続した円弧をも含んでいる。また、この3連円弧トンネル(多連円弧トンネル)は、トンネルの分合流部の拡幅部(本線トンネルとランプトンネルとが接続する区間)や、地下鉄路線と駅舎との接続部、各種地下施設を収容するための広範な地下空間等がその用途である。
本発明の掘進機は、パイプルーフ用の鋼管先端から突出した筒状の鋼殻体と、鋼管内に配設された管路を少なくとも具備している。掘進機の排土方式が泥水加圧方式の場合には、この管路は泥水を供給または回収するための排泥路および送泥管となる。鋼殻体の外径は鋼管の外径以下の大きさに設定されており、その前方先端にはカッタビットを具備するカッタフェイス(面盤型やスポーク型など)が設けられており、このカッタフェイスの外径は上記鋼管よりも小径に設定されている。
掘進機が到達トンネルに到達すると、該到達トンネル側で回収され、トンネル掘進用立坑等を介して発進トンネル側へ搬送する方法のほか、掘進機が到達トンネル側で回収された後に、次のパイプルーフ用鋼管を施工する際には、この到達トンネルを発進トンネルとして該発進トンネルから他方のトンネル側へ掘進機を掘進させることもできる。
掘進機を構成する鋼殻体の外周面には、その周方向の少なくとも3以上の箇所に、流体の供給量に応じてその大きさが変化する膨張体が設けられている。この膨張体は例えばゴムチューブをはじめとする膨張自在な適宜の素材から成形することができる。
鋼殻体外周の周方向の例えば3箇所(120度ピッチ)に上記膨張体を設けておき、掘進機の軌道修正等の際にはそれぞれの膨張体の膨張量(大きさ)を調整することで、各膨張体が地盤に与える押圧力を適宜変化させることができ、その結果として掘進機の掘進方向を調整することが可能となる。この膨張体の膨張量(大きさ)の調整は、流体(エア、水、油等)を膨張体内に供給することで実行される。なお、膨張体の膨張量とそれに応じた反力を予め設定しておき、各膨張体の反力値および掘進機の掘進速度の組み合わせに応じて掘進方向を予め求めておき、制御機構内のデータテーブルにそれらを入力しておくことで、簡易な操作で掘進機の掘進方向の調整が可能となる。
本発明の掘進機によれば、鋼殻体外周の周方向の3以上の箇所に膨張体を配設し、その膨張量を変化させるだけの極めて簡素な構成にて掘進機の掘進方向を高精度に調整することができるため、安価な製作コストで高性能な掘進機を得ることが可能となる。
また、本発明による掘進機の好ましい実施の形態において、前記膨張体が地盤と接触する側面に保護プレートが配設されており、該保護プレートが弾性材を介して鋼殻体の外周側に接続されていることを特徴とするものである。
この保護プレートは、折り曲げ自在な鋼板のほか、板バネなどから成形することもできる。この保護プレートをバネ等の弾性材を介して鋼殻体に接続し、膨張体をこの保護プレートで包囲しておくことで、膨張体の膨張作用を阻害することなく、地盤と摺接することで膨張体が摩耗劣化するのを防止することができる。
また、本発明による掘進機の好ましい実施の形態において、前記膨張体は前記鋼殻体の外周面に設けられた凹溝内に収容されており、非膨張時には該外周面から外側に張り出さない姿勢で収容され、かつ、膨張時には該外周面から外側に張り出すようになっていることを特徴とするものである。
膨張体が膨張していない場合には膨張体(および保護プレート)が鋼殻体の外周面から地盤側へ突出しない構成とすることで、膨張体が非膨張状態で掘進機が掘進する際に、該掘進機と地盤との間で過度のフリクションが生じるといった問題は生じ得ない。
また、本発明による掘進機の他の実施の形態において、前記カッタフェイスにはその外周側から径方向外側に拡幅ビットが伸張自在に設けられており、拡幅ビットがカッタフェイス内に収容された姿勢において前記鋼殻体の最大外径が前記鋼管の内径よりも小さくなることを特徴とするものである。
本発明の実施の形態は、カッタフェイスの外周側からその径方向外側に拡幅ビットが伸張自在となっており、拡幅ビットが伸張した姿勢においてその回転軌跡の外径が鋼管のそれよりも大径となるように設定されており、カッタフェイス内に収容された姿勢においては鋼殻体の最大外径が鋼管の内径よりも小さくなるように設定されたものである。
この掘進機によれば、カッタフェイスを含む鋼殻体全体が鋼管内部を通過することができるため、掘進機をパイプルーフ用鋼管内部を介して到達トンネル側から発進トンネル側へ回収可能となる。したがって、施工効率を大幅に高めることができ、工期の大幅な短縮に繋がる。
