従来から、空気中の粒子に荷電する荷電部と、荷電された粒子を捕捉する集塵部と、これら荷電部及び集塵部に高電圧を印加する高電圧発生器と、集塵部を構成する集塵電極間の電圧に比例した低電圧を生成し、この生成した低電圧を運転ランプの駆動電圧として利用するランプ回路とを備えた電気集塵機が知られている。
この電気集塵機は、荷電部で直流高電圧を利用して静電気を発生させ、集塵部に平行に配置された金属製の電極板に極めて細かい汚れの粒子(汚染粒子)を付着(吸着)させることによって、通過する空気を清浄化する装置である。
ここで、荷電部(イオナイザー)は、平行に配置された金属板の間にタングステンワイヤー(イオナイザー線)を張ったもので、このワイヤーに高電圧発生器のイオナイザー端子から直流11000Vの高電圧が印加されている。この高電圧により、ワイヤーからコロナ放電が生じ、金属板の間を通過する空気中の汚染粒子に静電気を与えて、プラス帯電させるようになっている。
一方、集塵部(コレクティングセル)は、プラス側電極板(金属板)とマイナス側電極板(金属板)とが約6ミリ間隔で交互にかつ平行に配置されたもので、これら電極板間に高電圧発生器のコレクティングセル端子から直流約7000Vの電圧が印加されている。そのため、荷電部でプラス帯電された汚染粒子は、集塵部の電極板間を通過するときに静電気の力でマイナス側電極板に吸着されることになり、その結果、集塵部を通過した排気側の空気は清浄化されたきれいな状態となる。
ここで、集塵部のマイナス側電極板に捕捉された汚染粒子(汚染物質)は、ほとんどの場合電気抵抗が小さいため、集塵部のプラス側電極板とマイナス側電極板との間に流れる(洩れる)電流値が増加していくので、高電圧発生器から集塵部の電極板間に発生されている7000Vの電圧が低下する現象が生じる。そして、電圧の低下が続き、約3000Vまで低下すると集塵効率も60%程度になってしまうので、ランプ回路がこれを検出し、集塵部の洗浄等といったメンテナンスの時期や、電気集塵機の安全性についてユーザに知らせるために、運転ランプを消灯するようになっている。
ここで、電気集塵機の安全性について説明する。
電気集塵機は、集塵効率を保つために、集塵部に印加する電圧をなるべく低下させないようにするという条件と、安全のために出力する電流値をなるべく少なくするという条件の相反する2つの条件を満たすように設計されている。すなわち、出力する電流値が多いと、電気集塵機に必ず発生するスパークや、短絡時のエネルギー増加によって、集塵部のマイナス側電極板に吸着された汚染粒子(捕捉物)に着火する可能性がある。そのため、本発明の電気集塵機において、高電圧発生器は、荷電部における供給最大電流を4ミリアンペア(mA)、集塵部における供給最大電流を0.25ミリアンペア(mA)に制御する機能を備えている。しかし、このように供給最大電流値を少なく抑えたとしても、まだ着火の可能性を完全に回避した安全な電流値とは言い切れない。
そこで、従来から、荷電部の異常を検出する異常検出手段を備え、この異常検出手段から出力された信号に基づき、高電圧発生部と電源とを遮断する一次側リレーの接点をオフすることにより、荷電部への直流高電圧の印加を停止するように構成された電気集塵機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この電気集塵機は、高電圧発生部である高圧トランスの一次側に巻回された低電圧用のコイルから得られた低電圧をさらに抵抗で分圧し、その分圧された電圧が異常検出手段である電圧検出用トランジスタのベースにかけられるようになっている。電圧検出用トランジスタは、必要保護最小値に相当する高電圧側電圧で動作するように設定されており、この電圧検出用トランジスタが動作することで、高電圧発生部と電源とを遮断する一次側リレーの接点をオフし、荷電部への直流高電圧の印加を停止するようになっている。ここで、必要保護最小値とは、異常時のアーク放電によるエネルギーが集塵粒子の最小着火エネルギーよりも小さい、つまり集塵粒子に対するアーク放電でも集塵粒子が発火しない程度のエネルギー値以下になるように設定された電流値や電圧値等のことであり、下式1によって示されている。
{アーク放電電流(I1−I2)}×(アーク放電時電圧V1)×(保護時間T0)≦(集塵粒子の最小着火エネルギー)/(安全係数k) ・・・(式1)
ここで、I1は、異常発生時に高電圧発生部に流れる電流値、I2は、異常発生時に荷電部に流れる電流値、T0は、必要保護最小値に相当する所定の時間である。
