以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図である。
図において、11は燃料電池(FC)としての燃料電池スタックであり、乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両用の動力源として使用される。ここで、前記車両は、照明装置、ラジオ、パワーウィンドウ等の車両の停車中にも使用される電気を消費する補機類を多数備えており、また、走行パターンが多様であり動力源に要求される出力範囲が極めて広いので、動力源としての燃料電池スタック11と図示されない蓄電手段としての二次電池とを併用して使用することが望ましい。
そして、燃料電池スタック11は、高温膜を備え、水素ガスを燃料ガス、すなわち、アノードガスとし、酸素又は空気を酸化剤、すなわち、カソードガスとするPEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)型燃料電池、又は、PEM(Proton Exchange Membrane)型燃料電池と呼ばれるものである。ここで、該PEM型燃料電池は、一般的に、プロトン等のイオンを透過する電解質層としての固体高分子電解質膜の両側に触媒、電極及びセパレータを結合した燃料電池としてのセル(Fuel Cell)を複数及び直列に結合したスタック(Stack)から成る。
本実施の形態において、燃料電池スタック11は、図示されない複数のセルモジュールを有する。該セルモジュールは、燃料電池としての単位セル(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、該単位セル同士を電気的に接続するとともに、単位セルに導入される水素ガスと空気とを分離するセパレータとを1セットとして、板厚方向に複数のセットを重ねて構成されている。なお、セルモジュールは、単位セル同士が所定の間隙(げき)を隔てて配設されるように、単位セルとセパレータとが、多段に重ねられて積層されている。
また、高温膜とは、雰囲気が高温かつ低湿度である場合において、プロトン伝導度が高い固体高分子電解質膜である。具体的に、高温膜として用いられる材料としては、含フッ素系膜、炭化水素系膜、又は、それらの合成膜などのカチオン交換膜であり、低湿度で高いプロトン伝導性を示す特性の構造を持つもので構成される。なお、低湿度で高いプロトン伝導性を示す特性とは、例えば、一般的な固体高分子電解質よりも水が十分に保水される材料か、又は、水がなくてもプロトンが伝導可能な物質が添加された材料であり、含フッ素系膜のパーフルオロ系膜ではスルホン酸基の濃度が高い(EW値が低い)ものであればよく、炭化水素系膜のスルホン酸化ポリイミド膜では分子構造上に水を保持する物質であればよい。具体的なプロトン伝導度は、温度が50〜140〔℃〕の範囲内で、湿度が0〜50〔%〕の雰囲気下において、一般的な固体高分子(温度50〔℃〕以下、湿度50〔%〕以上の雰囲気下でプロトン伝導度が0.1〔S/cm〕以上)よりもプロトン伝導性が良好なものであり、例えば、温度120〔℃〕、湿度20〔%〕の雰囲気下において、プロトン伝導性が0.1〔S/cm〕以上であるものが好ましい。なお、本実施の形態においては、高温膜としての固体高分子電解質膜が、単位セルの温度が100〜200〔℃〕の範囲内で好適に使用されるものとして説明する。
そして、単位セルは、固体高分子電解質膜の側に設けられた酸素極としての空気極及び他側に設けられた燃料極とで構成されている。前記空気極は、反応ガスを拡散しながら透過する導電性材料から成る電極拡散層と、該電極拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜と接触させて支持される触媒層とから成る。また、単位セルの空気極側の電極拡散層に接触して集電するとともに空気と水との混合流を透過する多数の開口が形成された網状の集電体としての空気極側コレクタと、単位セルの燃料極側の電極拡散層に接触して同じく電流を外部に導出するための網状の集電体としての燃料極側コレクタとを有する。
前記単位セルにおいては、水が移動する。この場合、図示されない水素ガスボンベ、水素吸蔵合金収容装置等の水素ガス貯蔵体から燃料ガス、すなわち、アノードガスとしての水素ガスを燃料極側コレクタの燃料室内に供給すると、水素が水素イオンと電子とに分解され、水素イオンがプロトン同伴水を伴って、固体高分子電解質膜を透過する。また、前記空気極をカソード極とし、図示されない空気供給ファン、酸素ボンベ等の酸化剤供給源から酸化剤、すなわち、カソードガスとしての空気を空気流路としての酸素室内に供給すると、空気中の酸素と、前記水素イオン及び電子とが結合して、水が生成される。なお、水分が逆拡散水として固体高分子電解質膜を透過し、燃料極側コレクタの燃料室内に移動する。ここで、逆拡散水とは、酸素室において生成される水が固体高分子電解質膜内に拡散し、該固体高分子電解質膜内を前記水素イオンと逆方向に透過して燃料室にまで浸透したものである。
