JP4940482B2 - 甲殻類の加工食材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は魚貝類の内、特にエビ・カニなどの高級甲殻類に係る加工食材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にエビ・カニなどの高級甲殻類はボイルして食べるなどが一般的であるが、新鮮な内は刺身にして食することも出来る。カニ・エビには独特の舌触りや淡泊な風味がありまた素材としても高級感がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、生のカニ・エビに特有の旨味が酵素などの作用で変質し易く、家庭やレストランでないとなかなか食べられないという問題がある。即ち何時でも何処でも食べられると言うものではなかったため、当発明者はこれを何とかしたいと考えた。また水分値の多さがマイナスと成っているカニ・エビ等の甲殻類に対して、独特の舌触りや風味や素材としての高級感を活かした美味しい加工食材とすることが出来ないという問題もある。菓子や酒の肴としてそのまま食べることが出来、サラダなどにも利用出来、家庭やアウトドアでの料理にもすぐに使うことが出来、燻製の材料などとして活用することが出来るような、まったく新しい食材として提供しようと考えた。
【0004】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記課題は、素材の表面を乾燥させる乾燥工程の後に、身の中心部が、全く生で透明な状態と加熱により中心部に熱が加わって透明感を失い完全に白変した状態との間の状態であるところの、透明感のある白色の状態を呈するまで、素材に熱を加える加熱工程を経る製造方法とすることにより達成され、甲殻類の加工食材を得ることが出来る。例えば、ズワイガニでは水分値が82.2パーセント、脂肪値が0.5パーセントと成っており、特に水分値が多い素材であるため、調理時間を長くすると身は固く成り過ぎて舌触りが悪く成り、素材本来の味が失われて美味しくなくなる。しかしながら身の中心部が上記透明感のある白色の状態(全く生で透明な状態と、加熱によって中心部に熱が加わり透明感を失って完全に白変した状態と、の間の状態のことである)を呈する時点を目安として加熱を終わらせることにより、素材の持ち味(食感、味、見た目、高級感等)を残すことが出来るのである。身の中心部が上記透明感のある白色になった状態は、身の中心部に温度計のセンサーを刺し入れておき温度を自動計測するようにしたり、串を身に刺してみたり、身を割って見たり、加熱温度と加熱時間の兼合いから割り出した時間が経過したか否かをチェックしたりして知ることが出来る。素材としての甲殻類の種類や大小に左右されることがある。また外気の温度や湿度に影響されることがある。このようにして加熱工程の終了を自動制御したり、製造者の経験によって頃合を知り加熱工程を終わらせる。この加熱工程には、スチーム(蒸す)、ボイル、フライ(揚げる)、焼くなどがある。なお特にエビの場合、下ごしらえの工程に於いて身に串を刺すようにすると熱によってエビが曲がってしまうことを防止出来る。また殻付きの場合では、腹部の殻に縦方向の切れ目を入れることで同様の作用を得ることが出来る。
【0005】
カニ・エビ等の甲殻類は、殻付きのままでも、剥き身としても本発明に供することが出来る。殻付きの甲殻類の加工食材の場合上記製造方法によれば身の中心部が上述した透明感のある白色の状態である甲殻類の加工食材を得ることが出来る。また仕上がりが殻と身との間に隙間を生じている状態と成るものもある。この場合少なくとも殻は焦げが付いた状態と成るものもある。焼く工程を有するものは、特に殻付きのエビに好適な製造方法である。剥き身の甲殻類の加工食材の場合では、身の表面は焦げが付いた状態と成るものもある。また殻付きであっても剥き身であっても身の表面に赤色が見られる状態である加工食材を得ることが出来る。
【0006】
なお殻付きの甲殻類の加工食材に於いても剥き身の甲殻類の加工食材に於いても、加熱後に身を解したり擦り身にして任意形状に成形した加工食材とすることが出来る。更には加熱工程前の剥き身を解したり擦り身にした後加熱工程に掛けるようにすることも出来る。また加熱工程に於いては、スパイスを焼きその熱でエビ・カニを加熱することが出来る。素材に合わせて複数種のスパイスを調合してもよい。これにより独特のスパイス(香木類・香草類)の香が付着して素材の味を引き立てることが出来る。また素材を竹や桜などの木酢液に浸すようにして独特の味付けを行なうようにしてもよい。
