JP4935977B2 - テトラヒドロナフタレン誘導体の製造方法 - Google Patents

テトラヒドロナフタレン誘導体の製造方法 Download PDF

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本発明はテトラヒドロナフタレン誘導体の製造方法に関する。
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。Δ
現在汎用のTN型やSTN型液晶表示素子において用いられる液晶化合物は、極性基としてフッ素原子を有するものが多く、通常分子末端のフェニル基に直結する構造で導入されている。そのため、化合物としては分子の片方の末端に4-フルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基または3,4,5-ジフルオロフェニル基を有する化合物にほぼ限定されており、その化学構造の変化の幅が非常に小さい。
一方、IPS型、ECB型、VA型、あるいはCSH型等の表示方式においては、誘電率異方性が負の、いわゆるn型の液晶材料を用いる。n型の液晶材料としては分子内に2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を有する化合物を用いた液晶組成物にほぼ限定されているのが実情でありベンゼン環にフッ素原子が置換した液晶化合物のみでは年々高度化する液晶組成物に対する要求特性には充分応えきれなくなってきているのが実情である。
フルオロベンゼン誘導体以外の基本骨格を有する液晶化合物として、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を有する化合物(特許文献1及び2参照。)が報告されている。例えば、5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を有する液晶化合物は、Δεが大きく、広い温度範囲で液晶相を示し、また高速応答が可能である液晶組成物の成分として適していることが報告されている(特許文献2参照。)。
更に、7,8-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を有する化合物が報告されており(特許文献3及び4参照。)、当該化合物は広い温度範囲で液晶相を示し、また高速応答が可能である液晶組成物の成分として適していることが報告されている。
上述のような1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を有する化合物は従来次に記載するような方法で製造されていた。すなわち、フェニル酢酸誘導体を原料として、塩化チオニルを用いて酸塩化物に誘導した後、塩化アルミニウム存在下、エチレンガスを作用させることにより、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン誘導体を得た後、これを合成中間体として用いて合成することが報告されている(特許文献2参照。)。
Figure 0004935977
上記の方法は様々な副生物を生じるため、これを取り除く工程を必要としており、高収率とは言えなかった。そのため、より副生物の少ない、より収率のよい1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン誘導体の工業的に容易で安価な製造方法が求められている。
特開2001−19648号公報 特開2001−39906号公報 特開2004−263031号公報 特開2005−97471号公報
本発明が解決しようとする課題は、副生物の少ない、より収率のよい1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン誘導体の工業的に容易で安価な製造方法を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、一般式(I)
Figure 0004935977
(式中、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、保護された水酸基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基、または1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルコキシル基を表すが、X1、X2、X3およびX4のうち少なくとも1個または2個以上はフッ素原子を表す。)で表されるフェニル酢酸誘導体をハロゲン化剤を用いて酸ハロゲン化物に誘導した後、塩化ジルコニウム存在下、エチレンガスを作用させることによる、一般式(II)
Figure 0004935977
(式中、X1、X2、X3およびX4は、一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表されるテトラヒドロナフタレン誘導体の製造方法提供する。
本発明に係わるテトラヒドロナフタレン誘導体の製造方法は、工業的に容易に適用可能であり、本製造方法によって製造されたテトラヒドロナフタレン誘導体は、副生物が少なく、収率よく取り出し可能であり、例えば液晶材料である1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を有する化合物の合成中間体として適している。
本製造法におけるハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化ホスホリル、五塩化リン、三塩化リン、二塩化オキサリル、ホスゲン、ホスゲンダイマー、トリホスゲンなどの塩素化剤、あるいは臭化チオニル、三臭化リン、臭化オキサリルなどの臭素化剤、あるいは三フッ化ジアルキルアミノ硫黄、2-クロロ-1,2,2-トリフルオロトリエチルアミン、α,α-ジフルオロトリメチルアミン=トリヒドロフルオリド、フッ化シアヌル酸などのフッ素化剤を用いることができるが、操作の簡便性や収率などの観点から、塩化チオニル、塩化ホスホリル、二塩化オキサリルなどの塩素化剤が好ましい。
