本発明は、カソードへ空気を圧送するための空気圧縮機を備えた燃料電池システムに係り、特に、空気圧縮機の騒音を低減することができる燃料電池システムに関する。
従来の燃料電池システムにおける空気圧縮機の運転方法としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この従来例では、システム効率が最大となるシステム圧(スタックカソード圧)に空気圧力を調整している。
また、空気を供給する圧縮機は、その吐出圧力脈動に起因する騒音が大きいという問題点もあり、特許文献2によれば車速が低くなるに応じて燃料電池の空気利用率が高くなるように、空気利用率を決定して供給空気量を制御することで圧縮機の騒音を抑制するものである。
また圧縮機の吐出圧力脈動を低減する方法として、圧縮機のハウジングの吐出ポート付近にスリットを掘るという技術が一般的に知られている。しかし圧縮機は機械固有の内部圧縮比をもち、ある一定の圧力まで機械内部で圧縮するという特徴をもつ。そのため、燃料電池システムのシステム圧がこの内部圧縮比で運転されている時は吐出圧力脈動が小さく、騒音も低い。
特開2003−163018号公報(第6頁、図2)
特開2006−128029号公報(第5頁、図2)
しかしながら、内部圧力比以外のシステム圧で運転される場合は、吐出脈動が大きく、騒音が大きいという問題点があった。そこでシステム圧については、燃料電池システムへの要求発電量から決定されるものであり、当然要求発電量が変動すれば、圧縮機に要求される吐出空気流量も変動する。また、システム圧の制御システムにおいても制御精度ばらつきがあるため、必ずしも一定の運転圧で維持できるというものでもない。そこで圧縮機の内部圧力比と圧縮機の吸込み圧によって決まるシステム圧で運転される場合は低騒音で運転されるのに対し、それよりも高い圧力、もしくはそれよりも低い圧力で運転される場合は、いずれも騒音が悪化するため、騒音がうるさくなったり静かになったりといううねり現象が発生し、運転者や同乗者に不快感を与えてしまうという問題点があった。
上記問題点を解決するために本発明は、アノードに供給された燃料ガスとカソードに供給された空気中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池と、下流側空気圧力を上流側空気圧力で除した値である空気圧力比と空気流量からなる運転点が特定の運転領域にあるときに放射音レベルが極大となる特性を有し、前記カソードへ空気を圧送するための空気圧縮機と、カソード空気圧力を調整するための空気圧力調整装置と、前記カソードにおける空気圧力及び空気流量からなる運転点が目標運転点となるように前記空気圧縮機及び前記空気圧力調整装置を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、車両速度を検出する車速センサ及び燃料電池システム内の発熱体を冷却するためのラジエタファンと、前記車両速度と前記ラジエタファンの運転状態との少なくとも一方により放射音レベルの基準値または放射音レベルの基準変化率を決定する手段と、を備え、前記制御装置は、前記空気圧縮機からの放射音レベルが前記基準値よりも高くなる前記運転点の範囲、または前記空気圧縮機の流量変化に対する放射音レベルの変化率が前記基準変化率以上となる前記運転点の範囲を運転禁止範囲とし、運転禁止範囲外を運転許可範囲とするとともに、前記目標運転点が前記運転禁止範囲となった場合は、前記目標運転点と同じ燃料電池等出力線上の前記運転許可範囲内で前記空気圧縮機及び前記空気圧力調整装置の運転を行うことを要旨とする。
本発明によれば、空気圧縮機の放射音レベルが高い運転点、または空気圧縮機の回転数変化に対する放射音レベルの変化率が高い運転点での運転を回避することができ、運転者や車両近傍にいる人に不快感を与えずに燃料電池システムを運転することができるという効果がある。
次に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
最初に、本発明の基本概念を説明する。図1は、本発明者らが実験的に測定した、コンプレッサ(空気圧縮機)の運転状態と、コンプレッサの放射音レベルとの関係を模式的にに示す図である。この特性は使用するコンプレッサの形式や種類によって異なると考えられるため、実験により計測されなければならない。
図2は、コンプレッサの放射音レベルを測定する測定システムの構成図である。図2に示す通り、上流から下流へ向かって順次、流量計101,圧力計102,コンプレッサ103,圧力計104,バルブ105を配置し、コンプレッサ103の近傍に放射音レベルを測定する騒音計106を配置する。
そして、図3に示ように、コンプレッサ回転数で流量を変化させ、また、バルブ開度で圧力比(=コンプレッサ下流の圧力/コンプレッサ上流の圧力)を変化させて、運転範囲条件内の複数点で放射音レベルを計測すれば、コンプレッサの運転状態に対する放射音レベルのデータが得られる。
図1からコンプレッサの騒音レベルは、回転数が高ければ大きいとか、圧力比が高ければ大きいというだけではなく、運転領域の一部に放射音レベルの極大点を持つ場合があることが分かる。この発見から発明者は燃料電池車両におけるコンプレッサの静音運転の発明を行うに至った。
本発明の一態様によれば、アノードに供給された燃料ガスとカソードに供給された空気中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池と、カソードへ空気を圧送するための空気圧縮機と、カソード空気圧力を調整するための空気圧力調整装置と、カソードにおける空気圧力及び空気流量からなる運転点が目標運転点となるように空気圧縮機及び空気圧力調整装置を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、空気圧縮機からの放射音レベルが基準値よりも高くなる運転点の範囲、または空気圧縮機の回転数変化に対する放射音レベルの変化率が基準変化率以上となる運転点の範囲を運転禁止範囲とすることができる。このため、空気圧縮機の放射音レベルが高い運転点、または空気圧縮機の回転数変化に対する放射音レベルの変化率が高い運転点での運転を回避することができ、運転者や車両近傍にいる人に不快感を与えずに運転することができる。
