JP4926313B2 - 成形同時加飾品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンソールパネル、センタークラスター、スイッチベース等の自動車内装部品、塗装模様のサイドマットガード、バンパー、ホイルキャップやモール等の自動車外装部品等を加飾する工法である成形同時加飾品の製造方法とそれに用いる成形同時加飾シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の成形同時加飾品の製造方法としては、成形同時加飾シートを射出成形用金型内に入れる前に、前記シートを真空成形等により立体加工し、所望の形状に打ち抜き加工した後、射出成形用金型内の凹部等に嵌め込んで型締め後、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる方法がある。また、別の製造方法として、成形同時加飾シートを射出成形用金型内に入れてから、射出成形用金型の凹部に沿うように真空成形等により立体加工し、型締め後、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
複数のシートを積層した成形同時加飾シートの場合、真空成形等により立体加工した後に成形同時加飾シート全体に反りが発生してしまい、立体加工型から成形同時加飾シートを脱型することが困難となり、次工程である射出成形用金型内に入れる工程に円滑に移行できない。また、射出成形用金型にセットするときに、射出成形用金型からズレ落ちたり、セットできたとしても成形樹脂が成形同時加飾シートの裏側に裏周りするという問題があった。成形同時加飾シートに反りが入ることにより、射出成形用金型からズレ落ちたり、成形樹脂が裏周りしたりする等の問題は、成形同時加飾シートを射出成形用金型内に入れてから、射出成形用金型の凹部に沿うように真空成形等により立体加工する方法の場合でも同様に発生する問題である。
以上のような課題を解決するために、立体成形後に反りが発生せず、脱型が容易で、射出成形金型からズレ落ちず、成形樹脂が裏周りすることがなく、また、シート間剥離することがない成形同時加飾シートと、そのシートを用いた成形同時加飾品の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明は、アクリル系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層された成形同時加飾シートを射出成形用金型内にセットし、ポリプロピレン系樹脂を射出し、ポリプロピレン系樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる成形同時加飾品の製造方法であって、成形同時加飾シートの各シート間の収縮率の差が最大8/1000であり、成形同時加飾シートは、収縮率が5/1000〜12/1000であり、射出成形用金型内にセットされる前に、立体加工と打抜き加工とがされ、ポリプロピレン系樹脂は、固化後の収縮率が5/1000〜12/1000である。
【0007】
また、成形同時加飾シートとして、アクリル系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層されたものを使用し、成形樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を使用してもよい。
【0008】
また、ポリプロピレン系樹脂シート中に充填剤あるいはゴム系樹脂を混入した成形同時加飾シートを使用してもよい。
【0009】
また、成形樹脂であるポリプロピレン系樹脂中に充填剤あるいはゴム系樹脂を混入してもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明についてさらに詳しく説明する。
この発明の成形同時加飾品の製造方法は、複数のシートが積層された成形同時加飾シートを射出成形用金型内にセットし、成形樹脂を射出し、成形樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる成形同時加飾品の製造方法において、成形同時加飾シートの各シート間の収縮率の差が最大8/1000であることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の製造方法に適用するこの発明の成形同時加飾シートを説明する。
この発明の成形同時加飾シートは、複数のシートが積層された成形同時加飾シート4であって、成形同時加飾シートの各シート間の収縮率の差が最大8/1000のものである。