そして、10は燃料電池スタック11の温度を調節するための燃料電池温調システムであり、一般的な車両用内燃機関等の冷却システムと同様に、循環する温度調節用媒体、すなわち、温調媒体によって燃料電池スタック11の温度を調節するシステムである。ここで、12は、内部を温調媒体が流通するパイプとしての温調媒体管路18に配設された放熱器としてのラジエータであり、温調媒体と外気とを熱交換させることによって、温調媒体の熱を外気中に放熱して温調媒体を冷却する。また、前記ラジエータ12は、図示されないモータによって駆動される冷却ファンを備えていてもよい。この場合、温調媒体の温度が高くなったとき等には、必要に応じて冷却ファンを作動させることによって、温調媒体を冷却する能力を高めることができる。なお、前記温調媒体は、水、油等の液体であるが、いかなる種類の媒体であってもよい。
また、前記温調媒体管路18には温調媒体を循環させるための循環ポンプ13が配設されている。該循環ポンプ13は図示されないモータによって駆動される。
さらに、前記温調媒体管路18における燃料電池スタック11と循環ポンプ13との間には、後述される冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行って、燃料電池温調システム10の温調媒体を加熱する熱交換器14が配設されている。また、該熱交換器14をバイパスするように、熱交換器バイパス管路14aが前記温調媒体管路18に接続されている。なお、前記熱交換器バイパス管路14aの一端は、三方弁等から成る第1分岐弁15を介して、熱交換器14の冷媒入口側における温調媒体管路18に接続されている。そして、前記第1分岐弁15を操作することによって、熱交換器14を流通する温調媒体の量を調整することができる。この場合、循環ポンプ13から吐出されたすべての温調媒体が熱交換器14に流入するようにしてもよいし、一部の温調媒体のみが熱交換器14に流入するようにしてもよい。さらに、該熱交換器14に流入する温調媒体と熱交換器バイパス管路14aに流入する温調媒体との割合を調整することができるようにしてもよい。
また、前記温調媒体管路18には、前記ラジエータ12をバイパスするように、ラジエータバイパス管路12aが接続されている。なお、該ラジエータバイパス管路12aの一端は、三方弁等から成る第2分岐弁16を介して、ラジエータ12の冷媒入口側における温調媒体管路18に接続されている。そして、前記第2分岐弁16を操作することによって、ラジエータ12を流通する温調媒体の量を調整することができる。この場合、燃料電池スタック11から排出されたすべての温調媒体がラジエータ12に流入するようにしてもよいし、一部の温調媒体のみがラジエータ12に流入するようにしてもよい。さらに、該ラジエータ12に流入する温調媒体とラジエータバイパス管路12aに流入する温調媒体との割合を調整することができるようにしてもよい。
そして、冷凍庫用冷却システム20は、車両に搭載された図示されない冷凍庫内を冷却するために配設された蒸気圧縮式の冷凍サイクルを利用した冷凍サイクル式冷却システムである。ここで、前記冷凍庫用冷却システム20は、一般的な冷蔵庫、冷凍庫、家庭用空調機等に利用される冷凍サイクルと同様のシステムである。
ここで、21は、内部を冷媒が流通するパイプとしての冷媒管路26に配設された圧縮機としてのコンプレッサであり、気相の冷媒を圧縮する。なお、冷凍庫用冷却システム20の冷媒は、例えば、特定フロン類の代替品として開発が進められたフロン類似品である、いわゆる代替フロンであるが、いかなる種類の冷媒であってもよい。
さらに、前記冷媒管路26における冷媒の流通方向に関するコンプレッサ21の下流側には、冷媒用凝縮器としてのコンデンサ22が配設されている。そして、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、前記コンデンサ22内において冷却されることによって液化され、飽和液又は過冷却液の状態となる。なお、前記コンプレッサ21は、図示されないモータによって駆動される。また、前記コンデンサ22は、図示されないモータによって駆動される冷却ファンを備え、冷媒の温度が高くなった場合等には、必要に応じて冷却ファンを作動させることによって、冷媒を冷却する能力を高めることができる。
そして、前記冷媒管路26における冷媒の流通方向に関するコンデンサ22の下流側には、膨張弁23が配設されている。さらに、前記冷媒管路26における冷媒の流通方向に関する膨張弁23の下流側には、冷媒用蒸発器としてのエバポレータ24が配設されている。なお、該エバポレータ24は、図示されない冷凍庫内に設設されている。そして、飽和液又は過冷却液の状態となった冷媒は、膨張弁23を通過することによって低温低圧の湿り蒸気の状態にまで減圧されて、エバポレータ24内に流入する。該エバポレータ24において、前記冷媒は冷凍庫内の空気から熱を吸収し、再び、コンプレッサ21に吸引される。これにより、冷凍庫内の空気が冷却され、さらに、冷凍庫内の貯蔵物が冷却される。
また、前記冷媒管路26におけるコンプレッサ21と膨張弁23との間には、コンデンサ22をバイパスするようにコンデンサバイパス管路22aが接続されている。なお、該コンデンサバイパス管路22aの一端は、三方弁等から成る第3分岐弁25aを介して、コンデンサ22の冷媒入口側における冷媒管路26に接続されている。ここで、前記コンデンサバイパス管路22aは熱交換器14を通過するように配設されているので、これにより、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と燃料電池温調システム10の温調媒体とが熱交換を行い、該燃料電池温調システム10の温調媒体が加熱されるようになっている。
