JP4941924B2 - イオンビーム生成方法 - Google Patents
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Description
しかしながらカーボン膜からなるターゲット膜は、一般に寿命が短く、イオンビームの照射によってすぐに破損してしまうので、加速器本体の利用効率を著しく低下させている。
本発明に係るビーム照射用ターゲット薄膜の製造方法は、基板上に、剥離剤を介してカーボン薄膜を積層する工程と、上記カーボン薄膜上に、ポリパラキシリレン膜を形成する工程と、上記カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合体を水性溶媒に浸漬することで基板から剥離する工程と、を含むものである。
本発明に係るビーム照射用ターゲット薄膜の製造方法は、基板上に、所望により剥離剤を介して、ポリパラキシリレン膜を積層する工程と、前記ポリパラキシリレン膜上に、カーボン薄膜を形成する工程と、前記ポリパラキシリレン膜とカーボン薄膜との複合体を基板から剥離する工程とを含むものである。
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化アルミ、ZnO、MgO、InSbO、InZnO等が挙げられ、これらのなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属化合物は、金属元素を含む化合物のうち上記金属酸化物以外のものである。金属化合物としては特に限定されないが、例えば、炭化ニオブ、炭化タンタル等の金属炭化物;ZnS等の金属硫化物;MgF2等の金属フッ化物;金属窒化物等が挙げられ、これらのなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、タンタル、タングステン、ニッケル、コバルト、モリブデン、Cu−Ga、Ni−Cu、Ni―W、Al−Ti、Al−Cr、Al−Ta、Ge−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Tb−Fe−Co、Gd−Fe−Co、Co−Cr−Ta、Ni−Ti等の単体金属または合金が挙げられ、これらのなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンについては後述する。
またnは、5000以上の整数である。
積層量が上記範囲内であると、最終的に得られる膜の寿命をカーボン薄膜単体の場合と同程度に維持しつつ強度に優れたものとすることができる。
第2膜は、10μg/cm2〜30μg/cm2であることが好ましい。
第2膜が、10μg/cm2以上であると、単分子膜として全体を覆うことができ、膜に充分な強度を付与することができる。30μg/cm2以下であると、第2膜たる高分子膜のもつ熱膨張性等が第1膜に与える影響が小さく、複合膜全体としてビームによって破損するおそれが小さくなる。
本明細書において、「積層量」は、単位面積あたりの質量で表され、精密電子天秤を用いて積層前後の重さの変化を測定し得られた値である。
サンドイッチ構造を形成する場合も、第1膜の1層あたりの積層量は、5〜100μg/cm2であることが好ましく、かつ第2膜の1層あたりの積層量は、10〜30μg/cm2であることが好ましい。第1膜と第2膜との積層量が上記範囲内であると、最終的に得られる膜の寿命を第1膜単体の場合と同程度に維持しつつ強度に優れたものとすることができる。
サンドイッチ構造を形成する場合、第1膜の合計積層量が1mg/cm2となり、かつ第2膜となるポリパラキシリレン膜の合計積層量が、200〜400μg/cm2となるまで積層することができる。
従って本発明の複合膜における第1膜と第2膜との合計積層量としては、15μg/cm2〜1.4mg/cm2とすることができる。
上記カーボン薄膜におけるカーボンは、蒸着により形成し得るカーボンを意味する。カーボンとしては、導電性、非導電性のいずれを用いることもでき、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、ダイヤモンド、アモルファスカーボン、グラファイト等が挙げられる。
一方、ビームの当たらないところには第2膜が残るので、残る第2膜により複合膜全体の強度はより高く維持される。