また本発明の他の態様によれば、車両速度を検出する車速センサ及び燃料電池システム内の発熱体を冷却するためのラジエタファンを備え、前記基準値または前記基準変化率は、前記車両速度と前記ラジエタファンの運転状態との少なくとも一方により決定される構成とすることができる。
これを図4を用いて説明する。たとえば車速が低い場合やラジエタファンが作動していない周辺騒音が低い環境では、コンプレッサの音は大きく感じるため運転禁止範囲を大きくして、コンプレッサの音を低く抑える必要がある。その場合は図4の領域Aaおよび領域Ab内での運転を禁止する。一方車速が早く走行音が大きい場合やラジエタファンが運転されていてその作動音が大きい場合は、コンプレッサの音はそれらの音にマスキングされて目立ちにくい条件となる。そのような場合は領域Abでの運転は許可し、燃料電池の運転制約を可能な限り排除できる。以上によりコンプレッサ音による不快感解消と燃料電池の運転性とを両立することが可能となる。
また本発明の他の態様によれば、前記目標運転点が前記運転禁止範囲となった場合は、前記制御装置は、前記運転禁止範囲外の運転可能な範囲である運転許可範囲内の燃料電池等出力線上で前記空気圧縮機及び前記空気圧力調整装置の運転を行う構成とすることができる。
これを図5を用いて説明する。燃料電池が発電できる電力はさまざまな要因に依存するが、その一つとして空気流量およびその圧力にも依存する。必用な電力や環境条件を一定とした場合の、燃料電池の等出力線を空気圧力流量マップ上に表すと、図5の太線のようになる。直線にならないのは、圧力比が上がると燃料電池の発電効率は上がるものの、コンプレッサの消費電力も増えるなどの関係があるためである。たとえば環境条件や要求発電量から決定される目標運転点が図5中の星印点Tであったとすると、そこは運転禁止範囲内であるため、等出力線上でかつ運転許可範囲(運転禁止範囲外)に運転点をずらすことで、燃料電池出力に影響を与えずにコンプレッサ音の静かな運転が可能となる。
また本発明の他の態様によれば、前記運転許可範囲内に、燃料電池の湿潤状態が安定する燃料電池安定発電領域がない場合は、前記制御装置は、燃料電池安定発電領域まで運転許可範囲を広げる構成としている。
これを図6を用いて説明する。図中のクロスハッチ部分および斜線部分を、コンプレッサの放射音レベルから設定した運転禁止範囲とする。一方破線よりも低圧力比側は燃料電池が乾燥勝手となり、水素分子の水素イオンへの解離性が低下したり固体高分子膜のイオン導電性低下により燃料電池の安定運転困難な領域であるとする。また、一点鎖線よりも高圧力比側では燃料電池が湿潤勝手となりガス流路への水詰まりなどにより安定運転が困難な領域であるとする。図6上で一点鎖線と破線で挟まれた領域が安定発電領域となる。すると、図6の等出力線上には低騒音運転可能な安定発電運転点が存在しないこととなる。そのような場合は斜線部分の運転禁止範囲を解除して、多少音性能を犠牲にしても、燃料電池の安定運転を実現できる運転点で運転することで、音性能と燃料電池の安定運転の両立が可能となる。なお、図示破線と一点鎖線は、空気流量と、空気圧力を運転範囲内で変更しながら燃料電池システムを運転し、連続運転しても燃料電池の各セルの電圧が急落してしまわない点を結ぶことで得られる。
また本発明の他の態様によれば、前記目標運転点が前記運転禁止範囲となった場合には、前記制御装置は、目標運転圧力に最も近い運転許可範囲内の運転圧力で運転する構成としており、そもそもの目標運転条件から遠くない運転条件での運転となるため、燃料電池運転性に与える影響を最小限に抑えながら静粛なコンプレッサ運転を実現することができる(図7)。
また本発明の他の態様によれば、前記目標運転点が前記運転禁止範囲となった場合には、前記制御装置は、目標運転点よりも高圧側で目標運転圧力に最も近い運転圧力、もしくは、目標運転圧力よりも低圧側で目標運転圧力に最も近い運転圧力のうち、システム効率の高い方の運転圧力で運転することができる。
これを図8を用いて説明する。図中に太破線の楕円で示した等高線がシステムとしての効率を表し、中心の効率が高く、周辺の効率が低いとする。目標運転点が星印点Tであったとすると、運転点は運転禁止範囲を避けるために、燃料電池の等出力線(太線)上を運転許可範囲まで移動した点となる。この場合、圧力比の高い側のA点での運転と、圧力比の低い側B点での運転とが考えられる。このような場合は、システム効率の高いB点で運転した方が経済的であるため、B点で運転する。このように運転点を選択すると、効率の低下を最小限に抑えつつコンプレッサ音をも可能な限り低減した運転をすることが可能となる。
なお、図示のシステム効率等高線は、空気流量と、空気圧力を運転範囲内で変更しながら燃料電池システムを運転し、いくつかの運転点で燃料消費量と発電出力と補機消費電力を計測し、その結果からシステム効率を算出すれば得られる。たとえば効率は「(発電出力−補機消費電力)/燃料消費量」で定義すればよい。
また本発明の他の態様によれば、前記目標運転点が前記運転禁止範囲となった場合には、前記制御装置は、目標運転点よりも高圧側で目標運転圧力に最も近い運転許可範囲の運転圧力で運転する構成としている。