本製造法における化合物(I)とハロゲン化剤との反応において、無溶媒で反応することも溶媒を用いて反応することもでき、その溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなどの塩素化炭化水素、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族化合物などを単独でまたは混合して用いることができるが、なかでも塩素化炭化水素が好ましい。
反応温度は溶媒の凝固点から溶媒還流温度で行うことができるが、操作の簡便性や反応時間などの経済性から0℃から80℃が好ましい。
本製造法における塩化ジルコニウム存在下、酸ハロゲン化物とエチレンガスとの反応において、溶媒を用いて反応することが好ましく、その溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン等の塩素化炭化水素が好ましい。
反応温度は溶媒の凝固点から溶媒還流温度で行うことができるが、操作の簡便性や収率などの観点から-60℃から100℃が好ましく、-40℃から60℃がより好ましく、-20℃から40℃が特に好ましい。
本反応はエチレンガスを単独でまたは窒素ガスなどの不活性ガスと混合して用いることができるが、操作の簡便性などの経済性から、エチレンガス単独で用いることが好ましく、エチレンガスはエチレンガス雰囲気下から19.6 MPa(100気圧)下で行うことができるが、反応容器の使用の簡便さから、エチレンガス雰囲気下から0.5 MPa(5気圧)下が好ましい。
本願発明においては、一般式(II)で表されるテトラヒドロナフタレン誘導体を製造することが可能であるが、一般式(II)において、X1、X2、X3およびX4が、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表す化合物の製造に最適である。この場合、一般式(I)においても、X1、X2、X3およびX4が、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表す化合物を使用する。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。化合物の構造は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量スペクトル(MS)及び赤外吸収スペクトル(IR)により確認した。
(実施例1) 5,6,7-トリフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-1)の合成
Figure 0004935977
(1-1) 3,4,5-トリフルオロフェニル酢酸クロリドの合成
3,4,5-トリフルオロフェニル酢酸 19.0 gのジクロロメタン 40 mL中で懸濁している中に、塩化チオニル 15.0 mLを滴下して加えた後、2時間加熱還流した。溶媒と過剰の塩化チオニルを常圧で留去した後、減圧蒸留(105-108℃、2.4-2.7KPa)することにより、薄黄色液体の3,4,5-トリフルオロフェニル酢酸クロリド 20.4 gを得た。
MS m/z 208, 210 (M+)
(1-2) 5,6,7-トリフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-1)の合成
エチレンガス雰囲気下、塩化ジルコニウム 25.7 gをジクロロメタン 50 mL懸濁液を氷水浴中で激しく攪拌している中に、3,4,5-トリフルオロフェニル酢酸クロリド 21.5 gのジクロロメタン 40 mL溶液を滴下して加えた後、そのままの温度で3時間激しく攪拌し続けた。反応液を氷水中に滴下して反応を停止させた後、析出した固体が溶解するまで3 M塩酸を加えた。有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗滌した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、褐色液体の5,6,7-トリフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-1) 19.0 gを得た。
GC分析により、目的物(II-1、80%)の他に、1-(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4-クロロ-2-ブタノン(III-1、10%)、6-クロロ-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(IV-1、2%)が含まれていた。
MS m/z 200 (M+, II-1)、216, 218 (M+, III-1)、216, 218 (M+, IV-1)
(実施例2) 7,8-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-2)の合成
Figure 0004935977
(2-1) 2,3-ジフルオロフェニル酢酸クロリドの合成
2,3-ジフルオロフェニル酢酸 17.2 gのジクロロメタン 70 mL中で懸濁している中に、塩化チオニル 14.5 mLを滴下して加えた後、1時間加熱還流した。溶媒と過剰の塩化チオニルを常圧で留去した後、減圧蒸留(105-108℃、2.4-2.7KPa)することにより、薄黄色液体の2,3-ジフルオロフェニル酢酸クロリド 17.3 gを得た。
MS m/z 190, 192 (M+)
(2-2) 7,8-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-2)の合成
エチレンガス雰囲気下、塩化ジルコニウム 25.7 gをジクロロメタン 50 mL懸濁液を-10℃で激しく攪拌している中に、2,3-ジフルオロフェニル酢酸クロリド 20.0 gのジクロロメタン 40 mL溶液を滴下して加えた後、そのままの温度で8時間激しく攪拌し続けた。反応液を氷水中に滴下して反応を停止させた。析出した固体が溶解するまで3 M塩酸を加えた。有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗滌した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、褐色液体の7,8-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-2) 18.0 gを得た。
