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Description

本発明は、ポリパラキシリレン複合膜に関する。
薄膜は、例えば、電極、2種の電解質の仕切り等としてあらゆる技術分野において多くの用途に用いられている。しかし、薄膜は、その薄さゆえに強度の問題を有している。
例えば、イオンビームの加速には、その効率を上げるために加速イオンから電子をはぎ取るターゲット膜が用いられる。ターゲット膜は、通常極めて薄いカーボン膜である。この膜を加速器で加速されたイオンビームは、ほとんどエネルギーを失うことなく通過するが、イオンのまわりに残っていた電子がターゲット膜によってはぎ取られ、より高い価数のイオンになる。このようにして得られた価数の高いイオンビームは、磁場で容易に軌道を変えることができる。
しかしながらカーボン膜からなるターゲット膜は、一般に寿命が短く、イオンビームの照射によってすぐに破損してしまうので、加速器本体の利用効率を著しく低下させている。
本発明は、上記現状に鑑み、大面積でも膜強度が強く、取り扱い性に優れた複合膜を提供することを目的とする。
現在市販されなくなったが、かつてカーボン膜に硝酸セルロースをコーティングして得られた被膜が利用されていた。これは硝酸セルロースを含有する有機溶剤をカーボン膜に塗ることによってコーティングされていると思われる。この被膜はターゲット膜の保護の効果は見られたが、高価で、積層体を載せた基板のままで保存可能な期間が短いという問題があった。また、カーボン部分の薄膜の厚さは3μg/cm2〜20μg/cm2のものしか存在しなかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明に係る複合膜は、金属酸化物、金属化合物、金属、および、カーボンからなる群より選択される少なくとも1つを含む第1膜と、下記一般式(I)
(mは、0または1であり、mが0のとき、無結合を意味する。nは、5000以上の整数である。)で表される構造単位を有するポリパラキシリレンを含む第2膜とを備えたものである。
本発明に係るビーム照射用ターゲット薄膜の製造方法は、基板上に、剥離剤を介してカーボン薄膜を積層する工程と、上記カーボン薄膜上に、ポリパラキシリレン膜を形成する工程と、上記カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合体を水性溶媒に浸漬することで基板から剥離する工程と、を含むものである。
本発明に係るビーム照射用ターゲット薄膜の製造方法は、基板上に、所望により剥離剤を介して、ポリパラキシリレン膜を積層する工程と、前記ポリパラキシリレン膜上に、カーボン薄膜を形成する工程と、前記ポリパラキシリレン膜とカーボン薄膜との複合体を基板から剥離する工程とを含むものである。
本発明では、ポリパラキシリレンという高分子を含む膜を他の膜に蒸着することにより、作業上、取り扱いがしやすくなり歩留まりを向上することができる。また、膜の強度が増すことにより、大きな面積の膜を貼り付け使用することができるようになる。
本発明は、金属酸化物、金属化合物、金属、および、カーボンからなる群より選択される少なくとも1つを含む第1膜と、ポリパラキシリレン膜を含む第2膜(以下、「ポリパラキシリレン膜」ということがある。)とを備えた複合膜に関するものである。
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化アルミ、ZnO、MgO、InSbO、InZnO等が挙げられ、これらのなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属化合物は、金属元素を含む化合物のうち上記金属酸化物以外のものである。金属化合物としては特に限定されないが、例えば、炭化ニオブ、炭化タンタル等の金属炭化物;ZnS等の金属硫化物;MgF2等の金属フッ化物;金属窒化物等が挙げられ、これらのなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、タンタル、タングステン、ニッケル、コバルト、モリブデン、Cu−Ga、Ni−Cu、Ni―W、Al−Ti、Al−Cr、Al−Ta、Ge−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Tb−Fe−Co、Gd−Fe−Co、Co−Cr−Ta、Ni−Ti等の単体金属または合金が挙げられ、これらのなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンについては後述する。