なお、第2膜となるポリパラキシリレン膜は、第1膜の全面を覆う必要は必ずしもなく、第1膜を所定のパターンで部分的に覆うものでもよいし、あるいは第1膜の補強を要する部分だけを覆うようにするものであってもよいが、パターニング、マスキング等をしなければ後述の製造方法による場合通常、複合膜を形成する基板を含む全表面を被覆するものとなる。
基板の表面材質としては、特に限定されないが、例えば、金属、ガラス等を採用することができ、積層するカーボン薄膜との剥離が容易な材質であればより好ましい。
カーボン薄膜の積層に先立ち、基板に積層する剥離剤としては、後の工程で水性溶媒に浸漬することから水溶性のものが好ましく、例えば、NiCl2、NaCl、LaCl3等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはランタノイドの塩化物が挙げられる。
基板表面への剥離剤の積層は、抵抗蒸発源を使用して蒸着により行うことができる。
基板に剥離剤を積層したのち、カーボン薄膜は、アーク放電法、スパッタ源等を用いて積層することができる。但し、この過程までは市販の膜が存在するのでそれをそのまま代用することもできる。
上記カーボン薄膜へのポリパラキシリレン膜の積層方法としては、均一な膜を形成する観点から蒸着法が好ましい。
蒸着は、例えば、原料気化部、熱分解部および蒸着部をこの順に備えた蒸着装置において、予めカーボン薄膜が蒸着された基板をポリパラキシリレン専用の蒸着部内に配設し、行うことができる。
まず原料である下記一般式(II)(2つのmは、各々独立して、0または1の整数であり、mが0のとき、無結合を意味する。)で表されるジパラキシリレン類の固体ダイマーを原料気化部にて昇華させる。
気化温度としては、40℃〜175℃が望ましい。気化は、1トール(133Pa)以下の減圧下にて行うことができる。
得られた気化ダイマーは、熱分解部に輸送されて熱分解され、下記一般式(III)で表される安定なジラジカルパラキシリレンを生成する。
熱分解温度としては、600℃〜680℃が望ましい。熱分解は通常、0.5トール(67Pa)以下の減圧下にて行うことができる。
生成したジラジカルパラキシリレンは、蒸着部に輸送され、基板に形成されたカーボン薄膜表面に吸着するのと同時にまたはその後に相互に重合し、下記一般式(IV)で表される高分子量のポリパラキシリレン膜を形成する。
重合反応温度としては、基板に塗布された剥離剤の蒸散や分解を防ぎ、かつ基板に形成されたカーボン薄膜の変形やダメージを防ぐ観点から、常温で行うことが好ましく、例えば、20℃〜35℃が望ましい。重合は通常、0.1トール(13Pa)以下の減圧下にて行うことができる。
なお、余剰のジラジカルパラキシリレンは、後流に冷却筒を設け通常−70℃程度の温度にて回収することができる。
上記水性媒体は、水を含む溶媒または溶液であり、例えば、水、少量のアルコールを混入させた水等が挙げられる。
10〜40℃の水性溶媒に基板を浸漬すると、上述のようにカーボン薄膜と基板との間には水性溶媒に可溶な剥離剤があらかじめ蒸着されているので、カーボン薄膜はポリパラキシリレン膜が積層した状態で基板から剥離し、通常水性溶媒に浮かぶ。該浮遊物が、上記カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合体であることは、それぞれの表面の色の違いまたはビームを当てたときに昇華するか等により確認することができる。
以上の工程を経て得られた本発明のビーム照射用ターゲット薄膜は、カーボン薄膜単体に比べ強度が向上するので、今まで不可能であった100mm以上の開口径を有する開口ホルダー等に対しても非常に容易に貼り付けることができる。
また従来、開口ホルダーに貼り付けられたカーボン薄膜は振動や風で破れやすいことが知られている。例えば、ビーム照射用ターゲット薄膜は、加速器にてビームを通過させる場合、真空条件下で使用することが一般的であるが、この際、チャンバーにセットして排気を開始すると、排気スピードをスローにしないとカーボン薄膜のみからなるターゲット膜は破れやすいことが知られている。これに対し、本発明のビーム照射用ターゲット薄膜はかなりの機械的衝撃や風の衝撃に耐え、比較的破れにくいという利点がある。
この場合、基板の表面材質としては、特に限定されないが、金属、ガラス等を用いることができる。
また所望により用いる剥離剤としては、特に限定されないが、例えば、石けん水等の界面活性剤、真空グリース等の油等が挙げられる。
なお、上記剥離剤を用いる場合、剥離剤の基板表面への積層は、布等にしみこませたものを手でこすりつけて極少量を均一に塗布する。
