この発明に係る被粘着物離脱用ローラによって、粘着保持した被粘着物が離脱される保持治具は、特に限定されず、例えば、図2に示される保持治具50が挙げられる。この保持治具50は、治具本体51と、治具本体51の表面に形成されて成る弾性部材52とを有し、その弾性部材52の表面に弾性部材52の粘着力で被粘着物を保持することができる。
前記治具本体51は、後述する弾性部材3を保持又は支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、治具本体51は、図2に示されるように、120mm×120mm×0.5mm(厚さ)の寸法を有する方形の盤状体に形成される。弾性部材52は、所望の厚さを有していればよいが、均一な厚さを有しているのがよい。治具本体51は、弾性部材52を保持又は支持可能な材料で形成されればよく、このような材料として、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド及びポリカーボネート等の樹脂等が挙げられる。
前記弾性部材52は、多数の被粘着物を粘着により保持することができるように設計され、例えば、図2に示されるように、前記治具本体51の表面に、110mm×110mm×1.5mm(厚さ)の寸法を有する方形の盤状体に成形されている。弾性部材52は、0.05〜2mm程度の厚さを有するのが好ましい。
この弾性部材52は、被粘着物を粘着保持することのできる粘着力を有している。具体的には、弾性部材52は、通常、1〜50g/mm2の粘着力を有しているのがよく、7〜50g/mm2の粘着力を有しているのがよい。弾性部材52の粘着力は、以下のようにして求める。まず、弾性部材52を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。次いで、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に弾性部材52を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で弾性部材52の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を25g/mm2に設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を弾性部材52の粘着力とする。なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAL MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
弾性部材52は、弾性部材に前記粘着力を付与することのできる粘着性材料、又は、この粘着性材料の硬化物で形成されていればよく、粘着材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、シリコーンゴム、及び/又は、シリコーンゴムを含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物が好ましい。特に、特開2007−103757号公報(段落0024欄〜段落0055欄)に記載された、「シリコーン生ゴムからなる(a)成分と、架橋成分からなる(b)成分と、粘着成分からなる(c)成分と、白金化合物からなる(d)成分と、シリカからなる(e)成分とを含有する粘着性組成物」で弾性部材52が形成されていると、弾性部材52がこの公報に記載された粘着特性を有する。
保持治具50は、治具本体51の表面に弾性部材52が前記粘着性材料で形成されて、製造さればよく、例えば、治具本体51の表面に前記粘着性材料を塗工し、治具本体51と弾性部材52とを一体成形して、製造されてもよく、また、前記粘着性材料を成形してシート状成形体を作製し、このシート状成形体を治具本体51の表面に貼り付けて、製造されてもよい。
この保持治具50に粘着保持され、被粘着物離脱用ローラ1によって保持治具50から離脱される被粘着物は、その取扱時等に、保持治具に粘着保持される必要性のある小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、被粘着物は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。このような被粘着物として、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ、FPC、ウエハー等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