本発明の複合膜において第2膜は、上記一般式(I)で表される構造単位を有するポリパラキシリレンを含む膜である。ここで式(I)におけるmは0または1であるが、ビームによって簡単に昇華し、消滅する点からmは1であることが好ましい。mが0のとき、無結合を意味する。本明細書において、「無結合」とはベンゼン環を構成する炭素原子に、水素原子が結合していることを意味する。
またnは、5000以上の整数である。
本発明の複合膜における第1膜の1層あたりの積層量は、5〜100μg/cm2であることが好ましい。第1膜のより好ましい下限は、20μg/cm2、更に好ましい下限は、30μg/cm2、特に好ましい下限は、40μg/cm2である。
積層量が上記範囲内であると、最終的に得られる膜の寿命をカーボン薄膜単体の場合と同程度に維持しつつ強度に優れたものとすることができる。
第2膜は、10μg/cm2〜30μg/cm2であることが好ましい。
第2膜が、10μg/cm2以上であると、単分子膜として全体を覆うことができ、膜に充分な強度を付与することができる。30μg/cm2以下であると、第2膜たる高分子膜のもつ熱膨張性等が第1膜に与える影響が小さく、複合膜全体としてビームによって破損するおそれが小さくなる。
本明細書において、「積層量」は、単位面積あたりの質量で表され、精密電子天秤を用いて積層前後の重さの変化を測定し得られた値である。
本発明の複合膜は、上記「1層あたりの積層量」なる表現から明白なように、第1膜と第2膜とを少なくとも1層備えたものであるが、第1膜上に第2膜を積層した後、さらに第1膜を積層したものであってよい。また、第1膜と第2膜とを交互に2層以上積層したサンドイッチ構造を有するものであってもよい。
サンドイッチ構造を形成する場合も、第1膜の1層あたりの積層量は、5〜100μg/cm2であることが好ましく、かつ第2膜の1層あたりの積層量は、10〜30μg/cm2であることが好ましい。第1膜と第2膜との積層量が上記範囲内であると、最終的に得られる膜の寿命を第1膜単体の場合と同程度に維持しつつ強度に優れたものとすることができる。
サンドイッチ構造を形成する場合、第1膜の合計積層量が1mg/cm2となり、かつ第2膜となるポリパラキシリレン膜の合計積層量が、200〜400μg/cm2となるまで積層することができる。
従って本発明の複合膜における第1膜と第2膜との合計積層量としては、15μg/cm2〜1.4mg/cm2とすることができる。
本発明の複合膜において第1膜は、金属酸化物薄膜、金属化合物薄膜、金属薄膜、またはカーボン薄膜のいずれであってもよいが、カーボン薄膜が好ましい。
上記カーボン薄膜におけるカーボンは、蒸着により形成し得るカーボンを意味する。カーボンとしては、導電性、非導電性のいずれを用いることもでき、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、ダイヤモンド、アモルファスカーボン、グラファイト等が挙げられる。
上述のカーボン薄膜は、上記ポリパラキシリレン膜を積層することにより薄膜の強度が増し、例えば、ビーム照射用ターゲット薄膜に用いる場合、膜製造時基板より剥離する作業、開口ホルダーへの貼付作業時、装置への取り付け作業時、または装置の真空排気時や大気開放時等に破損することが大幅に減る。そして、カーボン薄膜の歩留まりが向上し、作業者の技術の差もカバーできる点で特に有効である。
カーボン薄膜の1層あたりの積層量は、5〜100μg/cm2であることが好ましく、かつポリパラキシリレン膜の1層あたりの積層量は、10〜30μg/cm2であることが好ましい。カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との積層量が上記範囲内であると、最終的に得られる膜の寿命をカーボン薄膜単体の場合と同程度に維持しつつ強度に優れたものとすることができる。