射出成形用金型内にセットする前に成形同時加飾シート4を立体加工と打ち抜き加工とをする場合は、特に、成形同時加飾シート4は、成形同時加飾シート4を構成する複数のシート間の収縮率の差が最大8/1000であり、かつ、収縮率が0/1000〜12/1000であるのが好ましい。こうすると、収縮が小さいため、射出成形用金型内にもセットしやすくなる。さらに、成形同時加飾シート4の変形を計算にいれた金型製作をする手間が少なくなるため効果的である。
【0016】
成形同時加飾シート4において積層されているシート1の材質としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、非結晶性ポリエステル系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂などがある。その中でも、アクリル系樹脂シートは耐光性、透明性等の物性を兼ね備えており最表面に位置するシート材として非常に好ましいものである。この発明の成形同時加飾シート4における組合せとして好ましいものは、アクリル系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層されたものである。その理由は、(1)ポリプロピレン系樹脂シートは比重が低く、しかも振動防止効果もある。(2)成形樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いた場合、成形同時加飾シート4との接着力がよくなるからである。この場合、ポリプロピレン系樹脂シート中に充填剤あるいはゴム系樹脂を混入したものが好ましい。その理由は、ポリプロピレン系樹脂シートの収縮率を低くしてアクリル系樹脂シートとの収縮率の差を小さくすることが可能となるため効果的であるからである。
【0017】
成形同時加飾シート4全体の厚みとしては、0.03〜2.00mmのものが好ましい。0.03mm未満であれば、立体形状にフィルムが追随しきれずに破断するおそれがある。2.00mmより厚ければ細かい溝部に追随できないため、製品端面の絞り自体が浅くなる。
【0018】
各シートの製造方法は、成形樹脂を直線状のスリットから押出すいわゆる押出しTダイ法、樹脂を熱ロールにより延伸するいわゆるカレンダ加工法、液状樹脂を型内に流し込み固化させるいわゆる注型(キャスト)法等で製造される。
【0019】
シートの積層方法としては、シートに有機溶剤性の接着剤を塗り熱風で溶剤を蒸発乾燥させ接着させるいわゆるドライラミネート法、シートに固形状の接着剤を120〜160℃の熱で溶かして塗り印刷フィルムを貼り合せ瞬間冷却して一体化させるいわゆるホットメルトラミネート法、押出し機から成形樹脂をフィルム状に押出し印刷フィルムを貼り合せるいわゆる押出しラミネート法、および貼り合せるフィルムまたはシートの一方または両方に加熱ロールで圧着させるいわゆる熱ラミネート法などがある。
【0020】
なお、成形同時加飾シート4は、必要に応じて絵柄層2や接着層3を有する印刷層を設けても良い。印刷層の形成方法は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法や、ロールコート法、スプレーコート法等のコート法等により形成するとよい。絵柄層2は、複数のシートが積層されたシート1の表面の全面または部分に印刷によって形成される印刷層で、成形品の表面に文字や図形、記号等を表したり、着色表面を表したりする等のためのものである。絵柄層は顔料と樹脂バインダーからなる顔料インキ層、パール顔料と樹脂バインダーからなる光輝性顔料層、染料と樹脂バインダーからなる染料インキ層の群から選ばれる少なくとも一層によって構成される。なお、絵柄層2は、蒸着膜からなる金属蒸着によって形成することも可能である。接着層3は、成形同時加飾シート4を構成する各シート間の層間接着性を向上させたり、成形樹脂との接着を向上させるための印刷層である。接着層はポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等がある。
【0021】
この発明の成形同時加飾品の製造方法を説明する。
【0022】
この発明の成形同時加飾品の製造方法は、複数のシートが積層された成形同時加飾シート4を射出成形用金型内にセットし、成形樹脂を射出し、成形樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に成形同時加飾シート4を一体化接着させる方法において、成形同時加飾シート4の各シート間の収縮率の差が最大8/1000であるものを用いるものである。
【0023】
まず、複数のシートが積層された成形同時加飾シート4を射出成形用金型内にセットする(図1参照)。
