JP4920200B2 - セメント製造設備の排ガスの処理方法及び処理装置 - Google Patents

セメント製造設備の排ガスの処理方法及び処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、セメント製造設備の排ガスの処理方法及び処理装置に関し、更に詳しくは、セメント製造設備の排ガスに臭気成分や揮発した有機化合物が含まれている場合であっても、これらの臭気成分や有機化合物を排ガスから容易かつ効率的に取り除くことが可能なセメント製造設備の排ガスの処理方法及び処理装置に関するものである。
従来、セメント原料としては、天然に存在する鉱石を掘削採取して得られる石灰石、粘土質原料、珪石等の珪酸質原料、酸化鉄等を微粉砕し混合したものが用いられていたが、近年における社会的な廃棄物減少の要請、各種廃棄物の再利用の高まり等により、各種廃棄物をセメント原料の一部あるいは燃料の一部として用いることが社会的に要請されている。
セメント原料は、ロータリーキルンにて1400℃以上の高温で焼成されるために、廃棄物に含まれる有機化合物および/または炭素成分も完全燃焼し、ダイオキシンの発生量が極めて少なく、また、焼成により発生する灰分等がセメント原料の一部として取り込まれるために、2次的な廃棄物が発生する虞もない等により、各種廃棄物の使用量も年々増加しており、それに伴って、処理される廃棄物の種類も広範囲となっている。
各種廃棄物としては、無機系廃棄物と有機系廃棄物がある。
無機系廃棄物としては、石炭灰、高炉スラグ、焼却灰等があり、これらは粘土質原料に替わるものとして用いられる。
これらの無機系廃棄物は、主に従来のセメント原料と同等に扱われ、従来のセメント原料と共に所定の割合で配合され、乾燥粉砕された後、ロータリーキルンにて焼成され、セメントクリンカとされる。
また、有機系廃棄物としては、例えば、従来のロータリーキルンや仮焼成炉の燃料の一部として用いられる廃プラスチック、廃タイヤ、廃油等がある。
この有機系廃棄物は、セメント製造設備で処理される廃棄物の中では比較的処理が容易なもので、上述した廃プラスチックや廃タイヤ等については、裁断もしくは粗砕された後、燃料の一部として直接ロータリーキルンまたは仮焼炉に投入され、燃焼処理される。
また、下水汚泥、工場廃棄汚泥物等の様に、多量の水分を含むために処理が困難な有機系廃棄物や油汚染土壌等についても、セメント製造設備での処理が検討され、実施されつつある。
例えば、下水汚泥の場合、何ら前処理を行うことなく含水汚泥のまま密閉輸送し、この含水汚泥を直接、乾式キルン(セメント製造設備)の窯尻部分または仮焼炉に導入し、焼却する汚泥処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、加熱により悪臭を発生する廃棄物の場合、この廃棄物を生石灰を含む物質と混合し、セメント製造設備のサスペンションプレヒータの下方部とロータリーキルンの口元の間に投入する廃棄物の処理方法が提案されている(特許文献2参照)。
図2は従来のセメント製造設備を示す模式図であり、図において、符号1はセメント原料を乾燥粉砕する原料ミル、2はセメント原料粉を分離するためのサイクロン、3はセメント原料貯蔵庫、4は有機系廃棄物を含む原料を貯蔵するサイロ、5は下水汚泥を含む原料を貯蔵するサイロ、6は廃タイヤを含む原料を貯蔵する貯蔵設備、7は廃プラスチックスを含む燃料を貯蔵するサイロ、8はロータリーキルン(セメント焼成設備)、9はロータリーキルン8内に燃焼用ガスを噴出させるバーナー部(燃焼装置)、10は仮焼炉、11はサスペンションプレヒータ、12はクリンカクーラ、13は電気集塵機(電気的集塵手段)、14は排気煙突である。
また、21はセメント原料供給ライン、22は有機系廃棄物を含む原料供給ライン、23はセメント原料粉供給ライン、24はセメントクリンカ搬送ライン、25は下水汚泥供給ライン、26は廃タイヤ供給ライン、27は廃プラスチックス供給ラインである。
また、31はサスペンションプレヒータ11から排出される排ガスの流れ、32は原料ミル1から排出される排ガスの流れ、33は電気集塵機13から排出される排ガスの流れ、34はクリンカクーラ12から排出される冷却用空気を仮焼炉10の燃焼用空気として用いるための二次空気の流れである。
ここで、有機系廃棄物として、例えば、廃タイヤをセメント焼成用燃料として用いる場合、貯蔵設備6に貯蔵された前処理をしない状態、または裁断もしくは粗砕された状態の廃タイヤを、ロータリーキルン8の窯尻部に直接投入し、ロータリーキルン8内にて燃焼処理を行う。また、廃プラスチックスを燃料として用いる場合、サイロ7に貯蔵された通常20〜30mm以下に粗砕された廃プラスチックスを、バーナー部9からロータリーキルン8内に、もしくは仮焼炉10内に噴出燃焼させ、処理を行う。
