JP4918870B2 - モータ制御装置及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents

モータ制御装置及び電動パワーステアリング装置 Download PDF

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本発明は、モータ制御装置及び電動パワーステアリング装置に関するものである。
従来、電動パワーステアリング装置(EPS)等に用いられるモータ制御装置の多くには、電力供給線の断線や駆動回路の接点故障等によるモータの何れかの相(U,V,Wの何れか)の通電不良を含む制御系の異常が生じた場合に、該異常の発生を検出可能な異常検出手段が設けられている。そして、当該異常の発生を検出した場合には、速やかにモータ制御を停止してフェールセーフを図る構成が一般的となっている。
ところが、EPSにおいては、こうしたモータ制御の停止に伴い、そのステアリング特性が大きく変化する。即ち、運転者が的確なステアリング操作を行うためには、より大きな操舵力が要求されることになる。この点を踏まえ、従来、上記のように通電不良相の発生を検出した場合であっても、図10に示すように、当該通電不良発生相以外の二相を通電相としてモータ制御を継続(同図に示される例は、U相異常、V,W相通電時)するモータ制御装置がある(例えば、特許文献1)。そして、これにより、操舵系に対するアシスト力の付与を継続して、フェールセーフに伴う運転者の負担の増大を回避することができる。
特開2003−26020号公報 特開2006−67731号公報
ところで、EPSのような高い静粛性が要求される用途におけるモータ駆動は、通常、所謂正弦波通電により行われ、当該正弦波通電を行うためのモータ制御信号の生成・出力は、多くの場合、検出された各相の相電流値をd/q座標系のd,q軸電流値に変換し、当該d/q座標系でのフィードバック制御を実行することにより行われる。そして、駆動回路の故障による過電流の発生やセンサ異常等、制御系の異常検出は、多くの場合、d/q座標系の電流偏差(主にq軸電流偏差)と所定の閾値との比較に基づいて行われる(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記従来例のように、通電不良相の発生時、当該通電不良発生相以外の二相を通電相としてモータ制御を継続した場合(二相駆動)、図11に示すように、モータトルクの制御目標値であるq軸電流指令値が一定であったとしても、d/q座標系の各電流値(d軸電流値及びq軸電流値)は、モータの回転角に応じて正弦波状に変化する。つまり、異常発生の有無に関わらず、特定の回転角(電気角)を除き、その回転角に応じた偏差が発生する。このため、上記従来の異常検出方法では、二相駆動時には、その異常検出ができなくなるという問題があり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、通電不良相発生に伴う二相駆動時においても制御系の異常検出が可能なモータ制御装置及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、d/q座標系における電流フィードバック制御の実行によりモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、前記モータ制御信号に基づいてモータに三相の駆動電力を供給する駆動回路とを有し、前記モータ制御信号出力手段は、d/q座標系の電流偏差と所定の閾値との比較に基づいて制御系の異常を検出するとともに前記モータの何れかの相に通電不良が発生した場合に該通電不良の発生を検出可能な異常検出手段を備え、前記通電不良が検出された場合には、該通電不良発生相以外の二相を通電相として前記モータ制御信号の出力を実行するモータ制御装置であって、前記異常検出手段は、前記二相を通電相とする場合には、該二相駆動の実行により生ずる前記モータの回転角に応じた前記d/q座標系の各電流値の変動に対応すべく、前記通電不良発生相及び前記回転角に基づいて前記閾値を変化させること、を要旨とする。
請求項2に記載の発明は、前記異常検出手段は、q軸電流偏差に基づき前記制御系の異常を検出するとともに、前記二相駆動時には、以下の各式、
Figure 0004918870
(但し、β:補正項、Iq*:q軸電流指令値)
により前記変化させるための補正項を演算すること、を要旨とする。
請求項3に記載の発明は、前記異常検出手段は、前記二相駆動時には、d軸電流偏差に基づき前記制御系の異常を検出するとともに、以下の各式、
Figure 0004918870
(但し、β:補正項、Iq*:q軸電流指令値)
により前記変化させるための補正項を演算すること、を要旨とする。
請求項4に記載の発明は、前記異常検出手段は、前記二相駆動時には、d/q座標系における合成ベクトルの偏差に基づき前記制御系の異常を検出するとともに、以下の各式、
Figure 0004918870
(但し、β:補正項、Iq*:q軸電流指令値)
により前記変化させるための補正項を演算すること、を要旨とする。
上記各構成によれば、d/q座標系における電流値の変動に対応すべく、通電不良発生相及び前記回転角に基づいて閾値を変化させることにより、二相駆動時であっても、制御系の異常を検出することができるようになる。ここで、二相駆動時には、q軸電流値(及びd軸電流指令値)は、正弦波状に変動する。従って、各回転角におけるその値は、非通電相となる相毎に、演算により求めることが可能であり、その変動分を補正項として演算し、該補正項により通常時の閾値を補正することにより、当該閾値を適切に変化させることが可能である。