金型内へのセットの仕方の具体例としては、ロール軸に長尺の成形同時加飾シート4を一旦巻き取ってロール状巻物とし、このロール状巻物を射出成形用金型の上部に載置し、ロール状巻物から成形同時加飾シート4を巻き出しながら、金型内を通過させ、射出成形用金型の下部に設置したフィルム巻き取り手段のロール軸により成形同時加飾シート4を巻き取るようにしてもよい。別の例としては、枚葉の成形同時加飾シート4を用いて、ロボットや人手により金型内に入れてもよい。成形同時加飾シート4を金型内に入れた後に真空成形等する場合は、金型に対する成形同時加飾シート4の位置を決定した後、真空成形する前に成形同時加飾シート4を射出成形用金型の表面にクランプ部材によって押さえ付けるとよい。
【0024】
この発明では、複数のシートが積層された成形同時加飾シート4として、収縮率が0/1000〜12/1000のものを使用し、かつ、射出成形用金型内にセットする前に、立体加工と打ち抜き加工とをするのが好ましい。
つまり、成形同時加飾シート4を射出成形用金型内に入れる前に、射出成形用金型とは別の型を用いて成形同時加飾シート4を真空成形等により三次元形状に立体加工し、所望の形状に打ち抜き加工しておくのである。所望の形状としては、射出成形用金型のキャビティ形成面7に合致する形状等がある。三次元形状に立体加工する方法としては、真空成形法や圧空成形法、熱せられたゴムを押しつける押圧成形法、プレス成形法等がある。ここで、真空成形法とは、成形同時加飾シート4をその軟化点以上に加熱して軟化させ、真空成形金型の凹部と成形同時加飾シート4との間の空間を密閉して真空吸引し、真空成形金型の凹部内面に成形同時加飾シート4を接着させ、射出成形用金型の可動型5のキャビティ形成面7に合致した三次元形状に成形同時加飾シート4を成形する方法である。所望の形状に打ち抜き加工する方法としては、トムソン打ち抜き法、金型によるプレス法等がある。打ち抜き形状としては、成形同時加飾シート4の外周の場合や、所定形状の孔等がある。なお、前記三次元形状に加工する際に同時に打ち抜き加工をしてもよい。
【0025】
成形同時加飾シート4を射出成形用金型内に入れた後に、射出成形用金型を用いて成形同時加飾シート4を真空成形により射出成形用金型の可動型5の凹部に沿うように三次元形状に立体加工してもよい。具体例としては、成形同時加飾シート4を可動型5の表面にクランプ部材によって押さえ付け、金型内に挿入した加熱板等で成形同時加飾シート4をその軟化点以上に加熱して軟化させ、射出成形用金型の凹部と成形同時加飾シート4との間の空間を密閉して真空吸引孔から排気して真空吸引し、射出成形用金型の可動型5の凹部内面に成形同時加飾シート4を接着させる方法である。クランプ部材で成形同時加飾シート4を押さえ付けて固定する際、あるいは三次元形状に立体加工する際に、成形同時加飾シート4の不要部分の打ち抜き加工をしてもよい。
射出成形用金型は、成形樹脂を射出するゲート部9を有する固定型6と可動型5等からなり、固定型6と可動型5とが型閉めされることによって、固定型および可動型5のキャビティ形成面7によって囲まれた単数あるいは複数のキャビティが形成されるものがある。射出成形用金型の金型内部に入れられた成形同時加飾シート4は、キャビティ形成面7を覆うことになる。キャビティは樹脂成形品に孔部を形成するものであってもよい。キャビティを形成する凹部は固定型6あるいは可動型5のいずれに形成されていてもよい。金型は、可動型5の凹部の周囲で成形同時加飾シート4を押さえ付けて固定するクランプ部材を有してもよい(図1〜3参照)。クランプ部材は固定型6あるいは可動型5に設置されてもよい。
【0026】
次に、型閉めして溶融状態の成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に成形同時加飾シート4を一体化接着させる(図2参照)。
その後、成形樹脂表面に一体化接着した成形同時加飾シート4のうち不要な部分を除去してもよい。
【0027】
成形樹脂としては、固化後の収縮率が0/1000〜12/1000のものを使用するとよい。この場合は、成形品において、部分的に肉厚が厚くなっている箇所(たとえばボス部等)でヒケ等の成形不良が生じる問題が解決できるので効果的である。成形同時加飾シート4の収縮率(0/1000〜12/1000)との差が小さくなるからである。
ここでいう固化後の収縮率とは、シートを加熱手段により軟化温度以上に加熱し立体加工し冷却固化したのち24時間以内におこるシートの収縮の割合であり、より詳しくはJIS規格6911に従って作成した試験片を用いて、次式によって算出される値である。
収縮率=(1/n)×((D1−d1)/D1+(D2−d2)/D2………+(Dn−dn)/Dn)
なお、d1〜dnはシート表面の最大内径を示す。D1〜Dnは前記d1〜dnに対応する立体加工型の凸部の最大外径を示す。