本発明の複合膜の大きさは、例えば、直径20mm〜100mmとすることができる。上述のように大面積であると、膜を回転させて用いることにより、同一箇所にビームを照射しなくて済み、例えばビーム照射用ターゲット薄膜として用いる場合の寿命を飛躍的に長くすることができる。
本発明の複合膜に例えば、イオンビームを照射すると、該ビームの当たる場所の温度は上昇する。約200℃以上になるとポリパラキシリレン膜は昇華して第1膜だけが残る。ポリパラキシリレン膜が第1膜に挟まれ、内側に存在している場合も温度が200℃以上になれば昇華して第1膜だけが残る。したがって、第1膜単体のものと同様に取り扱うことができ、例えば、第1膜がカーボンからなる場合、カーボン単体の膜と同様にビーム照射用ターゲット薄膜として好適に用いることができる。
一方、ビームの当たらないところには第2膜が残るので、残る第2膜により複合膜全体の強度はより高く維持される。
なお、第2膜となるポリパラキシリレン膜は、第1膜の全面を覆う必要は必ずしもなく、第1膜を所定のパターンで部分的に覆うものでもよいし、あるいは第1膜の補強を要する部分だけを覆うようにするものであってもよいが、パターニング、マスキング等をしなければ後述の製造方法による場合通常、複合膜を形成する基板を含む全表面を被覆するものとなる。
本発明の複合膜は、ビーム照射用ターゲット薄膜に好適に用いることができる。ビーム照射用ターゲット薄膜は、イオンビームやレーザー光を照射する薄膜である。
本発明のビーム照射用ターゲット薄膜の製造方法の1つの態様(以下、単に「本発明の第1製法」という。)は、基板上に、剥離剤を介してカーボン薄膜を積層する工程と、上記カーボン薄膜上に、ポリパラキシリレン膜を形成する工程と、上記複合膜を水性溶媒に浸漬することで基板から剥離する工程とを含む。
本発明の第1製法は、基板上に、剥離剤を介してカーボン薄膜を積層する工程を含む。
基板の表面材質としては、特に限定されないが、例えば、金属、ガラス等を採用することができ、積層するカーボン薄膜との剥離が容易な材質であればより好ましい。
カーボン薄膜の積層に先立ち、基板に積層する剥離剤としては、後の工程で水性溶媒に浸漬することから水溶性のものが好ましく、例えば、NiCl2、NaCl、LaCl3等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはランタノイドの塩化物が挙げられる。
基板表面への剥離剤の積層は、抵抗蒸発源を使用して蒸着により行うことができる。
基板に剥離剤を積層したのち、カーボン薄膜は、アーク放電法、スパッタ源等を用いて積層することができる。但し、この過程までは市販の膜が存在するのでそれをそのまま代用することもできる。
本発明の第1製法は、上記カーボン薄膜上に、ポリパラキシリレン膜を形成する工程を含む。
上記カーボン薄膜へのポリパラキシリレン膜の積層方法としては、均一な膜を形成する観点から蒸着法が好ましい。
蒸着は、例えば、原料気化部、熱分解部および蒸着部をこの順に備えた蒸着装置において、予めカーボン薄膜が蒸着された基板をポリパラキシリレン専用の蒸着部内に配設し、行うことができる。
まず原料である下記一般式(II)(2つのmは、各々独立して、0または1の整数であり、mが0のとき、無結合を意味する。)で表されるジパラキシリレン類の固体ダイマーを原料気化部にて昇華させる。
気化温度としては、40℃〜175℃が望ましい。気化は、1トール(133Pa)以下の減圧下にて行うことができる。
得られた気化ダイマーは、熱分解部に輸送されて熱分解され、下記一般式(III)で表される安定なジラジカルパラキシリレンを生成する。
熱分解温度としては、600℃〜680℃が望ましい。熱分解は通常、0.5トール(67Pa)以下の減圧下にて行うことができる。
生成したジラジカルパラキシリレンは、蒸着部に輸送され、基板に形成されたカーボン薄膜表面に吸着するのと同時にまたはその後に相互に重合し、下記一般式(IV)で表される高分子量のポリパラキシリレン膜を形成する。
重合反応温度としては、基板に塗布された剥離剤の蒸散や分解を防ぎ、かつ基板に形成されたカーボン薄膜の変形やダメージを防ぐ観点から、常温で行うことが好ましく、例えば、20℃〜35℃が望ましい。重合は通常、0.1トール(13Pa)以下の減圧下にて行うことができる。
なお、余剰のジラジカルパラキシリレンは、後流に冷却筒を設け通常−70℃程度の温度にて回収することができる。
(II) (III) (IV)
