以下、添付の図面を参照して、この発明による電気負荷の電流制御装置について好適な実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、この発明の第1実施形態による電気負荷の電流制御装置を示す全体回路図である。図1において、電流制御装置100Aは、制御電源ユニット110から給電されるマイクロプロセッサ111Aを中心として、開閉回路部120、目標電流設定回路130、帰還制御回路を構成する比較偏差積分回路140、増幅回路部150、平滑回路160、温度検出回路170などの回路部によって構成され、図示しない密閉筐体に収納されている。
まず、電流制御装置100Aに接続される外部機器として、駆動電源101、ヒューズ102、電源スイッチ103によって構成された駆動電源回路が電源端子104Pと接地端子104N間に接続されている。各種アナログセンサであるアナログ入力群105aは、図示しないコネクタとインタフェース回路を介して後述のマイクロプロセッサ111Aのアナログ入力ポートAINに接続されている。また、センサスイッチや操作スイッチ等のスイッチ入力群105dは、図示しないコネクタとインタフェース回路を介してマイクロプロセッサ111Aのデジタル入力ポートDINに接続されている。
アクチェータや表示機器等の電気負荷群106は、図示しないコネクタとインタフェース回路を介してマイクロプロセッサ111Aの出力ポートOUTに接続されている。電気負荷群106の中の一つである、例えばリニアソレノイド等の電流制御を必要とする電気負荷107は、出力端子108から給電されるようになっている。電気負荷群106の中の一つであり、異常報知手段である警報・表示器109は、マイクロプロセッサ111Aの異常報知出力DSPから駆動されるようになっている。
なお、製品出荷前の校正運転に当たっては、外部ツール900がシリアルインタフェース回路116を介してマイクロプロセッサ111Aと接続され、電気負荷107に直列接続された校正用デジタル電流計901dの出力信号と、電源端子104Pに印加された駆動電源101の駆動電源電圧Vbを測定する校正用デジタル電圧計902dの出力信号と、電流制御装置100Aの内部の温度を推定する校正用デジタル温度計903dが、外部ツール900を介してマイクロプロセッサ111Aに供給され後述のRAMメモリ112に転送されるようになっている。
校正用デジタル温度計903dに接続される温度センサは、電流制御装置100Aの内部に設けられた温度検出回路170の近傍に設置されるのが理想的である。しかし、校正用デジタル温度計903dに接続される温度センサを電流制御装置100Aの外部近傍に設置した場合には、予め外部環境温度対内部環境温度特性を多数の実験データに基づいて測定しておいて、この実験測定データに基づいて、実際に測定された外部環境温度から内部環境温度を推定し、推定された内部環境温度をRAMメモリ112に換算書込みすることができる。また、温度検出回路170が予め部品レベルで校正されている場合には、校正用デジタル温度計903dを接続する必要はなく、所定の測定電圧対温度特性に基づいて電流制御装置100A内部の環境温度を知ることができる。
電流制御装置100Aの内部の構成として、制御電源ユニット110は、例えばDC10〜16Vである駆動電源電圧Vbから、例えばDC5Vの安定化制御電源電圧Vccを発生して電流制御装置100A内部の各部に給電するようになっている。
マイクロプロセッサ111Aは、演算処理用のRAMメモリ112と、例えば電気的に一括消去して書込み・読出しが行える不揮発フラッシュメモリ等によるプログラムメモリ113Aと、1バイト単位で電気的に書込み・読出しが行える不揮発EEPROMメモリ等によるデータメモリ114Aと、多チャンネルAD変換器115と、シリアル通信用インタフェース回路116とで協働するように構成されている。
開閉回路部120は、例えばPNP接合形トランジスタである開閉素子121と、開閉素子121のベース回路に接続された駆動抵抗122とNPN形のトランジスタ123との直列回路と、開閉素子121のベース・エミッタ端子間に接続された第1の安定抵抗124と、トランジスタ123のベース・エミッタ端子間に接続された第2の安定抵抗125で構成されていて、開閉素子121の一端は電源端子104Pに接続され、他端は抵抗値がR1である電流検出抵抗126を介して出力端子108に接続されて電気負荷107に給電するようになっている。
転流ダイオード127は、電流検出抵抗126と誘導性負荷である電気負荷107との直列回路に対して並列接続されていて、開閉素子121が開路したときに電気負荷107の減衰電流が還流する極性に接続されている。
目標電流設定回路130は、平滑抵抗131と平滑コンデンサ132によって構成されていて、マイクロプロセッサ111Aが発生するパルス幅変調制御出力PMWの出力信号を平滑して目標電圧Es=αVccを得る平滑回路となっている。但し、パルスデューティαは、パルス幅変調制御出力PWMが論理レベル「H」となって出力電圧として制御電源電圧Vccを発生している期間とパルス周期との比率である。なお、この目標電流設定回路130は、DA変換器に替わるアナログ変換手段として用いられていて、マイクロプロセッサ111Aのパルス列出力1点によってアナログ値としての目標電圧Esが得られるように構成されているもので、パルスデューティαと開閉素子121のON/OFF制御比率であるパルスデューティγとは直接的には一致するものではない。
比較偏差積分回路140は、比較器141、第1の入力抵抗142、第2の入力抵抗143、積分コンデンサ144、及びヒステリシス回路145によって構成されていて、上記目標電圧Esは、第1の入力抵抗142を介して比較器141の非反転入力に接続され、後述の監視電圧Efは、第2の入力抵抗143を介して比較器141の反転入力に接続され、積分コンデンサ144は、比較器141の出力端子と反転入力端子間に接続されて目標電圧Esと監視電圧Efとの偏差値に対する積分電圧出力が得られるように構成されている。
ヒステリシス回路145は、比較器141の出力電圧が例えば3Vを超過したときに出力論理レベルが「H」となってトランジスタ123を通電駆動し、比較器141の出力電圧が例えば2.5V以下に低下したときに出力論理レベルが「L」に復帰してトランジスタ123を不導通にすることによって、開閉素子121を確実にON/OFF駆動する正帰還比較回路によって構成されている。なお、ヒステリシス回路145に替わって、マイクロプロセッサ111Aの制御出力信号PWMのパルス周期と同期した鋸歯状波信号生成回路の出力電圧と比較器141の出力電圧を比較して、その比較結果によってトランジスタ123の通電制御を行うようにすることも可能であり、この場合の開閉素子121の開閉周期はマイクロプロセッサ111の制御出力信号PWMのパルス周期と一致したものとなる。
増幅回路部150は、駆動電源電圧Vbを電源電圧として動作する差動増幅器151と、抵抗値がR2である第3の入力抵抗152と、抵抗値がR3であって設計理論値としてはR2=R3である第4の入力抵抗153と、抵抗値がR4である分圧抵抗154と、抵抗値がR5であって設計理論値としてはR4=R5である負帰還抵抗155と、抵抗値がR6である第1のバイアス抵抗156と、抵抗値がR7であって設計理論値としてはR6=R7である第2のバイアス抵抗157と、バイアス補正回路を構成するバイアス電源158によって構成されている。
第3の入力抵抗152は、対地電位がV1となる電流検出抵抗126の正側端子と対地電位がE1となる差動増幅器151の非反転入力端子間に接続され、第4の入力抵抗153は、対地電位がV2となる電流検出抵抗126の負側端子と対地電位がE2となる差動増幅器151の反転入力端子間に接続されている。分圧抵抗154は、差動増幅器151の非反転入力端子と接地端子間に接続され、負帰還抵抗155は、対地電位がE0となる差動増幅器151の出力端子と反転入力端子間に接続されている。また、第1のバイアス抵抗156は、差動増幅器151の非反転入力端子とバイアス電源158との間に接続され、第2のバイアス抵抗157は、差動増幅器151の反転入力端子とバイアス電源158との間に接続されていて、バイアス電源158は電源端子104Pの入力電圧によって動作する基準電圧生成回路によって構成され、対地電位V0のバイアス電圧を発生するようになっている。
平滑回路160は、直列抵抗161、コンデンサ162、並列抵抗163、及び電圧制限ダイオード164によって構成されている。直列抵抗161は、差動増幅器151の出力端子とマイクロプロセッサ111Aの電圧監視入力端子Efとの間に接続され、コンデンサ162は、電圧監視入力端子Efと接地端子間に接続されている。また、並列抵抗163は、コンデンサ162に対して並列接続されており、電圧制限ダイオード164は電圧監視入力端子Efと制御電源ユニット110による制御電源電圧Vccの電源ラインに接続されている。
電流検出回路170は、温度検出素子171と直列抵抗172による直列回路に制御電源電圧Vccから給電し、温度検出素子171と直列抵抗172による分圧電圧を測定電圧Vtとしてマイクロプロセッサ111Aに入力するようになっている。
なお、差動増幅器151の出力電圧E0は、マイクロプロセッサ111Aに入力される監視電圧Efの前段部の電圧になっており、前段部電圧E0を直列抵抗161と並列抵抗163で分圧した電圧が監視電圧Efとなっている。後述するように、前段部電圧E0は通常は電気負荷107に流れる負荷電流の大きさによってE0=0〜Vcc(=5V)の間で変化するが、短絡事故等の異常発生時にはE0=Vb(=10〜16V)まで上昇するものであり、このような異常発生時にマイクロプロセッサ111Aの入力端子に印加される電圧を制御電源電圧Vcc以下に制限するために電圧制限ダイオード164が接続されている。
平均電圧測定回路を構成する分圧抵抗191a、192aは、互いに直列接続されて電気負荷107に対して並列接続されていて、分圧抵抗192aの両端電圧が監視平均電圧Vaとして直列抵抗193を介してマイクロプロセッサ111Aに入力される。マイクロプロセッサ111Aの入力端子には平滑用コンデンサ194が接続されている。なお、図中点線で示されているように、電源電圧測定回路を構成する分圧抵抗191b、192bを、互いに直列接続して電源端子104pに印加される駆動電源電圧Vbを分圧し、電源監視電圧Vfとしてマイクロプロセッサ111Aに入力し、マイクロプロセッサ111A内で参考情報として活用できるようにすることもできる。
以上のとおり構成された第1実施形態による電気負荷の電流制御装置において、開閉素子121のON時間をτon、OFF時間をτoff、開閉周期をτとすると、通電デューティγは次式で示される。
γ=τon/τ、(τ=τon+τoff) ・・・・(1)
一方、電気負荷107の温度変化に対応した最小抵抗Rminと最大抵抗Rmaxとの間で規格基準抵抗Rc=Rmin〜Rmaxを定め、駆動電源電圧Vbの変動範囲を最小値Vminと最大値Vmaxとしたときに、規格基準電流IrをIr=Vmin/Rcによって定義して、Rmin、Rc、Rmax、Vmin、Vmax等の固定定数は不揮発プログラムメモリ113A、又は不揮発データメモリ114A内に予め格納保存しておくようになっている。この場合、もしも電気負荷107の目標負荷電流がIsであって、電気負荷107の抵抗が規格基準抵抗Rcに合致しておれば、駆動電源電圧がVbであるときの通電デューティγ0は次式で示される。但し、電流検出抵抗126の抵抗値R1はR1<<Rminであって、無視できる値となっている。
γ0=(Is/Ir)×(Vmin/Vb)、Ir=Vmin/Rc ・・・・(2)
また、このときに電気負荷107に印加されている平均電圧Vaaは次式で算出される。
Vaa=γ0×Vb=Vmin×(Is/Ir)=Is×Rc、Rc
=Rmin〜Rmax・・・・(3)
次に、差動増幅器151関連の特性を明確にすると、非反転入力に流入しようとする電流の総和は略ゼロとなることより次式が成立する。
(V1−E1)/R2+(0−E1)/R4+(V0−E1)/R6=0
∴V1/R2+V0/R6=E1/R246 ・・・・(4)
但しR246=1/(1/R2+1/R4+1/R6)
同様に差動増幅器151の反転入力に流入しようとする電流の総和は略ゼロとなることより次式が成立する。
(V2−E2)/R3+(E0−E2)/R5+(V0−E2)/R7=0
∴V2/R3+E0/R5+V0/R7=E2/R357 ・・・・(5)
但しR357=1/(1/R3+1/R5+1/R7)
差動増幅器151の非反転入力の電位E1と反転入力の電位E2は略等しくなるので(4)式と(5)式によって以下のとおり出力電位E0が算出される。