これを図9を用いて説明する。図に示す破線と一点鎖線は図6で説明した線と同じであり、破線より低圧側では燃料電池が乾燥して安定した運転ができない領域であり、一点鎖線よりも高圧側が逆に燃料電池が湿りすぎてしまい、安定的に運転できない領域である。安定的に運転できないことが分かっていても音性能を優先し、運転禁止範囲での運転を行わないこととすると、図中A点もしくはB点で運転することが考えられる。
ここで、A点を運転点として選択すると燃料電池が乾燥し、比較的急激に発電性能が悪化し、不過逆な劣化を起こす場合がある。一方B点を運転すると燃料電池内部に凝縮水が溜まり、空気流路を塞ぐ結果発電性能が低下する。ただしこの場合は急激に不過逆な劣化が起きるわけではなく、空気流量を必要量を超えて供給すれば、凝縮水は空気に吹き飛ばされてまた安定な運転が可能となる。従って、運転点AではなくBを選択することで、燃料電池の劣化を最小限に抑えながら、コンプレッサの放射音を可能な限り低減できる効果を期待できる。
また本発明の他の態様によれば、前記運転許可範囲に前記燃料電池安定発電領域がない場合には、前記制御装置は、前記目標運転点よりも高圧側の運転許可範囲の運転圧力及び低圧側の運転許可範囲の運転圧力で交互に運転する構成としている。
これを図9を用いて説明する。上述の通りA点またはB点で連続的に運転していると、燃料電池が乾いてしまったり凝縮水が詰まってしまったりで、運転が困難となる。ただし、A点およびB点で交互に運転を切り替えれば、A点とB点の中間の湿潤状態すなわち目標運転点Tでの適度な湿潤状態を得ることが可能となるため、燃料電池を安定的に運転しながらコンプレッサ放射音の低い状態で運転することが可能となる。ここで、A点とB点とをゆっくり切り替えていては、音圧レベルの高い目標運転点付近での運転が長くなり音性能としては不利になるため、可能な限りステップ的に切り替えるべきである。また、切り替え周期は2〜3分程度に設定すれば、頻繁な切り替えにもならず十分実現可能である。
また本発明の他の態様によれば、目標運転点の圧力と高圧側運転圧力との差が、目標運転点の圧力と低圧側運転圧力との差よりも小さい場合には、前記制御装置は、高圧側運転点での運転時間割合を長くすることとしている。
これを図10を用いて説明する。目標運転点が図中星印の点Tである場合、点Aと点Bを同じ時間間隔で運転してしまうと、点Aと点Bの中間点付近の湿潤状態を再現してしまうため、目標運転点Tの湿潤状態とずれてしまう。そこで目標運転点Tに近い運転点Bでの運転時間を目標運転点Tよりも遠い運転点Aでの運転時間よりも長くすることで、目標運転点相当の湿潤状態を確保できる。すなわち本構成をとることで、目標運転点がコンプレッサ放射音レベル大による運転禁止範囲内の中央に位置していなくても燃料電池の運転状態を適正な湿潤状態に維持しつつコンプレッサ放射音レベルの低い運転が可能となる。
また本発明の他の態様によれば、目標運転点の圧力と高圧側運転点圧力との差が、目標運転点の圧力と低圧側運転点圧力との差よりも大きい場合は、前記制御装置は、低圧側運転点での運転時間割合を長くしている。この態様は、図10を参照して説明した態様とは逆に、目標運転点TがA点に近かった場合について記述したものである。
また本発明の他の態様によれば、燃料電池システムの発電出力を利用する上位装置からの要求、或いは、燃料電池の水詰まりを解消する必要が生じた場合には、前記制御装置は、前記運転禁止範囲内の目標運転点でも運転を許可する構成としている。上位装置からの要求は、制御装置が参照できるフラグにより知ることができる。また燃料電池の水詰まりによる発電性能悪化は、燃料電池のセル電圧をモニタすることで確認できる。具体的には、流路に水が詰まり始めると特に空気の配流の悪い端に位置するセルの発電電圧が低くなってくる。例えば現在取り出している電流から予想されるセルの電圧と現在の実セル電圧を比較し、実セル電圧が低すぎると判定した場合は水詰まりによる発電性能低下と判定できる。そのような場合にはコンプレッサ放射音レベルが高くても目標運転点で運転することで燃料電池の運転状態を最良な状態にして水詰まりを解消して燃料電池の運転を継続することが可能となる。
また本発明の他の態様によれば、燃料電池出力の余剰分で充電され、燃料電池出力が不足する場合に放電する2次電池を備え、前記制御装置は、2次電池のSOCが放電可能最低充電率よりも高い場合には、前記運転禁止範囲よりも運転圧力が低い運転許可範囲の運転圧力に設定し、燃料電池出力の不足分を2次電池から供給し、逆にSOCが放電可能最低充電率よりも低い場合には、前記運転禁止範囲よりも運転圧力が高い運転許可範囲の運転圧力に設定し、燃料電池出力の余剰分を2次電池に充電するように制御する構成としている。この構成により、目標運転点から運転点を変更しても余剰電力は2次電池へ充電され、不足電力は2次電池から放電されるので、システムに要求される電力を過不足無く満たすことができるとともに、システム効率の低下を防止することができる。
次に、図面を参照して、本発明の実施例1を詳細に説明する。図11は、本発明に係る燃料電池システムの実施例1の構成を説明するシステム構成図である。流量計1は、大気取り入れ口8から、燃料電池の酸化剤としての大気を吸入し、通過する空気の流量を計測する。流量計1としては、公知の熱線式流量計などを適用すればよい。
図示していないが、大気取り入れ口8付近に、大気中の塵埃や燃料電池に有害な化学成分を除去するフィルタ類を設ける場合がある。また、大気取り入れ口8から漏れるコンプレッサの音を最小限とするため、比較的大き目の空間を設けたり、特定の周波数で共鳴させて特定の音を低減するレゾネータなどを取り付けたりする場合もある。
コンプレッサ2は、流量計1で計測された空気を圧縮して燃料電池本体5の空気極5−3へ送り込むための装置である。このコンプレッサ2は、例えばモータで駆動され、そのモータの回転数やトルクはインバータ3が供給する交流周波数によりコントロールできる構成となっている。圧力センサ4は、コンプレッサ2の下流の空気圧力を検出して、後述する制御に利用する。
