<第1の実施の形態>
以下、本発明を、電気制御によって車両の自動変速機の接続状態を切り換えるバイワイヤ方式のシフト装置に具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、シフト装置1は、ステアリングホイールWが設置されるステアリングコラム2に設置されている。このシフト装置1は、ステアリングコラム2の左側面の開口部2aから突出する操作部材としてのシフトレバー3と、ステアリングコラム2の内部において開口部2aに対応するように配設されるシフト装置本体4とを備えている。シフトレバー3の基端部はシフト装置本体4に支持され、その先端部には運転者が把持する操作ノブ3aが形成されている。操作ノブ3aには、パーキングスイッチ3bが設けられている。
シフトレバー3は、前記開口部2aを覆うようにして前記ステアリングコラム2に固定されたシフトパネル5を備えている。シフトレバー3は、シフトパネル5に穿設されたシフトゲート6に沿って、同シフトゲート6内の複数箇所に設定された各シフト位置の間を移動可能に設けられている。具体的には、図2に示すように、シフトゲート6は、T型のものであり、前記ステアリングコラム2の周方向に沿って上下方向(以下、シフト方向という。)に延びる第1ゲート6aと、該第1ゲート6aの略中央部分から車両前側へ同第1ゲート6aと直交する方向(以下、セレクト方向という。)に延びる第2ゲート6bとからなる。第2ゲート6bの長さは、第1ゲート6aの略半分程度の長さとなっている。なお、シフト方向が第1の方向に相当し、セレクト方向が第2の方向に相当する。
本実施形態では、第2ゲート6bの車両前側の端部に相当する位置Aが中立位置「T」、第2ゲート6bと第1ゲート6aとが交差する位置Bがニュートラル位置「N」、第1ゲート6aの上側の端部に相当する位置Cがリバース位置「R」、第1ゲート6aの下端部に相当する位置Dがドライブ位置「D」に設定されている。シフトレバー3は、シフト装置本体4によって中立位置Aに弾性保持されており、該中立位置Aから各シフト位置B〜Dへ操作された後その操作力が解除されると、再び中立位置Aに復帰する。運転者は、該操作ノブ3aを把持してシフトレバー3を運転者側へ引き寄せ、中立位置Aからニュートラル位置Bに操作してから、同シフトレバー3を上側のリバース位置C若しくは下側のドライブ位置Dに操作する。
図3に示すように、シフト装置本体4は、ステアリングコラム2の内部に固定されるケース7を備えている。このケース7は、車両前側に開口する略箱体状に形成され当該ケース7の車両後側(ステアリングホイールW側)の部位を構成するロアケース7aと、該ロアケース7aの車両前側に該ロアケース7aの開口部を覆うようにして固着される車両後側に開口する略箱体状に形成されたアッパケース7bとから構成されている。ロアケース7a及びアッパケース7bは、マグネシウムダイキャストにより形成されている。図4に示すように、運転席側から見てケース7内の右下側(図4において左下側)の部位には、コネクタ部8が設けられている。このコネクタ部8は、ケース7の外部に開口する有底角筒状をなすとともに、アッパケース7bの下側の部位に設けられた開口部7cを介して車両前側に突出している。コネクタ部8には、その底面から導出される態様にてコネクタ端子8aが設けられている。
次に、ケース7内に設けられたシフトレバー3の支持構造について説明する。
図5に示すように、シフトレバー3の基端部には、当該シフトレバー3の軸方向に沿って伸びる略直方体状のブロック11が当該シフトレバー3と一体的に設けられている。ブロック11は、左右方向に開口した略四角筒状のブラケット12を介してケース7に支持されている。
具体的には、このブロック11は、ブラケット12に左右方向に挿入配置されている。ブロック11には、断面円形状の挿通孔11aがシフト方向に貫通形成されている。挿通孔11aは、ブロック11の中央よりも左側(図5において右側)の部位に設けられている。ブラケット12の上側と下側の壁部12a,12bには、断面円形状の貫通孔12cが設けられている。各貫通孔12cは、ブラケット12にブロック11が収容された状態において前記挿通孔11aに対応する部位にそれぞれ設けられている。そして、ブロック11がブラケット12内に挿通孔11aと貫通孔12cとが一致するように配置された状態で、これらに第1回転軸13が図中下側から挿通されている。第1回転軸13は、ブロック11の挿通孔11aに固定され、ブラケット12の貫通孔12cに回動自在に支持されている。このため、ブロック11(シフトレバー3)は、ブラケット12に対して第1回転軸13の中心軸である第1軸線L1を中心にセレクト方向に回動自在とされている(図6参照)。
ここで、図6に示すように、ブロック11の後側面において第1回転軸13よりも右側(図6において左側)の部位には、車両後側に突出するストッパー部11bが設けられている。このため、該ストッパー部11bがブラケット12の後側の壁部12dの内側面に当接することにより、ブロック11の、第1回転軸13を中心とした車両後側(図6において反時計回り方向)への回動が規制される。また、ブラケット12の前側(図6において上側)の壁部の右側の部位には、切り欠き部12eが形成されている。このため、ブロック11の、前記第1軸線L1を中心とした車両前側(図6において時計回り方向)への回動が許容される。
同図6に示すように、ブラケット12の後外側面の左側(図6において右側)の部位には、車両後側に延びる略円柱状の第2回転軸部12fが立設されている。第2回転軸部12fは、その中心軸が前記第1回転軸13の中心軸である第1軸線L1と直角に交わるように形成されている。また、同ブラケット12の後外側面において第2回転軸部12fよりも右側(図6において左側)の部位には、前記第2軸線L2を中心とする円弧状の弧状凸部12gが形成されている。一方、ケース7(ロアケース7a)の後側の底部7dには、第2回転軸部12fに対応する断面円形状の軸受凹部7eが形成されている。また、ケース7(アッパケース7b)の前側の底部において、弧状凸部12gに対応する部位には、該弧状凸部12gよりも広い範囲の弧状凹部7fが形成されている。そして、アッパケース7b及びロアケース7aが互いに固定された状態で、第2回転軸部12f及び弧状凸部12gがそれぞれ軸受凹部7e及び弧状凹部7fに支持されることで、ブラケット12は第2回転軸部12fの中心軸である第2軸線L2を中心にシフト方向に回動自在に支持されている(図5参照)。
従って、シフトレバー3は、ケース7に対してシフトゲート6に沿って第1軸線L1を中心にセレクト方向に回動すると共に、該第1軸線L1と直交する第2軸線L2を中心にシフト方向(ステアリングコラムの周方向)に回動する。また、上述したように第1回転軸13を中心としたケース7に対するブロック11の車両後側への回動が規制されるため、シフトレバー3の第1軸線L1を中心としたセレクト方向における車両前側への回動が規制されている。
