JP4917200B2 - 垂直磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種磁気記録装置に搭載される垂直磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録の高密度化を実現する技術として、従来の長手磁気記録方式に代えて、垂直磁気記録方式が注目されつつある。
【0003】
垂直磁気記録媒体は、硬質磁性材料の磁気記録層と、この記録層への記録に用いられる、磁気ヘッドが発生する磁束を集中させる役割を担う軟磁性材料の裏打ち層から構成される。このような構造の垂直磁気記録媒体において問題となるノイズの一つであるスパイクノイズは、裏打ち層である軟磁性層に形成された磁壁によるものであることが知られている。磁壁形成およびノイズ発生のメカニズムは以下の通りである。
【0004】
基体上に軟磁性層を形成すると、異方性が小さいため、軟磁性層の内外周部に、静磁エネルギーを減少させるために還流磁区(90°磁区)が発生する。実用程度の軟磁性層の膜厚では、磁壁はブロッホ型となっており、磁壁内でスピンが膜厚方向に回転することから、磁壁上下端に垂直方向の磁極が表れることとなり、これがノイズの原因となる。そのため垂直磁気記録媒体の低ノイズ化のためには、基体内外周部における軟磁性裏打ち層の磁壁形成を阻止する必要がある。
【0005】
この軟磁性裏打ち層の磁壁の抑制については、例えば、特開平6−180834号公報および特開平10−214719号公報に示されている。
【0006】
特開平6−18083号公報には、軟磁性裏打ち層の上層または下層にCo合金などの強磁性層を形成し、これを所望の方向に磁化させるように着磁する方法が記載されている。特開平10−214719号公報には、反強磁性薄膜を形成し交換結合を利用して磁化をピン止めする方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の方法のような強磁性層または反強磁性薄膜を用いて軟磁性裏打ち層との交換結合により磁壁の制御を行う方法は、交換結合が十分に得られた場合、軟磁性裏打ち層の磁壁形成を阻止することができ、非常に効果的である。しかしながら、強磁性層を用いる場合には、所望の方向に磁化させることが実用的には困難であり、また反強磁性層を用いる場合には、十分な交換結合を得るために成膜後加熱処理が必要であるなど、いずれの方法も大量生産を行う場合には不利であった。
【0008】
したがって、軟磁性裏打ち層に起因するスパイクノイズをより容易に抑制することができ、大量生産が可能な垂直磁気記録媒体およびその製造方法が必要とされている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決する手段として、軟磁性層の磁化を還流することにより、軟磁性層の外周部分および内周部分での磁壁の形成を阻止した垂直磁気記録媒体およびその製造方法を提案する。
【0012】
本発明の第2の形態の垂直磁気記録媒体は、中心に孔を有する円盤形状の非磁性基体上に少なくとも軟磁性裏打ち層、磁気記録層、保護膜、および液体潤滑材層が順次積層された構造を有する垂直磁気記録媒体であって、前記軟磁性裏打ち層が、軟磁性下層、非磁性層、および軟磁性上層の順に積層した3層構造をしており、前記非磁性層は、前記非磁性基体の内周より大きい内周と、前記非磁性基体の外周より小さい外周とを有しており、かつ外周および内周側面に軟磁性層を形成しており、前記軟磁性上層および軟磁性下層は、磁化容易軸が半径方向に平行に配向しており、前記軟磁性上層と軟磁性下層とが、前記非磁性層の外周および内周側面に設けられた軟磁性層を介して接続している。
【0016】
さらに、中心に孔を有する円盤形状の非磁性基体上に少なくとも軟磁性裏打ち層、磁気記録層、保護膜、および液体潤滑材層が順次積層された構造を有する、本発明の第2の形態の垂直磁気記録媒体の製造方法は、非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を形成する工程において、非磁性基体上に軟磁性下層を形成し、同時に軟磁性下層に基体の半径方向に平行な数10〜数100Gaussの磁場を印加する工程と、該軟磁性下層の上に、非磁性層を設ける工程と、該軟磁性下層の上であり、かつ該非磁性層の外周および内周側面に軟磁性層を設ける工程と、該非磁性層および軟磁性層の上に軟磁性上層を形成し、同時に軟磁性上層に基体の半径方向に平行な数10〜数100Gaussの磁場を印加する工程とを具える軟磁性裏打ち層を形成する工程と、該軟磁性裏打ち層の上に垂直磁気記録層を形成する工程と、該垂直磁気記録層の上に保護膜を形成する工程と、該保護膜の上に液体潤滑材層を形成する工程と、を具える。
