JP4923092B2 - 磁気記録媒体初期化装置 - Google Patents

磁気記録媒体初期化装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4923092B2
JP4923092B2 JP2009238343A JP2009238343A JP4923092B2 JP 4923092 B2 JP4923092 B2 JP 4923092B2 JP 2009238343 A JP2009238343 A JP 2009238343A JP 2009238343 A JP2009238343 A JP 2009238343A JP 4923092 B2 JP4923092 B2 JP 4923092B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
recording medium
magnetic field
magnetization
frequency
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009238343A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011086342A (ja
Inventor
万壽和 五十嵐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP2009238343A priority Critical patent/JP4923092B2/ja
Publication of JP2011086342A publication Critical patent/JP2011086342A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4923092B2 publication Critical patent/JP4923092B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Recording Or Reproducing By Magnetic Means (AREA)
  • Hall/Mr Elements (AREA)
  • Magnetic Heads (AREA)

Description

本発明は、1平方インチあたり1Tビットを超える記録密度を有するエネルギーアシスト磁気記録対応の大きな磁気異方性を持つ記録媒体をAC消磁して初期化する置に関するものである。
ハードディスクドライブ(HDD)の記録媒体は、記録膜形成後、大きな磁区構造を分断する初期化処理(AC消磁)を行わないと、大きなノイズ発生や読取ゼロ点のシフトといった問題が発生する。1平方インチあたり1Tビットを超えない記録密度を有する磁気記録媒体は、外部からAC磁界を加えたり、書込みヘッドから発生する磁界を用いたりして、この初期化処理が行われていた。ところが、HDDの記録密度の増加とともに、書込みヘッドから発生する磁界の限界を越えて、記録媒体の磁気異方性磁界を大きくすることが必要となっている。こうして書込み磁界に加えて、熱やマイクロ波といったアシストエネルギーを局所的に照射することによって記録媒体の磁化を反転するエネルギーアシスト記録が開発された。
特開2004−326960号公報 特開2009−146490号公報
エネルギーアシスト記録には、熱アシスト記録やマイクロ波アシスト記録がある。1平方インチあたり1Tビットを超える記録密度を有するエネルギーアシスト磁気記録では、主磁極からの書き込み磁界が印加されているナノメートルオーダーの領域に、強力な光や高周波磁界を照射して磁性記録媒体を局所的に磁化反転せしめるものである。アシストエネルギーは記録媒体の局所領域に印加されるため、記録密度の向上には有効であるが、局所的領域の磁化のみを反転できるように最適化されているため、ディスク全面の初期化に記録動作を適用することは、長時間を要し不向きである。外部磁界の印加によって初期化を行おうとすると、超伝導磁石のような大掛かりな装置が必要である。また、記録媒体をキュリー温度近くまで加熱し、磁石等により磁界を印加する方法も考えられるが、高温による基板や記録層、潤滑層への熱ダメージが懸念される。
本発明は、エネルギーアシスト磁気記録対応の大きな磁気異方性を持つ記録媒体をAC消磁して初期化するにあたり、低コストで、時間が掛からず、記録媒体への負荷が小さな記録媒体初期化方法とこれを用いた記録媒体初期化装置を提供するものである。
本発明では、磁気記録媒体の磁化容易軸と垂直な方向に静磁界を印加すると共に高周波磁界を印加し、その静磁界と高周波磁界の印加を磁気記録媒体の全面に移動しながら行うことで磁気記録媒体をAC消磁する。高周波磁界の振動方向は磁気記録媒体の表面に略平行であるのが好ましい。また、高周波磁界の振動方向は静磁界の方向と略垂直であることが好ましい。更に、高周波磁界の周波数を周期的に変化させ、その際、周波数を減少させる際の時間に比べて、増加させ際の時間を短くすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体初期化装置は、磁気記録媒体を保持して回転駆動する駆動部と、極性の異なる一対の磁極と、長軸が前記一対の磁極を結ぶ方向に向くように配置されたマイクロ波伝送線路と、マイクロ波伝送線路に接続された電極とを有し、磁気記録媒体をAC消磁するための消磁ユニットと、その電極を介してマイクロ波伝送線路に給電するためのマイクロ波電源と、磁気記録媒体に対して消磁ユニットを相対的に駆動する消磁ユニット駆動部とを有する。
また、本発明の磁気記録媒体初期化装置は、磁気記録媒体を保持して回転駆動する駆動部と、極性の異なる一対の磁極と、前記一対の磁極の中間位置に配置された磁化回転層と、磁化回転層に直流電流を流す一対の電極とを有し、スピントルクの作用により磁化回転層から高周波磁界を発生する消磁ユニットと、消磁ユニットを搭載する消磁ヘッドスライダと、磁気記録媒体に対して消磁ヘッドスライダを、一対の磁極を結ぶ方向と異なる方向に相対移動させる手段とを有する。
エネルギーアシスト磁気記録対応の大きな磁気異方性を持つ磁気記録媒体が効率よくAC消磁され、HDD動作に良好な初期状態とすることができる。
熱アシスト記録の概念図。 マイクロ波アシスト記録の概念図。 計算モデルと方向の定義図。 マイクロ波アシスト反転の有効なアシスト方向を示す計算結果の図。 マイクロ波アシスト反転の有効なアシスト方向と磁化の関係を示す図。 記録媒体の表面に垂直に磁界を印加したときのポテンシャル状態を示す図。 記録媒体の表面に平行に磁界を印加したときのポテンシャル状態を示す図。 マイクロ波アシスト記録時の磁化反転の様子を示す図。 記録媒体に平行に磁界を印加した時の、一方向変動磁界マイクロ波を用いたマイクロ波アシスト反転の様子を示す図。 マイクロ波アシスト初期化方法の原理を説明する図であり、(A)は初期磁化状態、(B)は面内磁界印加、(C)は高周波磁界印加、(D)は一定時間以上放置、(E)はAC消磁状態を示す図。 マイクロ波アシスト消磁過程による反転粒子数の時間変化の計算結果を示す図。 計算より求めた消磁完了までの時間と高周波磁界強度の関係を示す図。 媒体面内方向に磁界を印加するマイクロ波アシスト消磁過程中の磁気記録媒体の磁化分布を示す図。 図13の磁化分布より求めた自己相関関数を示す図。 媒体垂直方向に磁界を印加するマイクロ波アシスト消磁過程中の磁気記録媒体の磁化分布を示す図。 媒体垂直方向に磁界を印加するマイクロ波アシスト消磁過程中の磁気記録媒体の磁化分布より求めた自己相関関数を示す図。 周波数変調の検討に用いた高周波磁界周波数の時間依存性を示す図。 周波数変調により、磁化反転が促進された磁化のZ成分の時間変化を示す図。 本発明の第1の実施例における一対の磁石とマイクロ波ストリップラインからなる消磁ユニットの構成例を示す図。 消磁ユニットを2つ用いて初期化器を構成した例を示す図。 本発明の第1の実施例における初期化器の側面図。 本発明の第1の実施例における初期化器の正面図。 本発明の第1の実施例における初期化器の磁石部分の配置図。 図23の磁石配置において、中心点における記録媒体面に平行となる磁界強度のスペースd依存性を示す図。 図23の磁石配置において、記録媒体面に平行となる磁界強度の、中心点から横方向へのずれ量y依存性を示す図。 本発明の第1の実施例における高周波磁界源となるマイクロストリップラインの電子回路構成と発生磁界を示す図。 本発明の第1の実施例の初期化器を用いて磁気記録媒体を初期化する方法を示す図。 本発明の第1の実施例の初期化器を複数用いて磁気記録媒体を初期化する方法を示す図。 消磁ユニットの高周波磁界発生部分を媒体表面から一定距離に保つための機構を示す図。 レーザ光を用いた測長機構を備える消磁ユニットの概略図。 レーザ光を用いた測長機構の概略図。 サーボパタンが書かれているディスクに対して、本発明の第1の実施例の初期化器を用いて初期化プロセスを行った後のサーボパタンの消磁状態を示す図。 周波数変調の効果を調べるために用いた周波数の時間依存パタンを示す図。 