JP4930128B2 - 有機el素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、通電により発光する有機発光材料を用いた有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子およびその製造方法に関し、特に陽極の直上に位置するホール注入層の改良に関する。
従来より、一般的な有機EL素子としては、ガラスなどの基板の上に、陽極、当該陽極の直上にホール注入輸送性材料よりなるホール注入層さらにその上部にホール輸送層、発光層、電子輸送層よりなる有機層、および陰極が形成されてなるものが提案されている。
このような有機EL素子は、基板上に真空蒸着などにより各層を形成することにより製造される。そして、陽極と陰極との間に電圧を印加することで、陽極からホール(正孔)、陰極から電子がそれぞれ発光層に向かって、注入・輸送され、発光層にてこれらが再結合することで発光がなされるものである。
このような有機EL素子において、陽極としてはITO(インジウムチンオキサイド)が一般に使用される。この1つの理由には、陽極には透明性が要求されるためである。しかしながら、陽極にITOを用いた場合、ホールを伝播するエネルギー準位であるITOの仕事関数(約5.0eV)とその直上部にくるホール注入層のイオン化ポテンシャル(約5.5eV)とのエネルギー障壁、すなわちホール注入障壁が大きいため、駆動電圧を低減させることが困難であった。
この課題を解決するために、電子受容性化合物であるルイス酸をホール注入層に添加し、ホール注入層を酸化させることで駆動電圧を低減させる方法が報告されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では大気中で不安定なハロゲン化金属のルイス酸を用いているため、不活性雰囲気下で予めルイス酸をホール注入層の材料と反応させ、安定な錯体を形成しておく必要があった。さらに、生成した錯体は真空蒸着法で成膜できないため、溶液からスピンコーティング法等で薄膜を形成する必要があり、それゆえ有機薄膜中に溶媒残渣や不純物が残存しやすく、素子の特性を悪化させるという問題があった。
また、ハロゲン化金属のルイス酸を直接真空蒸着させ、ホール注入層にドープする方法も提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、これら従来の方法に用いられているルイス酸は一般に常温でも蒸気圧が高いため、蒸気圧の制御が困難であり、常温付近で真空蒸着したり、場合によってはルイス酸の試料部分を冷却したりする必要があった。
また、この方法においては、蒸気圧の高いルイス酸が他の試料部分に不純物として混入し、有機EL素子の特性を悪化させる場合があった。さらに、真空蒸着装置を大気開放した時に、大気中で不安定であるこれらのルイス酸の純度が低下し、有機EL素子の特性に再現性が得られないという問題があった。
また、有機EL素子では、導電性異物により誘発される上下電極間の短絡を抑制するため、電極直上の有機層を厚膜化することが要求されている。この点に関して従来では、ITO電極上のホール注入層の膜厚を80nm以上にして、さらに加熱処理して導電性異物を有機層で覆うことで、上下電極間の短絡を抑制できるという報告がなされている(たとえば、特許文献3参照)。
特開平11−251067号公報 特開2001−244079号公報 特開2005−5149号公報 Polymer.1983,vol.24,June
上記特許文献3に記載されている有機EL素子のように、有機層を厚膜化することは、有機EL素子の発光輝度を高くしたり、上下電極間の短絡を抑制したりするためには好ましく、今後適用が要望される手法であるが、この場合、ホール注入層を厚膜化することで駆動電圧が上昇するという問題がある。
このように有機EL素子の駆動電圧が高くなることは、たとえば、回路側にてドライバーICの価格が高くなり、場合によっては汎用のドライバーICでは駆動ができなくなるという不具合につながる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基板上に陽極、その直上にホール注入層、さらにその上部に発光層を含む有機層および陰極を形成してなる有機EL素子において、大気中にて安定で真空蒸着可能なドープ材料をホール注入層にドープすることで駆動電圧を低減することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、有機EL素子の駆動電圧は、電極と有機層との間のエネルギー障壁及び有機層と有機層との間のエネルギー障壁の大きさにより変化し、このエネルギー障壁が小さいほど駆動電圧は低くなることに着目した。そこで、陽極とその直上のホール注入層との間のホール注入障壁を低減すべく、種々のドープ材料について実験検討を行った。
その結果、本発明のように、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物よりなるドープ材料を用い、これをホール注入輸送性材料すなわちホスト材料にドープしてなるホール注入層を、真空蒸着により成膜し、さらに、ホスト材料のガラス転移温度以上に加熱すれば、ホスト材料単独の場合に比べて、陽極とホール注入層との間のホール注入障壁を小さくでき、駆動電圧も低減できることを実験的に見出した。
すなわち、本発明は、ホール注入層(30)を、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜されたものとし、さらに、ホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することにより、ホール注入層(30)にドープ材料をドープしない場合よりも、陽極(20)とホール注入層(30)との間のホール注入障壁を小さくしたことを特徴とする。
それによれば、後述する実施形態にて実験結果として述べるように、大気中で安定で真空蒸着可能なドープ材料をホール注入層にドープすることで駆動電圧を低減することができる。そして、この場合、ホール注入層(30)にて、炭素と電子吸引性基との結合が増大していることが、XPSの測定により確認される(後述の図2参照)。
また、このような特徴を有する有機EL素子において、発光層(50)を含む有機層(40〜60)として、ホール注入層(30)と発光層(50)との間に位置し且つホール注入層(30)の直上に形成されたホール輸送層(40)が設けられている場合、このホール輸送層(40)もドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜されたものとし、さらに、ホール輸送層(40)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱してもよい。それによって、ホール注入層(30)にドープ材料をドープしない場合よりも、陽極(20)と前記ホール注入層(30)との間のホール注入障壁を小さくし、かつホール注入層(30)のみにドープ材料をドープした場合よりも、ホール注入層(30)とホール輸送層(40)との間のホール注入障壁を小さくしてもよい。
このようにホール輸送層(40)にもドープを行えば、陽極(20)とホール注入層(30)との関係と同様に、ホール輸送層(40)にドープ材料をドープしない場合よりも、ホール注入層(30)とその直上のホール輸送層(40)との間のホール注入障壁を小さくすることができるため、駆動電圧低減の点から好ましい。なお、この場合も、ホール注入層(30)にて、炭素と電子吸引性基との結合が増大していることが、XPSの測定により確認される。
さらに、この場合、ホール輸送層(40)の全体にドープ材料をドープしてもよいが、ホール輸送層(40)のうちホール注入層(30)側に近い部位のみにドープ材料がドープされているものにすれば、ホール注入層(30)とホール輸送層(40)との界面のホール注入障壁を低減するうえで好ましい。
また、ホール注入層(30)の膜厚を60nm以上と厚くしてやれば、陽極(20)の表面上の異物などによる凹凸を吸収することができ、好ましい。
また、ドープ材料のドープ量を、ホール注入層(30)全体の10重量%以下であるものにすれば、ホール注入層(30)中のドープ材料同士の会合を抑制することができ、好ましい。
ここで、ドープ材料における電子吸引性基としてはハロゲンが挙げられ、より具体的にはフッ素が挙げられる。また、ドープ材料を構成する化合物としては、フタロシアニン(Pc)骨格を有するものが採用できる。
より具体的には、ドープ材料を構成する化合物としては、銅1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−CuPc)や、亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−ZnPc)が挙げられる。
また、ホール注入層(30)、ホール輸送層(40)、発光層(50)および電子輸送層(60)を構成するホスト材料を、そのガラス転移温度が110℃以上であるものにすれば、自動車用の有機EL素子として好ましい。
