JP4931590B2 - アダマンタンの固結防止方法 - Google Patents
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Description
このようなアダマンタンは、ジシクロペンタジエンを原料として、塩化アルミニウム等のルイス酸を触媒として合成され、通常、有機溶媒による洗浄工程を経て工業用化学品としてドラム缶や紙袋といった荷姿で出荷・流通されている。
そのような状況下で、固結の少ないアダマンタンを得る方法として、アダマンタン粉末をローラー圧縮法やスラッグ打錠法によって造粒し、昇華物結晶の成長を抑制し、凝結を防止する手法が開示されている(特許文献1)。
アダマンタンの製造者や二次加工業者にとって、上記のような課題を有する形態で流通することは、当然に望ましいことではなく、安定した品質のアダマンタンを供給することが、製造者や二次加工業者にとって大きな課題である。
本発明は、このように粒子が互いに凝集し固結することのない、安定した品質のアダマンタンを提供することを目的とするものである。
(1) ナフテン系溶媒を用いて精製されたアダマンタンに含まれる溶媒量を、50℃以下の温度、40kPa以下の圧力による60分以内の乾燥で0.35質量%以下とすることを特徴とするアダマンタンの固結防止方法。
(2) アダマンタンに含まれる溶媒の常圧における沸点が150℃以下であり、60分以内の乾燥によりアダマンタンに含まれる溶媒量を0.3質量%以下とする(1)のアダマンタンの固結防止方法。
(3) ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒を用いて精製されたアダマンタンに含まれる溶媒量を、50℃以下の温度、40kPa以下の圧力による60分以内の乾燥で0.05質量%以下とすることを特徴とするアダマンタンの固結防止方法。
(4) アダマンタンに含まれる溶媒の常圧における沸点が150℃以下であり、60分以内の乾燥によりアダマンタンに含まれる溶媒量を0.04質量%以下とする(3)のアダマンタンの固結防止方法。
(5) アダマンタンを35℃以下で保管する(1)〜(4)のいずれかに記載のアダマンタンの固結防止方法。
アダマンタンは、普通、ジシクロペンタジエンを水素化してトリメチレンノルボルナンとし、これを塩化アルミニウムや塩化水素等の酸性物質を触媒として異性化することによって合成されている。しかし、異性化の反応収率は100%になるということではなく、異性化原料であるendo-トリメチレンノルボルナン、副生されるexo-トリメチレンノルボルナンなどが製造品に残存するため、工業原料として利用するためには洗浄や場合によっては再結晶による精製工程が必須である。そのためアダマンタンの精製品にはどうしても洗浄溶媒あるいは再結晶溶媒が残存することになる。本発明はこの残存溶媒が元来昇華性をもつアダマンタン類の凝集をさらに助長する原因となることを見出したものである。
そのため、アダマンタンに含まれる溶媒量を0.35質量%以下又は0.05質量%以下にするには、ある一定の短い時間内で急激に(例えば減圧下に)溶媒を除去する必要がある。
すなわち、アダマンタン製造の精製工程である洗浄または再結晶等の溶媒を用いる工程においては、上記のように常圧の沸点が150℃以下の有機溶媒を用い、50℃以下の温度条件で40kPa以下の圧力下で、作業開始から60分以内に該溶媒の除去・乾燥を行い、製品のアダマンタンに残存する溶媒量をナフテン系溶媒の場合には0.30質量%以下、ナフテン系以外の溶媒の場合には0.04質量%以下とすることが好ましい。
沸点が150℃を超えるものは、上記の圧力以下で乾燥を試みても、長時間を要し、粒子内部の溶媒残存量も多くなってしまうだけでなく、アダマンタンそのものの昇華が進行するため、効率的でなく、本発明にふさわしいアダマンタンを得ることが困難である。
このようなアダマンタン粉体の特性を、図1を用いて説明する。図1の左上部に示すように、アダマンタン粉体はアダマンタン粒子(ADM粒子)の集合体であり、精製工程からのアダマンタン粉体は粒子の表面に溶媒が付着した集合体となっている。
このアダマンタン粉体を大気圧で自然乾燥する場合(即ち減圧乾燥しない場合)、アダマンタン粉体の表面は乾燥しやすいが、粉体内部の溶媒は残存してしまう。つまり、粉体内部の粒子表面が「溶媒に溶解」⇔「溶媒からの析出」の平衡にあり、粒子同士が凝集し易い。一旦凝集体ができると、かつて表面に残存していた溶媒分子は、粉体内に残った格好となり、蒸発しにくくなり、それが滞留しているため、凝集体がより強固に結合する。これが繰り返されて固結が起きる。