【0017】
ここで、前述の軟磁性下層および軟磁性上層に磁場を印加する工程は、ターゲットのマグネトロンからのもれ磁場を利用することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に記載する。
【0019】
本発明は、垂直磁気記録媒体において、形成される軟磁性裏打ち層に起因するスパイクノイズの発生を抑制し、大量生産の可能な垂直磁気記録媒体およびその製造方法を提供するものである。
【0020】
このような課題を解決するために、本発明では、軟磁性裏打ち層の磁化を還流させることによって、軟磁性層裏打ち層の内外周部における磁壁の形成を阻止する方法を提供する。
【0021】
本発明では、磁化を還流させた、2つの形態の垂直磁気記録媒体を提供する。
【0022】
本発明の第1の形態は、軟磁性裏打ち層を成膜する時に、非磁性基体の表面のみでなく、基体の内周および外周側面にも軟磁性層を形成し、側面に形成された軟磁性層を通して、基体の表から裏面へ、そして裏から表面に磁化を還流させる。
【0023】
本発明の第2の形態は、軟磁性裏打ち層を軟磁性下層、非磁性層、および軟磁性上層の順に三層構造とする。ここで、非磁性層は、軟磁性上層および軟磁性下層の外周より小さい外周と、軟磁性上層および軟磁性下層の内周より大きい内周とを有する。そして、この非磁性層の外周および内周側面に軟磁性層を形成し、この軟磁性層を介して、軟磁性上層と軟磁性下層とが接触する構造している。このようにして、軟磁性上層および軟磁性下層の磁化は非磁性層の周囲を回転する形で還流する。
【0024】
この第1の形態の軟磁性裏打ち層を成膜する時、および第2の形態の軟磁性上層および軟磁性下層を成膜する時には、基体面と平行の方向に数10〜数100Gauss程度の磁場の印加を行い、面内で軟磁性層の磁化容易軸が半径方向に配向している。
【0025】
まず、第1の形態の垂直磁気記録媒体について図1および図2を参照しながらさらに説明する。
【0026】
図1は、本発明における第1の形態の一例を示す垂直磁気記録媒体の断面模式図であり、図2(a)は、基体上に軟磁性裏打ち層を成膜したときの磁化の概念図を示しており、図2(b)は、図2(a)の2−2′の弧に対応する扇形部分の拡大図である。図中の矢印は、磁化の方向を示している。
【0027】
図1に示す垂直磁気記録媒体は、非磁性基体1とその内周および外周側面に軟磁性層1aを設け、該非磁性基体1および軟磁性層1aの両面(一面側のみ図示)上に、軟磁性裏打ち層2、垂直磁気記録層3、および保護膜4が順に形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑材層5が形成されている。
【0028】
非磁性基体1としては、通常の磁気記録媒体用に用いられるNiPメッキを施したAl合金、強化ガラス、または結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0029】
この非磁性基体1の内周および外周側面に軟磁性層1aを設け、該非磁性基体1および軟磁性層1aの上に軟磁性裏打ち層2を形成する。軟磁性層1aおよび軟磁性裏打ち層2の形成方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法または電子ビーム蒸着法などがある。通常のスパッタを用いた成膜の際には、バッキングプレートなどターゲット以外からのスパッタを防止するためにアースシールドを施し、さらに両面成膜のため対向面のプラズマとの干渉を防止するためにシールドが施されるが、本発明における軟磁性裏打ち層を成膜する際には、シールドの穴を通常よりも大きくして、非磁性基体1の外周および内周側面にも軟磁性層1aが形成されるようにした。
【0030】
また、上述以外にも、非磁性基体を回転させながら約45°までの斜め方向からスパッタすることにより、非磁性基体の表面ならびに内周および外周側面に軟磁性層1aおよび軟磁性裏打ち層2を形成することができる。