特許文献1記載の電気集塵機では、高電圧発生部である高圧トランスの一次側に巻回された低電圧用のコイルから得られた電圧値に基づいて、荷電部への直流高電圧の印加を停止する制御を行うようになっている。ところで、集塵部のマイナス側電極板に吸着された集塵粒子(捕捉物)の発火の危険性は、吸着された集塵粒子の量によることから、集塵部の電極間に発生する電圧を直接監視するのが最も適した監視方法である。しかし、特許文献1記載の電気集塵機では、この集塵部の電極間に発生する電圧ではなく、高電圧発生部の電圧を監視していることから、発火の危険性を正確に判定できるとは限らないといった問題があった。
また、上記(式1)のような演算を行って、電圧検出用トランジスタの動作タイミングを決定しているが、集塵粒子(捕捉物)の最小着火エネルギー等は捕捉物の種類によっても異なることから、安全係数を見込んでいるとは言うものの、実際に電気集塵機が稼働している状況に応じて最適な電圧検出用トランジスタの動作タイミングを設定することは難しいといった問題もあった。
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、集塵部に印加する電圧を直接監視することで、発火(着火)の可能性の有無の判断をより的確に行い、その後の高電圧発生器の停止動作や異常状態の表示動作等をより最適なタイミングで行えるようにした電気集塵機及び電気集塵機の安全制御装置並びに電気集塵機の安全制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の電気集塵機の安全制御装置は、空気中の粒子に荷電する荷電部と、前記荷電部で荷電された粒子を捕捉する集塵部と、これら荷電部及び集塵部に高電圧を印加する高電圧発生器と、前記集塵部を構成する集塵電極間の電圧に比例した低電圧を生成し、この生成した低電圧を運転ランプの駆動電圧として利用するランプ回路とを備え、前記ランプ回路は、前記集塵電極間の電圧が一定電圧以下に低下すると、これに伴う駆動電圧の低下によって前記運転ランプが消灯するように構成された電気集塵機の安全制御装置であって、前記ランプ回路の運転ランプの駆動電圧を入力とするセンサー部と、前記センサー部に接続されたタイマー部と、前記タイマー部に接続されたリレー部とを備え、前記センサー部は、前記ランプ回路から入力される駆動電圧値と前記運転ランプが消灯するときの駆動電圧値である基準電圧値とを比較し、前記ランプ回路からの駆動電圧値が前記基準電圧値以下になったとき、前記タイマー部に駆動電力を出力し、前記タイマー部は、前記駆動電力を受けて予め設定されている一定時間の計測を行うと電源からの電力を前記リレー部に出力し、前記リレー部は、前記電源からの電力が供給されると、前記高電圧発生器への電力供給を遮断する構成としている。
より具体的に説明すると、本発明の電気集塵機の安全制御装置は、空気中の粒子に荷電する荷電部と、前記荷電部で荷電された粒子を捕捉する集塵部と、これら荷電部及び集塵部に高電圧を印加する高電圧発生器と、前記集塵部を構成する集塵電極間の電圧に比例した低電圧を生成し、この生成した低電圧を運転ランプの駆動電圧として利用するランプ回路とを備え、前記ランプ回路は、前記集塵電極間の電圧が一定電圧(例えば、3000V等)以下に低下すると、これに伴う駆動電圧の低下によって前記運転ランプが消灯するように構成された電気集塵機の安全制御装置であって、前記ランプ回路の運転ランプの駆動電圧を入力とするセンサー部と、前記センサー部に接続されたタイマー部と、前記タイマー部に接続されたリレー部とを備え、前記センサー部は、前記タイマー部に駆動電力を供給する第1電力供給線の途中に介挿された第1リレー接点を有する第1リレー回路を備え、前記ランプ回路から入力される駆動電圧値と前記運転ランプが消灯するときの駆動電圧値である基準電圧値(例えば、2.9V等)とを比較し、前記ランプ回路からの駆動電圧値が前記基準電圧値以下になったとき、前記第1リレー回路の第1リレー接点をオフからオンに切り換えるように動作し、前記タイマー部は、入力電源からの電力を供給する第2電力供給線の途中に第2タイマー接点が設けられた第2リレー回路と、前記第2リレー回路のリレーコイルと前記第1電力供給線との間に設けられたタイマー回路とを備え、前記第1リレー回路の第1リレー接点がオフからオンに切り換わることによって、前記第1電力供給線から駆動電力が供給されると、前記タイマー回路が予め設定されている一定時間(例えば、5秒等)の計測を開始し、前記一定時間の計測後に前記第2リレー回路の前記第2リレー接点をオフからオンに切り換えるように動作し、前記リレー部は、入力電源からの電力を前記高電圧発生器に供給する第3電力供給線の途中に第3リレー接点が設けられた第3リレー回路を備え、前記第2リレー回路の第2リレー接点がオフからオンに切り換わることによって、前記第2電力供給線から電力が供給されると、前記第3リレー回路の前記第3リレー接点をオンからオフに切り換えるように動作することによって、前記高電圧発生器への電力供給を遮断する構成としている。