請求項5に記載の発明は、d/q座標系における電流フィードバック制御の実行によりモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、前記モータ制御信号に基づいてモータに三相の駆動電力を供給する駆動回路とを有し、前記モータ制御信号出力手段は、d/q座標系の電流偏差と所定の閾値との比較に基づいて制御系の異常を検出するとともに前記モータの何れかの相に通電不良が発生した場合に該通電不良の発生を検出可能な異常検出手段を備え、前記通電不良が検出された場合には、該通電不良発生相以外の二相を通電相として前記モータ制御信号の出力を実行するモータ制御装置であって、前記異常検出手段は、前記二相を通電相とする場合には、該各通電相の少なくとも一方について、仮想的な相電流指令値を演算し、該相電流指令値と当該通電相の相電流値との間の偏差に基づき前記制御系の異常判定を実行すること、を要旨とする。
請求項6に記載の発明は、前記異常検出手段は、以下の各式、
Figure 0004918870
(但し、Iu*,Iv*,Iw*:相電流指令値、Iq*:q軸電流指令値)
により前記相電流指令値を演算すること、を要旨とする。
即ち、上記各構成のように、正弦波状に変化する相電流を用いて異常検出を行うことで、二相駆動時であっても、制御系の異常を検出することができるようになる。そして、その際に用いる仮想的な相電流指令値は、仮に相電流フィードバック制御により当該相に正弦波通電を行うとした場合の相電流指令値を演算することで求めることが可能である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
上記構成によれば、通電不良相発生に伴う二相駆動時においても、操舵系に対するアシスト力付与を継続して、フェールセーフに伴う運転者の負担の増大を回避しつつ、且つ更なる制御系の異常が発生した場合には、速やかにこれを検知して確実にフェールセーフを図ることができるようになる。
本発明によれば、通電不良相発生に伴う二相駆動時においても制御系の異常検出が可能なモータ制御装置及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のEPS1の概略構成図である。同図に示すように、ステアリングホイール(ステアリング)2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により操舵輪6の舵角が変更されるようになっている。
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、その駆動源であるモータ12がラック5と同軸に配置された所謂ラック型のEPSアクチュエータであり、モータ12が発生するアシストトルクは、ボールねじ機構(図示略)を介してラック5に伝達される。尚、本実施形態のモータ12は、ブラシレスモータであり、ECU11から三相(U,V,W)の駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、モータ制御装置としてのECU11は、このモータ12が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
本実施形態では、ECU11には、トルクセンサ14及び車速センサ15が接続されている。そして、ECU11は、これらトルクセンサ14及び車速センサ15によりそれぞれ検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、EPSアクチュエータ10の作動、即ちパワーアシスト制御を実行する。
次に、本実施形態のEPSの電気的構成について説明する。
図2は、本実施形態のEPSの制御ブロック図である。同図に示すように、ECU11は、モータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段としてのマイコン17と、モータ制御信号に基づいてモータ12に三相の駆動電力を供給する駆動回路18とを備えている。
尚、本実施形態の駆動回路18は、直列に接続された一対のスイッチング素子を基本単位(アーム)として各相に対応する3つのアームを並列接続してなる周知のPWMインバータであり、マイコン17の出力するモータ制御信号は、駆動回路18を構成する各スイッチング素子のオンduty比を規定するものとなっている。そして、モータ制御信号が各スイッチング素子のゲート端子に印加され、同モータ制御信号に応答して各スイッチング素子がオン/オフすることにより、車載電源(図示略)の直流電圧が三相(U,V,W)の駆動電力に変換されてモータ12に供給されるようになっている。
本実施形態では、ECU11には、モータ12に通電される各相電流値Iu,Iv,Iwを検出するための電流センサ21u,21v,21w、及びモータ12の回転角θを検出するための回転角センサ22が接続されている。そして、マイコン17は、これら各センサの出力信号に基づき検出されたモータ12の各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θ、並びに上記操舵トルクτ及び車速Vに基づいて駆動回路18にモータ制御信号を出力する。
詳述すると、マイコン17は、操舵系に付与するアシスト力、即ちモータトルクの制御目標値として電流指令値を演算する電流指令値演算手段としての電流指令値演算部23と、電流指令値演算部23により算出された電流指令値に基づいてモータ制御信号を生成するモータ制御信号生成手段としてのモータ制御信号生成部24とを備えている。
電流指令値演算部23は、上記トルクセンサ14及び車速センサ15により検出された操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を演算し、モータ制御信号生成部24に出力する。一方、モータ制御信号生成部24には、電流指令値演算部23により算出されたこれらd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とともに、各電流センサ21u,21v,21wにより検出された各相電流値Iu,Iv,Iw、及び回転角センサ22により検出された回転角θが入力される。そして、モータ制御信号生成部24は、これら各相電流値Iu,Iv,Iw、及び回転角θ(電気角)に基づいて、d/q座標系における電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号を生成する。