例えば固体高分子型の燃料電池本体5は、燃料極5−1、冷却水通路5−2、空気極5−3に分けられる。コンプレッサ2により加圧された空気は空気極5−3へ導入され、下流に配されている空気調圧弁6へ導かれる。コンプレッサ2の回転数を保ちながら空気調圧弁6を閉じる方向に制御することで空気極5−3内部の圧力は上昇するし、逆に、開く方向に制御すれば空気極5−3の圧力は下がる。空気調圧弁6を通過した空気は排気口9から大気中に排出される。大気圧センサ10は、標高や天候で変化する大気圧を検出して後述する制御に使用する。
コントローラ7は、各センサからの信号を受け、演算した結果を基に空気調圧弁6の開度を指示したり、インバータ3へコンプレッサ2の回転数などを指令する。
ラジエタ11は、燃料電池本体5の冷却水通路5−2と配管12で接続されており、冷却水通路5−2で燃料電池本体5の熱を取り除いた冷却水の熱を大気へ放出する機能を有している。ラジエタファン13は、ラジエタ11での放熱量が不足している場合は、ラジエタ11へ送風してラジエタ11を通過する大気の量を増量することで放熱量を増やすことができる。温度センサ14は、燃料電池システム温度の代表温度として冷却水温度を計測し、コントローラ7へ送っている。電流センサ15は燃料電池本体5が発電している電流を計測し、電圧センサ17は燃料電池本体の各セル毎或いは各セル群毎の電圧を計測し、後述の制御を行うためにコントローラ7へ送っている。車速センサ16は、車両の走行速度を検出してコントローラ7へ送っている。
なお、図示しなかったが、コンプレッサから排出される空気の脈動を軽減するためのアキュムレータや、燃料電池へ導入される空気の温度や湿度を調整するための装置、空気調圧弁で発生する音を軽減するマフラ装置など、図示した装置以外にもさまざまな装置が取り付けられる場合もある。
次に、図12の制御ブロック図を参照して、実施例1乃至実施例3におけるコントローラ7の制御の流れを説明する。本実施例のコントローラは、目標運転点決定手段20と、運転禁止音圧レベル決定手段21と、運転禁止範囲決定手段22と、運転点決定手段23とを備えている。
目標運転点決定手段20は、車両側から要求出力を受けて、コントローラにて燃料電池本体5の必要発電量を計算し、必要発電量から制御マップを参照して、目標空気圧力比及び目標空気流量からなる目標運転点を決定する。
運転禁止音圧レベル決定手段21は、車速やラジエタファンのON/OFF状態よりコンプレッサ放射音をどのレベルまで許容するかを決定する。
運転禁止範囲決定手段22は、運転を禁止したい空気圧力比、空気流量の範囲を、運転禁止音圧レベル決定手段21により決定された音圧レベルを基に決定する。
運転点決定手段23は、目標運転点決定手段20で決定された目標運転点と、運転禁止範囲決定手段22で決定された運転禁止範囲とに基づいて、実際に運転する運転点である、空気圧力比及び空気流量を決定する。
図13は、実施例1の運転禁止音圧レベル決定手段21における制御の流れを示すフローチャートである。図13において、先ずステップ(以下ステップをSと略す)1で、車速センサ16からの車速信号VSPを読み込み、S2で検出された車速VSPに対するコンプレッサ2の運転禁止音圧レベルVSPNVをテーブル索引により決定する。
次いでS3で、ラジエタファン13が作動している(ON)か、停止中(OFF)かを判定し、停止中であれば、S4でラジエタファン運転状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルRADNVをラジエタファン停止状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルNV0に設定し、作動中であれば、S5でラジエタファン運転状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルNV1に設定する。
次いで、S6で車速に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルVSPNVとラジエタファン運転状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルRADNVとを比較し、RADNVがVSPNV以下であればS7にてコンプレッサ放射音制限値NVをVSPNVに設定し、RADNVがVSPNVを超えていればS8でNVをRADNVに設定する。
本フローを実施することで、ラジエタファン運転状態によって許容されるコンプレッサ放射音圧レベルと、車両速度によって許容されるコンプレッサ放射音圧レベルの大きいほうをコンプレッサ放射音圧レベルに設定できるため、ラジエタファン運転状態や車両走行状態に応じたコンプレッサ放射音制限値NVを設定することができる。
図14は、実施例1の運転禁止範囲決定手段22の制御の流れを示すフローチャートである。先ずS11で、本フローで用いるセル電圧VCをセル電圧センサ17から、燃料電池の発電電流Iを電流センサ15から、システム温度Tsを温度センサ14から読み込み、さらに、運転禁止音圧レベル決定手段21で決定したコンプレッサ放射音制限値NVを読み込む。次いで、S12にてNVに応じて設定するコンプレッサ運転禁止範囲マップNVAを選択する。
図15は、NVの値に応じて選択する運転禁止範囲の例を示す図である。車速が速い、或いはラジエタファンが動作しているなど、周辺音が比較的大きい場合には、NVの値が大きくなる。従って、NVの値が大きい場合は、運転禁止範囲は大きくなくて良いので、例えば図15の1点鎖線で囲まれた範囲となる。