この発明に係る被粘着物離脱用ローラの一実施例である被粘着物離脱用ローラ1を、図を参照して、説明する。図1に示されるように、被粘着物離脱用ローラ1は、軸体2(図1(a)において図示しない。)と、軸体2の外周面に設けられた管状弾性部材3とを備えて成る。この被粘着物離脱用ローラ1は、例えば図2に示される保持治具50に粘着保持された被粘着物を、この保持治具50から容易に離脱させることができる。
被粘着物離脱用ローラ1の軸体2は、後述する管状弾性部材3を保持又は支持する。軸体2は、管状弾性部材3を保持又は支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、軸体2は、図1(b)に示されるように、軸線方向に垂直な断面が円形の芯金として形成されてもよく、同断面が楕円形の芯金として形成されていてもよい。軸体2は、中実体であってもよいが、後述する加熱手段及び/又は冷却手段等を内蔵することができる点で、中空体であるのがよい。軸体2の寸法は、保持治具50及び被粘着物等に応じて適宜調整される。
軸体2は、管状弾性部材3を形成する面に、管状弾性部材3との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理及び/又はプラズマ処理等が施されるのが好ましい。軸体2は、管状弾性部材3を保持又は支持可能な材料で形成されればよく、このような材料として、例えば、前記治具本体51と同様の材料を挙げることができる。
軸体2は、その両端面に、軸線を共有する支持軸4が形成されている。支持軸4は、軸体2よりも細い径を有し、後述する軸受け5に、被粘着物離脱用ローラ1が回転自在に、軸支される。支持軸4は、軸体2と一体に形成されていても、別体に形成されていてもよい。
管状弾性部材3は、その最大外径と最小外径との差(以下、外径差と称することがある。)が粘着保持される前記被粘着物の高さ(粘着保持される状態における被粘着物の高さ)以下である。被粘着物離脱用ローラ1を用いて保持治具50に粘着保持されている被粘着物を保持治具50から取り外す際に、被粘着物離脱用ローラ1における軸方向の外径差によって保持治具50の弾性部材52から被粘着物離脱用ローラ1に移転される被粘着物数にバラツキが生じることがある。この発明は、「前記外径差を前記被粘着物の高さ以下に調整すること」によって、このような被粘着物数のバラツキ度を低減して、保持治具50に粘着保持されている複数の被粘着物を被粘着物離脱用ローラに一挙に移転させることを、特徴の1つとする。
すなわち、前記外径差が前記高さ以下であれば、前記保持治具50に粘着保持されている複数の被粘着物における自由端面上を被粘着物離脱用ローラ1が回転することによって、管状弾性部材3の前記外径差が管状弾性部材の弾性で効果的に吸収され、前記複数の被粘着物における自由端面に管状弾性部材3の外周面が均一に接触する。したがって、複数の被粘着物の大部分を保持治具から管状弾性部材に移転させて、保持治具から取り外すことができる。そして、前記外径差が前記高さ以下であると、前記保持治具に粘着保持された被粘着物を離脱させる際に、被粘着物離脱用ローラ1の軸線方向に配列されて、保持治具の弾性部材に粘着保持されている大部分の被粘着物を、転倒又は再粘着させることなく、被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3の軸線方向に均一に粘着保持させ替えることができる。また、前記外径差が前記高さ以下であると、被粘着物が微小化され、及び/又は、保持治具が高精度化(例えば、その弾性部材が高平坦化)されても、所望のように、保持治具の弾性部材に粘着保持されている被粘着物を離脱させることができる。換言すると、前記外径差が前記高さを超えると、保持治具50に粘着保持されている複数の被粘着物における自由端面に管状弾性部材3の外周面が均一に接触しなくなり、保持治具50から複数の被粘着物を一挙に取り外すことができなくなることがある。また、前記外径差が前記高さを超えると、保持治具50における弾性部材52の表面と被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3の表面とが接触し易くなるため、前記保持治具50に粘着保持された被粘着物を離脱させにくくなる。