一方、下水汚泥を処理する場合、ロータリーキルン8の窯尻部にポンプ圧送し直接投入する方法がとられる。具体的には、下水汚泥等の原料は、サイロ5から密閉型の供給ライン25にてロータリーキルン8に送られ、このロータリーキルン8内にて900〜1100℃の高温の排ガスと接触することにより、下水汚泥に含まれる水分が瞬時に蒸発し、残った有機系化合物が燃焼する。
したがって、下水汚泥に含まれる臭気性物質は燃焼分解し、排ガスに含まれることはない。また、この排ガスは、有機物を殆ど含まないものであるから、電気集塵機13の集塵効率を悪化させる虞も無い。
特開平08−276199号公報 特開平11−268936号公報
ところで、有機系廃棄物をセメント製造設備で処理した場合、セメント焼成設備からの排ガスには、セメント原料成分からくる塵埃のみならず、セメント原料からの僅かな臭気成分や有機成分が揮散したり、セメント焼成設備のロータリーキルン内の高温域で揮発した金属成分などが含まれることがある。特に、臭気成分や有機成分は、後段の電気集塵機などで全て捕集することが困難であり、僅かに大気に排出される虞がある。これらの点は、無機系廃棄物の場合においても同様である。
また、セメント焼成設備の排ガスに含まれる塵埃が有機物や炭素分を含んでいる場合には、塵埃の電気抵抗値が電気集塵機での集塵効率を高く保てる電気抵抗値の範囲から外れてしまい、塵埃の集塵率が低下する等の虞がある。
この様な塵埃は、濾過集塵機で捕集することが可能であるが、塵埃から揮散する臭気成分や有機成分は、濾過集塵機を用いても完全に捕集することが難しく、幾らかは外部に排出されることとなる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、セメント製造設備からの排ガスに含まれる臭気成分や揮散し易い有機成分を容易かつ効率的に取り除くことができるセメント製造設備の排ガスの処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を電気的集塵機や力学的集塵機で捕集した後、この排ガス中に残存する塵埃を濾過式集塵機にて捕集し、さらに、電気的集塵機や力学的集塵機から排出される排ガスに有機化合物を吸着する吸着剤を投入することとすれば、電気的集塵機や力学的集塵機における集塵効率の低下を防止するとともに、排ガスに含まれる臭気成分や揮散し易い有機成分を容易かつ効率的に取り除くことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のセメント製造設備の排ガスの処理方法は、セメント製造設備からの排ガスの処理方法であって、前記セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を電気的集塵手段または力学的集塵手段を用いて捕集する第1の集塵工程と、前記第1の集塵工程から排出される排ガス中に残存する塵埃を濾過式集塵手段を用いて捕集する第2の集塵工程を備え、前記第1の集塵工程から排出される排ガスに、有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入し、前記濾過式集塵手段の濾過面にて前記ゼオライトからなる吸着剤を捕集して厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層を形成し、この吸着剤層により前記排ガスに含まれる有機化合物を吸着し、前記吸着剤層の通風抵抗を一定に保つために前記濾過面にて捕集された前記吸着剤を取り除いて回収し、この回収された前記吸着剤を、前記有機化合物が少ない場合には前記第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用し、前記吸着剤の性能が低下した場合には該吸着剤を加熱して前記有機化合物を脱離させた上で前記第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用することを特徴とする。
このセメント製造設備の排ガスの処理方法では、電気的集塵手段または力学的集塵手段、濾過式集塵手段それぞれを用いて排ガス中の塵埃を2段階で捕集することにより、第1の集塵工程から排出される排ガスに僅かに塵埃が残留していても、第2の集塵工程では、この塵埃を濾過式集塵手段により完全に捕集し排ガスから取り除くことが可能になる。
さらに、この排ガスに有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入し、このゼオライトからなる吸着剤を濾過式集塵手段の濾過面にて捕集して厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層を形成し、この吸着剤層により排ガスに含まれる有機化合物を吸着することにより、排ガスに含まれる塵埃に有機化合物や臭気成分が僅かに混入した場合であっても、これら有機化合物や臭気成分は、吸着剤層により容易かつ効率的に捕集されて完全に取り除かれ、外部に散逸する虞がない。