【0031】
また、軟磁性裏打ち層2を成膜するときに、軟磁性裏打ち層2を配向させるために基体面と平行の方向に数10〜数100Gaussの磁場を印加する。このときに磁場の印加には、スパッタに用いるターゲットのマグネトロンからのもれ磁場を利用することが好ましい。
【0032】
このように形成された軟磁性裏打ち層2は、図2(a)に示すように、半径方向に磁化容易軸を有する。また、図2(a)の2−2′弧に対応する扇形部分の拡大図である図2(b)に示すように、非磁性基体1の外周および内周側面の軟磁性層1aによって軟磁性裏打ち層2は、その磁化を還流させることができる。
【0033】
軟磁性層1aおよび軟磁性裏打ち層2の材料としては、結晶のNiFe合金、もしくはセンダスト(FeSiAl)合金、または非晶質のCo合金であるCoZrNbなどを用いることができる。軟磁性裏打ち層2の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、約10nm〜約500nmが生産性との兼ね合いより望ましい。
【0034】
次いで、軟磁性裏打ち層2の上に垂直磁気記録層3をマグネトロンスパッタ法などにより形成する。垂直磁気記録層3としては、好ましくは、少なくともCoおよびCrを含む合金の強磁性材料が用いられるが、これに限定しない。この磁性層は、その六方最密充填構造のc軸が膜面に対して垂直方向に配向していることが、垂直磁気記録媒体として用いられるために必要である。
【0035】
垂直磁気記録層3の膜厚としては、特に限定されないが、20〜30nmであることが垂直方向の異方性を維持し、かつ十分な記録磁界を得るため好ましい。
【0036】
垂直磁気記録層3の上に保護膜4をマグネトロンスパッタ法またはプラズマCVD法などを用いて形成する。保護膜4としては、例えばカーボンを主体とする薄膜が用いられるが、これに限定しない。保護膜4の膜厚としては、特に限定されないが、3〜7nmであることが媒体表面を保護し、かつ磁気的スペーシングを小さくするため好ましい。
【0037】
次いで、保護膜4の上に液体潤滑材層5をディッピング法またはスピンコーティング法などを用いて形成する。液体潤滑剤としては、パーフルオロポリエーテル系を用いることができる。
【0038】
このようにして、図1に示すような層構造を有する垂直磁気記録媒体を形成することができる。
【0039】
次に、第2の形態の垂直磁気記録媒体について図3および図4を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図3は、本発明における第2の形態の一例を示す垂直磁気記録媒体の断面模式図であり、図4(a)は、基体上に軟磁性裏打ち層を成膜したときの磁化の概念図を示しており、図4(b)は、図4(a)の4−4′の弧に対応する扇形部分の拡大図である。図中の矢印は、磁化の方向を示している。
【0041】
図3に示す垂直磁気記録媒体は、非磁性基体1の両面(一面側のみ図示)上に、軟磁性裏打ち層2、垂直磁気記録層3、および保護膜4が順に形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑材層5が形成されている。ここで、軟磁性裏打ち層2は、軟磁性下層2a、非磁性層2b、および軟磁性上層2cを順に積層した3層構造をしている。さらに、非磁性層2bは、軟磁性下層2aおよび軟磁性上層2cの外周よりも小さな外周と、軟磁性下層2aおよび軟磁性上層2cの内周よりも大きな内周を有する。そして、非磁性層2bは、その外周および内周側面に軟磁性層2dを有し、この軟磁性層2dを介して軟磁性下層2aおよび軟磁性上層2cは接続している。
【0042】
非磁性基体1としては、通常の磁気記録媒体用に用いられるNiPメッキを施したAl合金、強化ガラス、または結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0043】
この非磁性基体1上に、マグネトロンスパッタ法または電子ビーム蒸着法などを用いて軟磁性下層2aを形成する。軟磁性下層2aを成膜するときに、軟磁性下層2aを配向させるために基体面と平行の方向に数10〜数100Gaussの磁場を印加する。このときに磁場の印加には、スパッタに用いるターゲットのマグネトロンからのもれ磁場を利用することが好ましい。