また、上記特徴を有する有機EL素子を製造する製造方法としては、ホール注入層(30)を構成するドープ材料およびホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して膜を形成するとともに、この膜を、ホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することにより、ホール注入層(30)を形成するものにできる。それによれば、上記特徴を有する有機EL素子を適切に製造することができる。
また、上記ホール輸送層(40)にドープを行った場合の有機EL素子を製造する製造方法としては、ホール注入層(30)を構成するドープ材料およびホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して第1の膜を形成し、この第1の膜の直上に、ホール輸送層(40)を構成するドープ材料およびホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して第2の膜を形成するとともに、第1の膜および第2の膜を、ホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料とホール輸送層(40)を構成するホール注入輸送性材料との高い方のガラス転移温度以上に加熱することにより、ホール注入層(30)およびホール輸送層(40)を形成するものにできる。
それによれば、上記したホール注入層(30)およびホール輸送層(40)にドープ材料をドープしてなる有機EL素子を適切に製造することができる。
ところで、上記した各手段は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない材料をホール注入層にドープして成膜するとともに、これをホスト材料のガラス転移温度以上に加熱する、という点に着目してなされたものである。
そこで、このような材料を用いて、さらに検討を進めたところ、このような材料を単独で薄膜化し、陽極とホール注入層との間に介在させたものであっても、上記同様に、駆動電圧を低減できることを実験的に見出した。
つまり、本発明においては、基板(10)の上に、陽極(20)、陽極(20)の直上に電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない材料よりなる介在層(90)、介在層(90)の直上にホール注入層(30)、さらにホール注入層(30)の上部に発光層(50)を含む有機層(30〜60)、および陰極(80)を形成してなり、介在層(90)及びホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱するようにしてもよい。
この場合、介在層(90)を設けない場合よりも、陽極(20)とホール注入層(30)との間のホール注入障壁を小さくし、駆動電圧を低減することができる。そして、この場合、ホール注入層(30)にて、炭素と介在層(90)の電子吸引性基との結合が増大していることが、XPSの測定により確認される。
また、この場合、ホール注入層(30)と陽極(20)との界面において介在層(90)の電子吸引性基の拡散により当該界面における組成変化の急峻さが減少していること、ならびに、当該電子吸引性基がホール注入層(30)とホール輸送層(40)との界面に偏析していることが、SIMS分析により確認される。
また、この場合においても、介在層(90)の電子吸引性基としては、フッ素などのハロゲンが挙げられ、介在層(90)を構成する材料としては、上記したF−CuPcやF−ZnPcなどのフタロシアニン骨格を有するものを採用できる。
また、この介在層(90)を有する有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法としては、介在層(90)及びホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱するものにできる。
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る有機EL素子100の概略断面構成を示す図である。
本実施形態の有機EL素子100は、基板10上に、陽極20、ホール注入層30、ホール輸送層40、発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を設けたものである。ここでは、ホール輸送層40、発光層50、電子輸送層60が、発光層50を含む有機層40〜60を構成している。
図1に示される有機EL素子100において、基板10は、通常、ソーダガラス、バリウムシリケートガラス、アルミノシリケートガラスなどのガラスか、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック、石英、陶器などのセラミックをはじめとする汎用の基板材料を板状、シート状またはフィルム状に形成して用いられ、必要に応じて、これらは適宜積層して用いられる。
望ましい基板材料は、透明なガラスおよびプラスチックである。必要があるときには、基板10の適所に、たとえば、フィルター膜、色度変換膜、誘電体反射膜などの色度調節手段を設けてもよい。
陽極20は、電気的に低抵抗率であって、しかも、全可視領域にわたって光透過率の大きい金属もしくは電導性化合物の1または複数を、たとえば、真空蒸着、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、原子層エピタクシー(ALE)、塗布、浸漬などの方法により、基板10の一側に密着させてなる。
ここで、陽極20は、この陽極20における抵抗率が1kΩ/□以下、望ましくは、5〜50Ω/□になるように、厚さ10〜1000nm、望ましくは、50〜500nmの単層または多層に成膜することによって形成される。
陽極20における電導性材料としては、たとえば、金、白金、銀、銅、コバルト、ニッケル、パラジウム、バナジウム、タングステン、アルミニウムなどの金属、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫と酸化インジウムとの混合系(つまりインジウム−錫オキシド、これを以下、本実施形態では「ITO」と略記する)などの金属酸化物、さらには、アニリン、チオフェン、ピロールなどを反復単位とする電導性オリゴマーおよび電導性ポリマーが挙げられる。
このうち、ITOは、透明であり、低抵抗率のものが容易に得られるうえに、酸などを用いてエッチングすることにより、微細パターンを容易に形成できるため、陽極20に適用して好ましい。
この陽極20の上部には、当該陽極20に直接接した状態でホール注入層30が形成されている。つまり、陽極20の直上には、ホール注入層30が形成されている。このホール注入層30は、この種の有機EL素子に用いられる有機材料としてのホール注入輸送性材料をホスト材料とし、このホスト材料に、電子吸引性基を有する化合物よりなるドープ材料をドープしたものである。
さらに、本実施形態のホール注入層30においては、ホール注入層30に上記ドープ材料をドープしない場合、つまりホール注入層30をホール注入輸送性材料のみで構成した場合よりも、紫外線光電子分光(UPS)測定による陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁を小さくした構成となっている。
本実施形態のホール注入層30を構成するホール注入輸送性物質としては、ホールの注入と輸送とを容易ならしめるべく、イオン化電位が小さく、かつ、たとえば、104〜106V/cmの電界下において、少なくとも、10-6cm2/V・秒のホール移動度を発揮するものが望ましい。
具体的には、このようなホール注入輸送性物質としては、アリールアミン誘導体、イミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、スチルベン誘導体、テトラアリールエテン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールエテン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、N−ビニルカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニルアントラセン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体などが挙げられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。
また、上記ドープ材料として用いる電子吸引性基を有する化合物としては、有機ハロゲン化合物が好ましい。
具体的には、銅1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−CuPc)、亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−ZnPc)、1,2,3,4,5,6−ヘキサ(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンゼン、1,2,3,4,5,6−ヘキサ(4−フルオロフェニル)ベンゼン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、である。