そして、前記第3分岐弁25aを操作することによって、コンデンサバイパス管路22aを流通する冷媒の量を調整することができる。この場合、コンプレッサ21から吐出されたすべての冷媒がコンデンサバイパス管路22aに流入するようにしてもよいし、一部の冷媒のみがコンデンサバイパス管路22aに流入するようにしてもよい。さらに、コンデンサ22に流入する冷媒とコンデンサバイパス管路22aに流入する冷媒との割合を調整することができるようにしてもよい。
なお、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮され、コンデンサバイパス管路22aに流入した気相の冷媒は、前記熱交換器14を通過することによって冷却されて液化され、飽和液又は過冷却液の状態となる。そして、コンデンサバイパス管路22aを通過することによって飽和液又は過冷却液の状態となった冷媒は、コンデンサ22を通過した冷媒と同様に、膨張弁23を通過することによって低温低圧の湿り蒸気の状態にまで減圧されてエバポレータ24内に流入し、冷凍庫内の空気から熱を吸収して、再び、コンプレッサ21に吸引される。
さらに、前記コンデンサバイパス管路22aにおける冷媒の流通方向に関する熱交換器14の下流側には、コンデンサ連通管路22bの一端が接続されている。そして、該コンデンサ連通管路22bの他端は冷媒管路26における冷媒の流通方向に関するコンデンサ22の上流側に接続され、前記コンデンサ連通管路22bの途中には流量調整弁25bが配設されている。そして、冷媒がコンデンサバイパス管路22aに流入する場合には、流量調整弁25bを操作することによって、熱交換器14を通過した冷媒の一部をコンデンサ22に流入させることができる。これにより、熱交換器14を通過することによって冷却されて液化される冷媒の量が低下し、熱交換器14において燃料電池温調システム10の温調媒体が加熱される程度が減少する。
また、本実施の形態において、燃料電池システムは制御装置として、図示されないFCコントロールECU(Electronic Control Unit)を有する。前記制御装置は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、各種のセンサから燃料電池スタック11の燃料流路及び空気流路に供給される水素、酸素、空気等の流量、温度、出力電圧、温調媒体、冷媒の温度等を検出して、前記循環ポンプ13、第1分岐弁15、第2分岐弁16、コンプレッサ21、第3分岐弁25a、流量調整弁25b等の動作を制御する。さらに、前記FCコントロールECUは、車両に配設された他のセンサ、及び、車両の制御手段としての図示されないEV(Electric Vehicle)コントロールECUと連携して、燃料電池スタック11に燃料及び酸化剤を供給するすべての装置の動作を統括的に制御する。
そして、前記FCコントロールECUは、燃料電池スタック11の温度が所定温度以下である場合には、冷凍庫用冷却システム20の冷媒をコンデンサバイパス管路22aに流入させることによって、熱交換器14において、燃料電池温調システム10の温調媒体を加熱するようになっている。
次に、前記構成の燃料電池システムの動作について説明する。まず、定常運転における動作について説明する。
図2は本発明の実施の形態における燃料電池システムの定常運転の動作を示すフローチャートである。
まず、燃料電池システムの定常運転が行われる(ステップS1)と、FCコントロールECUは、冷凍庫用冷却システム20の運転を開始させるためのスイッチが入れられたか否か、すなわち、冷凍機スイッチ(SW)がONになったか否かの判断を繰り返し(ステップS2)、待機する。そして、冷凍機スイッチがONになると、コンプレッサ21を作動させ、すなわち、コンプレッサ21をONにし(ステップS3)、冷凍庫用冷却システム20の運転を開始させる。なお、燃料電池システムの定常運転が行われている場合、燃料電池温調システム10の温調媒体は、循環ポンプ13によって温調媒体管路18を循環させられており、燃料電池スタック11から流出して、ラジエータ12をバイパスし、ラジエータバイパス管路12a及び循環ポンプ13を介して、熱交換器14に流入するようになっている。
続いて、FCコントロールECUは、検出された燃料電池スタック11の単位セルの温度、すなわち、燃料電池温度があらかじめ設定された所定温度としての第1の所定温度、例えば、100〔℃〕より高いか否かを判断する(ステップS4)。なお、前記第1の所定温度は、必ずしも100〔℃〕である必要はなく、適宜設定することができる。そして、単位セルの温度が第1の所定温度以下である場合、FCコントロールECUは、第3分岐弁25aを操作して、冷凍庫用冷却システム20の冷媒がコンデンサバイパス管路22aを通って熱交換器14に流入するようにする(ステップS5)。