また、図5に示すように、ブロック11の右側(図5において左側)の端部には、シフトレバー3とは反対側に開口するディテントピン保持部14が凹設されている。ディテントピン保持部14は、断面円形状に形成されており、その内周面には、その軸方向に沿って延びる直線状の線状溝部14aが凹設されている。ディテントピン保持部14には、スプリング15とディテントピン16とが、当該ディテントピン保持部14の底側から順に配置されている。
スプリング15の一端部は、ディテントピン保持部14の底部に設けられたスプリング保持部14bに保持され、その他端部は、ディテントピン16の端面に設けられた保持凹部16aに保持されている。ディテントピン16は、スプリング15の弾性力により、ディテントピン保持部14から突出する方向へ常時付勢されている。
ディテントピン16においてスプリング保持部14bが設けられた部位は、ディテントピン保持部14の内径と略等しい外径を有する断面円形状に形成されている。ディテントピン16は、前記ブロック11のストッパー部11bがブラケット12の後側の壁部12dの内側面に当接した状態で、当該ディテントピン16の中心軸線が前記第1軸線L1及び第2軸線L2の交点でそれらに対して直交するように、ディテントピン保持部14に保持されている。ディテントピン16においてスプリング保持部14bが設けられた部位の外周面には、当該ディテントピン16の軸方向に沿って延びる直線状の線状凸部16bが設けられている。ディテントピン16は、該線状凸部16bが前記線状溝部14aに配置された状態でディテントピン保持部14に保持される。これにより、ディテントピン16は、ブロック11に対する回転を規制される。ディテントピン16は、同ブロック11に対してその軸方向で摺動可能に保持されている。
同図5に示すように、ディテントピン16の先端側(図5において左側)の部分には、前記スプリング保持部14bが設けられた部位よりも小さな外径を有する断面円形状の嵌合部16cが設けられている。嵌合部16cの先端面16dは、先端側に突出する半球状に形成されており、該先端面16dの頂部に対応する部位には、当該ディテントピン16の軸方向に沿って延びる四角柱状の連結部16eが設けられている。
嵌合部16cは、前記ケース7の底部7dに固定されたディテント17のガイド凹部17a内に挿入されており、該ガイド凹部17aの底面17bに対して摺動可能に当接している。連結部16eは、該ガイド凹部17aの底面17bに設けられたガイド孔17cに挿通されており、その先端側の部位は該ガイド孔17cを介してディテント17のブラケット12とは反対側に突出している。
図7に示すように、ガイド凹部17aは、ディテントピン16側から見て略T型に形成されており、シフトレバー3の前記第2軸線L2を中心とした回動方向に沿ってシフト方向に延びるシフト方向案内部18aと、該シフト方向案内部18aの略中央部分からシフトレバー3の前記第1回転軸13を中心とした回動方向に沿って後側へ延びるセレクト方向案内部18bとを備えている。ガイド孔17cは、該ガイド凹部17aと同様略T型に形成されている。
ガイド凹部17aの底面17bは、図8に示すようにシフト方向案内部18aの中央に向かうほど、また、図9に示すようにセレクト方向案内部18bの先端側(後側)に向かうほど前記ブロック11から離間するように傾斜している。
ここで、例えば、図10に示すように、シフトレバー3が前記中立位置Aからセレクト方向にあるニュートラル位置Bに操作され、ブロック11のシフトレバー3とは反対側の端部が前記第1回転軸13を中心として前側に回転すると、ディテントピン16の嵌合部16cがセレクト方向案内部18bに沿って前記ブロック11の内端部の変位方向へ変位する。このとき、嵌合部16cがセレクト方向案内部18bに沿ってブロック11の内端部の変位方向へ変位するにつれて、該ガイド凹部17aの底面17bにおいて嵌合部16cの先端面16dが当接する部位と、ブロック11との間の距離がしだいに小さくなる。このため、ディテントピン16は、スプリング15の付勢力に抗してブロック11のディテントピン保持部14に進入する側へ変位する。この状態において操作力が解除されると、ディテントピン16の嵌合部16cは、スプリング15の弾性力により、ガイド凹部17aの底面17bにおいて嵌合部16cの先端面16dが当接する部位と、ブロック11との間の距離が大きくなるよう、セレクト方向案内部18bに沿って、セレクト方向案内部18bの先端部へ移動する。これにより、シフトレバー3が中立位置Aに復帰する。
一方、図11に示すように、シフトレバー3がニュートラル位置Bからシフト方向にあるリバース位置C若しくはドライブ位置Dにさらに操作され、ブロック11が前記第2軸線L2を中心として下側若しくは上側に回転すると、ディテントピン16の嵌合部16cがシフト方向案内部18aに沿って前記ブロック11の内端部の変位方向へ変位する。このとき、嵌合部16cがシフト方向案内部18aに沿って、ブロック11の内端部の変位方向へ変位するにつれて、該ガイド凹部17aの底面17bにおいて嵌合部16cの先端面16dが当接する部位と、ブロック11との間の距離がしだいに小さくなる。このため、ディテントピン16は、スプリング15の付勢力に抗してブロック11のディテントピン保持部14に進入する側へ変位する。この状態において操作力が解除されると、ディテントピン16の嵌合部16cは、スプリング15の弾性力により、ガイド凹部17aの底面17bにおいて嵌合部16cの先端面16dが当接する部位と、ブロック11との間の距離が大きくなるよう、シフト方向案内部18aに沿って、シフト方向案内部18aとセレクト方向案内部18bとが交わる位置へ移動し、さらにセレクト方向案内部18bの先端部へ移動する。これにより、シフトレバー3が中立位置Aに復帰する。つまり、スプリング15で弾性支持されたディテントピン16と、ディテント17のガイド凹部17aとによって、シフトレバー3を中立位置Aに保持するとともにシフトレバー3への操作力が解除された際に、同シフトレバー3を中立位置Aに復帰させる復帰機構が構成されている。
また、シフトレバー3が中立位置Aからリバース位置C及びドライブ位置Dへ操作される際、シフトレバー3は、シフトゲート6のニュートラル位置Bを通過し、ディテントピン16はシフト方向案内部18aとセレクト方向案内部18bとの間の角部を乗り越える。このため、運転者は、シフトレバー3の操作時に節度感を得ることができる。つまり、スプリング15で弾性支持されたディテントピン16と、ディテント17のガイド凹部17aとによって、シフトレバー3の各シフト位置に操作する際の操作感を与える節度機構とが構成されている。
次に、上記のように構成したシフトレバー3の操作位置としてのシフト位置を検出する位置検出手段としての操作位置検出装置20について説明する。