また、排ガスに含まれる塵埃に電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれた場合であっても、この炭素成分等は、吸着剤層により容易かつ効率的に捕集されて完全に取り除かれ、外部に散逸する虞がない。
これにより、廃棄物を原料の一部として用いたセメントの生産性が向上する。
また、前記第2の集塵工程にて捕集された吸着剤を回収し、この回収された吸着剤を、有機化合物が少ない場合には第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用し、吸着剤の性能が低下した場合には該吸着剤を加熱して有機化合物を脱離させた上で第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用する。
このセメント製造設備の排ガスの処理方法では、セメント焼成設備からの排ガス中の塵埃は、電気的集塵手段または力学的集塵手段を用いて捕集されるために、第1の集塵工程から排出される排ガスに含まれる塵埃は僅かなものとなり、投入した吸着剤に塵埃が多く混入することはない。また、この排ガスに含まれる有機成分や臭気成分は僅かである。これにより、回収された吸着剤は、有機成分や臭気成分の吸着量が少なく、再度利用することが可能になり、吸着剤の有効利用が図れる。
回収した前記吸着剤に吸着された有機化合物を脱離させる離脱工程、回収した前記吸着剤から塵埃を分離する分離工程、のいずれか一方または双方の工程により前記吸着剤を再生し、前記第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することとしてもよい。
このセメント製造設備の排ガスの処理方法では、回収した前記吸着剤に吸着された有機化合物を脱離させる離脱工程、回収した前記吸着剤から塵埃を分離する分離工程、のいずれか一方または双方を行うことにより、有機成分や臭気成分の吸着量が増加したり、あるいは濾過式集塵手段で捕集された塵埃の混入率が多くなったり等により吸着剤の吸着性能が低下した様な場合であっても、吸着剤の吸着性能を容易に回復させることが可能になる。これにより、吸着剤の再利用が容易になり、しかも経済的である。
前記有機化合物の脱離により生じた有機化合物を、前記セメント製造設備の高温部に導入して燃焼させることとしてもよい。
このセメント製造設備の排ガスの処理方法では、吸着物質の離脱工程にて生じた有機化合物を、セメント製造設備の高温部に導入して燃焼させることにより、有機化合物の脱離過程で生じた有機化合物を安全に無害化することが可能になる。
本発明のセメント製造設備の排ガスの処理装置は、セメント製造設備からの排ガスの処理装置であって、前記セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を捕集する電気的集塵手段または力学的集塵手段と、前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入する吸着剤投入手段と、前記ゼオライトからなる吸着剤を濾過面にて捕集することにより形成された厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層により前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガス中に残存する塵埃を捕集する濾過式集塵手段とを備え、前記吸着剤層により前記排ガスに含まれる有機化合物を吸着し、前記吸着剤層の通風抵抗を一定に保つために前記濾過面にて捕集された前記吸着剤を取り除いて回収し、この回収された前記吸着剤を、前記有機化合物が少ない場合には前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに投入することで循環使用し、前記吸着剤の性能が低下した場合には該吸着剤を加熱して前記有機化合物を脱離させた上で前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに投入することで循環使用することを特徴とする。
このセメント製造設備の排ガスの処理装置では、電気的集塵手段または力学的集塵手段の下流側に、ゼオライトからなる吸着剤を濾過面にて捕集することにより形成された厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層により排ガス中に残存する塵埃を捕集する濾過式集塵手段を備えたことにより、電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに僅かに塵埃が残留していても濾過式集塵手段により完全に捕集し、排ガスから取り除くことが可能になる。
さらに、電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに有機化合物を吸着する吸着剤を投入する吸着剤投入手段を備えたことにより、排ガスに含まれる塵埃に有機化合物や臭気成分が僅かに混入した場合であっても、これら有機化合物や臭気成分は、容易かつ効率的に捕集されて完全に取り除かれ、外部に散逸する虞がない。