【0044】
軟磁性下層2aの膜厚は、50〜300nmであることが好ましい。
【0045】
次いで、該軟磁性下層2a上に、非磁性層2bをマグネトロンスパッタ法または電子ビーム蒸着法などを用いて形成する。このときに軟磁性下層2aの外周および内周端部まで非磁性層2bが形成されないように、軟磁性下層2aの外周および内周部にマスキングをする。
【0046】
非磁性層2bとしては、Ta、Cr、Cu、Ti、C、またはMoなどが挙げられ、その膜厚は、1〜15nmが好ましい。
【0047】
次にマスキングを取り除き、非磁性層2bの外周および内周側面に軟磁性層2dと、非磁性層2bおよび軟磁性層2dの上に軟磁性上層2cをマグネトロンスパッタ法または電子ビーム蒸着法を用いて形成する。
【0048】
軟磁性上層2cを成膜するときに、軟磁性上層2aを配向させるために基体面と平行の方向に数10〜数100Gaussの磁場を印加する。このときに磁場の印加には、スパッタに用いるターゲットのマグネトロンからのもれ磁場を利用することが好ましい。
【0049】
軟磁性上層2cの膜厚は、50〜300nmであることが好ましい。
【0050】
このように形成された軟磁性裏打ち層2は、図4(a)に示すように、半径方向に磁化容易軸を有する。また、図4(a)の4−4′弧に対応する扇形部分の拡大図である図4(b)に示すように、非磁性層2bと、その外周および内周側面に形成された軟磁性層2dによって軟磁性裏打ち層2は、その磁化を還流させることができる。
【0051】
軟磁性下層2a、軟磁性層2d、および軟磁性上層2cの材料としては、結晶のNiFe合金、もしくはセンダスト(FeSiAl)合金、または非晶質のCo合金であるCoZrNbなどを用いることができる。軟磁性裏打ち層2の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、約10nm〜約500nmが生産性との兼ね合いより望ましい。
【0052】
次いで、軟磁性裏打ち層2の上に第1の形態の場合と同様にして、垂直磁気記録層3、保護膜4、および液体潤滑材層5を設ける。
【0053】
このようにして、図3に示すような層構造を有する垂直磁気記録媒体を形成することができる。
【0054】
なお、本発明の第1の形態および第2の形態において、軟磁性裏打ち層2と垂直磁気記録層3との間に、垂直磁気記録層3の結晶配向性および結晶粒径を好ましく制御するために、例えば、TiまたはTiCr合金からなる下地層(図示せず)を設けることもできる。
【0055】
また、上述に本発明の第1および第2の形態の垂直磁気記録媒体において、好ましい製造方法と共にその構成を記載したが、これらに限定されず、軟磁性裏打ち層を還流する構造を形成させることが本発明では最も重要である。
【0056】
[実施例]
以下に本発明の実施例を示す。
【0057】
[実施例1]
本実施例では本発明の第1の形態の垂直磁気記録媒体を製造した。
【0058】
非磁性基体1として表面が平滑な化学強化ガラス基板(HOYA社製N−10ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入した。引き続いてCo10Zr5Nbターゲットを用いてCoZrNb非晶質軟磁性裏打ち層2を200nm成膜した。軟磁性裏打ち層を配向させるために基体面と平行方向に数10〜数100Gauss程度の磁場を印加する必要があるが、これにはターゲットのマグネトロンからのもれ磁場(約100Gauss)を利用した。また、軟磁性裏打ち層2の成膜の際には、シールドの穴を通常よりも大きめにし、非磁性基体1の外周部および内周部側面にも軟磁性層1aが形成されるようにした。このようにして軟磁性裏打ち層2を成膜した場合の層構造と磁化の概念は図2に示した通りである。
【0059】
引き続いてランプヒータを用いて基体表面温度が250℃になるように加熱を行った後、Tiターゲットを用いてTi下地膜10nm(図示せず)を成膜した。引き続きCo20Cr10Ptターゲットを用いて膜厚30nmのCoCrPt磁気記録層3を成膜し、最後にカーボンターゲットを用いてカーボンからなる膜厚10nmの保護膜4を成膜後、真空装置から取り出した。これらの各層の成膜はすべてArガス圧5mTorr下でDCマグネトロンスパッタリング法により行った。その後、パーフルオロポリエーテルからなる膜厚2nmの液体潤滑材層5をディップ法により形成した。