図33に示された周波数の時間依存パタンを用いて初期化プロセスを行った後のサーボパタンの消磁状態を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な外部磁界を偏重する消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第1の実施例に適用可能な外部磁界を偏重する消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の磁気ディスク初期化方法の全体構成図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットの主要部分を示す図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットの構成図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットから発生する磁界を示す図。 マイクロ波アシスト記録の記録ユニットから発生する磁界を示す図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットにおいて満たすべき、軟磁性下地層の磁化が飽和する条件を示す図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットを用いてマイクロ波アシスト反転が可能である理由を示す図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットから発生する高周波磁界発振周波数の電流依存性を示す図。 本発明の第2の実施例に用いるFGLへ流す電流の時間依存パタンを示す図。 本発明の第2の実施例における消磁ユニットを搭載したスライダとサスペンションの構成例を示す図。 図51の消磁ユニットの拡大図。 本発明の第2の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第2の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第3の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットの構成図。 本発明の第3の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットから発生する磁界を示す図。 本発明の第3の実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットを用いてマイクロ波アシスト反転が可能である理由を示す図。 本発明の第3の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 本発明の第3の実施例に適用可能な他の消磁ユニットの構成を示す図。 記録媒体初期化機を含む磁気ディスク装置の全体構成図。
図1及び図2は、エネルギーアシスト記録の概念図である。図1に示す熱アシスト記録は、レーザ光51をNear Field Generator(NFG)と呼ばれる微小な金属片52に照射し、先端部に形成される数10nm程度の近接場領域に記録媒体53を近づけて加熱し、記録媒体の磁化スイッチ磁界が低減したところで、主磁極54からの書込み磁界Hwで磁化反転を誘導するものである。図2に示すマイクロ波アシスト記録は、Field generation layer(FGL)呼ばれる磁化方向が高速に回転する磁性膜55から発せられる高周波磁界Hnfと主磁極54からの書込み磁界Hwとで磁気共鳴を起こし、磁化反転を誘導するものである。なお、56はトレーリングシールドである。どちらのアシスト記録でも、主磁極からの書込み磁界だけでは、記録媒体の磁化反転が起きない。
本発明では、記録媒体の初期化にマイクロ波アシストによる磁化反転を利用する。ただし、記録用ヘッドをそのまま用いると、FGLから発生した高周波磁界の影響が及ぶ局所的領域の磁化しか制御できないので、より広範囲に高周波磁界を印加する必要がある。この場合、高周波磁界強度は弱くなると考えられるため、計算機シミュレーションを用いて効率的な磁界印加方法を検討した。
図3のように、記録媒体を六角柱の磁性粒子の集合体を考え、一軸磁気異方性を有する各磁性粒子が一斉回転モデルにしたがって反転するものとした。磁化Mの挙動は、次のLLG(Landau-Lifschitz-Gilbert)方程式に従うものとする。
Figure 0004923092
ここで、γはジヤイロ磁気定数、αはダンピング定数である。有効磁界H’は、磁気異方性磁界Ha(=HkcosθM、θMは磁化と磁化容易軸のなす角)、反磁界Hd、外部磁界Hext、粒子間交換結合磁界Hex、及び、高周波磁界Hhfの5成分の和で構成される。磁気異方性磁界Haの印加方向は、磁化容易軸方向である。外部磁界Hextは、初期磁化方向(+z方向)からθh傾いた方向に印加した。高周波磁界Hhfの印加方向θhfは、磁化容易軸と外部磁界の作る面内とした。磁化は、概ね+z方向から−z方向に向かって、z軸を軸とする回転運動をしながら反転する。本計算では、主に、記録媒体を構成する各磁性粒子の飽和磁化Msは0.5Tとした。また、磁気異方性Hkは、平均1600kA/m(20kOe)で分散10%、磁化容易軸が+z方向を中心に4.5度のガウス分布となるようにした。計算に用いたこれらのパラメータは、できるだけ実際に用いる記録媒体のものに近い値を想定したもので、異なるパラメータ値であっても本発明の趣旨に沿うものであれば、十分な効果が得られると考えられる。
図4はマイクロ波アシスト反転の有効なアシスト方向を示す計算結果の図であり、θh=150度で3種類の外部磁界200kA/m(2.5kOe)、400kA/m(5.0kOe)、600kA/m(7.5kOe)に対し、磁化反転に必要な高周波磁界の強さHhf-swを高周波磁界印加方向θhfの関数として示したものである。Hhf-swは、外部磁界Hextの増加とともに減少し、また、高周波磁界印加方向θhfの増加とともに急激に減少し、最小値を、90度から120度付近の角度θhf-minで取っている。これらの最小値を取る角度θhf-minは、外部磁界Hextが大きくなるにつれて90度から大きい角度に移動している。この理由は、磁化容易軸から傾いた外部磁界(ここでは、θh=150度)のもとで、磁化の安定方向θM-Sが磁化容易軸方向から傾く現象で理解できる。
図5はマイクロ波アシスト反転の有効なアシスト方向と記録媒体の磁化方向との関係を示す図であり、磁化反転に必要な高周波磁界の強さが最小値を取る角度θhf-minから90度差し引いた角度を、磁化の安定方向θM-Sの関数として示したものである。磁化の安定方向θM-Sは、外部磁界がない場合には、+z方向の磁化容易軸方向を向くので、0度である。外部磁界が大きくなると、磁化が外部磁界方向に引っ張られて、θM-Sは大きくなる。図5によれば、θhf-min−90とθM-Sとはほぼ一致していることが明らかである。このことは、磁化反転に必要な高周波磁界の強さが最小値を取る角度θhf-minがθM-Sに連動しており、かつ90度傾いていることを示している。すなわち、「最も効率的な高周波磁界の方向は、印加した外部磁界のもとで安定な磁化方向に垂直である」ことが分かった。
図6は、マイクロ波アシストによる記録時と同様に、記録媒体に垂直に外部磁界を印加(θh=180度)したときのポテンシャル状態を示す図である。ここで、+z方向に近い磁化の安定状態をM+状態、−z方向に近い磁化の安定状態をM−状態と呼ぶことにする。図6では、−z方向に磁界を印加している。M+状態とM−状態とのエネルギー差があるため、互いの状態へのエネルギーバリアが異なっており、磁化反転が一方通行となりやすい。磁化情報の書き込みには有用であるが、本発明の目的である記録媒体を初期化には不都合である。記録媒体を初期化するには、M+状態にある磁性粒子の数とM−状態にある磁性粒子の数とをほぼ同じにし、媒体磁化Mを0とする(消磁)必要がある。図6にてこれを実施するためには、たとえば、すべての磁性粒子がM+状態にある状況を出発点とすると、高周波磁界を印加して、磁化反転をアシストしながら、磁性粒子の数をモニタし、適切なタイミングで、高周波磁界を止めて反転を停止する必要がある。これは手間と時間を要する作業となる。
図7は、記録媒体面に平行に磁界を印加したときのポテンシャル状態を示す図である。面内方向へのパルス磁界印加後に垂直方向の磁化を測定した。周囲温度は300Kである。この場合には、M+状態とM−状態とのエネルギー差がなく、互いの状態へのエネルギーバリアが等しい。このため、エネルギーバリアを超えるアシストエネルギーが与えられれば、M+状態→M−状態とM−状態→M+状態とが同時に活性化し、個々の粒子磁化がM+状態とM−状態との間で行き来するようになる。したがって、媒体磁化Mが0となるだけでなく、磁気クラスターを分断して小さくする作用も期待できる。磁気クラスターは、隣接粒子磁化がほぼ等しい磁性粒子の集団で、サイズが大きいほど信号再生時のノイズが大きくなり、エラーの原因となるため、高記録密度記録では記録媒体初期化による磁気クラスターの分断が必須の課題となっている。