すなわち、本発明では、ランプ回路から出力される運転ランプの駆動電圧を利用して、センサー部、タイマー部、及びリレー部を順次動作させ、最終的に高電圧発生器と電源との間を遮断するように構成されている。また、ランプ回路は、集塵部の電極間の電圧が一定電圧(例えば、3000V等)以下に低下すると、これに伴う駆動電圧の低下によって運転ランプが消灯するように構成されている。すなわち、本発明では、空気中の汚染粒子が吸着する集塵部の電極間の電圧を運転ランプの駆動電圧という形で直接検出し、その検出した駆動電圧値に基づいて、高電圧発生器と電源との間の遮断制御を行う構成としているので、集塵部の電極に吸着された汚染粒子(捕捉物)が着火する可能性の有無の判断をより的確に行うことが可能となる。そのため、高電圧発生器の停止動作や異常状態の表示動作等をより最適なタイミングで行うことができる。
また、本発明では、前記第2電力供給線には、電力を取り出すための出力端子部が設けられている。このように、第2電力供給線に出力端子部を設けることによって、この出力端子部に例えば警告ランプを接続すると、ランプ回路の運転ランプとは異なる表示制御を行うことができる。例えば、ランプ回路から入力される駆動電圧値が、運転ランプが消灯するときの駆動電圧値である基準電圧値以下になったとき、第2リレー回路の第2リレー接点がオフからオンに切り換わることによって、警告ランプを点灯制御することができる。
また、本発明では、前記第3電力供給線には、電力を取り出すための出力端子部が設けられている。このように、第3電力供給線に出力端子部を設けることによって、この出力端子部を補助端子としてユーザが任意に使用することが可能となる。例えば、この出力端子部にファンモータの電源回路を接続しておくことで、高電圧発生器への電力供給の遮断と同時にファンモータも停止させる、あるいは高電圧発生器への電力供給の遮断と同時にファンモータを駆動させるといった制御が可能となる。
また、本発明では、前記センサー部に設定されている前記基準電圧値は、前記集塵電極間の電圧が3000Vに低下したときに前記運転ランプに印加される駆動電圧に対応する電圧値に設定され、前記高電圧発生器は、前記荷電部における供給最大電流を4ミリアンペア(mA)、前記集塵部における供給最大電流を0.25ミリアンペア(mA)に制御する機能を備えており、前記タイマー回路は、予め設定されている一定時間が5秒に設定されている。
集塵部の電極間に発生している約7000Vの電圧が、約3000Vまで低下すると、集塵効率も60%程度に低下し、スパーク等が発生して集塵部の電極に吸着された汚染粒子(捕捉物)が着火する可能性が出てくる。従って、集塵部の電極間の電圧が約3000Vまで低下したときに、センサー部及びタイマー部を経由して、その5秒後にリレー部の第3リレー回路の第3リレー接点をオンからオフに切り換えることによって、汚染粒子(捕捉物)が着火する前に、高電圧発生器への電源供給を遮断することが可能となる。
この場合、荷電部における供給最大電流を4ミリアンペア(mA)、集塵部における供給最大電流を0.25ミリアンペア(mA)に制御している状態においては、集塵部の電極間の電圧が約3000Vに低下してスパーク等が発生したとしても、その後5秒間は集塵部に捕捉された捕捉物が着火しないことを経験的に確認している。すなわち、過去40年間の電気集塵機の販売実績の中で、経験的に見いだしている。そのため、本発明では、上記の制御条件において、タイマー部による計測時間(タイマー時間)を5秒としている。また、この5秒間に集塵部の電極間の電圧が再び3000Vを超えた場合には、例えばノイズ等による誤検知と判断することができるので、この場合には、高電圧発生器への電源供給を遮断することなく、継続して供給することが可能となる。