NVが小さくなるにつれて周りの音にコンプレッサ放射音が隠れにくい条件となるので、その場合は運転禁止範囲は大きくなり、例えば図15の破線や実線で囲まれた範囲を選択することとなる。前述したが、この運転禁止範囲は、流量や圧力比を変更しながらコンプレッサが発する放射音を計測し、周辺音よりも大きくなる範囲を運転禁止範囲とすればよい。さらにS12にてシステム温度Tsに応じて設定するコンプレッサ運転禁止範囲マップFCAを選択する。
図16は、システム温度Tsに応じて設定するコンプレッサ運転禁止範囲マップの例である。システム温度Tsが低い場合は燃料電池は湿りやすいため、高流量、低圧運転が適しているので、例えば図16に示す2本の破線で挟まれた領域(3)が運転許可範囲となり、その外側が運転禁止範囲となる。一方システム温度Tsが高くなると徐々に乾燥しやすい状態となるため、運転許可範囲は2本の実線で挟まれた領域(1)、2本の一点鎖線で挟まれた領域(2)のように変化する。
これらの運転許可範囲はシステム温度Tsを変更しながら、運転圧力と流量を格子状に変えて、長時間、例えば1時間以上燃料電池システムを連続運転しても、乾燥や水詰まり等により燃料電池電圧が低下することなく運転を継続できる点を結んでいけば、実験的に得られる。
次いでS13で、読み込んだ発電電流Iに対応する標準セル電圧NVCをテーブルから参照し、S14で実セル電圧VCが標準セル電圧NVCからばらつき分MVC引いた電圧を下回っているか否かを判断する。下回っていない場合は、燃料電池運転状態は良好であると判断して、このまま本フローを終了する。S14の判断で、下回っている場合、燃料電池が水詰まりにより発電不良となっていると判定してS15へ進む。S15では、マップNVAおよびマップFCAを運転禁止範囲を解除したマップFAに置き換えて、本フローを終了する。本フローを実施することで、周辺音や燃料電池運転状態に対して最適なコンプレッサ運転禁止範囲を設定できる。
次に図17を参照して、実施例1の目標運転点決定手段20の制御の流れを説明する。先ずS21でアクセル開度TVOおよびシステム温度Tsを読み込み、S22でアクセル開度TVOに対応する出力要求値POWを参照する。次いでS23で、出力要求値POWを出力することのできる運転圧力と空気流量の組み合わせである燃料電池の等出力線を参照する。この組み合わせを圧力・流量マップ上に表すと線状になる。
図18は、空気流量と空気圧力に対する燃料電池の等出力線マップの例である。図18の各線が各要求出力値に対応する等出力線であり、出力が高い場合は高流量の線となり、要求出力が低いと低流量側の線を選択することとなる。この等出力線マップは、例えば燃料電池システムの運転中に、運転圧を変更しながら、同じ出力の出せる空気流量を実験的に探せば得ることができる。
次いでS24で、システム温度Tsに応じて目標運転点TGPを参照する。システム温度Tsが高いほど、飽和水蒸気圧が高いので、燃料電池排気により持ち出される水分量が多くなる。従って、システム温度Tsが高いほど燃料電池は乾燥しやすくなり、圧力を上げて相対湿度の高い運転が必要であり、逆にシステム温度Tsが低い場合は燃料電池流路内部に凝縮水が溜まりやすくなるため、圧力を下げて湿度の低い運転をすることとなる。なお、S24に示したシステム温度と目標運転圧力の関係は、出力要求値POW毎に異なる関係を持つため、この関係もPOW決定後にPOWによって選択する必要がある。
また、この関係は例えば図16の関係を求めた後、システム温度Tsを横軸にとり、縦軸に運転可能運転圧範囲の中央値をプロットして求めればよい。次のS25では、S24で得た目標運転圧力に対応する目標空気流量を、S23の等出力線マップを参照して、本フローを終了する。本フローにより、システム運転温度および要求出力に対応した適切な運転圧力および流量を決定することができる。
次に、図19を参照して実施例1の運転点決定手段23の制御の流れを説明する。先ずS31で本フローを実行するのに必要な各値を読み込む。具体的には運転禁止範囲決定手段22で選択した、コンプレッサ放射音低減のための運転禁止範囲マップNVAと、燃料電池安定運転のための運転禁止範囲マップFCAと、目標運転点決定手段20で決定した目標運転圧力TGPと目標空気流量TGQと、大気圧センサ10の出力Paを読み込む。次いでS32で、運転禁止範囲マップNVAの圧力比軸を大気圧Paで除することで圧力軸へ変換し、S33で目標運転圧力TGPと目標空気流量TGQ(あわせて目標運転点と呼ぶ)が運転禁止範囲マップNVAで示される運転禁止範囲に入っているか否かを判定する。S33の判定で、目標運転点が運転禁止範囲外であれば、S35で現目標運転点(TGP,TGQ)を実運転点(P,Q)として本フローを終了する。
S33の判定で、目標運転点が運転禁止範囲に入っていれば、S34へ進む。S34では、等出力線上かつ、運転許可範囲となる2点各々を、第一運転点候補(TGP1,TGQ1)、第二運転点候補(TGP2,TGQ2)として記憶しておく。次いでS36で、両運転点候補のうち、片方のみ燃料電池運転性から決定された運転禁止範囲の外にあるか否かを判定し、そうであればS37で運転禁止範囲外の運転点候補を運転点としてフローを終了する。両運転点候補ともに運転禁止範囲外であれば、S38でYesと判定されS39をスキップし、両方とも運転禁止範囲内であればS38で運転許可範囲まで両運転点候補を等出力線上で移動させ、それぞれ新たに第一運転点候補(TGP1,TGQ1)、第二運転点候補(TGP2,TGQ2)として記憶しなおす。
その後S40で第一運転点候補と第二運転点候補のいずれが目標運転点決定手段で決定した目標運転点に近いかを判定し、第一運転点候補のほうが近いと判定された場合S42で第一運転点候補を実運転点として本フローを終了し、第二運転点候補の方が近いと判定されればS41で第二運転点候補を実運転点として本フローを終了する。