これに対して精製工程からのアダマンタン粉体を減圧乾燥する場合は、低温下にアダマンタン粉体の内部からも効率よく溶媒が蒸発する。よって、粉体内部で上記の凝集が起きにくく、粒子同士が乖離された状態で乾燥されるため、凝集体内部の滞留しやすい残存溶媒が少なくなり、固結しにくい粉体になる。よって、短時間の内に、溶媒をいかに効率よく除去することが固結防止にとって重要であるかが理解できる。
アダマンタン精製品の保管・輸送方法については、温度条件を35℃以下という状態を保てば良く、保管・輸送の形態やコンテナーの形状は特に問題としない。ただし、長期間の保管中では、多少なりとも空気酸化などが起る場合も考えられるため、窒素やその他の不活性ガスの雰囲気下におくことが望ましい。また、本発明においては、酸化を防止するために、酸化防止剤を混入させたアダマンタンについても制約を受けることなく実施することができる。
なお、各実施例及び比較例において、アダマンタンの固結状態(ブロッキング)の判定は、音波ふるい分け測定装置(株式会社朝日製作所、朝日ソニックシフターA1)にアダマンタンを10g仕込み、850μmのふるい上に残存した状況から、残存量が5g未満の場合に固結しない状態(○)、残存量が5g以上の場合に固結する状態(×)と判定した。
伝導受熱式溝型撹拌乾燥器(容積117L、伝熱面積3.88m2)を用い、精製溶媒に用いた2−プロパノール(沸点82.4℃)10.00質量%を含む平均粒子径350μmのアダマンタン粒子(炭素数10以上の炭化水素0.92質量%)20kgを、圧力10kPa、温度50℃で40〜60分間乾燥させた。
40分後におけるアダマンタン粒子の2−プロパノール含有量は0.04質量%、60分後で0.03質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していなかった。なお、このアダマンタン粒子に荷重を加え、30kPaの圧力下で保管したが、90日経過後に固結していなかった。
乾燥時の温度を40℃とした以外は、実施例1と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。40分後におけるアダマンタン粒子の2−プロパノール含有量は0.04質量%、60分後で0.03質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していなかった。なお、このアダマンタン粒子に荷重を加え、30kPaの圧力下で保管した場合でもあっても、90日経過後に固結していなかった。
乾燥時の温度を0℃とした以外は、実施例1と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。40分後におけるアダマンタン粒子の2-プロパノール含有量は0.05質量%、60分後で0.04質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していなかった。なお、このアダマンタン粒子に荷重を加え、30kPaの圧力下で保管した場合でもあっても、90日経過後に固結していなかった。サンプルは25℃、常圧下で90日経過後に固結していなかった。
乾燥時の圧力を40kPa、温度条件を40℃とした以外は、実施例1と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。40分後における2−プロパノール含有量は0.04質量%、60分後で0.03質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していなかった。なお、このアダマンタン粒子に荷重を加え、30kPaの圧力下で保管した場合でもあっても、90日経過後に固結していなかった。
精製溶媒の2−プロパノールをヘキサン(沸点68.7℃)にした以外は、実施例2と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。40分後におけるヘキサン含有量は0.01質量%、60分後で0.01質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していなかった。なお、このサンプルに荷重を加え、30kPaの圧力下で保管した場合でもあっても、90日経過後に固結していなかった。
乾燥時の圧力を100kPaに変更した以外は、実施例4と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。40分後における2−プロパノール含有量は0.87質量%、60分後で0.20質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していた。なお、このアダマンタン粒子に荷重を加え、30kPaの圧力下で保管した場合にも、90日経過後に固結していた。