また、本発明による掘進機の好ましい実施の形態において、前記掘進機は、発進場所および到達場所の位置情報データと、それらを結ぶ推進軌跡データと、を格納する格納手段と、自身の現在位置情報を衛星通信で取得する位置情報取得手段と、位置情報取得手段で取得された現在位置情報データが前記推進軌跡から外れた際に、推進方向を軌道修正するために、複数の前記膨張体の大きさを変化させるべく流体供給量を調整する調整手段と、をさらに具備することを特徴とするものである。
本発明の掘進機は、該掘進機の掘進方向の決定およびその軌道修正を自動制御できる掘進機である。
その構成の実施形態として、発進場所および到達場所の位置情報データと、それらを結ぶ推進軌跡データとを格納する格納手段を具備しており、自身が掘進するに際して必要な情報が予めインプットされている。この発進場所および到達場所に関する位置情報データは、例えば発進側トンネルにおける鋼管発進部位に関する測量結果と、鋼管到達側トンネルにて鋼管が受け取られるべき部位に関する測量結果とがデータ入力される。双方の3次元座標データと鋼管の曲率に基づいて推進軌跡データが決定される。
また、自身の現在位置情報を衛星通信で取得する位置情報取得手段は、公知のナビゲーションシステムを使用することができる。ここで、このナビゲーションシステムに上記推進軌跡データが取り込まれる。これらの情報が管理室内のコンピュータに随時送信され、コンピュータ画面上で管理者が確認できるシステムを構築しておくのが好ましい。
掘進機の現在位置が随時取得され、推進軌跡との一致/不一致がその都度確認され、軌道修正を要する場合には、各手段を制御するCPUに修正が必要である旨の情報が送信される。具体的には、推進軌跡からどの方位にずれているかを位置情報取得手段内で判定し、この判定結果に基づいて、例えば3つの膨張体のそれぞれに供給されるべき流体量が確定し、その指令信号が調整手段に送信され、掘進機内の流体収容タンクから各膨張体へ所定量の流体が供給される。
なお、上記自動制御をおこなわずに、掘進機にナビゲーションシステムを搭載しておき、掘進機の現在位置と推進軌跡とを管理塔内のコンピュータにて管理者がチェックし、必要な場合には、管理塔から掘進機の各膨張体の膨張量の調整指令を発進するシステムであってもよい。
さらに、本発明による多連円弧トンネルの施工方法は、2以上の併設するトンネルを構築する第1の工程と、一方のトンネルの外周側から請求項1〜4のいずれかに記載の掘進機を掘進させて曲線パイプルーフ用の鋼管を地盤内に推進させ、他方のトンネルにて鋼管を受け取ることでトンネル同士を鋼管で繋ぎ、これをトンネルの軸方向に亘って繰り返すことで所定区間に曲線パイプルーフを構築する第2の工程と、曲線パイプルーフと双方のトンネルで包囲された領域の地盤を掘削するとともに曲線パイプルーフの内側にトンネル同士を繋ぐ接合体を構築する第3の工程と、を少なくとも具備することを特徴とするものである。
まず、併設する被接続トンネルをシールド工法もしくは推進工法にて並行して施工し、もしくは順次施工する。このトンネルは鋼製セグメントや鋼製函体などから構成されており、たとえば鋼製セグメントには予めパイプルーフ挿通用の挿通孔を設けておくこともできる。
地下水以深にてトンネルが施工される場合には、パイプルーフ施工に先行して地盤改良にて止水層が造成され、その後に一方のトンネル内から曲線パイプルーフ用の鋼管(曲線鋼管)が地盤内に挿入され、他方のトンネルにおける対応箇所にてこの鋼管が受け取られる。この状態で一つの鋼管が双方の鋼殻に溶接やボルト接合等されることによって固定され、パイプルーフとトンネル鋼殻との接続が図られる。このパイプルーフ用の鋼管は拡幅施工区間に亘って所定ピッチごとに、もしくは隙間なくトンネル間に掛け渡されて土圧(土水圧)を支保する。なお、上記するように、鋼殻体の外径が鋼管よりも小径の場合には、カッタフェイスを含む鋼殻体が鋼管内部を通ることが可能となるため、掘進機をパイプルーフ用鋼管内部を介して到達トンネル側から発進トンネル側で回収することができる。
パイプルーフとトンネルで包囲された領域の地盤をバックホーや人力にて掘削し、上方パイプルーフの下方にトンネル同士を繋ぐ円弧状の接合体を構築する。この接合体は、例えば、円弧方向に延びる引張材(鉄筋、PC鋼材等)およびトンネル軸方向に延びる引張材と、コンクリートとからなるRC構造体からなる。