これらの電子吸引性基を有する化合物は大気中で安定であり、大気に触れても変質しないものでる。つまり、これら化合物よりなるドープ材料は、大気中で分解や反応を起こさず、大気に触れることで純度が低下することはないため、上記した従来技術に用いられていたルイス酸とは異なり、通常の真空蒸着が可能であり、再現性良く特性の優れた有機EL素子が得られるものである。
したがって、本実施形態において、ホール注入層30にドープ材料をドープする方法としては、真空蒸着法により共蒸着する方法を採用し、それによって、不純物の混入を抑制することができる。
具体的には、ホール注入層30を構成するドープ材料およびホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して膜を形成する。この状態では、紫外線光電子分光(UPS)測定による陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁は、ドープ材料をドープしない場合からほとんど変化しないため、この膜を、ホール注入層30を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱する。
この加熱によって、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁が小さくなったホール注入層30が形成される。なお、このガラス転移温度以上の加熱により、ホール注入層30において上記ホール注入輸送性材料とドープ材料の相互作用が増大することは、本発明者が実験的に見出したことであり、後述する実施例に述べるように、このことは、これら材料間の結合の形成により確認されている。
ここにおいて、ホール注入層30に、上記ドープ材料をドープする場合、このドープ量としては、ホール注入層30全体の30重量%以下が好ましい。30重量%を超えると、上記ドープ材料がキャリアの伝道を阻害するため好ましくない。
また、図1に示されるように、ホール注入層30の上部には、当該ホール注入層30に直接接した状態でホール輸送層40が形成されている。つまり、ホール注入層30の直上には、ホール輸送層40が形成されている。
このホール輸送層40は、この種の有機EL素子に用いられるホール注入輸送性材料よりなるものであり、このホール注入輸送性材料としては、上記ホール注入層30のところで挙げたような化合物を採用することができる。なお、ホール注入輸送性材料は、ホール注入層30とホール輸送層40とで同じものでもよいし、異なるものでもよい。
ここで、本実施形態におけるもう一つの構成として、このホール輸送層40も、ホール注入輸送性材料をホスト材料とし、このホスト材料に電子吸引性基を有する化合物よりなるドープ材料をドープすることで、ホール注入層30のみに上記のドープ材料をドープした場合よりも、UPS測定によるホール注入層30とホール輸送層40の間のホール注入障壁も小さくさせてもよい。
このもう一つの構成の場合、ホール輸送層40にドープするドープ材料は、上記ホール注入層30におけるドープ材料を採用できるが、両層30、40においてドープ材料は同じものでもよいし、異なるものでもよい。
そして、この場合のホール輸送層40についても、ドープ量は30重量%以下が好ましい。また、この場合のホール輸送層40は、上記ホール注入層30の場合と同じく、真空蒸着による成膜および加熱処理によりホール注入層30のみにドープ材料をドープした場合よりも、ホール注入層30とホール輸送層40の間のホール注入障壁も小さくさせたものを作製できるが、具体的には、次のような方法でホール注入層30とホール輸送層40とを形成することができる。
すなわち、ホール注入層30を構成するドープ材料およびホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して第1の膜を形成し、この第1の膜の直上に、ホール輸送層40を構成するドープ材料およびホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して第2の膜を形成するとともに、これら第1の膜および第2の膜を、ホール注入層30を構成するホール注入輸送性材料とホール輸送層40を構成するホール注入輸送性材料との高い方のガラス転移温度以上に加熱することにより、ホール注入層30およびホール輸送層40を形成する。
この方法においても、真空蒸着によって形成されたホール注入層30となる第1の膜およびホール輸送層40となる第2の膜を、上記温度で加熱することにより、ホール注入層30にドープ材料をドープしない場合よりも、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁を小さくし、かつホール注入層30のみにドープ材料をドープした場合よりも、ホール注入層30とホール輸送層40の間のホール注入障壁を小さくなる。このことは、本発明者の実験により見出されたものである。
そして、この方法は、加熱のタイミングによって、さらに場合分けされる。1つ目は、ホール注入層30を構成する各材料を共蒸着して第1の膜を形成し、この第1の膜を上記ガラス転移温度以上の加熱に処することにより、ホール注入層30を形成する。次に、ホール注入層30の直上に、ホール輸送層40を構成する各材料を共蒸着して第2の膜を形成し、この第2の膜を上記ガラス転移温度以上の加熱に処することにより、ホール輸送層40を形成する。
2つ目は、ホール注入層30を構成する各材料を共蒸着して第1の膜を形成し、この第1の膜の直上に、ホール輸送層40を構成する各材料を共蒸着して第2の膜を形成し、その後、これら第1および第2の膜を上記ガラス転移温度以上の加熱に処することにより、ホール注入層30およびホール輸送層40を形成する。
これらの方法により、ドープがなされた両層30、40を適切に形成できる。なお、上記1つ目の方法において、両層30、40のホール注入輸送性材料が同じものである場合には、当該方法における加熱温度は、第1の膜、第2の膜ともに同じ温度でよい。
このように、本実施形態においては、ホール注入層30には上記ドープ材料のドープは必須であり、必要に応じて、ホール輸送層40にも上記ドープ材料のドープを行うものである。
ホール輸送層40に上記ドープ材料のドープを行うことにより、ホール輸送層40にドープ材料をドープしない場合よりも、ホール注入層30とその直上のホール輸送層40との間のホール注入障壁を小さくすることができる。
そこで、ホール輸送層40に上記ドープ材料のドープを行う場合、ホール注入層30とホール輸送層40との界面のホール注入障壁を低減するという観点から、ホール輸送層40のうちホール注入層30側に近い部位のみにドープ材料がドープされ、発光層50側に近い部位にはドープされていない構成としてもよい。
また、ホール注入層30およびホール輸送層40の膜厚は10〜150nm、好ましくは20〜100nmである。特に、ホール注入層30の膜厚は60nm以上であることが好ましい。
陽極20の表面上の異物などによる凹凸が大きいと、それに起因する陽極20と陰極80との間の短絡が発生しやすいが、この程度にホール注入層30を厚くしてやれば、当該凹凸を吸収しできるため、当該短絡などの問題を回避しやすい。
また、ホール輸送層40の上に位置する発光層50は、ホスト化合物を真空蒸着させるかまたはホスト化合物とドープ材料を共蒸着させることにより得られる。また、必要に応じて、発光層50は単層または多層に分離してそれぞれ厚さ10〜100nmに成膜することによって形成される。この発光層50の領域では、電子−ホールの再結合が起こり、その結果として発光が観測される。
この発光層50におけるホスト材料としては、ホール輸送性と電子輸送性の両方の特性を持ったものが好ましい。このようなホスト材料はたとえば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(以下、「Alq3」という)のような1つの化合物から形成してもよいし、またはホール注入輸送性材料と電子輸送性材料を混合してもよい。
これらを混合する場合、ホスト材料中のホール注入輸送性材料としては、上記ホール注入層30及びホール輸送層40に用いられるホール注入輸送性材料から選択された物質を用いることができる。また、ホスト材料中の電子輸送性物質としては、後述の電子輸送層60に用いられる電子輸送性物質から選択された物質を用いることができる。
発光層50におけるドーパントとしては、有機EL素子において汎用される蛍光色素材料を用いることができる。
そのような蛍光色素材料としては、たとえば、青色系の発光を行うペリレン、スチリルアミン誘導体、黄色系の発光を行うルブレン、緑色系の発光を行うクマリン、ジメチルキナクリドン等が挙げられる。また、発光層50におけるドーパントは、ホスト材料全体に対して、0.05〜50重量%、望ましくは、0.1〜30重量%の割合とすることができる。
次に、図1において、発光層50の上に位置する電子輸送層60は、通常、発光層50に密着させて、電子親和力の大きい有機化合物を1つまたは複数を厚さ10〜100nmに成膜することによって形成される。複数の電子輸送性物質を用いる場合には、その複数の電子輸送性物質を均一に混合して単層に形成してもよいし、混合することなく電子輸送性物質ごとに隣接する複数の層に形成してもよい。