この発明において、被粘着物が微小化され、及び/又は、保持治具が高精度化されても、管状弾性部材3の軸線方向により一層均一に粘着保持させ替えることができる点で、管状弾性部材3における外径差は、前記被粘着物の高さの1/2以下であるのが好ましく、前記被粘着物の高さの1/3以下であるのが好ましい。ここで、被粘着物離脱用ローラ1の外径は、レーザー測長機を用いて、測定することができる。外径の最大外径と最小外径とは、管状弾性部材3における複数の測定点(例えば、少なくとも、管状弾性部材3の軸線方向における中央部及び両端部近傍)における外径を前記レーザー測長機を用いて測定し、測定された外径のうち、最大外径(rmax)と最小外径(rmin)とを選択する。そして、前記被粘着物の高さに対する外径差は、選択された最大外径(rmax)と最小外径(rmin)との外径差(rmax−rmin)として算出される。
被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3は、その表面に被粘着物を粘着保持することのできる粘着力を有している。この粘着力は、好ましくは、保持治具50の弾性部材52に粘着保持されている多数の被粘着物を取り外し、かつ、これらの被粘着物を粘着保持することのできる程度の粘着力である。特に、管状弾性部材3は、弾性部材52から被粘着物を取り外す際に、前記測定方法による粘着力が例えば30〜75g/mm2の範囲内であって、かつ、弾性部材52の粘着力より大きな粘着力を発揮することができるのが好ましい。
被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3は、多数の被粘着物を粘着により保持することができるように設計され、例えば、粘着性材料で軸体2の外周面に形成される。したがって、管状弾性部材3は、後述する粘着特性を持つ円周表面を有する管状(筒状)を成し、その壁は通常中実体とされる。
粘着力を有する管状弾性部材3としては、各種の公知の粘着性材料又はその硬化物から適宜に選択されることができる。このような粘着性材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、前記温度範囲における耐熱性を有するシリコーンゴム、及び/又は、シリコーンゴムを含有する粘着性シリコーン組成物、例えば、前記「粘着性組成物」が好ましい。
管状弾性部材3は、保持治具50から離脱させる被粘着物に応じてその厚さ(内径と外径との差)が適宜調整される。管状弾性部材3の厚さは、通常、0.3〜3.0mm程度に調整されるのがよく、0.5〜1.0mmに調整されるのが特によい。
管状弾性部材3における円周方向の長さは、保持治具50及び被粘着物等に応じて適宜調整されるが、保持治具50の弾性部材52における被粘着物離脱用ローラ1の回転方向長さL(図5参照)と同じ長さ、又は、前記回転方向長さよりも大きくなるように、直径が調整される。管状弾性部材3の直径がこのように調整されると、被粘着物離脱用ローラ1を1回転又は1回未満回転させることによって、弾性部材52に粘着保持された被粘着物を管状弾性部材3に移転させ、保持治具50から離脱させることができる。管状弾性部材3は、前記したように、被粘着物離脱用ローラ1の最大外径と最小外径との差が前記被粘着物の高さ以下になるように、円周方向の長さがその軸線方向において一定であるのが好ましく、換言すると、均一な外径を有しているのが好ましい。
管状弾性部材3は、平坦な円周表面を有しているのがよいが、被粘着物は管状弾性部材3に粘着保持された状態で加工処理等されることはないから、その円周表面は高精度な平坦に調整されている必要はなく、例えば、表面粗さRaが6.3〜25μm程度であれば十分である。
管状弾性部材3は、通常、その硬度(JIS K6253[デュロメータE])が、5〜60程度であるのが好ましく、15〜45であるのがより好ましい。管状弾性部材3の硬度が前記範囲内にある場合には、管状弾性部材3が前記外径差を有していても、被粘着物における自由端面上を回転することによって、その外径差が効果的に吸収されて、管状弾性部材3が前記自由端面に均一に接することができる。また、管状弾性部材3の硬度が前記範囲内にある場合には、保持治具50に粘着保持された被粘着物を離脱させる際に、被粘着物を押圧すると、被粘着物が管状弾性部材3に若干めり込むこととなり、管状弾性部材3に若干めり込んだ状態で被粘着物が管状弾性部材3に粘着保持される。そうすると、管状弾性部材3上に立設される被粘着物は、管状弾性部材3に若干めり込んだその底部において管状弾性部材3に保持されることになる。故に、管状弾性部材3上の被粘着物は、管状弾性部材3の粘着力と被粘着物の底部近傍の周側面が管状弾性部材3に囲繞保持されることで、管状弾性部材3に強固に粘着保持されることになる。