図5及び図6に示すように、前記ディテントピン16の先端部には、マグネットホルダ21が連結されている。マグネットホルダ21は、略四角形板状に形成されており、ケース7の底部7dにおいて前記ディテント17よりも右側(図6において左側)に固定されたスライダー22により、ディテントピン16の軸方向に交差する平面方向に沿って移動可能に支持されている。
マグネットホルダ21には、ディテントピン挿通孔21aが形成されている。マグネットホルダ21のディテントピン16側の面においてディテントピン挿通孔21aの周囲には、略円筒状のディテントピン連結部21bが設けられている。ディテントピン連結部21bの先端側の部位には、その開口部を覆うようにして係合部材21cが固定されている。係合部材21cには、前記ディテントピン挿通孔21aに対応する部位に係合孔21dが設けられている。係合孔21dは、ディテントピン16の連結部16eに対応する断面四角形状に形成されており、該連結部16eは、係合部材21cに対する回転が規制された状態で係合孔21dに沿って軸方向に変位可能に挿通される。ディテントピン16の連結部16eは係合孔21dに挿通されている。このため、ディテントピン16は、その移動平面Qに沿った方向においてマグネットホルダ21と係合する。従って、シフトレバー3が操作され、ディテントピン16の連結部16eが変位すると、前記移動平面Qに沿った方向においてマグネットホルダ21がその変位方向へ変位する。
マグネットホルダ21のディテントピン16とは反対側の面には、マグネット保持部21eが設けられている。マグネット保持部21eには、操作位置検出装置20を構成する被検出体としてのマグネット23が固定されている。
ケース7の底部7dにおいてスライダー22のシフトレバー3とは反対側の部位には、操作位置検出装置20を構成する磁気センサモジュール24が設けられている。磁気センサモジュール24は、略四角形板状に形成された基板30上に実装されている。なお、基板30は、スライダー22を介してケース7(ロアケース7a)に固定されている。磁気センサモジュール24は、略平板状に形成され、マグネット23の移動平面Qと平行に設けられている。
図12(a)に示すように、マグネット23は、前記移動平面Qに直交する方向から見て、略円柱状に形成された基部23aと、該基部23aからシフト方向両側に延びる延設部としてのシフト方向延設部23bと、同じく基部23aからセレクト方向両側に延びる第2の延設部としてのセレクト方向延設部23cとを備えており、全体として略十字状に形成されている。各シフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cは、それらの延設方向に沿って延びる中心線M1,M2が基部23aの中心で直交するように形成されている。シフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cは、基部23aからの延設長さが等しくなるように形成されている。即ち、マグネット23は、移動平面Qに直交する方向から見て、セレクト方向に沿った中心線M1とシフト方向に沿った中心線M2とに関して対称に形成されている。マグネット23は、前記移動平面Qに直交する方向に着磁されている。なお、マグネット23は、磁気センサモジュール24側がS極、それとは反対側がN極となっている(図12(b)参照)。
同図12(a)に示すように、磁気センサモジュール24は、磁気検出手段としての4つの磁気抵抗素子31〜34を、その周辺回路とともにパッケージ化したものであり、全体として略四角形板状に形成されている。磁気センサモジュール24は、図12(a)における左右方向がセレクト方向になるように、また、同図12(a)における上下方向がシフト方向となるように設けられている。また、磁気センサモジュール24は、ケース7内において、当該磁気センサモジュール24の中心位置とシフトレバー3が中立位置Aに配置された場合のマグネット23の中心(この場合、移動中心)Mとが一致するように配置されている。各磁気抵抗素子31〜34は、マグネット23が移動する際のその移動中心(中心Mの移動軌跡)を挟んで対をなすように配置されている。即ち、第1〜第4磁気抵抗素子31〜34は、略四角形板状に形成されたリードフレーム30aの角部にそれぞれ設けられている。具体的には、第1磁気抵抗素子31は同図12(a)における左上側の角部に、第2磁気抵抗素子32は同図12(a)における左下側の角部に、第3磁気抵抗素子33は同図12(a)における右上側の角部に、第4磁気抵抗素子34は同図12(a)における右下側の角部にそれぞれ設けられている。第1〜第4磁気抵抗素子31〜34は、セレクト方向若しくはシフト方向で互いに隣り合う第1〜第4磁気抵抗素子31〜34の間の距離が、セレクト方向若しくはシフト方向におけるマグネット23の長さよりも小さくなるように配置されている。
本実施の形態では、上述したように、マグネット23は、移動平面Qに直交する方向から見て、基部23aからシフト方向両側に延びるシフト方向延設部23bと、同じく基部23aからセレクト方向両側に延びるセレクト方向延設部23cとを備えており、移動平面Qに直交する方向に着磁されている。基部23aからシフト方向両側に延設されたシフト方向延設部23bの着磁方向一側から出た磁束の一部は、セレクト方向に沿ってシフト方向延設部23bの着磁方向他側へと回り込む。このため、マグネット23のシフト方向延設部23bによって、セレクト方向に沿った磁束が各磁気抵抗素子31〜34に付与される。また、基部23aからセレクト方向両側に延設されたセレクト方向延設部23cの着磁方向一側から出た磁束の一部は、シフト方向に沿ってセレクト方向延設部23cの着磁方向他側へと回り込むため、マグネット23のセレクト方向延設部23cによって、シフト方向の磁束が各磁気抵抗素子31〜34に付与される。各磁気抵抗素子31〜34には、マグネット23のシフト方向延設部23bにより形成される磁界とセレクト方向延設部23cにより形成される磁界との合成磁界が付与される。従って、図12(a)及び図12(b)に示すように、マグネット23の中心軸に対して右上側の領域にある第3磁気抵抗素子33と左下側の領域にある第2磁気抵抗素子32には、矢印A1方向に沿った方向の磁界が付与される。また、マグネット23の中心軸に対して左上側の領域にある第1磁気抵抗素子31と右下側の領域にある第4磁気抵抗素子34には、矢印A2方向に沿った方向の磁界が付与される。即ち、磁気抵抗素子31〜34の検知面31a〜34aを含む平面Q1においてマグネット23の移動中心を挟んで対をなす2つの領域において、マグネット23によって付与される磁束の方向が、その中心Mよりもその移動方向一側の領域と他側の領域とでそれぞれ異なる。