このように、単位セルの温度が第1の所定温度以下である場合、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14に流入するようにしたので、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、熱交換器14を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。そして、前記冷媒は、膨張弁23を通過することによって低温低圧の湿り蒸気の状態にまで減圧されてエバポレータ24内に流入し、冷凍庫内の空気から熱を吸収して、再び、コンプレッサ21に吸引される。これにより、冷凍庫内の空気が冷却され、さらに、冷凍庫内の貯蔵物が冷却される。
また、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14に流入させられるので、該熱交換器14内において、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行い、該冷凍庫用冷却システム20の冷媒が放出した熱を吸収して加熱されて温度が上昇する。一方、冷凍庫用冷却システム20の冷媒は、低温の燃料電池温調システム10の温調媒体によって冷却される。そして、温度が上昇した燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14から流出して燃料電池スタック11内の図示されない温調媒体通路に流入し、単位セルを加熱する。これにより、高温膜としての固体高分子電解質膜の温度が上昇して電気化学反応が高い効率で行われるので、燃料電池スタック11の出力が増加する。
なお、単位セルの温度が第1の所定温度より高い場合、第3分岐弁25aの操作が行われないので、冷凍庫用冷却システム20の冷媒は、熱交換器14に流入せずに、コンデンサ22に流入する。そのため、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、コンデンサ22を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。これにより、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14内において、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行うことがないので、熱交換器14を通過しても、加熱されず、温度が上昇しない。
そして、FCコントロールECUは、冷凍庫用冷却システム20の冷媒がコンデンサバイパス管路22aを通って熱交換器14に流入するようにした後、燃料電池温度があらかじめ設定された第3の所定温度、例えば、50〔℃〕より高いか否かを判断する(ステップS6)。なお、前記第3の所定温度は、必ずしも50〔℃〕である必要はなく、適宜設定することができる。そして、単位セルの温度が第3の所定温度より高い場合、FCコントロールECUは、流量調整弁25bを操作して、熱交換器14を通過した冷媒の一部がコンデンサ22に流入するようにする(ステップS7)。
このように、単位セルの温度が第3の所定温度より高い場合、流量調整弁25bを操作して、熱交換器14を通過した冷媒の一部がコンデンサ22に流入するようにしたので、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、熱交換器14及びコンデンサ22を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。この場合、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14内で放出する熱量は減少する。そのため、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14中において吸収する熱量が少ないので、加熱の程度が低く、温度の上昇する程度も低くなる。
続いて、FCコントロールECUは、検出された燃料電池スタック11の単位セルの温度、すなわち、燃料電池温度があらかじめ設定された第2の所定温度、例えば、200〔℃〕より低いか否かを判断する(ステップS8)。なお、前記第2の所定温度は、必ずしも200〔℃〕である必要はなく、適宜設定することができる。そして、単位セルの温度が第2の所定温度より低い場合には、そのまま処理を終了する。
また、単位セルの温度が第2の所定温度以上である場合、FCコントロールECUは、第2分岐弁16を操作して、燃料電池温調システム10の温調媒体がラジエータ12に流入するようにする(ステップS9)。また、FCコントロールECUは、第1分岐弁15を操作して、燃料電池温調システム10の温調媒体が熱交換器バイパス管路14aに流入するようにする(ステップS10)。さらに、FCコントロールECUは、第3分岐弁25aを操作して、冷凍庫用冷却システム20の冷媒がコンデンサ22に流入するようにし(ステップS11)、処理を終了する。
