JP2007145507A - リブを有する無端ベルトの製造方法及びそれに用いる円筒芯体 - Google Patents

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Abstract

【課題】リブ貼り付け装置を特に用いなくても、簡単にしかも十分な接着力を保持した状態でリブを取り付けることができる蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法及びそれに用いる円筒芯体を提供することである。
【解決手段】内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造に用いる円筒芯体であって、前記円筒芯体の前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けた円筒芯体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、内面の側縁に蛇行防止用リブ(以下、単に「リブ」と略す場合がある)を簡易な方法で取り付けることが可能なリブを有する無端ベルトの製造方法及びそれに用いる円筒芯体に関する。該無端ベルトは、特に複写機やプリンター等、電子写真方式の画像形成装置に好ましく用いられる。
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体、帯電手段、転写手段及び定着手段には、金属やプラスチック、またはゴム製の回転体が使用されているが、機器の小型化あるいは高性能化のために、これら回転体は変形可能なものが好ましい場合があり、それには肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましく用いられる。上記無端ベルトの材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリカーボネート樹脂(以下、ポリイミドは「PI」、ポリアミドイミドは「PAI」と略す場合がある)が特に好ましく用いられる。
PI樹脂無端ベルトの製造方法としては、回転させた円筒芯体の表面に、ディスペンサー先端を接触させ、かつディスペンサー供給部芯体の回転軸方向に移動させながらディスペンサーから樹脂溶液を供給して、吐出された溶液をブレードによって平滑にする方法がある(例えば、特許文献1参照)。
ところで、このような無端ベルトを中間転写ベルトや用紙搬送ベルト等として使用した画像形成装置では、無端ベルトが直進走行せず、ベルト支持ロールの軸方向に変位した状態で走行する、いわゆる片寄り走行や蛇行が発生することがある。そこで、このような無端ベルトの蛇行を防止するため、無端ベルトの両側縁の内面側に蛇行防止ガイドを設けて、そのガイド部分をベルト支持ロールの外周に設けた溝で案内する方法が提案されている。この後者の技術に関しては、例えば、ガイドとしてエラストマーを接着した補強テープを接着する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、無端ベルトには同様にガイドとして、端部外面には補強用のテープ、内面には蛇行防止用のリブを設けることがある(例えば、特許文献3参照)。その際、端部外面にテープを貼り付けるのは容易なことであるが、端部内面(内面側縁)にリブを貼り付ける際、特にゆがみがないように貼り付けるのは、はなはだ手間がかかるだけでなく、位置精度を満足するという点からも十分でない場合があった。
そこで、ベルト内面の正確な位置にリブを貼り付けるため、専用の貼り付け装置を用いて貼る方法が開示されているが(例えば、特許文献4、5参照)、そのような専用の装置を準備するのは、費用の点では好ましいことではなかった。また、後工程でリブを貼り付けるには時間が余計にかかることもあり、コストが高くなる要因であった。
特開平10−69183号公報 特開平4−333457号公報 特許第3649270号明細書 特開2002−55532号公報 特開2004−323142号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、リブ貼り付け装置を特に用いなくても、簡単にしかも十分な接着力を保持した状態でリブを取り付けることができる蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法及びそれに用いる円筒芯体を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造に用いる円筒芯体であって、前記円筒芯体の前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けた円筒芯体である。