被粘着物離脱用ローラ1は、軸体2の表面に管状弾性部材3が前記粘着性材料又はその硬化物で形成されて、製造されればよく、例えば、軸体2の表面に前記粘着性材料を塗工し、軸体2と管状弾性部材3とを一体成形して、製造されてもよく、また、前記粘着性材料を成形してシート状成形体を作製し、このシート状成形体を軸体2の表面に貼り付けて、製造されてもよく、さらに、前記粘着性材料を成形して筒状(スリーブ状)成形体を作製し、この筒状成形体の内部に軸体を挿入して、製造されてもよい。粘着性材料の成形は、粘着性材料が硬化することのできる温度に粘着性材料を加熱して行うことができ、例えば、管状弾性部材3が前記「粘着性組成物」で形成される場合には、通常、80〜130℃で3〜40分加熱することにより、硬化される。なお、このようにして硬化された「粘着性組成物」は、さらに、170〜220℃、2〜10時間の条件で二次加熱されてもよい。
この発明に係る被粘着物離脱装置は、この発明に係る被粘着物離脱用ローラと、この被粘着物離脱用ローラにおける筒状弾性部材に粘着保持された被粘着物を離脱させる被粘着物離脱手段とを備えて成ることを特徴とする。この発明に係る被粘着物離脱装置における被粘着物離脱用ローラは前記した通りである。この発明に係る被粘着物離脱装置における被粘着物離脱手段は、保持治具から取り外して、管状弾性部材3に粘着保持されている被粘着物を管状弾性部材3から離脱させることができる手段であればよく、例えば、被粘着物離脱用ローラにおける管状弾性部材に風を送り、風力で被粘着物を離脱させる送風手段、被粘着物離脱用ローラにおける管状弾性部材を回転させて、遠心力で被粘着物を離脱させる回転手段、被粘着物離脱用ローラにおける管状弾性部材に振動若しくは衝撃を与えて、被粘着物を離脱させる振動・衝撃手段、被粘着物離脱用ローラにおける管状弾性部材近傍に配置され、管状弾性部材を回転させたときに、管状弾性部材に粘着されている被粘着物の自由端近傍に接触することによって被粘着物を離脱させる例えばブレード等を備えた回転接触手段等が挙げられる。また、管状弾性部材3が前記「粘着性組成物」で形成されている場合には、被粘着物離脱手段として、例えば、被粘着物離脱用ローラにおける管状弾性部材の表面温度を調整する温度調整手段等が挙げられる。この発明に係る被粘着物離脱装置には、前記被粘着物離脱手段の一種のみ又は二種以上を適宜採用されることができる。
被粘着物離脱手段として前記温度調整手段を採用した、この発明に係る被粘着物離脱装置の一実施例である被粘着物離脱装置10を説明する。被粘着物離脱装置10は、図3に示されるように、この発明に係る被粘着物離脱用ローラ1と、前記筒状弾性部材に粘着保持された前記被粘着物を離脱させる被粘着物離脱手段(図3において図示しない。)とを備えて成り、所望により、保持治具50を載置する載置台11と、被粘着物離脱用ローラ1から離脱する被粘着物を収集する被粘着物収集器12とを備えて成る。
被粘着物離脱用ローラ1は、前記した通りであり、その管状弾性部材3は前記「粘着性組成物」で形成されている。この被粘着物離脱用ローラ1は、支持軸4が軸受け5によって軸支され、回転可能になっている。被粘着物離脱用ローラ1を軸支する軸受け5は、その上部で、被粘着物離脱用ローラ1の軸線方向に垂直な方向に、後述する載置台11に沿って、載置台11に対して相対的に移動させ、かつ、載置台11に向かって昇降させる移動手段(図3において図示しない。)に装着されている。これにより、被粘着物離脱用ローラ1は、載置台11上に載置される保持治具に対して相対的に移動し、この移動に伴って回転しながら、保持治具の弾性部材に粘着保持された被粘着物が転写される。
温度調整手段は、管状弾性部材3の表面温度、例えば、管状弾性部材3における被粘着物を粘着保持する部位の温度を変化させることのできる手段である。温度調整手段としては、例えば、管状弾性部材3、特に管状弾性部材3における被粘着物を粘着保持する部位を、所望の温度に加熱する加熱手段(図3に図示しない。)と、加熱された管状弾性部材3を所望の温度に冷却する冷却手段(図3に図示しない。)とを備えて成る。