このように、単位セルの温度が第2の所定温度以上である場合、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器バイパス管路14aに流入させられるので、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行わず、該冷凍庫用冷却システム20の冷媒が放出した熱を吸収しないので、温度が上昇することがない。そして、前記燃料電池温調システム10の温調媒体は、燃料電池スタック11内の温調媒体通路に流入しても、燃料電池スタック11を加熱することがない。これにより、単位セルの温度を不必要に上昇させることがない。また、燃料電池温調システム10の温調媒体は、ラジエータ12に流入させられるので、該ラジエータ12によって冷却される。そのため、燃料電池スタック11から流出した温調媒体の温度を低下させることでき、効果的に燃料電池スタック11を冷却することができる。
さらに、冷凍庫用冷却システム20の冷媒がコンデンサ22に流入させられるので、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、熱交換器14を通過することがない。その代わり、前記冷媒は、コンデンサ22を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。そして、前記冷媒は、膨張弁23を通過することによって低温低圧の湿り蒸気の状態にまで減圧されてエバポレータ24内に流入し、冷凍庫内の空気から熱を吸収して、再び、コンプレッサ21に吸引される。これにより、引き続き冷凍庫内の空気が冷却され、さらに、冷凍庫内の貯蔵物が冷却される。
次に、起動運転における燃料電池システムの動作について説明する。
図3は本発明の実施の形態における燃料電池システムの起動運転の動作を示すフローチャートである。
まず、燃料電池システムの起動運転が行われる(ステップS21)と、FCコントロールECUは、冷凍庫用冷却システム20の運転を開始させるためのスイッチが入れられたか否か、すなわち、冷凍機スイッチ(SW)がONになったか否かの判断を繰り返し(ステップS22)、待機する。そして、冷凍機スイッチがONになると、コンプレッサ21を作動させ、すなわち、コンプレッサ21をONにし(ステップS23)、冷凍庫用冷却システム20の運転を開始させる。なお、燃料電池システムの起動運転が行われている場合、燃料電池温調システム10の温調媒体は、循環ポンプ13によって温調媒体管路18を循環させられており、燃料電池スタック11から流出して、ラジエータ12をバイパスし、ラジエータバイパス管路12a及び循環ポンプ13を介して、熱交換器14に流入するようになっている。
続いて、FCコントロールECUは、検出された燃料電池スタック11の単位セルの温度、すなわち、燃料電池温度が第1の所定温度、例えば、100〔℃〕より高いか否かを判断する(ステップS24)。そして、単位セルの温度が第1の所定温度より高い場合、FCコントロールECUは、燃料電池スタック11に図示されない水素ガス貯蔵体から燃料ガスとしての水素ガスを供給させる(ステップS25)。すると、水素ガスが燃料電池スタック11の燃料室内に充満して電気化学反応が発生し、燃料電池スタック11が起動する(ステップS26)。そして、燃料電池システムは、定常運転に移行して(ステップS27)、処理を終了する。
なお、単位セルの温度が第1の所定温度より高い場合、冷凍庫用冷却システム20の冷媒は、熱交換器14に流入せずに、コンデンサ22に流入する。そのため、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、コンデンサ22を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。これにより、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14内において、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行うことがないので、熱交換器14を通過しても、加熱されず、温度が上昇しない。
一方、単位セルの温度が第1の所定温度以下である場合、FCコントロールECUは、第3分岐弁25aを操作して、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14に流入するようにする(ステップS28)。
このように、単位セルの温度が第1の所定温度以下である場合、通常運転の場合と同様に、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14に流入するようにしたので、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、熱交換器14を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。また、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14に流入させられるので、該熱交換器14内において、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行い、該冷凍庫用冷却システム20の冷媒が放出した熱を吸収して加熱されて温度が上昇する。一方、冷凍庫用冷却システム20の冷媒は、低温の燃料電池温調システム10の温調媒体によって冷却される。そして、温度が上昇した燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14から流出して燃料電池スタック11内の図示されない温調媒体通路に流入し、単位セルを加熱する。これにより、暖機運転が行われ、高温膜としての固体高分子電解質膜の温度が上昇して電気化学反応が高い効率で行われるので、燃料電池スタック11の出力が増加する。