好ましい電子輸送性物質はキノリノール金属錯体、アントラセン誘導体、ベンゾキノン、アントラキノン、フルオレノンなどの環状ケトンまたはその誘導体、シラザン誘導体を用いることができる。この中でもトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(Alq3)などのキノリノール金属錯体が最も好ましい。
電子注入層70は、金属フッ化物または金属酸化物からなる。ここで、金属フッ化物層は、アルカリフッ化物またはアルカリ土類フッ化物から選択することができる。金属酸化物層は、アルカリ酸化物またはアルカリ土類酸化物から選択することができる。
このアルカリフッ化物には、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、またはフッ化セシウムが含まれる。また、上記のアルカリ酸化物には、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、または酸化セシウムが含まれる。
また、上記のアルカリ土類フッ化物には、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、またはフッ化バリウムが含まれ、上記のアルカリ土類酸化物には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、または酸化バリウムが含まれる。
このようなフッ化物層または金属酸化物層からなる電子注入層70は、蒸着法により形成することができるものであり、その厚みは、たとえば0.2nm〜2.0nmの範囲である。
陰極80は、仕事関数の低い(通常、5eV以下)、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム、銀、銅、アルミニウム、インジウムなどの金属若しくは金属酸化物又は電導性化合物を単独又は組合せて蒸着することによって形成する。陰極80の厚みについては特に制限がなく、電導性、製造コスト、素子全体の厚み、光透過性などを勘案しながら、通常、抵抗率が1kΩ/□以下になるように、厚さ10nm以上、望ましくは、50nm〜500nmに設定される。
なお、上記した具体的な材料は公知のものであるが単なる例示であって、本実施形態で用いる材料は決してこれらに限定されてはならない。また、本実施形態では、ホール注入層30、ホール輸送層40、発光層50、電子輸送層60に使用するホスト材料は、高温での耐久性向上のために、ガラス転移温度が、110℃以上であることが好ましい。
また、上記有機EL素子100における各層20〜80を形成するにあたっては、有機化合物の酸化や分解、さらには、酸素や水分の吸着などを最小限に抑えるべく、高真空下、詳細には、10-5Torr以下で一貫作業するのが望ましい。
また、ホール注入層30及び発光層50、さらに上記ドープがなされる場合のホール輸送層40においては、あらかじめ、ホスト材料とドープ材料とを所定の割合で混合しておくか、あるいは、真空蒸着における両材料の加熱速度を互いに独立して制御することによって、両材料の配合比を調節する。
このようにして形成された有機EL素子100は、使用環境における劣化を最小限に抑えるべく、素子の一部または全体を、たとえば、不活性ガス雰囲気下で封止ガラスや金属キャップにより封止するか、あるいは、紫外線硬化樹脂などによる保護層で覆うことが望ましい。
本実施形態の有機EL素子100の使用方法について説明すると、この有機EL素子100は、用途に応じて、比較的高電圧のパルス性電圧を間欠的に印加するか、あるいは、比較的低電圧の直流電圧(通常、3〜50V)を連続的に印加して駆動する。
この有機EL素子100は、陽極20の電位が陰極80の電位より高いときにのみ発光する。したがって、この有機EL素子100へ印加する電圧は直流であっても交流であってもよく、印加する電圧の波形、周期も適宜のものとすればよい。
直流を印加すると、この有機EL素子100は、原理上、印加する直流電流値に比例して、輝度が増加する。図1に示す有機EL素子100の場合、陽極20と陰極80との間に電圧を印加すると、陽極20から注入されたホールがホール注入層30、ホール輸送層40を経て発光層50に、また、陰極80から注入された電子が電子注入層70、電子輸送層60を経て発光層50へそれぞれ到達する。
その結果、発光層50において、ホールと電子の再結合が起こり、それにより生じた励起状態のドープから目的とする色の発光が、陽極20および基板10を透過して放出されることとなる。
ところで、本実施形態によれば、大気中で安定な電子吸引性基を有する化合物よりなるドープ材料をホール注入層30にドープして、ホール注入層30に新たなエネルギー準位を形成し、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁を小さくしているため、駆動電圧が低減された有機EL素子100を提供することができる。さらに、本実施形態では、ホール注入層30を厚膜化しても駆動電圧の増加が小さい有機EL素子100が提供される。
そして、このような低電圧駆動が可能な有機EL素子100は、高輝度化での発光や大型パネルへの展開が可能になり、さらに、低コストであるドライバーICへの適用が可能になる。
また、本実施形態の有機EL素子100を自動車や車輌に搭載して使用する場合、高温環境(たとえば70〜80℃程度)となることは避けられない。有機層のうちアモルファス性の有機層はガラス転移温度以上になると結晶化して膜表面の凹凸が増大し、電流のリークが生じやすくなる。そこで、車載用とする場合には、上述したように、有機EL素子100における有機層30〜60の全てのホスト材料のガラス転移温度は110℃以上にすることが、高温耐熱性の向上のために好ましい。
次に、本第1実施形態について、限定するものではないが、以下の実施例および比較例を参照して、より具体的に述べる。
[実施例1]
ガラス基板10上に150nmの厚さのITOである陽極20をスパッタリング法により形成した。パターニング後、ITO表面を研磨した。
この陽極20の上にホール注入層30として、4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:2−TNATA、ガラス転移温度:110℃)と2−TNATAに対して5重量%の1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(略称:F−CuPc)を真空で共蒸着させ、厚さ200nmの膜を形成した。そして、この膜を、2−TNATAのガラス転移温度以上の150℃にて10分間加熱し、ホール注入層30を作製した。
なお、別途同様に作製したホール注入層30の紫外線光電子分光(UPS)測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁、すなわちホール注入障壁は、0.1eVと非常に小さかった。ここで、UPS測定は10-10Torr台の超高真空中でホール注入層30に紫外線(He I,21.2eV)を照射し、試料表面より放出された光電子のエネルギーを計測することで実施した。
また、UPS測定を行ったものと同様のホール注入層30についてX線光電子分光(XPS)測定を行った。その結果を図2に示す。図2に示されるように、本実施例のホール注入層30では、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
ちなみに、図3は、F−CuPcをドープしない2−TNATAを150℃で10分間加熱した膜について同様にXPS測定を行った結果を示す図であるが、この場合には、炭素とフッ素の結合が増大していることはほとんど観測されなかった。ここで、図2、図3におけるXPS測定は10-10Torr台の超高真空中で試料表面にX線(Mg Kα,1253.6eV)を照射し、試料表面より放出された光電子のエネルギーを計測することで実施した。
さらに、本実施例では、ホール輸送層40としてN,N’−ビス(4−ジフェニルアミノ−4’−ビフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:DAP−DPB、ガラス転移温度:140℃)を真空蒸着法により厚さ50nm形成した。
そして、発光層50として、ホスト材料にAlq3(ガラス転移温度:167℃)を用い、ドープ材料としてジメチルキナクリドンを1%添加した層を真空蒸着法により厚さ60nm形成した。さらに、その上に電子輸送層60としてAlq3を真空蒸着法により厚さ20nm形成した。
これら有機層30〜60を形成した後、その上に電子輸送層70としてフッ化リチウムを真空蒸着法により厚さ0.5nm形成した。さらに、その上に陰極80として、Alを真空蒸着法により厚さ150nm形成した。
こうしてできあがった本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は60mA/cm2、輝度は4000cd/m2であった。また、本例の有機EL素子においては、輝度4000cd/m2における+25℃での半減輝度寿命は200時間であった。
[比較例1]
ホール注入層30として、2−TNATAのみを真空蒸着させ、厚さ200nmにて形成すること以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30へのドープ材料のドープを行うことなく有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁は、0.45eVであり、上記実施例1と比較してかなり大きいものであった。
また、図4は、本例のホール注入層30のXPS測定の結果を示す図であり、2−TNATAのみからなる膜について上記のガラス転移温度以上の加熱処理を行わずに上記同様にXPS測定した結果を示す図である。この図4に示されるように、本例では、炭素とフッ素の結合が増大していることはほとんど観測されなかった。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は30mA/cm2、輝度は2000cd/m2であった。なお、4000cd/m2の輝度を得るには、12Vの直流電流の印加が必要であり、上記実施例1に比べ2V高い電圧を印加する必要があった。
また、本例の有機EL素子においては、輝度4000cd/m2における+25℃での半減輝度寿命は100時間であった。つまり、上記実施例1に代表される第1実施形態の有機EL素子は、輝度寿命の長寿命化にも効果を奏する。
[比較例2]
ホール注入層30として、2−TNATAに対して5重量%のF−CuPcを真空で共蒸着させるが、その後の150℃での加熱処理は行わないこと以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30の2−TNATAのガラス転移温度以上の150℃で10分間加熱処理を行うことなく有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁は、0.45eVであり、上記実施例1と比較してかなり大きいものであった。
また、図5は、本例のホール注入層30のXPS測定の結果を示す図であり、2−TNATAにF−CuPc(5%)ドープした膜について加熱処理を行わずに上記同様にXPS測定した結果を示す図である。この図5に示されるように、本例では、炭素とフッ素の結合が増大していることはほとんど観測されなかった。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は32mA/cm2、輝度は2200cd/m2であった。なお、4000cd/m2の輝度を得るには、12Vの直流電流の印加が必要であり、上記実施例1に比べ2V高い電圧を印加する必要があった。このように、上記ガラス転移温度以上の加熱を行わず、ドープするだけでは、ほとんど効果は無かった。
つまり、本例のように、ホール注入層30において、ホスト材料に単にドープ材料をドープしただけで、上記ドープ材料による結合を形成しない場合には、ホール注入層30をホール注入輸送性材料のみで構成した場合に比べて、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁が実質的に変化せず、駆動電圧の低減は行われない。
[実施例2]
ホール注入層30として、2−TNATAに対して5重量%の亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(略称:F−ZnPc)を真空で共蒸着させ、上記加熱処理を行って厚さ200nmの膜を形成すること以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30へF−CuPcの代わりにF−ZnPcのドープを行い、有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数と正孔注入輸送層30のHOMOレベルのエネルギー障壁は、0.1eVであり、上記実施例1と同様に非常に小さいものであった。
また、上記同様にXPS測定を行ったところ、上記実施例1と同様に、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は59mA/cm2、輝度は3800cd/m2であった。つまり、本例においても上記実施例1と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
[実施例3]
ホール注入層30として、2−TNATAに対して8重量%の1,2,3,4,5,6−ヘキサ(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンゼン(略称:HFMP−B)を真空で共蒸着させ、上記加熱処理を行って厚さ200nmの膜を形成すること以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30へF−CuPcの代わりにHFMP−Bのドープを行い、有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁は、0.15eVであり、上記実施例1と同様に非常に小さいものであった。
また、上記同様にXPS測定を行ったところ、上記実施例1と同様に、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は58mA/cm2、輝度は3700cd/m2であった。つまり、本例においても上記実施例1と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
[実施例4]
ホール注入層30として、2−TNATAに対して8重量%の1,2,3,4,5,6−ヘキサ(4−フルオロフェニル)ベンゼン(略称:HFP−B)を真空で共蒸着させ、上記加熱処理を行って厚さ200nmの膜を形成すること以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30へF−CuPcの代わりにHFP−Bのドープを行い、有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁は、0.15eVであり、上記実施例1と同様に非常に小さいものであった。
また、上記同様にXPS測定を行ったところ、上記実施例1と同様に、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は58mA/cm2、輝度は3700cd/m2であった。つまり、本例においても上記実施例1と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
[実施例5]
ホール注入層30として、2−TNATAに対して8重量%のテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(略称:TFCN−QM)を真空で共蒸着させ、上記加熱処理を行って厚さ200nmの膜を形成すること以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30へF−CuPcの代わりにTFCN−QMのドープを行い、有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁は、0.13eVと非常に小さかった。
また、上記同様にXPS測定を行ったところ、上記実施例1と同様に、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は58mA/cm2、輝度は3800cd/m2であった。つまり、本例においても上記実施例1と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
[実施例6]
上記実施例1と同様に、2−TNATAとF−CuPcを真空で共蒸着させ、150℃で10分間加熱して、ホール注入層30を形成した。その上に、DAP−DPBと5重量%のF−CuPcを真空で共蒸着させて厚さ20nmの膜を形成し、これを150℃で10分間加熱し、さらにその上にDAP−DPBのみを膜厚30nm形成することでホール輸送層40を形成した。
ここでは、上記したドープが行われた厚さ20nmの膜とドープされない厚さ30nmの膜とを合わせてホール輸送層40が構成される。これ以外は上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
つまり、本例では、ホール輸送層40にもドープ材料であるF−CuPcをドープし、ドープ材料による結合を形成する。また、本例では、ホール輸送層40におけるホール注入層30側に近い部位のみにドープ材料がドープされたものとなる。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁は、0.1eVであり、上記実施例1と同様に非常に小さいものであった。
また、本例のホール輸送層40についても同様にUPS測定を実施したところ、ホール注入層30とホール輸送層40との間のホール注入障壁は、ドープを行わないホール輸送層40の場合が0.4eVであったのに対して、ホール輸送層40にドープを行った本例では0.2eVと小さいものであった。
また、本例のホール注入層30およびホール輸送層40について、上記同様にXPS測定を行ったところ、これら両層30、40において、上記実施例1と同様に、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
そして、本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は65mA/cm2、輝度は4300cd/m2であった。つまり、本例においても上記実施例1と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
なお、本実施例6では、ホール注入層30となる第1の膜(2−TNATAとF−CuPc)を成膜した後、これを加熱してホール注入層30を形成し、その上に、ホール輸送層40となる第2の膜(DAP−DPBと5重量%のF−CuPc)を成膜した後、これを加熱し、さらに、その上にDAP−DPBのみを形成することでホール輸送層40を形成している。
ここにおいて、上述したように、加熱処理のタイミングを変えても、本例と同様のホール注入層30、ホール輸送層40が形成可能である。たとえば、ホール注入層30となる第1の膜(2−TNATAとF−CuPc)を成膜し、その上にホール輸送層40となる第2の膜(DAP−DPBと5重量%のF−CuPc)を成膜した後、これら両膜を150℃程度で加熱し、さらに、その上にDAP−DPBのみを形成することで両層30、40を形成してもよい。
また、上記第1の膜を形成した後、その上に、DAP−DPBと5重量%のF−CuPcとの膜、DAP−DPBのみの膜を順次形成し、これらをホール輸送層40となる第2の膜として構成し、その後、これら第1および第2の膜を上記加熱処理に処することにより、両層30、40を形成するようにしてもよい。
[実施例7]
ホール注入層30として、2−TNATAに対して25重量%の亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(略称:F−ZnPc)を真空で共蒸着させ、上記加熱処理を行って厚さ200nmの膜を形成すること以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。つまり、ホール注入層30へ5重量%のF−CuPcの代わりに25重量%F−ZnPcのドープを行い、有機EL素子を作製した。
このホール注入層30について上記同様にUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数と正孔注入輸送層30のHOMOレベルのエネルギー障壁は、0.1eVであり、上記実施例1と同様に非常に小さいものであった。
また、上記同様にXPS測定を行ったところ、上記実施例1と同様に、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により層内部から不純物が離脱し、フッ素原子が有効にドーパント分子の炭素原子に結合し、ドーピングの効果が増大したことが示唆された。
本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は57mA/cm2、輝度は3700cd/m2であった。つまり、本例においても上記実施例1と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
以上のように、本実施形態は、従来とは異なり、大気中にて安定で真空蒸着可能なドープ材料を用いたものであり、このドープ材料をホール注入層30にドープするだけでなく、加熱処理などによって、ホール注入層30にドープ材料をドープしない場合よりも、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁を小さくしたものである。それによって、通常の真空蒸着法によりホール注入層30を適切に作製することができ、有機EL素子100の駆動電圧を低減することができるものである。
また、上記の各実施例に示したように、本第1実施形態によれば、ホール注入層30を厚さ200nm程度に厚くしても、比較的低い駆動電圧を確保できることから、ホール注入層30の厚膜化による駆動電圧の増加が小さな有機EL素子が期待できる。また、上述したように、ホール輸送層40にも同様にドープ材料をドープした構成とすることで、さらなる駆動電圧の低減が期待できる。
なお、上記図1に示した有機EL素子100は、本発明の一実施形態を示すものであり、有機EL素子としては、基板の上に、陽極、当該陽極の直上にホール注入層、さらにその上部に発光層を含む有機層、および陰極が形成されていればよく、場合によっては、上記したホール輸送層や電子輸送層、電子注入層などが省略された構成であってもかまわない。
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る有機EL素子101の概略断面構成を示す図である。
本実施形態の有機EL素子101も、基板10上に、陽極20、ホール注入層30、ホール輸送層40、発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を設けたものであり、ホール輸送層40、発光層50、電子輸送層60が、本発明で言う発光層50を含む有機層40〜60を構成している。
ここで、本実施形態では、図6に示されるように、陽極20とホール注入層30との間に、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない材料よりなる層としての介在層90が介在していることが、上記第1実施形態の有機EL素子と相違する。以下、この相違点を中心に述べる。
この介在層90を構成する材料は、上記第1実施形態におけるホール注入層30にドープされたドープ材料と同じものを採用できる。具体的には、介在層90の材料としては、上述したようなF−CuPcやF−ZnPcなどの有機ハロゲン化合物が挙げられる。そして、これらは大気に触れても変質しない材料であって、大気中で分解や反応を起こさず、大気に触れることで純度が低下することはないものである。
そして、この介在層90は、陽極20の直上に上記材料を単独で薄膜化した層であり、真空蒸着法により蒸着することによって成膜することができる。そして、ホール注入層30自身は、この介在層90の直上に、上記した2−TNATAなどの通常のホール注入輸送性材料を用いて真空蒸着することで成膜される。
さらに、本実施形態では、このように陽極20の上に、真空蒸着により成膜された介在層90およびホール注入層30は、ホール注入層30を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱されたものである。
それにより、本実施形態では、陽極20の直上に介在層90が無い場合、すなわち、従来のように陽極の直上にホール注入層を設けた場合よりも、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁を小さくした構成となっている。このホール注入障壁は、上記第1実施形態と同様に、紫外線光電子分光(UPS)測定によるものである。
ここで、この介在層90の膜厚は30nm以下が好ましい。30nmを超えると、ホール注入層30と相互作用しない当該介在層90が、キャリアの伝道を阻害するため好ましくない。
このように、本実施形態の有機EL素子101においては、基板10の上に、陽極20、陽極20の直上に介在層90、介在層90の直上にホール注入層30、さらにホール注入層30の上部には、発光層50を含む有機層30〜60、および陰極80を形成してなる。ここで、本実施形態の有機層30〜60および陰極80については、上記第1実施形態と同様のものにできる。
そして、本実施形態によれば、陽極20の直上に、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない材料よりなる介在層90及びホール注入層30を真空蒸着によって成膜し、ホール注入層30に新たなエネルギー準位を形成し、陽極20とホール注入層30との間のホール注入障壁を小さくしているため、駆動電圧が低減された有機EL素子101を提供することができる。
また、本実施形態においても、ホール注入層30および発光層50を含む有機層40〜60を構成するホスト材料を、そのガラス転移温度が110℃以上であるものにすれば、自動車用の有機EL素子101として好ましい。
上記第1実施形態では、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物材料をホール注入輸送性材料にドープして、ホール注入層30を成膜し、これを上記ガラス温度以上の加熱処理に供することにより、上記ホール注入障壁の低減を実現していたのに対し、本第2実施形態では、、同じ材料をホール注入層30とは別体の単独の層90として用いて、同様の効果を発揮している。
次に、本第2実施形態について、限定するものではないが、以下の実施例および比較例を参照して、より具体的に述べる。
[実施例8]
ガラス基板10上に150nmの厚さのITOである陽極20をスパッタリング法により形成した。パターニング後、ITO表面を研磨した。
この陽極20の上に、介在層90として、F−ZnPcを真空で蒸着させ、厚さ10nmの膜を形成した。その上に、ホール注入層30として、2−TNATA(ガラス転移温度:110℃)を真空で蒸着させ、厚さ100nmの膜を形成した。そして、これらの膜を、2−TNATAのガラス転移温度以上の150℃にて10分間加熱した。
なお、別途同様に作製した素子で、ホール注入層30のUPS測定を実施したところ、陽極20のITOの仕事関数とホール注入層30のHOMOレベルとのエネルギー障壁、すなわちホール注入障壁は、0.07eVと非常に小さかった。ここで、UPS測定は10-10Torr台の超高真空中でホール注入層30に紫外線(He I,21.2eV)を照射し、試料表面より放出された光電子のエネルギーを計測することで実施した。
また、UPS測定を行ったものと同様の素子でXPS測定を行ったところ、上記図2の場合と同様に、本実施例のホール注入層30では、炭素とフッ素の結合が増大していることが確認された。この結果から、加熱により介在層であるF−ZnPcがホール注入層30の内部に浸透し、ホール注入層30にF−ZnPcをドーピングした場合と同様の効果が得られていることが分かった。
また、図7は、本実施例において陽極20上に介在層90であるF−ZnPcとホール注入層30である2−TNATAとを成膜し、150℃で10分間加熱したものを、ホール注入層30の表面側から二次イオン質量分析(SIMS分析)した結果を示す図であり、図8は比較例として、図7と同じ成膜を行うが加熱処理は行わなかったものを、SIMS分析した結果を示す図である。
ここで、これら図7および図8における深さ(単位:nm)は、ホール注入層30の表面すなわちホール注入層30におけるホール輸送層側の表面を深さ0としている。これらSIMS分析の結果からわかるように、図7の本実施例では、ガラス転移温度以上の加熱により陽極20とホール注入層30との界面において、図8の比較例に比べて組成変化の急峻さが失われており、層状の形態で存在していたF−ZnPcがなだらかな傾斜組成をもってホール注入層30内に拡散していることが確認される。
つまり、介在層90としてのF−ZnPcの電子吸引性基であるFが当該界面に拡散していることにより、当該界面における組成変化の急峻さが減少している。このことから、陽極20とホール注入層30である2−TNATAとの界面において、2−TNATAにF−ZnPcが高濃度にドーピングされた状態となっているものと思われる。その結果、陽極20から2−TNATAへのキャリア注入障壁が低減される。
また,図7、図8からわかるように、本実施例では、ガラス転移温度以上の加熱により、比較例に比べて、深さ0近傍すなわちホール注入層30の表面にフッ素が濃化していることが確認される。
このフッ素は、XPS分析からフッ素化合物が断片化した成分を多く含んでいるものであることがわかっており、ホール注入層30の上にさらにホール輸送層40を成膜した場合には、当該ホール輸送層40へ拡散することが容易に想像される。
つまり、この図7に示されるものと同様にSIMS分析を行うことにより、介在層90の電子吸引性基であるフッ素がホール注入層30とホール輸送層40との界面に偏析することが、確認できると言ってもよい。
そして、加熱したホール注入層30とその上に新たに成膜したホール輸送層40との界面においても、ホール輸送層40は高濃度にフッ素化物がドーピングされた状態となり、界面障壁が低減されると考えられる。
この後、さらに、本実施例では、ホール輸送層40としてN,N’−ビス(4−ジフェニルアミノ−4’−ビフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:DAP−DPB、ガラス転移温度:140℃)を真空蒸着法により厚さ50nm形成した。
そして、発光層50として、ホスト材料にAlq3(ガラス転移温度:167℃)を用い、ドープ材料としてジメチルキナクリドンを1%添加した層を真空蒸着法により厚さ60nm形成した。さらに、その上に電子輸送層60としてAlq3を真空蒸着法により厚さ20nm形成した。
これら有機層30〜60を形成した後、その上に電子輸送層70としてフッ化リチウムを真空蒸着法により厚さ0.5nm形成した。さらに、その上に陰極80として、Alを真空蒸着法により厚さ150nm形成した。
こうしてできあがった本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は70mA/cm2、輝度は4700cd/m2であった。また、本例の有機EL素子においては、輝度4700cd/m2における+25℃での半減輝度寿命は300時間であった。つまり、本例においては、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
[実施例9]
介在層90であるF−ZnPcの膜厚を1nmとする以外は、上記実施例8と同様にして有機EL素子を作製した。
こうしてできあがった本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は65mA/cm2、輝度は4300cd/m2であった。また、本例の有機EL素子においては、輝度4300cd/m2における+25℃での半減輝度寿命は230時間であった。つまり、本例においても、上記実施例8と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
[実施例10]
介在層90として、F−ZnPcの代わりにF−CuPcを用いること以外は、上記実施例8と同様にして、有機EL素子を作製した。
こうしてできあがった本例の有機EL素子に10Vの直流電流を印加したところ、電流密度は62mA/cm2、輝度は4100cd/m2であった。また、本例の有機EL素子においては、輝度4100cd/m2における+25℃での半減輝度寿命は200時間であった。つまり、本例においても、上記実施例8と同様に、駆動電圧の低減効果が顕著であった。
また、上記各実施形態を参照して述べてきたように、本発明は、上記したようなホール注入層30、ホール輸送層40、介在層90に関する成膜ならびに加熱を行うことにより、上記したUPSによるホール注入障壁の低減、XPSによる炭素とフッ素の結合の増大、あるいは上記SIMSによって確認される構成を実現する有機EL素子の製造方法としても捕らえることが、もちろん可能である。
本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の概略断面図である。 2−TNATAにF−CuPc(5%)ドープし150℃で10分間加熱した膜についてのC1sのXPS測定結果を示す図である。 2−TNATAのみを150℃で10分間加熱した膜についてのC1sのXPS測定結果を示す図である。 2−TNATAのみからなる膜について加熱処理を行わずに求めたC1sのXPS測定結果を示す図である。 2−TNATAにF−CuPc(5%)ドープした膜について加熱処理を行わずに求めたC1sのXPS測定結果を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の概略断面図である。 第8実施例において陽極上にF−ZnPcと2−TNATAとを成膜し、150℃で10分間加熱したものをSIMS分析した結果を示す図である。 比較例として陽極上にF−ZnPcと2−TNATAとを成膜し、加熱処理を行わなかったものをSIMS分析した結果を示す図である。
符号の説明
10…基板、20…陽極、30…ホール注入層、40…ホール輸送層、
50…発光層、60…電子輸送層、70…電子注入層、80…陰極、
90…介在層。

Claims (19)

  1. 基板(10)の上に、陽極(20)、前記陽極(20)の直上にホール注入層(30)さらにその上部にホール輸送層(40)、発光層(50)、電子輸送層(60)、および陰極(80)が形成されてなる有機EL素子において、
    前記ホール注入層(30)は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱するものであり、
    前記ドープ材料における前記電子吸引性基は、フッ素であり、
    前記ドープ材料を構成する化合物は、銅1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−CuPc)、もしくは、亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−ZnPc)であることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記ホール注入層(30)は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記ホール注入層(30)に前記ドープ材料をドープしない場合よりも、前記陽極(20)と前記ホール注入層(30)との間のホール注入障壁を小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記ホール注入層(30)は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記ホール注入層(30)にて、炭素と前記電子吸引性基の結合が増大していることが、XPSの測定により確認されることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子。
  4. 基板(10)の上に、陽極(20)、前記陽極(20)の直上にホール注入層(30)、前記ホール注入層(30)の直上にホール輸送層(40)さらにその上部に発光層(50)、電子輸送層(60)、および陰極(80)が形成されてなる有機EL素子において、
    前記ホール注入層(30)及び前記ホール輸送層(40)は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜し、前記ホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料と前記ホール輸送層(40)を構成するホール注入輸送性材料の高い方のガラス転移温度以上に加熱するものであり、
    前記ドープ材料における前記電子吸引性基は、フッ素であり、
    前記ドープ材料を構成する化合物は、銅1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−CuPc)、もしくは、亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−ZnPc)であることを特徴とする有機EL素子。
  5. 前記ホール注入層(30)及び前記ホール輸送層(40)は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜し、前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料と前記ホール輸送層(40)を構成する前記ホール注入輸送性材料の高い方のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記ホール注入層(30)に前記ドープ材料をドープしない場合よりも、前記陽極(20)と前記ホール注入層(30)との間のホール注入障壁を小さくし、かつ前記ホール注入層(30)のみに前記ドープ材料をドープした場合よりも、前記ホール注入層(30)と前記ホール輸送層(40)との間のホール注入障壁を小さくしたことを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子。
  6. 前記ホール注入層(30)及び前記ホール輸送層(40)は、電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない化合物であるドープ材料がドープされたものであって且つ真空蒸着によって成膜し、前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料と前記ホール輸送層(40)を構成する前記ホール注入輸送性材料の高い方のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記ホール注入層(30)にて、炭素と前記電子吸引性基の結合が増大していることが、XPSの測定により確認されることを特徴とする請求項4または5に記載の有機EL素子。
  7. 前記ホール輸送層(40)のうち前記ホール注入層(30)側に近い部位のみに前記ドープ材料がドープされていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の有機EL素子。
  8. 前記ホール注入層(30)の膜厚が60nm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機EL素子。
  9. 前記ドープ材料のドープ量が、前記ホール注入層(30)全体の30重量%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の有機EL素子。
  10. 基板(10)の上に、陽極(20)、前記陽極(20)の直上に電子吸引性基を有し大気に触れても変質しない材料よりなる介在層(90)、前記介在層(90)の直上にホール注入層(30)、さらに前記ホール注入層(30)の上部にホール輸送層(40)、発光層(50)、電子輸送層(60)、および陰極(80)が形成されてなり、
    前記介在層(90)及び前記ホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成するホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱するものであり、
    前記介在層(90)の前記電子吸引性基は、フッ素であり、
    前記介在層(90)を構成する材料は、フタロシアニン(Pc)骨格を有するものであることを特徴とする有機EL素子。
  11. 前記介在層(90)及び前記ホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記介在層(90)を設けない場合よりも、前記陽極(20)と前記ホール注入層(30)との間のホール注入障壁を小さくしたことを特徴とする請求項10に記載の有機EL素子。
  12. 前記介在層(90)及び前記ホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記ホール注入層(30)にて、炭素と前記介在層(90)の前記電子吸引性基との結合が増大していることが、XPSの測定により確認されることを特徴とする請求項10または11に記載の有機EL素子。
  13. 前記介在層(90)及び前記ホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することで、
    前記ホール注入層(30)と前記陽極(20)との界面において前記介在層(90)の前記電子吸引性基が拡散していることにより当該界面における組成変化の急峻さが減少していること、ならびに、当該電子吸引性基が前記ホール注入層(30)と前記ホール輸送層(40)との界面に偏析していることが、SIMS分析により確認されることを特徴とする請求項10または11に記載の有機EL素子。
  14. 前記介在層(90)を構成する材料は、銅1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−CuPc)であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載の有機EL素子。
  15. 前記介在層(90)を構成する材料は、亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(F−ZnPc)であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載の有機EL素子。
  16. 前記ホール注入層(30)、前記ホール輸送層(40)、前記発光層(50)および前記電子輸送層(60)を構成するホスト材料は、そのガラス転移温度が110℃以上のものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の有機EL素子。
  17. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法であって、
    前記ホール注入層(30)を構成する前記ドープ材料および前記ホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して膜を形成するとともに、
    この膜を、前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することにより、前記ホール注入層(30)を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  18. 請求項4〜6のいずれか1つに記載の有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法であって、
    前記ホール注入層(30)を構成する前記ドープ材料および前記ホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して第1の膜を形成し、この第1の膜の直上に、前記ホール輸送層(40)を構成する前記ドープ材料および前記ホール注入輸送性材料を真空下で共蒸着して第2の膜を形成するとともに、
    前記第1の膜および前記第2の膜を、前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料と前記ホール輸送層(40)を構成する前記ホール注入輸送性材料との高い方のガラス転移温度以上に加熱することにより、前記ホール注入層(30)および前記ホール輸送層(40)を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  19. 請求項10〜13のいずれか1つに記載の有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法であって、
    前記介在層(90)及び前記ホール注入層(30)を真空蒸着によって成膜し、かつ前記ホール注入層(30)を構成する前記ホール注入輸送性材料のガラス転移温度以上に加熱することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
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