また、排ガスに含まれる塵埃に電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれた場合であっても、この炭素成分等は、容易かつ効率的に捕集されて完全に取り除かれ、外部に散逸する虞がない。
これにより、セメント製造設備からの排ガスの処理が確実に行われることとなり、廃棄物を原料の一部として用いたセメントの生産性が向上する。
前記濾過式集塵手段またはその下流側に、この濾過式集塵手段から回収された塵埃及び吸着剤を、塵埃と吸着剤とに分離する分離手段と、この分離された吸着剤から有機化合物を脱離させる脱離手段とを設け、この有機化合物を脱離した吸着剤を、第2の吸着剤投入手段を用いて前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに再度投入することとしてもよい。
このセメント製造設備の排ガスの処理装置では、濾過式集塵手段またはその下流側に、この濾過式集塵手段から回収された塵埃及び吸着剤を、塵埃と吸着剤とに分離する分離手段と、この分離された吸着剤から有機化合物を脱離させる脱離手段とを設けたことにより、吸着剤の吸着性能が低下した場合であっても、吸着剤の吸着性能を容易に回復させることが可能になる。これにより、吸着剤の再利用が容易になる。
本発明のセメント製造設備の排ガスの処理方法によれば、セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を電気的集塵手段または力学的集塵手段を用いて捕集する第1の集塵工程と、前記第1の集塵工程から排出される排ガス中に残存する塵埃を濾過式集塵手段を用いて捕集する第2の集塵工程とを備え、前記第1の集塵工程から排出される排ガスに、有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入し、前記濾過式集塵手段の濾過面にて前記ゼオライトからなる吸着剤を捕集して厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層を形成し、この吸着剤層により前記排ガスに含まれる有機化合物を吸着し、この吸着剤層の通風抵抗を一定に保つために濾過面にて捕集された吸着剤を取り除いて回収し、この回収された吸着剤を、有機化合物が少ない場合には第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用し、この吸着剤の性能が低下した場合には該吸着剤を加熱して有機化合物を脱離させた上で第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用するので、排ガスに有機化合物や臭気成分が僅かに混入したり、塵埃の電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれたりした場合であっても、これら有機化合物や臭気成分等を完全に取り除くことができ、しかも、外部に散逸する虞もない。
したがって、廃棄物を原料の一部として用いたセメントの生産性を向上させることができる。
本発明のセメント製造設備の排ガスの処理装置によれば、セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を捕集する電気的集塵手段または力学的集塵手段と、前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入する吸着剤投入手段と、前記ゼオライトからなる吸着剤を濾過面にて捕集することにより形成された厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層により電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガス中に残存する塵埃を捕集する濾過式集塵手段とを備えたので、排ガスに含まれる塵埃に、有機化合物や臭気成分が僅かに混入したり、塵埃の電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれたりした場合であっても、これら有機化合物や臭気成分等を完全に取り除くことができ、外部に散逸する虞もない。
したがって、セメント製造設備からの排ガスの処理を確実に行うことができ、廃棄物を原料の一部として用いたセメントの生産性を向上させることができる。
本発明のセメント製造設備の排ガスの処理方法及び処理装置の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明の一実施形態のセメント製造設備を示す模式図であり、有機化合物および/または炭素成分を含む廃棄物をセメント原料の一部として用いるセメント製造設備の例である。図1中、図2と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