即ち、モータ制御信号生成部24において、各相電流値Iu,Iv,Iwは、回転角θとともに3相/2相変換部25に入力され、同3相/2相変換部25によりd/q座標系のd軸電流値Id及びq軸電流値Iqに変換される。また、電流指令値演算部23の出力するq軸電流指令値Iq*は、上記q軸電流値Iqとともに減算器26qに入力され、d軸電流指令値Id*は、d軸電流値Idとともに減算器26dに入力される。尚、本実施形態の電流指令値演算部23は、d軸電流指令値Id*として「0」を出力する(Id*=0、d軸非干渉制御)。これら減算器26d,26qにおいて演算されたd軸電流偏差ΔId及びq軸電流偏差ΔIqは、それぞれ対応するF/B制御部27d,27qに入力される。そして、これら各F/B制御部27d,27qにおいて、電流指令値演算部23が出力するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に実電流であるd軸電流値Id及びq軸電流値Iqを追従させためのフィードバック制御が行われる。
具体的には、F/B制御部27d,27qは、入力されたd軸電流偏差ΔId及びq軸電流偏差ΔIqに所定のF/Bゲイン(PIゲイン)を乗ずることにより、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を演算する。そして、各F/B制御部27d,27qにより演算されたこれらd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*は、回転角θとともに2相/3相変換部28に入力され、同2相/3相変換部28において三相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換される。
2相/3相変換部28において演算された各電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*は、PWM変換部30に入力され、同PWM変換部30において、該各電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応するduty指令値αu,αv,αwが生成される。そして、モータ制御信号生成部24は、これら各duty指令値αu,αv,αwに示されるオンduty比を有するモータ制御信号を生成し、マイコン17は、そのモータ制御信号を、駆動回路18を構成する各スイッチング素子(のゲート端子)に出力することにより、同駆動回路18の作動、即ちモータ12への駆動電力の供給を制御する。
[異常発生時の制御態様]
次に、本実施形態のECUにおける異常発生時の制御態様について説明する。
図2に示すように、本実施形態のECU11では、マイコン17には、EPS1に何らかの異常が生じた場合に、該異常の態様を特定するための異常判定部31が設けられている。そして、ECU11(マイコン17)は、この異常判定部31により特定(判定)された異常の態様に応じて、モータ12の制御モードを変更する。
詳述すると、異常判定部31には、EPSアクチュエータ10の機械系統の異常を検出するための異常信号S_trが入力されるようになっており、同異常判定部31は、この入力される異常信号S_trに基づいて、EPS1における機械系統の異常を検出する。また、異常判定部31には、q軸電流指令値Iq*及びq軸電流値Iq、モータ12の各相電流値Iu,Iv,Iw、回転角速度ω、並びに各相のduty指令値αu,αv,αw等が入力される。そして、異常判定部31は、これら各状態量に基づいて、制御系における異常の発生を検出する。
具体的には、本実施形態の異常判定部31は、トルクセンサ14の故障や駆動回路18の故障等、制御系全般に関する異常の発生を検出するために、q軸電流偏差ΔIqを監視する。即ち、q軸電流偏差ΔIqと所定の閾値とを比較し、q軸電流偏差ΔIqが当該閾値以上となった場合には、制御系に異常が発生したものと判定する。
また、異常判定部31は、各相電流値Iu,Iv,Iw、回転角速度ω、及び各相のduty指令値αu,αv,αwに基づいて、動力線(モータコイルを含む)の断線や駆動回路18の接点不良等に起因する通電不良相の発生等を検出する。この通電不良相発生の検出は、X相(X=U,V,W)の相電流値Ixが所定値Ith以下(|Ix|≦Ith)、且つ回転角速度ωが断線判定の対象範囲内(|ω|≦ω0)である場合に、該相に対応するduty指令値αxが所定値Ith及び判定対象範囲を規定する閾値ω0に対応する所定範囲(αLo≦αx≦αHi)にない状態が継続するか否かにより行われる。
尚、この場合において、上記相電流値Ixの閾値となる所定値Ithは「0」近傍の値に設定され、回転角速度ωの閾値ω0は、モータの基底速度(最高回転数)に相当する値に設定される。そして、duty指令値αxに関する閾値(αLo,αHi)は、それぞれ通常制御においてduty指令値αxが取り得る下限値よりも小さな値、及び上限値よりも大きな値に設定されている。
即ち、図3のフローチャートに示すように、異常判定部31は、検出される相電流値Ix(の絶対値)が所定値Ith以下であるか否かを判定し(ステップ101)、所定値Ith以下である場合(|Ix|≦Ith、ステップ101:YES)には、続いて回転角速度ω(の絶対値)が所定の閾値ω0以下であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、回転角速度ωが所定の閾値ω0以下である場合(|ω|≦ω0、ステップ102)には、duty指令値αxが上記の所定範囲(αLo≦αx≦αHi)内にあるか否かを判定し(ステップ103)、所定範囲内にない場合(ステップ103:NO)には、該X相に通電不良が生じているものと判定する(ステップ104)。
そして、相電流値Ixが所定値Ithよりも大きい場合(|Ix|>Ith、ステップ101:NO)、回転角速度ωが閾値ω0よりも大きい場合(|ω|>ω0、ステップ102:NO)、又はduty指令値αxが上記所定範囲内にある場合(αLo≦αx≦αHi、ステップ103:YES)には、X相に通電不良が生じていないと判定する(X相正常、ステップ105)。