接合体が構築されたら、パイプルーフの支持する土圧を接合体に盛り替え、双方のトンネルにおいて不要な鋼殻を解体撤去してトンネル内部に本設構造体を構築する。
本発明の施工方法によれば、上記する掘進機を使用して曲線パイプルーフを構築することで施工効率を格段に高めることができる。掘進機がパイプルーフ用鋼管を介して回収可能な場合にはその効果がより一層高くなる。
以上の説明から理解できるように、本発明の掘進機とそれを使用した多連円弧トンネルの施工方法によれば、簡素な構成の掘進機にて効率的に曲線パイプルーフを施工することができるため、工期の大幅な短縮とそれに伴う工費の削減を図ることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の掘進機を鋼管とともに示した縦断図であり、図2は図1のII−II矢視図である。図3aは膨張体が収縮している状態で凹溝内に収容されている状態を示した断面図であり、図3bはその平面図である。図4aは膨張体が膨張している状態を示した断面図であり、図4bはその平面図である。図5は掘進機の姿勢制御機構を説明したブロック図である。図6〜8は順に3連円弧トンネルの施工方法を説明した断面図である。なお、図示する多連円弧トンネルは3連であるが、施工されるトンネルが4連以上の円弧トンネルであってもよいことは勿論のことである。
本発明の掘進機の概要を図1〜5に基づいて詳細に説明する。掘進機1は、地盤内に曲線パイプルーフを推進施工する際に使用され、特に、多連円弧トンネルを構成するトンネル同士を繋ぐ曲線パイプルーフ用の鋼管を地盤内に推進するに好適である。
この掘進機1の構成を鋼管Pとの関連で説明すると、鋼管Pの先端開口から突出するカッタフェイス12(カッタビット12a)を備えた筒状の鋼殻体11と、このカッタフェイス12の前面に泥水を提供する送泥管14および切削地盤を泥水とともに排出する排泥管15と、から大略構成されており、この送泥管14および排泥管15は鋼管P内に収容され、鋼殻体11と鋼管Pの端部がボルト等で固定された姿勢で地盤内を推進するようになっている。
カッタフェイス12の外周側からはその径方向に伸縮自在な拡幅ビット13が複数設けられており、本実施例では図2に示すように3基の拡幅ビット13,13,13が120度ピッチに配設され、図中のX方向(径方向)に伸張するようになっている。この拡幅ビット13の伸縮操作は、図1に示す引き抜きロッド16を油圧にて押し引きすることで実行される。
図1,2では、カッタフェイス12の外径寸法が鋼管Pの内径よりも小さく設定されており、鋼殻体11と鋼管P双方の外径が同程度に設定されている実施例が示されているが、鋼殻体11の外径寸法を鋼管Pの内径寸法よりも小さく設定しておくことで、掘進機1が到達側トンネルに到達した後にこの鋼管P内を通して掘進機1を発進側トンネルで回収することもできる。
鋼殻体11の外周面でカッタフェイス12の後方部位には図1に示すように複数の膨張体2,…が設けられており、本実施例では、図2に示すようにその周方向に120度ピッチで3基の膨張体2A,2B、2Cが設けられている。各膨張体2A,2B、2Cには、不図示の流体収容タンクからエアや水、油などが提供されて所定の大きさに膨張するようになっている(図2のY1,Y2、Y3方向)。各膨張体2A,2B、2Cの膨張作用により、地盤には膨張量に応じた押圧力Q1,Q2,Q3が作用し、各押圧力を調整することで掘進機1の掘進方向が制御できるようになっている。この制御機構の詳細は後述する。
図3,4は、膨張体2の収縮時および膨張時における態様を示している。まず、図3aに示すように、膨張体2は鋼殻体11の外周側に形成された凹溝11a内に収容されており、図3bに示すように、その外側には3つの板バネ(保護プレート)31,31,31が配設され、各板バネ31はその両端にバネ32,32を介して鋼殻体11に接続されている。図3aからも明らかなように、膨張体2の収縮時にはこの膨張体2および板バネ31が鋼殻体11の凹溝以外の外周側から外側(地盤G側)に突出しないようになっている。
この膨張体2には図4aに示すように流路が繋がっており、これが不図示の流体収容タンクに連通していて、所定量の流体Fが該膨張体2に提供されることで膨張し、地盤Gに所定の押圧力Qを作用させることができる。
図5は、掘進機1の掘進時における姿勢制御機構の概要を示したブロック図である。この掘進機1は自動で姿勢制御できるように構成されており、相応の制御機構を具備している。