ただし、捕捉物の種類によっては5秒以上電圧低下状態が続いても着火しない物質があることも経験的に確認しているため、タイマー回路による計測時間としては5秒のみならず、それよりも長い例えば10秒等を設定できるようにしてもよい。すなわち、タイマー回路は、その計測時間として5秒または10秒のいずれか一方を選択できるように構成してもよい。この場合、タイマー時間の切り換えは、工場出荷時に予め設定しておくものとし、その後の設定変更は、ユーザからの要望によりメーカー側担当者が設置場所まで行ってタイマー時間を切り換えるようにする。なお、製品出荷時のタイマー時間は、予め5秒に設定しておくのがよい。
また、本発明に係る電気集塵機の安全制御方法は、空気中の粒子に荷電する荷電部と、前記荷電部で荷電された粒子を捕捉する集塵部と、これら荷電部及び集塵部に高電圧を印加する高電圧発生器と、前記集塵部を構成する集塵電極間の電圧に比例した低電圧を生成し、この生成した低電圧を運転ランプの駆動電圧として利用するランプ回路と、前記ランプ回路からの前記駆動電圧を入力とするセンサー部と、前記センサー部に接続されたタイマー部と、前記タイマー部に接続されたリレー部とを備えた電気集塵機の安全制御方法であって、前記センサー部が、前記ランプ回路からの駆動電圧値と前記運転ランプが消灯するときの駆動電圧値である基準電圧値とを比較する工程と、比較の結果、前記ランプ回路からの駆動電圧値が前記基準電圧値以下になったとき、前記タイマー部に駆動電力を出力する工程とを含み、前記タイマー部が、前記駆動電力を受けて予め設定されている一定時間の計測を開始する工程と、前記一定時間を計測すると電源からの電力を前記リレー部に出力する工程とを含み、前記リレー部が、前記電源からの電力が供給されると、前記高電圧発生器への電力供給を遮断する工程を含む構成としている。
より具体的に説明すると、本発明に係る電気集塵機の安全制御方法は、空気中の粒子に荷電する荷電部と、前記荷電部で荷電された粒子を捕捉する集塵部と、これら荷電部及び集塵部に高電圧を印加する高電圧発生器と、前記集塵部を構成する集塵電極間の電圧に比例した低電圧を生成し、この生成した低電圧を運転ランプの駆動電圧として利用するランプ回路と、前記ランプ回路からの前記駆動電圧を入力とするセンサー部と、前記センサー部に接続されたタイマー部と、前記タイマー部に接続されたリレー部とを備え、前記センサー部は、前記タイマー部に駆動電力を供給する第1電力供給線の途中に介挿された第1リレー接点を有する第1リレー回路を備え、前記タイマー部は、入力電源からの電力を供給する第2電力供給線の途中に第2タイマー接点が設けられた第2リレー回路と、前記第2リレー回路のリレーコイルと前記第1電力供給線との間に設けられたタイマー回路とを備え、前記リレー部は、入力電源からの電力を前記高電圧発生器に供給する第3電力供給線の途中に第3リレー接点が設けられた第3リレー回路を備えた電気集塵機の安全制御方法であって、前記ランプ回路からの駆動電圧値と前記運転ランプが消灯するときの駆動電圧値である基準電圧値とを比較する工程と、比較の結果、前記ランプ回路からの駆動電圧値が前記基準電圧値以下になったとき、前記第1リレー回路の第1リレー接点をオフからオンに切り換える工程と、前記第1リレー回路の第1リレー接点をオフからオンに切り換えることによって、前記タイマー部のタイマー回路に前記第1電力供給線から駆動電力を供給する工程と、前記第1電力供給線から駆動電力が供給されると、前記タイマー回路が予め設定されている一定時間の計測を開始する工程と、前記一定時間を計測すると前記第2リレー回路のリレーコイルに駆動電力を供給して前記第2リレー接点をオフからオンに切り換える工程と、前記第2リレー回路の第2リレー接点をオフからオンに切り換えることによって、前記第2電力供給線から前記第3リレー回路のリレーコイルに電力を供給し、前記第3リレー回路の前記第3リレー接点をオンからオフに切り換える工程と、前記第3リレー回路の前記第3リレー接点をオンからオフに切り換えることによって、前記高電圧発生器への電力供給を遮断する工程と、を含む構成としている。
すなわち、本発明では、ランプ回路から出力される運転ランプの駆動電圧を利用して、センサー部、タイマー部、及びリレー部を順次動作させ、最終的に高電圧発生器と電源との間を遮断するように構成されている。また、ランプ回路は、集塵部の電極間の電圧が一定電圧以下に低下すると、これに伴う駆動電圧の低下によって運転ランプが消灯するように構成されている。すなわち、本発明では、空気中の汚染粒子が吸着する集塵部の電極間の電圧を運転ランプの駆動電圧という形で直接検出し、その検出した駆動電圧値に基づいて、高電圧発生器と電源との間の遮断制御を行う構成としているので、集塵部の電極に吸着された汚染粒子(捕捉物)が着火する可能性の有無の判断をより的確に行うことが可能となる。そのため、高電圧発生器の停止動作や異常状態の表示動作等をより最適なタイミングで行うことができる。