つまり、X相(U,V,W相の何れか)に通電不良(断線)が生じた場合、当該相の相電流値Ixは「0」となる。ここで、X相の相電流値Ixが「0」又は「0に近い値」となる場合には、このような断線発生時以外にも以下の二つのケースがありうる。
− モータの回転角速度が基底速度(最高回転数)に達した場合
− 電流指令自体が略「0」である場合
この点を踏まえ、本実施形態では、先ず、判定対象であるX相の相電流値Ixを所定値Ithと比較することにより、当該相電流値Ixが「0」であるか否かを判定する。そして、断線時以外に相電流値Ixが「0」若しくは「0に近い値」をとる上記二つのケースに該当するか否かを判定し、当該二つのケースに該当しない場合には、X相に断線が発生したものと判定する。
即ち、相電流値Ixが「0」近傍の所定値Ith以下となるほどの回転角速度ω(基底速度)ではないにも関わらず、極端なduty指令値αxが出力されている場合には、当該X相に通電不良が生じているものと判定することができる。そして、本実施形態では、異常判定部31が、U,V,Wの各相について、上記判定を実行することにより、通電不良が発生した相を特定する構成となっている。
尚、説明の便宜のため図3のフローチャートでは省略したが、上記判定は、電源電圧がモータ12を駆動するために必要な規定電圧以上である場合を前提として行われる。そして、最終的な異常検出の判断は、所定ステップ104において通電不良が生じているものと判定される状態が所定時間以上継続したか否かにより行われる。
本実施形態では、ECU11(マイコン17)は、この異常判定部31における異常判定の結果に基づいて、モータ12の制御モードを切り替える。具体的には、異常判定部31は、上記のような通電不良検出を含む異常判定の結果を異常検出信号S_tmとして出力し、電流指令値演算部23及びモータ制御信号生成部24は、その入力される異常検出信号S_tmに応じたd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*の演算、及びモータ制御信号の生成を実行する。そして、これにより、マイコン17におけるモータ12の制御モードが切り替えられるようになっている。
さらに詳述すると、本実施形態のECU11は、通常時の制御モードである「通常制御モード」、及びモータ12の駆動を停止すべき異常が発生している場合の制御モードである「アシスト停止モード」、並びにモータ12の各相の何れかに通電不良が生じた場合の制御モードである「二相駆動モード」、以上の大別して3つの制御モードを有している。そして、異常判定部31の出力する異常検出信号S_tmが「通常制御モード」に対応するものである場合には、電流指令値演算部23及びモータ制御信号生成部24は、上記のような通常時のd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*の演算、及びモータ制御信号の生成を実行する。
一方、異常判定部31の出力する異常検出信号S_tmが「アシスト停止モード」である場合には、電流指令値演算部23及びモータ制御信号生成部24は、モータ12の駆動を停止すべく、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*の演算、及びモータ制御信号の生成を実行する。尚、「アシスト停止モード」が選択される場合としては、機械系統の異常やトルクセンサ14に異常が発生した場合のほか、電力供給系統における異常発生時については、過電流が生じた場合等が挙げられる。また、「アシスト停止モード」には、直ちにモータ12の駆動を停止する場合のほか、モータ12の出力を徐々に低減する、即ちアシスト力を徐々に低減した後に停止させる場合があり、この場合、モータ制御信号生成部24は、その出力するq軸電流指令値Iq*の値(絶対値)を徐々に低減する。そして、マイコン17は、モータ12の停止後、駆動回路18を構成する各スイッチング素子を開状態とし、図示しない電源リレーを開放する構成となっている。
また、「二相駆動モード」に対応する異常検出信号S_tmには、通電不良発生相を特定する情報が含まれている。そして、異常判定部31の出力する異常検出信号S_tmがこの「二相駆動モード」に対応するものである場合、モータ制御信号生成部24は、当該通電不良発生相以外の二相を通電相(図10参照)とするモータ制御信号の生成を実行する。そして、これにより、操舵系に対するアシスト力付与を継続して、フェールセーフに伴う運転者の負担の増大を回避する構成となっている。
次に、マイコンによる上記異常判定及び制御モードの切り替え処理について説明する。
図4のフローチャートに示すように、マイコン17は、先ず何らかの異常が発生したか否かを判定し(ステップ201)、異常が発生したと判定した場合(ステップ201:YES)には、続いてその異常が制御系の異常であるか否かを判定する(ステップ202)。次に、ステップ202において、制御の異常が発生したと判定した場合(ステップ202:YES)、現在の制御モードが二相駆動モードであるか否かを判定し(ステップ203)、二相駆動モードではない場合(ステップ203:NO)には、当該制御系の異常が、通電不良相の発生であるか否かを判定する(ステップ204)。そして、通電不良相が発生したと判定した場合(ステップ204:YES)には、当該通電不良相以外の残る二相を通電相とするモータ制御信号の出力を実行する(二相駆動モード、ステップ205)。
尚、上記ステップ201において、特に異常はないと判定した場合(ステップ201:NO)には、マイコン17は、通常のモータ制御信号の出力を実行する(通常制御モード、ステップ206)。また、上記ステップ202において、制御系以外の異常が発生したと判定した場合(ステップ202:NO)、ステップ203において、既に二相駆動モードであると判定した場合(ステップ203:YES)、又は上記ステップ203において、通電不良相の発生以外の異常が発生したと判定した場合(ステップ203:NO)には、マイコン17は、アシスト停止モードへと移行する(ステップ207)。そして、モータ12の駆動を停止するためのモータ制御信号の出力、及び電源リレーの開放等を実行する。