【0007】
また加熱工程に先立って、素材を予め食塩水に漬け込んだ後、乾燥させる工程を経るようにしてもよい。更に素材に自然に含まれる塩分を利用することが出来るため、食塩濃度が0.1から10.0パーセントの食塩水としてもよい。素材の持ち味を活かすにはこの程度の塩分濃度で十分である。なお塩分調整に使用する食塩濃度は素材としての甲殻類の種類や大きさ、季節などによっても異なるので適宜加減してよい。なおこの後の乾燥工程は自然乾燥のみとしても、自然乾燥を行なった後に温熱乾燥を行なうものとしてもよい。
【0008】
また加熱工程を1段とする場合と複数段とする場合がある。複数段の場合には最終的に身の中心部が上記透明感のある白色になった状態を100パーセントの処理割合として、各加熱段階で加熱割合を決定すればよい。また加熱工程は、その間中一定の温度を保つばかりでなく、段階的に温度を上げて行くものである加工食材の製造方法とすることが出来る。ポイントは最後の温度で素材の中まで熱を通すことであり、身の中心部が上記透明感のある白色になった状態で加熱工程を終えるとソフトな感触の加工食材を得るのに必要十分な時間と成る。なお更に加熱時間を幾分長くして、歯ごたえのある製品に仕上げてもよいことは言うまでもない。
【0009】
また最初の加熱工程の際に出る汁ごと寝かせ、その後乾燥させる工程を経て次の加熱工程に移行する加工食材の製造方法とすることが出来る。素材をボイルしたり蒸すという最初の加熱工程で得られる汁ごと寝かせると、旨味が素材によく浸透する。また甲殻類がエビであってアクがあまり出ないように短時間だけ温熱乾燥を行なった後に加熱工程に掛ける方法で製造することが出来る。またこの際徐々に温度を高くする加熱工程とすることも出来る。エビの場合はタンパク質が分解したり身が固く成る限界温度が摂氏約70度であるため、これ以上温度を上げないことが肝要である。また生のエビは長時間空気に晒すとアクが出るため、自然乾燥よりは温熱乾燥の方が好ましくある。
【0010】
また加熱工程の前に新たな工程を付け加えるものとしては、素材の表面に調味料の層を形成させ、その後ボイルまたは蒸すまたはフライまたは焼くなどの工程を経る製造方法を上げることが出来る。例えば小麦粉や片栗粉を素材にまぶし、表面にこれ等の層が形成された状態の加工食材とするなどである。これ等の層は素材から出て来る旨味を失することなく層内に閉じ込めておく作用がある。なお殻付きのエビであっても殻の表面に調味料の層を形成させることが出来る。
【0011】
次に最初の加熱工程の後に、素材を袋に真空パックして次の加熱処理を行なう製造方法とすることが出来る。これによって加工食材が殺菌されたパックのまま提供される。更に高温高圧殺菌としてもよい。なおここでの加熱処理に付いても最終的に身の中心部分が上記透明感のある白色になった状態になるまでの状態を100パーセントの処理割合として、複数段の加熱工程で加熱割合を考慮することが好ましい。この他所謂深絞り成型に成る包装体を利用した真空パックを行なうようにしてもよい。この包装体は底材フィルムと蓋材フィルムとから成るものが一般的であるが、このようなものも袋であるとする。また更に袋から抜気しつつ袋に窒素ガスや炭酸ガスを注入するようにしてもよい。これ等のガスによって長らく品質を保持することが出来る。この他袋内に保存料を注入したり保存剤を挿入して袋を封止することなども行なわれる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明するが、本発明はこれ等の実施の形態にのみ限定されるものではなく、様々なバリエーションを与えることが可能である。
【0013】
第1の実施の形態は、爪が付いた状態のカニの身に付いて、カニの旨味を逃さないという特徴を有する加工食材の製造方法に関するものであり、爪のみ残して殻を取り去った身を塩水に漬けて塩分調整を行なった後に、このカニに片栗粉をまぶして真空パックし、真空包装袋ごとボイルする(図2)。身の中心部が上記透明感のある白色になった(熱が通った)ところでこの加熱工程を終了させる。この加工食材では、カニの身1の表面に調味料(片栗粉3)の層が形成された状態と成っている点に構造状の特徴を有する。図中符号2は軟骨である。
【0014】