前記加熱手段としては、(1)軸体2の内部に収納されたヒータ、(2)管状弾性部材3に熱風を送出することができるように仕組まれた、熱風送出ノズル若しくは熱風送出ファンと送り込まれてくる気流を加熱するヒータと、ヒータに向かって気流を送り込む気体送出装置とからなる熱風送出手段、又は、(3)管状弾性部材3の被粘着物を粘着保持する円周表面の近傍に配置された、通電により加熱するヒータ等を採用することができる。この被粘着物離脱装置10において、加熱手段は、軸体2の内部に収納されたヒータ(図3において図示しない。)を採用することができる。
前記冷却手段としては、(1)管状弾性部材3に冷風を送出する冷風送出ノズル又は冷風送出ファンと、送り込まれてくる気流を冷却する冷却器と、冷却器に向かって気流を送り込む気体送出装置とからなる冷風送出手段、(2)管状弾性部材3の被粘着物を保持する表面の近傍に配置された、通電により冷却する、ピエゾ効果を利用した冷却素子、(3)管状弾性部材3の内部又は軸体2の内部に装着された前記冷却素子等を採用することができる。
前記加熱手段及び冷却手段を制御することにより管状弾性部材3における粘着力を自動制御することができるように、温度調整手段は、管状弾性部材3の温度を測定する温度測定手段と前記温度測定手段により測定された管状弾性部材3の温度を示す温度検出信号を入力し、その温度検出信号に基づいて前記加熱手段及び/又は冷却手段に制御信号を出力する制御手段とを備えることが、好ましい。温度測定手段としては、例えば、熱電対、測温抵抗体及びサーミスタ等を挙げることができ、制御手段としては通常のパソコン等を採用することができる。
載置台11は、被粘着物離脱用ローラ1の下部に配置され、被粘着物を離脱する必要のある保持治具を略水平に固定する。
被粘着物収集器12は、載置台11に隣接し、被粘着物離脱用ローラ1の移動方向に対して下流側に配置されている。この被粘着物収集器12は、被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3に粘着保持された複数の被粘着物が管状弾性部材3から離脱することにより、落下する被粘着物を収集する。被粘着物収集器12は、その内表面に布、弾性部材等が設けられ、被粘着物収集器12内に落下したときの衝撃を低減するのがよい。
次に、この発明に係る被粘着物離脱装置10を用いて、保持治具に粘着保持された被粘着物としてチップコンデンサを例に、チップコンデンサを保持治具から離脱させる方法について説明し、併せてこの被粘着物離脱装置10の作用について説明する。なお、被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3は、保持治具の弾性部材における移動方向長さL(図5参照。)とほぼ同じ周方向長さに調整されている。
チップコンデンサ60は次のようにして製造される。まず、第1保持治具(図示しない。)における弾性部材に起立状態に粘着保持された複数のチップコンデンサ用製造部材それぞれの自由端に第1の電極61が形成される。次いで、チップコンデンサ用製造部材の第1の電極61が形成された端面を、第2保持治具50Bの表面に密着させて、複数のチップコンデンサ用製造部材を第1保持治具から第2保持治具50Bに起立状態を維持したまま移し変える。第2保持治具50Bに粘着保持された複数のチップコンデンサ用製造部材それぞれのもう一方の自由端に第2の電極62が形成される。こうして、第2保持治具に粘着保持された状態で複数のチップコンデンサ60が製造される。このようにして製造された複数のチップコンデンサ60それぞれは、図7に示されるように、第2保持治具50Bの第2弾性部材52Bに起立状態に粘着保持されている。
次いで、複数のチップコンデンサ60が粘着保持された第2保持治具50Bは、被粘着物離脱装置10の載置台11に搬送され、載置台11に第2治具本体51Bが固定手段、例えば、磁力、締結具、接着剤等によって固定され、第2保持治具50Bが載置台11に略水平に固定される。
一方、被粘着物離脱用ローラ1は、内蔵された冷却手段が起動され、所定の粘着力を発揮する温度に、管状弾性部材3が冷却される。このとき、管状弾性部材3の温度は、第2保持治具50Bの第2弾性部材52Bよりも大きな粘着力となる温度に、設定される。
被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3が所定の温度に冷却されたら、図4(載置台11及び軸受け5等は図示しない。)に示されるように、被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3が第2保持治具50Bに粘着保持された複数のチップコンデンサ60の自由端(すなわち、第2の電極62上面)に当接するまで、好ましくは、被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3がわずかに凹むまで、被粘着物離脱用ローラ1が載置台11に向かって下降される。