図8は、マイクロ波アシスト記録(MAMR)時の磁化反転の様子を模式的に示す図である。図6と同様に、記録媒体に垂直に外部磁界を印加しているが、強度は若干小さい。M+状態とM−状態との2状態が取りうる状況においては、MAMRの原理と本発明の原理は共に外部磁界の強度には影響されない。マイクロ波アシスト記録では、磁化の歳差運動に同期する高周波磁界を印加することにより、磁気共鳴を励起してアシストエネルギーを供給する。したがって、高周波磁界に含まれる反時計回り回転磁界成分が、磁化の歳差運動と同じ回転方向であるため利用される。MAMRでは、反時計回り回転磁界成分を増強して記録媒体に印加している。磁化の歳差運動に同期する高周波磁界の周波数は、M+状態における磁気共鳴周波数と同じかやや小さな値とするのが用いられる。これは、磁化がアシストエネルギーを受け取って歳差運動が大きくなると、M+状態よりポテンシャルエネルギーが高くなり、磁気共鳴周波数が小さくなるためである。M+状態における磁気共鳴周波数fは、磁気異方性磁界Hkによるもの(γ/2π・Hk)から、外部磁界の影響を差し引いたものであり、通常、γ/2π・Hkの7割程度の値を用いる。M−状態における磁気共鳴は、歳差運動の向きがM+状態の場合の逆であるばかりでなく、周波数がγ/2π・Hkの3割増程度の値を持っているため、図8の構成を用いた磁化反転機構では、M+状態→M−状態の磁化反転が優勢となっている。消磁に利用するには、例えば出発点としてすべての磁性粒子がM+状態にある状況から、ほぼ半数の磁性粒子が反転してM=0となるタイミングで、アシスト動作を停止する必要がある。
図9は、記録媒体に平行に磁界を印加し、さらに一方向変動磁界を用いたマイクロ波アシスト反転の様子を模式的に示す図である。一方向変動磁界に含まれる反時計回り回転磁界成分は、M+状態にある粒子磁化の歳差運動と同じ方向の回転磁界であるため、M+状態→M−状態の粒子磁化の反転をアシストする。また、一方向変動磁界に含まれる時計回り回転磁界成分は、M−状態にある粒子磁化の歳差運動と同じ方向の回転磁界であるため、M−状態→M+状態の粒子磁化の(逆)反転をアシストする。粒子磁化の反転を磁気共鳴によりアシストする一方向変動磁界の周波数は、M+状態とM−状態とのポテンシャルエネルギーが等しいため、どちらの反転過程でも同一である。
一方向変動磁界の周波数は、記録媒体の磁気異方性磁界Hkによる磁気共鳴周波数(γ/2π・Hk)と同じかやや小さな値とするのがよい。粒子磁化がアシストエネルギーを受け取って歳差運動が大きくなるとポテンシャルエネルギーが高くなり、磁気共鳴周波数が小さくなるためである。粒子磁化の歳差運動にあわせて磁気共鳴周波数を小さくすると、効率的に磁化反転を促進することが可能である。消磁過程においては、例えば、すべての磁性粒子がM+状態にある状況を出発点とすると、当初はM+状態→M−状態の粒子磁化の反転が進行するが、M−状態の粒子が増えるにつれてM−状態→M+状態の(逆)反転が多くなる。そして、最終的には、M+状態とM−状態とにある磁性粒子の数がほぼ等しくなると共に、M+状態→M−状態の粒子磁化の反転とM−状態→M+状態の粒子磁化の(逆)反転が拮抗する。M+状態⇔M−状態の反転が繰り返されることにより、磁気クラスターが分断され、良好な消磁状態が形成されると期待される。
図10は、本発明のマイクロ波アシスト初期化方法の原理を説明する図である。図10(A)は出発点磁化状態、図10(B)は面内磁界印加状態、図10(C)は高周波磁界印加状態、図10(D)は一定時間以上放置した状態、図10(E)はAC消磁状態を示している。図10(A)の出発点磁化状態は、本発明の初期化方法を適用する直前の記録媒体のエネルギーポテンシャルの状態である。本図では、簡単のため、すべての磁性粒子がM+状態にある(0度)ものとして説明しているが、出発点としていかなる磁化状態であっても、記録媒体として磁化容易軸がほぼそろったものを用いる限り、本発明の有効性を損なうものではない。図10(B)は、記録媒体の磁化容易軸にほぼ垂直な面内に外部磁界を印加したときのエネルギーポテンシャルの状態を示した図である。約25度と約155度にエネルギーポテンシャルの極小(M+状態とM−状態)が形成されており、90度にエネルギー障壁(極大)がみられる。粒子磁化は、エネルギー障壁を越えて他方の極小へは移れない。このため、図10(A)を出発点とすると、約25度の極小に粒子磁化が存在する。図10(C)は、外部磁界と磁化容易軸の作る面にほぼ垂直な方向に磁界が変動する高周波磁界印加を印加した直後の状態である。磁気共鳴によりエネルギーが供給され、M+状態からM−状態へ反転した粒子磁化が見られる。さらに高周波磁界印加を印加し続け、一定時間以上放置すると、M+状態とM−状態とにある磁性粒子の数がほぼ等しくなると共に、M+状態→M−状態の粒子磁化の反転とM−状態→M+状態の粒子磁化の(逆)反転が拮抗し、図10(D)の状態となる。図10(D)の状態は平衡状態と考えられ、時間が経過しても、記録媒体の平均磁化は0で変わらないが、個々の磁性粒子に着目すると、前記一定時間程度の時間スケールで、反転と逆反転を繰り返している。最後に、高周波磁界と外部磁界を除くと、図10(E)に示すAC消磁状態となり、記録媒体初期化が完了する。
図11は、マイクロ波アシスト消磁過程による反転粒子数の時間変化の計算結果を示す図である。800kA/mの外部磁界を垂直磁化媒体の面内方向に印加し、さらに45GHzの高周波磁界を垂直磁化媒体の面内であって外部磁界と直交する方向に変化するように印加した。出発点磁化状態は、1024個の粒子磁化をM+状態となる一方向に向けた。図11では、高周波磁界強度が80kA/mと160kA/mの場合について、M−状態にある粒子の数を反転粒子数として、高周波磁界印加からの経時変化をプロットしたものである。高周波磁界強度が80kA/mの場合には、高周波磁界印加後数10ナノ秒で磁化反転が始まり、10000ナノ秒で半数の512個の反転粒子数に達している。高周波磁界強度が160kA/mの場合には、高周波磁界印加後数ナノ秒で磁化反転が始まり、数100ナノ秒で反転粒子数が全体の半数(512個)に達し、以降、反転粒子数は一定の平衡状態となっている。高周波磁界強度が強いほど、平衡状態となる時間が早くなる。
図12は、計算より求めた消磁完了までの時間と高周波磁界強度の関係を示す図である。消磁完了は、反転粒子数が全体の半数の95%(486個)を超える時間とした。消磁完了時間は、高周波磁界が強いほど早くなる。また、外部磁界が強いほど消磁完了時間は、短縮するが、同時に周波数を低下させる必要がある。
図13は、本発明による媒体面内方向に磁界を印加するマイクロ波アシスト消磁後の磁気記録媒体の磁化分布を示す図(200nm×200nm、磁性粒子径6.3nm)である。z方向に磁化した後、x方向に外部磁界Hext、y方向に160kA/mの高周波磁界Hthfを100ナノ秒印加した。図13では、磁化がz方向を向く粒子は最も暗く、磁化が−z方向を向く粒子は最も明るく、中間の磁化の粒子は中間の階調で示している。磁化状態はHextが600kA/mの場合には、反転過程の途中であり、磁化がz方向を向く粒子の数が優勢である。ただし、未反転部分を示す暗い部分も細かい構造が観察されている。Hextが1200kA/mを超えると磁化状態は、ほぼランダムとなり、ノイズの原因となる磁気クラスター構造がほとんど見られない。図12より示される、160kA/mの高周波磁界Hthfを100ナノ秒印加する場合に外部磁界強度が800kA/mであれば、初期化が行える結果と一致している。
磁気クラスターの大きさの定量的な議論には、磁化分布の自己相関関数が一般に用いられている。磁化分布の自己相関関数は、各粒子の磁化を数値化し、「距離」分だけずらした磁化分布と元の磁化分布を掛け合わせた値の合計値を求め、「距離」の関数として示したものである。図14は、図13の磁化分布より求めた自己相関関数を示す図である。磁気クラスターサイズは、自己相関関数が最初に負になる値の1.5である。図14より、外部磁界が弱い場合も含めて、磁気クラスターサイズが1.5粒子分(9.3nm)と細分化されており、記録媒体初期化方法として十分な特性が得られることが分かった。
媒体垂直方向に磁界を印加するマイクロ波アシスト消磁を行った後の磁化分布を図15に示す。外部磁界は媒体面に垂直に1200kA/m、高周波磁界は45GHzで80kA/mとした。図15は、高周波磁界印加後130ナノ秒経過し、ちょうど平均磁化が0となった時点の磁化分布である。図13に比べて、大きな黒又は白の領域が観察され、磁気クラスターが大きいことが推定される。図16は、媒体垂直方向に磁界を印加するマイクロ波アシスト消磁過程中の磁気記録媒体の磁化分布より求めた自己相関関数を示す図である。高周波磁界印加後、33ナノ秒、130ナノ秒、260ナノ秒経過した時点での磁化分布より求めた。各時点での磁化は、順番に0.5Ms、0.0、−0.1Msである。各時点での自己相関関数が0を横切る点は、2.5〜3.5となっており、磁気クラスターサイズは27.9nm(4.5粒子分)が得られた。記録密度1Tbit/in2の磁気記録においては、1ビットあたりの占有面積が25nm2であることを考えると、この磁気クラスターサイズはかなり大きな値であり、ノイズによるエラー発生が懸念される。