上記片栗粉3は加熱処理を行なうことによりカニの身から出る旨味を含んだ汁を閉じ込める働きがある。また他の調味料や香辛料を共に用いることで、素材にこれ等の調味料や香辛料を馴染ませ、口当たりを良くすることが出来る。片栗粉3以外に小麦粉、コーンスターチ、ゼラチン、寒天などを適宜用いてよい。なお素材によっても多少の違いはあるが、魚肉や獣肉の加工食材に於ける燻煙前の下ごしらえの工程としては腸(わた)を抜いたり脂身を取り去ったりする下ごしらえ、塩漬け・調味、塩抜き、乾燥などを経る。しかしながら甲殻類は淡泊な食材でもあり素材自体に含まれている塩分をうまく利用することが出来るため、上記の塩漬け・調味、塩抜きを省略することが可能であり、簡単な塩分調整を行なうだけで済む。また後述するように加工食材としての提供形態によっては上記塩漬け・調味の工程に工夫を加えてもよい。ズワイガニなどでは82.8パーセントもの水分を保有しみずみずしい筋肉がカニ本来の旨味を支えている。この実施の形態ではこのようなみずみずしさが残るように加熱処理するのであるが、加熱し過ぎると身は固く引き締まり、舌触りの悪いものと成ってしまう。そこで更なる工夫として身の中心部10が上記透明感のある白色になったところで加熱処理を終了させることによって、カニ本来の旨味を保持することが出来るのである。なお身の中心部10が上記透明感のある白色にならない内に加熱処理を終了させるのは問題がある。即ちカニ独特の旨味の元であるペタインやホマーリンと呼称されるエキスが酵素の作用で経時変化し悪影響を及ぼすためである。そこでこの問題が無くなり、カニ本来の旨味を残しつつ加工食材に成り得る状態を、身の中心部10が上記透明感のある白色になった状態としたのである。なお身が生である時の透明な状態と、熱が加わった状態で現われる透明感とでは透明な状態が異なるが、熱が加わった状態で現われる透明感のことを白変と称している。更にこの状態を越えて加熱し続けると次第次第に身の中心部10は透明感のない白色へと変化して行くのが分かる。
【0015】
次に第2の実施の形態は、塩分調整を行なった生カニを真空パックしてそのままボイルし、袋からカニを取り出した後、スチームによる加熱処理に入る。既に一度ボイルしてあるためスチームは短時間でよい。この2度目の加熱処理の時に身の中心部を上述した透明感のある白色になった状態にさせて加熱処理を終了する(図3)。
【0016】
なおこの実施の形態に於いても真空パックの前にカニの身に片栗粉などの調味料をまぶすようにしてよい。この実施の形態は、2度に分けて加熱処理を行なうものであり、しかも最初の加熱処理と次の加熱処理とでは形態が異なっている例である。
【0017】
次に第3の実施の形態は、加熱処理中にエビの旨味を逃さない加工食材の製造方法に関するものであるが、先ずカニを少量の塩(食塩濃度が0.5パーセントの食塩水)に数時間漬けて塩分調整を行なった後、中火で20分間スチームし、この時に出た蒸し汁に漬け置いて蒸し汁をカニに含ませる。一昼夜冷蔵庫で漬け置くようにしてもよい。次に自然乾燥(風乾)から温熱乾燥(摂氏約20度)を経て表面が少し乾いた状態にし、揚げる(フライにする)と、身の中心部が上記透明感のある白色になって来るのでフライを終了する。最後に数時間風に晒して(自然乾燥)、全ての工程を終了する(図4)。
【0018】
さてスチームにて蒸す、熱湯でボイルする、油で揚げる、焼くなどの加熱処理を行なうと旨味を含んだ汁がエビから出るが、これにエビを漬け置くようにして再度エビに戻すのである。この結果エビの旨味を含んだ加工食材が出来上がる。なおこの実施の形態では、更に蒸し器で蒸す際に火力と蒸し時間を変えることにより、身の弾力性に関する状態を作り分けることが出来る。例えば弱火で時間を掛けた場合にはみずみずしい旨味を残してソフトに仕上げることが出来、中火で蒸すことにより身の中心部にみずみずしさを残したまま表面に適度の固さを付けることが出来る。
【0019】
次に第4の実施の形態は、生カニの身に対し塩分調整のための塩振りと味付けとを行ない、自然乾燥(風乾)させた後、摂氏20度〜30度で表面が少し乾くまで温熱乾燥させ、その後焼く処理を開始する。この加熱処理は3段階に分かれており弱火、中火、強火である(これ等の時間は調整可能である)。そして身の中心部が上記透明感のある白色になった(熱が通った)ところで加熱処理を終了させ、十分に自然乾燥(風乾)させる(図5)。なお上記工程に於いて、塩分調整・味付けの後一昼夜寝かせるようにしてもよい。
【0020】
この実施の形態では加熱を3段階に分けているが、これはカニの身を固くしないための処理である。この結果身の繊維の一つ一つに弾力性を生じ、繊維の色艶の良いものが得られる。なおこれ等の温度や時間は外気の温度や湿度に影響されることがあるため適宜調整すればよい。
【0021】