<2> 前記溝の外縁の位置で、端部が分離可能である<1>に記載の円筒芯体である。
<3> 内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法であって、
前記円筒芯体として、前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けた円筒芯体を用い、該溝に前記リブを構成する材料を埋め込んで円筒芯体表面に倣うように平坦化し、次いで、塗布装置により円筒芯体の表面に塗膜を形成し、該塗膜を加熱して樹脂皮膜を形成した後、樹脂皮膜を円筒芯体から剥離することにより、無端ベルトの内面の側縁に前記リブが一体となって成形される蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法である。
本発明によれば、リブ貼り付け装置を特に用いなくても、簡単にしかも十分な接着力を保持した状態でリブを取り付けることができる蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法及びそれに用いる円筒芯体を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリブを有する無端ベルトの製造方法は、内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法であって、前記円筒芯体として、前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けた円筒芯体を用い、該溝に前記リブを構成する材料を埋め込んで円筒芯体表面に倣うように平坦化し、次いで、塗布装置により円筒芯体の表面に塗膜を形成し、該塗膜を加熱して樹脂皮膜を形成した後、樹脂皮膜を円筒芯体から剥離することにより、無端ベルトの内面の側縁に前記リブが一体となって成形されることを特徴とする。
また、本発明の円筒芯体は、上記本発明のリブを有する無端ベルトの製造方法に用いられるものであって、前記円筒芯体の前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けたことを特徴とする。
まず、本発明により製造される無端ベルトについて簡単に説明する。
図6に、本発明により得られる蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの構成概略図を示す。図6に示すように、本発明での無端ベルト1とは、表面にトナー像が転写される用紙を担持する用紙担持面またはトナー像が形成されるトナー像担持面等を有するベルト本体2と、該ベルト本体2の少なくとも片方の側縁に沿って、蛇行防止用リブ3が接着されている構成からなるものを意味する。
蛇行防止用リブ3は、ベルト本体2の片方の側縁に設けるのみでも良いが、さらなる蛇行防止効果、耐久性及び補強効果等の点から、ベルト本体2の両方の側縁に設けることがより好ましい。蛇行防止用リブ3のベルト本体2への接着位置(側縁からの距離)は、無端ベルト1の用途、機能、エンドレスベルト1を用いる装置等に応じて適宜設定される。
また、蛇行防止用リブ3は、無端ベルト1の補強効果の点から全周に設けることが好ましいが、蛇行防止用リブのつなぎ目に0.1〜4mm程度の隙間を有していてもよい。
前記蛇行防止用リブ3の形状は、無端ベルト1の使用条件等により適宜定めることができるが、蛇行防止効果を十分に得る為にはその断面を略矩形とすることが好ましい。前記蛇行防止用リブ3の幅は、蛇行防止効果、耐久性等の点から、通常1〜10mm程度が好ましく、特に4〜7mmが好ましい。厚みは、特に制限されないが、蛇行防止効果や耐久性等の観点から、通常0.5〜5mm程度が好ましく、特に1〜2mmが好ましい。
上記蛇行防止用リブ3を有する無端ベルト1は、電子写真式複写機、レーザープリンター等における感光装置、中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に好適に使用される。ここで、無端ベルト1を構成するベルト本体2は、エンドレスベルトの用途、機能等に応じて、材質、形状、大きさ等が適宜設定される。