本発明の第1製法は、上記カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合体を水性溶媒に浸漬することで基板から剥離する工程を含む。
上記水性媒体は、水を含む溶媒または溶液であり、例えば、水、少量のアルコールを混入させた水等が挙げられる。
10〜40℃の水性溶媒に基板を浸漬すると、上述のようにカーボン薄膜と基板との間には水性溶媒に可溶な剥離剤があらかじめ蒸着されているので、カーボン薄膜はポリパラキシリレン膜が積層した状態で基板から剥離し、通常水性溶媒に浮かぶ。該浮遊物が、上記カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合体であることは、それぞれの表面の色の違いまたはビームを当てたときに昇華するか等により確認することができる。
以上の工程を経て得られた本発明のビーム照射用ターゲット薄膜は、カーボン薄膜単体に比べ強度が向上するので、今まで不可能であった100mm以上の開口径を有する開口ホルダー等に対しても非常に容易に貼り付けることができる。
また従来、開口ホルダーに貼り付けられたカーボン薄膜は振動や風で破れやすいことが知られている。例えば、ビーム照射用ターゲット薄膜は、加速器にてビームを通過させる場合、真空条件下で使用することが一般的であるが、この際、チャンバーにセットして排気を開始すると、排気スピードをスローにしないとカーボン薄膜のみからなるターゲット膜は破れやすいことが知られている。これに対し、本発明のビーム照射用ターゲット薄膜はかなりの機械的衝撃や風の衝撃に耐え、比較的破れにくいという利点がある。
本発明のビーム照射用ターゲット薄膜の製造方法のもう1つの態様(以下、単に「本発明の第2製法」という。)は、基板上に、所望により剥離剤を介してポリパラキシリレン膜を形成する工程と、上記ポリパラキシリレン膜上に、カーボン薄膜を形成する工程と、上記ポリパラキシリレン膜とカーボン薄膜との複合体を基板から剥離する工程とを含む製造方法により製造することも可能である。
この場合、基板の表面材質としては、特に限定されないが、金属、ガラス等を用いることができる。
また所望により用いる剥離剤としては、特に限定されないが、例えば、石けん水等の界面活性剤、真空グリース等の油等が挙げられる。
なお、上記剥離剤を用いる場合、剥離剤の基板表面への積層は、布等にしみこませたものを手でこすりつけて極少量を均一に塗布する。
基板に剥離剤を積層した後におけるポリパラキシリレン膜を形成する工程およびカーボン薄膜を形成する工程は、上述した本発明の製造方法における工程と同様である。
このようにして基板に形成された複合体を基板から剥離する工程は、例えば、複合体の表面における膜として剥離したい部分の外周縁に、粘着材を貼り付け、該粘着材とポリパラキシリレン膜との接着が剥離する方向、例えば、90°接着剥離方向に力を加えることにより行うことができる。
粘着材は、複合体表面との間に接着性を有する粘着材であれば特に限定されないが、例えば、複合体表面がポリパラキシリレン膜である場合、市販のセロハンテープ等の粘着テープを用いることができる。
なお、粘着材を接着するのはポリパラキシリレン膜表面であることが好ましい。
上記カーボン薄膜およびポリパラキシリレン膜は、それぞれ1層以上形成することができ、上述のようにサンドイッチ構造を形成することが可能である。
本発明における複合膜のその他の用途としては特に限定されず、例えば、パッキン;光ファイバ;透明導電膜、液晶BM膜、電極膜、プラズマディスプレイ保護膜等の表示デバイス用薄膜;金属磁性膜、光磁気ディスク、相変化型光ディスク、反射膜、保護膜等の記録媒体用薄膜;ハイブリッドIC、リレー、サーミスタ、ボビン、キャパシタ、周波数フィルタ、ホール素子、磁気ヘッド、サーマルヘッド、ミニチュアモーター、サーキットボード、マイクロプローブピン、コイル、センサー、スイッチ、ステッピングモーター、バリスタ、トランス、圧電部品、コネクタ等の電子部品用薄膜;自動車関連電装品;薄膜太陽電池、燃料電池、リチウム電池等の電池用薄膜;理化学機器用途;固形状化学薬品用途;装飾用薄膜;表面硬化用薄膜等を挙げることができる。
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