【0028】
成形同時加飾シート4として、アクリル系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層されたものを使用した場合は、成形樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を使用するのが特に好ましい。成形同時加飾シート4と成形樹脂の材質が同系統となり接着力が向上するためである。成形同時加飾シート4のポリプロピレン系樹脂シート中に充填剤あるいはゴム系樹脂を混入してもよい。成形樹脂であるポリプロピレン系樹脂中には、充填剤あるいはゴム系樹脂を混入してもよい。
【0029】
充填材を成形樹脂に混入する目的は、成形樹脂の前記収縮率を低下させ、ポリプロピレン系樹脂からなる成形樹脂の収縮率と成形同時加飾シート4の前記収縮率との差を小さくするためである。
【0030】
充填材の具体例としては、タルク(滑石)、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維等がある。充填材を混入する場合の具体例としては、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、タルクを10〜30重量%混入する場合がある。この場合は、タルクを混入しないポリプロピレン樹脂の前記収縮率が16/1000であったのが、タルクを混入すると前記収縮率は8〜12/1000程度に下がる。なお、ポリプロピレン成形樹脂への充填材の混入率が大きい程、ポリプロピレン成形樹脂の前記収縮率は小さくなる。ポリプロピレン成形樹脂への充填材の混入率は40重量%以下が好ましい。40重量%を越えるとポリプロピレン成形樹脂と絵柄層あるいは接着層との接着力が小さくなり剥がれやすくなるからである。
【0031】
ゴム系樹脂をポリプロピレン成形樹脂に混入する目的は、ポリプロピレン成形樹脂に接する前記印刷層(絵柄層2または接着層3)の樹脂成分がポリプロピレン樹脂を変性した塩素化ポリプロピレン系樹脂である場合において、そのような印刷層とポリプロピレン成形樹脂との接着力を大きくするためである。なお、ゴム系樹脂を混入しないポリプロピレン成形樹脂に比べて、ゴム系樹脂を混入したポリプロピレン成形樹脂では樹脂成形品の柔軟性を比較的保持しやすいので、成形同時加飾シート4との接着力も比較的大きくなるので効果的である。
【0032】
ゴム系樹脂の具体例としては、エチレン樹脂とプロピレン樹脂よりなるエチレンプロピレンゴム(EPM)、前記EPMにジエンを架橋したエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、オレフィン系又はスチレン系の熱可塑性エラストマー樹脂(TPE)等がある。ゴム系樹脂を混入する場合の具体例としては、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ゴム系樹脂を0.5〜50重量%混入する場合がある。ゴム系樹脂としては、オレフィン系またはスチレン系の熱可塑性エラストマー等がある。
【0033】
成形樹脂としてのポリプロピレン系樹脂自身も、好ましくは、ポリエチレン樹脂等の混入されたブロック共重合ポリプロピレン系樹脂あるいはランダム共重合ポリプロピレン系樹脂のほうがよい。
【0034】
【実施例】
実施例1
以下の条件で、木目調の自動車スイッチパネルを製造した。
収縮率が5/1000で厚さ50μmのアクリル系樹脂シート上にグラビア印刷で第一絵柄層として黒色顔料(カーボンブラック)入りアクリル系樹脂インキを用いた木目導管柄層を形成し、その上に接着層としてビニル樹脂系インキを用いた印刷層を形成し、予め熱硬化性ウレタン系樹脂インキが塗工された収縮率が8/1000で厚さ0.5mmのポリプロピレン系樹脂シートと前記アクリル系樹脂シートとを熱ラミネートし、アクリル系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層された成形同時加飾シートを形成した。この成形同時加飾シート全体としての収縮率は、3/1000であった。この成形同時加飾シートを真空成形で立体形状に立体加工し、所望の形状に打ち抜き加工した後射出成形用の金型に入れた。このとき、成形同時加飾シートには反りはほとんど見られず、成形同時加飾シートを構成する各シート間で剥離することもなく、脱型が容易で射出成形金型よりズレ落ちることもなかった。次に、射出成形用の金型内に収縮率が5/1000のポリプロピレン系成形樹脂をキャビティに射出し、ポリプロピレン系成形樹脂を固化した樹脂成形品にアクリル系樹脂シート、ポリプロピレン系樹脂シート、ポリプロピレン系成形樹脂をこの順で一体化接着させ、木目調の自動車スイッチパネルを得た。この場合のポリプロピレン系樹脂シートは、充填剤15重量%、ゴム系樹脂35重量%をそれぞれ含有したオレンジ色のものを用い、ポリプロピレン系成形樹脂は充填剤30重量%およびオレフィン系熱可塑性エラストマー1重量%をそれぞれ含有した茶色のものを用いた。このとき、成形樹脂が成形同時加飾シートの裏側へ裏周りすることはなかった。