次いで、管状弾性部材3の表面温度を維持したまま、被粘着物離脱用ローラ1を図4に示す矢印Aの方向に移動させる。すなわち、被粘着物離脱用ローラ1を図4に示す矢印Bの方向に回転させる。そうすると、管状弾性部材3の前記外径差が管状弾性部材3の弾性及び弾性部材52Bの弾性で効果的に吸収され、前記複数のチップコンデンサ60における自由端に管状弾性部材3の外周面が均一に接触すると共に、管状弾性部材3は、第2保持治具50Bの第2弾性部材52Bよりも大きな粘着力を発揮しているから、図5(載置台11及び軸受け5等は図示しない。)に示されるように、被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3に複数のチップコンデンサ60が移設され、起立状態を維持したまま粘着保持される。
被粘着物離脱用ローラ1を引き続き同方向に移動させると、図6に示されるように、第2保持治具50Bの第2弾性部材52Bに粘着保持された複数のチップコンデンサ60のほとんどすべてが、被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3に粘着保持される。
次いで、被粘着物離脱用ローラ1を被粘着物収集器12の上部まで移動した後、被粘着物離脱用ローラ1に内蔵された冷却手段(図3〜6に図示しない。)を停止し、被粘着物離脱用ローラ1に内蔵された加熱手段(図3〜6に図示しない。)を起動する。そうすると、被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3の表面温度は徐々に上昇し、それに伴って、管状弾性部材3の粘着力は徐々に低下する。引き続き管状弾性部材3を加熱すると、管状弾性部材3の粘着力はチップコンデンサ60を粘着保持することのできない粘着力まで低下し、管状弾性部材3の円周表面からチップコンデンサ60が離脱して、被粘着物収集器12内に落下する。このとき、被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3の円周表面に向かって送風すると、被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3に粘着保持されているチップコンデンサ60を速やかかつ効率的に落下させることができる。また、被粘着物離脱用ローラ1を回転させると、被粘着物離脱用ローラ1における管状弾性部材3の上方に粘着保持されているチップコンデンサ60を重力及び遠心力によって効率的に落下させることができる。
このように、ローラ形状をなす被粘着物離脱用ローラ1を、チップコンデンサ60上に、回転移動させて、所定の温度に調整された管状弾性部材3に複数のチップコンデンサ60を粘着保持させることができ、次いで、複数のチップコンデンサ60を粘着保持した管状弾性部材3を単に加熱すること等によって、被粘着物離脱用ローラ1からチップコンデンサ60を容易に離脱させることができる。このようにして、強い粘着力で第2保持治具50Bに粘着保持された複数のチップコンデンサ60を、第2保持治具50Bから、容易に離脱させることができる。
このように、この発明に係る被粘着物離脱用ローラによれば、管状弾性部材3の前記外径差がチップコンデンサ60の高さ以下であれば、管状弾性部材3の外周面が前記複数のチップコンデンサ60における自由端に均一に接触し、さらに、前記粘着特性を有する管状弾性部材3を加熱・冷却することによって、保持治具に粘着保持されている被粘着物を管状弾性部材3に転写することができると共に、管状弾性部材3に転写された被粘着物を容易に離脱することができる。すなわち、この発明に係る被粘着物離脱用ローラによれば、管状弾性部材の外径差、好ましくはさらに管状弾性部材の粘着特性を利用することによって、保持治具に粘着保持されている被粘着物を離脱させるときに、保持治具の弾性部材を傷付け損傷させる原因となる掻き取り部材を用いる必要がないから、弾性部材の粉塵、破損片等の異物を発生させることなく、被粘着物を保持治具から所望のように離脱させることができる。
また、この発明に係る被粘着物離脱用ローラは、保持治具に粘着保持された被粘着物を離脱させるのに使用され、被粘着物の製造工程等に使用されるものではないから、被粘着物離脱用ローラの管状弾性部材は、その平坦度が高精度に調整されている必要はなく、また、加熱・冷却を繰り返すことによって、管状弾性部材の平坦度がある程度低下しても、保持治具に粘着保持された被粘着物を管状弾性部材に移設することができる限り、特に大きな問題にはならない。したがって、この発明に係る被粘着物離脱用ローラは、長期間にわたって繰り返し使用することができる。
