JP4924328B2 - 水素生成システムを備えた車両 - Google Patents

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Description

本発明は、水素生成システムを備えた車両に関するものである。
最近のエンジン、特に自動車用エンジンでは、排気ガスをより十分に浄化することが要求され、このような観点から、エンジンに供給する燃料として水素を使用する水素エンジンが注目されている。このような中、水素を多量かつ安全に貯蔵できしかも水素吸蔵合金による貯蔵方法に比して軽量ですむことから、有機ハイドライトが注目されている。すなわち、有機ハイドライトを、リアクタによって吸熱反応させることによって水素と脱水素燃料とに分離して、分離された水素を燃料としてエンジンに供給することが考えられている。上記有機ハイドライトを水素と脱水素燃料とに分離する反応は、吸熱反応となるため、リアクタをエンジンの排気通路に配設して、排気ガスの有する高熱を利用してリアクタでの反応(水素の分離)を行わせることが行われている。特許文献1〜3には、エンジンの排気通路に、前記リアクタを配設すると共に、該リアクタの下流側において排気ガス浄化触媒を配設する構造が開示されている。
特開2005−147124号公報 特開2006−104994号公報 特開2006−312910号公報
ところで、リアクタにおいて水素を分離させるための反応は吸熱反応になるため、リアクタを通過した排気ガスは、その温度が相当に低下されることになる。したがって、前述の各特許文献に記載のように、リアクタの下流側において排気ガス浄化触媒を配設したものにあっては、排気ガス浄化触媒をその活性化温度にまで上昇させるのに多大な時間を要することになってしまい、排気ガス浄化の上で問題を生じることになる。なお、排気通路に排気ガス浄化触媒を配設しないようにすることも考えられるが、たとえ水素のみを燃料として使用する場合でも、排気ガス中にNOxがどうしても含まれることになるので、排気ガス浄化触媒そのものを廃止することは難しいものである。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、水素を分離するためのリアクタおよび排気ガス浄化触媒をそれぞれ排気通路に配設する場合に、排気ガス浄化触媒を早期に活性化温度にまで上昇させることのできるようにした水素生成システムを備えた車両を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
有機ハイドライトを含む水素化燃料を吸熱反応によって水素と脱水素燃料に分離するリアクタと、水素および脱水素燃料の少なくとも一方が燃料として供給されるエンジンとを有する水素生成システムを備えた車両であって、
エンジンの排気通路に、排気ガス浄化触媒が配設されると共に、該排気ガス浄化触媒の下流側において前記リアクタが配設され、
前記排気通路に、前記排気ガス浄化触媒をバイパスすると共にその下流端が前記リアクタの上流側に開口されたバイパス通路が設けられ、
前記バイパス通路に、該バイパス通路を開閉する制御弁が設けられ、
前記排気ガス浄化触媒が活性化温度に達していないときに該制御弁が閉じられる一方、該排気ガス浄化触媒が活性化温度に達しておりかつ前記リアクタの温度が反応促進温度に達していないときに前記制御弁が開かれる、
ようにしてある。
上記解決手法によれば、排気ガス浄化触媒へは、リアクタを通過する前の高温の排気ガスが導入されるので、排気ガス浄化触媒を早期に活性化温度にまで上昇させることができる。また、バイパス通路を利用して、高温の排気ガスを排気ガス浄化触媒を通過させることなくリアクタに直接的に導入させることができるので、リアクタを早期に反応促進温度にまで上昇させることを優先させることが可能となる。そして、排気ガス浄化触媒が既に活性化温度にまで上昇されているときは、リアクタでの反応を優先した排気ガスの流れを得ることができる。
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記リアクタで分離された水素を貯蔵しておくための水素タンクが設けられ、
前記制御弁はさらに、前記水素タンクでの水素貯蔵量が所定量よりも少ないことを条件として開かれる、ようにしてある(請求項対応)。この場合、水素タンクでの水素貯蔵量が少ないときに、リアクタでの水素生成(水素分離)を積極的に行うようにして、水素タンクへ水素を補充することができる。
前記制御弁はさらに、エンジンの燃料として水素を使用していることを条件として開かれる、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、消費される水素を補充するためにリアクタでの反応を優先した排気ガスの流れを得ることができる。
本発明によれば、水素を分離するためのリアクタおよび排気ガス浄化触媒をそれぞれ排気通路に配設した場合に、排気ガス浄化触媒を早期に活性化温度にまで上昇させることができる。
図1において、1はエンジン(エンジン本体)で、実施形態では、バンケル式とされた2ロータのロータリピストンエンジンとされている。エンジン1へ吸気を供給する吸気通路2には、スロットル弁3が配設され、スロットル弁3の下流側において、第1燃料噴射弁4が配設されている。この第1燃料噴射弁4は、後述するように、有機ハイドライトから分離された脱水素燃料としてのトルエンを噴射するものとなっている(ポート噴射)。
エンジン1の排気通路11には、その上流側から下流側へ順次、排気ガス浄化触媒12(実施形態では三元触媒)、リアクタ13が配設されている。リアクタ13は、脱水素反応器で、有機ハイドライトとしてのメチルシクロヘキサンが供給されたときに、排気ガスの有する高熱を吸熱した吸熱反応によって、トルエンと水素に分離するものである。リアクタ13は、通路14を介して、メチルシクロヘキサンを貯溜したメチルシクロヘキサンタンク15に接続され、この通路14には、リアクタ13に向けてメチルシクロヘキサンを供給するためのポンプ16が接続されている。
前記リアクタ13は、通路21を介して、気液分離装置22に接続されている。すなわち、リアクタ13で分離された水素とトルエンとが混在した状態でもって、通路21を介して気液分離装置22に供給され、この気液分離装置22でもって水素(ガス)と脱水素燃料としてのトルエン(液体)とに分離される。この気液分離装置22で分離された水素は、ポンプ23が接続された通路24を介して、水素タンク25に供給、貯溜される。また、気液分離装置22で分離されたトルエンは、通路26を介してトルエンタンク27に供給、貯溜される。
上記水素タンク25は、通路31を介して第2燃料噴射弁32に接続されており、この通路31には、元弁33,レギュレータ34が接続されている。上記第2燃料噴射弁32は、燃焼室(ロータ室)に直接水素を噴射するものとなっている。上記元弁33は、イグニッションスイッチがOFFされたときに閉弁される一方、イグニッションスイッチがONされたときに開弁されるようになっている。上記レギュレータ34は、水素タンク25に貯溜されている高圧の水素を、所定の一定圧力にまで低下させるものである。
前記トルエンタンク27は、通路41を介して前記第1燃料噴射弁4に接続されて、この通路41には、元弁42,ポンプ43が接続されている。元弁42は、イグニッションスイッチがOFFされたときに閉弁される一方、イグニッションスイッチがONされたときに開弁されるようになっている。上記ポンプ43は、トルエンタンク27内のトルエンを第1燃料噴射弁4に供給するためのものである。
前記吸気通路2と排気通路11とは、EGR弁61が接続されたEGR通路62によって接続されている。このEGR通路62は、その上流端がエンジン1とは排気ガス浄化触媒12との間において排気通路11に開口され、その下流端が、スロットル弁3の下流でかつ第1燃料噴射弁4の上流側において吸気通路2に開口されている。
排気通路11には、制御弁51が接続されたバイパス通路52が設けられている。このバイパス通路52は、排気ガス浄化触媒12をバイパスするもので、その上流端が、EGR通路62が排気通路11へ開口する部位よりも下流側でかつ排気ガス浄化触媒12の上流側において排気通路11に開口され、その下流端が、排気ガス浄化触媒12とリアクタ13との間において排気通路11に開口されている。なお、制御弁51は、電磁式の開閉弁によって構成されて、後述のようにして開閉制御される。
図2は、本発明における制御系統例を示すものであり、図中Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラUには、各種センサS1〜S5からの信号が入力される。センサS1は、リアクタ13の温度を検出する温度センサである。センサS2は、排気ガス浄化触媒12の温度を検出する温度センサである。センサS3は、トルエンタンク27内のトルエンの残量(貯溜量)を検出する残量センサである。センサS4は、水素タンク25内の圧力を検出する圧力センサで、貯溜水素量を検出するものとなっている。センサS5は、メチルシクロヘキサンタンク15内のメチルシクロヘキサンの残量(貯溜量)を検出する残量センサである。また、コントローラUは、前述した各センサS1〜S5での検出結果に応じて、各燃料噴射弁4,32,各元弁33,42,および制御弁51を制御する。
次に、図3,図4に示すフローチャートを参照しつつ、コントローラUの制御内容について使用燃料の使い分けの制御(図3)と、制御弁51の開閉制御(図4)とに着目して説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。
まず、図3から説明すると、Q1において、センサS3で検出されるトルエンタンク27に貯溜されているトルエン量が、あらかじめ設定された所定量以上であるか否かが判別される。このQ1の判別でNOのとき、すなわちトルエンタンク27内のトルエン貯溜量が少ないときは、Q2において、センサS5で検出されるメチルシクロヘキサンタンク15内に貯溜されているメチルシクロヘキサンの貯溜量が、あらかじめ設定された所定量以下であるか否かが判別される。このQ2の判別でNOときは、使用燃料として水素が選択される(第2燃料噴射弁32からの水素噴射実行で、第1燃料噴射弁4は休止)。
前記Q1の判別でYESのとき、あるいはQ2の判別でYESのときは、それぞれQ4に移行して、使用燃料としてトルエンが選択される(第1燃料噴射弁4からのトルエン噴射実行で、第2燃料噴射弁32は休止)。このように、基本的に、メチルシクロヘキサンタンク15内にメチルシクロヘキサンが十分に貯溜されている状態(リアクタ13を利用して水素を十分に得ることができる状態)では、使用燃料として水素を用いる制御が優先される。ただし、トルエンタンク27内のトルエン貯溜量が多いときは、燃料としてトルエンを優先的に使用する制御態様に変更される。
次に、図4のフローチャートについて説明すると、まずQ11において、温度センサS2で検出される排気ガス浄化触媒12の温度が、所定温度(実施形態では活性化温度に設定)以下であるか否かが判別される。このQ11の判別でYESのときは、排気ガス浄化触媒12の温度を早期に上昇させるべく、Q12において、制御弁51が閉弁される(排気ガスは、バイパス通路52からバイパスされることなく、全て排気ガス浄化触媒12を通過される態様)。
前記Q11の判別でNOのとき、つまり排気ガス浄化触媒12によって排気ガス浄化を十分に行うことが可能な状態のときは、Q13において、センサS1で検出されるリアクタ13の温度が所定温度(反応温度)以下であるか否かが判別される。このQ13の判別でYESのときは、Q14において、センサS4で検出される水素タンク25内の貯溜量が所定量以下の少量であるか否かが判別される。このQ14の判別でYESのときは、Q15において、現在使用燃料として水素が選択されているか否かが判別される(図3のQ3の処理がおこなわれている状態であるか否かの判別)。このQ15の判別でYESのときは、Q16において、制御弁51が開弁される。この制御弁51の開弁によって、排気ガスは、排気ガス浄化触媒12を実質的に通過することなく(排気ガス浄化触媒12の通路抵抗が大のため)、バイパス通路52からリアクタ13へ直接導入される。これにより、リアクタ13が早期にその反応温度にまで上昇されて、リアクタ13による水素分離が促進されることになる。
前記Q13の判別でNOのとき、Q14の判別でNOのとき、あるいはQ15の判別でNOのときは、それぞれQ12へ移行される。図4の制御例から明かなように、基本的に、排気ガス浄化触媒12が活性化温度にまで上昇していないときは、制御弁51を閉弁して、高温の排気ガスを排気ガス浄化触媒12に導入させて、その早期活性化が図られる(排気ガス浄化を優先)。一方、排気ガス浄化触媒12の温度が十分に上昇しているときは、リアクタ13の温度が十分に上昇していないことを前提に、リアクタ13の温度を上昇させる方向の制御に変更される。ただし、水素タンク27内に多量の水素が貯溜されているか、または現在使用燃料として水素が使用されていないときは、リアクタ13によって水素を積極的に分離させる必要がないので、このときは制御弁51を閉じて、排気ガス浄化触媒12の温度が活性化温度以上の高温状態を維持する方向の制御とされる。
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。有機ハイドライトとしては、メチルシクロヘキサン系に限らず、例えばデリカン系(ナフタレンと水素に分離)やシクロヘキサン系(ベンゼンと水素に分離)等、適宜のものを用いることができる。ただし、メチルシクロヘキサン系の有機ハイドライトは、常温、常圧(大気圧)でもって液体状態であり、しかも分離されるトルエンはガソリンの性状に近いので、もっとも好ましいものである。
リアクタ13で分離される水素と脱水素燃料とは、いずれか一方を選択的に使用燃料として用いる他、混合状態で使用したり、あるいは水素のみを使用することもできる。分離された水素のみを燃料として使用する場合は、燃料として使用されない脱水素燃料を一時的にタンクに蓄えておき(トルエンタンク27が相当)、有機ハイドライトを貯溜するタンク(実施形態ではメチルシクロヘキサンタンク15に相当)に有機ハイドライトを補充するときに、脱水素燃料をその貯溜タンクから除去するようにすればよい(タンク毎交換することも可能)。排気ガス浄化触媒12は、もっぱらNOxを除去するものであってもよい(特に水素のみを燃料として使用する場合)。
リアクタ13で分離された水素と脱水素燃料とを選択的に燃料として使用するときは、例えばエンジン1の運転状態に応じて使用燃料を選択することができ(例えば高負荷時には脱水素燃料を使用し、低負荷時には水素を使用する)、あるいは走行環境状態に応じて使用燃料を選択することもできる(例えば郊外では脱水素燃料を使用し、市街地では水素を使用する)、さらに運転者により操作されるマニュアルスイッチの操作状態に応じて使用燃料を選択するようにする等、適宜の手法によって使用燃料を使い分けすることができる。
バイパス通路52を別途有しないものであってもよい。エンジン1としては、往復動型のエンジンであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものであり、また方法(水素の生成および供給方法)の発明として把握することも可能である。
本発明の一実施形態を示す全体系統図。 本発明の制御系統をブロック図的に示す図。 本発明の制御例を示すフローチャート。 本発明の制御例を示すフローチャート。
1:エンジン
2:吸気通路
4:第1燃料噴射弁(脱水素燃料としてのトルエン噴射用)
11:排気通路
12:排気ガス浄化触媒
13:リアクタ
15:メチルシクロヘキサンタンク(有機ハイドライト貯溜用)
22:気液分離装置
25:水素タンク
27:トルエンタンク(脱水素燃料貯溜用)
32:第2燃料噴射弁(水素噴射用)
51:制御弁
52:バイパス通路

Claims (3)

  1. 有機ハイドライトを含む水素化燃料を吸熱反応によって水素と脱水素燃料に分離するリアクタと、水素および脱水素燃料の少なくとも一方が燃料として供給されるエンジンとを有する水素生成システムを備えた車両であって、
    エンジンの排気通路に、排気ガス浄化触媒が配設されると共に、該排気ガス浄化触媒の下流側において前記リアクタが配設され、
    前記排気通路に、前記排気ガス浄化触媒をバイパスすると共にその下流端が前記リアクタの上流側に開口されたバイパス通路が設けられ、
    前記バイパス通路に、該バイパス通路を開閉する制御弁が設けられ、
    前記排気ガス浄化触媒が活性化温度に達していないときに該制御弁が閉じられる一方、該排気ガス浄化触媒が活性化温度に達しておりかつ前記リアクタの温度が反応促進温度に達していないときに前記制御弁が開かれる、
    ことを特徴とする水素生成システムを備えた車両。
  2. 請求項において、
    前記リアクタで分離された水素を貯蔵しておくための水素タンクが設けられ、
    前記制御弁はさらに、前記水素タンクでの水素貯蔵量が所定量よりも少ないことを条件として開かれる、
    ことを特徴とする水素生成システムを備えた車両。
  3. 請求項2において、
    前記制御弁はさらに、エンジンの燃料として水素を使用していることを条件として開かれる、ことを特徴とする水素生成システムを備えた車両。
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