R246×(V1/R2+V0/R6)=R357×(V2/R3+E0/R5+V0/R7)
∴(R246/R2)×V1−(R357/R3)×V2+[(R246/R6)−(R357/R7)]×V0=(R357/R5)×E0 ・・・・(6)
ここで、電流検出抵抗126に流れる負荷電流をImとしたときには次式が成立する。
V2=V1−Im×R1 ・・・・(7)
従って、出力電圧E0は(6)式、(7)式を用いて次式で算出される。
E0=Kd×V1+Ki×Im+K0 ・・・・(8)
但し、Kd=(R246/R2−R357/R3)×(R5/R357)
=(R246/R357)×(R5/R2)−(R5/R3)
Ki=R1×(R357/R3)×(R5/R357)=R1×(R5/R3)
K0=[(R246/R6)−(R357/R7)]×(R5/R357)×V0
=[(R246/R357)×(R5/R6)−(R5/R7)]×V0
なお、R2≒R3、R4≒R5、R6≒R7であるから、R246≒R357となり、本来はKd≒0、K0≒0となるものである。
但し、微小負荷電流状態において差動増幅器151の出力電圧が負の値にならないように一部の抵抗は意図的に不一致にした設計が行われている。このように意図的な不平衡回路を構成するときには、例えば分圧抵抗154にその誤差比率に見合った微小な抵抗を直列接続しておけばよい。
次に、並列抵抗163の抵抗値R163と直列抵抗161の抵抗値R161により分圧される監視電圧の平均値Efを算出すると、期間τonではV1=Vbであり、期間τoffではV1=−Vdとなるので次式で算出される。
Ef=[∫E0dt/τ]×[R163/(R163+R161)]
=[(Kd×Vb+Ki×Im+K0)×τon/τ+(−Kd×Vd+Ki×I
m+K0)×τoff/τ]×[R163/(R163+R161)]
∴Ef=A×(Vb+Vd)×γ+B×Im+C ・・・・(9)
但し、A=Kd×[R163/(R163+R161)]
B=Ki×[R163/(R163+R161)]
C=K0×[R163/(R163+R161)]
この場合の誤差成分は、ΔEf=A×(Vb+Vd)×γ+Cとなっている。
更に、分圧抵抗191a、192aの抵抗値をR191、R192として監視平均電圧Vaを算出すると、期間τonではV2≒Vbであり、期間τoffではV2≒−Vdとなるので次式で算出される。
Va=[Vb×τon/τ−Vd×τoff/τ]×G
=[(Vb+Vd)×γ−Vd]×G
≒(Vb+Vd)×γ×G ・・・・(10)
但し、G=R192/(R191+R192)
(9)式と(10)式により、監視電圧Efは次式によっても表現することができる。
Ef=D×Va+B×Im+C ・・・・(11)
但し、D=A/G=Kd×[R163/(R163+R161)]×(R191+R192)/R192
(9)式、(11)式における校正定数AとDは、監視電圧Efの誤差成分のうちの電圧比例係数となるもので、校正定数Bは電流比例係数、校正定数Cは誤差のオフセット成分となっている。この場合の誤差成分は、ΔEf=D×Va+Cとなっている。
次に、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の動作について説明する。
図2は、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置における校正運転用の動作フローチャートである。なお、図2における工程ブロック210a、工程ブロック210bの詳細は図3に示され、工程ブロック220a、工程ブロック220bの詳細は図4に示され、工程ブロック230a、工程ブロック230bの詳細は図5に示されている。また、工程ブロック240a、工程ブロック240bの詳細は図6に示され、工程ブロック250a、工程ブロック250bの詳細は図7に示されている。
図2において、工程200はマイクロプロセッサ111Aの校正運転開始工程で、続く工程201は外部ツール900から校正運転指令を受信したかどうかを判定し、校正指令を受信すればYESの判定を行って工程202へ移行し、校正指令を受信していなければNOの判定を行って動作終了工程209へ移行するステップである。動作終了工程209では他の制御動作を行い、所定時間以内には再度開始工程200が活性化されるようになっている。
工程200、工程201、工程209を循環しながら、やがて校正指令を受信すると工程202へ移行し、工程202では受信した校正指令が高温環境での校正運転指令であったときに、YESの判定を行って工程ブロック210aへ移行し、常温環境での校正運転指令であったときに、NOの判定を行って工程ブロック210bへ移行するようになっている。
工程ブロック210a、工程ブロック210bの詳細を示す図3において、工程ブロック210a、工程ブロック210bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程210が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程219に続いて図2の工程ブロック220a、工程ブロック220bへ移行するようになっている。
工程212は工程210に続いて実行され、外部ツール900が発信した第1の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程213へ移行し、未受信であるときには工程212へ復帰して第1の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第1の校正指令を発生するに当たっては、工程211によって事前に電流制御装置100Aに所定の駆動電源101を接続し、校正用電流計901d、校正用電圧計902d、校正用温度計903dを接続しておくようになっている。
工程213では温度検出回路170の測定電圧Vtを多チャンネルAD変換器115を介して読取り記憶し、続く工程214では校正用温度計903dから外部ツール900を介して入力された外部環境温度を読出し記憶する。
続く工程215ではパルス幅変調制御出力PWMのパルスデューティα=0にし、続く工程216ではこのときの監視電圧Efの値である誤差電圧Ef0を、例えばRAMメモリ112内の所定アドレスのメモリであるデータレジスタD10に転送してから復帰工程219へ移行する。
続く工程ブロック220a、工程ブロック220bの詳細を示す図4において、工程ブロック220a、工程ブロック220bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程220が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程229に続いて図2の工程ブロック230a、工程ブロック230bへ移行するようになっている。
工程222は工程220に続いて実行され、外部ツール900が発信した第2の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程223へ移行し、未受信であるときには工程222へ復帰して第2の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第2の校正指令を発生するに当たっては、工程221によって事前に電流制御装置100Aに所定の駆動電源101を接続した状態で電気負荷107への接続回路を開放し、校正用電圧計902d、校正用温度計903dを接続しておくようになっている。
工程223ではパルス幅変調制御出力PWMのパルスデューティα=100%にし、続く工程224ではこのときの監視電圧Efの値である誤差電圧Ef1を、例えばRAMメモリ112内の所定アドレスのメモリであるデータレジスタD20に転送し、続く工程225ではこのときの監視平均電圧Vaの値をデータレジスタD21に転送する。続く工程226では校正用デジタル電圧計902dから外部ツール900を介して入力された駆動電源電圧Vbの値をデータレジスタD22に転送してから復帰工程229へ移行する。
続く工程ブロック230a、工程ブロック230bの詳細を示す図5において、工程ブロック230a、工程ブロック230bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程230が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程239に続いて図2の工程ブロック240a、工程ブロック240bへ移行するようになっている。
工程232は工程230に続いて実行され、外部ツール900が発信した第3の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程233へ移行し、未受信であるときには工程232へ復帰して第3の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第3の校正指令を発生するに当たっては、工程231によって事前に電流制御装置100Aに所定の駆動電源101を接続した状態で電気負荷107を接続し、校正用電流計901d、校正用電圧計902d、校正用温度計903dを接続しておくようになっている。
工程233ではパルス幅変調制御出力PWMのパルスデューティα=100%にし、続く工程234ではこのときの監視電圧Efの値である測定電圧Ef2を、例えばRAMメモリ112内の所定アドレスのメモリであるデータレジスタD30に転送し、続く工程235では校正用デジタル電流計901dから外部ツール900を介して入力された実負荷電流Immの値をデータレジスタD33に転送してから復帰工程239へ移行する。
続く工程ブロック240a、工程ブロック240bの詳細を示す図6において、工程ブロック240a、工程ブロック240bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程240が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程249に続いて図2の工程ブロック250a、工程ブロック250bへ移行するようになっている。
工程242は工程240に続いて実行され、外部ツール900が発信した第4の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程243へ移行し、未受信であるときには工程242へ復帰して第4の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第4の校正指令を発生するに当たっては、工程241によって校正指令1から3の発生が完了しているかどうかの確認を行うようになっている。
工程243では工程225、工程226で転送記憶したデータレジスタの値によって平均電圧校正係数Kaを次式によって算出し、これをデータレジスタD41に転送書込みする。
Ka=Vb/Va=D22/D21→D41
続く工程244では工程216で転送保存された誤差電圧Ef0の値をオフセット成分CとしてデータレジスタD42に転送書込みする。
続く工程245では工程224、工程216、工程225で転送記憶したデータレジスタの値によって、監視電圧Efの誤差成分の電圧比例係数Dを次式によって算出し、これをデータレジスタD43に転送書込みする。
D=(Ef1−Ef0)/Va=(D20−D10)/D21→D43
続く工程246では工程234、工程224、工程235で転送記憶したデータレジスタの値によって、監視電圧Efの電流比例係数Bを次式によって算出し、これをデータレジスタD44に転送書込みしてから復帰工程249へ移行する。
B=(Ef2−Ef1)/Imm=(D30−D20)/D33→D44
なお、工程243は平均電圧校正手段、工程245は電圧比例係数演算手段、工程246は電流比例係数演算手段となっており、工程243から工程246を主体とする工程ブロック240a、工程ブロック240bは校正係数演算手段240Aを構成している。
続く工程ブロック250a、工程ブロック250bの詳細を示す図7において、工程ブロック250a、工程ブロック250bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程250が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程259に続いて図2の工程203a、工程203bへ移行するようになっている。