また、このような安全制御装置を電気集塵機に備えることで、発火の危険性を事前に回避できるより安全な電気集塵機を実現することができる。
本発明によれば、空気中の汚染粒子が吸着する集塵部の電極間の電圧を運転ランプの駆動電圧という形で直接検出し、その検出した駆動電圧値に基づいて、高電圧発生器と電源との間の遮断制御を行う構成としたので、集塵部の電極に吸着された汚染粒子(捕捉物)が着火する可能性の有無の判断をより的確に行うことが可能となる。そのため、高電圧発生器の停止動作や異常状態の表示動作等をより最適なタイミングで行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は、本実施形態に係る電気集塵機の安全制御装置の回路構成図である。
電気集塵機1は、空気中の粒子に荷電する荷電部2と、荷電部2によって荷電された粒子を捕捉する集塵部3と、これら荷電部2及び集塵部3に高電圧を印加する高電圧発生器4と、集塵部3を構成する集塵電極間の電圧に比例した低電圧を生成し、この生成した低電圧を運転ランプ51の駆動電圧として利用するランプ回路5とを備えている。
荷電部(イオナイザー)2は、平行に配置した複数の金属板21,21,・・・の間にタングステンワイヤー(イオナイザー線)22を張ったもので、このワイヤー22に高電圧発生器4のイオナイザー端子41から直流約11000Vの高電圧を印加している。この直流11000Vの高電圧により、ワイヤー22からコロナ放電が発生し、金属板21,21,・・・の間を通過する空気中の粒子(汚染粒子)に静電気を与えて、プラス帯電させるようになっている。
集塵部(コレクティングセル)3は、約6ミリ間隔で複数の電極板(金属板)31,31,・・・が平行に配置され、1枚おきにプラス側電極板31aとマイナス側電極板31bとが組み合わされた構造となっており、プラス側電極板31aに高電圧発生器4のコレクティングセル端末42から直流約7000Vの電圧を印加している。これにより、荷電部2でプラス帯電された粒子は、集塵部3の電極板31a,31b間を通過するときに静電気の力でマイナス側電極板31bに吸着されるため、集塵部3を通過した排気側の空気は清浄化されたきれいな状態となる。
高電圧発生器4は、上記したように、イオナイザー端子41から直流約11000Vの電圧を出力し、コレクティングセル端末42から直流約7000Vの電圧を出力するように構成されている。また、高電圧発生器4は、スパーク等の発生や短絡時のエネルギー増加を抑えるべく、出力する電流値を極力少なく抑えている。具体的には、荷電部2のタングステンワイヤー22への供給最大電流を4ミリアンペア(mA)、集塵部3のプラス側電極板31aへの供給最大電流を0.25ミリアンペア(mA)に制御するように構成されている。
ランプ回路5は、集塵部3の電極板31a,31b間の電圧が一定電圧(具体的には3000V)以下に低下すると、これに伴う駆動電圧の低下によって運転ランプ51が消灯するようになっている。すなわち、ランプ回路5は、集塵部3の電極板31a,31b間の電圧に比例した低電圧を生成し、この低電圧を運転ランプ51の駆動電圧として利用している。この駆動電圧の上限電圧は13〜14Vに設定されている。
上記したように、集塵部3のプラス側電極板31aには、高電圧発生器4から直流約7000Vの電圧が印加されており、空気中の汚染粒子が集塵部3のマイナス側電極板31bに全く吸着されていない状態では、集塵部3の電極板31a,31b間にもほぼ7000Vの電圧が発生している。そして、この7000Vの電圧が発生しているときのランプ回路5で生成される低電圧、すなわち運転ランプ51の駆動電圧は、上限電圧に近い例えば12V等となっている。一方、集塵部3のマイナス側電極板31bに汚染粒子が吸着されていくと、この汚染粒子はそのほとんどが電気抵抗の小さい粒子であるために、集塵部3の電極板31a,31b間に流れる(洩れる)電流が増加していくので、電極板31a,31b間に発生する電圧が低下する現象が生じる。そして、集塵部3のマイナス側電極板31aに吸着される汚染粒子の量が増加して、電極板31a,31b間に発生する電圧が約3000Vまで低下すると、これに伴って駆動電圧も2.9V程度まで低下する。運転ランプ51は、駆動電圧が2.9Vまで低下すると消灯するようになっている。このような構成のランプ回路5において、本実施形態では、運転ランプ51を駆動する駆動電圧を安全制御装置6側に出力するための出力端子52a,52bを備えている。