図において、40は排ガスの処理装置であり、電気集塵機(電気的集塵手段)13と、電気集塵機13の下流側に設けられたバグフィルタ(濾過式集塵手段)41と、バグフィルタ41の下流側に設けられ排ガスの流動を制御するためのファン42と、このバグフィルタ41の下流側に設けられバグフィルタ41から回収される塵埃及び吸着剤を、塵埃と吸着剤とに分離する吸着剤分離装置(分離手段)43と、この分離された吸着剤から有機化合物を脱離させる吸着剤再生装置(脱離手段)44と、この有機化合物が脱離された吸着剤を吸着剤循環ライン(循環手段)46を介して電気集塵機13から排出される排ガスに投入する吸着剤投入装置(吸着剤投入手段)45と、吸着剤を貯留する貯蔵ビン47と、この貯蔵ビン47に貯留された吸着剤を電気集塵機13から排出される排ガスに投入する吸着剤供給装置(第2の吸着剤投入手段)48と、これらを制御する制御装置(図示略)とにより構成されている。
なお、49はバグフィルタ41から排出される排ガスの流れである。
電気集塵機13は、比較的低圧損にて微細な塵埃を捕集するもので、排ガス中の微粒子である塵埃を効果的に除去することができればよく、この電気集塵機13の替わりに慣性集塵機や遠心力集塵機を用いてもよい。
バグフィルタ41は、電気集塵機13では完全に捕集しきれずに排出されてしまった排ガス中に含まれる微粒子である塵埃、例えば、電気抵抗値が10〜5×1010Ω・cmの範囲外の塵埃、帯電し難い塵埃、非イオン性の塵埃等を捕集するもので、耐熱性材料からなるフィルタが好ましい。
ファン42は、制御装置(図示せず)により電気集塵機13およびバグフィルタ41を通過する排ガスの流量、ガス圧力等を塵埃除去に効果的な最適な量に制御するもので、特に、電気集塵機13やバグフィルタ41の流量や流速を一定値に保つ機能を有する。
吸着剤分離装置43は、バグフィルタ41から回収された塵埃を含む吸着剤を塵埃と吸着剤とに分離するもので、例えば、遠心分級機が好適に用いられる。ここで、吸着剤の粒子径が数百μm以上の場合、振動篩なども使用することができる。
本発明にて使用される吸着剤としては、排ガスに対して脱臭効果を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、粉末薫炭、ゼオライト粉末等が好適に用いられる。これらの吸着剤は、循環再利用が可能なことから、特に好ましいものである。
吸着剤再生装置44は、吸着剤分離装置43により分離された吸着剤から有機化合物のみを脱離させるもので、例えば、圧力スイングを用いた分離装置、過熱蒸気を用いた加熱による分離装置等が好適に用いられる。
吸着剤投入装置45は、吸着剤再生装置44により有機化合物が離脱された吸着剤を、電気集塵機13により塵埃が除去された排ガス中に投入するもので、空気輸送によってノズルから噴出させることによって、電気集塵機13から排出される排ガスの流れ33に混合するものである。
このセメント製造設備において使用することができる原料としては、天然に存在する鉱石を掘削採取して得られる石灰石、粘土質原料、珪石等の珪酸質原料、酸化鉄等を微粉砕混合したセメント原料の他、有機系廃棄物、無機系廃棄物等を用いることができる。
無機系廃棄物としては、残留炭素を含む石炭灰、高炉スラグ、高炉ダスト、未燃灰等が用いられ、これらの無機系廃棄物は粘土質原料の代替品として好適である。
有機系廃棄物としては、有機化合物や臭気成分を含む廃棄物、例えば、下水汚泥、廃タイヤ、廃油、パルプスラッジ等が用いられる。
なお、これらの有機系廃棄物は、乾式キルンの窯尻部または仮焼炉に投入して処理されるので、有機物は完全に燃焼分解される。しかし、上記の粘土質原料の代替品として用いられる無機系廃棄物に有機物が含まれる場合は、僅かではあるが、セメント焼成設備の排ガスに揮化して集塵装置にて捕集されずに外部に排出される虞がある。
次に、このセメント製造設備を用いた排ガスの処理方法について説明する。
このセメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃には、有機化合物や臭気成分が僅かに混入されたり、塵埃の電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれりしているので、電気集塵機13及びバグフィルタ41を用いて、これら有機化合物や臭気成分、あるいは炭素成分等を完全に除去し、外部に散逸させないようにする必要がある。
この電気集塵機13では、排ガス中に混入する塵埃の大部分は捕集されるが、例えば、電気抵抗値が10〜5×1010Ω・cmの範囲外の塵埃、帯電し難い塵埃、非イオン性の塵埃等については捕集しきれずにそのまま排出される。
この捕集しきれずに残った塵埃は、バグフィルタ41により捕集され、また、排ガス中に含まれる臭気成分は、バグフィルタ41の濾材の表面に形成された吸着剤の堆積層(後述)により吸着され、よりクリーンになった排ガスは、排気煙突14から大気中に放出される。