次に第5の実施の形態は、短かい時間で加工食材を製造することを目的としている。このため真空包装機専用袋を用いて、ボイルの後で高温処理を施すことを特徴としている。即ち塩分調整を行なった生のカニを十分に風乾させてボイルに入るが、この時のボイルは身を赤くするためであり加熱時間は少しでよく、8割方は生の状態のままとしておく。次に風乾させた後袋詰めする。またこの際袋内に窒素ガスを注入する。この後包装袋ごと高温殺菌を行ない、この時の熱により残りの8割分の加熱処理を行ない、カニの身の中心部が上記透明感のある白色になった(熱が通った)ところで高温殺菌を終了させ、真空包装袋ごと冷却水の中に入れて冷却し、全ての工程を終了する(図6)。
【0024】
上記真空包装袋は、一例ナイロンシートとポリエチレンシートとを張り合わせたものの場合、摂氏−40度の冷凍〜85度で30分間の加熱にまで対応可能であるが、これ以外の構成に成る真空包装袋を適宜採用してよい。レトルトパック用の袋などでは摂氏140度まで対応可能である。なお加熱に付いては必ずしも殺菌を主目的としない場合(高温加熱)や、殺菌を目的とする場合(高温殺菌)がある。また後述のように高圧で加圧しつつ高温加熱する場合(高温高圧殺菌)もある。最初の加熱処理に於いては、ボイルの代わりに蒸し器で蒸す、揚げる、焼くなどとすることが出来る。何れにせよ最初の加熱処理を8割方生の状態である程度に止どめ、その後真空パックして次の加熱処理を行なうことで調理進行を速め、結果的に短時間で加工食材を製造することが出来るように成った。
【0025】
この実施の形態によれば、少し弾力性があり噛み応えのある加工食材と成る。また仕上がり時に色鮮やかな赤が発色する。タンパク質と結合していたアスタキサンチンと呼称される色素がボイル時に遊離して来るためである。そして最後の高温殺菌によってエビの加工食材の保存性を向上させることが出来る。真空包装袋内に注入された窒素ガスはこの作用を助け、酸化やカビの発生を防止し品質の安定に寄与する。なお前記袋詰めに際しては、所謂深絞り成型に成る袋を利用するようにしてもよい。また上記真空パックの工程を真空にしない単なる袋詰めに代えることも可能である。
【0026】
さて図7は第6の実施の形態に於ける加工食材の説明図であり、上述した各種実施方法や、後述する実施方法により得られる甲殻類の加工食材を、更に解したり擦り身にしたものを成形して提供しようとするものである。例えば擦り身11にした後板4上にカマボコ型に成型して提供することが出来る。またカマボコ型に成型するのみならずソーセージのようにパックしたり、缶詰めやビン詰めにすることが出来る。或いは型押ししたり、カニならばカニの甲羅に詰めて提供するようにしてもよい。また魚の擦り身やカニ味噌などを混ぜた加工食材などとすることも出来る。
【0027】
次に第7の実施の形態を、図8、図9及び図11により説明する。この実施の形態は殻付きエビの加工食材の製造方法を提供するものであり、下ごしらえとして有頭エビの触覚と背腸とを取り、後述する加熱処理の際にエビが曲がらないように串を刺し、素材自体に含まれている塩分を利用して少量の塩で塩分調整を行なった後、殻の表面の水分を取るために温熱乾燥させ、殻6の表面が少し乾いたところでボイルを開始し、身5の中心部分50が上記透明感のある白色になった(熱が通った)ところでボイルを終了し、最後に自然乾燥を行なう(図7)。この後パック詰めを行なってもよい。図8、図9は上記製造方法により製造された加工食材としてのエビであり、身5が引き締まって殻6との間に少しだけ隙間7を生じている状態を表わす。
【0028】
エビもカニ同様に水分を多く含んでおり加熱により身が固く絞まってエビ本来の旨さを損なってしまうものである。ボイル時の温度は摂氏70度を越えないように設定しないと歯ごたえが悪く成り旨味を完全に失してしまう。エビの場合はタンパク質が分解したり身が固く成る限界温度が摂氏約70度であるため、これ以上温度を上げないことが肝要である。またエビもカニ同様、特有の旨味が酵素などの作用で変質し易く、家庭やレストランでないとなかなか食べられないという問題があり、何時でも何処でも食べられると言うものではなかったため、この加工品としては従来は塩辛やスナック菓子への混入くらいしか無かった。しかしながら見た目のボリューム感、高級感、エビを食べたという実感を持ち、珍しくもあり手軽に食することが出来るものを提供したいと考えた。この結果生まれたのがこの実施の形態の加工食材である。なおボイルに於いては、温度をいきなり高温にせず徐々に温度を上げて行くやり方のほうがエビの身を固くしないためにはより好ましくある。またボイル前の温熱乾燥に関して、生のエビは長時間空気に晒すとアクが出るため、自然乾燥よりは温熱乾燥の方が好ましくある。またこのように串を利用することによってエビの形を整えることが出来、高級エビ加工食材としての商品価値を高めることが出来る。なお串を用いずにエビの形を整えるには、図10で図示するように、腹部の殻6に縦方向の切れ目60を入れるようにする。これによって加熱時のエビの曲がりを防止することが出来、奇麗な形の高級感溢れるエビ加工食材を得る。