また、マグネット23は、移動平面Qに直交する方向から見て、セレクト方向に沿った中心線M1に関して対称に形成されているとともに、シフト方向に沿った中心線M2に関しても対称に形成されているため、マグネット23の移動平面Qに直交する方向から見て、マグネット23の周辺に、シフト方向及びセレクト方向に沿った中心線M1,M2に関して対称な磁束(磁界)が形成される。
各磁気抵抗素子31〜34は、例えば4つの磁気抵抗がブリッジ状に接続されてなるいわゆるMRセンサとして構成されている。磁気抵抗の抵抗値は、与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。各磁気抵抗素子31〜34は、前述したブリッジ状の回路の中点電位を図示しないコンパレータに入力することにより、二値化する。本実施の形態では、各磁気抵抗素子31〜34は、自身に付与される磁束の方向がシフト方向へ延びる軸線に対して反時計回り方向へ45度の角度をなす時に最大値(ピーク)を、シフト方向へ延びる軸線に対して時計回り方向へ45度の角度をなす時に最小値(ボトム)をとる、周期が180度のアナログ信号を出力する。従って、各磁気抵抗素子31〜34は、図12(a)において矢印A1方向に沿った磁束が付与された場合に最小値(ボトム)を、逆に同図12(a)において矢印A2方向に沿った磁束が付与された場合に最大値(ピーク)をとる。図示しないコンパレータは、各磁気抵抗素子31〜34から出力された中点電位と予め設定された閾値THとを比較し、二値化する。本実施の形態では、各磁気抵抗素子31〜34に対してシフト方向若しくはセレクト方向に沿った方向の磁束が付与された場合の中点電位が、閾値THとして予め設定されている(図17参照)。前記コンパレータは、各磁気抵抗素子31〜34の中点電位と、予め設定された閾値THとを比較し、中点電位が閾値THよりも大きい場合はHレベルの検出信号を出力し、中点電位が閾値THよりも小さい場合はLレベルの検出信号を出力する。即ち、各磁気抵抗素子31〜34は、マグネット23の中心Mがその移動方向において各磁気抵抗素子31〜34の一側にあるか他側にあるかで二値化した検出信号を出力する。
図13に示すように、各磁気抵抗素子31〜34は、車両側のコネクタに対する前記コネクタ部8の連結に基づきそのコネクタ端子8aが車両側のコネクタ端子に接続されることで、ケース7の外部に設けられた検出手段としてのコントローラ35に個別に電気的に接続される。また、前記パーキングスイッチ3bは、磁気抵抗素子31と同様、車両側のコネクタに対する前記コネクタ部8の連結に基づき、コントローラ35に電気的に接続される。
コントローラ35は、具体的には図示しないCPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットであり、各磁気抵抗素子31〜34から出力された検出信号S1〜S4の組み合わせに基づいて、前記移動平面Qにおけるマグネット23の位置を検出し、シフトレバー3の位置を検出する。また、コントローラ35は、パーキングスイッチ3bから出力される操作信号S5に基づいて該パーキングスイッチ3bの押圧操作を検出する。そして、コントローラ35は、その押圧操作の検出結果に基づいて、図示しない車両の自動変速機の接続状態を切り替える。
また、コントローラ35は、各磁気抵抗素子31〜34の検出信号の変化がシフトレバー3の操作によるものか、或いはノイズ等の外乱によるものかを、各磁気抵抗素子31〜34からの検出信号(二値化信号)の組み合わせに基づいて判断する。そして、該検出信号の変化がシフトレバー3によるものでないと判断した場合、コントローラ35は、前記自動変速機の接続状態をニュートラルに切り替える旨の制御信号を前記自動変速機に出力する。
次に、このように構成されるシフト装置の作用について説明する。
本実施の形態のマグネット23は、基部23aからシフト方向両側に延びるシフト方向延設部23bと、同じく基部23aからセレクト方向両側に延びるセレクト方向延設部23cとを備えており、移動平面Qに直交する方向に着磁されている。磁気抵抗素子31〜34は、マグネット23が移動する際のその移動中心(中心Mの移動軌跡)を挟んで対をなすように配置されているため、当該マグネット23の移動に伴い、マグネット23の移動中心を挟んで対をなす磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が変化する。第1〜第4磁気抵抗素子31〜34は、マグネット23の中心Mの位置に応じた値の二値化信号を出力する。
例えばシフトレバー3が中立位置Aにある場合、図14に示すように、マグネット23の中心Mは、セレクト方向において第1磁気抵抗素子31と第3磁気抵抗素子33との間であって、シフト方向において第3磁気抵抗素子33と第4磁気抵抗素子34との間の位置P5に配置される。この場合、第1磁気抵抗素子31の検出信号S1はHレベル、第2磁気抵抗素子32の検出信号S2はLレベル、第3磁気抵抗素子33の検出信号S3はLレベル、第4磁気抵抗素子34の検出信号S4はHレベルとなる。
また、シフトレバー3がニュートラル位置Bに操作されると、マグネット23の中心Mは、セレクト方向において第1磁気抵抗素子31及び第2磁気抵抗素子32よりも前側であって、シフト方向において第3磁気抵抗素子33と第4磁気抵抗素子34との間の位置P2に配置される。この場合、第1磁気抵抗素子31の検出信号S1はLレベル、第2磁気抵抗素子32の検出信号S2はHレベル、第3磁気抵抗素子33の検出信号S3はLレベル、第4磁気抵抗素子34の検出信号S4はHレベルとなる。
また、シフトレバー3がリバース位置Cに操作されると、マグネット23の中心Mは、セレクト方向において第1磁気抵抗素子31及び第2磁気抵抗素子32よりも前側であって、シフト方向において第2磁気抵抗素子32及び第4磁気抵抗素子34よりも下側の位置P3に配置される。この場合、第1磁気抵抗素子31の検出信号S1はLレベル、第2磁気抵抗素子32の検出信号S2はLレベル、第3磁気抵抗素子33の検出信号S3はLレベル、第4磁気抵抗素子34の検出信号S4はLレベルとなる。
また、シフトレバー3がドライブ位置Dに操作されると、マグネット23の中心Mは、セレクト方向において第1磁気抵抗素子31及び第2磁気抵抗素子32よりも前側であって、シフト方向において第1磁気抵抗素子31及び第3磁気抵抗素子33よりも上側の位置P1に配置される。この場合、第1磁気抵抗素子31の検出信号S1はHレベル、第2磁気抵抗素子32の検出信号S2はHレベル、第3磁気抵抗素子33の検出信号S3はHレベル、第4磁気抵抗素子34の検出信号S4はHレベルとなる。
このように、図15に示すように、シフトレバー3の位置A〜Dのそれぞれにおいて、各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(二値化信号)S1〜S4の組み合わせが全て異なるため、コントローラ35は、各磁気抵抗素子31〜34からの検出信号の組み合わせに基づいて、シフトレバー3の操作位置を検知可能となる。