以上のように、本発明のAC消磁方式は、良好な消磁状態が得られることがわかった。
図17は、周波数変調の検討に用いた高周波磁界周波数の時間依存性を示す図である。図8、図9の説明にも示したように、磁化がアシストエネルギーを受け取って歳差運動が大きくなると、基底状態よりポテンシャルエネルギーが高くなり、磁気共鳴周波数が小さくなる。従って、磁化の歳差運動と高周波磁界の位相が外れすぎてアシストエネルギーが受け取れなくなる事態が想定される。高周波磁界強度が強い場合には、磁化が受け取るアシストエネルギーが大きいため、位相が外れる前に磁化反転に至ることができる。しかし、高周波磁界強度が弱い場合には、磁化が受け取るアシストエネルギーが小さいため、長時間位相を保つ必要がある。強い高周波磁界強度が得られない状況において、周波数を記録媒体の磁気異方性磁界Hkに対応する周波数(γ/2π・Hk)からほぼ直線的に小さくすることにより、周波数を一定とする場合の約1/5程度の高周波磁界強度でAC消磁が行えることを計算により確認した。歳差運動の増大に伴う磁気共鳴周波数の変化と印加した高周波磁界の周波数が一致するためであると考えられる。これは、磁化がアシストエネルギーをもらい過ぎて歳差運動の位相が高周波磁界の位相から外れかけると、ダンピングの効果によりエネルギーを失い、再び、高周波磁界の位相に同調する効果を含んでいると考えられる。
図18は、図17に示した周波数変調により、磁化反転が促進された粒子磁化のZ成分の時間変化を示す図である。外部磁界強度は800kA/mで、高周波磁界は32kA/mとした。図12によれば、初期化には107ナノ秒程度掛かるはずの条件である。周波数を徐々に下げることにより、Z成分の振動が次第に大きくなって、400ナノ秒を超えるところで磁化が反転することが分かる。共鳴周波数の高い磁化の安定方向から、周波数の低い磁化反転バリアに向かって、磁化を徐々に引き上げることにより、磁化反転に至っていることが確認された。
周波数変調による初期化では、周波数が高い初期段階で、歳差運動の位相と高周波磁界の位相が確率的に一致する粒子磁化が反転のアシストを受けると考えられる。できるだけ試行回数を増やすことにより、多くの粒子磁化を反転させる必要がある。周波数を増加させる局面においては、原理的に反転のアシスト効果が無いことを考慮すると、高周波磁界の周波数の変化は、減少させる際の時間に比べて、増加させる際の時間を短くすることが重要となる。
以上の構成を取ることにより、エネルギーアシスト磁気記録対応の大きな磁気異方性を持つ磁気記録媒体が効率よくAC消磁され、HDD動作に良好な初期状態とすることができる。すなわち、本発明によると、低コストで、時間が掛からず、記録媒体への負荷が小さな記録媒体初期化が可能となる。
以下、図19から図42を用いて、本発明の第1の実施例を説明する。
図19は、本発明の第1の実施例における一対の磁石301とマイクロ波ストリップライン302からなる消磁ユニット307の構成を示す図である。それぞれの磁石301の磁化方向は、図面上下方向に互いに逆方向であり、マイクロ波ストリップライン302上方に、マイクロ波ストリップライン302の長軸方向と平行な静磁界を形成する。高周波電圧は電極303の端部に印加され、マイクロ波ストリップライン302に高周波電流が流れ、マイクロ波ストリップライン302の近傍に、その長軸方向と直交する方向の高周波磁界が形成される。したがって、マイクロ波ストリップライン302の上方において、互いに直交する静磁界と高周波磁界とを重ねることが可能な消磁ユニット307が構成されることになる。
図20に示すように、円盤の両面に磁気記録層を有する磁気ディスク304のAC消磁にあたっては、2つの消磁ユニットを用いて磁気ディスク304を表裏面側から挟み込むことにより、初期化器308を構成する。この際、それぞれの消磁ユニットの磁石は、磁気ディスク304を介してN極とN極、S極とS極が互いに正対するように配置することにより、磁気ディスク304面に平行に形成される静磁界の強度を強めるようにする。一方、マイクロ波ストリップライン等のマイクロ波伝送線路のから発生する磁界は、伝送線路の幅程度の距離までしか影響を及ぼさないので、2つの消磁ユニットのマイクロ波伝送線路に流す高周波は同期させる必要は無い。
図21及び図22は、初期化器308と磁気ディスク304の上下方向の位置関係を示す図であり、図21は側面図、図22は正面図である。できるだけ強い高周波磁界を得るため、マイクロ波ストリップライン302の幅は数μmから数十μmとする必要がある。さらに、磁気ディスク304とマイクロ波ストリップライン302との距離もマイクロ波ストリップライン302の幅の数分の1に制御する必要がある。これに対して、静磁界は、磁石301間の距離が数ミリ程度離れていても十分な強度が得られる。したがって、図21及び図22に示すように、固定された磁石301の隙間に磁気ディスク304を通過させるようにし、通過の際、磁気ディスク304とマイクロ波ストリップライン302との距離を調整できる構造とするのがよい。AC消磁動作時には、消磁ユニット307の磁石301の磁極面よりマイクロ波ストリップライン302の部分が磁気ディスク304側に飛び出す形となる。磁気ディスク304の着脱時には、マイクロ波ストリップライン302の部分が後退して、磁気ディスク304とぶつからないようにしてもよい。
図23は、本実施例の初期化器で用いた磁石301の配置図である。一辺が10mmのキューブ状ネオジウム系希土類磁石(表面残留磁束密度1.2T)を用いたが、磁気ディスク304に対して強い面内磁界が得られれば、磁石の形状や特性はどんなものを用いてもよいし、電磁石等でも同等の効果が得られる。
図24は、図23に示された磁石の配置において、中心点における記録媒体面に平行となる磁界強度の消磁ユニット内磁石間距離d依存性を示す図である。dが大きくなると、磁界が増加し、2mm程度でピークを取り、緩やかに減衰した。消磁ユニット間磁石間距離Gapは、小さいほど大きな磁界が得られる。図25は、図23に示された磁石の配置において、記録媒体面に平行となる磁界強度の、中心点から横方向へのずれ量y依存性を示す図である。中心部分(y=0)での磁界強度の変化は、どのGapでも緩やかであることから、マイクロ波ストリップライン等のマイクロ波伝送線路の設置はx−、y−方向内では大きな精度を必要としない。
図26は、本発明の第1の実施例における高周波磁界源となるマイクロ波ストリップラインの電子回路構成と発生磁界を示す図である。マイクロ波電源305として電圧によって周波数の制御が可能なガンダイオードを用いた。インパットダイオード等でも周波数変調が可能であれば、本発明のAC消磁に極めて有効である。周波数変調が不可のマイクロ波電源を用いても本発明の構成をとることにより、有効なAC消磁が期待できる。マイクロ波電源からの高周波電圧は、電極303の端部に印加され、マイクロ波ストリップライン302及び終端抵抗306を通って他方の電極303の端部に入る。終端抵抗306は、マイクロ波ストリップライン302に流れる高周波電流が最大になるように調整する。マイクロ波の周波数を変調する場合には、変調を利用した磁化反転の最終段階である低周波側で高周波電流が最大になるようにするのがよい。
本実施例では、マイクロ波ストリップライン302と磁気ディスク304との距離に応じてマイクロ波ストリップラインのインピーダンスが変化する状況を、マイクロ波電源近くで交流電圧計319にてモニタし、圧電アクチュエータにフィードバックして浮上量約3μmとなるよう簡易的制御を行った。レーザを用いて、磁気ディスクとマイクロ波ストリップラインとの距離を測長し、正確に浮上量を制御してもよい。
図27は、本実施例の初期化器308を用いて磁気記録媒体を初期化する方法を示す図である。初期化器308のギャップに磁気ディスク304を挟み込んだ後、磁気ディスク304を回転し、マイクロ波電力をマイクロ波ストリップラインに投入する。その後、初期化器308を半径方向に動かして磁気ディスク304の全面のAC消磁を行う。このとき、マイクロ波ストリップラインの長軸に直交する方向と初期化器の移動方向を一致させないようにすると、均一なAC消磁を行いやすい。本実施例では、ディスク回転速度1000rpm、初期化器308の移動速度5cm/s、マイクロ波ストリップラインの長軸に直交する方向と初期化器の移動方向のなす角度θを45度とした。初期化器308の磁気記録媒体304の半径方向への移動は、アーム313を介して初期化器308がロータリアクチユエータ312に支持されるようにして行った。尚、本実施例においては、マイクロ波電源をロータリアクチユエータ312近傍に配置し、同軸線によりアーム313を経てマイクロ波電流を消磁ユニットまで導いたが、マイクロ波電源を消磁ユニット近傍に配置しても良い。マイクロ波電源を消磁ユニット近傍に配置する場合には、該マイクロ波電源の動作が消磁ユニットを構成する磁石からの磁界の影響をなるべく受けないようにするために、1)電流方向と磁界方向が平行または反平行となるように、2)磁界が小さくなる磁極の中間位置に、3)磁気シールド内に、設置するのが好ましい。