安全制御装置6は、ランプ回路5の運転ランプ51の駆動電圧を入力とするセンサー部7と、センサー部7に接続されたタイマー部8と、タイマー部8に接続されたリレー部9とを備えている。
センサー部7の電源端子71a,71bには、入力電源であるAC100V電源の電源線11が、電源スイッチSW1を介して接続されている。
また、センサー部7には、ランプ回路5の出力端子52a,52bに接続される入力端子72a,72bが設けられており、この入力端子71a,71bを介して入力されるランプ回路51の駆動電圧値と、運転ランプ51が消灯するときの駆動電圧値に設定されている基準電圧値(本実施形態では2.9V)とを比較する比較手段73を備えている。
さらに、センサー部7は、タイマー部8に駆動電力を供給する第1電力供給線74を備えており、この第1電力供給線74の途中に第1リレー回路(DCリレー)75の第1リレー接点75aが設けられている。センサー部7は、比較手段73での比較の結果、ランプ回路5からの駆動電圧値が基準電圧値以下になったとき、第1リレー回路75の第1リレー接点75aをオフからオンに切り換える制御を行うようになっている。
すなわち、第1リレー回路75は、ランプ回路5からの駆動電圧値が基準電圧値(2.9V)以上である場合には、リレーコイル75bを励磁して第1リレー接点75aをオフ状態に保ち、ランプ回路5からの駆動電圧値が基準電圧値(2.9V)以下になったとき、リレーコイル75bの励磁を解除して第1リレー接点75aをオフからオンに切り換える、いわゆるb接点として動作するものである。センサー部7の第1電力供給線74は、センサー部7の電力出力端子76を介してタイマー部8の電力入力端子81に接続されている。
タイマー部8は、電力入力端子81の他に、第1電源端子82、第2電源端子83、及び第3電源端子84を備えている。そして、タイマー部8の第1電源端子82には、電源スイッチSW1の直後で電源線11から分岐されたホット側の分岐電源線12aが接続されている。この分岐電源線12aが接続された第1電源端子82には、内部電源線85が接続されており、この内部電源線85はさらに2つに分岐され、分岐された一方の内部分岐電源線(以下、左側電源線という。)85aが第2電源端子83に接続され、分岐された他方の内部分岐電源線(以下、右側電源線という。)85bが第3電源端子84に接続されている。
また、左側電源線85aの途中には、第2リレー回路(DCリレー)86の左側リレー接点86aが設けられ、右側電源線85bの途中には、第2リレー回路86の右側リレー接点86bが設けられている。すなわち、第2リレー回路86は、2個のリレー接点86a,86bを備えており、これら2個のリレー接点86a,86bが、分岐された内部電源線85の左側電源線85a及び右側電源線85bにそれぞれ直列に接続された構成となっている。
また、第2リレー回路86のリレーコイル86cと電力入力端子81との間には、2個のタイマー回路87a,87bと、これらタイマー回路87a,87bのいずれか一方を選択するための切換スイッチ88とが設けられている。本実施形態では、左側のタイマー回路87aは計測時間(タイマー時間)が5秒に設定されており、右側のタイマー回路87bは計測時間(タイマー時間)が10秒に設定されている。
さらに、第2電源端子83と電源線11のクール側の分岐電源線12bとの間、及び第3電源線84と電源線11のクール側の分岐電源線12bとの間には、それぞれ左側外部電源線13a及び右側外部電源線13bが接続されており、これら左側外部電源線13aの間及び右側外部電源線13bの間には、それぞれ電力を外部に取り出すための左側外部出力端子14a,14b及び右側外部出力端子15a,15bが設けられている。
第2リレー回路86は、リレーコイル86cが励磁されていない状態では、左側リレー接点86aがオン、右側リレー接点86bがオフとなっており、この状態からリレーコイル86cが励磁されると、左側リレー接点86aがオフ、右側リレー接点86bがオンに切り換わるような切り換え制御を行うようになっている。すなわち、左側リレー接点86aはいわゆるb接点として動作し、右側リレー接点86bはいわゆるa接点として動作するようになっている。
また、第3電源端子84と右側外部出力端子15aとの間の右側外部電源線13bは分岐され、その分岐電源線17が、開閉スイッチSW2を介してリレー部9の電源入力端子91aに接続されている。