【0035】
実施例2
以下の条件で、クロム色の自動車コンソールパネルを製造した。
収縮率が7/1000で厚さ50μmのフッ素系樹脂シート上に、グラビア印刷で第一絵柄層として熱硬化性ウレタン系樹脂層を形成し、その上に厚み300Åのクロム蒸着層からなる金属蒸着層を形成しその上に第二絵柄層としてビニル樹脂系インキを用いた層を形成し、その上に塩素化ポリプロピレン系樹脂(塩素化度10重量%)の接着層を形成し、収縮率が8/1000で厚さ0.5mmのポリプロピレン系樹脂シートと前記フッ素系樹脂シートとを熱ラミネートし、フッ素系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層した成形同時加飾シートを形成した。この成形同時加飾シート全体としての収縮率は、1/1000であった。以上のようにして得られた成形同時加飾シートを真空成形で立体形状に加工し、所望の形状に打ち抜いた。このとき、成形同時加飾シートには反りはほとんど見られず、成形同時加飾シートを構成する各シート間で剥離することもなく、脱型が容易で射出成形金型よりズレ落ちることもなかった。次に、射出成形用の金型に入れ、収縮率が7/1000のポリプロピレン系成形樹脂をキャビティに射出し、ポリプロピレン系成形樹脂を固化した樹脂成形品にフッ素系樹脂シート、ポリプロピレン系樹脂シート、ポリプロピレン系成形樹脂をこの順で一体化接着させ、クロム色の自動車コンソールパネルを得た。この場合のポリプロピレン系樹脂シートは、充填剤15重量%、ゴム系樹脂35重量%をそれぞれ含有したオレンジ色のものを用い、ポリプロピレン系成形樹脂は充填剤20重量%およびエチレンプロピレンジエンゴム10重量%をそれぞれ含有した黒色のものを用いた。このとき、成形樹脂が成形同時加飾シートの裏側へ裏周りすることはなかった。
【0036】
【発明の効果】
この発明は、以上のような構成を採るので、以下のような効果を奏する。
つまり、複数のシートが積層された成形同時加飾シートを射出成形用金型内にセットし、成形樹脂を射出し、成形樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる成形同時加飾品の製造方法において、成形同時加飾シートを構成する各シート間の収縮率の差を最大8/1000にすることによって、成形同時加飾シートの立体成形後に反りが発生することがないため、脱型が容易で射出成形金型よりズレ落ちず、成形樹脂が裏周りすることがない。また、成形同時加飾シートを構成する各シート間で剥離することもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の成形同時加飾品の製造方法の工程の一つを示す断面図である。
【図2】この発明の成形同時加飾品の製造方法の工程の一つを示す断面図である。
【図3】この発明の成形同時加飾品の製造方法によって得られる成形同時加飾品を示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層されているシート
2 絵柄層
3 接着層
4 成形同時加飾シート
5 可動型
6 固定型
7 キャビティ形成面
9 ゲート部
Claims (3)
- アクリル系樹脂シートとポリプロピレン系樹脂シートとが積層された成形同時加飾シートを射出成形用金型内にセットし、ポリプロピレン系樹脂を射出し、ポリプロピレン系樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる成形同時加飾品の製造方法であって、
成形同時加飾シートの各シート間の収縮率の差が最大8/1000であり、
成形同時加飾シートは、収縮率が5/1000〜12/1000であり、射出成形用金型内にセットされる前に、立体加工と打抜き加工とがされ、
ポリプロピレン系樹脂は、固化後の収縮率が5/1000〜12/1000である、成形同時加飾品の製造方法。 - ポリプロピレン系樹脂シートに充填剤又はゴム系樹脂が混入された、請求項1記載の成形同時加飾品の製造方法。
- 成形樹脂のポリプロピレン系樹脂に充填剤又はゴム系樹脂が混入された、請求項1又は請求項2記載の成形同時加飾品の製造方法。
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