基板(表面材質:ガラス)上に、カーボン薄膜40μg/cm2を積層したもの(Arizona40,アリゾナ社製)について倍率10000倍の電子顕微鏡にて観察したところ、表面に凹凸があり、μmオーダーの粒径を有するカーボン粒子が観察された。
該カーボン薄膜上にさらにポリパラキシリレン膜10〜20μg/cm2を積層した表面についても同様に観察したところ、ポリパラキシリレン膜が、非常に薄く均一に積層されていて、積層後の表面は滑らかに変化していることがわかった。また、ポリパラキシリレン膜が、カーボン薄膜と別の層になって積層されているのではなく、表面の凹凸に入り込み、しかも均一な厚みで積層されていることがわかった。
次に、基板(表面材質:ガラス)上に、積層量10μg/cm2、20μg/cm2、40μg/cm2、および80μg/cm2のカーボン膜(アリゾナ社製、それぞれ、ACF−10、ACF−20、ACF−40、ACF−80。基板の大きさ1インチ×3インチ(2.54cm×7.62cm))を積層したカーボン積層基板を2つずつ用意した。
カーボン積層基板の1つは、パリレンコーティング装置(ラボコーターPDS2010型、スペシャルティコーティングシステム社製)のコーティング室にセットし、2−クロロジパラキシリレン(スペシャルティコーティングシステム社製)を175℃、1トールで気化したのち、680℃、0.5トールで熱分解し、35℃、0.1トールの条件下、10〜20μg/cm2のポリパラキシリレン膜を積層した。
カーボン積層基板のもう1つは、ポリパラキシリレン膜を積層しなかった。
これら基板を水に浸漬することにより、膜が分離した。得られた膜は、カーボン薄膜、および、カーボン薄膜とポリパラキシリレン膜との複合膜であることがわかった。
得られた複合膜を開口径14mmのホルダーに該開口を覆うように固定し、チャンバー内を真空ポンプにより排気し、1×10―4Pa以下まで減圧した。
減圧下、複合膜に対し、Xe9+ビーム(ビーム径5mmΦ、ビーム電流3.78eμA、エネルギー33keV/核子)を膜の中央に照射して破れるまでの寿命を比較した結果を図1に示す。
図1によれば、10μg/cm2(ACF−10)と20μg/cm2(ACF−20)とのカーボン薄膜にポリパラキシリレン膜(PPX)を積層した物の寿命はわずかに短くなる傾向にあるが、40μg/cm2(ACF−40)と80μg/cm2(ACF−80)の物は寿命が同程度か延びる結果となった。
ここで、ACF−10とACF−20のカーボン薄膜は、ACF−40やACF−80と比べると薄く、取り扱いする上で大変破れやすいものである。そのため、照射して破れるまでの寿命がわずかに短縮したとしてもポリパラキシリレン膜を蒸着することによる取り扱い上の強化というメリットの方が大きいと考えられる。
このため、すべての複合膜において強度向上によるメリットが大きくなり、取り扱いやすさや、実用上の寿命は延びることになる。
図1は、被覆量を変えたカーボン薄膜の単体膜が破れるまでの寿命と、該被覆量が異なるカーボン薄膜に対して10〜20μg/cm2のポリパラキシリレンを積層し得られた複合膜の膜寿命とを比較した棒グラフである。

Claims (3)

  1. イオンビーム照射用ターゲット薄膜に対してイオンビームを照射して、照射したイオンビームより価数高いイオンビームを生成するイオンビーム生成方法であって、
    前記イオンビーム照射用ターゲット薄膜は、カーボンからなる第1膜と、下記一般式(I)(mは、0または1であり、mが0のとき、無結合を意味する。nは、5000以上の整数である。)で表される構造単位を有するポリパラキシリレンを含む第2膜とを備える、イオンビーム生成方法。
  2. 前記第1膜と第2膜との合計積層量が、15μg/cm2〜1.4mg/cm2であることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム生成方法。
  3. 前記第1膜の1層あたりの積層量が、5〜100μg/cm2であり、かつ前記第2膜の1層あたりの積層量が、10〜30μg/cm2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオンビーム生成方法。
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