リレー部9は、電力入力端子91aの他に、電力出力端子91b、第1電源端子92、第2電源端子93、第3電源端子94及び第4電源端子95を備えている。そして、リレー部9の第1電源端子92には、電源スイッチSW1の直後で電源線11から分岐されたホット側の分岐電源線12aが接続されている。この分岐電源線12aが接続された第1電源端子92には、内部電源線96が接続されており、この内部電源線96の途中には、第3リレー回路(AC100Vリレー)97の左側リレー接点97aが設けられている。また、第3電源線94と第4電源線95との間を接続する内部電源線98の途中には、第3リレー回路97の右側リレー接点97bが設けられている。すなわち、第3リレー回路97は、2個のリレー接点97a,97bを備えており、これら2個のリレー接点97a,97bが、内部電源線96及び内部電源線98にそれぞれ直列に接続された構成となっている。この第3リレー回路97のリレーコイル97cは、電力入力端子91aと電源出力端子91bとの間に接続されており、電源出力端子91bは、電源線11のクール側の分岐電源線12bに接続されている。
また、第2電源端子93と電源線11のクール側の分岐電源線12bとの間には、外部電源線18が接続されており、この外部電源線18の間には、高電圧発生器4に電力を供給するための電力供給端子16a,16bが設けられている。
第3リレー回路97は、リレーコイル97cが励磁されていない状態では、左側リレー接点97aがオン、右側リレー接点97bがオフとなっており、この状態からリレーコイル97cが励磁されると、左側リレー接点97aがオフ、右側リレー接点97bがオンに切り換わるような切り換え制御を行うようになっている。すなわち、左側リレー接点97aはいわゆるb接点として動作し、右側リレー接点97bはいわゆるa接点として動作するようになっている。
ここで、タイマー部8に設けられている2個のタイマー回路87a,87bの計測時間(タイマー時間)について説明する。
高電圧発生器4から集塵部3の電極板31a,31b間に発生している約7000Vの電圧が、約3000Vまで低下すると、集塵効率も60%程度に低下し、スパーク等が発生して集塵部3のマイナス側電極板31bに吸着された空気中の汚染粒子(捕捉物)が着火する可能性が出てくる。従って、集塵部3の電極板31a,31b間の電圧が約3000Vに低下したときに、高電圧発生器4への電源供給を遮断する必要がある。
このとき、荷電部2における供給最大電流を4ミリアンペア(mA)、集塵部3における供給最大電流を0.25ミリアンペア(mA)に制御している状態においては、集塵部3の電極板31a,31b間の電圧が3000Vに低下してスパーク等が発生したとしても、その後5秒間は集塵部3に捕捉された汚染粒子(捕捉物)が着火しないことを経験的に確認している。そのため、本実施形態では、上記の制御条件において、一方のタイマー回路87aの計測時間を5秒としている。ただし、捕捉された汚染粒子(捕捉物)の種類によっては5秒以上電圧低下状態が続いても着火しない物質があることも経験的に確認しているため、タイマー回路による計測時間としては5秒のみならず、それよりも長い例えば10秒等を設定できるようにしてもよい。そのため、本実施形態では他方のタイマー回路87bの計測時間を10秒としており、切換スイッチ88の切り換え操作によってそのいずれか一方のタイマー回路を選択できるように構成している。この場合、タイマー時間の切り換えは、工場出荷時に予め設定しておくものとし、その後の設定変更は、ユーザからの要望によりメーカー側担当者が設置場所まで行ってタイマー時間を切り換えるようにする。なお、製品出荷時のタイマー時間は、予め5秒に設定しておくのがよい。すなわち、切換スイッチ88は予め左側のタイマー回路87a側に接続しておくのがよい。
<安全制御装置の動作説明>
次に、上記構成の安全制御装置6の動作について、図2ないし図4を参照して説明する。ただし、図2は、電気集塵機1の通常運転時の安全制御装置6のスイッチング状態を示しており、図3は、電気集塵機1に異常が発生したときの安全制御装置6のスイッチング後の状態を示している。また、図4は、安全制御装置6の動作処理を説明するためのフローチャートである。
図2に示すように、電気集塵機1の運転を開始した初期状態(すなわち、集塵部3のマイナス側電極板31bに空気中の汚染粒子がほとんど吸着されていない状態)では、安全制御装置6の電源スイッチSW1、及び開閉スイッチSW2は共にオン状態となっている。また、タイマー部8の切換スイッチ88は、上記したように計測時間が5秒である左側のタイマー回路87a側に接続されているものとする。