本フローの結果得られた運転圧力Pおよび運転流量Qで燃料電池を運転することにより、コンプレッサ放射音が可能な限り低く、かつ、燃料電池の運転性を最低限確保した運転を行うことが可能となり、運転者や車両近傍にいる人に与える騒音による不快感を最小限としつつ燃料電池を安定的に運転することが可能となる。
図20は、実施例2の運転点決定手段23の制御の流れを説明するフローチャートである。実施例2は実施例1に対して、運転点決定手段23の制御フローのみを変更したものである。また、実施例1の運転点決定手段からの変更点は、S51とS52のみであるため、その部分のみを説明する。
S51では実施例1で読み込んだパラメータ以外に、システムの運転効率マップを読み込む。これは、例えば燃料電池システムの様々な出力において、運転圧力と空気流量を変化させて、複数の点でシステム出力と燃料供給量を計測し、効率=システム出力/燃料供給量の式で得られた値を縦軸運転圧力、横軸空気流量のマップにプロットすることで得ることができる。
また、S52では、S52までに得られている第一運転点候補と第二運転点候補の何れで運転する方がシステム効率が高いかを、S51で読み込んだシステムの運転効率マップにより判定し、第一運転点候補の方が第二運転点候補よりも効率が高いと判断された場合は第一運転点候補を実運転点とすべくS42に進み、逆の場合は第二運転点候補を実運転点とすべくS41へ進む。本フローを実行することで、コンプレッサ放射音を最小限としつつ、システム運転性に与える影響も最小限としつつ効率の高い運転を行うことができるため、静粛化による不快感の排除と省燃費とを両立することが可能となる。
図21は、実施例3の運転点決定手段23の制御の流れを説明するフローチャートである。実施例3は実施例1に対して運転点決定手段23の制御フローのみを変更したものである。また、実施例1の運転点決定手段からの変更点は、S61のみであるため、その部分のみを説明する。
S61ではS61までに得られている第一運転点候補と第二運転点候補のどちらが運転圧力が高いのか判定する。第一運転点候補の方が第二運転点候補よりも圧力が高いと判断された場合は、第一運転点候補を実運転点とすべくS42に進み、逆の場合は第二運転点候補を実運転点とすべくS41へ進む。本フローを実行することで、コンプレッサ放射音を最小限に抑えつつ燃料電池の適切な湿潤状態の運転を行うことが可能となるため、急激な劣化につながる乾燥状態の運転を回避しながら運転者などに与える騒音による不快感を最小限に抑えることができる。
図22は、実施例4の制御の流れを説明する制御ブロック図である。実施例4の制御ブロックは、図12に示した実施例1〜3の制御ブロックに対して、運転点決定手段23の制御論理の変更と、燃料電池システム運転手段24を加えたのみであるため、変更点のみ説明する。運転点決定手段23によりコンプレッサ放射音の低い複数の運転点が決定され、その後、燃料電池システム運転手段24により、複数の運転点間で繰り返し切り替え制御を行って運転することとなる。
図23は、実施例4の目標運転点決定手段の制御の流れを示すフローチャートである。実施例4の目標運転点決定手段は、実施例1の目標運転点決定手段に対して、S71を追加しただけであるため、S71のみ説明する。S71では燃料電池システム運転手段で使用するため、現在の目標運転圧力、目標空気流量が本フローで更新される前までに、それぞれOLDTGP、OLDTGQに記憶しておく。
図24は、実施例4の運転点決定手段23の制御の流れを示すフローチャートである。実施例4は実施例1の運転点決定手段に対して、S81〜85のみ変更したものであるため、変更点のみ説明する。S81では実運転点(P,Q)を(TGP,TGQ)とするとともに、S33での判定により実運転点が決定されたことを記憶しておくために、FLGの値を1に設定する。さらにS82では実運転点の圧力,流量をFCA運転禁止範囲外の候補点の圧力,流量とするとともに、S36の判定により実運転点が決定されたことを記憶しておくためにFLGの値を2に設定する。
また、S38で運転候補点全てがFCA運転禁止範囲外と判定された場合は、S83で実運転点を目標運転点に最も近い運転点を選択するとともに、S38の判定により実運転点が決定されたことを記憶しておくためにFLGの値を4に設定する。S84では第一運転点候補(TGP1,TGQ1),第二運転点候補(TGP2,TGQ2)と、目標運転点(TGP,TGQ)との距離を算出し、S85で第一運転点候補での運転時間T1と第二運転点候補での運転時間T2を決定する。
ここでTIMEは、第一、第二の運転点での運転時間の合計であり、これ以上長く運転し続けると凝縮水が空気流路内に溜まりすぎて発電性能が落ちる時間と、これ以上長く運転し続けると乾燥し続けて急激に燃料電池の劣化が進んでしまう時間の短いほうを選択すべきである。これは燃料電池の性質にもよるが、この間隔は2〜3分くらいに設定できることが望ましく、そうすれば頻繁な運転切り替えをせずに、運転者に与える違和感を軽減できる。さらにS38でNoと判定されていることを記憶するために、FLGの値を3に設定して本フローを終了する。
図25は、実施例4の燃料電池システム運転手段24の制御の流れを示すフローチャートである。燃料電池システム運転手段は実施例4で追加されたものであるため、全てを説明する。先ずS91で本フローで必要なパラメータであるTGP,TGQ,TGPOLD,TGQOLD,TGP1,TGQ1,TGP2,TGQ2,及びFLGの各値を読み込み、S92でFLGの値が3であるか否か、すなわち運転点決定手段のS38でNoと判定されたか否かを判定する。それ以外の場合は本フローは行う必要がなく、燃料電池を安定に運転しつつコンプレッサ放射音を最小限に抑える運転がすでに可能な条件となっているため、本フローを終了する。