図28に示すように、複数の初期化器308を用いて同時に初期化を行うと、初期化に要する時間が短縮できる。この場合、磁石同士が干渉しあわないように動作を制御する必要がある。動径距離に応じて各初期化器の分担を決めてもよい。
図29は、消磁ユニット307の高周波磁界発生部分(マイクロ波ストリップライン302)を磁気ディスク304表面から一定距離に保って移動するための機構の例を示す図である。マイクロ波ストリップライン302の可動ユニットは、基板311上に圧電アクチュエータ310、絶縁層309と形成した後、パタンを切って電極303を埋め込み、最上部に高純度Cuのマイクロ波ストリップライン302を形成した。基板311は、磁石301に固定されている。マイクロ波ストリップライン302は、長さ1.5mm、幅10μm、厚さ100nmとした。
レーザ光を用いて測長し正確に浮上量を制御する場合には、図30に示すように、絶縁層309表面に開けられた孔よりレーザ光が放射され、磁気ディスク304で反射されたレーザ光が再び孔に入射するようにする。絶縁層309内には、図31に示すように、レーザ発生器321、プリズム323、ミラー324、光検出器322が設置されている。レーザ発生器321から出たレーザ光は、プリズム323によってミラー324へ向かうものと磁気ディスク304に向うものとに分けられる。ミラー324と磁気ディスク304とから反射されたレーザ光は、再びプリズム323で一緒になり、光検出器322に入る。ミラー324と磁気ディスク304とから反射されたレーザ光は互いに干渉するので、光検出器322に入る光強度は、光路差325とレーザ光の波長との関係により変化する。ミラー324とプリズム323の間の距離を調整することにより、磁気ディスク304の位置ずれを高感度で検出することが可能となる。
図32は、予めマイクロ波アシスト記録でサーボパタンが書き込まれたディスクに対して、本発明の初期化器を用いて初期化プロセスを行った後のサーボパタンの消磁状態を示す図である。らせん状のパタンが、今回用いたサーボパタンである。本発明の初期化器は、マイクロ波アシスト反転を原理としているので、記録媒体の磁気異方性磁界によって決まる磁気共鳴周波数近くの高周波磁界を用いないと、AC消磁が行えない。本実施例の記録媒体の磁気異方性磁界は約160kA/mであるので、図32では、45GHz−50GHzで良好なAC消磁が行えている。周波数がこの範囲から離れると消磁が不十分となり、30GHzではほとんど消磁されていない。
AC消磁プロセス終了後の磁気ディスク304を再び装置に取り付け、ノイズを測定すると、30GHzではAC消磁プロセス前と変わらず高レベルなノイズが観測された。35、40、55GHzでは、低周波ノイズのレベルは低下したが、高周波ノイズはむしろ増加した。45GHz−50GHzでは、ノイズが格段に減少した。45GHz−50GHzの磁気ディスク304について磁気力顕微鏡で磁気クラスターサイズを観察したところ、10−20nmと良好な結果が得られた。本発明のAC消磁方式が有効であることを示している。
図33及び図34は、周波数変調を用いると効率よくAC消磁が行えることを示す説明図である。図33に周波数の時間依存パタンを示す。周波数一定でAC消磁状態のよかった48GHzを中心に、周波数を56GHzと40GHの間で鋸波状に変化させた。記録媒体の磁気異方性磁界の分散が大きい場合には、より大きな周波数から減少させるのがよい。周波数変調の下限周波数の決定には、予め連続的に周波数を低下させるテストを行い、消磁が進行しなくなる周波数を求めた。一定の周波数以下になると、磁気共鳴による磁化の振動がまったく発生しなくなる。磁化反転は、周波数の低下時のみに発生する。これは、共鳴周波数の高い磁化の安定方向から、周波数の低い磁化反転障壁に向かって、磁化を徐々に引き上げることにより、磁化反転に至っていることを示している。したがって、周波数の低下時に時間をかけ、周波数の上昇は速やかに行うことにより、周波数変調の周期を短くすることができる。
図34は、図33に示した周波数の時間依存パタンを用いて初期化プロセスを行った後のサーボパタンの消磁状態を示すものである。終端抵抗306の調整により、図32の場合に比べて、高周波電流が4分の1となるようにした。周波数を固定した場合には、ほとんどAC消磁が行えていないのに対して、周波数変調を行うと良好な記録媒体の初期化(AC消磁)が行えることがわかった。
このことから、マイクロ波ストリップラインの幅を広くしたり、図35から図39のように、複数のマイクロ波ストリップラインを設けたり、長くしたりしても、各マイクロ波伝送線路がそれぞれ十分な高周波磁界を発生できるため、広範囲を同時に初期化(AC消磁)できるようになる。図36の2本のマイクロ波ストリップラインを有する平行型のマイクロ波伝送線路では、図面右側の近接する電極303にマイクロ波電力を供給することにより、マイクロ波ストリップラインの長さを長くするとともに、マイクロ波入射効率を改善する効果がある。特に、図37のコブレーナ型のマイクロ波伝送線路では、真ん中のラインに定在波が立ち共振器として作用するため、高周波磁界が増強されて有利である。図38に図37のマイクロ波供給の等価回路を示す。したがって、磁気ディスク304を高速で回転さる、あるいは、初期化器308の移動速度を早くすることによって、AC消磁のスループットが向上できる。図39は、絶縁性の基板311を直接、磁石301に接触させる構造としている。消磁プロセス中の消磁ユニットと磁気ディスクとの距離の調整はできないが、予め磁気ディスク予備回転させて回転面がぶれない様に調整しておけば、消磁ユニットのアクチュエータ機構が不要となるため、装置が簡便化される。
また、図40あるいは図41のように第2のマイクロ波ストリップライン315を導入して、第1のマイクロ波ストリップライン302に印加する高周波の周波数の2〜4割程度の比較的周波数の低い高周波磁界を印加できるようにすると、磁石301からの磁界が変調でき、さらに良好なAC消磁が行えることがわかった。第2の高周波磁界の印加によりエネルギーポテンシャルが変調を受ける効果と考えられる。
図42は、本発明の磁気ディスク初期化装置を用いた初期化処理の全体構成を示したものである。スパッタ等により磁性膜が形成された磁気ディスク304は、初期化されるのを待つ投入スタックに投入される(A)。次に、スピンドルモータ631と回転軸修正機構632と円盤チャック633からなるホルダー634に、投入スタックより取り出された磁気ディスク304を保持させ、搬送機構(E)によって予備回転プロセス(B)に搬送する。予備回転プロセス(B)では、次の消磁プロセス(C)と同じか少し高い回転数にて安定に回転するかを検査する。検査に当たっては、レーザ発生器621、プリズム623、ミラー624、光検出器622からなる測長システムのほか、画像等の解析を行い、均一でぶれのない回転となっているかを確認する。問題があれば、回転軸修正機構632を調整する。予備回転プロセス(B)では、回転の中心座標、回転軸、磁気ディスク304の厚み等の情報を同時に計測し、メモリ635に保持する。次に、ホルダー634は、磁気ディスク304を保持したまま、搬送機構(E)によって消磁プロセス(C)に搬送される。搬送時には、図27に示すようなロータリアクチユエータ312を使って初期化器308を、退避しておく。
ホルダー634が消磁プロセス(C)に装着されたことが確認されると、初期化器308は、磁気ディスク304を挟み込む位置に移動するとともに、メモリ635に保持されたデータを元に適正な高さに調整される。本実施例では、磁気ディスク304表面と消磁ユニット307の表面の距離が1ミクロンとなるように設定した。次にスピンドルモータ631により、磁気ディスク304を回転させ、回転が安定したところで、高周波磁界を発生させて、消磁を行う。磁気ディスク304の全面の消磁が完了したところで、高周波磁界を止め、初期化器308を退避させた後、ホルダー634を搬送機構(E)によって、完了スタック(D)に搬送、円盤チャック633を開放して、磁気ディスク304をスタックする。搬送機構(E)は、複数のホルダー634を同時に搬送することができるようにした。円盤チャック633を開放したホルダー634は、再度、投入スタック(A)にて、未初期化の磁気ディスク304を保持することを繰り返す。以上により、連続的に大量の円盤の初期化が実施できる。
以下、図43から図54を用いて、本発明の第2の実施例を説明する。
図43は、マイクロ波アシスト記録と同様に、磁化回転層(FGL)2の面内磁化回転より創出される高周波磁界を利用して、記録媒体の初期化(AC消磁)を行う消磁ユニットの構成例を示している。本実施例の消磁ユニットは、DC電流にて発生するスピントルクを利用して磁性体を高速回転させるため、マイクロ波電源を必要としない特徴がある。磁石405と対向する磁石406との中間にFGL2が形成されている。第2の実施例の消磁ユニットをスライダに搭載し、相対的に記録媒体の表面を移動できるようにしたヘッドを消磁ヘッドスライダと呼ぶことにする。ヘッドの相対移動方向は、磁石405、FGL2、対向する磁石406を結ぶラインと30度傾けるようにした。