上記の吸着剤は、吸着剤貯蔵ビン47から吸着剤供給装置48により取り出され、空気輸送にて、電気集塵機13から排出される排ガスの流れ33に分散投入される。
投入された吸着剤は、この排ガスの流れ33の中で均一に分散して数秒間排ガス中を漂い、排ガス中の塵埃に含まれる有機化合物や臭気成分を吸着したのち、バックフィルタ41の濾材の表面にて捕集される。この捕集された吸着剤は濾材上に吸着剤の堆積層を形成して、排ガス中の塵埃に含まれる有機化合物や臭気成分を更に吸着する。
バックフィルタ41の濾材の表面に形成された吸着剤の堆積層の厚さは1mm以上が好ましい。堆積層を厚くすることによって、有機化合物や臭気成分の吸着効率が高まる。
バックフィルタ41では、濾材の表面に形成された吸着剤の堆積層が厚くなり過ぎた場合、通風抵抗が高くならない範囲で、堆積層をパルス空気を吹き込むことによって取り除き、通風抵抗を一定に保つようにする。この場合、吸着剤の堆積層の通風抵抗(圧力損失)は5〜30mb(0.5〜3kPa)の範囲で行われる。
バックフィルタ41の濾材の表面から取り除かれて回収された吸着剤は、有機化合物や臭気成分の吸着量が少ない場合には、そのまま電気集塵機13から排出される排ガスの流れ33に分散投入することで循環使用されるが、循環使用回数の増加とともに吸着剤の吸着性能が低下した場合には、そのままでは循環使用できないので、吸着性能を回復させる必要がある。
吸着性能を回復させるには、吸着剤分離装置43を用いてセメント製造設備からの排ガス中の塵埃を排ガスから分離する。
電気集塵機13から排出される排ガス中に存在する塵埃の粒子径は、数十μm以下であることが多く、使用する吸着剤の粒子径を吸着剤分離装置43にて容易に分離することが可能な粒子径とすることにより、排ガス中の塵埃を効率よく取り除くことができる。また、粒子径を大きくすることにより、バグフィルタ41での通風抵抗を低下させることができるので、濾材上の吸着剤の堆積層を厚くすることが可能となり、粒子径が大きいことによる吸着速度の低下を補償することが可能となる。
次いで、吸着剤再生装置44を用いて吸着剤から有機化合物等の吸着物質を離脱させる。
吸着剤から有機化合物を脱離させる方法としては、(a)昇温による吸着質を脱離(蒸発)させる熱再生、(b)減圧下で脱離させる減圧再生、(c)不活性ガスを流して脱離するパージ再生等があるが、有機化合物のみを効率的にしかも完全に脱離させる方法としては、吸着剤を加熱して再生する方法が好ましい。
吸着剤を加熱して再生する場合、吸着剤再生装置44に高温のガスまたは過熱蒸気を導入して加熱し、吸着剤から有機化合物を脱離させる。吸着剤として活性炭を用いた場合、活性炭を劣化させずに有機化合物のみを効率的に離脱させる温度としては、約200℃程度までが好ましい。加熱用のガスとしては、ロータリーキルン8から排出される200℃以上の排ガスも利用することが可能である。
一方、吸着剤にゼオライトなどの無機系の吸着剤を使用する場合は、加熱により劣化することが少ないので、300℃程度の高温度で吸着物質を脱離することが可能である。
この様にして再生された吸着剤は、吸着剤投入装置45により、吸着剤循環ライン46を経由して、電気集塵機13から排出された排ガスに投入され、循環使用される。
また、吸着剤分離装置43により分離された塵埃及び再生装置44で脱離した有機化合物や臭気成分を含むガスは、ロータリーキルン8の窯尻部の800℃以上の高温部に導入され、有機成分が燃焼分解されることによって、処理することが出来る。
以上説明したように、本実施形態の排ガスの処理方法によれば、排ガスに含まれる塵埃に有機化合物や臭気成分が僅かに混入したり、塵埃の電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれたりした場合であっても、これら有機化合物や臭気成分等を完全に取り除くことができ、外部に散逸する虞もない。
したがって、廃棄物を原料の一部として用いたセメントの生産性を向上させることができる。
本実施形態の排ガスの処理装置によれば、排ガスに含まれる塵埃に、有機化合物や臭気成分が僅かに混入したり、塵埃の電気抵抗値を変動させるような炭素成分等が含まれたりした場合であっても、これら有機化合物や臭気成分等を完全に取り除くことができ、外部に散逸する虞もない。
したがって、セメント製造設備からの排ガスの処理を確実に行うことができ、
本発明の一実施形態のセメント製造設備を示す模式図である。 従来のセメント製造設備を示す模式図である。
符号の説明
1 原料ミル
2 サイクロン
3 セメント原料貯蔵庫
5 下水汚泥を含む原料用サイロ
6 廃タイヤを含む原料用貯蔵設備
7 廃プラスチックスを含む燃料用サイロ
8 ロータリーキルン
9 バーナー部
10 仮焼炉
11 サスペンションプレヒータ
12 クリンカクーラ
13 電気集塵機