また、シフトレバー3が各位置へ操作される際、4つの磁気抵抗素子31〜34の内、2つの磁気抵抗素子31〜34の検出信号S1〜S4が変化する。このため、例えばシフトレバー3が中立位置Aにある状態で磁気抵抗素子31〜34の故障や、ノイズ等によって、各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号S1〜S4のうち1つの検出信号S1〜S4だけが変化した場合は、コントローラ35は、各磁気抵抗素子31〜34からの検出信号に基づいて、該検出信号の変化がシフトレバー3の操作によるものではないと判断することができるようになる。検出信号の変化がシフトレバー3の操作によるものではないと判断した場合、コントローラ35は、前記自動変速機の接続状態をニュートラルに切り替える。このように、シフト装置1は、安全側に動作する。このため、例えば磁気抵抗素子31〜34の故障や、ノイズ等による検出誤差によって磁気抵抗素子31〜34の検出信号が変化することによりシフト位置が誤判断されて前記変速機が不用意に切り替えられてしまうことを防止することができる。
また、セレクト方向及びシフト方向においてそれぞれ複数箇所におけるマグネット23の位置毎に各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号S1〜S4の組み合わせが全て異なる。具体的には、図15に示すように、マグネット23を7つの位置に配置した場合において第1〜第4磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号S1〜S4の組み合わせがそれぞれ異なる。このため、コントローラ35に、マグネット23の位置P1〜P7と、その位置P1〜P7に対応する第1〜第4磁気抵抗素子31〜34からの検出信号S1〜S4の組み合わせとを関連付けて記憶することにより、シフトレバー3の操作位置を最大で7箇所設定することができる。なお、この7箇所(P1〜P7)の内からシフトレバー3の操作パターンに応じて該操作位置に対応するマグネット23の位置を選択することにより、本実施の形態のようなT型のみに限らず、h型、H型、十字型等の複数種類の操作パターンに対応することができる。
ところで、第1〜第4磁気抵抗素子31〜34は、予め設定された閾値THに基づいて二値化された検出信号S1〜S4を出力する。そして、コントローラ35は、該二値化された検出信号S1〜S4の組み合わせに基づいてシフトレバー3の位置を判断する。このため、例えばマグネット23の各位置P1〜P7に応じて各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)の値の差が小さい場合、ノイズが重畳されたり、外乱磁場が付与されたりすることにより、該検出信号(中点電位)が前記閾値THを越えて変化し易くなるため、検出信号S1〜S4が反転し、シフトレバー3のシフト位置が誤判断されてしまうことが懸念される。従って、シフトレバー3のシフト位置を安定して検出するためには、マグネット23が各位置P1〜P7に保持されている状態において磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)の値と閾値との差が充分確保されることが望ましい。即ち、図16において実線で示すように、マグネット23がその移動方向において各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側に移動する際の検出信号(中点電位)の変化が急峻であり、また、マグネット23の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えてその一側若しくは他側を移動している状態においても検出信号(中点電位)の値が広い範囲で一定に保たれるような検出信号(理想電位)が出力されることが望ましい。
本実施の形態では、マグネット23は、基部23aからシフト方向に延設されたシフト方向延設部23bを有しており、当該シフト方向延設部23bの着磁方向一側から出た磁束の一部は、セレクト方向に沿ってシフト方向延設部23bの着磁方向他側へと回り込むため、セレクト方向に沿った磁束が形成される。また、マグネット23は、基部23aからセレクト方向に延設されたセレクト方向延設部23cを有しており、当該セレクト方向延設部23cの着磁方向一側から出た磁束の一部は、マグネット23のシフト方向に沿ってセレクト方向延設部23cの着磁方向他側へと回り込むため、シフト方向に沿った磁束が形成される。各磁気抵抗素子31〜34には、マグネット23のシフト方向延設部23bにより形成される磁界とセレクト方向延設部23cにより形成される磁界との合成磁界が付与される。従って、図16に示すように、マグネット23がセレクト方向に沿って各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側へ移動する際に各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が大きく変化する。また、マグネット23がシフト方向に沿って各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側へ移動する際に各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が大きく変化する。このため、図17に示すように、断面円形状(円柱状)のマグネット41や、断面四角形状(四角柱状)のマグネット42と比較して、マグネット23がその移動方向において各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側に移動する際の、マグネット23の移動量に対する検出信号(中点電位)の変化が大きくなり、シフトレバー3の操作に伴いマグネット23が各位置P1〜P7に配置された場合の検出信号(中点電位)の値の差が大きくなる。