図44に示すように、磁気記録媒体7としては、基板19上に下地層20を介して垂直記録膜16を積層した記録媒体を使用した。スライダを利用することにより、記録媒体と消磁ユニット200とがほぼ一定の距離を保つことができるため、均一な初期化が期待される。
本実施例の消磁ユニット200は、磁石405の浮上面端部側面より対向する磁石406側に向かって、磁束整流層8、非磁性スピン散乱体12、磁化回転層(FGL)2としての負の垂直磁気異方性層、金属非磁性スピン導電層15、対向する磁石側磁束整流層13と積層され、対向する磁石406に至る構造を有している。磁束整流層8と対向磁石側磁束整流層13は、飽和磁束密度の高い磁性材料で、軟磁性体でも垂直磁気異方性体でもよい。ここでは、飽和磁束2.4TのCoFe合金を用いた。FGL2の自発磁化は負の垂直磁気異方性によって積層面内に安定であるため、面内の磁化回転が安定化する。FGL2には、CoとFeの積層膜を用いた。金属非磁性スピン散乱体層12は、金属非磁性スピン導電層15(Cu)を介して磁化回転体層2に流入するスピントルクの効果を打消す影響を及ぼす恐れのある磁束整流層8から磁化回転体層2に流入するスピンを散乱する作用がある。あるいは、磁化回転体層2側から磁束整流層8へのスピントルクの流出を防ぐ作用があるとも言える。したがって、金属非磁性スピン散乱体層12を用いると、必要なスピントルクを得るための電流を小さくすることができる。金属非磁性スピン散乱体層12としてRuを用いるとこの効果は特に大きくなる。
このような構造の積層膜に対向する磁石406から磁石405の向きに電流を流した場合、電子は磁石405から各層を経由して対向する磁石406まで移動する。ここで、磁石405が上向きに励磁されている場合には、磁束整流層8及び対向する磁石側磁束整流層13が概ね右向きに磁化されるので、右向きのスピンを持つ電子だけが非磁性スピン導電層15を透過して対向する磁石側磁束整流層13に達する。左向きのスピンを持つ電子は、対向する磁石側磁束整流層13を透過できないため磁化回転層(FGL)2に残留し、磁化回転層2の磁化を左に向けようとするスピントルクとして作用する(作用1)。一方、磁石405からの漏洩磁界は磁化回転層2の磁化を右に向けようと作用する(作用2)。さらに、負の垂直磁気異方性は、磁化回転層2の磁化が層内に留まるよう作用する(作用3)。磁化回転層2の自発磁化の向きは、作用1、作用2、作用3のバランスで決定されるが、作用2と、作用3で決定される方向に復元するようにトルクが発生し、膜面内で高速回転する。その結果、直流電流(以下、高周波励起電流と呼ぶ)にて交流磁界が発生する。発生する交流磁界は、磁化回転層2の向きが膜面内にあるときに最大となる。上の説明では、磁束整整流層8は、磁石405とは別に設けられた層であるとして説明したが、磁石405に付随する突出部として構成されていてもよい。
図45に、本実施例に用いるFGLを応用した消磁ユニットから発生する磁界を示す。良好なAC消磁状態の形成には、記録媒体の面内方向に強い静磁界が印加されている必要がある。従って、磁石405,406から強い磁界を発生し、軟磁性下地層20の磁化を飽和する。そのため、軟磁性下地層20の磁化が飽和していないマイクロ波アシスト記録(図46)の場合と異なり、磁石405から発生した磁界の多くは、軟磁性下地層20を経ずに対向する磁石406に至っている。このような構成とするには、図47に示すように、FGL位置での平均的な磁石の幅Lを使って、式(2)を満たしている必要がある。
Figure 0004923092
ここで、Bs-mp、Smp、Bs-sp、Sspは、それぞれ、磁石405の飽和磁束密度と媒体側面積、対向する磁石406の飽和磁束密度と媒体側面積である。また、Bs-SUL、tSULは、それぞれ、軟磁性下地層20の飽和磁束密度と厚さである。磁石から供給される磁束が軟磁性下地層20を通ることができる磁束の限界を超えさせることにより、記録媒体位置での磁界の面内成分を大きくすることが可能となる。実施例1においても、消磁ユニットの一対の磁石301が上式(2)を満たすことは有効である。
本実施例のAC消磁方法は、FGLから発生する高周波磁界が上下方向となるため、磁化に垂直な方向への励磁とはなっていない。しかし、外部磁界によって面内方向に磁化が倒されるため、マイクロ波によるアシストAC消磁が可能となっている(図48)。
本実施例のFGLから発生する高周波の周波数は、図49に示すように、駆動電流密度による周波数変調が可能である。電流密度が小さい場合には、周波数は電流密度に比例する。電流密度が大きくなると電流密度の増加に比べて、周波数の増加量が大きくなる。したがって、極めて効率的なAC消磁が得られる図33のような周波数変調パタンを得るためには、図50に示すような、ピーク値後に緩やかな電流減少となる電流密度パタンとする必要がある。
図51及び図52には、磁化回転体とスピン整流素子及び磁束整流膜を備えたマイクロ波アシストAC消磁装置の基本構成を示す。
図51は、消磁ヘッドスライダと磁気記録媒体の相対位置関係を模式的に示した図である。消磁ヘッドスライダ102は、サスペンション106により、記録媒体101に対向して支持される。図51において、記録媒体101は紙面右方向に回転し、対向する消磁ヘッドスライダは、記録媒体に対して相対的に紙面左方向に移動しているものとする。従って、図51においては、消磁ユニット109はスライダのトレーリング側に配置されていることになる。消磁ユニット109の各構成要素の駆動電流は配線108によって給電され、端子110によって各構成要素に供給される。
図52は、図51に示された消磁ヘッドスライダ102の拡大図を示す。消磁ユニット109は、初期化部と励磁部により構成されており、初期化部は、磁石405及びそれと対向する磁石406と、これらの間に配置された高周波磁界発生素子201より構成される。励磁部は、磁石405を励磁するコイル205と、図示されてはいないが、コイルの励磁電流及び高周波磁界発生素子へ電流を供給する端子により構成される。図52に示すように、磁石405に対向する磁石406は、図面下方にて磁石405の方へ延び、互いに磁気的な回路を構成している。ただし、図面下方においては電気的にはほぼ絶縁されているものとする。磁気的な回路は、磁力線が閉路を形成するものであり、磁性体のみで形成されている必要はない。磁石405及び磁石406には、電極又は電極に電気的に接触する手段が備わっており、磁石405側から磁石406側、あるいはその逆の高周波を励起する電流が磁化回転体層を通して流せるように構成されている。
図43に示す本実施例のFGL2を用いた場合、1)AC消磁領域が小さい、2)FGLの前後でM+→M−、又はM−→M+の片方の反転が優勢になるといった問題がある。図53あるいは図54に示すように、複数のFGL2を配置し、側面からの磁界の影響を低減するためFGL形状をABS面側に広げる構造とすると、FGL配置方向への横送りピッチを大きく取れるため、前記1)AC消磁領域が小さいという問題が緩和される。図53及び図54では、各FGLの電流に垂直な断面を媒体面側に大きな台形とすることによって、前記2)FGLの前後でM+状態→M−状態、又はM−状態→M+状態の片方の反転が優勢になるという課題を緩和している。本構造は、FGL側面からの高周波磁界を抑制する作用がある。FGL側面からの高周波磁界は、媒体側面内からの高周波磁界と位相が90度ずれており、合成すると回転磁界となり、反転の非対称性の原因となる。
以下、図55から図59を用いて、本発明の第3の実施例を説明する。
本実施例の消磁ユニットも、DC電流にて発生するスピントルクを利用して磁性体を高速回転させるため、マイクロ波電源を必要としない特徴がある。図55は、2枚の磁化回転層(FGL)2の面内磁化回転より創出される高周波磁界を利用して、AC消磁を行う消磁ユニット200の例を示している。磁石405と対向する磁石406との中間に2枚のFGL2が形成されている。ヘッドの相対移動方向、記録媒体は実施例2と同様にした。
本実施例の消磁ユニット200は、磁石405の浮上面端部側面より対向する磁石406側に向かって、垂直磁化層14、金属非磁性スピン導電層15、磁化回転層(FGL)2として負の垂直磁気異方性層、非磁性スピン散乱体12、磁化回転層(FGL)2として負の垂直磁気異方性層、金属非磁性スピン導電層15、対向する磁石側磁束整流層13と積層され、対向する磁石406に至る構造を有している。垂直磁化層14は、予め、磁石405の磁化と逆方向に磁化しておく。対向する磁石側磁束整流層13は、飽和磁束密度の高い磁性材料で、軟磁性体でも垂直磁気異方性体でもよい。ここでは飽和磁束2.4TのCoFe合金を用いた。垂直磁気異方性体を用いると、FGL2の回転が安定化するため、電流を多く流すことにより高い周波数の高周波磁界が得られる。FGL2の自発磁化は負の垂直磁気異方性によって積層面内に安定であるため、面内の磁化回転が安定化する。