姿勢制御機構50は、発進場所および到達場所の位置情報データと、それらを結ぶ推進軌跡データとを格納する格納部52と、公知のナビゲーションシステムなどからなり、自身の現在位置情報を衛星通信で取得するとともに推進すべき軌跡から掘進機1がどの方位にずれているかを判定する位置情報取得部53と、判定結果に基づいて膨張体2A,2B,2Cのそれぞれに供給されるべき流体量に関する指令信号を受けて掘進機1内の流体収容タンクPA,PB,PCから各膨張体2A,2B,2Cへ所定量の流体を提供するための調整部54と、から構成されている。これらの各機構はシステム内の中央演算処理部:CPU55にて実行制御される。
格納部52へのデータinput61は、発進側トンネルにおける鋼管発進部位に関する測量結果と、鋼管到達側トンネルにて鋼管が受け取られるべき部位に関する測量結果と、双方の3次元座標データと鋼管の曲率に基づく推進軌跡データとが少なくとも入力され、I/F回路51aを介して格納部52にデータ入力される。
また、掘進機1はその掘進時において衛星通信にて自身の現在位置情報を衛星情報62として取得し、その取得情報をI/F回路51bを介して位置情報取得部53にデータ送信する。
この位置情報取得部53では、推進軌跡データが3次元座標内に合成され、さらに現在位置情報が随時この3次元座標内に取り込まれるようになっており、この全体情報はI/F回路51cを介して無線通信にて管理室内のコンピュータ63に送信されるようになっている。
上記する姿勢制御機構にて掘進機1の推進方向が随時チェックされ、必要に応じて軌道修正されるため、曲線鋼管を高い精度で到達側トンネルの所定部位に推進させることができる。しかも、位置情報取得部は公知のナビゲーションシステムを使用することができ、制御機構の製作に要するコストは高価なものとはならない。
次に、図6〜8に基づいて上記する掘進機1を使用してなる3連円弧トンネルの施工方法を概説する。
図6は、不図示の2台のシールド機が並行して、または1台のシールド機が順次掘進しながら鋼製セグメントS,…からなるセグメントトンネル100,200が所定間隔を置いて地盤G内に施工された状況を示している。パイプルーフの施工に先んじて、地盤改良施工が実施されて止水層300,300’が造成される。さらに、パイプルーフ設置部位近傍にパイプルーフとこれに接続するトンネル部位を支持するための鉛直支保工101,201が設置され、さらには、別途の斜材にて支持されている。この鉛直支保工101,201には、H型鋼材、I型鋼材、鋼管(角鋼管)、プレキャストRC柱等を使用することができる。
次いで、トンネル100,200の長手方向に所定間隔をおいて、パイプルーフ用の湾曲した曲線鋼管Pが掘進機1に誘導されながら推進施工される。なお、図6中、発進部位Aと到達部位Bを結ぶラインTは推進軌跡ラインであり、Z方向に掘進機1が推進している状況を示している。
双方のトンネル100,200における対応する鋼製セグメントS,Sの所定位置には鋼管挿通用の不図示の挿通孔がそれぞれ設けられていて、一方のトンネルの挿通孔を介して地盤G内に挿入(押し出)されるとともに他方のトンネルの挿通孔を介して地盤G内から受け取られることで双方のトンネル間に曲線パイプルーフが仮設される。図6では、移動台座上に載置された押し出し用マシンMにてトンネル200側からトンネル100側に向って曲線鋼管Pを押し出している状況を示している。なお、下方に設置される曲線鋼管も同様の施工方法にて双方のトンネル間に仮設される。なお、上記するように、鋼殻体11の外径が鋼管Pよりも小径の場合には、カッタフェイス12を含む鋼殻体11が鋼管P内部を通ることが可能となるため、掘進機1をパイプルーフ用鋼管内部を介してトンネル100側からトンネル200側で回収することができる。
図7は上下の曲線パイプルーフ400,400’が施工された状況を示している。
次いで図8に示すように、RC造の接合体500,500’が施工される。具体的には、円弧方向およびトンネル軸方向に延びる不図示の引張材(鉄筋、PC鋼材等)を配設し、コンクリートを一方または双方のトンネル内から打設することによって施工される。なお、接合体500,500’を構成する円弧方向に延びる引張材の端部はトンネルの鋼殻Sにナット固定ないしは溶接固定等されることで接続される。次いで、トンネル100,200を連通するに不要な鋼殻S,…を撤去して双方のトンネル同士を連通させ、本設構造体を構築することで図示する地下道の分合流部1000が施工される。なお、地下道の分合流部以外にも、多連円弧状の大断面トンネルからなるライフライン施設や地下ショッピングセンターなどを施工することもできる。