工程252は工程250に続いて実行され、外部ツール900が発信した第5の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程253へ移行し、未受信であるときには工程252へ復帰して第5の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第5の校正指令を発生するに当たっては、工程251によって事前に電流制御装置100Aに所定の駆動電源101を接続した状態で電気負荷107を接続し、校正用電流計901d、校正用電圧計902d、校正用温度計903dを接続しておくようになっている。また、後述の工程253〜工程258では、目標負荷電流Isの最大値から最小値の間にかけて等比配分された複数の測定電流Isi(i=0、1、2、・・・n)を設定し、各測定電流Isiに対応した電流比例係数Biを算出するものである。なお、工程253〜工程256で構成された工程ブロック257は線形性校正手段となるものである。
工程253では測定番号iとして例えば初期値i=0を設定し、続く工程254では所定の目標電流Isiを設定する。続く工程255では校正用電流計901dによる実負荷電流Immiを読出し、続く工程256では電流比例係数の補正値Biとして、Bi=B×Isi/Immiを算出記憶する。なお、ここで適用される電流比例係数Bは工程ブロック240a、工程ブロック240bで算出された値である。
続く工程258では測定完了したかどうかを判定して、未完了であればNOの判定を行って工程253へ移行して測定番号iをi+1に増加させ、測定完了であればYESの判定を行って復帰工程259へ移行する。
工程203a、工程203bは工程ブロック250a、工程250bに続いて実行され、工程ブロック210a、工程ブロック210bから工程ブロック250a、工程ブロック250bで算出された各校正定数を不揮発データメモリ114Aへ転送保存し、図示しない転送確認照合を行ったうえで工程204a、工程204bへ移行する。なお、工程203a、工程203bによって構成された工程ブロック203Aは転送保存手段となるものである。
工程204aでは高温校正完了フラグをセットしてから工程205へ移行し、工程204bでは常温校正完了フラグをセットしてから工程205へ移行する。工程205では工程204a、工程204bによるフラグの状態を監視することにより、常温、高温での校正が完了しておればYESの判定を行って工程207へ移行し、両方の校正が完了していなければNOの判定を行って工程206へ移行するようになっている。
工程206では外部ツール900に対する未完了メッセージ指令を発生して動作終了工程209へ移行する。
工程207では工程ブロック210a、工程ブロック210b内の工程214で測定された外部環境温度を参照して内部環境温度を推定し、温度検出回路170の測定電圧Vt対内部環境温度Tの特性を校正記憶する。なお、マイクロプロセッサ111Aの不揮発プログラムメモリ113Aには、校正用温度計903dで測定された外部環境温度に対応する内部環境温度Tの関係を予め実験測定して得られる変換データが格納されていて、この場合の内部環境温度は高精度な校正用の温度センサと温度計によって測定されたものである。従って、図3の工程214で測定された外部環境温度とプログラムメモリ113Aに格納されている変換データにより内部環境温度Tが推定され、工程213で測定された温度検出回路170の測定電圧Vtと内部環境温度Tとの対応が検出されることになる。
温度検出回路170の検出温度校正手段となる工程207は、温度校正を常温環境のみで行うのか、常温環境と高温環境の2点で行うのかによって具体的な処理は異なったものとなる。
常温環境のみで温度校正を行う場合には、適用された温度検出回路170における所定の温度対測定電圧の特性データ、例えば標準的な温度対測定電圧の特性データが、近似算式、又はデータテーブルとして不揮発プログラムメモリ113Aに予め格納されていて、校正された常温環境温度を基準として校正現品の測定電圧Vt1と標準的な特性データから算出される測定電圧Vt2との比率によって校正定数が算出されることになる。
校正運転が常温環境と高温環境の両方の温度環境において行なわれる場合には、温度検出回路170の測定電圧Vtのデジタル変換値と、既知の内部環境温度、又は外部設置された校正用温度計903dによる推定内部環境温度を対比して、実際の測定電圧Vtから実使用環境温度Tを算出する補間演算算式、又はデータテーブルを算出することになる。
制御定数校正手段となる工程208は、工程ブロック210a、工程ブロック210bから工程ブロック250a、工程ブロック250bに至る校正運転の結果として、電流比例係数Bと誤差成分の電圧比例係数Dとオフセット成分Cについて、図8で後述するようなデータテーブルを作成してから動作終了工程209へ移行するようになっている。
次に、校正定数のデータテーブルの枠組みを示した図8(A)〜図8(C)について説明する。
図8(A)は、温度検出回路170の出力電圧Vta〜Vteに対応した内部環境温度Ta〜Teを求めるデータテーブルで、このデータテーブルは、部品レベルで校正済の高精度な温度検出回路170の温度対測定電圧特性からそのまま抽出するか、又は比較的低精度な温度検出回路170が使用されているときには、例えば常温環境における内部環境温度Tbにおいて実測された現品の測定電圧Vtbの値と、適用された温度検出回路170の標準的な温度対測定電圧特性を基にして他の内部環境温度Ta、Tc、Td、Teにおける測定電圧Vta、Vtc、Vtd、Vteを比例算出したものとなっている。より望ましくは、常温環境Tbと高温環境Tdにおける2点の内部環境温度において実測された測定電圧VtbとVtdを基にして、内部環境温度Ta、Tc、Teにおける測定電圧Vta、Vtc、Vteを統計的に補間、延長して推定算出することである。
図8(B)は、誤差成分のオフセット成分Cに関するデータテーブルの枠組みを示しており、オフセット成分Ca〜Ceは複数分割された実用環境温度帯域Ta〜Teごとに異なるデータが適用されるようになっている。内部環境温度Tb、Tdにおけるオフセット成分Cb、Cdは、工程ブロック210a、工程ブロック210bで実測された値を基にして、工程ブロック240a、工程ブロック240bで算出された値であり、その他の内部環境温度Ta、Tc、Teにおけるオフセット成分Ca、Cc、Ceは、実測されたオフセット成分Cb、Cdから統計的に補間、延長して推定算出したものとなっている。
図8(C)は、誤差成分の電圧比例係数Dに関するデータテーブルの枠組みを示しており、電圧比例係数Da〜Deは複数分割された実用環境温度帯域Ta〜Teごとに異なるデータが適用されるようになっている。内部環境温度Tb、Tdにおける電圧比例係数Db、Ddは、工程ブロック220a、工程ブロック220bで実測された値を基にして、工程ブロック240a、工程ブロック240bで算出された値であり、その他の内部環境温度Ta、Tc、Teにおける電圧比例係数Da、Dc、Deは、実測された電圧比例係数Db、Ddから統計的に補間、延長して推定算出したものとなっている。
図8(D)は、電流比例係数Bに関するデータテーブルの枠組みを示しており、電流比例係数Bは、複数分割された実用環境温度帯域Ta〜Teと、設定電流帯域Is0〜Is5とに対応して異なるデータが適用されるようになっている。内部環境温度Tb、Tdにおける電流比例係数Bbi、Bdiは、工程ブロック230a、工程ブロック230bで実測された値を基にして、工程ブロック240a、工程ブロック240bで算出され、更に工程ブロック250a、工程ブロック250bによって測定された値が付加されたもので、その他の内部環境温度Ta、Tc、Teにおける電流比例成分Bai、Bci、Beiは、実測された電流比例係数Bbi、Bdiから統計的に補間、延長して推定算出したものとなっている。
なお、高精度温度検出回路170に関する温度対測定電圧特性、又は低精度温度検出回路170に関する標準的な温度対測定電圧特性については不揮発プログラムメモリ113Aに予め格納しておくようになっており、電流制御装置100Aとしての校正運転によって算出される各種校正データは、不揮発プログラムメモリ113A、又は不揮発データメモリ114Aに格納されるようになっている。
次に、図9のフローチャートにより、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置における通常制御ルーチンの動作について説明する。
図9において、工程300はマイクロプロセッサ111Aが実行する多数の制御フローの中の一つとして、目標負荷電流の設定値を出力するためのパルス幅変調制御に関する動作開始工程で、続く工程301は図示しない他の制御フローの中で決定された目標負荷電流Isの値を読出す工程である。また、続く工程302は以下の制御フローが運転開始後の初回動作であるかどうかを図示しないフラグの動作状態によって判定する工程で、工程302が初回動作の判定であったときには工程303へ移行し、初回動作ではない判定であったときには工程310へ移行するようになっている。
工程303では工程301で読出設定された目標負荷電流Isの値と、不揮発プログラムメモリ113A、又は不揮発データメモリ114Aに予め格納されている固定定数としての規格基準抵抗Rc=Rmin〜Rmaxの値を用いて、前述の(3)式によって平均電圧Vaa=Is×Rcを算出する工程である。
続く工程304は目標負荷電流Isに対応した推定監視電圧Esを算出する工程で、この工程では前述の(11)式における負荷電流Imに替わって、工程301で設定された目標負荷電流Isが流れたと仮定したときの監視電圧Efの値を推定監視電圧Esとして次式により算出するのであって、定数D、B、Cは校正定数として不揮発データメモリ114Aに格納されているデータが読出し使用され、平均電圧Vaとしては工程303で算出された平均電圧Vaaの値が使用されるようになっている。
Es=D×Vaa+B×Is+C
続く工程305はパルス幅変調制御出力PWMの出力電圧が論理レベル「H」となって制御電源電圧Vccとなっている期間とパルス周期との比率であるパルスデューティαとして、α=Es/Vccを算出する工程で、ここで使用される推定監視電圧Esは工程304で算出されたもので、制御電源電圧Vccの値は不揮発プログラムメモリ113A、又は不揮発データメモリ114Aに予め格納されている固定定数を読出し使用するようになっている。
続く工程306は工程305で算出されたパルスデューティαの値に所定倍率Nをかけてその整数値分をRAMメモリ112における特定のアドレスメモリであるデータレジスタD1に格納すると共に、N−D1の値をデータレジスタD2に格納する工程である。所定倍率Nとしては例えばN=1000である。
工程ブロック307は工程303から工程306によって構成された初期設定手段で、工程304は仮換算推定手段となっている。
工程310は工程302の判定が初回動作ではなかったとき、又は工程306に続いて実行され、温度検出回路170の測定電圧Vtを読み出して、図8(A)のデータテーブルから内部環境温度Tを算出する。続く工程311では図8(B)、図8(C)のデータテーブルから現在の環境温度に対応したオフセット成分Cと電圧比例係数Dとを読出し、
続く工程312では図8(D)のデータテーブルから現在の環境温度と工程301で設定された目標負荷電流Isに対応した電流比例係数Bを算出する。なお、工程310、工程311、工程312によって構成された工程ブロック314によって校正定数確定手段が構成されている。
続く工程315はマイクロプロセッサ111Aに入力されている監視平均電圧Vaの値を読出す工程となっている。
続く工程316は目標負荷電流Isに対応した推定監視電圧Esを算出する工程で、この工程では前述の(11)式における負荷電流Imに替わって、工程301で設定された目標負荷電流Isが流れたと仮定したときの監視電圧Efの値を推定監視電圧Esとして次式により算出する。定数D、B、Cは工程ブロック314で算出された値が使用され、平均電圧Vaとしては工程315で読み出された実際の平均電圧Vaの値が使用されるようになっている。
Es=D×Va+B×Is+C
続く工程317と工程318は工程305、工程306と同様にパルスデューティαの算出とデータレジスタD1、D2への書込みを行う工程である。ここで使用される推定監視電圧Esの値は工程315で読み出された平均電圧Vaの値によって変化するようになっている。
工程ブロック319は工程316、工程317、工程318で構成された換算設定手段となっていて、目標負荷電流Isに対応した監視電圧Efの推定値Esを目標電圧として設定し、目標電圧Esに対応したパルスデューティαのパルス幅変調制御出力PWMを発生するものとなっている。
続く工程320は負荷電流の最小値Imin=Ka×Va/Rmaxを算出する工程で、平均電圧校正係数Kaや電気負荷107の最大抵抗Rmaxは不揮発データメモリ114A、又は不揮発プログラムメモリ113Aに格納されている値が使用され、平均電圧Vaは工程315で読み出された平均電圧Vaの現在値となっていて、Ka×Vaの値は電気負荷107に印加されている平均電圧そのもの値に相当している。