FGL2には、CoとFeの積層膜を用いた。金属非磁性スピン散乱体層12は、金属非磁性スピン導電層15(Cu)を介して磁化回転体層2に流入するスピントルクの効果を打消す影響を及ぼす恐れのある磁束整流層8から磁化回転体層2に流入するスピンを散乱する作用がある。あるいは、磁化回転体層2側から磁束整流層8へのスピントルクの流出を防ぐ作用があるとも言える。したがって、金属非磁性スピン散乱体層12を用いると必要なスピントルクを得るための電流を小さくすることができる。金属非磁性スピン散乱体層12としてRuを用いると、この効果は特に大きくなる。2枚のFGL2は、互いの磁化より発生する磁界によって、反平行に向いたまま面内で回転するようになる。
図56は、本実施例に用いるFGL2を応用した消磁ユニットから発生する磁界を示す図である。実施例2と同様に、軟磁性下地層20の磁化は飽和している必要がある。本構成のFGL2より発生する高周波磁界は、磁石405から対向する磁石406へ向かう面内磁界と平行となっている。しかし、図57に示すように、外部磁界によって面内方向に磁化が倒されるため、マイクロ波によるアシストAC消磁が可能となっている。本実施例のFGLから発生する高周波の周波数も、図49に示すように、駆動電流密度による周波数変調が可能である。図50に示すような電流密度パタンを用いることにより、図33のような周波数変調パタンが得られ、極めて効率的なAC消磁が可能となった。
本実施例の2枚のFGL2を用いた場合、FGLの前後でM+→M−、又はM−→M+の片方の反転が優勢になるといった問題がほとんどなく、効率的なAC消磁が可能である。さらに、図58に示すようなトラック幅方向への並列、また、図59に示すようなダウントラック方向への積層により、AC消磁時間の短縮化が図られる。
図60を用いて、本発明の第2、第3の実施例の消磁ユニットを組み込んだ磁気ディスク装置を説明する。本発明の消磁ユニットは、数トラック分の磁気記録情報を一度に消去できるので、Singled記録との組み合わせに有効である。Singled記録では、数トラック分のデータ領域に、記録ヘッドを少しずつ動かしながら重ね書きする。データの上書きはノイズの原因となりやすいため、書き込み領域に対して、一旦、磁気記録情報を消去しておくことが望ましい。
図60は磁気ディスク装置の基本構成を示す図であり、図60(A)は上面図、図60(B)はそのA−A′断面図である。記録媒体101は回転軸受け104に固定され、モータ100により回転する。図60では3枚の磁気ディスク、6本の磁気ヘッドを搭載した例について示したが、磁気ディスクは1枚以上、磁気ヘッドは1本以上あればよい。記録媒体101は、円盤状をしており、その両面に記録層を形成している。スライダ102は、回転する記録媒体面上を略半径方向に移動し、先端部に消磁ヘッドを有する。サスペンション106は、アーム105を介してロータリアクチユエータ103に支持される。サスペンション106は、スライダ102を記録媒体101に所定の荷重で押しつける又は引き離そうとする機能を有する。記録再生用スライダ502は、回転する記録媒体面上を略半径方向移動し、先端部に磁気ヘッドを有する。記録再生用サスペンション506は、記録再生用アーム505を介して記録再生用ロータリアクチユエータ503に支持される。記録再生用サスペンション506は、記録再生用スライダ502を記録媒体101に所定の荷重で押しつける又は引き離そうとする機能を有する。消磁ヘッド、磁気ヘッドの各構成要素を駆動するための電流はICアンプ113から配線108及び記録再生用配線508を介して供給される。記録ヘッド部に供給される記録信号や再生ヘッド部から検出される再生信号の処理は、図60(B)に示されたリードライト用のチャネルIC112により実行される。また、情報処理装置全体の制御動作は、メモリ111に格納されたディスクコントロール用プログラムをプロセッサ110が実行することにより実現される。従って、本実施例の場合には、プロセッサ110とメモリ111とがいわゆるディスクコントローラを構成する。
本発明の消磁ユニットは、連続媒体、ディスクリートトラック媒体、パタン媒体などの形態的特徴にかかわらず、磁気記録媒体の磁気異方性容易軸がほぼ揃っている限り、有効に作用する。垂直磁気記録媒体を用いる場合には、磁気異方性容易軸が媒体面に垂直であるため、磁石から印加される外部磁界は媒体面に平行にすればよい。斜め媒体を用いる場合には、磁気異方性容易軸がトラック方向に傾いているため、磁石から印加される外部磁界をトラック幅方向とする必要がある。図27、図28等に示した設定においては、消磁ユニットとディスクの角度や位置関係、移動方向に注意する必要がある。また、磁気記録媒体が磁気異方性の異なる磁性材料からなる層構造を有する場合には、媒体表面に近くて磁気異方性の小さい磁性体(磁気異方性磁界Hk-min)の磁気共鳴周波数(γ/2π・Hk-min)から、層間の交換相互作用に応じた高めの高周波磁界を印加するのがよい。
2 磁化回転層(FGL)
7 磁気記録媒体
8 磁束整流層
12 非磁性スピン散乱体
13 磁束整流層
14 垂直磁化層
15 金属非磁性スピン導電層
16 垂直記録膜
19 基板
20 軟磁性下地層
100 モータ
101 記録媒体
102 消磁ヘッドスライダ
103 ロータリアクチユエータ
104 回転軸受け
105 アーム
106 サスペンション
201 高周波磁界発生素子
205 コイル
301 磁石
302 マイクロ波ストリップライン
303 電極
304 磁気ディスク
305 マイクロ波電源
306 終端抵抗
307 消磁ユニット
308 初期化器
309 絶縁層
310 アクチュエータ
311 基板
312 ロータリアクチユエータ
313 アーム
319 交流電圧計
321 レーザ発生器
322 光検出器
323 プリズム
324 ミラー
405 磁石
406 磁石
621 レーザ発生器
622 光検出器
623 プリズム
624 ミラー
631 スピンドルモータ
632 回転軸修正機構
633 円盤チャック
634 ホルダー
635 メモリ

Claims (7)

  1. 磁気記録媒体を保持して回転駆動する駆動部と、
    極性の異なる一対の磁極と、長軸が前記一対の磁極を結ぶ方向に向くように配置されたマイクロ波伝送線路と、前記マイクロ波伝送線路に接続された電極とを有し、前記磁気記録媒体をAC消磁するための消磁ユニットと、
    前記電極を介して前記マイクロ波伝送線路に給電するためのマイクロ波電源と、
    前記磁気記録媒体に対して前記消磁ユニットを相対的に駆動する消磁ユニット駆動部と を有することを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
  2. 請求項1記載の磁気記録媒体初期化装置において、前記消磁ユニットは前記磁気記録媒体を挟んで対向する第1の消磁ユニットと第2の消磁ユニットからなり、前記第1の消磁ユニットが備える一対の磁極と前記第2の消磁ユニットが備える一対の磁極は互いに同極同士が対向するように配置されていることを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
  3. 請求項1又は2記載の磁気記録媒体初期化装置において、前記マイクロ波電源は周波数減少の時間より周波数増加の時間が短くなるようにして周波数変調されることを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の磁気記録媒体初期化装置において、前記マイクロ波伝送線路の長軸に直交する方向と前記消磁ユニット駆動部による前記消磁ユニットの移動方向とが異なることを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の磁気記録媒体初期化装置において、前記消磁ユニットは前記一対の磁極に固定された基板上に設けられた圧電アクチュエータを有し、前記マイクロ波伝送線路と前記磁気記録媒体表面との距離が一定となるように前記圧電アクチュエータを駆動することを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
  6. 請求項5記載の磁気記録媒体初期化装置において、前記マイクロ波電源に並列接続された交流電圧計を有し、前記交流電圧計で測定した交流電圧が一定となるように前記圧電アクチュエータを駆動することを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の磁気記録媒体初期化装置において、前記磁気記録媒体はエネルギーアシスト磁気記録対応の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録媒体初期化装置。
JP2009238343A 2009-10-15 2009-10-15 磁気記録媒体初期化装置 Expired - Fee Related JP4923092B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009238343A JP4923092B2 (ja) 2009-10-15 2009-10-15 磁気記録媒体初期化装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009238343A JP4923092B2 (ja) 2009-10-15 2009-10-15 磁気記録媒体初期化装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011086342A JP2011086342A (ja) 2011-04-28