【0029】
次に第8の実施の形態は、触覚と背腸とを取り去った有頭エビに串を刺して下ごしらえをし、味付き塩の調味液に漬け込み、温熱乾燥によって殻の表面の水分を取った後に、必要に応じて軽く塩を振ってから中火の遠火でエビの両面をこんがりと焼き、50パーセントほど焼けた状態(殻は焦げが付いた状態)で最初の加熱処理を終え、袋詰めしまたこの際に袋内に窒素ガスを注入し、この後包装袋ごと高温殺菌しこの時の熱により残りの5割分の実質的な加熱処理を行ない、身の中心部分が上述した透明感のある白色の状態になったら(ここでこの発明が言うところの100パーセント熱が通った状態と成る)この高温殺菌を終了させる(図12)。なおこの後真空包装袋ごと冷却水の中に入れて冷却してもよい。
【0030】
既に述べたように、工程全体として100パーセントの処理割合ということに付いて常に考慮することが好ましく、エビやカニの加工食材の製造に当たり素材本来の舌触り、風味、旨味、高級感を活かすことが出来るのである。例えば最初の加熱処理で40パーセントほど焼いたら、最後の加熱処理では残りの60パーセントを仕上げなくてはならない。同様に最初の加熱処理で60パーセントほど焼いたら、最後の加熱処理で残りの40パーセントを処理するようにする。なおこの実施の形態では殻に焦げが付いた状態と成るように焼いており、出来上がりが美味しそうに見える。しかしながら焦げは付かないまでも、殻に焼きが入った状態の加工食材というものを得ることも可能である。
【0031】
次に第9の実施の形態は、有頭エビの加工食材の製造方法に関する。先ず有頭エビの触覚と背腸とを取り去り、加熱時のエビの曲がりを防止するために腹部の殻6に縦方向の切れ目60を入れて下ごしらえを終え、味付き塩の調味液に漬け込んだ後摂氏70度を越えない温度に設定した蒸し器にて蒸し、殻の表面の水分を取るべく温熱乾燥を行なう。この時までにエビは加熱処理をされているため、次の加熱処理を比較的低い温度で行なう。この加熱工程に於いては、スパイスを焼きその熱でエビを加熱する。続いて自然乾燥にてスパイスの香をマイルドにした後エビを真空パックして高温高圧殺菌を開始し、身の中心部が上記透明感のある白色になったら高温高圧殺菌を終了させる(図13)。なお図10は上記製造方法により製造された加工食材としてのエビである。
【0032】
合計3回の加熱処理に於ける火加減は先の蒸す工程と中のスパイス焼きと最後の高温高圧殺菌工程との兼合いから決定する必要がある。即ち加熱処理が全体として100パーセントと成るように夫々の火加減を調節し、最終的に身の中心部が上記透明感のある白色になったところでこの一連の製造工程を終了させるのである。なお素材に合わせて複数種のスパイスを調合してもよい。これにより独特のスパイス(香木類・香草類)の香が付着して、素材の味を引き立てることが出来る。また素材を竹や桜などの木酢液に浸すようにして独特の味付けを行なうようにしてもよい。何れにせよこの実施の形態では従来にない珍味を提供することが可能と成る。
【0033】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、各実施形態での各工程は相互に利用し合うことが可能であり、素材にはエビの場合と同様カニでも殻付きのものを利用して良く、オキアミなどの甲殻類も任意に利用可能である。下ごしらえの後の水分を飛ばす工程では、自然乾燥(風乾)や温熱乾燥のみならず真空乾燥を利用するようにしてもよい。カニでは一度殻から取り出した剥き身を加熱処理し、その後また殻の中に戻すようにしてもよい。また剥き身の加工食材では輪切りにして提供するなども自由である。
【0034】
このようにして得られた加工食材はそのまま食してもよいが、輪切りにしたり細かく刻んだり、或いは全形のままで他の食品に混ぜたり、料理の具として使用したり、燻製の材料として利用することが出来る。例えば塩分調整したカニの身を桜燻液に浸したり、スモークウッドやスモークチップなどの燻煙材料を使って燻煙するなどである。この用途に用いるのであれば、この際の加熱処理を考慮に入れてもよい。何れにせよ一度火が通っているため手軽に利用することが可能である。