続く工程321は負荷電流の最小値Imax=Ka×Va/Rminを算出する工程で、平均電圧校正係数Kaや電気負荷107の最小抵抗Rminは不揮発データメモリ114A、又は不揮発プログラムメモリ113Aに格納されている値が使用され、平均電圧Vaは工程315で読み出された平均電圧Vaの現在値となっていて、Ka×Vaの値は電気負荷107に印加されている平均電圧そのもの値に相当している。
続く工程322は現在の監視電圧Efの値から前述の(11)式に基づいて負荷電流Imを算出する工程である。
続く工程323は過大電流状態検出手段となる工程で、この工程323では工程322で算出た負荷電流Imが工程321で算出された最大電流Imaxよりも大きいときにはYESの判定を行って過大電流状態であると判定して工程325へ移行し、工程322で算出た負荷電流Imが工程321算出された最大電流Imaxよりも大きくないときにはNOの判定を行って過大電流状態ではないと判定して工程324へ移行するようになっている。
工程324は過小電流状態検出手段となる工程で、この工程では工程322で算出た負荷電流Imが工程320で算出された最小電流Iminよりも小さいときにはYESの判定を行って過小電流状態であると判定して工程325へ移行し、工程322で算出た負荷電流Imが工程320算出された最小電流Iminよりも小さくないときにはNOの判定を行って過小電流状態ではないと判定して動作終了工程330へ移行するようになっている。
工程325は工程323が過大電流状態を判定したとき、又は工程324が過小電流状態を判定したときに実行されて、パルスデューティαを決定するためのデータレジスタD1の値を0にして、マイクロプロセッサ111Aのパルス幅変調制御出力PWMを停止すると共に、異常報知出力DSPを発生して警報・表示器109を作動させるようになっている。
工程324の判定が過小電流状態ではなかったとき、又は工程325に続いて移行する動作終了工程330は、待機工程となっていて、マイクロプロセッサ111Aが他の制御フローの実行を行った後に再度動作開始工程300が活性化されて、工程300から工程330に至る制御フローが繰り返し実行されるようになっている。
以上のとおりに構成された制御フローについて全体概要を説明する。
まず、換算設定手段319で設定される目標電圧Esは、目標電流Isが実際に流れたとしたときの監視電圧Efに相当した値となっていて、本来は目標電流Isと実際に流れる負荷電流Imとは一致するように比較偏差積分回路140による負帰還制御がマイクロプロセッサ111Aの外部で実行されている。しかし、監視電圧Efには負荷電流Imに比例した主成分のほかに、電気負荷107に印加される平均電圧Vaに比例した誤差成分が含まれている。
電気負荷107の抵抗値は環境温度や負荷自体の温度上昇によって変化するので、所定の負荷電流Imを得るための平均電圧Vaも変化し、従って監視電圧Efの誤差成分も変化することになる。
換算設定手段319は、電気負荷107の抵抗変動に伴って変化する平均電圧Vaの値をフィードバックして目標電圧Esの中に反映するようにしたものであって、比較偏差積分回路140による負帰還制御を一次帰還制御とすれば、換算設定手段319は二次帰還制御となっている。
初期設定手段307は、まだ平均電圧Vaが測定されていない運転開始時において、規格基準電流Irと目標負荷電流Isとを対比することによって平均電圧Vaaを推定したうえで仮の目標電圧Esを設定する手段となっている。
次に、過大電流状態検出手段323が過大電流状態の判定を行うときは、電気負荷107の正負の口出線間の短絡である負荷短絡、巻き線間の層間短絡、出力端子108に接続された正相配線と接地端子104Nに接続された接地線、又は車体や大地等に対するの地絡事故等が原因となるものであって、例えば負荷短絡によって電流検出抵抗126に過大電流が流れると、差動増幅器151の出力電圧E0は通常は0〜Vcc(例えば5V)の範囲にあるものが、突然に駆動電源電圧Vb(例えば10〜16V)まで増加する。しかし、監視電圧Efは制御電源電圧Vcc以上の値にならないように、電圧制限ダイオード164によって制限されているので、負荷電流Imが過大になったことを検出することはできない。
しかしながら、負荷短絡によって平均電圧Vaが低下するので、工程321における最大電流Imaxの値が急減し、工程323によって過大電流状態の判定がなされるようになっている。
一方、過小電流状態検出手段324が過小電流状態の判定を行うときは、電気負荷107や配線の断線事故の場合と、正相配線の天絡事故の場合とがある。特に、正相配線の天絡事故において、出力端子108と電源端子104Pが完全短絡した場合には電流検出抵抗126に流れる電流はゼロになるので、目標電流と実際の電流との間に乖離が発生して異常検出を簡単に行うことができる。
同様に、断線事故が発生したときにも電流検出抵抗126に流れる電流はゼロになるので、目標電流と実際の電流との間に乖離が発生して異常検出を簡単に行うことができる。しかし、出力端子108から電気負荷107に至る正相配線の遠隔位置と電源端子104Pから駆動電源101に至る電源配線の遠隔位置との間で天絡事故が発生した場合には、配線抵抗R0と電流検出抵抗126の抵抗値R1との並列回路が構成され、電流検出抵抗126に流れる電流がR0/(R0+R1)の比率で減少することになる。
このような場合には、単に目標電流と実際の電流とを比較するだけでは異常状態を検出することができない状態が発生する。例えば、抵抗R0による天絡事故が発生している状態で、開閉素子121を完全導通させたときに電流検出抵抗126に分流する電流をIxとしたとき、目標電流がIx以下の値であれば目標値と実測値とが合致するように帰還制御が可能であって、目標値と実測値との間で乖離が発生することはなく、従って異常検出は行えないことになる。
しかし、工程323や工程324における比較基準は電気負荷107に印加されている現在の平均電圧Vaを監視して、電気負荷107の最大抵抗、最小抵抗から算出される最小電流、最大電流を推定し、これが電流検出抵抗126に流れているかどうかを判定するようになっているので、高精度な異常判定を行うことができるものである。なお、工程323や工程324では負荷電流Imと最大負荷電流Imax、最小負荷電流Iminとを比較したが、工程321、工程320で算出された最大負荷電流Imax、最小負荷電流Iminを差動増幅回路部150の出力電圧に換算した最大監視電圧Emax、最小監視電圧Eminに変換し、監視電圧Efと最大監視電圧Emax、最小監視電圧Eminとを比較するようにしても良い。要は監視電圧Efと監視平均電圧Vaとの相対関係が異常に乖離していないことを判定すればよいものである。
次に、図10のフローチャートにより、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置における割込制御ルーチンの動作について説明する。
図10において、工程400はマイクロプロセッサ111Aの割込み動作開始工程で、この開始工程は略一定時間間隔で活性化されるようになっている。
工程401は開始工程400に続いて実行され、図9の工程325による異常報知出力が発生しているかどうかを監視して、異常発生していなければNOの判定を行って工程402へ移行し、異常発生していればYESの判定を行って工程406へ移行するようになっている。
工程402はマイクロプロセッサ111Aの運転開始後の初回動作であるかどうかを判定し、初回動作であれば工程403へ移行し、初回動作でなければ工程407へ移行するようになっている。工程403ではパルス幅変調制御出力PWMの論理レベルを「L」にし、続く工程404では割込み回数計数用減算カウンタの現在値レジスタD0の内容を1に設定し、続く工程405では出力フラグF0をONにセットし、続いて工程407へ移行するようになっている。
出力停止・報知手段となる工程406ではパルス幅変調制御出力PWMの論理を「L」にし、出力フラグF0をリセットすると共に、異常報知出力DSPを発生して警報・表示器109を作動させ、続いて工程408へ移行して、工程408では割込み開始した時点における元の制御工程へ復帰するようになっている。
工程407では工程405、又は後述の工程423で出力フラグF0がセットされているかどうかを判定し、セットされていれば工程410へ移行し、セットされていなければ工程420へ移行するようになっている。
工程410は割込み回数を計数する減算カウンタの現在値から1カウント分の減算を行う工程で、続く工程411では現在値レジスタD0の値が依然としてゼロを超過しているかどうかを判定し、ゼロを超過しているときには工程408へ移行し、現在値がゼロになると工程412へ移行するようになっている。
工程412では図9の工程306、又は工程318で設定されたデータレジスタD2の値を現在値レジスタD0に転送し、続く工程413では工程405、又は後述の工程423でセットされていた出力フラグF0をリセットし、続く工程414ではパルス幅変調制御出力PWMの論理レベルを「L」にし、工程408へ移行するようになっている。
工程420は割込み回数を計数する減算カウンタの現在値から1カウント分の減算を行う工程で、続く工程421では現在値レジスタD0の値が依然としてゼロを超過しているかどうかを判定し、ゼロを超過しているときには工程408へ移行し、現在値がゼロになると工程422へ移行するようになっている。
工程422では図9の工程306、又は工程318で設定されたデータレジスタD1の値を現在値レジスタD0に転送し、続く工程423では工程413でリセットされていた出力フラグF0をセットし、続く工程424ではパルス幅変調制御出力PWMの論理レベルを「H」にし、工程408へ移行するようになっている。
工程410から工程414によって構成された工程ブロック415は、工程423によって出力フラグF0がセットされてから工程413によってリセットされるまでの動作工程であって、その期間は工程422で設定されたデータレジスタD1の値に依存しており、これは制御出力PWMの論理レベルが「H」となっている期間に相当している。
また、工程420から工程424によって構成された工程ブロック425は、工程413によって出力フラグF0がリセットされてから工程423によってセットされるまでの動作工程である。その期間は工程412で設定されたデータレジスタD2の値に依存しており、これは制御出力PWMの論理レベルが「L」となっている期間に相当している。
以上詳説したように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、駆動電源101からから給電され、開閉素子121と電流検出抵抗126と電気負荷107とが直列接続された給電回路部と、電気負荷107に対する目標負荷電流Isと電流検出抵抗126による検出負荷電流Imとが一致する関係に開閉素子121のON/OFF比率を制御する制御回路部とを備えた電気負荷の電流制御装置100Aであって、前記制御回路部は更に、不揮発プログラムメモリ113Aと不揮発データメモリ114Aと演算処理用RAMメモリ112と多チャンネルAD変換器115とを備えたマイクロプロセッサ111Aと、増幅回路部150と、温度検出回路170と、比較偏差積分回路140とを備え、不揮発プログラムメモリ113Aは更に、制御定数校正手段208と、換算設定手段319となる制御プログラムを包含している。
増幅回路部150は、電気負荷107に直列接続された電流検出抵抗126の両端電圧を増幅し、電気負荷107に対する負荷電流Imに比例した電流比例成分を主体として、誤差成分ΔEfを包含した監視電圧Efを発生し、校正監視情報としてマイクロプロセッサ111Aに入力する。また、温度検出回路170は、電流制御装置100Aの内部環境温度T(=Ta〜Te)に対応した測定電圧Vt(=Vta〜Vte)を発生して、当該測定電圧Vtは多チャンネルAD変換器115を介してマイクロプロセッサ111Aに入力される。
制御定数校正手段208は、常温環境と高温環境の一方、又は両方の内部環境湿度T(=Tb、Td)において、外部設置された校正用電流計901dによる実負荷電流Immに基づいて監視電圧Efの電流比例成分に関する電流比例係数B(=Bb、Bd)と誤差成分ΔEf(=ΔEfb、ΔEfd)とを算出して、温度検出回路170によって検出された実使用内部環境温度T(=Ta〜Te)と、可変の目標負荷電流Isi(i=0、1、・・・n)に対応した電流比例係数Bi(=Bai〜Bei)と誤差成分ΔEf(=ΔEfa〜ΔEfe)を補間算出する演算算式、又はデータテーブルを不揮発データメモリ114Aに保存する。
