抵抗測定器(テスタ)は、被測定回路の電圧(直流または交流)、電流(直流)、抵抗を測定可能である。用途に応じて交流電流を測定できる抵抗測定器も存在する。また、抵抗測定器では、その電気的な量、例えば電圧値の大きさに応じてレンジを変更し、その電圧値の大きさに見合った分解能で具体的な電圧値を把握することができる。
このような抵抗測定器は、例えば、保護継電器のテストターミナルに挿入するテストプラグの接続が正常であるかどうか、即ち、短絡すべき2点間が短絡しているか、絶縁すべき2点間が絶縁しているかを判断するために用いることができる。以下、抵抗測定器の被測定回路の一例としてテストプラグを挙げ、抵抗測定器による測定を簡単に説明する。
電力系統の電力量を間接的に計測して電力系統を保護する保護継電器には、計測に用いられる計器用変成器との接続を点検または補修するためにテストターミナルが設けられている。作業者は、このような保護継電器のテストターミナルに挿入するテストプラグの各接点を様々に接続することで、計器用変成器を電気的に切り離したり、計器用変成器に外部電源から電力を供給したり、また、接続線を露出させて線路電流や電圧を測定したりすることができる。
図14は、テストターミナルとテストプラグとのイメージを示した外観斜視図である。保護継電器10には、主回路と計器用変成器との接続を中継するテストターミナル12が設けられ、そのテストターミナル12には、テストプラグ14を案内する案内溝16が設けられている。テストプラグ14は、テストターミナル12の開口部18から案内溝16に沿って挿入され、主回路および計器用変成器からの配線をテストプラグ14前面に露出する。
図15は、テストプラグ14の挿入による回路切断を説明するための縦断面図である。図15(a)は挿入前、図15(b)は挿入後の主回路と計器用変成器との接続関係が示される。図15(a)において、計器用変成器が一次側端子20に、主回路が二次側端子22に接続され、一次側端子20と二次側端子22とは、導通部24と、弾性部26に付勢されて導通部24に接触する接触部28とを通じて接続されている。
そして、テストプラグ14を挿入すると、図15(b)に示すように、テストプラグ14の突出部30の両面に配された導電性の当接部32が、テストターミナル12の弾性部26の付勢に反して、それぞれ接触部28に押圧当接する。これにより、テストターミナル12内では導通部24と接触部28との導通が途絶え、計器用変成器が一次接点34に、主回路が二次接点36に露出する。
テストプラグ14は、このように主回路と計器用変成器とを電気的に切り離すのみではなく、テストプラグ14前面に露出した各接点を加工して、主回路および計器用変成器を様々に接続することができる。その接続方法の代表的な例として、各プラグ端子の接点を他の全ての接点に対して絶縁させる全接点開放、全プラグ端子の一次接点間のみ短絡させる一次接点全短絡、各プラグ端子の一次接点と二次接点とをそれぞれ短絡させる一次二次接点短絡がある。
全接点開放は、テストプラグ14に何ら治具を用いない。一次接点全短絡は、テストプラグ14の一次接点34を短絡バーで全て短絡し、残った二次接点に試験信号を供給する。また、一次二次接点短絡は、一次接点34と二次接点36とを短絡治具によって短絡し、主回路と計器用変成器との間の線路電流または電圧を計測する。かかる全接点開放は、主にPT回路で利用され、他の一次接点全短絡および一次二次接点短絡は主にCT回路で利用される。
図16は、上述した一次接点全短絡を説明するための説明図である。図16では、一次接点34同士を接続可能な棒状の短絡バー40が3本準備され、それぞれ一次接点34が連鎖接続されている。従って、プラグ端子38では2本の短絡バー40を挟持する箇所が生じる。かかる接続により一次接点34間は全て短絡し、二次接点36は他の接点と絶縁される。
図17は、上述した一次二次接点短絡を説明するための説明図である。図17では、全てのプラグ端子38の一次接点34と二次接点36とが短絡治具42でそれぞれ短絡されている。ただし、線路電流を測定すべき極に関してのみ短絡線44が用いられ、かかる短絡線44により形成された環に電流測定用のCTクランプ46を嵌入する。
このような短絡バー40等の治具は、テストプラグ14をテストターミナル12に挿入する前にテストプラグ14に装着される。しかし、かかる装着は人手を介すため、締め付けの緩みによる短絡バーの脱落等が生じることもある。また、経年による劣化等によってテストプラグ14自体に不良箇所が生じることもある。このような不良箇所により短絡されるべきところが絶縁していたり、絶縁されるべきところが短絡していたりすると、主回路で異常電圧や異常電流が発生することもある。このような事故を防止するため、作業者は、テストプラグ14自体の接続が正しいかどうかを抵抗測定器によって測定する。