続いて、FCコントロールECUは、燃料電池温度が第3の所定温度、例えば、50〔℃〕より高いか否かを判断する(ステップS29)。そして、単位セルの温度が第3の所定温度より高い場合、FCコントロールECUは、流量調整弁25bを操作して、熱交換器14を通過した冷媒の一部がコンデンサ22に流入するようにし(ステップS30)、再び、起動運転後の動作を繰り返す。なお、単位セルの温度が第3の所定温度以下の場合は、そのまま、起動運転後の動作を繰り返す。
このように、単位セルの温度が第3の所定温度より高い場合、流量調整弁25bを操作して、熱交換器14を通過した冷媒の一部がコンデンサ22に流入するようにしたので、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、熱交換器14及びコンデンサ22を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。この場合、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14内で放出する熱量は減少する。そのため、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14中において吸収する熱量が少ないので、加熱の程度が低く、温度の上昇する程度も低くなる。
次に、停止運転における燃料電池システムの動作について説明する。
図4は本発明の実施の形態における燃料電池システムの停止運転の動作を示すフローチャートである。
まず、燃料電池システムの停止運転が行われる(ステップS41)と、FCコントロールECUは、第3分岐弁25aを操作して、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14に流入するようにする(ステップS42)。なお、燃料電池システムの停止運転が行われる場合、燃料電池温調システム10の温調媒体は、循環ポンプ13によって温調媒体管路18を循環させられており、燃料電池スタック11から流出して、ラジエータ12をバイパスし、ラジエータバイパス管路12a及び循環ポンプ13を介して、熱交換器14に流入するようになっている。
続いて、FCコントロールECUは、燃料電池スタック11への水素ガスの供給を停止させる(ステップS43)。すると、燃料電池スタック11の燃料室内の水素ガスの圧力が低下して電気化学反応が停止するので、燃料電池スタック11が停止する(ステップS44)。そして、FCコントロールECUは、燃料室内の水素ガスの圧力が所定圧力以下になるか、又は、所定時間が経過すると燃料室内に空気を導入することによって、燃料室内の水素ガスを空気で置換し(ステップS45)、処理を終了する。
このように、燃料電池システムの停止運転においては、冷凍庫用冷却システム20の冷媒が熱交換器14に流入させられるので、コンプレッサ21によって高温高圧の過熱ガスの状態にまで圧縮された気相の冷媒は、熱交換器14を通過することによって熱を放出して冷却され、液化されて飽和液又は過冷却液の状態となる。また、燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14に流入させられるので、該熱交換器14内において、冷凍庫用冷却システム20の冷媒と熱交換を行い、該冷凍庫用冷却システム20の冷媒が放出した熱を吸収して加熱されて温度が上昇する。そして、温度が上昇した燃料電池温調システム10の温調媒体は、熱交換器14から流出して燃料電池スタック11内の図示されない温調媒体通路に流入し、単位セルを加熱する。これにより、燃料室内に水素ガスが残留し、高温膜である固体高分子電解質膜の燃料極側の面に水素ガスが存在している間、固体高分子電解質膜を高温に維持することができるので、固体高分子電解質膜が劣化してしまうことがない。
このように、本実施の形態において、燃料電池システムは、必要に応じて、冷凍庫を冷却するための冷凍庫用冷却システム20の廃熱を利用して燃料電池温調システム10の温調媒体を加熱するので、燃料電池スタック11の高温膜を高温に維持することができる。そのため、燃料電池スタック11の運転を効率的に行うことができる。また、起動運転においては、効果的に暖機運転を行うことができる。さらに、停止運転においては、高温膜を高温に維持することができるので、該高温膜が低温で水素ガスに接触することによって生じる劣化を防止することができる。さらに、冷凍庫内は、通常、氷点下まで冷却されるようになっているので、冬季のように外気温が低いときであっても、冷凍庫用冷却システム20が作動し、廃熱が生じる。そのため、冬季のように外気温が低いときであっても、電気ヒータ等の加熱手段を使用することなく冷凍庫用冷却システム20の廃熱を利用して燃料電池温調システム10の温調媒体を加熱することができ、電力消費量を低減することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。