【0060】
このようにして、本発明の第1の形態の垂直磁気記録媒体を形成した。
【0061】
得られた垂直磁気記録媒体の軟磁性裏打ち層2に形成される磁壁の有無を確認するために、スピンスタンドテスターを用いて記録密度50kFClの信号をMRヘッドにより書き込み、その再生波形を観察することで、スパイクノイズの有無を調べた。
【0062】
表1に、再生波形に表れるスパイクノイズの個数を示す。非磁性基体1の内外周側面部に軟磁性膜1aを形成することにより磁壁の形成が阻止され、スパイクノイズの発生が抑制されていることがわかる。
【0063】
【表1】
Lub*:パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層
【0064】
[比較例1]
軟磁性裏打ち層2を形成する際に、シールドの穴を通常と同様の大きさにし、軟磁性裏打ち層2を非磁性基体1の上にのみ形成すること、すなわち、非磁性基体1の外周および内周側面に軟磁性層1aを形成しないことを除いて、実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を製造した。
【0065】
得られた垂直磁気記録媒体について、実施例1と同様にしてスパイクノイズの有無をを調べた。結果を表1に記載する。
【0066】
[実施例2]
本実施例では、本発明の第1の形態の垂直磁気記録媒体を製造した。
【0067】
軟磁性裏打ち層2および軟磁性層1aの形成の際に、Ni22Fe合金ターゲットを用いたこと以外は、実施例1と同様にして本発明の第1の形態の垂直磁気記録媒体を形成した。
【0068】
得られた垂直磁気記録媒体について、実施例1と同様にして、スパイクノイズの有無を調べた。結果を表1に示す。実施例1と同様に、磁壁の形成が阻止され、スパイクノイズの発生が抑制されていることがわかる。
【0069】
[実施例3]
本実施例では、本発明の第2の形態の垂直磁気記録媒体を製造した。
【0070】
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板(HOYA社製N−10ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入した。引き続いてCo10Zr5Nbターゲットを用いて、膜厚100nmのCoArNb非晶質軟磁性下層2aを形成した。次に、軟磁性下層2aの内周および外周のそれぞれから約2mmまでの範囲をマスキングして、Crターゲットを用いて膜厚5nmのCr非磁性層2bを形成した。次いで、マスキングを取り除き、Co10Zr5Nbターゲットを用いて非磁性層2bの外周および内周側面部に軟磁性層2dと、膜厚200nmのCoZrNb非晶質軟磁性上層2cを形成した。軟磁性の各層は、その成膜の際に、実施例1と同様にしてターゲットのマグネトロンからのもれ磁場を利用することによって、磁化を基体面と平行方向に配向させた。
【0071】
これらの各層の成膜は全てArガス圧5mTorr下で、DCマグネトロンスパッタ法により行った。
【0072】
このようにして軟磁性裏打ち層2を形成した場合の層構造と、磁化の概念は図4に示した通りである。
【0073】
引き続き、実施例1と同様にしてArガス圧5mTorr下で、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さ10nmのTi下地層(図示せず)、膜厚30nmのCo20Cr10Pt垂直磁気記録層3、および膜厚10nmのカーボン保護膜4を形成した。次いで、真空装置から取り出した媒体上に、パーフルオロポリエーテルよりなる、膜厚2nmの液体潤滑材層5をディップ法により形成した。
【0074】
このようにして、本発明の第2の形態の垂直磁気記録媒体を製造した。
【0075】
実施例1と同様にして、得られた垂直磁気記録媒体のスパイクノイズの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0076】
本実施例に示した方法でも、実施例1および実施例2と同様に磁壁の形成が阻止され、スパイクノイズの発生が抑制されていることがわかる。