[制御系の異常検出]
次に、本実施形態における制御系の異常検出の態様について説明する。
上述のように、本実施形態の異常判定部31は、q軸電流偏差ΔIqと所定の閾値I1との比較に基づいて、制御系における異常の発生を検出する。しかしながら、二相駆動時(二相駆動モード)には、制御目標値としてのq軸電流指令値Iq*が一定であるとしても、実際のq軸電流値Iqは、モータ12の回転角θに応じて正弦波状に変化する(図11参照)。このため、二相駆動時には、通常時(通常制御モード)と同様の制御系の異常検出はできない。
この点を踏まえ、本実施形態では、異常判定部31は、二相駆動時には、該二相駆動の実行により生ずるq軸電流値Iqの変動に対応すべく、二相駆動における非通電相(二相駆動の原因となった通電不良発生相)及び回転角θに基づいて、異常判定に用いる閾値を変化させる。
具体的には、異常判定部31は、二相駆動における非通電相に応じて、以下の(1)〜(3)式により、上記のように閾値を変化させるための補正項βを演算する。
Figure 0004918870
そして、この補正項βにより補正された閾値を用いて異常判定を実行することにより、二相駆動時においても、制御系における異常の検出が可能な構成となっている。
詳述すると、図5のフローチャートに示すように、異常判定部31は、制御系の異常検出に用いる状態量として、q軸電流指令値Iq*及びq軸電流値Iq、並びに回転角θを取得すると(ステップ301)、先ず、q軸電流偏差ΔIqを演算する(ΔIq=Iq*−Iq、ステップ302)。次に、異常判定部31は、計測フラグが「ON」であるか否か判定し(ステップ303)、計測フラグが「ON」ではない場合(計測フラグ=「OFF」、ステップ303:NO)には、経過時間計測用のカウンタを初期化する(t=0、ステップ304)。尚、上記ステップ303において、既に計測フラグが「ON」であると判定した場合(ステップ303:YES)には、異常判定部31は、上記ステップ304におけるカウンタの初期化処理を実行しない。
次に、異常判定部31は、現在の制御モードが二相駆動モード(二相駆動中)であるか否かを判定し(ステップ305)、二相駆動中ではない場合(ステップ305:NO)、即ち通常制御中(通常制御モード滞在中)であると判定した場合には、q軸電流偏差ΔIq(の絶対値)が所定の閾値I1以上であるか否かを判定する(ステップ306)。そして、q軸電流偏差ΔIq(の絶対値)が所定の閾値I1以上である場合(|ΔIq|≧I1、ステップ306:YES)には、計測フラグを「ON」として(ステップ307)、上記カウンタをインクリメントする(t=t+1、ステップ308)。尚、上記ステップ306において、q軸電流偏差ΔIq(の絶対値)が所定の閾値I1に満たない場合(|ΔIq|<I1、ステップ306:NO)には、異常判定部31は、計測フラグを「OFF」とする(ステップ309)。
次に、異常判定部31は、カウンタ値tが所定の閾値t1以上となったか否かを判定する(ステップ310)。そして、カウンタ値tが所定の閾値t1以上となったと判定した場合(ステップ310:YES)には、制御系に異常が発生したものと判定する(ステップ311)。
即ち、本実施形態の異常判定部31は、q軸電流偏差ΔIqの値が制御系における異常の発生を示す場合(上記ステップ306:YES、又は以下のステップ313:YES、若しくはステップ314:YES)に計測フラグを「ON」とし、その継続時間のカウントを開始する。そして、その異常を示す状態が所定時間以上継続した場合(ステップ310:YES)に制御系に異常が発生したものと判定する。
一方、上記ステップ305において、既に二相駆動中であると判定した場合(ステップ305:YES)には、異常判定部31は、先ず、当該二相駆動における非通電相及び回転角θに基づいて、上記(1)〜(3)式により、所定の閾値I1を変化させるための補正項βを演算する(ステップ312)。
次に、異常判定部31は、q軸電流偏差ΔIqが、閾値I1の符号を正とした値(+I1)に補正項βを加えた値以上であるかを判定し(ステップ313)、q軸電流偏差ΔIqが当該補正された値よりも小さい場合(ステップ313:NO)には、閾値I1の符号を負とした値(−I1)に補正項βを加えた値以下であるかを判定する(ステップ314)。そして、 ステップ313においてq軸電流偏差ΔIqが当該補正された値以上である(ΔIq≧I1+β、ステップ313:YES)、又はステップ314においてq軸電流偏差ΔIqが当該補正された値以下である(ΔIq≦−I1+β、ステップ314:YES)と判定した場合には、上記ステップ307,308の処理を実行する。即ち、計測フラグを「ON」として(ステップ307)、上記カウンタをインクリメントする(t=t+1、ステップ308)。
尚、上記ステップ314において、q軸電流偏差ΔIqが当該補正された値よりも大きいと判定した場合(ΔIq>−I1+β、ステップ314:NO)、即ち適正範囲にあると判定した場合には、異常判定部31は、計測フラグを「OFF」とする(ステップ315)。
そして、異常判定部31は、上記ステップ310の処理を実行し、当該異常を示す状態が所定時間以上継続した場合(ステップ310:YES)には、制御系に異常が発生したものと判定する(ステップ311)。
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
○異常判定部31は、二相駆動時には、該二相駆動の実行により生ずるq軸電流値Iqの変動に対応すべく、二相駆動における非通電相(二相駆動の原因となった通電不良発生相)及び回転角θに基づいて、異常判定に用いる閾値を変化させる。