また、図16に示すように、マグネット23が、セレクト方向に移動しシフト方向延設部23bが磁気抵抗素子31〜34から離間する場合、各磁気抵抗素子31〜34に対するセレクト方向延設部23cの影響が、各磁気抵抗素子31〜34に対するシフト方向延設部23bの影響よりも大きくなる。このため、図17に示すように、断面円形状のマグネット41や、断面四角形状のマグネット42と比較して、マグネット23の移動中心Mが磁気抵抗素子31〜34を越えて移動する際の当該マグネット23の移動量に対する各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の変化が小さくなる。また、マグネット23が、シフト方向に移動しセレクト方向延設部23cが磁気抵抗素子31〜34から離間する場合、各磁気抵抗素子31〜34に対するシフト方向延設部23bの影響が、各磁気抵抗素子31〜34に対するセレクト方向延設部23cの影響よりも大きくなる。このため、この場合においても、同図17に示される断面円形状のマグネット41や、断面四角形状のマグネット42と比較して、マグネット23の移動中心Mが磁気抵抗素子31〜34を越えて移動する際の当該マグネット23の移動量に対する各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の変化が小さくなる。よって、マグネット23の移動に伴って各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が徐々に閾値に近づく方向へ変化してしまうことが抑制され、マグネット23の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えてその一側若しくは他側を移動している状態においても検出信号(中点電位)の値が広い範囲で一定に保たれる。即ち、マグネット23の移動に伴い磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が、図16において実線で示す理想的な検出信号(理想電位)に近づく。従って、シフトレバー3のシフト位置を安定して検出することができる。
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)マグネット23は、その基部23aからシフト方向に延びるシフト方向延設部23bとセレクト方向に延びるセレクト方向延設部23cとを備えている。移動平面Qに直交する方向から見てマグネット23の移動方向に直交する方向に延設されたシフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cの着磁方向一側から出た磁束の一部は、マグネット23の移動方向に沿ってシフト方向延設部23bの着磁方向他側へと回り込むため、マグネット23のシフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cによって、当該マグネット23の移動方向に沿った磁束が各磁気抵抗素子31〜34に付与される。このため、マグネット23のシフト方向延設部23bが各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側へ移動する際に各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が大きく変化する。従って、マグネット23が各位置に配置された場合の検出信号(中点電位)の値の差を大きくすることができる。よって、マグネット23の移動量に関わらずノイズや外乱磁場に対する耐力を向上させることができる。
(2)マグネット23は、移動平面Qに直交する方向から見てその移動方向両側に延設されたシフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cを備えているため、マグネット23の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えて移動すると、各磁気抵抗素子31〜34にはマグネット23の移動に関わらず一定方向の磁束が付与されるようになる。従って、マグネット23の移動量に対する磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の変化が小さくなる。このため、マグネット23の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えて移動する際に各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が徐々に閾値THに近づく方向へ変化してしまうことを抑制して検出信号(中点電位)の値と閾値THとの差を充分確保することができる。よって、このことによっても、マグネット23の移動量に関わらずノイズや外乱磁場に対する耐力を向上させることができる。
(3)マグネット23は、その移動平面Qに直交する方向から見て、セレクト方向に沿った中心線M1とシフト方向に沿った中心線M2とに関して対称に形成されているため、マグネット23の周辺には、マグネット23の移動平面Qに直交する方向から見て、セレクト方向に沿った中心線M1とシフト方向に沿った中心線M2とに関して対称な磁束が形成される。このため、マグネット23の移動方向略中央部が各磁気抵抗素子31〜34を通過する前後で各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が大きく変化する。即ち、マグネット23の移動に伴い検出信号(中点電位)が大きく変化するタイミングと、マグネット23の中心が各磁気抵抗素子31〜34を通過するタイミングとが略一致する。よって、マグネット23の移動に伴い検出信号(中点電位)が大きく変化するタイミングをマグネット23の形状から把握することが可能となり、操作位置検出装置20の設計が容易となる。
(4)また、マグネット23が互いに直交する二方向に移動する場合において、その移動方向にかかわらず、マグネット23がその移動方向において各磁気抵抗素子31〜34の一側若しくは他側に保持されている状態を安定して検出することができる。このため、複数種類の操作パターンに対応することが可能となり、汎用性が向上する。
(5)各磁気抵抗素子31〜34が、マグネット23の移動方向に沿って複数設けられているため、複数の磁気抵抗素子31〜34からの検出信号S1〜S4に基づいて、マグネット23の位置をその移動方向に沿って複数箇所で段階的に検出することができる。
(6)シフトレバー3を支持する支持機構(ブラケット12等)と復帰機構(スプリング15、ディテントピン16、ディテント17)とが、シフトレバー3の軸方向に並んで設けられ、集中化が図られているため、シフト装置1のより一層の小型化が可能となる。
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、マグネットの形状と、該マグネットにヨーク(強磁性体)を付属させた点で前記第1の実施の形態と異なる。
図18(a)に示すように、被検出体50は、前記移動平面Qに直交する方向から見て、略円筒状に形成されたヨーク51と、該ヨーク51の内側に設けられたマグネット52とを備えている。ヨーク51及びマグネット52は、それらの間に設けられた非磁性材料からなるモールド部材53によって一体に形成されている。
ヨーク51は、磁性材料よりなる板状の複数の磁性板51aが軸方向に積層されてなり、前記移動平面Qに直交する方向から見て、環状の環状部51bと、該環状部51bから先端が径方向内側を向くように突出した4つの延出部51cとを備えている。前記移動平面Qに直交する方向から見て、延出部51cは、環状部51bの内周面51dから移動方向(シフト方向及びセレクト方向)に沿った中心線M1,M2に対して略45°傾斜した方向に延出されている。即ち、延出部51cは、前記移動平面Qに直交する方向から見て、当該被検出体50の移動中心Mからその移動方向に直交する方向にずれた位置であって、移動方向に延びて被検出体50の移動中心Mを通る軸線(この場合、中心線)M1,M2を挟んだ両側の位置に設けられている。