S92の判定がYesであれば、次いでS93で目標運転点(TGP,TGQ)が前回の目標運転点(OLDYTGP,OLDTGQ)から変更されているか否かを判定する。変更されていれば、今回の目標運転点での運転は始めてであるので、S94でタイマをリセットした後、タイマをスタートさせ、S95で先ずは第一運転点候補で運転すべく実運転点(P,G)を(TGP1,TGQ1)とし、S96で用いるSLTMにT1を代入して本フローを終了する。
ここは第二運転点候補で先に運転する構成でもなんら問題ない。S93で変更されていないと判定された場合は、定常的にこの運転点で運転されていると判断し、S96でタイマの値が所定値SLTMの値を超えているか否かを判定する。ここでSLTMは第一運転点候補で運転されている場合はT1、第二運転点候補で運転されている場合はT2になるようにS95、S99、S100で設定されている。
まだSLTMを超えていないと判断された場合は、このままの運転状態を保持するとして本フローを終了する。S96の判定で、タイマの値が所定値SLTMの値を超えていると判断された場合は、S97でタイマをリセットするとともに再スタートさせ、S98で今までの運転点が第一運転点候補であったか否かを判定する。
S98の判定で第一運転点候補であった場合は、次の運転を第二運転点候補に切り替えて運転すべく、S99で実運転点(P,Q)に第二運転点候補(TGP2,TGQ2)を代入して、タイマに用いるSLTMをT2として本フローを終了する。S98の判定で第一運転点候補でなかった場合は、次の運転を第一運転点候補に切り替えて運転すべく、S100で実運転点(P,Q)に第一運転点候補(TGP1,TGQ1)を代入して、タイマに用いるSLTMをT1として本フローを終了する。
本フローを実施することで、運転点候補が両方とも燃料電池安定運転範囲に入っていない場合は、高圧側と低圧側で交互に運転することができ、さらに、目標運転点が運転禁止範囲の高圧側に片寄っている場合は高圧側の運転時間を相対的に長く、運転禁止範囲の低圧側に片寄っている場合は低圧側の運転時間を相対的に長くできるため、目標運転点と同様の湿潤状態で燃料電池を運転できるとともに、コンプレッサの放射音を低く抑える運転をすることが可能となる。
上記の実施例1乃至実施例4は、コンプレッサの放射音レベルが高い空気圧力流量の範囲を運転禁止範囲とする実施例であったが、実施例5では、空気流量の変化に対するコンプレッサの放射音レベルの変化率が高い空気圧力流量の範囲を運転禁止範囲とする実施例を説明する。実施例5が適用される燃料電池システムの構成例は、図11に示した実施例1と同様であるが、燃料電池出力の余剰分で充電され、燃料電池出力が不足する場合に放電する2次電池を備えているのが好ましい。
図26は、コンプレッサの等放射音レベル図上に、空気流量の変化に対するコンプレッサの放射音レベルの変化率が高い領域を図示したものである。コンプレッサの形式が容積式の場合、コンプレッサを制御する制御回路の特性にも依るが、コンプレッサの吐出圧力を吸込圧力で割った値(圧力比)がコンプレッサの内部圧縮比に近い運転点では、このような放射音レベルの変化率が大きくなり、うねり音が顕著となることが知られている。
本実施例5では、この放射音レベルの変化率が高い領域を運転禁止範囲とすることにより、放射音レベルが上下に変動することによるうねり音が発生して、運転者や同乗者に不快感を与えることを防止できる。
次に、図27に示す制御ブロック図を用いて実施例5の制御の流れを説明する。本実施例のコントローラは、目標運転点決定手段20と、運転禁止音圧変化率決定手段30と、運転禁止範囲決定手段22と、運転点決定手段23とを備えている。目標運転点決定手段20と運転点決定手段23とは、実施例1に用いた手段と同様の手段である。
目標運転点決定手段20は、車両側から要求出力を受けて、コントローラにて燃料電池本体5の必要発電量を計算し、必要発電量から制御マップを参照して、目標圧力比及び目標流量からなる目標運転点を決定する。
運転禁止音圧変化率決定手段30は、車速やラジエタファンのON/OFF状態より、空気流量変化に対するコンプレッサ放射音レベルの変化率をどの程度許容するかを決定する。
運転禁止範囲決定手段22は、運転を禁止したい空気圧力比及び空気流量の組み合わせの範囲を、運転禁止音圧変化率決定手段30により決定された音圧変化率の許容値を基に決定する。
運転点決定手段23は、目標運転点決定手段20で決定された目標運転点と、運転禁止範囲決定手段22で決定された運転禁止範囲とに基づいて、実際に運転する運転点である、空気圧力及び空気流量を決定する。
尚、目標運転点決定手段20により決定された目標運転点が、運転禁止範囲決定手段22により決定された運転禁止範囲内となった場合には、実施例1乃至実施例4に記載と同様に、運転禁止範囲を避けて、実際の運転点を設定することができる。
図28は、実施例5における運転禁止音圧変化率決定手段30及び運転禁止範囲決定手段22の制御の流れを示すフローチャートである。図28において、最初にS1で、車速センサ16からの車速信号VSPを読み込み、S2で検出された車速VSPに対するコンプレッサ2の運転禁止音圧レベルVSPNVをテーブル索引により決定する。
次いで、S3でラジエタファン13が作動している(ON)か、停止中(OFF)かを判定し、停止中であれば、S4でラジエタファン運転状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルRADNVをラジエタファン停止状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルNV0に設定し、作動中であれば、S5でラジエタファン運転状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルNV1に設定する。