GC分析により、目的物(II-2、71%)の他に、1-(2,3-ジフルオロフェニル)-4-クロロ-2-ブタノン(III-2、12%)、6-クロロ-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(IV-2、2%)が含まれていた。
MS m/z 182 (M+, II-1)、198, 200 (M+, III-2)、198, 200 (M+, IV-2)
IR (neat) νmax 1723 (C=O) cm-1
1H NMR (CDCl3, TMS) δ 3.74 (2H, s, CH2), 7.02-7.13 (3H, m, ArH), 11.20 (1H, br, COOH)
(比較例1) 5,6,7-トリフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-1)の合成
Figure 0004935977
エチレンガス雰囲気下、塩化アルミニウム 13.4 gを1,2-ジクロロエタン 40 mL懸濁液を氷水浴中で激しく攪拌している中に、3,4,5-トリフルオロフェニル酢酸クロリド 20.4 gの1,2-ジクロロエタン 40 mL溶液を滴下して加えた後、そのままの温度で3時間激しく攪拌し続けた。反応液を氷水中に滴下して反応を停止させた後、析出した固体が溶解するまで3 M塩酸を加えた。有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗滌した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、褐色液体の5,6,7-トリフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-1) 20.5 gを得た。
GC分析により、目的物(II-1、66%)の他に、1-(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4-クロロ-2-ブタノン(III-1、22%)、6-クロロ-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(IV-1、3%)が含まれていた。
MS m/z 200 (M+, II-1)、216, 218 (M+, III-1)、216, 218 (M+, IV-1)
得られたテトラヒドロナフタレン誘導体(II-1)は、実施例1と比較してGC純度が低く(80%に対して66%)、ケトン体III-1が多く(10%に対して22%)、塩素置換体IV-1が多く(2%に対して3%)、実施例1のII-1より劣る結果となった。
本発明の製造方法は、副生物が少なく、目的物の精製が容易であった。
(比較例2) 7,8-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-2)の合成
Figure 0004935977
エチレンガス雰囲気下、塩化アルミニウム 13.0 gをジクロロメタン 40 mL懸濁液を氷水浴中で激しく攪拌している中に、2,3-ジフルオロフェニル酢酸クロリド 17.3 gのジクロロメタン 60 mL溶液を滴下して加えた後、そのままの温度で6時間激しく攪拌し続けた。反応液を氷水中に滴下して反応を停止させた後、析出した固体が溶解するまで3 M塩酸を加えた。有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗滌した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、褐色液体の7,8-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(II-2) 17.8 gを得た。
GC分析により、目的物(II-2、70%)の他に、1-(2,3-ジフルオロフェニル)-4-クロロ-2-ブタノン(III-2、18%)、6-クロロ-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オン(IV-2、6%)が含まれていた。
MS m/z 182 (M+, II-1)、198, 200 (M+, III-2)、198, 200 (M+, IV-2)
得られたテトラヒドロナフタレン誘導体(II-2)は、実施例2と比較してGC純度が低く(71%に対して70%)、ケトン体III-2が多く(12%に対して18%)、塩素置換体IV-2が多く(2%に対して6%)、実施例2のII-2より劣る結果となった。
本発明の製造方法は、副生物が少なく、目的物の精製が容易であった。

Claims (3)

  1. 一般式(I)
    Figure 0004935977
    (式中、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、保護された水酸基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基、または1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルコキシル基を表すが、X1、X2、X3およびX4のうち少なくとも1個または2個以上はフッ素原子を表す。)で表されるフェニル酢酸誘導体をハロゲン化剤を用いて酸ハロゲン化物に誘導した後、塩化ジルコニウム存在下、エチレンガスを作用させることによる、一般式(II)
    Figure 0004935977
    (式中、X1、X2、X3およびX4は、一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表されるテトラヒドロナフタレン誘導体の製造方法。
  2. 一般式(I)で表されるフェニル酢酸誘導体をハロゲン化剤として塩素化剤を用いて酸塩化物に誘導する請求項1記載の製造方法。
  3. 一般式(I)および一般式(II)において、X1、X2、X3およびX4が、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表す請求項1または請求項2記載の製造方法。
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