マグネット52は、前記ヨーク51の径方向で対向する延出部51cの先端の間の距離よりも小さい直径を有する円柱状に形成されており、その磁気センサモジュール24側の端部がモールド部材53から突出した状態で同モールド部材53に保持されている(図18(b)参照)。マグネット52は、前記移動平面Qに直交する方向から見て、当該マグネット52の中心とヨーク51の中心とが一致するように設けられている。マグネット52は、前記移動平面Qに直交する方向に着磁されている。なお、マグネット52は、前記磁気センサモジュール24側(図18(b)において右側)がS極、それとは反対側がN極となっている。
マグネット52の着磁方向一側の面から他側の面に回り込む磁束の一部は、ヨーク51の延出部51cが設けられている位置、即ち当該被検出体50の移動中心Mからその移動方向に直交する方向にずれた位置であって移動方向に延びて被検出体50の移動中心Mを通る軸線M1,M2を挟んだ両側の位置に引き寄せられる。従って、図19に示すように、被検出体50がセレクト方向に沿って各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側へ移動する際に各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が大きく変化する。また、被検出体50がシフト方向に沿って各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側へ移動する際に各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が大きく変化する。このため、同図19に示すように、断面円形状(円柱状)のマグネット41と比較して、被検出体50がその移動方向において各磁気抵抗素子31〜34の一側から他側に移動する際の、被検出体50の移動量に対する検出信号(中点電位)の変化が大きくなり、シフトレバー3の操作に伴い被検出体50が各位置P1〜P7に配置された場合の検出信号(中点電位)の値の差が大きくなる。
また、ヨーク51の延出部51cにより、被検出体50の移動方向に沿ってマグネット52の着磁方向一側の面から他側の面に回り込む磁束が、当該被検出体50の移動中心Mからその移動方向に直交する方向にずれた位置であって移動方向に延びて被検出体50の移動中心Mを通る軸線M1,M2を挟んだ両側の位置に引き寄せられる。このため、断面円形状のマグネット41と比較して、被検出体50の移動中心Mが磁気抵抗素子31〜34を越えて移動する際の当該被検出体50の移動量に対する各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の変化が小さくなる。よって、被検出体50の移動に伴って各磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が徐々に閾値に近づく方向へ変化してしまうことが抑制され、被検出体50の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えてその一側若しくは他側を移動している状態においても検出信号(中点電位)の値が広い範囲で一定に保たれる。即ち、被検出体50の移動に伴い磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が、図19において実線で示す理想的な検出信号(理想電位)に近づく。従って、シフトレバー3のシフト位置を安定して検出することができる。
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)ヨーク51によって、被検出体50の着磁方向一側の面から他側の面に回り込む磁束が、被検出体50の移動中心Mから移動方向に直交する方向にずれた位置であって移動方向においてその移動中心Mを挟んだ両側の位置に引き寄せられるため、被検出体50の移動中心Mが第1〜第4磁気抵抗素子31〜34の一側から他側へ移動する際に第1〜第4磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の方向が大きく変化する。このため、被検出体50が各所定位置に配置された場合の検出信号の値の差を大きくすることができる。よって、被検出体50の移動量に関わらず、ノイズや外乱磁場に対する耐力を向上させることができる。
(2)また、被検出体50の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えて移動すると、各磁気抵抗素子31〜34には被検出体50の移動に関わらず一定方向の磁束が付与されるようになる。従って、被検出体50の移動量に対する磁気抵抗素子31〜34に付与される磁束の変化が小さくなる。このため、被検出体50の移動中心Mが各磁気抵抗素子31〜34を越えて移動する際に各磁気抵抗素子31〜34から出力される検出信号(中点電位)が徐々に閾値THに近づく方向へ変化してしまうことを抑制して検出信号(中点電位)の値と閾値THとの差を充分確保することができる。よって、このことによっても、ノイズや外乱磁場に対する耐力を向上させることができる。
尚、本実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施の形態のマグネット23と上記第2の実施の形態のヨーク51とを組み合わせて被検出体60を構成してもよい。この場合、図20に示すように、マグネット23のシフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cを、ヨーク51の延出部51cの間にそれぞれ配置する。このような構成によれば、上記第1の実施の形態の作用と第2の実施の形態の作用とが得られる。このため、上記第1及び第2の実施の形態と同様、被検出体60が各位置に配置された場合の検出信号の値の差を大きくすることが可能となり、被検出体60の移動量に関わらず、ノイズや外乱磁場に対する耐力を向上させることができる。
・上記第1の実施の形態では、略十字状に形成したマグネット23を用いたが、マグネット23の形状はこのような態様に限定されない。例えばマグネットを断面ひし形や正方形状に形成し、その対角線に沿った方向へ移動するように構成してもよい。なお、この場合、マグネットの頂部が、それぞれ延設部若しくは第2の延設部に相当する。