本発明による掘進機1を使用して曲線パイプルーフを施工することにより、多連円弧トンネルの施工効率を大幅に高めることができる。この掘進機1はその製作コストが高価なものではなく、しかも推進精度も極めて高いことから曲線パイプルーフ施工の施工精度を高めることもできる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本発明の掘進機を鋼管とともに示した縦断図である。 図1のII−II矢視図である。 (a)は膨張体が収縮している状態で凹溝内に収容されている状態を示した断面図であり、(b)はその平面図である。 膨張体が膨張している状態を示した断面図であり、(b)はその平面図である。 掘進機の姿勢制御機構を説明したブロック図である。 3連円弧トンネルの施工方法を説明した断面図である。 図6に続き、3連円弧トンネルの施工方法を説明した断面図である。 図7に続き、3連円弧トンネルの施工方法を説明した断面図である。
符号の説明
1…掘進機、11…鋼殻体、12…カッタフェイス、13…拡幅ビット、14…送泥管、15…排泥管、16…引き抜きロッド、2,2A,2B,2C…膨張体、31…板バネ(保護プレート),32…バネ、50…姿勢制御機構、100,200…トンネル、101,201…鉛直支保工、300,300’…止水層、400,400’…接合体、1000…分合流部、S…セグメント(鋼殻)、G…地盤、P…鋼管(曲線鋼管)

Claims (5)

  1. 地盤内に曲線パイプルーフ用の鋼管を推進させる際に使用される掘進機であって、
    前記掘進機は、パイプルーフ用の鋼管の前方に配設され、その先端にカッタフェイスを備える筒状の鋼殻体と、該鋼管内部に配設される管路であって、前記カッタフェイス前方に流体を供給する管路と該カッタフェイス前方から切削土を回収する管路と、を少なくとも具備しており、
    前記鋼殻体の外周面における周方向の少なくとも3以上の箇所には、流体の供給量に応じてその大きさが変化する膨張体が設けられており、それぞれの膨張体の大きさを変化させることで膨張体の地盤に対する押圧力が調整され、掘進機の掘進方向が制御されるようになっており、
    前記掘進機は、発進場所および到達場所の位置情報データと、それらを結ぶ推進軌跡データと、を格納する格納手段と、
    自身の現在位置情報を衛星通信で取得する位置情報取得手段と、
    位置情報取得手段で取得された現在位置情報データが前記推進軌跡から外れた際に、推進方向を軌道修正するために、複数の前記膨張体の大きさを変化させるべく流体供給量を調整する調整手段と、をさらに具備することを特徴とする掘進機。
  2. 前記膨張体が地盤と接触する側面には保護プレートが配設されており、該保護プレートが弾性材を介して鋼殻体の外周側に接続されている、請求項1に記載の掘進機。
  3. 前記膨張体は前記鋼殻体の外周面に設けられた凹溝内に収容されており、非膨張時には該外周面から外側に張り出さない姿勢で収容され、かつ、膨張時には該外周面から外側に張り出すようになっている請求項1または2に記載の掘進機。
  4. 前記カッタフェイスにはその外周側から径方向外側に拡幅ビットが伸張自在に設けられており、拡幅ビットがカッタフェイス内に収容された姿勢において前記鋼殻体の最大外径が前記鋼管の内径よりも小さくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の掘進機。
  5. 2以上の併設するトンネルを構築する第1の工程と、
    一方のトンネルの外周側から請求項1〜のいずれかに記載の掘進機を掘進させて曲線パイプルーフ用の鋼管を地盤内に推進させ、他方のトンネルにて鋼管を受け取ることでトンネル同士を鋼管で繋ぎ、これをトンネルの軸方向に亘って繰り返すことで所定区間に曲線パイプルーフを構築する第2の工程と、
    曲線パイプルーフと双方のトンネルで包囲された領域の地盤を掘削するとともに曲線パイプルーフの内側にトンネル同士を繋ぐ接合体を構築する第3の工程と、を少なくとも具備する、多連円弧トンネルの施工方法。
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