【0035】
上述の第1の実施の形態に関し、真空パックしてボイルする代わりに、片栗粉をまぶしたカニをトレイの上に並べて蒸したり、焼き網の上に並べて焼く処理を行なうようにしてもよい。
【0036】
上述の第7の実施の形態及び第8の実施の形態では、加熱処理の際に有頭エビが曲がらないように串8を刺していた(図9)。または第9の実施の形態では、有頭エビの腹部の殻に縦方向の切れ目60を入れるようにしていた(図10)。これ以外にも加熱処理の間中、有頭エビを筒に入れておくようにする方法を上げ得る。筒の中で加熱された有頭エビは、曲がろうとしても筒に阻止されて曲がることが出来ない。このような製造方法もまた本発明の権利範囲である。なお筒の種類としては、網筒や前面に小孔を開孔した金属筒などを上げることが出来る。この他高温や燻煙に耐えることが出来る素材であれば合成樹脂製の筒、紙製の筒などであってもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上本発明は、素材の表面を乾燥させた後に、身の中心部が、全く生で透明な状態と加熱により中心部に熱が加わって透明感を失い完全に白変した状態との間の状態であるところの、透明感のある白色の状態を呈するまで加熱する加熱工程を経る甲殻類の加工食材の製造方法とした。本発明は身に熱が加わって現われる透明感のある白色すなわち身が白変した状態が身の中心部に現われた状態を加熱の程度が最終的に100パーセントに達した状態とする点に特徴を有する。熱が中心部まで通って中心部が白変した段階で加熱工程を止めるのである。このため本発明の甲殻類の加工品は身の中心部が白変した状態のものである。これによって水分値の多さがマイナスと成っているカニ・エビ等の甲殻類に対して、独特の舌触りや風味や素材としての高級感を活かした美味しい加工食材とすることが出来、菓子や酒の肴としてそのまま食べることが出来、サラダ等にも利用出来、家庭やアウトドアでの料理にもすぐに使うことが出来、燻製の材料などとして活用することが出来るように成り、所期の目的が達成された。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に於ける加工食材の断面説明図である。
【図2】第1の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図3】第2の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図4】第3の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図5】第4の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図6】第5の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図7】第6の実施の形態に於ける加工食材の説明図である。
【図8】第7の実施の形態に於ける加工食材の断面説明図である。
【図9】第7の実施の形態に於ける串付きのエビ加工食材の説明図である。
【図10】第9の実施の形態に於ける殻に切れ目を付けたエビ加工食材の説明図である。
【図11】第7の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図12】第8の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【図13】第9の実施の形態に於ける製造方法の流れ図である。
【符号の説明】
1 カニの身
10 身の中心部
11 擦り身
2 軟骨
3 片栗粉の被膜
4 板
5 エビの身
50 身の中心部
6 殻
60 切れ目
7 隙間
8 串
Claims (1)
- 素材を予め食塩水に漬け込んでから素材の表面を乾燥させる乾燥工程の後に、最初の加熱工程に掛け、素材が生に近い状態のまま最初の加熱工程を終了させ、この生に近い状態の加熱途中の素材を真空パックし、この真空パックした素材に付き最後の加熱工程を、身の中心部が、全く生で透明な状態と加熱により中心部に熱が加わって透明感を失い完全に白変した状態との間の状態であるところの、透明感のある白色の状態を呈するまで、行なうことを特徴とする、甲殻類の加工食材の製造方法。
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