基板に剥離剤を積層した後におけるポリパラキシリレン膜を形成する工程およびカーボン薄膜を形成する工程は、上述した本発明の製造方法における工程と同様である。
このようにして基板に形成された複合体を基板から剥離する工程は、例えば、複合体の表面における膜として剥離したい部分の外周縁に、粘着材を貼り付け、該粘着材とポリパラキシリレン膜との接着が剥離する方向、例えば、90°接着剥離方向に力を加えることにより行うことができる。
粘着材は、複合体表面との間に接着性を有する粘着材であれば特に限定されないが、例えば、複合体表面がポリパラキシリレン膜である場合、市販のセロハンテープ等の粘着テープを用いることができる。
なお、粘着材を接着するのはポリパラキシリレン膜表面であることが好ましい。
上記カーボン薄膜およびポリパラキシリレン膜は、それぞれ1層以上形成することができ、上述のようにサンドイッチ構造を形成することが可能である。
基板(表面材質:ガラス)上に、カーボン薄膜40μg/cm2を積層したもの(Arizona40,アリゾナ社製)について倍率10000倍の電子顕微鏡にて観察したところ、表面に凹凸があり、μmオーダーの粒径を有するカーボン粒子が観察された。
該カーボン薄膜上にさらにポリパラキシリレン膜10〜20μg/cm2を積層した表面についても同様に観察したところ、ポリパラキシリレン膜が、非常に薄く均一に積層されていて、積層後の表面は滑らかに変化していることがわかった。また、ポリパラキシリレン膜が、カーボン薄膜と別の層になって積層されているのではなく、表面の凹凸に入り込み、しかも均一な厚みで積層されていることがわかった。
カーボン積層基板の1つは、パリレンコーティング装置(ラボコーターPDS2010型、スペシャルティコーティングシステム社製)のコーティング室にセットし、2−クロロジパラキシリレン(スペシャルティコーティングシステム社製)を175℃、1トールで気化したのち、680℃、0.5トールで熱分解し、35℃、0.1トールの条件下、10〜20μg/cm2のポリパラキシリレン膜を積層した。
カーボン積層基板のもう1つは、ポリパラキシリレン膜を積層しなかった。
これら基板を水に浸漬することにより、膜が分離した。得られた膜は、カーボン薄膜、および、カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合膜であることがわかった。
減圧下、複合膜に対し、Xe9+ビーム(ビーム径5mmΦ、ビーム電流3.78eμA、エネルギー33keV/核子)を膜の中央に照射して破れるまでの寿命を比較した結果を図1に示す。
図1によれば、10μg/cm2(ACF−10)と20μg/cm2(ACF−20)とのカーボン薄膜にポリパラキシリレン膜(PPX)を積層した物の寿命はわずかに短くなる傾向にあるが、40μg/cm2(ACF−40)と80μg/cm2(ACF−80)の物は寿命が同程度か延びる結果となった。
ここで、ACF−10とACF−20のカーボン薄膜は、ACF−40やACF−80と比べると薄く、取り扱いする上で大変破れやすいものである。そのため、照射して破れるまでの寿命がわずかに短縮したとしてもポリパラキシリレン膜を蒸着することによる取り扱い上の強化というメリットの方が大きいと考えられる。
このため、すべての複合膜において強度向上によるメリットが大きくなり、取り扱いやすさや、実用上の寿命は延びることになる。
Claims (3)
- イオンビーム照射用ターゲット薄膜に対してイオンビームを照射して、照射したイオンビームより価数が高いイオンビームを生成するイオンビーム生成方法であって、
前記イオンビーム照射用ターゲット薄膜は、カーボンからなる第1膜と、下記一般式(I)(mは、0または1であり、mが0のとき、無結合を意味する。nは、5000以上の整数である。)で表される構造単位を有するポリパラキシリレンを含む第2膜とを備える、イオンビーム生成方法。
- 前記第1膜と第2膜との合計積層量が、15μg/cm2〜1.4mg/cm2であることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム生成方法。
- 前記第1膜の1層あたりの積層量が、5〜100μg/cm2であり、かつ前記第2膜の1層あたりの積層量が、10〜30μg/cm2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオンビーム生成方法。
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