換算設定手段319は、マイクロプロセッサ111Aによって決定される目標負荷電流Isと同じ電流が電気負荷107に流れたと仮定した場合に、実使用内部環境温度Tに対応した前記電流比例係数と誤差成分に基づいて推定監視電圧Esを算出する。
比較偏差積分回路140は、目標負荷電流Isに対応した推定監視電圧Esを制御目標値とし、監視電圧Efを帰還値として開閉素子121の通電を制御する。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、目標負荷電流に比例した設定信号を出力するマイクロプロセッサ111Aの外部に、負帰還制御用の比較偏差積分回路140と電流検出抵抗126を備えたものであって、製品の出荷段階で外部設置された校正用電流計を用いて電流制御特性の固体バラツキ変動、及び温度変動を補正する校正運転が行われ、当該校正運転は常温環境と高温環境の少なくとも一方において実施されて、制御要素の固体バラツキ変動と温度による特性変動、及び自己発熱による電流検出抵抗126の抵抗値の変動による誤差要因に基づいた校正定数を得る。従って、検出誤差の校正は検出誤差の発生要因別に行われ、しかも温度変動要因を加味して校正されているので、様々な運転環境における電流制御装置の運転中において校正定数を的確に活用して、高精度な電流制御が行えると共に、簡易な外部校正設備によって手軽に校正運転が行える特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の不揮発プログラムメモリ113Aは更に、検出温度校正手段207となる制御プログラムを包含している。検出温度校正手段207は、常温環境と高温環境の少なくとも一方の温度環境において、温度検出回路170の測定電圧Vt(=Vtb、又はVtd)のデジタル変換値と、既知の内部環境温度、又は外部設置された校正用温度計903dによる推定内部環境温度T(=Tb、又はTd)を対比し、適用された温度検出回路170の標準的な温度対測定電圧特性に基づいて、実際の測定電圧Vt(=Vta〜Vte)から実使用内部環境温度T(=Ta〜Te)を推定する演算算式、又はデータテーブルを不揮発データメモリ114Aに保存する。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、温度検出回路170の固体バラツキ変動のうち、少なくとも特定温度における測定電圧が正確に補足され、適用された温度検出回路170による標準的な測定電圧対温度特性を補正して、実際の測定電圧に対応した環境温度を推定することができる。従って、温度検出回路170の固体バラツキ変動のうち、少なくとも特定温度における測定電圧が正確に補足され、全体としての温度検出精度が向上する特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の不揮発プログラムメモリ113Aは更に、検出温度校正手段207となる制御プログラムを包含している。検出温度校正手段207は、常温環境と高温環境の両方の温度環境において、温度検出回路170の測定電圧Vt(=Vtb、Vtd)のデジタル変換値と、既知の内部環境温度、又は外部設置された校正用温度計903dによる推定内部環境温度T(=Tb、Td)を対比して、実際の測定電圧Vt(=Vta〜Vte)から実使用内部環境温度T(=Ta〜Te)を推定する補間演算算式、又はデータテーブルを不揮発データメモリ114Aに保存する。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、温度検出回路170の常温、高温環境における固体バラツキ変動が正確に補足され、実際の測定電圧に対応した環境温度を正確に推定することができる。従って、温度検出回路170の固体バラツキ変動が補正されて、幅広い温度帯域において温度検出精度が向上する特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の制御回路部は更に、校正操作用外部ツール900とマイクロプロセッサ111Aとの間を接続するシリアル通信用インタフェース回路116を備え、制御定数校正手段208、又は検出温度校正手段207における校正指令と、外部設置された校正用の電流計901d、又は温度計903dの測定値は、外部ツール900から入力されてRAMメモリ112に転送書込みされるものである。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、校正操作用の外部ツール900を備え、当該外部ツール900は、測定信号をマイクロプロセッサ111Aに転送するために使用されている。従って、高精度な校正用測定器による測定値をデジタルデータとしてそのまま電流制御装置内のRAMメモリ112に転送することができる特徴がある。また、校正演算は電流制御装置側のマイクロプロセッサ111Aによって行なわれているので、外部設置される校正設備が簡単で、各種仕様の電流制御装置に対して標準適用することができる特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の増幅回路部150は、開閉素子121と電気負荷107との間に接続された電流検出抵抗126の両端電圧の差分電圧を差動増幅器151によって増幅すると共に、給電回路部は転流ダイオード127を備え、増幅回路部150はバイアス補正回路158を備えている。
転流ダイオード127は、電気負荷107と開閉素子121との間に接続された電流検出抵抗126と電気負荷107との直列回路に対して並列接続されるか、又は電流検出抵抗126を含まないで電気負荷107に対して直接的に並列接続されたダイオードであって、開閉素子121が開路したときに電気負荷107のインダクタンスによる持続減衰電流が還流する極性に接続されている。
バイアス補正回路158は、差動増幅器151の第1の入力E1、第2の入力E2に対して略均等な正のバイアス電圧を印加して、開閉素子121が開路しているときに転流ダイオード127の電圧降下によって印加される負電圧を相殺し、差動増幅器151に負電圧入力が印加されないようにしている。
制御定数校正手段208は更に、前記常温環境と高温環境の少なくとも2種類の内部環境温度T(=Tb、Td)において、監視電圧Efの電流比例係数B(=Bb、Bd)に加えて誤差成分ΔEfの電圧比例係数D(=Db、Dd)とオフセット成分C(=Cb、Cd)の少なくとも一方が算出され、実使用内部環境温度T(=Ta〜Te)における電圧比例係数D(=Da〜Dd)、又はオフセット成分C(=Ca〜Cd)を補間算出する演算算式、又はデータテーブルを不揮発データメモリ114Aに保存する。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、給電回路部が転流ダイオード127を備え、増幅回路部150がバイアス補正回路158を備えている。従って、電流検出抵抗126がグランド側に設けられていないことに伴って発生する負電圧入力を相殺して、差動増幅器151や多チャンネルAD変換器115が正負の電圧を扱う必要がないようにすることができる特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の制御回路部は更に、分圧抵抗191a、192aからなる平均電圧測定回路を備えると共に、不揮発プログラムメモリ113Aは更に、校正係数演算手段240Aと転送保存手段203Aとなる制御プログラムを包含している。
平均電圧測定回路は、電気負荷107の両端電圧を分圧してマイクロプロセッサ111Aに入力し、監視平均電圧Vaを得る。
校正係数演算手段240Aは、増幅回路部150による監視電圧の平均値Efと監視平均電圧Vaと負荷電流Imとの関係が、Ef=D×Va+B×Im+Cであるとし、この算式における誤差成分となるオフセット成分Cと電圧比例係数D、及び電流比例係数Bは校正運転による測定データから算出する。
転送保存手段203Aは、校正係数演算手段240Aによる演算結果である電圧比例係数Dと電流比例係数Bとオフセット成分Cの値を校正定数として不揮発データメモリ114Aに転送保存し、前記校正定数は常温環境と高温環境の少なくとも2種類の環境温度において算出され、2種類の内部環境温度T(=Tb、Td)と電圧比例係数D(=Db、Dd)と電流比例係数B(=Bb、Bd)とオフセット成分C(=Cb、Cd)が転送保存される。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、分圧抵抗191a、192aからなる平均電圧測定回路と、校正係数演算手段240Aと、転送保存手段203Aとを備えている。従って、要因別の校正定数を手順良く効率的に算出、保存することができるので、量産製品に対する生産ラインの中で手軽な自動化設備を付加することによって校正操作が行える特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の校正係数演算手段240Aは更に、平均電圧校正手段243を包含している。
平均電圧校正手段243は、前記校正運転において、外部設置された校正用電圧計902dで測定された駆動電源の電圧Vbを入力してRAMメモリ112に書込み記憶すると共に、開閉素子121が完全導通しているときの監視平均電圧Vaと駆動電源電圧Vbとの間の平均電圧校正係数Ka=Vb/Vaを算出して不揮発データメモリ114Aに格納するか、又は電気負荷107の両端電圧に対する分圧比率の逆数として予め定められた固定定数を適用するようになっている。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、平均電圧校正手段243を備えている。従って、開閉素子121が完全導通している状態において、監視平均電圧Vaの値から駆動電源電圧Vbを正確に算出することができ、算出電圧を他の目的に利用することができる特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置の不揮発プログラムメモリ113Aは更に、線形性校正手段257となる制御プログラムを備えている。
線形性校正手段257は、複数の目標負荷電流Isi(i=0〜n)による校正運転において、外部設置された校正用電流計901dによって測定された実負荷電流Immiに基づいて、監視電圧Efの中の電流比例成分の電流比例係数Bi=B×(Isi/Immi)を算出して、近似算式、又はデータテーブルとして不揮発データメモリに保存する。線形性校正手段257による電流比例係数の算出は、常温環境と高温環境の一方、又は両方の内部環境温度T(=Tb、Td)において実行され、実用内部環境T(=Ta〜Te)における電流比例係数Bai〜Beiの値が近似算式、又はデータテーブルとして不揮発データメモリ114Aに保存される。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、線形性校正手段257を備え、目標電流に比例した負荷電流が得られるように電流比例計数の補正を行うようになっている。従って、温度検出回路170は単に電流制御装置内部の環境温度を測定しているものであって、電流検出抵抗126そのものの温度を直接検出するものではないのに対し、電流検出抵抗126の温度が負荷電流の二乗に比例して変化し、これに伴って電流検出抵抗126の抵抗値が変化することによって電流制御の非線形誤差が発生するのを防止することができる特徴がある。
また、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置100Aは、自動車用自動変速機における複数のリニアソレノイドに対する電流制御装置であって、密閉筐体に収納され、温度検出回路170はマイクロプロセッサ111Aの近傍温度、又はマイクロプロセッサ111Aと多チャンネルAD変換器115に給電する定電圧電源回路110の近傍温度を測定することによって前記密閉筐体内の平均環境温度を推定するものである。
前記常温環境における校正運転は、電流制御装置100Aの組立検査工程において実施されるようになっており、前記高温環境における校正運転は、前記組立検査工程に続く高温試験工程において実施されるようになっている。
以上のように、第1実施形態による電気負荷の電流制御装置は、電流制御装置100Aの校正運転は、電流制御装置100Aの組立検査工程と高温出荷検査工程において行なわれるようになっている。従って、不揮発データメモリ114Aに一時保存された組立検査工程における常温環境での測定データと、高温試験工程における高温環境での測定データとを合成して校正定数が演算され、当該校正定数を不揮発データメモリ114Aに格納保存することによって校正運転のための専用の作業工程を必要としない特徴がある。
実施の形態2.
次に、この発明の第2実施形態による電気負荷の電流制御装置について説明する。図11は、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置を示す全体回路図である。この第2実施形態においては、図1に示す第1実施形態との相違点を中心にして説明する。なお、各図において同一符号は同一又は相当部分を示しており、図1に示す第1実施形態においては、マイクロプロセッサ111Aの外部に帰還制御回路を構成する比較偏差積分回路140を備えた外部負帰還制御方式のものであるのに対し、図11に示す第2実施形態においては、マイクロプロセッサ111Bが比較偏差積分出力に応動してパルス幅変調信号を発生する内部負帰還方式のものとなっている。
図11において、電流制御装置100Bは、制御電源ユニット110から給電されるマイクロプロセッサ111Bを中心として、開閉回路部120、増幅回路部150、平滑回路160、温度検出回路170などの回路部によって構成され、図示しない密閉筐体に収納されている。
電流制御装置100Bに接続される外部機器としては第1実施形態と同様であって、駆動電源101、ヒューズ102、電源スイッチ103によって構成された駆動電源回路が電源端子104Pと接地端子104N間に接続されている。また、アナログ入力群105a、スイッチ入力群105d、電気負荷群106、リニアソレノイド等の電流制御を必要とする電気負荷107、警報・表示器109も同様に接続されている。
なお、製品出荷前の校正運転に当たっては、外部ツール990がシリアルインタフェース回路116を介してマイクロプロセッサ111Bと接続され、電気負荷107に直列接続された校正用デジタル電流計991dの出力信号と、電源端子104Pに印加された駆動電源101の駆動電源電圧Vbを測定する校正用デジタル電圧計992dの出力信号と、電流制御装置100Bの内部の温度を推定する校正用デジタル温度計993dが外部ツール990を介してマイクロプロセッサ111Bに供給され、後述のRAMメモリ112に転送されるようになっている。
電流制御装置100Bの内部の構成として、制御電源ユニット110は、例えばDC10〜16Vである駆動電源電圧Vbから、例えばDC5Vの安定化制御電源電圧Vccを発生して電流制御装置100B内部の各部に給電するようになっている。
マイクロプロセッサ111Bは、演算処理用のRAMメモリ112と、例えば電気的に一括消去して書込み・読出しが行える不揮発フラッシュメモリ等によるプログラムメモリ113Bと、1バイト単位で電気的に書込み・読出しが行える不揮発EEPROMメモリ等によるデータメモリ114Bと、多チャンネルAD変換器115と、シリアル通信用インタフェース回路116とで協働するように構成されている。
開閉回路部120は、例えばPNP接合形トランジスタである開閉素子121と、開閉素子121のベース回路に接続された駆動抵抗122とNPN形のトランジスタ123との直列回路と、開閉素子121のベース・エミッタ端子間に接続された第1の安定抵抗124と、トランジスタ123のベース・エミッタ端子間に接続された第2の安定抵抗125で構成されていて、開閉素子121の一端は電源端子104Pに接続され、他端は抵抗値がR1である電流検出抵抗126を介して出力端子108に接続されて電気負荷107に給電するようになっている。
転流ダイオード127は、電流検出抵抗126と誘導性負荷である電気負荷107との直列回路に対して並列接続されていて、開閉素子121が開路したときに電気負荷107の減衰電流が還流する極性に接続されている。
トランジスタ123は、マイクロプロセッサ111Bの帰還制御出力PWMから駆動抵抗128を介して駆動され、帰還制御出力PWMが論理レベル「H」であるときにトランジスタ123と開閉素子121が導通するようになっている。
増幅回路部150は、駆動電源電圧Vbを電源電圧として動作する差動増幅器151を主体として、第1実施形態と同様に構成されていて、平滑回路160と温度検出回路170も第1実施形態と同様に構成されている。
電源電圧測定回路を構成する分圧抵抗191b、192bは互いに直列接続されて開閉素子121の入力端子に接続されていて、分圧抵抗192bの両端電圧が電源監視電圧Vfとしてマイクロプロセッサ111Bに入力されている。また、図中、点線で示された平均電圧測定回路を構成する分圧抵抗191a、192aは、互いに直列接続されて電気負荷107に対して並列接続されていて、分圧抵抗192aの両端電圧が監視平均電圧Vaとして直列抵抗193を介してマイクロプロセッサ111Bに入力されている。マイクロプロセッサ111Bの入力端子には平滑用コンデンサ194が接続されている。
以上のように構成された第2実施形態において、増幅回路部150に基づいて測定される監視電圧Efの値は、第1実施形態で説明した(9)式、(11)式に示すとおりとなる。また第1実施形態で説明した(1)式〜(11)式は、第2実施形態の場合でも同様に成立する。
次に、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置の動作について説明する。
図12は、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置における校正運転用の動作フローチャートである。なお、図12の構成は図2に示す第1実施形態の場合と同一構成となっていて、200番台の工程符号を1200番台に変更したものとなっている。但し、工程ブロック1210a、1210b、工程ブロック1220a、1220b、工程ブロック1230a、1230b、工程ブロック1240a、1240bの夫々の詳細を示す図13〜図16の内容が一部変更されている。
変更の要点は、図2に示す第1実施形態の場合は前述の(11)式に基づく校正運転が行われているのに対し、図12に示す第2実施形態の場合は前述の(9)式に基づく校正運転が行われているためである。
工程ブロック1210a、工程ブロック1210bの詳細を示す図13において、工程ブロック1210a、工程ブロック1210bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程1210が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程1219に続いて図12の工程ブロック1220a、工程ブロック1220bへ移行するようになっている。
工程1212は工程1210に続いて実行され、外部ツール990が発信した第1の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程1213へ移行し、未受信であるときには工程1212へ復帰して第1の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第1の校正指令を発生するに当たっては、工程1211によって事前に電流制御装置100Bに所定の駆動電源101を接続し、校正用電流計991d、校正用電圧計992d、校正用温度計993dを接続しておくようになっている。
工程1213ではAD変換器115を介して温度検出回路170の測定電圧Vtを読取り記憶し、続く工程1214では校正用温度計993dから外部ツール990を介して入力された外部環境温度を読出し記憶する。
続く工程1215では帰還制御出力PWMの通電デューティγ=0にし、続く工程1216ではこのときの監視電圧Efの値である誤差電圧Ef0を、例えばRAMメモリ112内の所定アドレスのメモリであるデータレジスタD10に転送してから復帰工程1219へ移行する。
工程ブロック1220a、工程ブロック1220bの詳細を示す図14において、工程ブロック1220a、工程ブロック1220bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程1220が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程1229に続いて図12の工程ブロック1230a、工程ブロック1230bへ移行するようになっている。
工程1222は工程1220に続いて実行され、外部ツール990が発信した第2の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程1223へ移行し、未受信であるときには工程1222へ復帰して第2の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第2の校正指令を発生するに当たっては、工程1221によって事前に電流制御装置100Bに所定の駆動電源101を接続した状態で電気負荷107への接続回路を開放し、校正用電圧計992d、校正用温度計993dを接続しておくようになっている。
工程1223では帰還制御出力PWMの通電デューティγ=100%にし、続く工程1224ではこのときの監視電圧Efの値である誤差電圧Ef1を、例えばRAMメモリ112内の所定アドレスのメモリであるデータレジスタD20に転送し、続く工程1225ではこのときの電源監視電圧Vfの値をデータレジスタD21に転送する。そして、続く工程1226では外部ツール990を介して校正用デジタル電圧計992dから入力された駆動電源電圧Vbの値をデータレジスタD22に転送してから復帰工程1229へ移行する。
工程ブロック1230a、工程ブロック1230bの詳細を示す図15において、工程ブロック1230a、工程ブロック1230bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程1230が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程1239に続いて図12の工程ブロック1240a、工程ブロック1240bへ移行するようになっている。
工程1232は工程1230に続いて実行され、外部ツール990が発信した第3の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程1233へ移行し、未受信であるときには工程1232へ復帰して第3の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第3の校正指令を発生するに当たっては、工程1231によって事前に電流制御装置100Bに所定の駆動電源101を接続した状態で電気負荷107を接続し、校正用電流計991d、校正用電圧計992d、校正用温度計993dを接続しておくようになっている。
工程1233では帰還制御出力PWMの通電デューティγ=100%にし、続く工程1234ではこのときの監視電圧Efの値である測定電圧Ef2を、例えばRAMメモリ112内の所定アドレスのメモリであるデータレジスタD30に転送し、続く工程1235では外部ツール990を介して校正用デジタル電流計991dから入力された実負荷電流Immの値をデータレジスタD33に転送してから復帰工程1239へ移行する。
工程ブロック1240a、工程ブロック1240bの詳細を示す図16において、工程ブロック1240a、工程ブロック1240bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程1240が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程1249に続いて図12の工程ブロック1250a、工程ブロック1250bへ移行するようになっている。
工程1242は工程1240に続いて実行され、外部ツール990が発信した第4の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程1243へ移行し、未受信であるときには工程1242へ復帰して第4の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第4の校正指令を発生するに当たっては、工程1241によって校正指令1から3の発生が完了しているかどうかの確認を行うようになっている。
工程1243では工程1225、工程1226で転送記憶したデータレジスタの値によって電源電圧校正係数Kvを次式によって算出し、これをデータレジスタD41に転送書込みする。
Kv=Vb/Vf=D22/D21→D41
なお、この電源電圧校正係数Kvの値は分圧抵抗191b、分圧抵抗192bの合計値を分圧抵抗192bの値で割って得られる逆分圧比に相当しており、設計理論値を使用しても精度に与える影響は大きくはないものである。
続く工程1244では、工程1216で転送保存された誤差電圧Ef0の値をオフセット成分CとしてデータレジスタD42に転送書込みする。
続く工程1245では、工程1224、工程1216、工程1226で転送記憶したデータレジスタの値によって、監視電圧Efの誤差成分の電圧比例係数Aを次式によって算出し、これをデータレジスタD43に転送書込みする。
A=(Ef1−Ef0)/(Vb+Vd)=(D20−D10)/(D22+1)→D43
続く工程1246では、工程1234、工程1224、工程1235で転送記憶したデータレジスタの値によって、監視電圧Efの電流比例係数Bを次式によって算出し、これをデータレジスタD44に転送書込みしてから復帰工程1249へ移行する。
B=(Ef2−Ef1)/Imm=(D30−D20)/D33→D44
なお、工程1243は電源電圧校正手段、工程1245は電圧比例係数演算手段、工程1246は電流比例係数演算手段となっており、工程1243から工程1246を主体とする工程ブロック1240a、工程ブロック1240bは校正係数演算手段1240Bを構成している。
工程ブロック1250a、工程ブロック1250bの詳細を示す図17において、工程ブロック1250a、工程ブロック1250bの実行開始に伴ってサブルーチン開始工程1250が活性化され、後述のサブルーチン復帰工程1259に続いて図12の工程1203a、工程1203bへ移行するようになっている。