以下、本発明の円筒芯体を、本発明の無端ベルトの製造方法と共に説明する。
無端ベルトは、後述するような種々の塗布装置により円筒芯体の表面に塗液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を加熱して樹脂皮膜を形成した後、樹脂皮膜を芯体から剥離することにより製造される。
円筒芯体はアルミニウムやステンレス、ニッケル、銅等の金属円筒が好ましく、その長さは、端部に生じる無効領域に対する余裕幅を確保するため、目的とする無端ベルトの長さより、10〜40%程度長いことが望ましい。円筒芯体の外径は、無端ベルトの直径に合わせ、肉厚は芯体としての強度が保てる厚さにする。
本発明においては、後述するように、前記ベルトの側縁に設けられるリブを円筒芯体のリブ取り付け位置に対応する位置に配置して、ベルト部分を形成するための塗布を行う。したがって、円筒芯体にはあらかじめリブ構成材料を埋め込んでリブ取り付け位置に配置するため、該リブ取り付け位置に対応する位置に溝を設ける必要がある。
用いる円筒芯体(本発明の円筒芯体)の構成を、図面を用いて説明する。
図1に、本発明の円筒芯体の一例の概略側面図を示す。なお、図に示した円筒芯体は、片方の側縁に沿ってリブを有する無端ベルト製造用の円筒芯体である。図1(A)に示すように、円筒芯体10の端部には無端ベルトのリブ取り付け位置に対応して全周にわたって溝5が設けられている。なお、本発明において「円筒芯体」には円筒状のもののほか円柱状のものも含まれる。
溝5の端部からの距離(端部から溝中央までの距離)は、前記無端ベルトにおけるリブの位置(側縁からの距離)によって異なるが、20〜150mmの範囲とすることが好ましい。またこの場合、前記端部からの距離は塗布の余裕を持たせるために、実際のベルト端部から5〜40mm程度長く塗布することが好ましい。
溝5の深さ及び幅の好ましい範囲は、前記無端ベルトに設けられるリブの幅及び厚みの好ましい範囲と同様である。なお、円筒芯体が円筒状である場合には、前記溝5の深さは円筒芯体の厚みの50%以下であることが、円筒芯体の強度を確保する上で好ましい。
図1(B)は、(A)に示した円筒芯体のより好ましい態様を示したものである。具体的には、円筒芯体10’は一方の端部側に溝を形成する端面加工部6を有する主部10’aと、(A)における溝の外縁の位置(図における溝5の左端)で分割される端部10’bとからなる。この構成の円筒芯体10’は、後述するベルト部分の塗布、皮膜形成までは一体となって取り扱われるが、最後に芯体からベルトを剥離するときに端部10’bを取り外せば、そのまま図における左方向にリブ付きベルトを抜き取ることができるため好ましい。
図2に、上記分割可能な円筒芯体10’が組み合わされて一体となったときの溝部の状態を拡大して示す。主部10’aと端部10’bとの接合は、図2(A)に示すように主部10’aの端面加工部6が多段に切削されており、溝形成部のさらに外側の凸部が端部10’bに勘合するようになっていてもよいし、図2(B)に示すように溝を形成する端面加工部6の先端が一部端部10’bに勘合するようになっていていてもよい。
前記溝5、端面加工部6は、円筒状の芯体を旋盤等を用いてバイト切削すること等により設けることができる。前述のように、溝5、端面加工部6は円筒芯体の少なくとも片側に設けられればよく、両側に設けてもよい。この場合、溝5、端面加工部6の底面は後述するリブと一体となって剥離されるときの剥離性や、前記分割可能な円筒芯体の場合に端部との勘合性を良好にするため、算術平均粗さRaで0.1〜2.0μmの範囲とすることが好ましい。
なお、上記算術表面粗さRaの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で実施されたものである。以下の各表面粗さの測定においても同様である。
本発明の円筒芯体は、円筒状であるが、外径が60〜500mmの範囲、厚さが4〜20mmの範囲、長さが300〜450mmの範囲であることが好ましい。
また、本発明の円筒状芯体は、表面がかなり傷ついていると無端ベルトの表面製を悪化させるため、芯体として使用することができない。よって、芯体表面の算術平均粗さRaは0.1〜0.5μmの範囲とすることが好ましい。