また、この初期状態においては、センサー部7の第1リレー回路75は、ランプ回路5からの駆動電圧値が基準電圧値(2.9V)以上であるので、リレーコイル75bを励磁して第1リレー接点75aをオフ状態としている。
また、タイマー部8の第2リレー回路86は、リレーコイル86cが励磁されていない状態であるので、左側リレー接点86aがオン、右側リレー接点86bがオフとなっている。従って、左側外部電源線13aの左側外部出力端子14a,14bに、例えば上記ランプ回路5とは別の第1ランプ回路(図示省略)を接続しておくと、この第1ランプ回路はAC100V電源から電力供給を受けてランプが点灯することになるので、いわゆる通常運転を表示するランプ回路として利用することができる。一方、右側外部電源線13bの右側外部出力端子15a,15bに、第1ランプ回路とは別の第2ランプ回路(図示省略)を接続しておくと、この第2ランプ回路は、通常運転時にはAC100V電源からの電力供給が遮断されているので点灯せず、後述する異常発生時に点灯するランプ回路として利用することができる。
さらに、リレー部9の第3タイマー回路97は、リレーコイル97cが励磁されていない状態であるので、左側リレー接点97aがオン、右側リレー接点97bがオフとなっている。
このような初期状態において、電気集塵機1の運転を継続すると、荷電部2でプラス帯電された空気中の汚染粒子は、集塵部3の電極板31a,31b間を通過するときに静電気の力でマイナス側電極板31bに吸着される。集塵部3のマイナス側電極板31bに吸着(捕捉)された汚染粒子は、ほとんどの場合電気抵抗が小さいため、集塵部の電極板31a,31b間に流れる(洩れる)電流値が増加していくので、集塵部3の電極板31a、31b間に発生している約7000Vの電圧が低下していくことになる。そして、電圧の低下が続き、約3000Vまで低下すると、ランプ回路5がこれを検出し、運転ランプ51を消灯する。
一方、安全制御装置6のセンサー部7は、ランプ回路5からの駆動電圧値と、内部に設定されている基準電圧値(2.9V)との比較を比較手段73において常時行っている(ステップS1)。そして、その比較の結果、ランプ回路5からの駆動電圧値が基準電圧値(2.9V)以下になったとき(ステップS1でYesと判断されたとき)、図3に示すように、第1リレー回路75のリレーコイル75bを励磁して、第1リレー接点75aをオフからオンに切り換える(ステップS2)。これにより、第1電力供給線74から電力出力端子76及び電力入力端子81を介して、タイマー部8に駆動電力が供給される(ステップS3)。
この駆動電力は、切換スイッチ88を介して左側のタイマー回路87aに供給される。左側のタイマー回路87aは、この駆動電力を受けて起動し、一定時間(すなわち、5秒)の計測を開始する(ステップS4)。そして、一定時間の計測を終了すると(ステップS4でYesと判断されると)、タイマー部8は、第2リレー回路86のリレーコイル86cを励磁して、左側リレー接点86aをオンからオフに、右側リレー接点86bをオフからオンに切り換える(ステップS5)。これにより、図3に示すように、AC100V電源からの電力が、ホット側の分岐電源線12a、第1電源端子82、右側リレー接点86b、第3電源端子84、分岐電源線17、及び切換スイッチSW2を介して、リレー部9の電源入力端子91aに入力される(ステップS5)。また、このとき左側外部出力端子14a,14bに接続された第1ランプ回路のランプが消灯し、右側外部出力端子15a,15bに接続された第2ランプ回路のランプが点灯する。すなわち、通常運転を表示しているランプが消灯し、異常発生を知らせるランプが点灯する。
リレー部9は、電源入力端子91aに入力されたAC100V電源から供給される電力を受けて第3リレー回路97のリレーコイル97cを励磁し、左側リレー接点97aをオンからオフに、右側リレー接点97bをオフからオンに切り換える(ステップS7)。これにより、図3に示すように、AC100V電源からホット側の分岐電源線12a、第1電源端子92、左側リレー接点97a、第2電源端子93、及び電力供給端子16aを介して高電圧発生器4に供給されていた電力が、左側リレー接点97aのオフ動作により遮断されることになる。すなわち、ランプ回路5からの駆動電圧値が基準電圧値(2.9V)以下となる異常発生時において、高電圧発生器4への電力供給が遮断されることになる。