次いで、S6で車速に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルVSPNVとラジエタファン運転状態に対するコンプレッサ運転禁止音圧レベルRADNVとを比較する。S6の比較で、RADNVがVSPNV以下であれば、S7へ進み、コンプレッサ放射音制限値NVをVSPNVに設定する。S6の比較で、RADNVがVSPNVを超えていれば、S8へ進み、NVをRADNVに設定する。
次いで、S201でNVから許容音圧変化率マップを索引して、許容される音圧変化率が、大、中、小の何れの範囲かを判定する。次いで、S202で、許容音圧変化率の大、中、小からコンプレッサの運転禁止範囲マップを参照して、運転禁止範囲を求める。
以上のフローにより、車速VSP、及びラジエタファンのON/OFFに応じた、放射音レベルの変動率に制限するコンプレッサの運転禁止範囲が求まる。
尚、目標運転点決定手段20により決定された目標運転点が、運転禁止範囲決定手段22により決定された運転禁止範囲内となった場合には、実施例1乃至実施例4に記載と同様に、運転禁止範囲を避けて運転が禁止されない運転許可範囲内へ実際の運転点を設定することができる。これにより、放射音レベルが上下するうねり音が発生する領域を避けることができるために、運転者や同乗者に不快感を与えない運転が可能となる。
図29は、目標運転点Tがコンプレッサの運転禁止範囲内となった場合に、燃料電池の等出力線上の運転許可範囲の運転点AまたはBへ運転点を変更する場合を示す図である。
図30は、目標運転点Tがコンプレッサの運転禁止範囲内となった場合に、燃料電池の等出力線上の運転許可範囲で最も近い運転点Aへ運転点を変更する場合を示す図である。
図31は、目標運転点Tがコンプレッサの運転禁止範囲内となった場合に、燃料電池の等出力線上の運転許可範囲で最も効率の高い運転点Aへ運転点を変更する場合を示す図である。
図32は、燃料電池システムが、燃料電池出力の余剰分で充電され、燃料電池出力が不足する場合に放電する2次電池を備えている場合に適用可能な制御を説明する図である。図32において、目標運転点決定手段20で決定された目標運転点Tが、運転禁止範囲決定手段22で決定されたコンプレッサの運転禁止範囲内となった場合に、2次電池のSOCに基づいて制御を分ける場合を示す図である。2次電池のSOCが所定値(例えば、放電可能最低充電率)より高い場合には、運転許可範囲内で圧力比及び流量が小さい運転点を選択し、燃料電池出力の不足分は、2次電池から放電する。逆に、2次電池のSOCが所定値より低い場合には、運転許可範囲内で圧力比及び流量が大きい運転点を選択し、燃料電池出力の余剰分は、2次電池へ充電する。これにより、要求電力を過不足無く満たすと共に、燃費効率の低下を防止することができる。
尚、以上の実施例1乃至実施例5に共通の制御として、フローチャートには示さなかったが、燃料電池システムの上位装置からの緊急を要する発電出力要求があった場合、或いは、セル電圧センサ17が検出したセル電圧値が燃料電池の水詰まり状態を示している場合には、コンプレッサの運転禁止範囲を一時的に解除して、全ての運転範囲で運転可能とする制御を行うのが好ましい。なぜならば、上位装置の緊急発電要求や水詰まり解消のための空気圧力流量の増加は、騒音低減よりも優先するからである。ここで、燃料電池システムの上位装置とは、例えば、燃料電池車両であれば、運転者のアクセル操作が入力される運転制御装置である。
コンプレッサ運転状態と放射音レベルの関係例を示す図である。
コンプレッサの放射音レベルを測定する測定システムの概要図である。
空気供給系の制御とシステム圧力比、流量との関係を示す図である。
等放射音線と運転禁止範囲の概念を説明する図である。
本発明における等出力線上で運転禁止範囲を回避する概念を説明する図である。
本発明における安定発電領域を説明する図である。
本発明における等出力線上の目標運転点に近い方の運転点で運転禁止範囲を回避する概念を説明する図である。
本発明における等出力線上の高効率な運転点で運転禁止範囲を回避する概念を説明する図である。
本発明における等出力線上の湿潤側運転点Bで運転禁止範囲を回避する概念を説明する図である。
本発明における等出力線上の運転点A,Bの交互運転を説明する図である。
本発明に係る燃料電池システムの構成図である。
実施例1〜3に共通の制御ブロック図である。
実施例1〜4の運転禁止音圧レベル決定手段のフローチャートである。
実施例1〜4の運転禁止範囲決定手段のフローチャートである。
コンプレッサ放射音制限値NVとコンプレッサ運転禁止範囲の関係を説明する図である。
システム温度Tsと運転禁止範囲の関係を説明する図である。
実施例1〜3の目標運転点決定手段のフローチャートである。
各要求出力に対する等出力線を示す概念図である。
実施例1の運転点決定手段のフローチャートである。
実施例2の運転点決定手段のフローチャートである。
実施例3の運転点決定手段のフローチャートである。
実施例4の制御ブロック図である。
実施例4の目標運転点決定手段のフローチャートである。
実施例4の運転点決定手段のフローチャートである。
実施例4の燃料電池システム運転手段のフローチャートである。
放射音レベル変化率が高い領域を説明する図である。
実施例5の制御ブロック図である。
実施例5のフローチャートである。
実施例5を説明する図である。
実施例5を説明する図である。
実施例5を説明する図である。
実施例5を説明する図である。
符号の説明
20 目標運転点決定手段
21 運転禁止音圧レベル決定手段
22 運転禁止範囲決定手段
23 運転点決定手段
24 燃料電池システム運転手段
30 運転禁止音圧変化率決定手段