乾燥時の圧力を100kPaに変更した以外は、実施例5と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。40分後におけるヘキサン含有量は0.61質量%、60分後で0.06質量%であった。なお、かかる処理を施したアダマンタン粒子は25℃、常圧下で90日経過後に固結していた。なお、このサンプルに荷重を加え、30kPaの圧力下で保管した場合にも、90日経過後に固結していた。
以上の各実施例および比較例の操作条件と評価結果を第1表に示す。
実施例1において、洗浄・精製溶媒としてナフテン系溶媒であるのイプゾールL(出光興産製、商品名)を用いた以外は実施例1と同様に行った。操作条件と評価結果を第2表に示す。なお、イプゾールLの概略組成は以下の通りである。
メチルシクロペンタン:31質量% メチルペンタン:24質量%
シクロヘキサン: 20質量% n−ヘキサン: 15質量%
乾燥時の温度を40℃とした以外は、実施例6と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。操作条件と評価結果を第2表に示す。
乾燥時の温度を10℃とした以外は、実施例6と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。操作条件と評価結果を第2表に示す。
乾燥時の圧力を100kPaとした以外は、実施例7と同様としてアダマンタン粒子の乾燥を行った。操作条件と評価結果を第2表に示す。
実施例2の条件で製造した精製アダマンタン粒子(2−プロパノール含有量:0.04質量%、平均粒子径350μm)を、常圧下に、温度0℃、20℃、35℃、38℃、40℃および50℃で保存し、乾燥処理終了後、1、2、4、8、16、64、128、365日に固結状態の判定を行った。結果を第3表に示す。温度40℃では16日まで固結が起らず、38℃以下では常圧で1年間(365日)保存ししても固結が起らないことが分かった。
30kPaの加圧下とした以外は実施例8と同様として保存試験を行った。結果を第4表に示す。35℃以下では30kPaの加圧条件下でも1年間(365日)経過しても全く固結が観測されなかったが、38℃以上では2日後経過にすでに固結が起こり、40℃では1日からの固結が激しく起ることが分かった。更に温度条件を過酷にした50℃においては、更に激しい固結が起こった。
総合的には35℃以下の温度で保管すれば、安全に保管できるものと判断される。
精製溶媒としてイプゾールLを用い、乾燥したアダマンタン粒子(イプゾールL残存量0.10質量%)に所定量のイプゾールLを添加し、常温の3週間密閉状態で保持し、保持後のブロッキング状態を測定した。結果を第5表に示す。第5表において「IP−L添加率」はアダマンタン粒子に液として添加したイプゾールL量(質量%)、「IP−L残存率」は添加イプゾールLに原アダマンタン粒子が取り込んだイプゾールLを加えた量(質量%)である。第5表から、ナフテン系溶媒(イプゾールL)の場合には、アダマンタンに含まれる溶媒量が0.35質量%未満であれば、ブロッキングがなく、安全に保管できるものと判断される。
Claims (5)
- ナフテン系溶媒を用いて精製されたアダマンタンに含まれる溶媒量を、50℃以下の温度、40kPa以下の圧力による60分以内の乾燥で0.35質量%以下とすることを特徴とするアダマンタンの固結防止方法。
- アダマンタンに含まれる溶媒の常圧における沸点が150℃以下であり、60分以内の乾燥によりアダマンタンに含まれる溶媒量を0.3質量%以下とする請求項1に記載のアダマンタンの固結防止方法。
- ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒を用いて精製されたアダマンタンに含まれる溶媒量を、50℃以下の温度、40kPa以下の圧力による60分以内の乾燥で0.05質量%以下とすることを特徴とするアダマンタンの固結防止方法。
- アダマンタンに含まれる溶媒の常圧における沸点が150℃以下であり、60分以内の乾燥によりアダマンタンに含まれる溶媒量を0.04質量%以下とする請求項3に記載のアダマンタンの固結防止方法。
- アダマンタンを35℃以下で保管する請求項1〜4のいずれかに記載のアダマンタンの固結防止方法。
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