このようにして得られた円筒芯体表面には、溝も含めて皮膜及びリブが接着するのを防ぐため、表面をフッ素樹脂やシリコーン樹脂で被覆したり、表面に離型剤を塗布したりするのが好ましい。
次に、上記円筒芯体を用いて、前記溝にリブ構成材料を埋め込んで、このリブと共にベルト材料の塗布に用いる芯体とする。
前記リブ構成材料としては、ポリウレタン樹脂、ネオプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の適度な硬度を有する弾性体等が使用できる。
これらの中でも、電気絶縁性、耐湿、耐溶剤、耐オゾン及び耐熱性、耐磨耗性を考慮すると、特にポリウレタンゴムやシリコーンゴムが好適に用いられる。また、後述するベルト部分を構成するPI樹脂や、PAI樹脂との接着性を高くするという観点からは、塗布液に対するぬれ性があるゴム等を用いることが好ましく、表面を研磨処理やUV処理をすると、よりぬれ性が高くなり付着しやすくなる。
円筒芯体の溝に埋め込むためのリブ材料は、リブと同一形状に形成された溝に埋め込めるように、柔軟な細長い棒状体やリング状体として成形されることが好ましい。それらの幅、厚みは、溝の幅、深さと同一であることが好ましいが、幅に関しては材料が押圧により変形する場合には、溝に埋め込んだときに隙間を溝の幅や深さより若干大きめであってもよい。
また、棒状体の長さは溝全周長と同一であってもよいし、前記のようにリブのつなぎ目には隙間があってもよいため、1〜4mm程度短くてもよい。同様に、リング状体の場合には、溝の底面の径とリング状体の内径が同一であってもよいし、材料が弾性体の場合には内径のほうが少し短くてもよい。
溝への埋め込みは、ベルト部分との接着面が表側になるようにして、前記棒状体の場合には溝に巻き付けるようにリブ構成材料を押し込んでいくことにより、前記リング状体の場合には若干材料を伸張させて嵌め込むか、前記分割可能な円筒芯体の場合にはそのまま溝部分に嵌めこむことにより行い、図3に示すように、図1(A)の溝5の部分がリブ構成材料8で占められ円筒芯体の表面に倣うように平坦化される。
上記平坦化に関しては、埋め込み後のリブ構成材料8と円筒芯体10の表面との間にまったく段差がないことが好ましいが、実際上は困難であるためなるべく小さくすることが望ましく、具体的には30〜100μmの範囲とすることが好ましい。また、同様にリブ構成材料8と溝の内面との隙間も少なくすることが望ましく、具体的には30〜90μmの範囲とすることが好ましい。
さらに、リブにつなぎ目がある場合には、該つなぎ目となるリブ構成材料8の端部は丸くしたり、あるいは斜面形状として端部同士を重ねる等により、端部の先がめくれにくい構成にするのがよい。
なお、後述する皮膜形成樹脂の種類によっては、加熱時に溶剤の揮発物や、反応時に発生する気体があり、加熱後の樹脂皮膜は、その気体のために、部分的に膨れを生じることがある。これは特に、PI樹脂皮膜において膜厚が50μmを越える場合に顕著である。
上記膨れを防止するために、特開2002−160239号公報に開示の如く、円筒芯体表面は算術平均粗さRaで0.2〜2μm程度に粗面化することが好ましい。粗面化の方法には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。これにより、PI樹脂から生じる気体は、芯体とPI樹脂皮膜の間に形成されるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れを生じない。
また、前記溝に埋め込んだリブの表面に部分は、ベルトとの接着性を向上させるため、前もって研磨処理やUV処理を行ってもよい。
この芯体上に、リブも含めて、皮膜形成樹脂溶液を塗布する。皮膜形成用樹脂としては、特に制限されないが、皮膜の強度、形状安定性等の観点から、前述のPI樹脂、PAI樹脂が好ましく用いられる。但し、後述する加熱工程で必要な温度は、リブの耐熱温度より低い条件でできるものが好ましく、この点では硬化温度が250℃程度のPAI樹脂や、加熱反応が不要な熱可塑性のPI樹脂が好ましい。
また、皮膜形成の際にこれらの樹脂がリブとベルトとの接着剤として作用することが望ましいので、樹脂としては流動性がありリブ表面に対するぬれ性が高い特性を有するものであることが好ましい。
PI前駆体またはPAI樹脂としては、種々の公知のものを用いることができる。それらの溶剤は、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトアミド、等の非プロトン系極性溶剤であり、常温での揮発性は低い。なお、塗布に用いる塗液の濃度、粘度等は、適宜選択されるが、好ましい溶液の固形分濃度は10〜40質量%、粘度は1〜100Pa・sである。
無端ベルトを転写ベルトや帯電ベルトとして使用する場合には、塗液の中に導電性物質からなる顔料を分散させて、皮膜を半導電性にする必要がある。導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO−In複合酸化物等の導電性金属酸化物、等が挙げられる。
これらを1〜100Pa・sといった比較的に高い粘度の樹脂溶液に分散させるのは困難であるが、1Pa・s未満の比較的低い粘度の樹脂溶液なら、ボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散機でも容易に分散させることができる。したがって、低粘度の溶剤、樹脂溶液に前記顔料を分散させて顔料分散液を調製し、これと高粘度の樹脂溶液を用いて前記本発明の塗布装置における液混合部により、前記好ましい塗液を得ることができる。
混合後の樹脂100質量部に対する顔料の含有量は、15〜35質量部の範囲程度が好ましい。
皮膜形成用の塗液を円筒芯体に塗布する方法は、特に制限されないが、例えば、回転させた円筒芯体の表面に、ノズルから吐出された塗液をブレードによって平滑にする方法が挙げられる。
図4は、上記塗布方法に利用する塗布装置を示す概略構成図である。また図5は、この塗布装置の主要部分の芯体軸方向から見た側面図である。
この塗布装置は、図4、5に示すように、被塗布物である円筒芯体10に対し、塗液12を塗布し、その塗膜Pを形成する塗布装置である。ここで、図示しないが、円筒芯体10は、水平に回転可能(矢印A)に支持するアームを有する台座に保持部材を介して配設されている。また、図示しないが、円筒芯体10は、円筒芯体10を軸回転させるための駆動手段(回転手段)と保持部材を介して連結されている。
また、円筒芯体10の周辺には、塗液12を流下して円筒芯体10に塗液12を付着させる流下装置14(付着手段)が配置されている。
流下装置14(ディスペンサー)は、例えば、塗液12を流下させるノズル16と、ノズル16へ塗液12を供給する容器18とから構成されている。容器18としては、例えば、メニカスシリンダー、スクリューなどを利用した装置が適用される。流下装置14は、ノズル16と容器18とが連結管により連結してノズル16と容器18とが分離して別置している形態でもよいし、ノズル16と容器18とが一体的に構成された形態でもよい。本実施形態では、容器18とノズル16とが別体で、ポンプ20を介して連結した形態を説明する。また、ノズル16と容器18との間には例えば電磁弁を介在させて流下量を制御してもよい。
通常、PI樹脂溶液などの塗液12は、例えば1MPa・s以上と粘度が高いので自然には流下しないので、ポンプ20を用いて流下させる。塗膜の膜厚は溶液の吐出量によって定まるため、塗布中は吐出量を一定にしなくてはならない。溶液の吐出は、加圧エアで容器18から押し出す方法でもよいが、定量化を確実にするには、ポンプ20で供給するのがよい。そのポンプ20として、途切れなく一定量を吐出することが可能であるモーノポンプが好ましい。
ノズル16と円筒芯体10の距離は任意でよいが、流下液が途切れることがないよう、10〜100mm程度が好ましい。液の途切れが生じると、泡を巻き込むことがある。
円筒芯体10の周辺には、円筒芯体10に付着した塗液12を平滑化する平滑化手段として、ブレード22が配置されている。ブレード22は、円筒芯体10へ突き当てて圧接させることで、円筒芯体10に付着された塗液12を平滑化する。ブレード22は、その先端が湾曲されて(しなるように)、円筒芯体10へ圧接される。
ここで、ブレード22の円筒芯体10への圧接力としては、例えば真円度が0〜1mmの円筒芯体10の回転時の最大振れ幅(例えば0〜2mm)に合わせて、ブレード22が当該振れ幅に追随できるように0.2Nから4Nの範囲とし、塗膜にらせん状模様が発生しない条件とする。
流下装置14(ノズル16)及びブレード22は、塗液12の円筒芯体10への付着及び平滑化に伴い、芯体の回転毎に付着部及び平滑化部が相対的に円筒芯体10の一端から他の一端へ水平方向(矢印B)に移動させる。この構成は、図示しないが、流下装置14(ノズル16)及びブレード22を移動させる構成としてもよいし、円筒芯体10が移動する構成としてもよく、周知の技術により構成することができる。
流下装置14(ノズル16)及びブレード22を連動させ、円筒芯体10の一端から他の一端へ水平方向に移動させることにより、円筒芯体10の表面に塗布することができる。その移動速度が塗布速度と言える。
塗布時の条件は、円筒芯体10の回転速度が20〜200rpmであり、塗布速度Vは、0.1〜2.0m/分程度である、溶液の粘度が高いほど遅くするのが好ましい。
本実施形態では、まず、円筒芯体10を矢印A方向に回転させながら、流下装置14のノズル16から、塗液12を流下させて円筒芯体10に塗液12を付着する。この直後に円筒芯体10の一端側の突き当て位置24においてブレード22を水平方向に移動させて円筒芯体10へ突き当てることで、円筒芯体10に付着した塗液12を平滑化する。そして、円筒芯体10の回転毎に付着点及び平滑化点(流下装置14及びブレード22)を、円筒芯体10の一端から他の一端へ水平方向(矢印B)に移動させる。
その後、円筒芯体10へ塗液12が終了直前に、円筒芯体10の他端側の退避位置26において、ブレード22を水平方向に移動させて芯体10から退避させる。
このようにして、塗液12が円筒芯体10外周面に塗布され、塗膜が形成され、塗布が終了する。
ブレード22は、ステンレスや真鍮などの金属や、フッ素樹脂やポリエチレン等の弾力性ある材料で、厚さ0.1〜1mm程度の板から製作される。幅は、少なくともピッチ(水平移動速度/回転体回転数)より広い必要があるが、広すぎても筋が残る場合があるので、上記ピッチの6倍以下が好ましい。ブレード22を塗液12に押し当てて平滑化している間は、円筒芯体10とブレード22の間には樹脂溶液が存在するので、両者が直に接触することはない。
円筒芯体10の両端に、図に示すように非塗布部分を設ける場合、そこには塗液が存在しないので、ブレード22が直に芯体に接触して、表面に傷が付くか、ブレード22の先端が磨耗する等の損傷が起こりやすい。その場合、塗液12の存在部分のみブレード22をつき出すようにしてもよい。その方法としては、円筒芯体10に対するブレード22の距離が変化するように、ブレード22を図における前後または上下に移動する方法や、ブレード22の固定端を回転させる方法等がある。また、それらを組み合わせてもよい。
塗膜Pの膜厚は、塗液12の吐出量によって定まるので、送液ポンプにより吐出量を調整する。さらに、容器4からポンプ1まで溶液を供給するために、別のポンプを設置してもよい。
本発明において、塗膜Pの厚さは100〜800μmの範囲とすることが好ましい。
なお、本実施形態においては、塗膜Pの形成を図4、5に示すような塗布装置を用いて行なう例を示したが、本発明においては、塗布装置として、例えば塗液を収容する塗布槽、該塗布槽に塗液を供給する塗液供給手段、及び円筒芯体をその軸方向を垂直にして移動可能に保持する保持手段を有する塗布装置を用い、前記円筒芯体を塗布槽に貯留された塗液中から液面に対して相対的に上昇させることにより、円筒芯体の表面に塗膜を形成してもよい。
皮膜形成用の塗液を塗布後、円筒芯体を乾燥装置に移動させて加熱乾燥を行う。その際、塗膜が下方に垂れないよう、芯体を水平にして回転させながら行うのが好ましい。回転速度は1〜60rpm程度、加熱条件は90〜170℃の温度で20〜60分間が好ましい。その際、温度が高いほど加熱時間は短くてよく、温度は、段階的または一定速度で上昇させてもよい。
その後、ベルトを構成する樹脂がPAI樹脂または熱可塑性のPI樹脂の場合は、溶剤の乾燥だけで皮膜を得ることができるので200〜250℃程度の範囲で、反応性のPI樹脂の場合は縮合させるために200〜350℃の範囲、好ましくは250〜300℃の範囲で、20〜60分間加熱すると皮膜が形成される。その際、温度を段階的に上昇させてもよい。この工程では、皮膜は固定されているので、芯体の向きはどちらでもよいし、加熱中の回転は不要である。
上記加熱時に、最終段階で温度がリブの耐熱温度を越えることがあっても、リブ材は空気に触れていないのですぐには劣化しにくい。
冷却後、形成された皮膜を円筒芯体から剥離して無端ベルトを得る。この場合、リブが無端ベルトの片方の側縁にのみ設けられている場合は、前述のように分割可能な円筒芯体を用いていれば、円筒芯体の端部を分割することにより、無端ベルトを容易に抜き取ることができる。
無端ベルトには、さらに必要に応じて、穴あけ加工や端部処理等が施されることがある。好ましい無端ベルトの膜厚は30〜150μm程度である。
得られた無端ベルトには、内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブが、接着剤による接着を行うことなく一体となって成形される。接着強度は、スラスト剥離強度として6〜10N/mmの範囲であり、転写ベルト等として使用するのに十分なものとして得られる。また、リブの周方向の位置ずれは、0.1〜0.5mmの範囲であり、ベルト作製後に接着剤によりリブを貼り付けた場合に比べ位置精度の高い無端ベルトを得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
(リブを有する無端ベルトの作製)
円筒芯体として、アルミニウム製で図1(B)に示す形状のものを用意した。すなわち、外径159mm、厚さ4mm、長さ450mmの主部10’aと、外径159mm、長さ80mmの端部10’bとからなり、主部10’aの端部側の淵には、深さ1mm、長さ60mmの溝形成用の端面加工部6を、端部10’bの主部側の内面には外径157mm、深さ55mmの円形の凹部を各々形成し、主部10’aと端部10’bとが幅5mmの溝を形成して勘合できるようになっている。
上記円筒芯体表面を、溝の部分を含めてブラスト処理し、算術平均粗さRaを μmとした。また、円筒芯体の表面には、溝部も含めてシリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学製)を塗布した。
リブとしては、ウレタンゴムからなる、長さ499mm、幅5mm、厚さ1mmのものを用意した。これを前記主部10’aの端面加工部6に幅方向が表面となるように巻きつけ、つなぎ目部分は斜面同士の接合としてつなぎ合わせた。接合面同士の間隔は約0.3mmであった。
次いで、端部10’bを主部10’aの端面加工部6に勘合させ、リブを埋め込んだ芯体とした。このときのリブ表面と円筒芯体表面との段差は20μm程度であり、形成された溝の側面とリブとの隙間はほとんどなかった。
塗布液としては、PAI樹脂(ポリアミドイミドHR11NN、東洋紡績(株)製、溶剤:NMP、固形分:15質量%)に、酸性カーボンブラック(Special Black 4、デグサジャパン(株)製、pH:3.5)を固形分質量比で35質量%添加し、衝突型分散機(株式会社ジーナス製、GeanusPY)を用いて分散させ、25℃での粘度が約25Pa・sのカーボンブラック混合塗液を用意した。
次に、図4に示す塗布装置を用い、上記塗液を用いて前記芯体上の10’bの端部から60mmから軸方向長さ400mmに塗布した。すなわち、400mlの塗液12が入った容器18にモーノポンプ20を連結し、ノズル16から毎分40mlの吐出を行った。平滑化手段としてのブレード22は、厚さ0.3mmのステンレス板を幅20mm、長さ50mmに加工したものである。
芯体の回転数を60rpmに上げ、ブレード22を塗膜Pに押し当てながら、円筒芯体10の軸方向に210mm/分の速度で移動させ、塗膜Pの終端ではブレード22を50mm後退させて、芯体の表面に直に接触しないようにした。これにより、塗膜表面の筋は消失し、膜厚が平均440μmの平滑な塗膜Pが形成された。
その後、芯体を10rpmで回転させながら、120℃の加熱装置に入れ、45分間 乾燥させた。次いで、円筒芯体10を垂直にして、190℃で10分間、220℃で30分間加熱してPAI樹脂皮膜を形成した。芯体が室温に冷えた後、芯体から端部10’bを外し、皮膜を端部10’b方向に抜き取ったところ、リブがベルト部分と一体となったリブ付き無端ベルトが得られた。
この無端ベルトのベルト部分の膜厚は平均80μm、リブのベルト端部からの距離は平均20mmであり、得られた無端ベルトのリブ端部から1mmの部分でベルトカットして所望のベルトを得た。
(無端ベルトの評価)
−リブの接着強度−
得られたリブ付き無端ベルトのリブの接着強度を、T型剥離強度(JIS K6854)として測定した。このT型剥離強度の測定方法を以下に述べる。
図7は、T型剥離試験の説明図である。図7(a)はT型剥離試験の試験片30を作製する部分(無端ベルトを周方向と垂直方向に一定長で切り出したもの)を示す。図7(b−1)及び(b−2)は試験片30の側面図を示す。図7(c)はT型剥離試験の試験方法の説明図である。
図7(a)に示すように、幅W1の蛇行防止用リブ3と同じ幅にベルト本体2を切断し、幅W1、長さ50mmの試験片30を得た。図7(b−1)は、試験片30を矢印Aの方向から見た図であり、図7(b−2)は、試験片30を矢印Bの方向から見た図である。
22℃、55%RHの環境下で、得られた試験片30の一端を、図7(c)に示すようにベルト本体2と蛇行防止用リブ3の接着界面で剥離させ、ベルト本体2を固定し、蛇行防止用リブ3を矢印Cの方向に50mm/minの速度で引っ張りT字型に引き裂いたときの引張力P1(N)を測定した。そして、測定されたP1及びW1を用いてT型剥離強度(P1/W1)(N/mm)を算出した。
その結果、T型剥離強度は10N/mmであった。
−リブの位置精度−
接着されたリブのベルト周方向の位置ずれを、ピックテスターにて確認した。その結果、得られた無端ベルトでのリブ位置は円筒芯体における溝の位置がそのまま反映されており、0.3mm以内と位置ずれはほとんど認められなかった。
<比較例1>
円筒芯体として、アルミニウム製で溝のない外径159mm、長さ500mmのものを用意した。この円筒芯体を用いて、リブの埋め込みを行わなかった以外は実施例1と同様にして、膜厚が80μmのPAI樹脂製無端ベルトを得た。
長さ499mm、幅5mm、厚さ1mmのウレタンゴムからなるリブを用意し、このリブのベルトとの接着面(幅5mmの面)に常温硬化型の接着剤(商品名:セメンダイン製スーパーX)0.3gを均一に塗布し、これを前記無端ベルトの端部から1.0mmの位置に固定治具を用いて固定して6時間放置してリブ付き無端ベルトを得た。
得られたリブ付き無端ベルトについて、実施例1と同様にしてリブとベルトとのT型剥離強度を測定したところ9.8N/mmであった。また、同様にしてリブの周方向の位置ずれを調べたところ、0.6mmであった。なお、この無端ベルトのリブとの接着部には接着剤が幅約0.5mm程度ではみ出しており、この部分は明らかに転写ベルトとしての搬送に支障となるものであった。
以上のように、実施例の本発明の円筒芯体を用いれば、無端ベルトの内面に時間をかけずに位置精度よくリブを設けることができるとともに、設けたリブは容易に剥離することなく、無端ベルトのリブとしての機能を十分に果たすことができるものであることがわかった。
本発明の円筒芯体の一例を示す概略側面図である。 溝部の状態を示す拡大図である。 リブを埋め込んだ状態の円筒芯体を示す概略側面図である。 本発明に用いる塗布装置の一例を示す概略構成図である。 本発明に用いる塗布装置の主要部分を軸方向から見た断面図である。 本発明により得られるリブを有する無端ベルトの一例を示す概略構成図である。 T型剥離試験の説明図である。
符号の説明
1 無端ベルト
2 ベルト本体
3 蛇行防止用リブ
5 溝
6 端面加工部
8 リブ構成材料
10、10’ 芯体(円筒芯体)
12 塗液
14 流下装置
16 ノズル
18 容器
20 ポンプ
22 ブレード
24 突き当て位置
26 退避位置
30 (T型剥離試験用)試験片

Claims (2)

  1. 内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造に用いる円筒芯体であって、前記円筒芯体の前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けたことを特徴とする円筒芯体。
  2. 内面の少なくとも片方の側縁に沿って蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法であって、
    前記円筒芯体として、前記リブの取り付け位置に対応する位置に、全周にわたってリブと同一形状の溝を設けた円筒芯体を用い、該溝に前記リブを構成する材料を埋め込んで円筒芯体表面に倣うように平坦化し、次いで、塗布装置により円筒芯体の表面に塗膜を形成し、該塗膜を加熱して樹脂皮膜を形成した後、樹脂皮膜を円筒芯体から剥離することにより、無端ベルトの内面の側縁に前記リブが一体となって成形されることを特徴とする蛇行防止用のリブを有する無端ベルトの製造方法。
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