即ち、二相駆動時には、q軸電流値Iqは、図11に示すように正弦波状に変動する。そして、各回転角θにおける値は、非通電相となる相毎に、演算により求めることが可能である。従って、その変動分を補正項βとして演算し、該補正項βにより通常時の閾値I1を補正した値を用いて異常判定を実行することにより、二相駆動時であっても、制御系の異常を検出することができるようになる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1の実施形態との主たる相違点は、制御系の異常検出の態様のみである。このため、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態では、異常判定部31には、d軸電流指令値Id*及びd軸電流値Idが入力されるようになっている。そして、本実施形態の異常判定部31は、二相駆動時には、d軸電流偏差ΔIdに基づいて上記制御系の異常を検出するとともに、二相駆動の実行により生ずるd軸電流値Idの変動に対応すべく、二相駆動における非通電相(二相駆動の原因となった通電不良発生相)及び回転角θに基づいて、その異常判定に用いる閾値を変化させる。
具体的には、異常判定部31は、二相駆動における非通電相に応じて、以下の(4)〜(6)式により、上記のように閾値を変化させるための補正項βを演算する。
Figure 0004918870
そして、この補正項βにより補正された閾値を用いて異常判定を実行することにより、二相駆動時においても、制御系における異常の検出が可能な構成となっている。
次に、本実施形態における制御系の異常検出の態様について説明する。
尚、以下に参照する図7のフローチャートにおいて、ステップ401〜ステップ411の処理は、図5のフローチャートにおけるステップ301〜ステップ311の処理と同一である(ステップ401において取得する状態量(Id*,Id)のみが相違する)。このため、説明の便宜上、当該ステップ401〜ステップ411の処理については、その説明を省略する。
図7に示すように、異常判定部31は、ステップ405において、既に二相駆動中であると判定した場合(ステップ405:YES)には、先ず、d軸電流偏差ΔIdを演算する(ΔId=Id*−Id、ステップ412)。そして、異常判定部31は、二相駆動における非通電相及び回転角θに基づいて、上記(4)〜(6)式により、二相駆動時の異常判定に用いる所定の閾値I2を変化させるための補正項βを演算する(ステップ413)。尚、この所定の閾値I2は、通常時の異常判定に用いるq軸についての閾値I1に相当するものである(ステップ406参照)。
次に、異常判定部31は、d軸電流偏差ΔIdが、閾値I2の符号を正とした値(+I2)に補正項βを加えた値以上であるかを判定し(ステップ414)、d軸電流偏差ΔIdが当該補正された値よりも小さい場合(ステップ414:NO)には、閾値I2の符号を負とした値(−I2)に補正項βを加えた値以下であるかを判定する(ステップ415)。そして、 ステップ414においてd軸電流偏差ΔIdが当該補正された値以上である(ΔId≧I2+β、ステップ414:YES)、又はステップ415においてd軸電流偏差ΔIdが当該補正された値以下である(ΔId≦−I2+β、ステップ415:YES)と判定した場合には、ステップ407,408の処理を実行する。即ち、計測フラグを「ON」として(ステップ407)、上記カウンタをインクリメントする(t=t+1、ステップ408)。
一方、上記ステップ415において、d軸電流偏差ΔIdが当該補正された値よりも大きいと判定した場合(ΔId>−I2+β、ステップ415:NO)、即ち適正範囲にあると判定した場合には、異常判定部31は、計測フラグを「OFF」とする(ステップ416)。
そして、異常判定部31は、ステップ410の処理を実行し、当該異常を示す状態が所定時間以上継続した場合(ステップ410:YES)には、制御系に異常が発生したものと判定する(ステップ411)。
以上、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1の実施形態との主たる相違点は、制御系の異常検出の態様のみであり、その制御ブロックは、上記第2の実施形態のものと同一である(図6参照)。このため、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
本実施形態の異常判定部31は、二相駆動時には、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*の合成ベクトルIdq*とd軸電流値Id及びq軸電流値Iqの合成ベクトルIdqとの偏差ΔIdqに基づいて上記制御系の異常を検出する。尚、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*の合成ベクトルIdq*、並びにd軸電流値Id及びq軸電流値Iqの合成ベクトルIdqは、いうまでもなく、それぞれ、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、並びにd軸電流値Id及びq軸電流値Iqの二乗和の平方根である。そして、二相駆動の実行により生ずるd軸電流値Id及びq軸電流値Iqの合成ベクトルIdqの変動に対応すべく、二相駆動における非通電相(二相駆動の原因となった通電不良発生相)及び回転角θに基づいて、その異常判定に用いる閾値を変化させる。
具体的には、異常判定部31は、二相駆動における非通電相に応じて、以下の(7)〜(9)式により、上記のように閾値を変化させるための補正項βを演算する。
Figure 0004918870
そして、この補正項βにより補正された閾値を用いて異常判定を実行することにより、二相駆動時においても、制御系における異常の検出が可能な構成となっている。
次に、本実施形態における制御系の異常検出の態様について説明する。
尚、以下に参照する図8のフローチャートにおいて、ステップ501〜ステップ511の処理は、図5のフローチャートにおけるステップ301〜ステップ311の処理と同一である(ステップ501において取得する状態量(Id*,Id)のみが相違する)。このため、説明の便宜上、当該ステップ501〜ステップ511の処理については、その説明を省略する。