JP4923092B2 true JP4923092B2 (ja) 2012-04-25

Family

ID=44079166

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009238343A Expired - Fee Related JP4923092B2 (ja) 2009-10-15 2009-10-15 磁気記録媒体初期化装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4923092B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5701801B2 (ja) 2012-03-22 2015-04-15 株式会社東芝 磁気記録ヘッド、これを備えたヘッドジンバルアッセンブリ、およびディスク装置
JP5681879B2 (ja) * 2012-05-09 2015-03-11 Tdk株式会社 垂直磁気記録媒体の製造方法及び製造装置
JP2014010871A (ja) * 2012-06-29 2014-01-20 Toshiba Corp 磁気記録ヘッド、これを備えたディスク装置
US8817417B2 (en) 2012-12-26 2014-08-26 Tdk Corporation Perpendicular magnetic write head and magnetic recording device
JP2015005324A (ja) 2013-05-20 2015-01-08 Tdk株式会社 マイクロ波アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及び磁気記録再生装置
WO2022039207A1 (ja) * 2020-08-20 2022-02-24 国立大学法人東京大学 情報生成装置及び情報生成方法
JP7301800B2 (ja) * 2020-08-27 2023-07-03 株式会社東芝 磁気ディスク装置及びデータフォーマットの設定方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05151734A (ja) * 1991-11-27 1993-06-18 Hitachi Ltd 磁気記録用極低浮上スライダ
JP3706015B2 (ja) * 2000-11-06 2005-10-12 株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ 磁気ディスク装置およびその制御方法
JP2007012143A (ja) * 2005-06-29 2007-01-18 Fujifilm Holdings Corp 磁気記録媒体の直流消磁方法、装置、及び磁気転写方法
JP2007299460A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Tdk Corp 磁気ヘッド装置及び磁気記録再生装置
JP2008277586A (ja) * 2007-04-27 2008-11-13 Toshiba Corp 磁気素子、磁気記録ヘッド及び磁気記録装置
JP2009070439A (ja) * 2007-09-11 2009-04-02 Toshiba Corp 磁気記録ヘッド及び磁気記録装置
JP2009080869A (ja) * 2007-09-25 2009-04-16 Tohoku Univ 磁気記録方法
JP2010003367A (ja) * 2008-06-20 2010-01-07 Toshiba Corp 磁気記録装置
JP2010080024A (ja) * 2008-09-29 2010-04-08 Toshiba Corp 磁気記録ヘッド、磁気記録方法、磁気記録装置および磁気メモリ
JP4811471B2 (ja) * 2009-02-13 2011-11-09 Tdk株式会社 マイクロ波帯磁気駆動機能付の薄膜磁気ヘッド及び磁気記録再生装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011086342A (ja) 2011-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5302302B2 (ja) マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッド及びマイクロ波アシスト記録装置
US8345380B2 (en) Spin torque oscillator and magnetic recording head and magnetic recording device mounted with the spin torque oscillator
JP4923092B2 (ja) 磁気記録媒体初期化装置
JP4818234B2 (ja) 磁気記録再生装置
JP5172004B1 (ja) 磁気記録ヘッド及び磁気記録装置
JP5361259B2 (ja) スピントルク発振子、磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置
JP5372361B2 (ja) 高周波場支援書込み装置
JP4050245B2 (ja) 磁気記録ヘッド及び磁気記憶装置
US20100027158A1 (en) Magnetic head for high-frequency field assist recording and magnetic recording apparatus using magnetic head for high-frequency field assist recording
US9001466B2 (en) Three-dimensional magnetic recording and reproducing apparatus including a plurality of magnetic layers having different resonant frequencies
JP5740259B2 (ja) スピントルク発振素子再生ヘッド及び磁気記録再生装置
JP4590003B2 (ja) 磁気記録ヘッド及び磁気記録装置
JP2010129152A (ja) 磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法
JP2010020857A (ja) 磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置
US8680855B2 (en) Apparatus for measuring magnetic field of microwave-assisted head
JP2010225230A (ja) 磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置
US8947170B2 (en) Spin-torque oscillator
JP2010080024A (ja) 磁気記録ヘッド、磁気記録方法、磁気記録装置および磁気メモリ
JP2013235621A (ja) マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッド及び磁気記録装置
JP5468124B2 (ja) 磁気記録ヘッド及び磁気記録装置
US9336797B2 (en) Extended spin torque oscillator
JP2014149911A (ja) 磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置
JP2013105506A (ja) マイクロ波アシスト磁気記録媒体

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111101

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111207

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120110

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120206

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150210

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees