〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図18に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、発光型表示素子である有機エレクトロルミネッセンス表示素子(以下、有機EL表示素子と称する)の構造の一例を示す断面図である。本実施の形態に係る有機EL表示素子は、図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンス層(以下、有機EL層(発光層)と称する)1、透明電極2、アルミニウム電極3、前面側基板4、再帰性反射板(光学部材、反射部材)5、背面側基板6および平坦化膜7を備えている。
透明なガラス板や高分子フィルム等の材料からなる前面側基板4上には、有機EL表示素子における背面側に向かって、透明電極2、有機EL層1、アルミニウム電極3がこの順に形成されている。背面側基板6上には、有機EL表示素子における前面側に向かって、再帰性反射板5および平坦化膜7がこの順に形成されている。また、前面側基板4と背面側基板6とは対向して配されている。
エレクトロルミネッセンス層である有機EL層1は、有機物により形成されており、発光する発光層を有する。有機EL層1は、発光状態と非発光状態との間で状態変化する。発光状態において、その発光は透明電極2を介して取り出される。
透明電極2はITO(Indium Tin Oxide)からなる。また、透明電極2は電源に接続されており、陰極としてはたらく。なお、透明電極2はIZO(Indium Zinc Oxide) やAluminum Zinc Oxide 等により形成されていてもかまわない。
アルミニウム電極3はアルミニウムからなり、30nmの厚さで成膜されている。厚さが薄いことにより、アルミニウム電極3への入射光は該アルミニウム電極3を透過することができる。なお、厚さが薄いことにより、アルミニウム電極3の抵抗が高くなる場合には、アルミニウム電極3上にITO膜からなる透明電極を配することにより、アルミニウム電極3の抵抗を小さくしてもよい。また、アルミニウム電極3は電源に接続されており、陽極としてはたらく。
再帰性反射板5は光学部材であり、コーナーキューブアレイからなる。コーナーキューブアレイにおいて、入射光は入射してきた方向と同じ方向に反射されるようになっている(再帰性)。また、再帰性反射板5は、平坦化膜7により覆われている。これにより、再帰性反射板5が形成されている層の表面は平坦化され、その上面にアルミニウム電極3を配することができる。
以下、有機EL層1について説明する。
有機EL層1は、少なくとも発光層を含む1層または複数層の薄膜により形成されている。例えば、有機EL層1は、電子輸送層、発光層、正孔輸送層の3層からなる。透明電極2を陰極とし、アルミニウム電極3を陽極として有機EL層1に直流電圧を印加すると、陽極から正孔が、陰極から電子が発光層に注入され、正孔と電子との再結合により発光層が発光する。電圧印加時には、発光層は発光して発光状態となり、有機EL表示素子は白表示となる。また、電圧無印加時には、発光層は非発光状態であり、有機EL表示素子は黒表示となる。
有機EL層1における発光層の材料としては、発光材料として使用可能な有機化合物であれば特に限定されるものではない。該有機化合物としては、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物等が挙げられる。
発光層は、樹脂等の結着剤と、発光材料である有機化合物とを溶剤に溶解して溶液とした後、スピンコート法により薄膜状に形成される。発光層の膜厚は特に限定されるものではないが、5nm〜5μmであることが好ましい。また、発光層の成膜方法についてもスピンコート法に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法、印刷法等の成膜方法により成膜してもよい。
また、発光層は分子堆積膜からなることが特に好ましい。分子堆積膜とは、化合物が気相状態から沈着されて形成された膜や、化合物が溶液状態または液相状態から固体化されて形成された膜のことをいう。この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜である分子累積膜とは、凝集構造や高次構造が異なり、また、それらの構造が異なることにより機能的にも相違している。
なお、エレクトロルミネッセンス層は、有機EL層であることがより好ましいが、例えば、非晶質SiNを成膜することにより形成された無機エレクトロルミネッセンス層であってもよい。
以下、コーナーキューブアレイについて、図2ないし図4、図10、図11に基づいて詳細に説明する。
再帰性反射板5であるコーナーキューブアレイへの入射光は、コーナーキューブアレイ表面において再帰反射されるため、入射してきた方向と同じ方向に反射される。
図2は、コーナーキューブアレイの構造を示している。コーナーキューブアレイは、図2(a)に示すように、3面の直角二等辺三角形から構成される三角錐状の単位構造を備えている。また、図2(b)はコーナーキューブアレイの構造を示す斜視図であり、図2(c)はコーナーキューブアレイの構造を示す平面図である。図2(c)に示すように、コーナーキューブアレイは、再帰性を備えている再帰部と、再帰性を備えていない非再帰部とを有する。
コーナーキューブアレイを上から見たとき、その単位構造の形状は図2(d)に示すように、正三角形となる。六角形部20は、コーナーキューブアレイを上から見たときの形状が、単位構造である正三角形に内接する正六角形となる部分である。六角形部20の内側の入射点21への入射光は、反射点22で反射されて対称点23から外部へ出射される。このように、六角形部20の内側の入射点21への入射光は、コーナーキューブアレイにおいて反射されることにより、中心軸に対して対称位置にある対称点23に並進移動する。このとき、入射点21と同一単位構造内にその対称位置は必ず存在する。
このように、六角形部20の内側の入射点21への入射光は、コーナーキューブアレイの単位構造を構成する3面で反射することによって、中心軸に対して対称な位置に移動し、入射した方向と全く逆の方向に出射される(再帰反射される)。
しかしながら、六角形部20の外側の入射点24への入射光は、反射点25で反射されるが、中心軸に対して入射点24と対称位置にある対称点26は入射点24と同一単位構造内に存在せず、従って、六角形部20の外側の入射点24への入射光は再帰反射されないでコーナーキューブアレイから出射することとなる。なお、正三角形に内接する正六角形の面積は、正三角形の面積の2/3である。
このように、コーナーキューブアレイを上から見たとき、六角形部20の内側の部分は再帰部となっている。また、六角形部20の外側の部分、即ち、コーナーキューブアレイを構成する直角二等辺三角形の底角付近は非再帰部となっている。
そこで、非再帰部においては、光を反射させないで吸収するように、例えば遮光膜を設けることにより、遮光処理が施されている。
以上のように、コーナーキューブアレイへの入射光のうち2/3は再帰部におて再帰反射されて外部へ出射されるが、1/3は非再帰部において吸収されるので、外部へ出射されることはない。
従って、外部光の像が写り込むことを防止することができる。これにより、良好な黒表示を実現することができる。
なお、遮光処理は、図10に示すように、コーナーキューブアレイの非再帰部だけでなく、さらに、頂点や辺などのエッジに施してもかまわない。
これにより、エッジに入射し、乱反射する成分を吸収することができ、黒表示の品位をさらに向上することができる。従って、さらにコントラストの高い有機EL表示素子を提供することができる。
上述したコーナーキューブアレイの製造方法の一例について、以下に説明する。
まず、型材に、互いに平行なV溝をVカッターによって複数形成した後、研磨する。次に、型材を60°回転させた後、同様の操作を行う。さらに、もう1度型材を60°回転させた後、同様の操作を行う。こうして、互いに連続する複数の三角錐を有する雄型が作られる。その後、この雄型を用いてインジェクション成型等を行うことにより、例えば、ガラスやプラスチック等からなる成型物(雌型)を作る。そして、この成型物の表面における再帰部には表面反射率の高い物質、例えば、アルミニウムや銀を付着させ、非再帰部には遮光処理を施す。これにより、上述のコーナーキューブアレイを得ることができる。
遮光処理を施す方法としては、例えば、まず、ポジ型のブラックレジストをコーナーキューブアレイ上に塗布する。次に、図11に示すように、遮光処理を施したい領域にマスクを形成し、露光する。そして、現像処理を行うことにより、コーナーキューブアレイに遮光処理を施すことができる。
また、遮光処理を施す方法として他には、まず、紫外線を照射されると超はっ水性から親水性へと変化する材料を、コーナーキューブアレイ上に塗布する。次に、上記と同様、図11に示すように、遮光処理を施したい領域にマスクを形成し、露光する。そして、油性の光吸収材料を塗布することにより、コーナーキューブアレイに遮光処理を施すことができる。
図3は、外部光および有機EL層1内で発せられた光の入出射方向を示す説明図である。有機EL層1を介して、前面部31と背面部32とが対向して配されている。前面部31は前面側基板4および透明電極2から構成されており、背面部32はアルミニウム電極3、再帰性反射板5であるコーナーキューブアレイ、平坦化膜7および背面側基板6により構成されている。
例えば、光源35から出射された外部光30は前面部31、有機EL層1を透過した後、コーナーキューブアレイの再帰部において再帰反射されて光源35の方向へと反射されるので、反射光は観察者方向へは出射されない。また、外部光30がコーナーキューブアレイの非再帰部に入射しても、非再帰部には遮光処理が施してあるので、反射光は観察者方向へは出射されない。従って、有機EL表示素子は、有機EL層1の電圧無印加時において外部光30の像が写り込むことはなく、これにより、良好な黒表示を実現することができる。
また、電圧印加時、有機EL層1における発光層は、有機EL表示素子の前面側および背面側の方向に発光する。有機EL表示素子の前面側に発せられた光33はそのまま有機EL表示素子の外部へ出射される。有機EL表示素子の背面側に発せられた光34はコーナーキューブアレイで再帰反射されるため、コーナーキューブアレイに対して入射した方向に反射されて有機EL表示素子の外部へ出射される。また、電圧無印加時と同様に、外部光30もコーナーキューブアレイにおいて再帰反射されて出射する。
このように、有機EL層1の背面側にコーナーキューブアレイを配することにより、有機EL層1内で発せられた光33・34を有機EL表示素子の前面側に出射することができる。従って、明度が高く、良好な白表示が可能となる。また、前面側に向けて発せられた光33だけでなく、背面側に向けて発せられた34も取り出すことができるので、発光の利用効率を上げることができる。
なお、再帰性反射板5は、入射光を再帰反射させるものであれば上述したコーナーキューブアレイに限定されるものではなく、図4(a)に示すように、単位構造が3面の正方形から構成されるコーナーキューブアレイを用いてもよい。図4(b)は、このコーナーキューブアレイの構造を示す斜視図であり、図4(c)は、このコーナーキューブアレイの構造を示す平面図である。
図4(b)に示すコーナーキューブアレイを上から見たとき、その単位構造の形状は図4(d)に示すように正六角形となる。同図に示すように、例えば、入射点41への入射光は、反射点42で反射されて、入射点41とは中心軸に対して対称位置にある対称点43から外部へ出射される。このように、図4(b)に示すコーナーキューブアレイにおいては上から見たときの単位構造の形状が正六角形であるため、コーナーキューブアレイ上の入射点41に対して、その対称位置は、入射点41と同一単位構造内に必ず存在する。従って、コーナーキューブアレイへの入射光は全て再帰反射することができる。
また、コーナーキューブアレイを用いる代わりに、マイクロビーズアレイ等の微小球やマイクロレンズアレイにより、再帰性反射板5が構成されていてもかまわない。
ここで、図4(a)に示すコーナーキューブアレイの単位構造(コーナーキューブ)において、コーナーキューブアレイ表面に遮光処理を施すのではなく、コーナーキューブアレイとは別個の部材として遮光部を設けた例について、図12、図13、図15ないし図18に基づいて説明する。
図15(a)(b)に示すように、コーナーキューブ8(再帰性反射板5の単位構造)を上から見たときに、コーナーキューブ8の外周辺を覆うように、遮光部28をコーナーキューブ8上に設けるとする。
このとき、図15(b)に示すように、コーナーキューブ8の頂点8bや辺8a・8cなどのエッジからの乱反射光8d、および上記乱反射光8dがそれと対向する反射面19で反射した反射光8eが白く見え、黒表示を悪化させることがあった。
そこで、図16(a)(b)に示すように、上記のような反射光を無くすために、再帰性反射板5の単位構造であるコーナーキューブ8の頂点8bや辺8a・8cに遮光処理を施すようにして、乱反射光を遮光する遮光部29がコーナーキューブ8の直上に設けられている。即ち、遮光部29は、コーナーキューブ8の頂点8bや辺8a・8cなどのエッジからの光を吸収したり遮光したりする手段である。
上記遮光部29は、頂点8bや辺8aを上方から覆って沿うように帯状に形成されており、例えば、後述するブラックマトリクスと同素材により形成されていることが好ましい。
このような遮光部29により、図16(b)に示すように、頂点8bや辺8a8cからの乱反射光8d(図15(b)参照)を遮光でき、また、頂点8bや辺8a・8cへの入射光も低減できて上記反射光8eも抑制できるので、黒表示を改善できる。
また、図16(a)に示すように、遮光部29がコーナーキューブ8の直上に設けられている場合、コーナーキューブ8の面と、遮光部29の外周辺との間の隙間には、板状の光吸収部18を設けていてもかまわない。これにより、さらに、乱反射光を吸収することができ、さらに、黒表示が良好になる。
また、上記遮光部29を、図18(a)(b)に示すように、再帰性反射板5に対して離間した位置に配されている、例えば、カラーフィルタ層上に設けてもよい。
例えば、図17(a)(b)に示すように、図15(a)(b)と同様、コーナーキューブ8の外周辺のみを覆うような遮光部28を設けたとすると、再帰性反射板5の頂点8bや辺8aなどのエッジからの乱反射光8d、および乱反射光8dがそれと対向する反射面19で反射した反射光8eが白く見え、黒表示を悪化させることとなる。
しかしながら、図18(a)(b)に示すように、再帰性反射板5に対し離間した位置に遮光部29が配されている場合、遮光部29により、上記と同様に、黒表示を改善できる。
なお、遮光部29が例えばカラーフィルタ層上に設けられている場合、遮光部29は、ブラックマトリクスと同時に、かつ同素材により形成されていることが好ましい。
また、上記図18(a)では、単位構造が3面の正方形から構成されるコーナーキューブアレイを用いて説明したが、図12に示すように、単位構造が3面の直角二等辺三角形から構成されるコーナーキューブアレイに対し離間した位置、例えばカラーフィルタ層上に、コーナーキューブアレイの頂点や辺を覆う(頂点や辺に遮光処理を施す)遮光部を設けてもかまわない。
単位構造が3面の正方形から構成されるコーナーキューブアレイの表面に遮光処理を施して(即ち、遮光部を設けて)も、コーナーキューブアレイから離間した位置に遮光部を設けたとしても、コーナーキューブアレイを上から見ると(コーナーキューブアレイの平面図は)、図13のようになる。
ここで、図5に基づいて、上述したアルミニウム電極3、平坦化膜7および再帰性反射板5を備えておらず、そのかわりに、金属電極50を備えた比較例としての有機EL表示素子について説明する。
図5に示すように、比較例における金属電極50は、背面側基板6の前面側に配されており、陽極として電源に接続されている。透明電極2を陰極とし、金属電極50を陽極として直流電圧を印加すると、陽極から正孔が、陰極から電子が発光層に注入され、正孔と電子との再結合により有機EL層1における発光層が発光する。また、金属電極50の表面は平坦である。
電圧印加時、発光層において発せられた光は、金属電極50の表面において反射され、有機EL表示素子の外部へ出射される。このとき、有機EL表示素子は明度の高い良好な白表示を示す。
一方、電圧無印加時には、有機EL層1を透過した外部光は金属電極50で鏡面反射して有機EL表示素子の外部へ出射される。従って、有機EL表示素子は、像が写り込み、良好な黒表示は実現できない。
また、上記のような像の写り込みを抑制して良好な黒表示を実現するために、金属電極50の反射率を下げたり、偏光板および1/4波長板を有機EL表示素子における有機EL層1の前面側に配置して、外部光の反射光を吸収させると、有機EL層1内で発せられた光も金属電極50または偏光板において吸収される。これにより、発光の利用効率は低下する。
上記比較例のように、有機EL表示素子において、外部光を反射させるために、平坦な金属電極50を設ける構成を採用すると、有機EL表示素子は、像が写り込み、良好な黒表示を実現することができない。また、有機EL表示素子において、良好な黒表示を実現してコントラストを高めようとすると、発光の利用効率は低下する。
これに対し、本実施の形態の有機EL表示素子は、再帰性反射板5としてコーナーキューブアレイを設けているので、外部光を入射してきた方向と同じ方向に反射することができる。従って、外部光が観察者方向には出射されないので、有機EL表示素子に像が写り込むことはなく、これにより、良好な黒表示を実現することができる。また、有機EL層1の背面側にコーナーキューブアレイを設けているので、発光の利用効率も高い。また、明度が高く、良好な白表示を実現することができる。