工程1252は工程1250に続いて実行され、外部ツール990が発信した第5の校正指令を受信したかどうかを判定する。そして、判定結果がYESであって受信したときには工程1253へ移行し、未受信であるときには工程1252へ復帰して第5の校正指令を受信するまで待機するようになっている。なお、第5の校正指令を発生するに当たっては、工程1251によって事前に電流制御装置100Bに所定の駆動電源101を接続した状態で電気負荷107を接続し、校正用電流計991d、校正用電圧計992d、校正用温度計993dを接続しておくようになっている。
また、後述の工程1253〜工程1258は、目標負荷電流Isの最大値から最小値の間にかけて等比配分された複数の測定電流Isi(i=0、1、2、・・・n)を設定し、各測定電流Isiに対応した電流比例係数Biを算出するもので、工程1253〜工程1256で構成された工程ブロック1257は線形性校正手段となる。なお、工程ブロック1250a、工程ブロック1250bの作用動作は図2に示す第1実施形態の場合の工程ブロック250a、工程ブロック250bと同じものとなっている。
次に、図18に示されている校正定数のデータテーブルと電流検出の特性線図について説明する。図18(A)は、第1実施形態で説明した図8(A)の場合と同様の、温度検出回路170の出力電圧Vta〜Vteに対応した内部環境温度Ta〜Teを求めるためのデータテーブルを示したものである。図18(B)は、第1実施形態で説明した図8(B)の場合と同様の、誤差成分のオフセット成分Cに関するデータテーブルの枠組みを示しており、オフセット成分Ca〜Ceは複数分割された実用環境温度帯域Ta〜Teごとに異なるデータが適用されるようになっている。
また、図18(C)は、第1実施形態で説明した図8(C)の電圧比例係数Dの場合と同様に、電圧比例係数Aに関するデータテーブルの枠組みを示しており、電圧比例係数Aa〜Aeは複数分割された実用環境温度帯域Ta〜Teごとに異なるデータが適用されるようになっている。図18(D)は、図15の工程1235で測定され、図16の工程1246で算出された時点の電流比例係数Bに関するデータテーブルの枠組みを示しており、電流比例係数Bは複数分割された実用環境温度帯域Ta〜Teに対応して異なるデータが適用されるようになっている。
内部環境温度Tb、Tdにおける電流比例係数Bb、Bdは工程ブロック1230a、工程ブロック1230bで実測された値を基にして、工程ブロック1240a、工程ブロック1240bで算出された値で、その他の内部環境温度Ta、Tc、Teにおける電流比例成分Ba、Bc、Beは、実測された電流比例係数Bb、Bdから統計的に補間、延長して推定算出したものとなっている。
図18(E)は、横軸を負荷電流Im、縦軸を監視電圧Efとした場合の特性線図で、理想特性80は、電流検出抵抗126の温度係数がゼロであって、負荷電流Imの増加に伴って電流検出抵抗126の発熱が増大しても抵抗値に変化がない場合の直線特性となっている。但し、負荷電流Im=0の場合であっても誤差成分として前述の(9)式から算出されるΔEf=A×(Vb+Vd)×γ+Cが含まれている。
図18(E)の曲線81〜85は、正の温度係数を有する電流検出抵抗126が使用されていて、内部環境温度がTa〜Teの場合の監視電圧特性となっている。なお、温度検出回路170によって測定される内部環境温度は、マイクロプロセッサ111B、又は制御電源ユニット110の近傍温度であって、電流検出抵抗126の近傍温度ではない。
また、電流検出抵抗126は、負荷電流Imの二乗に比例する自己発熱によって内部環境温度よりも高い温度になっていて、負荷電流Imの増加に伴って抵抗値が増加する。従って、目標負荷電流をIsiとしたとき、内部環境温度Ta〜Teに対応した電流比例係数Bai〜Beiは、次に示す(12)式による近似算式が適用される。
Bai〜Bei=(Ba〜Be)/[K1+K2×T+K3×Isi2]
・・・・(12)
この近似算式における定数K1、K2、K3は、工程ブロック1250a、工程ブロック1250bによって測定された設定電流対実負荷電流のデータから統計的に算出され、不揮発プログラムメモリ113B、又は不揮発データメモリ114Bに格納されるようになっている。
次に、図19のフローチャートにより、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置における通常制御ルーチンの動作について説明する。
図9において、工程1300は、マイクロプロセッサ111Bが実行する多数の制御フローの中の一つとして、帰還制御出力を発生するためのパルス幅変調制御に関する動作開始工程で、続く工程1301は、図示しない他の制御フローの中で決定された目標負荷電流Isの値を読出設定する工程である。また、続く工程1302は、電源監視電圧Vfの現在値を読み出しする工程である。
続く工程1303は、以下の制御フローが運転開始後の初回動作であるかどうかを、図示しないフラグの動作状態によって判定する工程で、工程1303が初回動作の判定であったときには工程1304へ移行し、初回動作ではない判定であったときには工程1310へ移行するようになっている。
続く工程1304は、工程1301で読出設定された目標負荷電流Isの値と、不揮発プログラムメモリ113B、又は不揮発データメモリ114Bに予め格納されている固定定数としての規格基準抵抗Rc=Rmin〜Rmaxの値を用いて、第1実施形態で説明した(2)式によって推定通電デューティγ0を算出する工程である。但し、この(2)式における駆動電源電圧Vbの値は、工程1302で読み出された電源監視電圧Vfの値と校正定数である電源電圧校正係数Kvの値によって、Vb=Kv×Vfによって算出されるものであって、結果的には推定通電デューティγ0は次式で算出される。
γ0=(Is/Ir)×(Vmin/Vb)=Is×Rc/(Kv×Vf)
但し、Ir=Vmin/Rc、Rc=Rmin〜Rmax、
Vb=Kv×Vf=Vmin〜Vmax
工程1304に続く工程1305は、工程1304で算出された通電デューティγ0の値に所定倍率Nをかけてその整数値分をRAMメモリ112の特定アドレスのメモリであるデータレジスタD1に格納すると共に、N−D1の値をデータレジスタD2に格納する工程で、所定倍率Nとしては例えばN=1000である。なお、工程1304と工程1305によって構成された工程ブロック1306は初期設定手段となるもので、工程1304は推定通電デューティ算出手段となっている。
工程1310は工程1303の判定が初回動作ではなかったとき、又は工程1305に続いて実行される。そして、温度検出回路170の測定電圧Vtを読み出して図18(A)のデータテーブルから内部環境温度Tを読出す工程である。続く工程1311では図18(B)、図18(C)のデータテーブルから現在の環境温度に対応したオフセット成分Cと電圧比例係数Aとを読み出す。そして、続く工程1312では図8(D)のデータテーブルと、前述の近似算式の(12)式から現在の環境温度と工程1301で設定された目標負荷電流Isに対応した電流比例係数Bを算出する。なお、工程1310、工程1311、工程1312によって構成された工程ブロック1314によって校正定数確定手段を構成している。
続く工程1315はマイクロプロセッサ111Bに入力されている監視電圧Efの値を読出す工程となっていて、続く工程1316は工程1315で読み出された監視電圧Efの値を前述の(9)式に代入することによって、次式により負荷電流Imを換算推定する工程である。
Im=[Ef−A×(Vb+Vd)×γ−C]/B、Vb=Kv×Vf
なお、上式における通電デューティγの値は初回動作では工程1304で算出された通電デューティγ0が使用されるが、やがて後述の工程1324によって通電デューティγの補正が行われるので、工程1316おいて使用される通電デューティγはその時点における最新の値が使用されるものである。また、校正定数A、B、C、Kvの値は不揮発データメモリ114Bに格納されているデータが読出し使用され、電源監視電圧Vfの値は工程1302で読み出された値が使用される。
工程1316に続いて実行される工程1317は、平均電圧推定手段となるもので、この工程1317では次式によって電気負荷107に印加されている平均電圧Vaを算出する。
Va=∫V2 dt/τ=Vb×τon/τ−Vd×τoff/τ
=(Vb+Vd)×γ−Vd (Vd≒1V)
≒Kv×Vf×γ
上式において、通電周期τ=ON期間τon+OFF期間τoffである。また、駆動電源電圧Vbの値や通電デューティγの値は工程1311で使用された値と同じである。但し、図11の点線で示したように監視平均電圧Vaがマイクロプロセッサ111Bに入力されている場合には、この入力信号電圧を読み出せばよい。
続く工程1318と工程1319では、工程1317で算出された平均電圧Vaの値と、固定定数として不揮発プログラムメモリ113B、又は不揮発データメモリ114Bに格納されている電気負荷107の最小抵抗Rminと最大抵抗Rmaxの値を読み出して、最大電流Imaxと最小電流Iminを算出する。なお、ここでいう最大抵抗、最小抵抗は、一つの電気負荷に関してその固体バラツキ変動分と環境温度の変化と電気負荷自体の温度上昇を考慮した電気抵抗の上下限値のことである。
続く工程1320は過大電流状態検出手段となる工程で、この工程1320では、工程1316で算出た負荷電流Imが工程1318で算出された最大電流Imaxよりも大きいときにはYESの判定を行って過大電流状態であると判定して工程1322へ移行し、工程1316で算出た負荷電流Imが工程1318算出された最大電流Imaxよりも大きくないときにはNOの判定を行って過大電流状態ではないと判定して工程1321へ移行するようになっている。
工程1321は過小電流状態検出手段となる工程で、この工程1321では工程1316で算出た負荷電流Imが工程1319で算出された最小電流Iminよりも小さいときにはYESの判定を行って過小電流状態であると判定して工程1322へ移行し、工程1316で算出た負荷電流Imが工程1319算出された最小電流Iminよりも小さくないときにはNOの判定を行って過小電流状態ではないと判定して工程1323へ移行するようになっている。
工程1322は工程1320が過大電流状態を判定したとき、又は工程1321が過小電流状態を判定したときに実行される。そして、通電デューティγを決定するためのデータレジスタD1の値をゼロにして、マイクロプロセッサ111Bの帰還制御出力であるパルス幅変調制御出力PWMを停止すると共に、異常報知出力DSPを発生して警報・表示器109を作動させるようになっている。
工程1321の判定が過小電流状態ではなかったときに実行される工程1323では、工程1301で設定された目標電流Isと工程1316で算出された負荷電流Imの大小比較判定を行い、比較誤差が所定値以上であるときには工程1324へ移行し、比較誤差が微小であれば動作終了工程1330へ移行するようになっている。
工程1324は、工程1323による比較偏差の大小、正負に応じて、現在の通電デューティγに対して補正値Δγを増減補正して、補正結果に所定倍率Nをかけてその整数値分をRAMメモリ112の特定アドレスのメモリであるデータレジスタD1に格納すると共に、N−D1の値をデータレジスタD2に格納する工程で、所定倍率Nとしては例えばN=1000である。
工程1323の判定が比較偏差微小であったとき、又は工程1322、工程1324に続いて移行する動作終了工程1330は待機工程となっていて、マイクロプロセッサ111Bが他の制御フローの実行を行った後に再度動作開始工程1300が活性化されて、工程1300から工程1330に至る制御フローが繰り返し実行されるようになっている。なお、工程1323と工程1324による工程ブロック1325は開閉制御出力発生手段となるもので、パルス幅変調制御による帰還制御出力を発生する帰還制御手段となっている。
以上のとおりに構成された制御フローについて全体概要を説明する。
まず、初期設定手段1306では、帰還制御による適正な通電デューティγがまだ決定されていない段階で、基準負荷電流Irと目標負荷電流Isとを対比し、現在の駆動電源電圧Vbにおける推定通電デューティγ0を決定するようになっている。
換算推定手段1316では、測定された監視電圧Efの値と校正定数に基づいて負荷電流Imが算出され、電流検出抵抗126の固体バラツキや増幅回路部150の電流検出誤差を排除した正確な負荷電流Imが得られるようになっている。その結果、帰還制御手段1325によって目標電流Isと負荷電流Imに偏差があれば、通電率γを増減補正して両者が一致するように制御している。なお、マイクロプロセッサ111Bによるパルス幅変調制御は、第1実施形態で説明した図10と同様に実行され、データレジスタD1の内容によってPWM出力信号のON幅が決定され、データレジスタD2の内容によってOFF幅が決定されるようになっている。
次に、過大電流状態検出手段1320が過大電流状態の判定を行うときは、電気負荷107の正負の口出線間の短絡である負荷短絡、巻き線間の層間短絡、出力端子108に接続された正相配線と接地端子104Nに接続された接地線、又は車体や大地等に対するの地絡事故等が原因となるものである。
一方、過小電流状態検出手段1321が過小電流状態の判定を行うときは、電気負荷107や配線の断線事故の場合と、正相配線の天絡事故の場合とがある。特に、正相配線の天絡事故において、出力端子108と電源端子104Pが完全短絡した場合には電流検出抵抗126に流れる電流はゼロになるので、目標電流と実際の電流との間に乖離が発生して異常検出を簡単に行うことができる。同様に、断線事故が発生したときにも電流検出抵抗126に流れる電流はゼロになるので、目標電流と実際の電流との間に乖離が発生して異常検出を簡単に行うことができる。
しかし、出力端子108から電気負荷107に至る正相配線の遠隔位置と、電源端子104Pから駆動電源101に至る電源配線の遠隔位置との間で天絡事故が発生した場合には、配線抵抗R0と電流検出抵抗126の抵抗値R1との並列回路が構成され、電流検出抵抗126に流れる電流がR0/(R0+R1)の比率で減少することになる。このような場合には、単に目標電流と実際の電流とを比較するだけでは異常状態を検出することができない状態が発生する。
例えば、抵抗R0による天絡事故が発生している状態で、開閉素子121を完全導通させたときに電流検出抵抗126に分流する電流をIxとしたとき、目標電流がIx以下の値であれば目標値と実測値とが合致するように帰還制御が可能であって、目標値と実測値との間で乖離が発生することはなく、従って異常検出は行えないことになる。しかし、工程1320や工程1321における比較基準は、電気負荷107に印加されている現在の平均電圧Vaを推定して電気負荷107の最大抵抗、最小抵抗から算出される最小電流、最大電流を算出し、これが電流検出抵抗126に流れているかどうかを判定するようになっているので、高精度な異常判定を行うことができるものである。
なお、工程1320や工程1321では、負荷電流Imと最大負荷電流Imax、最小負荷電流Iminとを比較したが、工程1318、工程1319で算出された最大負荷電流Imax、最小負荷電流Iminを増幅回路部150の出力電圧に換算した最大監視電圧Emax、最小監視電圧Eminに変換し、監視電圧Efと最大監視電圧Emax、最小監視電圧Eminとを比較するようにしても良い。要は監視電圧Efと推定平均電圧Vaとの相対関係が異常に乖離していないことを判定すればよいものである。
以上の説明では、電流検出抵抗126が電気負荷107の上流側に接続されている場合について取り上げたが、電流検出抵抗126が電気負荷の下流位置に接続されるようにした回路形式のものであってもよく、この場合には増幅回路部150の誤差成分には電圧比例成分は含まれず、オフセット成分だけとなる。
また、第1実施形態を示す図1、第2実施形態を示す図11において、転流ダイオード127は電流検出抵抗126と電気負荷107の直列回路に対して並列接続されているが、電流検出抵抗126を転流ダイオード127の外部に接続するようにしてもよい。この場合、開閉素子121が開路している時に、増幅回路部150に入力される負電圧が軽減される特徴があるが、検出電流の脈動変動が増大するので平滑回路160の平滑時定数を大きくしておく必要がある。
更に、第1実施形態を示す図1、第2実施形態を示す図11において、校正用の電流計、電圧計、温度計はデジタル出力を発生し、外部ツール900、990を介してマイクロプロセッサ111A、111Bに入力するようにしたが、アナログメータを使用した場合にはアナログ入力群105aの一部としてアナログ入力ポートAINからマイクロプロセッサ111A、111Bに入力することも可能である。
また、不揮発データメモリ114A、114Bは、不揮発プログラムメモリ113A、113Bの一部領域を使用することも可能であって、この場合には前述した「不揮発データメモリ114A、114Bに対するデータの読出し・書込み」は、「不揮発プログラムメモリ113A、113Bのデータメモリ領域に対するデータの読出し・書込み」と読み替えて表現する必要がある。
なお、以上の説明では目標負荷電流Isが可変一定の値であって、高頻度な変化がなく、電流検出抵抗126の熱時定数が例えば数秒程度のものである場合に有効であり、もしも電気負荷107に対する通電電流が高頻度に変化する高速駆動用の過励磁電流と動作保持用の低定電流である場合には、高頻度に変化する大小の電流の二乗平均値を用いて現在の電流検出抵抗126の温度上昇を推定するようにすればよい。いずれの場合も、複数の電気負荷と当該各電気負荷と直列接続された複数の電流検出抵抗と、内部環境温度を測定する一つの温度検出素子とを有する電気負荷の電流制御装置において、個々の電流検出抵抗の温度を推定して、電流検出抵抗の抵抗値がその温度によって変化することに伴う電流制御精度の低下と線形性誤差の発生を防止することができるものである。
また、図8(B)(C)(D)と図18(B)(C)(D)で示されたデータテーブルにおいては、常温環境と高温環境における内部環境温度T(=Tb、Td)において校正運転が行なわれ、他の内部環境温度T(=Ta、Tc、Te)においては統計的手法によって補間・延長して算出するようになっている。しかし、多数の実験サンプルに基づいて、電流比例係数Bと誤差成分の電圧比例係数(A又はD)とオフセット成分Cに関する温度変動特性が測定され、標準的な温度変動特性が予め捕捉されている場合にあっては、出荷現品に関する校正運転は常温環境、又は高温環境のいずれか一方において行って、他の温度環境においては上記標準的な温度変動特性を参照して各校正定数を推定することが可能となるものである。
以上詳説したように、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置は、駆動電源101からから給電され、開閉素子121と電流検出抵抗126と電気負荷107とが直列接続された給電回路部と、電気負荷107に対する目標負荷電流Isと電流検出抵抗126による検出負荷電流Imとが一致する関係に開閉素子121のON/OFF比率を制御する制御回路部とを備えた電気負荷の電流制御装置100Bであって、前記制御回路部は更に、不揮発プログラムメモリ113Bと不揮発データメモリ114Bと演算処理用RAMメモリ112と多チャンネルAD変換器115とを備えたマイクロプロセッサ111Bと、電流検出用増幅回路部150と、温度検出回路170とを備え、不揮発プログラムメモリ113Bは更に、制御定数校正手段1208と、換算推定手段1316と、帰還制御手段1325となる制御プログラムを包含している。
増幅回路部150は、電気負荷107に直列接続された電流検出抵抗126の両端電圧を増幅し、電気負荷107に対する負荷電流Imに比例した電流比例成分を主体とし、誤差成分ΔEfを包含した監視電圧Efを発生して、負帰還制御情報及び校正情報として前記マイクロプロセッサ111Bに入力する。また、温度検出回路170は、電流制御装置100Bの内部環境温度T(=Ta〜Te)に対応した測定電圧Vt(=Vta〜Vte)を発生して、当該測定電圧Vtは多チャンネルAD変換器115を介してマイクロプロセッサ111Bに入力される。
制御定数校正手段1208は、常温環境と高温環境の一方、又は両方の内部環境湿度T(=Tb、Td)において、外部設置された校正用電流計991dによる実負荷電流Immに基づいて監視電圧Efの電流比例成分に関する電流比例係数B(=Bb、Bd)と誤差成分ΔEf(=ΔEfb、ΔEfd)とを算出して、温度検出回路170によって検出された実使用内部環境温度T(=Ta〜Te)と、可変の目標負荷電流Isi(i=0、1、・・n)に対応した電流比例係数Bi(=Bai〜Bei)と誤差成分ΔEf(=ΔEfa〜ΔEfe)を補間算出する演算算式、又はデータテーブルを不揮発データメモリ114Bに保存する。
換算推定手段1316は、監視電圧Efと実使用内部環境温度Tに対応した電流比例係数に基づいて推定負荷電流Imを算出するか、又はマイクロプロセッサ111Bによって決定される目標負荷電流Isと同じ電流が電気負荷107に流れたと仮定した場合に、実使用内部環境温度Tに対応した推定監視電圧Esを算出する。
帰還制御手段1325は、目標負荷電流Isを制御目標値とし、推定負荷電流Imを帰還値として開閉素子121の閉路期間/開閉周期である通電デューティγを制御するか、又は推定監視電圧Esを制御目標値とし、監視電圧Efを帰還値として開閉素子121の閉路期間/開閉周期である通電デューティγを制御する。
以上のように、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置は、目標電流を設定し、負荷電流に比例した検出信号が入力されて、偏差信号電圧に応動したデューティのパルス出力を発生するマイクロプロセッサ111Bを備えたものであって、製品の出荷段階で外部設置された校正用電流計を用いて電流制御特性の固体バラツキ変動、及び温度変動を補正する校正運転が行われ、当該校正運転は常温環境と高温環境の少なくとも一方において実施されて、制御要素の固体バラツキ変動と温度による特性変動、及び自己発熱による電流検出抵抗126の抵抗値の変動による誤差要因に基づいた校正定数を得るようになっている。従って、検出誤差の校正は検出誤差の発生要因別に行われ、しかも温度変動要因を加味して校正されているので、様々な運転環境における電流制御装置の運転中において校正定数を的確に活用して、高精度な電流制御が行えると共に、簡易な外部校正設備によって手軽に校正運転が行える特徴がある。
また、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置の前記制御回路部は更に、分圧抵抗191b、192bからなる電源電圧測定回路を備えると共に、不揮発プログラムメモリ113Bは更に、校正係数演算手段1240Bと転送保存手段1203Bとなる制御プログラムを包含している。
前記電源電圧測定回路は、駆動電源101の駆動電源電圧Vbを分圧回路を介してマイクロプロセッサ111Bに入力し、電源監視電圧Vfを得る回路である。また、校正係数演算手段1240Bは、開閉素子121の通電デューティをγとし、転流ダイオード127の電圧降下をVd≒1Vとしたときに、電流検出用増幅回路部150による監視電圧の平均値Efと駆動電源電圧Vbと負荷電流Imとの関係が、
Ef=A×(Vb+Vd)×γ+B×Im+C
であるとし、この式における誤差成分となるオフセット成分Cと電圧比例係数A、及び電流比例係数Bは校正運転による測定データから算出する。
転送保存手段1203Bは、校正係数演算手段1240Bによる演算結果である電圧比例係数Aと電流比例係数Bとオフセット成分Cの値を校正定数として不揮発データメモリ114Bに転送保存する。前記校正定数は常温環境と高温環境の少なくとも2種類の環境温度において算出され、2種類の内部環境温度T(=Tb、Td)と、電圧比例係数A(=Ab、Ad)と、電流比例係数B(=Bb、Bd)、及びオフセット成分C(=Cb、Cd)が転送保存される。
以上のように、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置は、分圧抵抗191b、192bで構成される電源電圧測定回路と、校正係数演算手段1240Bと、転送保存手段1203Bとを備えている。従って、要因別の校正定数を手順良く効率的に算出、保存することができるので、量産製品に対する生産ラインの中で手軽な自動化設備を付加することによって校正操作が行える特徴がある。
また、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置の校正係数演算手段1240Bは更に、電源電圧校正手段1243を包含している。
電源電圧校正手段1243は、前記校正運転において、電源監視電圧VfをRAMメモリ112に書込み記憶して、外部設置された校正用電圧計992dによって測定された駆動電源電圧Vbと対比して電源電圧校正係数Kv=Vb/Vfを算出し、不揮発データメモリ114Bに格納するか、又は駆動電源電圧Vbに対する分圧比率の逆数として予め定められた固定定数を適用するようになっている。
以上のように、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置は、電源電圧校正手段1243を備えている。従って、駆動電源電圧Vbを正確に算出することができると共に、算出電圧を他の目的に利用することができる特徴がある。
また、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置の不揮発プログラムメモリ113Bは更に、線形性校正手段1257となる制御プログラムを備えている。
線形性校正手段1257は、複数の目標負荷電流Isi(i=0〜n)による校正運転において、外部設置された校正用電流計991dによって測定された実負荷電流Immiに基づいて、監視電圧Efの中の電流比例成分の電流比例係数Bi=B×(Isi/Immi)を算出する。線形性校正手段1257による電流比例係数Biの算出は、常温環境と高温環境の一方、又は両方の内部環境温度T(=Tb、Td)において実行され、実用内部環境T(=Ta〜Te)における電流比例係数Bai〜Beiの値が近似算式、又はデータテーブルとして不揮発データメモリ114Bに保存される。
以上のように、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置は、線形性校正手段1257を備え、目標電流に比例した負荷電流が得られるように電流比例計数Biの補正を行うようになっている。従って、温度検出回路170は単に電流制御装置内部の環境温度を測定しているものであって、電流検出抵抗126そのものの温度を直接検出するものではないのに対し、電流検出抵抗126の温度が負荷電流の二乗に比例して変化し、これに伴って電流検出抵抗126の抵抗値が変化することによって電流制御の非線形誤差が発生するのを防止することができる特徴がある。
また、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置の線形性校正手段1257により算出される電流比例係数Biは、温度検出回路170による検出温度をTとし、目標負荷電流をIsiとしたときに近似算式として、Bi=B/[K1+K2×T+K3×Isi2]の算式が適用される。線形性校正手段1257は、常温環境と高温環境の少なくとも一方において複数の目標負荷電流Isiに対応した電流比例係数Biを算出し、上記算式によって算式定数B、K1、K2、K3を算出して、当該算式定数を不揮発データメモリ114Bに書込み保存するようになっている。
以上のように、第2実施形態による電気負荷の電流制御装置は、電流比例係数Biを算出する線形性校正手段1257を備え、電流比例係数Biは目標電流の二乗に反比例して補正されるようになっている。従って、簡易な近似算式により電流比例係数Biの補正を行うことができる特徴がある。