14 排気煙突
21 セメント原料供給ライン
22 有機系廃棄物を含む原料供給ライン
23 セメント原料粉供給ライン
24 セメントクリンカ搬送ライン
25 下水汚泥供給ライン
26 廃タイヤ供給ライン
27 廃プラスチックス供給ライン
31 サスペンションプレヒータからの排ガスの流れ
32 原料ミルから排出される排ガスの流れ
33 電気集塵機から排出される排ガスの流れ
34 クリンカクーラから排出される二次空気の流れ
40 排ガスの処理装置
41 バグフィルタ
42 ファン
43 吸着剤分離装置
44 吸着剤再生装置
45 吸着剤投入装置
46 吸着剤循環ライン
47 貯蔵ビン
48 吸着剤供給装置
49 バグフィルタから排出される排ガスの流れ

Claims (5)

  1. セメント製造設備からの排ガスの処理方法であって、
    前記セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を電気的集塵手段または力学的集塵手段を用いて捕集する第1の集塵工程と、
    前記第1の集塵工程から排出される排ガス中に残存する塵埃を濾過式集塵手段を用いて捕集する第2の集塵工程を備え、
    前記第1の集塵工程から排出される排ガスに、有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入し、前記濾過式集塵手段の濾過面にて前記ゼオライトからなる吸着剤を捕集して厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層を形成し、この吸着剤層により前記排ガスに含まれる有機化合物を吸着し、前記吸着剤層の通風抵抗を一定に保つために前記濾過面にて捕集された前記吸着剤を取り除いて回収し、この回収された前記吸着剤を、前記有機化合物が少ない場合には前記第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用し、前記吸着剤の性能が低下した場合には該吸着剤を加熱して前記有機化合物を脱離させた上で前記第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することで循環使用することを特徴とするセメント製造設備の排ガスの処理方法。
  2. 回収した前記吸着剤に吸着された有機化合物を脱離させる離脱工程、回収した前記吸着剤から塵埃を分離する分離工程、のいずれか一方または双方の工程により前記吸着剤を再生し、前記第1の集塵工程から排出される排ガスに投入することを特徴とする請求項1記載のセメント製造設備の排ガスの処理方法。
  3. 前記有機化合物の脱離により生じた有機化合物を、前記セメント製造設備の高温部に導入して燃焼させることを特徴とする請求項2記載のセメント製造設備の排ガスの処理方法。
  4. セメント製造設備からの排ガスの処理装置であって、
    前記セメント製造設備からの排ガスに含まれる塵埃を捕集する電気的集塵手段または力学的集塵手段と、
    前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに有機化合物を吸着するゼオライトからなる吸着剤を投入する吸着剤投入手段と、
    前記ゼオライトからなる吸着剤を濾過面にて捕集することにより形成された厚みが1mm以上かつ通風抵抗が5〜30mbの範囲のゼオライトからなる吸着剤層により前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガス中に残存する塵埃を捕集する濾過式集塵手段とを備え、
    前記吸着剤層により前記排ガスに含まれる有機化合物を吸着し、
    前記吸着剤層の通風抵抗を一定に保つために前記濾過面にて捕集された前記吸着剤を取り除いて回収し、この回収された前記吸着剤を、前記有機化合物が少ない場合には前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに投入することで循環使用し、前記吸着剤の性能が低下した場合には該吸着剤を加熱して前記有機化合物を脱離させた上で前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに投入することで循環使用することを特徴とするセメント製造設備の排ガスの処理装置。
  5. 前記濾過式集塵手段またはその下流側に、
    この濾過式集塵手段から回収された塵埃及び吸着剤を、塵埃と吸着剤とに分離する分離手段と、
    この分離された吸着剤から有機化合物を脱離させる脱離手段とを設け、
    この有機化合物を脱離した吸着剤を、第2の吸着剤投入手段を用いて前記電気的集塵手段または力学的集塵手段から排出される排ガスに再度投入することを特徴とする請求項4記載のセメント製造設備の排ガスの処理装置。
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