図18は、抵抗測定器50を用いた導通試験を説明するための説明図である。テストプラグ14は、短絡バー40等の治具を装着後、テストターミナル12に挿入する直前に図18に示すように抵抗測定器50を用いて、その目的に合った接続になっているか確認される。これは、テストプラグ14の当接部32を、作業者が順次プローブ52で当たるといった手作業で行われる。ここで、試験の実行時をテストターミナル12挿入直前としているのは、事前の試験で「良」判定が出たとしてもそれからの経時や環境によって状態が変化する可能性があり、信頼性が低下するからである。
このようなテストプラグ14は、例えば変電所における1回の試験で30〜40個利用される場合がある。従って、上述した抵抗測定器50による導通および絶縁試験は、単純作業ではあるものの慣れた作業者が要領よく行われなければならない。しかし、如何に試験に熟練した作業者であっても手作業である限りその導通試験の信頼性は余り高いものではない。しかも、上述したように事前に試験作業を済ませておくこともできないので、作業者には膨大な作業負担がかかっていた。
そこで、電気信号測定装置を用いて、一種類のテストプラグ14に関するそれぞれの極の一次接点および二次接点間の開放や極間の短絡を自動的に確認することができる技術が開示されている(例えば、特許文献1)。このような電気信号測定装置においては、テストプラグ14を試験する前に、電気信号測定装置自体が正常に動作していること、例えば、測定部からテストプラグ14への電路が断線していないこと等を確認する必要がある。従来の電気信号測定装置では、このような電気信号測定装置自体の自己診断を次のように行っていると考えられる。
図19は、通常利用される自己診断試験を説明するための回路図である。かかる図19の回路図では、測定対象(ここではテストプラグ14の当接部32)に接続される接続点を測定端子A、Bで示している。測定端子AB間の導通または絶縁試験を確認する場合、図19(a)に示すように自己診断用リレー70をオフして、測定部72がそれぞれ測定端子AB間の抵抗値等を測定する。
また、自己診断試験を行う場合には、測定対象と測定端子A、Bとの接続を切断し、かつ、自己診断用リレー70をオンし、測定部72がその自己診断用リレー70を含む内部の閉回路の導通を確認する。このような閉回路の導通によって、測定端子A、Bへの内部回路に断線がないことを把握することができ、装置が正常であることを確認できる。
特開平10−019961号公報
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(電気信号測定装置)
図1は、本実施形態の電気信号測定装置の概略的な構成と、その動作を説明するための回路図である。上記電気信号測定装置は、測定部200と、開閉スイッチ202と、被測定回路に接続される測定端子A、Bとで構成される。
上記測定部200は、電気信号を入力するための2つの入力端子204a、204bを有し、2つの入力端子204a、204bの電気信号を測定する。
上記開閉スイッチ202a、202b、202c、202dは、2つの入力端子204a、204bと、2つの測定端子A、Bとを組み合わせる電路206a、206b、206c、206dにそれぞれ設けられ、その電路206a、206b、206c、206dをそれぞれ開閉する。ここでは、開閉スイッチ202a、202bの対および開閉スイッチ202c、202dの対は、連動して切り替わり、かつ互いに開閉が逆転し、リレーモジュールとしてのリレーQ2、Q3に含まれる。
このように、1つの入力端子204aまたは204bに2つの測定端子A、Bを、それぞれリレーQ2またはQ3を介して接続する構成により、被測定回路のいずれの測定点にも入力端子204a、204bを接続することができる。従って、測定部1つに対して、被測定回路に測定点が多数ある場合においてもその測定点のあらゆる組合せで試験を遂行することが可能となる。
また、電気信号測定装置では、上記の構成により自己診断試験を遂行することもできる。従来、図19を用いて説明したように、自己診断用のリレー70がAB間の試験中に誤動作してオンした場合、AB間を短絡してしまい損害を与えていた。本実施形態の電気信号測定装置では、上述したように測定端子と入力端子との接続を工夫することで、測定端子AB間の短絡を防止することができる。
図1を用いて、かかる回路の動作を説明すると、測定端子AB間の導通または絶縁試験を確認する場合、図1(a)に示すようにリレーQ2およびQ3をそれぞれ設定して、測定部200が測定端子AB間の抵抗値等を測定する。
自己診断試験を行う場合、本実施形態では、測定端子Aまでの内部回路および測定端子Bまでの内部回路をそれぞれ別に試験する。まず、測定端子Aまでの内部回路を確かめる場合、図1(b)に示すように、リレーQ2およびQ3の両リレーを測定端子A側に設定し、測定部200がそのリレーQ2およびQ3を含むA側の閉回路の導通を確認する。また、同様に測定端子Bまでの内部回路を確かめる場合、図1(c)に示すように、リレーQ2およびQ3の両リレーを測定端子B側に設定し、測定部200がそのリレーQ2およびQ3を含むB側の閉回路の導通を確認する。こうして測定端子A、Bへの内部回路全てに断線がないことを把握することができ、装置が正常であることを確認できる。
本実施形態では、リレーQ2およびQ3が測定端子A、Bに対してそれぞれ連動して切換が行われるため、リレーQ2およびQ3のどのような組合せにおいても測定端子AとBとが短絡することがない。従って、リレーQ2またはQ3が誤動作したとしても測定端子AB間が短絡することがないので、被測定回路が短絡により損害を被ることもなく、また、本来絶縁している被測定回路を短絡と判定することがなくなり、安全性や信頼性を向上することが可能となる。
上述した本実施形態の電気信号測定装置は、あらゆる被測定回路の測定装置に利用することが可能である。本実施形態の理解を容易にするため、以下に、当該電気信号測定装置を適用した装置の典型例として、CT(計器用変流器)またはPT(計器用変圧器)用テストプラグを試験するテストプラグ試験装置を説明する。しかし、本実施形態の電気信号測定装置が、かかるテストプラグ試験装置に限定されないことは言うまでもない。
ここでテストプラグ試験装置を挙げたのは以下の理由による。即ち、CTまたはPT用テストプラグは、複数種類の下、同時に利用されるテストプラグのプラグ端子の接続の組合せも多数に上る。また、テストプラグは、高電圧または大電流の電力系統に利用されるので、そのテストプラグを用いた電気的確認において誤配線や不良のあるテストプラグを挿入すると、電力系統の停止(停電)や作業者の感電を招く虞があり、テストプラグ挿入前の試験には、作業者に慎重かつ正確な対応が要求される。従って、人為的な不具合や電気信号測定装置自体の不良を回避するため、安全性および信頼性の高い本実施形態の電気信号測定装置を適用するのが望ましいからである。
(テストプラグ試験装置100)
電力系統の電力量を間接的に計測して電力系統を保護する保護継電器では、ターミナルにテストプラグを挿入することで主回路と計器用変成器との接続を点検または補修することができる。このようなテストプラグは信頼性が高くなくてはならない。従って、本実施形態の電気信号測定装置を適用したテストプラグ試験装置は、テストプラグを試験してその信頼性を高めることを目的とする。以下では、まず、テストプラグ試験装置の全体的な構成を述べ、その後で具体的な動作を説明する。
図2は、テストプラグ試験装置100の外観を示した斜視図である。テストプラグ試験装置100は、テストプラグの種類、テストプラグ上のプラグ端子の接続状態、および、テストプラグの極数に拘わらず試験を実行することができる。図2に示すように、このようなオールインワンの試験器を持ち運び可能な筐体102内にコンパクトに収納することで機動性に優れたテストプラグ試験を遂行することができる。
テストプラグ試験装置100の操作面(上面)には、作業者の操作に必要な複数のインターフェースが設けられている。本実施形態の電気信号測定装置を適用したテストプラグ試験装置100は、電源スイッチ104と、電源ランプ106と、テストプラグを挿入する挿入口110と、プラグ切換スイッチ112と、モード切換スイッチ120と、結果表示部122とを備えている。ここで、テストプラグ試験装置100内に設けられた制御部(図示せず)は、かかるインターフェースから操作信号を受けて、テストプラグ試験装置100に組み込まれた試験プログラムを実行し、最終的な試験結果を結果表示部122に表示する。
上記電源スイッチ104は、外部から受電したAC100V商用電源を例えば直流24Vに変更した電力を、内部回路に供給するか否かの選択を行う。電源スイッチ104が入っている間、即ち、内部回路への電力の供給がなされている間には、電源ランプ106が点灯する。
上記挿入口110は、テストプラグ試験装置100に複数設けられ、形状の異なる複数種類のテストプラグ(例えば、東芝製PTテストプラグや三和製CTテストプラグ)をそれぞれ挿入することができる。このように、電力系統の保守には、利用目的に応じて複数のメーカによる複数種類のテストプラグが用いられる。本実施形態では、このような複数種類のテストプラグに対応する複数の挿入口110を設け、テストプラグを排他的に選択することで、様々な種類のテストプラグを1つの装置で遂行することが可能となる。
また、このような挿入口110の内部には、図15で示したような保護継電器10のテストターミナル12の接触部と同機能の測定端子が設けられ、テストプラグ14の当接部32と接触するように構成される。しかし、保護継電器のテストターミナルでは、テストプラグ14が挿入されていないとき、弾性部26によって内部で接触部28同士が接続されているが、本実施形態の電気信号測定装置を適用したテストプラグ試験装置100の挿入口110では、テストプラグを挿入していないときには測定端子同士を接続させていない。
また、挿入口110内部には、テストプラグが挿入口の適切な位置まで挿入されていることを検知する挿入検知部150が設けられている。
図3は、挿入検知部150の構成例を示した縦断面図である。ここでは、挿入検知部150がフォトインタラプタで構成されている。挿入口110底側内面には挿入検知部150としての発光部152と受光部154とが長手方向に対向して設けられる。従って、テストプラグ14が完全に挿入されていないときには、図3(a)のように発光部152からの光が受光部154に届き、挿入検知部150は、テストプラグ14は挿入されていないと判断する。また、テストプラグ14が完全に挿入されると図3(b)のように発光部152からの光がテストプラグ14によって遮蔽されるので、挿入検知部150は、テストプラグ14の挿入を検知する。
そして、テストプラグ試験装置100の制御部は、挿入検知部150がテストプラグ14の挿入を検知しない間、テストプラグ14の電気的試験を開始しない。かかる構成により、テストプラグ14が完全に挿入されていない状態で試験が開始されるのを防止することができ、より安全かつ確実にテストプラグ14の試験を遂行することが可能となる。
図4は、挿入検知部150の他の構成例を示した縦断面図である。挿入検知部150は、テストプラグ14の当接部32による導通試験を行う。挿入口110には、テストプラグ14の当接部32に、弾性部162によって内向きに付勢される測定端子160が既に設けられている。ここで挿入検知部150として挿入端子164を新たに設け、測定端子160と挿入端子164とで導通があるか否かを確認する。
図4(a)のようにテストプラグ14が完全に挿入されていないときは、当接部32が測定端子160に届いていないので、測定端子160と挿入端子164とが導通せず、挿入検知部150は、テストプラグ14が挿入されていないと判断する。また、テストプラグ14が完全に挿入されると図4(b)のように当接部32が測定端子160と挿入端子164とを跨ぐので両者間が導通され、挿入検知部150はテストプラグ14の挿入を検知する。
ここで、テストプラグ14のプラグ端子38において一次接点34と二次接点36とが短絡されてさえいれば、挿入端子164なしに、当接部32が測定端子160に触れることのみで挿入を検知できるのだが、プラグ端子38の一次接点34と二次接点36とが開放していると測定端子160のみでは挿入を検知できない。従って、図4のように当接部32一面に対して測定端子と挿入端子とが必要となる。
ここでは、挿入検知部150としてフォトインタラプタを用いた方法や導通試験を行う方法を説明したが、かかる場合に限られず、例えば挿入口110の底面にプッシュスイッチを設け、そのプッシュスイッチが押下されていることをもって完全挿入とする等、様々な既知の方法を用いることもできる。
同様に、テストプラグ試験装置100は、挿入口110に挿入されたテストプラグ14の極数を検知する極数検知部をさらに備えてもよい。そして、テストプラグ試験装置100は、この極数検知部が検知した極数に基づいて電気的試験を遂行する。極数検知部は、例えば、上述した挿入検知部150のような構成を各極分準備し、挿入完了時に幾つ分の極の挿入が検知されたかによって極数を計数する。極数検知部の構成は、挿入検知部150と実質的に等しく作ることができるのでここでは図示を省略する。
このように、テストプラグ14は、挿入するテストターミナルの極数に合わせて、2,4,8またはそれ以上の極を有するものがある。本実施形態では、テストプラグ試験装置100の極数を、利用する最大極数にしておき、それよりも少ない極数のテストプラグ14が挿入された場合、その極数を自動的に判断して、その極数分の当接部32のみを対象に試験を遂行する。かかる構成により、様々な極数を有するテストプラグ14に対応でき、より汎用性を高めることができる。以下の説明では、理解を容易にするため主に4極のテストプラグ14を用いているが、当然にして2,8極やそれ以上の極にも対応可能である。
上記プラグ切換スイッチ112は、LED(Light Emitting Diode)を内蔵したプッシュスイッチで構成され、挿入口110に一対一に対応して設けられる。そして、作業者に試験を遂行するテストプラグ14を選択させる。
図5は、プラグ切換スイッチ112によるテストプラグ14の選択を説明するための説明図である。例えば、図5(a)のように、2種類のテストプラグ14a、14bがそれぞれの挿入口に挿入されている場合、作業者は試験を所望するテストプラグ14bのプラグ切換スイッチ112bを押下してテストプラグ14bを選択する。
当該テストプラグ試験装置100は、複数種類のテストプラグ14のうち、1つのみ試験するとしているので、プラグ切換スイッチ112a、112bによって排他的にテストプラグ14a、14bを選択させる。ここで排他的に選択とは、1つのテストプラグ14が選択された場合、他のテストプラグ14の選択を全てキャンセルすることである。従って、挿入口110が2つあった場合、一方のテストプラグ14bが選択されている状態で、他方のテストプラグ14aを選択すると、他方のテストプラグ14aのみに処理が移行し、一方のテストプラグ14bの選択がキャンセルされる。
また、プラグ切換スイッチ112bによってテストプラグ14bが選択されたことを作業者が把握できるように、プラグ切換スイッチ112が内蔵するLEDは、点灯によって選択されたことを報知する。例えば、図5(a)では、選択されたテストプラグ14bのプラグ切換スイッチ112bのLEDが点灯し、それによって、作業者は現在選択されているテストプラグを容易に把握することが可能となる。
また、挿入検知部150が挿入を検知すると、その挿入されたテストプラグ14が自動的に選択されるとしてもよい。例えば、図5(b)においては、一方の挿入口110にのみテストプラグ14aが挿入され、そのことを挿入検知部150が検知することで、プラグ切換スイッチ112aのLEDが自動的に点灯する。かかる構成により、テストプラグ14を挿入するだけでプラグ切換スイッチ112aを押下しなくても、または押下し忘れていても目的とするテストプラグ14aの試験を開始することが可能となる。
逆に、挿入検知部150が挿入を検知していないときは、上述したテストプラグ14の電気的試験を開始しない構成に加えて、そのテストプラグ14が選択されるのを禁止する。従って、テストプラグ14の挿入が不完全な状態でプラグ切換スイッチ112が押下されたとしても、テストプラグ14を選択することはできず、そのプラグ切換スイッチ112のLEDを点灯しないことで、作業者にテストプラグ14の挿入が不完全であることを示すことができる。例えば、図5(c)では、テストプラグ14aの挿入が浅いので、何れのプラグ切換スイッチ112aのLEDも点灯せず、作業者はテストプラグ14aを挿入口110のさらに奥に押圧しなければならないことを把握する。
かかる構成により、テストプラグ14が完全に挿入されていないまま、作業者がテストプラグ14の試験を開始したつもりになって無駄な時間を過ごしてしまうこともなくなり、より確実にテストプラグ14の試験を遂行することができる。
上記モード切換スイッチ120は、全接点開放試験、一次接点全短絡試験、一次二次接点短絡試験の中から試験モードを選択させる。上記全接点開放試験は、各プラグ端子の接点が他の全ての接点に対して絶縁されていることを確認し、一次接点全短絡試験は、全プラグ端子の一次接点間のみ短絡されていることを確認し、一次二次接点短絡試験は、各プラグ端子の一次接点と二次接点とが短絡されていることを確認する。このような試験モードは、排他的に遂行される。
図6は、モード切換スイッチ120の配置を示した配置図である。モード切換スイッチ120は、それぞれ全接点開放試験、一次接点全短絡試験、一次二次接点短絡試験に対応する全接点開放スイッチ170、一次接点全短絡スイッチ172、一次二次接点短絡スイッチ174と、試験開始スイッチ176、リセットスイッチ178とからなる。かかるモード切換スイッチ120は、プラグ切換スイッチ112同様、LEDを内蔵し、作業者は、かかるLEDの点灯状態によって選択されている試験モードを容易に把握することができる。ここでは、利用する可能性の高い複数の試験モードを網羅しているので、人手を介すことなく、迅速かつ確実に試験を遂行でき、高い信頼性および安全性を持ってテストプラグ14を利用することができる。かかる試験モードに関する詳細な動作については、後で述べる。
上記結果表示部122は、プラグ切換スイッチ112を通じて選択された試験対象を、モード切換スイッチ120を通じて選択された試験モードで試験した結果を表示する。本実施形態では、その結果を安価かつ容易に把握するため結果表示部122をLEDで構成している。しかし、表示方法はかかる場合に拘わらず、液晶表示器やEL(Electro Luminescence)表示器を利用して不良内容等の具体的な結果表示を多彩に行うことも可能である。
図7は、結果表示部122の具体的な配置を示した配置図である。かかる結果表示部122は、「試験中」180、「自己診断中」182、「プラグ取り外し」184、「装置異常」186、「プラグ良」188、「プラグ一次接点不良」190、「プラグ一次二次接点不良」192、「プラグ二次接点不良」194から構成されている。
「試験中」180は、テストプラグ14が試験されている間点灯し、「自己診断中」182は、後述する自己診断試験が行われている間点灯する。自己診断試験が開始されるにあたりテストプラグ14が挿入されたままであった場合、そのテストプラグ14の取り外しを促す「プラグ取り外し」184を点灯させる。また、自己診断試験においてテストプラグ試験装置100自体が異常であると判断された場合「装置異常」186を点灯させてその旨報知する。
テストプラグ14の試験においては、異常が発見されなかった場合に「プラグ良」188が点灯し、異常が発見された場合に、異常の報知と具体的な異常内容を合わせて示すため、「プラグ一次接点不良」190、「プラグ一次二次接点不良」192、「プラグ二次接点不良」194の1または2以上のLEDを点灯する。
上述したようなテストプラグ試験装置100によって、短時間で確実にテストプラグ14を試験することが可能となり、高い信頼性および安全性を持ってテストプラグを利用することができる。次に、各試験モードに関して詳述する。
(試験モード)
図8は、テストプラグ14の当接部32間を試験する具体的接続を示した回路図である。かかる図8に示した回路は、本実施形態による電気信号測定装置の回路を適用している。ここでは、テストプラグ14として形状の異なる2つのメーカ(メーカ1またはメーカ2)のテストプラグ14を対象とし、それぞれに対応して設けられた挿入口110に挿入して試験を行う。テストプラグ14が挿入口110に挿入されると、自動的にまたはプラグ切換スイッチ112を通じて意図的に選択されたテストプラグ14側にリレーQ1を切り換える。
そして、挿入されたテストプラグ14の一次接点側にあたる4本(黒、赤、白、緑)の当接部32はそれぞれ図8中の「一次(黒)」、「一次(赤)」、「一次(白)」、「一次(緑)」の測定端子に接続され、二次接点側にあたる4本(黒、赤、白、緑)の当接部32はそれぞれ図8中の「二次(黒)」、「二次(赤)」、「二次(白)」、「二次(緑)」の測定端子に接続される。
本実施形態の試験回路によると、リレーQ2およびQ3の切り換えによって、各当接部32をそれぞれ電源(+24V)側または接地(GND)側の何れにも接続できる。従って、あらゆる組み合わせで当接部32間の試験を遂行することが可能となる。例えば、一次(黒)と二次(赤)との抵抗値を試験する場合であって、電源側に一次(黒)を、接地側に二次(赤)を接続する場合、リレーQ2を一次側オンにリレーQ3を二次側オンにして、リレーQ4をオンすることで(黒)が選ばれ、リレーQ9をオンすることで(赤)が選択される。また、電源側に二次(赤)を、接地側に一次(黒)を接続する場合、上記リレーQ2およびQ3を反転すればよい。
また、リレーQ2およびQ3は、それぞれ一次接点側と二次接点側とが排他的に選択されるようになっているので、2つの当接部32が電源側または接地側からの電気系統に同時に接続されることはない。こうして、試験時の安全性も確保されている。
また、図8を参照するとリレーがQ1、Q2、Q3に纏められているので、リレーを切り換えるための制御線を激減することが可能であることを理解できる。こうして、少ない制御線で、多様かつ確実な接続を図ることが可能となる。
上記のように試験すべき2つの当接部32への接続を確立すると、その当接部32が正常に短絡しているか、または正常に開放(絶縁)しているかが試験される。
かかる短絡または絶縁試験は、2つの当接部32に+24Vの直流電圧源から電圧を印加し、この2つの当接部32間の電圧を測定することで実行される。また、かかる2つの当接部32間の電圧が第1所定電圧以下のとき当接部32間は短絡していると判断され、第2所定電圧以上のとき当接部32間は絶縁していると判断される。このように、図8の回路では、図9および図11で説明される短絡試験回路および絶縁試験回路を1つの回路で遂行している。ここで第1所定電圧および第2所定電圧は、短絡や絶縁とみなす抵抗値から逆算して決定される。第1所定電圧および第2所定電圧の具体的な数値は後述する。
図9は、2つの当接部32の短絡を測定する原理を説明するための回路図である。テストプラグ14の測定すべき2つの当接部32への接続が確立すると、リレーQ12が短絡試験側(R1側)に切り換わる。すると、テストプラグ14における2つの当接部32間の抵抗R0およびR1、R2により直流電圧源の電圧24Vが抵抗分割され、電圧計U1に電圧Vが生じる。抵抗R0には開放試験のためのR3や電圧計Uの内部抵抗Riが並列に接続されているが、(R0+R2)≪R3、RiなのでR3およびRiは無視することができる。ここでR2(2Ω)を挿入しているのは、閾値が0V付近になるのを避けるためである。そして、かかる電圧計U1の電圧値が第1所定電圧としての所定の閾値(0.59V)以上であるかどうかで短絡しているかどうかを判断する。
図10は、抵抗R0と閾値との関係を示した説明図である。かかる図を参照して理解できるように、当接部32間の抵抗R0が1Ωを超える場合、電圧計U1の電圧値が閾値(0.59V)を超え、結果表示部122では、不良に関するLEDが点灯する。
汎用品である抵抗測定器では、例えば端子間抵抗が100Ω程度であっても導通の表示がなされていた。当該テストプラグ14は、高電圧、大電流の電力系統に利用されるため、その抵抗値が100Ω以下であっても計器用変成器の動作電圧を変動させてしまう等の影響を与えてしまう。
例えば、内部抵抗が20Ω程度である計器用変成器への電力系統に、短絡抵抗10Ωのテストプラグを挿入すると、計器用変成器の動作点が上がり、本来反応すべき動作点に至ったとしてもエラー判断ができないといったことが起こりうる。本実施形態では、かかる導通の判断を抵抗R0が1Ω以下であることとし、電力系統に影響を及ぼすことのない、信頼性の高いテストプラグ14を利用する。
図11は、2つの当接部32の開放(絶縁)を測定する原理を説明するための回路図である。テストプラグ14の測定すべき2つの当接部32への接続が確立すると、リレーQ12が開放試験側(R4側)に切り換わる。すると、テストプラグ14における2つの当接部32間の抵抗R0と、R3と、電圧計U1の内部抵抗Riとの合成抵抗と、R4とにより、直流電圧源の電圧24Vが抵抗分割され電圧計U1に電圧Vが生じる。抵抗R0には抵抗R2が直列に接続されているが、R2≪R0なのでR2は無視することができる。ここでは、かかる電圧値が第2所定電圧としての所定の閾値(8.10V)に達しているかどうかで絶縁されているかどうかを判断する。
図12は、抵抗R0と閾値との関係を示した説明図である。本実施形態では、2MΩ以上の抵抗値を有する場合を絶縁としている。かかる図12を参照して理解できるように、当接部32間の抵抗R0が2MΩ以下である場合、電圧値が閾値(8.10V)に至らず、結果表示部122では、不良に関するLEDが点灯する。
また、上記では、閾値(0.590V、8.10V)との比較に電圧計U1を利用したがかかる場合に限らず、単純な比較のみであれば比較器(コンパレータ)等を用い、閾値に基づく基準電圧と比較して良否判断を行うこともできる。
次に、上述した2つの当接部32に対する短絡試験および絶縁試験を用いて遂行される3つの試験モード(全接点開放試験、一次接点全短絡試験、一次二次接点短絡試験)と、試験前に遂行される1つの自己診断試験を説明する。
(全接点開放試験)
全接点開放試験では、まず、一次接点側の当接部32を短絡し、同様に二次接点側の当接部32を短絡して、一次接点側と二次接点側との絶縁を確認する。かかる一度の試験で、一次接点側の当接部32と二次接点側の当接部32のあらゆる組み合わせの絶縁が確認される。次に、一次接点側および二次接点側のそれぞれの当接部32間で絶縁を試験する。このような試験のうち1つの項目でも条件を満たさないとテストプラグ14は不良と判断される。一次接点側および二次接点側ではそれぞれ4つの当接部32が存在するので、その短絡を漏れなく試験するにはそれぞれ6回の短絡試験処理を要する。従って、処理回数は合計13回となる。本実施形態の電気信号測定装置を適用したテストプラグ試験装置100では、1回の処理に0.06secしか要さないので、処理間でリレー切換処理があるにしても2sec以内には試験が完了する。人手を介して慎重に試験した場合、試験完了まで2secより数十倍の時間を要することは言うまでもない。
(一次接点全短絡試験)
一次接点全短絡試験では、まず、短絡されている一次接点側を1つの当接部32、例えば(黒)を中心にして(赤)、(白)、(緑)との導通を試験し(処理数3回)、二次側では、それぞれの当接部32間で絶縁を試験する(処理数6回)。また、一次接点側と二次接点側との絶縁は、一次側の任意の当接部32、例えば(黒)と、二次側の各当接部32それぞれと試験することで確認できる(処理数4回)。従って、処理回数は全接点開放試験同様合計13回となり、やはり、2sec以内には試験が完了する。
(一次二次接点短絡試験)
一次二次接点短絡試験では、まず、それぞれ短絡されている一次接点側当接部32と2次側当接部32との4つの組合せでそれぞれ短絡試験し(処理数4回)、続いて一次側当接部32間の全ての組合せで絶縁を試験する(処理数6回)。二次側間および一次側と二次側との絶縁は、一次側当接部32間の絶縁により網羅される。従って、処理回数は合計10回となり、2sec以内に試験が完了する。
(自己診断試験)