【0077】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、軟磁性裏打ち層の磁化を、基体の表面から裏面、または非磁性層を挟んだ軟磁性層の2層間で還流させることで、ノイズ源となる軟磁性裏打ち層の磁壁形成の抑止を行うことができる。軟磁性層の磁化容易軸は半径方向へ配向させる必要があるが、実施例で取り上げたような軟磁性体では異方性が小さいため、ターゲットのマグネトロンの漏れ磁場で十分であり、特に外部磁場を印加する必要がなく、非常に容易な方法で実行可能である。また、反強磁性層を用いる従来の方法と比較しても、熱処理などの必要がないことから、大量生産にも非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の形態の一例を示す垂直磁気記録媒体の層構成を示す断面模式図である。
【図2】(a)は本発明の第1の形態の一例を示す垂直磁気記録媒体のうち、非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を設けたときの磁化の概念図であり、(b)は、(a)の2−2′の弧に対応する扇形部分の拡大図である。
【図3】本発明の第2の形態の一例を示す垂直磁気記録媒体の層構成を示す断面模式図である。
【図4】(a)は本発明の第2の形態の一例を示す垂直磁気記録媒体のうち、非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を設けたときの磁化の概念図であり、(b)は、(a)の4−4′の弧に対応する扇形部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 非磁性基体
1a 軟磁性層
2 軟磁性裏打ち層
2a 軟磁性下層
2b 非磁性層
2c 軟磁性上層
2d 軟磁性層
3 垂直磁気記録層
4 保護膜
5 液体潤滑材層
Claims (3)
- 中心に孔を有する円盤形状の非磁性基体上に少なくとも軟磁性裏打ち層、磁気記録層、保護膜、および液体潤滑材層が順次積層された構造を有する垂直磁気記録媒体であって、前記軟磁性裏打ち層が、軟磁性下層、非磁性層、および軟磁性上層の順に積層した3層構造をしており、前記非磁性層は、前記非磁性基体の内周より大きい内周と、前記非磁性基体の外周より小さい外周とを有しており、かつ外周および内周側面に軟磁性層を形成しており、前記軟磁性上層および軟磁性下層は、磁化容易軸が半径方向に平行に配向しており、前記軟磁性上層と軟磁性下層とが、前記非磁性層の外周および内周側面に設けられた軟磁性層を介して接続することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
- 中心に孔を有する円盤形状の非磁性基体上に少なくとも軟磁性裏打ち層、磁気記録層、保護膜、および液体潤滑材層が順次積層された構造を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を形成する工程において、
非磁性基体上に軟磁性下層を形成し、同時に軟磁性下層に基体の半径方向に平行な数10〜数100Gaussの磁場を印加する工程と、前記軟磁性下層の上に、非磁性層を設ける工程と、
前記軟磁性下層の上であり、かつ前記非磁性層の外周および内周側面に軟磁性層を設ける工程と、
前記非磁性層および軟磁性層の上に軟磁性上層を形成し、同時に軟磁性上層に基体の半径方向に平行な数10〜数100Gaussの磁場を印加する工程と
を具える軟磁性裏打ち層を形成する工程と、
前記軟磁性裏打ち層の上に垂直磁気記録層を形成する工程と、
前記垂直磁気記録層の上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜の上に液体潤滑材層を形成する工程と、
を具えることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。 - 前記軟磁性下層および軟磁性上層に磁場を印加する工程は、ターゲットのマグネトロンからのもれ磁場を利用することを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
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