・上記第1の実施の形態では、シフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cは、それらの基部23aからの延設長さが等しくなるように形成したが、シフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cの基部23aからの延設長さは異なっていてもよい。
・上記第1の実施の形態では、基部23aから互いに直交する方向へ延びるシフト方向延設部23bとセレクト方向延設部23cとを有するマグネット23を用いたが、シフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cの何れか一方だけを有するマグネットを用いてもよい。
・上記第1の実施の形態では、マグネット23のシフト方向延設部23b及びセレクト方向延設部23cを基部23aと一体的に形成したが、例えば図21(a)に示すように、マグネット70の基部71と延設部72とをそれぞれ別部材から構成し、それらを非磁性材料からなるモールド部材73によって一体に形成してもよい。なお、この場合、例えば同図21(a)において括弧内に示すように、基部71の磁気センサモジュール24側をS極、各延設部72の磁気センサモジュール24側をN極としてもよい。即ち、基部71及び延設部72の着磁方向が逆であってもよい。
・上記第2の実施の形態では、ヨーク51に環状部51bを設けたが、例えば図21(b)に示すように、該環状部51bを省略し、マグネット52の着磁方向から見て、当該被検出体80の移動中心Mから移動方向に直交する方向にずれた位置であって移動方向に延びて被検出体80の移動中心Mを通る軸線M1,M2を挟んだ両側の位置に、それぞれ強磁性体81を設け、それらを非磁性材料からなるモールド部材82によって一体に形成してもよい。
・上記第1の実施の形態では、マグネット23をセレクト方向に沿った中心線M1とシフト方向に沿った中心線M2とに関して対称に形成したがこのような態様に限定されない。例えば、基部23aの両側にシフト方向延設部23bとセレクト方向延設部23cとをそれぞれ設けたが、基部23aの片側だけにシフト方向延設部23bとセレクト方向延設部23cを設けてもよい。また、上記第2の実施の形態では、被検出体50をセレクト方向に沿った中心線M1とシフト方向に沿った中心線M2とに関して対称に形成したがこのような態様に限定されない。例えば、ヨーク51に延出部51cを4つ設けたが、3つでもよく、また、中心線M1,M2に関して対象とならない位置に2つ設けてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、複数の磁気抵抗素子31〜34から出力された検出信号S1〜S4の組み合わせに基づいてシフトレバー3のシフト位置を検出する操作位置検出装置20として具体化したが、このような態様に限定されない。例えば、シフトレバー3の一方向への操作を、1つの磁気抵抗素子から出力される検出信号と予め設定した閾値とを比較することによって検出する操作位置検出装置として具体化してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、各磁気抵抗素子31〜34から出力された検出信号をコンパレータによって二値化した二値化信号をコントローラ35に入力したが、コントローラ35自身が各磁気抵抗素子31〜34から出力された検出信号を二値化するようにしてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、4つの磁気抵抗素子31〜34を1つのパッケージとして一体に構成したが、個別にパッケージされた4つの磁気抵抗素子31〜34を用いてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、磁気抵抗素子31〜34を同一平面上に配置したが、このような態様に限定されない。例えば、基板30の表側と裏側とに設けてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、各磁気抵抗素子31〜34の間の間隔が一定となるように配置したが、このような態様に限定されず、シフトパターンに応じて適宜変更してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、4つの磁気抵抗素子31〜34を用いたが、2つ以上の複数であれば、磁気抵抗素子の数は、適宜変更可能である。
・上記第1及び第2の実施の形態では、シフトレバー3が中立位置にある場合に、マグネット23の中心Mと磁気センサモジュール24の中心位置とが一致するように設けたが、このような態様に限定されず、例えば、シフトレバー3がニュートラル位置にある場合にマグネット23の中心Mと磁気センサモジュール24の中心位置とが一致するように設けてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、マグネット23を移動平面Qに直交する方向に着磁したが、移動平面Qに交差する方向に着磁すれば、必ずしも移動平面Qに直交していなくてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、マグネット23の磁気センサモジュール24側をS極、それとは反対側をN極としたが、逆方向に着磁してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、磁気センサモジュール24をスライダー22に固定したが、このような態様に限定されず、例えばケース7に固定してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、シフトパターンがT型となるシフト装置1に具体化したが、例えばシフトパターンがh型、H型、十字型となるシフト装置1に具体化してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、シフト装置1のシフトレバー3にパーキングスイッチ3bを設けたが、例えばインストルメントパネル等にパーキングスイッチを設けるようにしてもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、コラムシフト装置に具体化したが、フロアシフト装置や、センターコンソールやインストルメントパネル等に設けられるシフト装置に具体化してもよい。また、シフト装置1以外の各種車載機器に対応する入力装置や、車載機器以外の装置に対応する入力装置に具体化してもよい。
1…シフト装置、3…操作部材としてのシフトレバー、6…シフトゲート、20…操作位置検出装置、23,70…被検出体としてのマグネット、50,60,80…被検出体、23b…延設部としてのシフト方向延設部、23c…第2の延設部としてのセレクト方向延設部、31〜34…磁気検出手段としての第1〜第4磁気抵抗素子、51…ヨーク(強磁性体)、72…延設部、81…強磁性体、M…移動中心、M1,M2…中心線、P1〜P7…位置、S1〜S4…検出信号(二値化信号)。