自己診断試験では、テストプラグ試験装置100が上述した全接点開放試験、一次接点全短絡試験、一次二次接点短絡試験を遂行する前に、テストプラグ試験装置100自体が正常動作していることを確認する。テストプラグ14の当接部32に当接する測定端子160からの内部配線が断線または短絡していた場合、テストプラグ試験装置100自体が正常に動作しない。
このようにテストプラグ試験装置100自体に問題が残っている場合、テストプラグ14が正常であってもテストプラグ試験装置100では「不良」が表示されたり、テストプラグ14に不良があるのに「良」と判断されたりする。特に後者の場合、テストプラグ14が不良の状態のまま保護継電器のテストターミナルに挿入されると、電力系統の停止(停電)や作業者の感電を招く虞がある。従って、テストプラグ14を試験する前、またはその途中で必ずテストプラグ試験装置100自体の自己診断試験が遂行される。
また、上述した自己診断試験では、閉回路の導通を試験しているが、テストプラグ14の試験同様、他の回路またはテストプラグ試験装置100の筐体102との絶縁を試験することも可能である。
さらに、上述した自己診断試験は、テストプラグ14の試験前の初期化制御として遂行されるが、かかる場合以外にも常時自己診断が行われる。例えば、電源等電圧値が一定の回路にA/Dコンバータを接続し、その電圧値が所定範囲に収まっていることを確認したり、テストプラグ試験装置100内で利用される各電子機器に設けられたエラー検出回路からの信号を利用したり、テストプラグ試験装置100内のプログラムリレー間の通信が正常に動作しているか監視したり、1回のテストプラグ試験に例えば6secといったタイムアウトを設け、処理が終了しないときに機能停止することができる。
(テストプラグ試験装置100の具体的な動作)
図13は、テストプラグ試験装置100の具体的な動作を示したフローチャートである。テストプラグ試験装置100の制御部は、まず、初期化処理として自己診断試験を遂行し(S300)、そして、診断結果が導出され(S302)、そのテストプラグ試験装置100が「良」と判断されると、試験待機状態に移行し、「不良」と判断された場合、安全のためテストプラグ試験装置100内のリレーが開放され(S304)、結果表示部122の「装置異常」のLEDが点灯する(S306)。作業者は、かかる「装置異常」のLEDにより装置自体の異常を把握でき、テストプラグ14の試験前に問題箇所を取り除く。
上記診断結果(S302)が「良」と判断された場合、作業者は、試験対象となるテストプラグ14をテストプラグ試験装置100に挿入し、挿入したテストプラグ14のプラグ切換スイッチ112内蔵のLEDが点灯していない場合、そのプラグ切換スイッチ112を押下してテストプラグ14を選択する(S310)。次に、作業者は、モード切換スイッチ120によって試験モードを選択する(S312)。
ここで、テストプラグ試験装置100は試験開始待ち状態となり(S314)、試験開始スイッチ176が押下されるまでループ処理を繰り返す。試験開始準備が整うと作業者は試験開始スイッチ176を押下し、かかる各試験モードに応じた試験が遂行される(S316)。
そして、試験結果が導出され(S318)、そのテストプラグ14が「良」と判断されると、結果表示部122の「プラグ良」のLEDが点灯する(S320)。また、「不良」と判断された場合、その試験モードに応じた内容の不良項目のLEDが点灯する(S322)。かかる「不良」判断を受けて作業者は短絡バー等の接続を再度確認し、再試験が必要と判断した場合、S310からの処理を繰り返し、そうでなければ不良品として処理する。
以上、説明したように本実施形態による電気信号測定装置を適用することによって、テストプラグ試験装置100は、測定端子160に接続されたリレーQ2、Q3が誤動作した場合においても、測定端子間を短絡させないで済み、テストプラグ14が損害を被ることもなく、また、本来絶縁しているテストプラグ14の当接部32を短絡していると判定することがなくなり、安全性や信頼性の向上を図ることができる。
加えて、上述したテストプラグ試験装置100によれば、様々な試験モードに対応可能な汎用性を備え、人手を介することなく、短時間で確実にテストプラグを試験することができる。従って、作業者は、信頼性や安全性に優れたテストプラグ14を用いることができ、安全に電力系統の保守作業を遂行することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態においては、図8に示すような回路に対して電圧計を1つ設ける構成を説明したが、かかる場合に限られず、電圧計を複数設けることもでき、その場合、全当接部のうち2つの当接部が試験されている間に、他の2つの当接部を試験することができるので、さらなる時間短縮を図ることが可能となる。