図8に示すように、異常判定部31は、ステップ505において、既に二相駆動中であると判定した場合(ステップ505:YES)には、先ず、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*の合成ベクトルIdq*とd軸電流値Id及びq軸電流値Iqの合成ベクトルIdqとの偏差ΔIdqを演算する(ΔIdq=Idq*−Idq、ステップ512)。そして、異常判定部31は、二相駆動における非通電相及び回転角θに基づいて、上記(7)〜(9)式により、二相駆動時の異常判定に用いる所定の閾値I3を変化させるための補正項βを演算する(ステップ513)。尚、この所定の閾値I3は、通常時の異常判定に用いるq軸についての閾値I1に相当するものである(ステップ506参照)。
次に、異常判定部31は、合成ベクトルの偏差ΔIdqが、閾値I3の符号を正とした値(+I3)に補正項βを加えた値以上であるかを判定し(ステップ514)、合成ベクトルの偏差ΔIdqが当該補正された値よりも小さい場合(ステップ514:NO)には、閾値I3の符号を負とした値(−I3)に補正項βを加えた値以下であるかを判定する(ステップ515)。そして、 ステップ514において合成ベクトルの偏差ΔIdqが当該補正された値以上である(ΔIdq≧I3+β、ステップ514:YES)、又はステップ515において合成ベクトルの偏差ΔIdqが当該補正された値以下である(ΔIdq≦−I3+β、ステップ515:YES)と判定した場合には、ステップ507,508の処理を実行する。即ち、計測フラグを「ON」として(ステップ507)、上記カウンタをインクリメントする(t=t+1、ステップ508)。
一方、上記ステップ515において、合成ベクトルの偏差ΔIdqが当該補正された値よりも大きいと判定した場合(ΔIdq>−I3+β、ステップ515:NO)、即ち適正範囲にあると判定した場合には、異常判定部31は、計測フラグを「OFF」とする(ステップ516)。
そして、異常判定部31は、ステップ510の処理を実行し、当該異常を示す状態が所定時間以上継続した場合(ステップ510:YES)には、制御系に異常が発生したものと判定する(ステップ511)。
以上、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第4の実施形態を図面に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1の実施形態との主たる相違点は、制御系の異常検出の態様のみである。このため、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
本実施形態の異常判定部31は、二相駆動時には、二相の通電相のうちの何れかの相を判定相として、仮に相電流フィードバック制御により当該相に正弦波通電を行うとした場合の仮想的な相電流指令値Iy*を演算する(Y=U,V,W)。
具体的には、異常判定部31は、二相駆動における非通電相に応じて、以下の(10)〜(15)式により、上記仮想的な相電流指令値Iy*を演算する。
Figure 0004918870
そして、この仮想的な相電流指令値Iy*と当該相の相電流値Iyとの間の電流偏差ΔIyを演算し、当該電流偏差ΔIyと所定の閾値I4との比較に基づいて、異常判定を実行することにより、二相駆動時においても、制御系における異常の検出が可能な構成となっている。
次に、本実施形態における制御系の異常検出の態様について説明する。
尚、以下に参照する図9のフローチャートにおいて、ステップ601〜ステップ611の処理は、図5のフローチャートにおけるステップ301〜ステップ311の処理と同一である(ステップ601において取得する状態量(Iu,Iv,Iw)のみが相違する)。このため、説明の便宜上、当該ステップ601〜ステップ611の処理については、その説明を省略する。
図9に示すように、異常判定部31は、ステップ605において、既に二相駆動中であると判定した場合(ステップ605:YES)、先ず、二相の通電相のうちの一方を判定相として決定する(ステップ612)。尚、本実施形態では、二相の通電相のうち、判定相となる相は、通電不良相毎に、予め設定されている。
次に、異常判定部31は、上記(10)〜(15)式に基づいて当該判定相についての仮想的な相電流指令値Iy*を演算し(ステップ613)、更に当該判定相についての電流偏差ΔIyを演算する(ΔIy=Iy*−Iy、ステップ614)。そして、その電流偏差ΔIy(の絶対値)が所定の閾値I4以上であるか否かを判定し(ステップ615)、当該電流偏差ΔIy(の絶対値)が所定の閾値I4以上である場合(|ΔIy|≧I4、ステップ615:YES)には、ステップ607,608の処理を実行する。即ち、計測フラグを「ON」として(ステップ607)、上記カウンタをインクリメントする(t=t+1、ステップ608)。
一方、上記ステップ615において、電流偏差ΔIy(の絶対値)が所定の閾値I4に満たない場合(|ΔIy|<I4、ステップ615:NO)、即ち適正範囲にあると判定した場合には、異常判定部31は、計測フラグを「OFF」とする(ステップ616)。尚、ステップ615における所定の閾値I4は、通常時の異常判定に用いるq軸についての閾値I1に相当するものである(ステップ606参照)。
そして、異常判定部31は、ステップ610の処理を実行し、当該異常を示す状態が所定時間以上継続した場合(ステップ610:YES)には、制御系に異常が発生したものと判定する(ステップ611)。
以上、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化したが、EPS以外の用途に用いられるモータ制御装置に具体化してもよい。
・上記各実施形態では、モータ制御装置としてのECU11は、大別して、「通常制御モード」、「アシスト停止モード」、及び「二相駆動モード」の3つの制御モードを有することとした。しかし、異常発生時におけるモータ制御の形態は、これらのモードに限るものではない。つまり、通電不良相発生時に該通電不良発生相以外の二相を通電相としてモータ制御を実行する構成であれば、どのようなものに適用してもよい。また、異常検出(判定)の方法についても、本実施形態の構成に限るものではない。