さらに、この発明に係る被粘着物離脱用ローラによれば、近年の、被粘着物の微小化及びこれに伴う保持治具の高精度化(高平坦化)に対応した被粘着物及び/又は保持治具であっても、高精度化された保持治具の弾性部材に粘着保持されている微小化された被粘着物を所望のように離脱させることができる。
この発明に係る被粘着物離脱用ローラを備えた、この発明に係る被粘着物離脱装置によれば、被粘着物を粘着保持している保持治具の弾性部材を傷付け損傷させることなく、保持治具から被粘着物を所望のように取り外すことができる。そして、この発明に係る被粘着物離脱用ローラを用いると、保持治具の弾性部材は傷付き損傷等することはないから、保持治具は長期間にわたって繰り返し使用されることができる。
また、この発明に係る被粘着物離脱装置によれば、保持治具に粘着保持された被粘着物を離脱させる際に、被粘着物に掻き取り部材等を衝突させることはないから、被粘着物が損傷することもなく、被粘着物が破損すること、及び、被粘着物の損傷片が混入することを、いずれも防止することができる。
さらに、この発明に係る被粘着物離脱装置によれば、高精度化された保持治具の弾性部材に粘着保持されている微小化された被粘着物を所望のように離脱させることができる。
この発明における被粘着物離脱用ローラ及び被粘着物離脱装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
例えば、被粘着物離脱用ローラ1は、軸体2上に1層の管状弾性部材3が形成されているが、この発明において、管状弾性部材は軸体上に2以上の層に形成されていてもよい。この場合は、最外層に位置する管状弾性部材の粘着力が低下した場合、最外層に位置する管状弾性部材が損傷した場合等に、最外層に位置する管状弾性部材を取り外して、新たな管状弾性部材を最外層にして、被粘着物の離脱に供されることができる。
また、被粘着物離脱用ローラ1の管状弾性部材3は、前記弾性部材で成形されているが、この発明において、被粘着物離脱用ローラの管状弾性部材は、導電性付与剤を含有する弾性部材で成形されてもよい。被粘着物離脱用ローラの管状弾性部材が導電性付与剤を含有する弾性部材で成形されていると、被粘着物の離脱時等に発生した静電気による被粘着物の(電気的)損傷を防止することができる。導電性付与剤としては、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、各種カーボン類、金属、金属酸化物、導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、無機イオン性導電物質等が挙げられる。
さらに、被粘着物離脱装置10は、被粘着物離脱用ローラ1が移動するように構成されているが、載置台11及び被粘着物収集器12が可動するように構成されていてもよい。
また、被粘着物離脱装置10における被粘着物離脱用ローラ1は、軸受け5が相対的に移動することによって、回転可能になっているが、この発明において、被粘着物離脱用ローラは、モータ等の回転駆動機構を備え、自転可能になっていてもよい。
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理を施した軸体2(SUS304製、直径38mm、軸線方向長さ120mm)を準備し、軸体2の表面をトルエンで洗浄し、シリコーンゴム接着用プライマー(商品名「X−33−156−20」、信越化学工業株式会社製)を管状弾性部材3形成領域(軸体2の軸線方向の中心から軸体2両先端に向かって各55mm(合計110mm)の領域)に適量塗布して、23℃の環境中で乾燥し、プライマー層(厚さ3μm)を有する軸体2を作製した。