以上のように、本実施の形態の有機EL表示素子は、コーナーキューブアレイを有機EL層1の背面側に配することにより、良好な黒表示および明度が高く良好な白表示が可能となる。従って、表示のコントラストの高い有機EL表示素子を提供することができる。
なお、再帰性反射板5上に平坦化膜7を形成する代わりに、図6に示すように、再帰性反射板5上に、アルミニウム電極3、有機EL層1および透明電極2をこの順に配し、透明電極2上に平坦化膜60を形成してもよい。
この場合、上述した有機EL表示素子(図1)とは異なり、図6に示した有機EL表示素子におけるアルミニウム電極3は、再帰性反射板5と同様の形状を有することとなる。従って、アルミニウム電極3は入射光を再帰反射させることができる。このため、外部光がアルミニウム電極3を透過できるように、アルミニウム電極3を薄く成膜する必要はなく、例えば、300nmの厚さに成膜することができる。このように、アルミニウム電極3を薄く成膜する必要がないので、その抵抗値が大きくなることもない。また、図6に示すように、有機EL層1および再帰性反射板5が一体化した構成とした場合において、外部光が再帰反射する面は、有機EL層1の背面側に配されている。従って、上述した有機EL表示素子(図1)と同様の効果を有する。即ち、発光の利用効率の向上および良好な黒表示を実現することができる。
以下、再帰性反射板5における単位構造のピッチの好適な範囲について、図7(a)〜図7(c)に基づいて説明する。
図7は、入射光および反射光の光路を示す説明図であり、図7(a)は観察者が再帰性反射板5の単位構造の中心付近を観察している場合、図7(b)は観察者がコーナーキューブアレイからなる再帰性反射板5の単位構造の上端および下端付近を観察している場合、図7(c)は観察者が微小球からなる再帰性反射板5の単位構造上端および下端付近を観察している場合を示している。
コーナーキューブアレイ、微小球(ビーズ)アレイ、マイクロレンズアレイからなる各々の再帰性反射板5において、その単位構造のピッチを0.5mm、5mm、10mm、25mmの4種類に設定した、計12種類の有機EL表示素子を作成した。
ここで、単位構造のピッチとは、例えば、コーナーキューブアレイの場合は、隣接するコーナーキューブの対応する位置間(例えば、コーナーキューブの頂点と頂点との間)の最短距離をいい、微小球アレイの場合は、隣接する微小球の対応する位置間(例えば、微小球の中心と中心との間)の最短距離をいう。
その結果、良好な黒表示を実現するものは、再帰性反射板5がコーナーキューブアレイ、微小球アレイ、マイクロレンズアレイの何れからなる有機EL表示素子においても、再帰性反射板5の単位構造のピッチが0.5mmあるいは5mmの有機EL表示素子であった。単位構造のピッチが10mmあるいは25mmの再帰性反射板5を有する有機EL表示素子は、その形状に関わらず、再帰性反射板5に、瞼や眉毛が写り込み、明るさが浮くため、良好な黒表示を実現することができなかった。
つまり、図7(a)に示すように、観察者が再帰性反射板5の単位構造の中心付近を観察しているとき、観察される光の光源の位置は観察者の眼のごく近傍となる。即ち、この場合は、観察者の眼のごく近傍から有機EL表示素子に入射する入射光71が再帰性反射板5で再帰反射され、観察者は反射光72を観察することになる。
一方、図7(b)、(c)に示すように、観察者が再帰性反射板5の単位構造の上端付近を観察しているとき、観察される光の光源の位置は観察者の眼の下側になる。即ち、この場合、観察者の眼の下側から有機EL表示素子に入射する入射光73が再帰性反射板5で再帰反射され、観察者は反射光74を観察することになる。このとき、再帰性反射板5の単位構造のピッチが大きければ、その大きさに応じて、下側の瞼や頬の像が写り込み、従って、観察者は、下側の瞼や頬を観察することになる。
また、観察者が再帰性反射板5の単位構造の下端付近を観察しているとき、観察される光の光源の位置は観察者の眼の上側になる。即ち、この場合、観察者の眼の上側から有機EL表示素子に入射する入射光75が再帰性反射板5で再帰反射され、観察者は反射光76を観察することになる。このとき、再帰性反射板5の単位構造のピッチが大きければ、その大きさに応じて上側の瞼や眉毛の像が写り込み、従って、観察者は、上側の瞼や眉毛を観察することになる。
これらのことから、再帰性反射板5の単位構造に写り込む像は、再帰性反射板5の単位構造のピッチ78の2倍の長さに相当する領域77の像ということになる。即ち、良好な黒表示を実現するには、再帰性反射板5の単位構造のピッチ78の2倍の長さに相当する領域77の像を、くろ目の大きさよりも小さくする必要がある。くろ目の大きさ(直径)を10mm程度であると考えると、再帰性反射板5の単位構造のピッチ78は5mm以下にする必要がある。
また、ここで、くろ目(角膜)についてさらに詳しく説明する。図14によれば、くろ目の範囲内には瞳孔および虹彩が存在する。虹彩の色(反射光)は、人種によって異なり、東洋人などでは黒色をしており、西洋人などでは着色している。瞳孔は透明であるので瞳孔の色(反射光)は網膜などの内部器官の色(反射光)を呈することとなる。しかしながら、瞳孔は、実質的には黒色を呈すると考えてよい。つまり、瞳孔は不要な光を遮断する絞りの機能を有するため、観察者がディスプレイを観察している限り(光源を観察していない限り)、網膜などの内部器官の反射は小さく、よって、瞳孔は黒色を呈すると考えてよい。
以上より、虹彩の色も含めて上記と同様な議論を行うと、再帰性反射板5の最小単位構造のピッチは、瞳孔の大きさ(直径)2mm程度(奥沢康正著、ぎもん・しつもん目の事典 上、東山書房)の半分以下、すなわち1mm以下である方がより好ましいことが判った。
従って、再帰性反射板5の単位構造(コーナーキューブ)のピッチは1mm以下であることがより好ましい。
これにより、観察者が黒表示時に観察する像を、くろ目から瞳孔へと絞り込むことができ、黒表示品位をさらに良好にすることができる。
また、有機EL層1が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の領域を有するとき、有機EL表示素子はフルカラーディスプレイを実現することができる。図1に示した有機EL表示素子における再帰性反射板5の単位構造の大きさが、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を示すドットサイズよりも大きい場合と小さい場合とにおいて、各色を示す有機EL層1を透過する光の光路を、図8、図9に基づいて以下に説明する。
図8、図9に示すように、有機EL層1は、赤色の発光をする赤色有機EL層1R、緑色の発光をする緑色有機EL層1Gおよび青色の発光をする青色有機EL層1Bを有している。赤色有機EL層1R・緑色有機EL層1G・青色有機EL層1B間には、各々ブラックマトリクス層が配されている。
図8は、再帰性反射板5としてコーナーキューブアレイを用いた場合における有機EL表示素子の構造を示す断面図であり、図8(a)はコーナーキューブアレイの単位構造の大きさが各色のドットサイズ以下である場合、図8(b)はコーナーキューブアレイの単位構造の大きさが各色のドットサイズよりも大きい場合を示している。なお、各色のピッチは例えば100μmであり、図8(a)に示したコーナーキューブアレイの単位構造の大きさは例えば25μm、図8(b)に示したコーナーキューブアレイの単位構造の大きさは例えば120μmとなっている。
図8(a)に示すように、入射光80はコーナーキューブアレイにおいて中心軸82に対して対称位置に反射された後、入射方向と同じ方向へと出射される。このように、入射光80に対する反射光81は、中心軸82に対して対称位置に並進移動していることになる。
例えば、青色有機EL層1Bを透過した入射光80は、コーナーキューブアレイの単位構造の大きさが各色のドットサイズ以下である場合、中心軸82に対して対称位置に並進移動して再帰反射しても、その反射光81は再び青色有機EL層1Bを透過する。
しかしながら、コーナーキューブアレイの単位構造の大きさが各色のドットサイズよりも大きい場合は、図8(b)に示すように、緑色有機EL層1Gを透過した入射光83は、中心軸85に対して対称位置に並進移動すると、コーナーキューブアレイの単位構造の大きさが大きいため、反射光84は緑色有機EL層1Gの隣の赤色有機EL層1Rを透過することになる。このように、コーナーキューブアレイの単位構造の大きさが各色のドットサイズよりも大きいとき、入射光が透過する有機EL層1の色と、反射光が透過する有機EL層1の色とが異なることになる。従って、色が混ざり合うこととなり、輝度および色度の低下を招来する。
このように、コーナーキューブアレイの単位構造の大きさを、各色のドットサイズ以下とすることにより、コーナーキューブアレイへの入射光とコーナーキューブアレイからの反射光とが異なる色の有機EL層1を透過することによる混色を防止することができる。従って、有機EL表示素子における輝度および色度の低下の防止を図ることができる。
なお、再帰性反射板5としてコーナーキューブアレイを用いる代わりに、図9に示すように、微小球からなる再帰性反射板5を有機EL表示素子に用いても上記と同様の効果が得られる。以下に、微小球からなる再帰性反射板5を用いた有機EL表示素子における光の光路について説明する。
図9は、微小球からなる再帰性反射板5を用いた場合における有機EL表示素子の構造を示す断面図であり、図9(a)は再帰性反射板5の単位構造の大きさが各色のドットサイズ以下である場合、図9(b)は再帰性反射板5の単位構造の大きさが各色のドットサイズよりも大きい場合を示している。
図9(a)に示すように、青色有機EL層1Bを透過した入射光90は、再帰性反射板5の単位構造の大きさが各色のドットサイズ以下である場合、中心軸92に対して対称位置に並進移動して再帰反射しても、その反射光91は再び青色有機EL層1Bを透過する。
しかしながら、再帰性反射板5の単位構造の大きさが各色のドットサイズよりも大きい場合は、図9(b)に示すように、緑色有機EL層1Gを透過した入射光93は、中心軸95に対して対称位置に並進移動すると、再帰性反射板5の単位構造の大きさが大きいため、反射光94は緑色有機EL層1Gの隣の赤色有機EL層1Rを透過する。このように、再帰性反射板5の単位構造の大きさが各色のドットサイズよりも大きいとき、入射光が透過する有機EL層1の色と、反射光が透過する有機EL層1の色とが異なる。従って、色が混ざり合うこととなり、輝度および色度の低下を招来する。
このように、微小球からなる再帰性反射板5の単位構造の大きさを、各色のドットサイズ以下とすることにより、再帰性反射板5への入射光と再帰性反射板5からの反射光とが異なる色の有機EL層1を透過することによる混色を防止することができる。従って、有機EL表示素子における輝度および色度の低下の防止を図ることができる。
以上のように、再帰性反射板5の単位構造の大きさを、各色のドットサイズ以下とすることにより、混色を防止することができ、従って、有機EL表示素子における輝度および色度の低下の防止を図ることができる。
なお、前面側基板4と背面側基板6との間に挟まれる発光層は、発光状態(第1状態)と、非発光状態(第2状態)との間で状態変化するものであれば特に限定されるものではない。従って、本発明は、有機EL素子だけでなく、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などの発光型表示素子にも適用可能である。
また、上記アルミニウム電極3の材料としては、アルミニウムに限定されるものではなく、他にも、通常、背面電極として用いられる材料であれば用いることができる。
以上のように、本発明の有機EL表示素子(発光型表示素子)は、発光状態である第1状態と、非発光状態である第2状態との間で状態変化する有機EL層(発光層)1と、該発光層からの光を反射する再帰性反射板5とを有し、有機EL層1が第2状態にあるとき、再帰性反射板5は、観察者のくろ目の像が反射され、観察者が該くろ目の像を認識することで黒表示を実現するように設定されている。
これにより、発光状態である第1状態において、有機EL層1内で発せられた光を有機EL表示素子の前面側に出射することができる。従って、明度が高く、良好な白表示が可能となる。また、有機EL層1において前面側に向けて発せられた光だけでなく、背面側に向けて発せられた光も取り出すことができるので、発光の利用効率を上げることができる。
さらに、再帰性反射板5を備えることにより、有機EL層1が第2状態にあるとき、観察者のくろ目の像が反射され、観察者が該くろ目の像を認識することで黒表示を実現することができる。従って、有機EL表示素子を用いた表示装置の表示のコントラストの向上を図ることができる。
また、上記再帰性反射板5の単位構造のピッチは、観察者のくろ目の直径の1/2以下であることが好ましい。
これにより、再帰性反射板5の単位構造の影響による黒表示の悪化を防止することができる。従って、白表示の明度を高く、かつ、コントラストを高くすることができる。
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施の形態について図19ないし図24に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
本実施の形態に係る発光型表示素子としての有機EL表示素子は、図19に示すように、前面側基板4にルーバ(第1光吸収部材)101が設けられている点で、上記第1の実施の形態の有機EL表示素子と異なっている。それ以外の構成は、上記第1の実施の形態の有機EL表示素子の構成と同じである。本実施の形態では、ルーバ101として、ライトコントロールフィルム(住友3M社製)が用いられている。
ルーバ101は、前面側基板4の厚さ方向(つまり前面側基板4の表面方向に対し垂直方向)に対し、有機EL表示素子の表示面の大きさと使用用途とにより決まる視野角の範囲内の光を通過させるが、相異なる複数の画素を通過する光を吸収する光吸収部であり、上記視野角内以外の所定範囲の光を遮るようにした遮光部材である。
図20に示すように、ルーバを備えていない有機EL表示素子では、入射した光の一部が、迷光112として他の画素へと入射されることがある。他の画素から導光される迷光112が、ある画素へ入射されると、該画素の位置の再帰性反射板5によって反射されて、有機EL表示素子外(パネル外)へと出射する。これは、黒状態の反射率を上げてしまい、黒表示を悪化させる原因となる。
一方、図19に示すように、ルーバ101が設けられている有機EL表示素子は、このような他の画素から導光される迷光102を、ルーバ101によって吸収することができる。図19では、迷光102が吸収されて、他の画素に侵入しないことを、点線にて示している。
このように、他の画素から導光される迷光102を、ルーバ101によって吸収することができるので、表示面法線から倒れた観察方向による黒浮きを抑制し、良好な黒表示を実現することができる。この効果は、特に、再帰性反射板5にコーナーキューブアレイを用いた場合に顕著である。
上記の効果は、図21に示すように、光吸収部としての役割を果たすように配置されたカラーフィルタ層(第1光吸収部材)121によっても得ることができる。即ち、他の画素から導光される迷光122は、ブラックマトリックス121BMによって吸収され、また、複数のカラーフィルタ121R・121G・121Bを透過することによっても実質的に十分減衰され、良好な黒表示を保持することができる。ここで、配置されたカラーフィルタ層121の透過波長帯域と、その下に配されている有機EL表示素子の発光波長帯域とは略同じになるように設定されている。
次に、光吸収部としても機能するカラーフィルタ121R・121G・121Bを配置したときの効果を確認する以下のような実験を行った。具体的には、図21に示す有機EL表示素子からカラーフィルタ121R・121G・121Bを省いた以外は全く同様に作製した有機EL表示素子を、図22に示すような測定システムにおいて、拡散光入射時の黒表示の反射率を測定した。
図22に示す測定システムは、測定台131、半球状の拡散板132および受光器133が設けられている。
上記測定台131は、その上面である測定面131aが水平となるように設けられている。拡散板132は、測定面131aを半球状に覆い、拡散板132からの投光が半球の全ての方向から等しい輝度で、上記半球の中心位置に照射するようになっている。
受光器133は、その受光極角が変えられるようになっている。受光極角とは、上記半球の中心位置から、測定面131aの法線方向と、受光器133の設置された方向とのなす角度であり、図22ではθで表されている。
本測定システムは、サンプル134を所定の位置に配置し、拡散板132によって拡散光を照射し、受光器133によって反射輝度を測定する。なお、サンプル134の位置に完全拡散反射板を配置し、正面(θ=0°)で受光したときの反射率を100%としている。
結果は、図23に示す通りである。図23では、cf無とはカラーフィルタ層121を省いた有機EL表示素子を示し、cf有とは、カラーフィルタ層121を備えた有機EL表示素子を示す。
このように、カラーフィルタ121R・121G・121Bを配置することによって、配置しないときと比べて、表示面法線から倒れた(傾斜した視野角)観察方向においても黒表示の反射率は低減されており、黒表示の品位が向上することが判った。
以上のように、ルーバ101やカラーフィルタ層121などの光吸収部を配置する構成とすることによって、上記観察方向による黒表示の反射率の増加を抑制し、良好な黒表示を実現することができる。
また、図24に示すように、有機EL表示素子の側面を、光吸収部材(第2光吸収部材)140で覆っていてもかまわない。図24に示す有機EL表示素子は、図21に示す有機EL表示素子(有機EL表示素子における表示パネル)の側面を光吸収部材140で覆うようにした構成である。
上記有機EL表示素子は、その側面に光吸収部材140を備えているので、外部光141が表示パネル内に入射されることを防止する。また、有機EL表示素子の内部を導光して表示パネルの側面に到達した迷光の影響による黒表示の悪化を防止し、良好な黒表示を実現することができる。
なお、光吸収部材140は表示パネル四辺(つまり各基板4、6にて形成されたパネル状部の側面)すべてに設けられることが望ましい。また、上記光吸収部材140の材料は、特に限定されるものではないが、ベゼル、ルーバ101、またはブラックマトリックス121BMと同じ材料を用いることができる。また、好ましくは、空気などの低屈折率層が有機EL表示素子と光吸収部材140との間に存在しないように、光吸収部材140を形成することが望ましい。
以上のように、有機EL表示素子は、再帰性反射板5の前面側に、再帰性反射板5からの反射光のうち非再帰成分を吸収するルーバ101やカラーフィルタ層121などが配されていることが好ましい。ここで、反射光のうちの非再帰成分とは、入射光の入射方向に対して、出射方向が0.5°より大きく離れている出射光のことをいう。これは、人間のくろ目が直径10mmとした場合、表示面から50cm前方・正面側から表示面を観察した際に良好な黒表示が得られるのが、出射方向が入射方向から0.5°以内の出射光だからである。
これにより、有機EL表示素子の表示面の大きさと使用用途とにより決まる視野角の範囲内の光を通過させ、かつ、視野角内以外の所定範囲の光を遮ることができる。
例えば、他の画素から導光される迷光が、ある画素へ入射されると、該画素の位置の光学部材によって反射されて、有機EL表示素子外(表示パネル外)へと出射する。このことは、黒表示時における黒状態の反射率を上げてしまい、黒表示を悪化させる原因となる。
しかしながら、ルーバ101やカラーフィルタ層121などが配されていることにより、他の画素から導光される迷光を、ルーバ101やカラーフィルタ層121などにより吸収することができる。これにより、黒表示時の視野角特性の向上を図ることができる。即ち、表示面法線から倒れた観察方向による黒浮きを抑制し、良好な黒表示を実現することができる。
また、上記有機EL表示素子は、有機EL層1および再帰性反射板5を有する表示パネルが設けられており、また、該表示パネルの側面を覆うように配され、入射する光を吸収する光吸収部材140を備えていることが好ましい。
これにより、外部光が表示パネル内に入射されることを防止することができる。従って、有機EL表示素子内を導光し迷光となる成分を吸収したり、有機EL表示素子の側面から入射する成分を吸収することができ、黒表示の悪化を防止し、良好な黒表示を実現することができる。これにより、例えば、有機EL表示素子を用いた表示装置の表示品位の低下を回避することができる。
なお、本発明の発光型表示素子は、以下のような構成であってもよい。
(1)発光層の背面側に、入射光を入射方向と同じ方向に反射させる光学部材を備えた構成を有する発光型表示素子。
上記の構成によれば、発光層の発光状態において、発光層内で発せられた光を発光型表示素子の前面側に出射することができる。従って、明度が高く、良好な白表示が可能となる。さらに、発光層において前面側に向けて発せられた光だけでなく、背面側に向けて発せられた光も取り出すことができるので、発光の利用効率を上げることができる。
また、上記光学部材を備えることにより、外部光は入射方向と同じ方向に反射させることができる。従って、例えば、発光型表示素子を用いた表示装置の表示のコントラストは高くなる。一方、非発光状態においても、光学部材を設けることにより、外部光を入射してきた方向と同じ方向に反射することができるため、観察者方向に外部光が出射されない。従って、像が写り込むことはなく、これにより、良好な黒表示を実現することができる。
(2)上記光学部材の単位構造のピッチが5mm以下である、上記(1)に記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、光学部材の単位構造のピッチが5mm以下であるため、例えば、観察者のくろ目の大きさ(直径)を10mm程度であると考えると、その半分以下であるため、観察者のくろ目の上下の像が写り込むことはない。従って、良好な黒表示を実現することができる。
(3)上記光学部材の単位構造のピッチが1mm以下である、上記(1)または(2)に記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、観察者が黒表示時に観察する像を、くろ目から瞳孔へと絞り込むことができ、黒表示品位をさらに良好にすることができる。
(4)上記発光層は複数の色を有し、かつ、上記光学部材の単位構造の大きさは、上記各色のドットサイズ以下である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、光学部材への入射光と光学部材からの反射光とが発光層内の異なる色の領域内を透過することを防止することができる。これにより、混色を防止することができ、従って、発光型表示素子における輝度および色度の低下の防止を図ることができる。
(5)上記光学部材は、単位構造が3面の直角二等辺三角形から構成される三角錐状をしたコーナーキューブアレイからなり、かつ、上記直角二等辺三角形の底角付近が遮光処理されている、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、簡単な構造で光学部材を構成することができる。また、遮光処理されているので、入射光は観察者方向へは出射しない。従って、外部光の像が写り込むことを防止することができる。
(6)上記光学部材は、単位構造が3面の正方形から構成されるコーナーキューブアレイからなるものである、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、簡単な構造で光学部材を構成することができる。
(7)上記光学部材は、コーナーキューブアレイからなり、該コーナーキューブアレイの辺および頂点には遮光処理が施されている、上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、コーナーキューブアレイの辺および頂点などのエッジに入射し、乱反射する成分を吸収することができる。従って、黒表示時の反射率を低下させることができ、黒表示の品位をさらに向上することができる。これにより、さらにコントラストの高い発光型表示素子を提供することができる。
(8)上記光学部材の前面側に、光学部材からの反射光のうち非再帰成分を吸収する第1光吸収部材が配されている、上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の発光型表示素子。
(9)上記第1光吸収部材は、カラーフィルタ層からなる、上記(8)に記載の発光型表示素子。
(10)上記第1光吸収部材は、ルーバからなる、上記(8)に記載の発光型表示素子。
ここで、反射光のうちの非再帰成分とは、入射光の入射方向に対して、出射方向が0.5度より大きく離れている出射光のことをいう。
上記の構成によれば、発光型表示素子の表示面の大きさと使用用途とにより決まる視野角の範囲内の光を通過させ、かつ、視野角内以外の所定範囲の光を遮ることができる。
例えば、他の画素から導光される迷光が、ある画素へ入射されると、該画素の位置の光学部材によって反射されて、発光型表示素子外(パネル外)へと出射する。このことは、黒表示時における黒状態の反射率を上げてしまい、黒表示を悪化させる原因となる。
しかしながら、第1光吸収部材が配されていることにより、他の画素から導光される迷光を、第1光吸収部材により吸収することができる。これにより、黒表示時の視野角特性の向上を図ることができる。即ち、表示面法線から倒れた観察方向による黒浮きを抑制し、良好な黒表示を実現することができる。
具体的には、上記の発光型表示素子は、第1光吸収部材が、カラーフィルタ層からなることが好ましい。
上記の構成によれば、例えば、他の画素から導光される迷光は、ブラックマトリックスや複数のカラーフィルタを透過することによって、実質的に十分減衰され、良好な黒表示を保持することができる。
従って、黒表示時の視野角特性の向上を図ることができるとともに、発光の利用効率の損失を回避することができる。
また、他には、上記の発光型表示素子は、第1光吸収部材が、ルーバからなることが好ましい。
上記の構成によれば、非再帰成分、即ち、入射光と反射光とが平行から大きく外れる成分を積極的に吸収させることができ、これにより、黒表示時の視野角特性の向上を図ることができる。
(11)上記発光層および光学部材を有する表示パネルが設けられており、該表示パネルの側面を覆うように配され、入射する光を吸収する第2光吸収部材を備えている、上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、第2光吸収部材により、外部光が表示パネル内に入射されることを防止することができる。従って、発光型表示素子内を導光し迷光となる成分を吸収したり、発光型表示素子の側面から入射する成分を吸収することができ、黒表示の悪化を防止し、良好な黒表示を実現することができる。これにより、例えば、発光型表示素子を用いた表示装置の表示品位の低下を回避することができる。
(12)上記発光層は、エレクトロルミネッセンス層である、上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、エレクトロルミネッセンス層の発光状態において、エレクトロルミネッセンス層内で発せられた光を発光型表示素子の前面側に出射することができる。従って、明度が高く、良好な白表示が可能となる。さらに、エレクトロルミネッセンス層において前面側に向けて発せられた光だけでなく、背面側に向けて発せられた光も取り出すことができるので、発光の利用効率を上げることができる。
(13)発光状態である第1状態と、非発光状態である第2状態との間で状態変化する発光層と、該発光層からの光を反射する反射部材とを有し、上記発光層が上記第2状態にあるとき、上記反射部材は、観察者のくろ目の像が反射され、観察者が該くろ目の像を認識することで黒表示を実現するように設定されている、発光型表示素子。
上記の構成によれば、発光状態である第1状態において、発光層内で発せられた光を発光型表示素子の前面側に出射することができる。従って、明度が高く、良好な白表示が可能となる。また、発光層において前面側に向けて発せられた光だけでなく、背面側に向けて発せられた光も取り出すことができるので、発光の利用効率を上げることができる。
さらに、反射部材を備えることにより、発光層が第2状態にあるとき、観察者のくろ目の像が反射され、観察者が該くろ目の像を認識することで黒表示を実現することができる。従って、発光型表示素子を用いた表示装置の表示のコントラストの向上を図ることができる。
(14)上記反射部材は、入射光を入射方向と同じ方向に反射させるものである、上記(13)に記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、観察者方向に外部光が出射されない。従って、像が写り込むことはなく、これにより、良好な黒表示を実現することができる。
(15)上記反射部材の単位構造のピッチは、観察者のくろ目の直径の1/2以下である、上記(13)または(14)に記載の発光型表示素子。
上記の構成によれば、反射部材の単位構造の影響による黒表示の悪化を防止することができる。従って、白表示の明度を高く、かつ、コントラストを高くすることができる。