・上記各実施形態では、通常時(通常制御モード)においては、q軸電流偏差ΔIqに基づき制御系の異常を検出する構成とした。しかし、これに限らず、本発明は、q軸電流偏差ΔIq以外のd/q座標系の電流偏差(d軸電流偏差、合成ベクトルの偏差)に基づいて、通常時における異常判定を行うものに適用してもよい。
・上記第4の実施形態では、二相駆動時には、二相の通電相のうちの一方を判定相として決定し、当該相について、電流偏差ΔIyに基づく異常判定を実行することとした。しかし、これに限らず、二相の通電相の双方を判定相として異常判定を実行する構成としてもよい。
電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。 第1の実施形態におけるEPSの電気的構成を示すブロック図。 通電不良相検出の処理手順を示すフローチャート。 異常判定及び制御モードの切り替えの処理手順を示すフローチャート。 第1の実施形態における制御系の異常検出の処理手順を示すフローチャート。 第2の実施形態におけるEPSの電気的構成を示すブロック図。 第2の実施形態における制御系の異常検出の処理手順を示すフローチャート。 第3の実施形態における制御系の異常検出の処理手順を示すフローチャート。 第4の実施形態における制御系の異常検出の処理手順を示すフローチャート。 通電不良発生相以外の二相を通電相とする二相駆動の態様を示す説明図。 二相駆動時におけるd軸電流及びq軸電流の推移を示す説明図。
符号の説明
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、10…EPSアクチュエータ、11…EPSECU、12…モータ、17…マイコン、18…駆動回路、23…電流指令値演算部、24…モータ制御信号生成部、31…異常判定部、Ix,Iu,Iv,Iw…相電流値、Iq*…q軸電流指令値、Iq…q軸電流値、ΔIq…q軸電流偏差、Id*…d軸電流指令値、Id…d軸電流値、ΔId…d軸電流偏差、Idq,Idq*…合成ベクトル、ΔIdq…偏差、Iy*…相電流指令値、Iy…相電流値、ΔIy…電流偏差、I1,I2,I3,I4…閾値、β…補正項、θ…回転角。

Claims (7)

  1. d/q座標系における電流フィードバック制御の実行によりモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、前記モータ制御信号に基づいてモータに三相の駆動電力を供給する駆動回路とを有し、前記モータ制御信号出力手段は、d/q座標系の電流偏差と所定の閾値との比較に基づいて制御系の異常を検出するとともに前記モータの何れかの相に通電不良が発生した場合に該通電不良の発生を検出可能な異常検出手段を備え、前記通電不良が検出された場合には、該通電不良発生相以外の二相を通電相として前記モータ制御信号の出力を実行するモータ制御装置であって、
    前記異常検出手段は、前記二相を通電相とする場合には、該二相駆動の実行により生ずる前記モータの回転角に応じた前記d/q座標系の各電流値の変動に対応すべく、前記通電不良発生相及び前記回転角に基づいて前記閾値を変化させること、
    を特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記異常検出手段は、q軸電流偏差に基づき前記制御系の異常を検出するとともに、前記二相駆動時には、以下の各式、
    Figure 0004918870
    (但し、β:補正項、Iq*:q軸電流指令値)
    により前記変化させるための補正項を演算すること、を特徴とするモータ制御装置。
  3. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記異常検出手段は、前記二相駆動時には、d軸電流偏差に基づき前記制御系の異常を検出するとともに、以下の各式、
    Figure 0004918870
    (但し、β:補正項、Iq*:q軸電流指令値)
    により前記変化させるための補正項を演算すること、を特徴とするモータ制御装置。
  4. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記異常検出手段は、前記二相駆動時には、d/q座標系における合成ベクトルの偏差に基づき前記制御系の異常を検出するとともに、以下の各式、
    Figure 0004918870
    (但し、β:補正項、Iq*:q軸電流指令値)
    により前記変化させるための補正項を演算すること、を特徴とするモータ制御装置。
  5. d/q座標系における電流フィードバック制御の実行によりモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、前記モータ制御信号に基づいてモータに三相の駆動電力を供給する駆動回路とを有し、前記モータ制御信号出力手段は、d/q座標系の電流偏差と所定の閾値との比較に基づいて制御系の異常を検出するとともに前記モータの何れかの相に通電不良が発生した場合に該通電不良の発生を検出可能な異常検出手段を備え、前記通電不良が検出された場合には、該通電不良発生相以外の二相を通電相として前記モータ制御信号の出力を実行するモータ制御装置であって、
    前記異常検出手段は、前記二相を通電相とする場合には、該各通電相の少なくとも一方について、仮想的な相電流指令値を演算し、該相電流指令値と当該通電相の相電流値との間の偏差に基づき前記制御系の異常判定を実行すること、を特徴とするモータ制御装置。
  6. 請求項5に記載のモータ制御装置において、
    前記異常検出手段は、以下の各式、
    Figure 0004918870
    (但し、Iu*,Iv*,Iw*:相電流指令値、Iq*:q軸電流指令値)
    により前記相電流指令値を演算すること、を特徴とするモータ制御装置。
  7. 請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置。
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