次いで、前記シリコーン生ゴムからなる(a)成分、架橋成分からなる(b)成分、粘着成分からなる(c)成分及び白金化合物からなる(d)成分を含有するシリコーンゴム(商品名「X−34−632 A/B」、信越化学工業株式会社製)99質量%及びシリカからなる(e)成分としてシリカ系充填材(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」)1質量%を含有する粘着性組成物と、粘着力調整組成物として液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE−1950/30 A/B」、信越化学工業株式会社製)とを配合した粘着性シリコーン組成物(粘着性組成物:液状シリコーンゴム組成物(質量比)=70:30)を用いて、外径40mm、内径37.5mm、軸線方向長さ110mmを有する筒状弾性部材用基材を押出成形機にて分出しし、次いで200℃、4時間の条件下、さらに硬化させて、円筒研削盤で平均外径39.8mm、軸方向中央部(最大外径)40mm、軸方向両端部(最小外径)39.6mmのクラウン形状となるように筒状弾性部材3を作製し、この筒状弾性部材3に前記軸体2を挿入することにより、被粘着物離脱用ローラIを作製した。筒状弾性部材3の前記測定方法による粘着力(測定環境:21℃)は33g/mm2であった。
次いで、図2に示される保持治具50Bを準備し、この保持治具50Bの弾性部材52B(前記測定方法による粘着力(測定環境:21℃):40g/mm2、一辺の長さ110mm、厚さ1.5mmの正方形)の表面に、チップコンデンサ60(縦0.3mm、横0.3mm、高さ0.6mm)4,000個を起立状態に粘着保持した(この粘着保持状態においてチップコンデンサ60の高さは0.6mmである。下記第1表には、理解しやすくするため、筒状弾性部材3の前記外径差(mm)ではなく、チップコンデンサ60の高さ0.6mmに対する筒状弾性部材3の前記外径差(%)を示した。)。
次いで、図4に示されるように、温度調整手段(図示せず)を調整して、被粘着物離脱用ローラIの表面温度を10℃に調節し(このときの管状弾性部材3における前記測定方法による粘着力は55g/mm2であった。)、被粘着物離脱用ローラIを弾性部材52Bに起立状態に粘着保持されたチップコンデンサ60に接触させ、図4に示されるように、被粘着物離脱用ローラIをA方向に回転させつつ移動することにより、チップコンデンサ60を弾性部材52Bから離脱させて管状弾性部材3の表面に粘着保持させた。
このチップコンデンサ60の離脱方法において、転倒等によって弾性部材52Bに再度粘着されたチップコンデンサ60及び弾性部材52Bから離脱しなかったチップコンデンサ60の合計数を求め、この合計数を4,000で除して、チップコンデンサ60の離脱不能割合(%)を、算出した。
この操作を5回行い、チップコンデンサ60の離脱不能割合(%)の算術平均値を被粘着物離脱用ローラIの「離脱不能割合(%)」とした。その結果を第1表に示す。また、チップコンデンサ60の離脱方法を5回行った後の弾性部材52Bの表面粗さRz(JIS B0601−1982、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名:590A、株式会社東京精密製)を使用し、測定長2.4mm、測定速度0.15mm/sec、倍率1000倍、触針圧0.68mNの条件設定)を測定した。その結果を第1表に示す。
(実施例2)
円筒研削盤で平均外径39.7mm、軸方向中央部(最大外径)40mm、軸方向両端部(最小外径)39.4mmのクラウン形状となるように筒状弾性部材3を作製した以外は実施例1と同様とし、被粘着物離脱用ローラIIを作製した。
(実施例3)
円筒研削盤で平均外径39.9mm、軸方向中央部(最大外径)40mm、軸方向両端部(最小外径)39.8mmのクラウン形状となるように筒状弾性部材を作製した以外は実施例1と同様とし、被粘着物離脱用ローラIIIを作製した。
(実施例4)
円筒研削盤で平均外径39.8mm、軸方向中央部(最大外径)39.6mm、軸方向両端部(最小外径)40mmの逆クラウン形状となるように筒状弾性部材を作製した以外は実施例1と同様とし、被粘着物離脱用ローラIVを作製した。
(比較例1)
円筒研削盤で平均外径39.5mm、軸方向中央部(最大外径)40mm、軸方向両端部(最小外径)39.2mmのクラウン形状となるように筒状弾性部材を作製した以外は実施例1と同様とし、被粘着物離脱用ローラVを作製した。
(比較例2)
実施例1と同様にして、保持治具50Bを準備し、この保持治具50Bの弾性部材52Bの表面に、チップコンデンサ4,000個を同様に起立状態に粘着保持した。また、断面が直角三角形を成す三角柱の形状を成すスクレイパーを準備した。このスクレイパーを弾性部材52Bの表面をわずかに押圧しながら、弾性部材52Bの一端縁から他端縁まで、弾性部材52Bの表面上を摺動させて、チップコンデンサ60を離脱させた。なお、チップコンデンサ60を離脱させた後の弾性部材52Bの表面には無数の筋状傷が確認できた。